ソーシャルビジネスの社会影響の情報開示
―エコラベルのデザインの要素に焦点をあてて
川 原 尚 子 ・ 入 江 賀 子
要旨 本稿では,ソーシャルビジネスの社会情報を開示できるエコラベルのあり方を検討す るために,エコラベルの分類の視点を吟味し,また電力関連のエコラベルを比較検討してい る。本研究は,ソーシャルビジネスの社会影響をどのように情報開示することが,ビジネス の利益や消費者の選択の自由度の拡大,情報の非対称性の低減という社会的便益を増加させ るかという研究の予備的調査として実施している。エコラベルの分類に関する先行研究をレ ビューし,実際のエコラベルを比較分析し,エコラベルのデザインの視点を議論している。
結論として,ソーシャルビジネスの社会影響についてエコラベルを通じて情報開示する際に,
より高い価格プレミアムを生み出すエコラベルのデザインは,情報内容(情報の項目), 情
報量,情報の信頼性の観点から検討できるといえる。これらの観点から消費者の選好の研究 をすることに意義があるだろう。
Abstract This study explores the viewpoints of the classification of ecolabels and comparatively examines ecolabels related to electric power to investigate how ecolabels can effectively disclose the social information of social businesses. We aimed to determine how disclosing the social impact of social businesses increases profits of businesses, and results in greater freedom of consumers’ choice and the reduction of information asymmetry. To this end, a preliminary survey was conducted in this study. Studies on perspectives of ecolabel classification were reviewed, and actual ecolabels were compared, analysed, and discussed from the perspective of ecolabel design. It was concluded that the design of the ecolabel that produces a higher price premium when disclosing information about the social impact of social business can be considered from the perspective of information content(information items), information volume, and the reliability of information. It would be meaningful to study consumer preferences based on these perspectives.
Key words エコラベル(ecolabel),社会影響(social impacts),情報開示(disclosure), ソーシャルビジネス(social business)
原稿受理日 2020年5月31日
Ⅰ は じ め に
ソーシャルビジネスは,そのビジネスが社会に好ましい経済面,環境面,社会面の影響
(以下,「社会影響」)をもたらすビジネスであるといえる(Noya, 2015)。社会情報開示と は経済的活動の社会や環境への影響について社会の中の特定の関心をもつグループや社会 全般にコミュニケーションするプロセスをいう(Gray, Owen and Adams, 1996, p. 3)
が,ステークホルダーへ社会影響を情報開示することで,ビジネスのブランド力や評判リ スクを管理(Bebbington et al., 2008)したり,ビジネスの正当性を維持させたり,向上 させたりする効果(Clarke and Gibson-Sweet, 1999; Nicholls, 2009; Suchman, 1995)
が期待される。社会情報開示に関する理論, 中でもステークホルダー理論( Ullmann, 1985; Roberts, 1992)や正当性理論(Lindblom, 1994)は,ソーシャルビジネスの好まし
い社会影響の内容を,自発的に一般に向けて開示するであろうことを示唆している。
社会影響の情報開示の一つの手法として,ソーシャルラベルやエコラベルの利用が考え られる。ビジネスのパフォーマンスを経済面, 環境面,社会面に分けて捉えた際, ソー シャルラベルは社会面を,エコラベルは環境面を中心にしたラベルであるといえるが,こ れらの対象情報は双方に重複している場合がある。つまり,ソーシャルラベルに環境的パ フォーマンスを含むこともあれば,エコラベルに社会的パフォーマンスを含むこともある
(Koszewska, 2011; OECD, 2016)。ソーシャルビジネスが,これらのラベルを社会影響に 関する情報開示の手段とするのであれば,ソーシャルラベルとエコラベルのいずれも活用 できるといえるが,現在,エコラベルの方がソーシャルラベルより種類が多く,一般に,
より普及している(Koszewska, 2011)。
ソーシャルビジネスの社会影響の情報開示については,これまで資金提供者に向けたイ ンパクトレポーティングのような,ビジネス成果の認識や測定を巡る議論(川原 , 2018)
があるものの,消費者の選好の視点で,ソーシャルビジネスがどのような情報をどのよう に開示すれば, ビジネスの成功に結び付くのかという視点での先行研究(Achleitner et al., 2009)は未だ限られている。わが国では, ソーシャルビジネスの性質をもつ地域新電 力があるが,自社ウェブサイト等で,その特色とともに,新電力がもたらすであろう地域 社会への影響,とりわけ, 地域の再生可能なエネルギー資源の地産地消,地域のエネル ギーの自立の促進,利益の地域経済への還元,地域活性化という社会影響の説明をすると ころが多い(川原および入江, 2019)。電力需要者が新電力と従来の電力の,あるいは新電
力相互の選択の際の判断要素の一つに持続可能性にかかるビジネスの社会影響を重視する ならば,ソーシャルラベルやエコラベルを使って社会影響を情報開示することは,消費者 の当該電力に対する選好の拡大に結び付く。また,エコラベルでの情報開示は,消費者の 選択肢の自由度を拡大させ,社会の資源配分に必要な情報の非対称性の問題を少なくする ことで,社会的な余剰の増加につながる。問題は,エコラベルをどのようにデザインすれ ば,電力消費者が最も望んでいる情報を開示できるかである。
これまでエコラベルの環境的効果(Salzman, 1997)や, エコラベル制度一般の強みや 弱み(Morris, 1997)の議論があるが,電力のエコラベルは,エコラベルの歴史上でも比 較的最近のことでもあり(Holt and Bird, 2005, p. 7),消費者の選好分析に関する研究
(Heinzle and W stenhagen, 2012)は比較的限られている。また,ソーシャルビジネス のエコラベルへの消費者選好を分析する研究は,知る限りない。このため,ソーシャルビ ジネスのエコラベルを使った社会影響の情報開示とそのビジネスの財やサービスへの選好 の研究は,知識ギャップを埋める意義がある。よって,ソーシャルビジネスでエコラベル を使って社会影響の情報開示をする際,どのような情報が,ビジネスの財やサービスへの 選好に結び付くのかという研究に意義がある。
本研究では,そのような研究の予備的調査として,エコラベルの選好に重要となる要素 を明らかにすることを目的とする。そのためエコラベルの分類について先行的な研究や知 見を整理し,新電力のビジネスに最も関連する電力のエコラベルを比較検討する。その上 で,エコラベルの選好に重要となる要素を明らかにしていく。
本稿の構成は,次章でエコラベルの分類に関する文献レビューをし,第3章で電力エコ ラベルのデザインを検討し,第4章で電力エコラベルの調査結果を述べ,第5章で討議し,
最終章で結論を述べる。
Ⅱ 文 献 レ ビ ュ ー
1 エコラベルの発展
今日,エコラベルと呼ばれるものは,製品あるいはサービスの環境パフォーマンスにつ いて外部者に情報を提供するラベルやスキームである(OECD, 2016, p. 1)。歴史的に,最 初の公的なエコラベルのスキームは1970年代に遡り,最善の環境特性を備えた製品にシー ルを付けるものであったが,その後1980年代や1990年代には,特定の個別分野の環境問題 にだけ焦点を当てる認証スキームなど,様々な民間基準が発展した(OECD, 2016, p. 1)。
その後,企業の環境的および社会的パフォーマンスへの関心が高まるにつれて, 基準,
コード,ラベル, インデックス, 認証などの「グリーンマーク」が急増した(Golden et al., 2010, p. 6)。2000年代以後は,温室効果ガス(GHG)の排出量や広範な環境影響に関 する量的なフットプリントなど,様々な特質のあるエコラベルや情報スキームが増加して きた(OECD, 2016, p. 1)。最近では,多様な量的な宣言のものや,「持続可能な調達」な どの多種多様な文章による宣言も見られる(OECD, 2016, p. 1)。現在,エコラベルは世界 199か国で,25産業分野にわたり457種類数えられている(Big Room Inc.)(2020年5月現
在)。
量的・質的なエコラベルによる情報開示が果たす役割は,企業・政府・消費者との間の 通信チャネルの提供(OECD, 2016, p. 1),情報の非対称性の解消である(Heinzle and W stenhagen, 2012)。
一方,エコラベルの負の側面を主張する産業界の懸念もあった。20年以上前の文献では あるが,Salzman(1997) によれば,産業界の批判は,エコラベルが環境に優しい商品を 識別していないだけでなく,国際標準化機構が開発するエコラベルの基準が政府の公共調 達プログラムの基礎として採用されることで保護主義の非関税貿易障壁として乱用される 対象となっていると考えていることであるとした。
製品やサービスにエコラベルを付けると,ラベルの無い製品やサービスに比較して,ラ ベル分だけコスト高になるため,エコラベルの発展のカギはエコラベルが消費者に対して どの程度の価格プレミアムをもつかである。エコラベルを付与した製品に対する消費者の 選好に関する研究(Bj rner et al., 2004; Cason and Gangaharan, 2002; Disdier et al., 2013; Johnston et al., 2001; Loureiro and Hine, 2002; Loureiro et al., 2002; Loureiro and Lotade, 2005; Moon et al., 2002; Roheim et al., 2011; Shen and Saijo, 2007; Shen, 2012; Teisl et al., 2002 他) はこれまでかなり蓄積がある。一方,製品に比べてサービス
のエコラベル研究は限られている(Prieto-Sandoval, 2016)。また,本研究で特に焦点を あてている電力関連のエコラベルについては,気候変動問題への対応を背景に,消費者選 好に関する研究(Ethier et al., 2000; Roe et al., 2001 他)が,近年,重要性を増してい る。
エコラベルの価格プレミアムの基礎となるのは,消費者による,製品やサービスによる 環境負荷の認識とエコラベル制度への理解である。しかし,消費者の認知度は,それほど 高くない(Koszewska, 2011)。このため,エコラベル製品・サービスが価格プレミアムを 得るためには,消費者への環境問題に関する情報提供や環境教育が必要とされる(Uchida
et al., 2014)。しかし,様々なエコラベルや情報スキームがあり,消費者が理解するには 複雑過ぎるし,技術的な知識も必要との指摘もある(Proto et al., 2007)。
2 エコラベルを分類する視点
この章では,エコラベルのデザインを考えるために,エコラベルの分類の視点を整理し ていきたい。エコラベルは,情報伝達の方法で3つに分類できる。1
つ目は,認証を受け ていることだけを示すシールのタイプである。このタイプは,実際の認証プロセスでは複 数の環境分野の複雑な環境情報が要求されるにもかかわらず,簡単で,目で見てすぐに分 かるシールが付けられる(OECD, 2016, p. 2)。よって,このタイプでは,利用者にその 場で伝達される情報量は少ないといえる。2
つ目は,環境監査で得られる定量的な情報を 示すような情報量の多いタイプである(OECD, 2016, p. 2)。このようなタイプでは,利 用者がその情報を理解するには多くの時間が必要で,情報も複雑である(OECD, 2016, p.
2)。3
つ目のタイプは,前述の2つの中間のタイプで,簡略化されてはいるものの,いく らか定量的な情報が示されるタイプである(OECD, 2016, p. 2)。
別の分類の考え方として,エコラベルの認証やスキームに関与するステークホルダーに よる分類がある。例えば,規格の所有権に従った分類がある(OECD, 2016, p. 2)。また,
企業,政府,消費者の間,あるいは企業間(B2B または B2C)の認証など,認証の利用者 による分類がある。さらに,エコラベルの開発や管理主体でも分類できる。例えば公的,
民間,非営利組織か, 個別組織,パートナーシップかなどの分類がある(OECD, 2016, p. 1)。
エコラベルや情報スキームの認証に関与する者という点については,エコラベルや情報 スキームが本来的に自発的なものか強制的なものかという点と深く関わりがある。自主的 なスキームの場合でも必須の要件がある場合もあるが,これは例外とされる(OECD, 2016, p. 2)。エコラベルや情報スキームが,自己設定のものか,外部認証を受けるものか,監視 と監査が第一者,第二者,第三者のいずれのベースで実施されるかの分類は,自発的か強 制的かという点ともかかわりがある(OECD, 2016, p. 2)。
この他,認証されない自己による環境主張のように,分類が困難なものがある(OECD, 2016, p. 2)。例えば,データで裏付けられていない主張,環境特性(「生分解性」,「堆肥化
可能」,「リサイクル可能」など)や特定の生産原則やプロセス(「自然」や「有機性」)の ような環境主張である。多くの政府の指針ではこのような自己による環境主張のエコラベ ルや情報スキームを自発的に使用するための改善を狙っている(OECD, 2016, p. 2)。
3 エコラベルや情報スキームの内容
エコラベルの情報の内容は,環境,社会,その他に大きく分類できる。環境情報の代表 的なものには,二酸化炭素の削減量(Herbes and Ramme, 2014)がある。一方,近年,
社会の要素を含むエコラベルが普及しつつあり,分類や整理の議論を一層,複雑にしてい る。
これまで,一般によく知られている分類には,ISO(国際標準化機構)による,タイプ
Ⅰ(ISO14024:エコラベル),Ⅱ(ISO14021:自己宣言環境主張),Ⅲ(ISO14025:環境 宣言)の3つの分類がある(OECD, 2016, p. 3)(図表1参照)。
これら ISO14020シリーズの3つの規格はエコラベルの状況を広範に説明できるものと してよく知られているが,一方で,現在の多様なエコラベルの状況を十分に説明できてい
図表1 ISO のエコラベルの規格の比較 エコラベル 類型
タイプⅢ タイプⅡ
タイプⅠ
ISO14025 ISO14021
ISO14024 規格
あり 第三者認証はないが検
証可能で正確であるこ とが期待される。
非食品製品に焦点を当 てた第三者認証。自主 的スキーム
第三者の関与
あり。LCA に基づく数 量的環境パフォーマン ス指標あり。
なし 簡略化
ライフサイクルアセス メント
分野に適した媒介変数 分類
選択された製品証跡 多基準
範囲
あり。同機能の製品を 客観的に比較する。
なし。一般的な指針原 則に従って,製品を特 長に基づいて記述した 個別企業の環境主張。
あり。典型的に消費者 をターゲットとする。
製品グループ内で製品 を環境的に差別化する 可能性
図表,線描,テキスト で表された数値データ,
環境宣言 図式によるマーク/言
葉/スローガン,自己宣 言
ラ ベ ル―図 式 に よ る マーク,ロゴ,シール 情報媒体
該当 該当
該当 自発的
高い 低い
高い 検証可能性/信頼性
平均(複雑な手続き,
かなりのデータ量の分 析)
低い(低い信頼性)
優れている 開発見通し
エコリーフ 韓国の製品環境宣言 リサイクル可能成分
生物分解性 ノルディックスワン
日本のエコマーク カナダの環境チョイス 例
出典 Gru re(2013)および Koszewska(2011, p. 22)をもとに筆者加筆修正。
ない面もある(Gru re, 2013)。ISO の3つのタイプのいずれにも該当しない情報スキー ムの例として,有機認証製品のような,複数基準でもライフサイクルベースでもない第三 者認証スキームや,エネルギー・パフォーマンスに関するライフサイクルベースではない 第三者の検証済みの量的報告などがあるからである(OECD, 2016, p. 3)。
このような ISO の3つのタイプに属さない新しい種類のエコラベルや情報スキームを包 含した分類として,Gru re(2013)は,エコラベルや情報スキームを,コミュニケーショ ン方法と基準の特性に焦点を当て,12の尺度で分類している(図表2参照)。
図表2 エコラベル・情報スキームの分類
例 記述
規準
コミュニケーション方法
B2B:Abengoa RED;B2C:Krav Organic; G2C:日本のエコマーク B2B,B2C,B2G,G2C
チャネル
シール:ISO タイプⅠ,宣言:ISO タ イプⅢ
シール,報告,宣言 方法
農業および食品:Protected Harvest;
繊維:Oeko Tex Standard 100;森林 製品:Forest Stewardship Council;
バイオ燃料:2Bsvs;観光:Blue Flag 農業および食品,繊維,森林製品,建
設および家具,エネルギー,交通,バ イオ燃料,観光,家電製品,電気製品,
化粧品,清掃用製品 範囲
天 然 資 源:Water Stewardship;エ ネ ル ギー:Energy Star;生 物 多 様 性:Shade Grown Coffee;気候変動:
Caebonlabels.org;廃 棄 物:Biode- gradable
天然資源,エネルギー,汚染源(化学 製品),気候変動,廃棄物,その他,複数 内容
基準の特性
自己設定:ISO タイプⅡ;外部認証者:
ISEAL Alliance 自己設定,外部認証者
基準設定主体
民間:Casino Carbon Index;公的:
Korean Carbon Footprint Label;
非営利;Friend of the Sea;混成:
Round Table of Soy Association 民間,公的,非営利,混成
指導または所有
自発的:UL Environment;強制的:
EnerGuide 自発的,強制的
統治の方法
可能:EU Ecolabel;不可能:Bonsucro 基準設定プロセスの情報が入手可能かどうか
透明性
LCA ベース:Environmental Choice Canada;LCA ベース で な い:US Dept. of Agriculture National Or- ganic Program
LCA ベースかどうか 環境影響評価の方法
第一者:EPA Smartway;第二者:
Green seal;第三者:Bioswiss 第一者,第二者,第三者
監視と監査
製品規格:環境効率性ラベル;製造関 連の PPM:Imprim’vert;非 製 造 関 連の PPM:Timberland Green Index 製品規格,プロセスおよび製造方法
(PPM),製造関連かどうか(prPPM/
nprPPM)
焦点
地域:Pure Catskills;国家:Korean Ecolabel;国際:Marine Stewardship Council
地域,国家,国際 範囲
出典 Gru re(2013). 筆者訳および一部加筆修正。
図表2の分類に加えて,Gru re(2013)は,エコラベルや環境情報スキームで使われて 発展してきた基準の特性をもとに,エコラベルを大きく2分している。まず,実務ベース の基準であり,特定の規準に準拠して,よりよいマネジメントの実践をしているか否かと いう点のラベルである。この例として,海洋管理協議会(Marine Stewardship Council : MSC)の基準と開示がある。もう1つは,結果ベースのラベルであり,プロセスは問題と せず,環境や汚染の結果を開示するものである。この例として,製品のカーボン・フット プリントのスキームがあるが,この場合,温室効果ガス排出量を測定するものの,どのよ うな技術が排出量を減らすために使われたかまでは特定しない。(Gru re, 2013)
エコラベルの分類の視点には,コミュニケーションする社会影響の情報の内容があるが,
社会影響の情報を環境面と社会面の内容に分類できる。例えば,環境影響の情報の代表的 なものとして二酸化炭素の削減量(Herbes and Ramme, 2014)がある。Koszewska(2011)
は,エコラベルや情報スキームの内容が,環境面あるいは社会面に関連するかどうかとい う視点で分類し,それらを CSR(corporate social responsibility,企業の社会的責任)
ラベルとして包括的に整理している(図表3参照)。 この分類体系において, 環境面にも 社会面にも関係するラベルや情報スキーム,例えば,森林管理協議会(Forest Stewardship Council: FSC)のようなラベルが見られる。
図表3 CSR ラベルの分類
出典 Koszewska(2011, p. 22). 筆者訳および一部加筆修正。
Ⅲ 電力のエコラベルのデザイン
1 電力のエコラベルの意義
電力消費の環境影響は必ずしも直ちに正しく観察することができないので,電力のエコ ラベルには,先述したエコラベルの意義の議論が適応できる(Br ckl et al., 2011)。実際,
消費者の電力の効用は変わらない一方,電力消費までに複数の取引がある場合が多いため,
消費者が電源を識別できず,そのことによって消費者に対する説明と実態が乖離するとい う問題も生じている(ISEP, 2005)。
近年,再生可能エネルギーの電力利用を推進する RE100などの国際的環境イニシアティ ブの動向を背景に需要家の認識に変化が見られ,また新たな電力購入契約形態が生まれる 中で,再生可能エネルギーに関するエコラベルの認証が著しく増加しつつある(みずほ情 報総研,2019)。需要家側では,エコラベルのある再生可能エネルギーの利用を主張する ことで,評判リスクを回避し,意識の高い顧客を獲得する効果を得ているという(みずほ 情報総研,2019)。
2 製品を介した電力のエコラベル
電気製品を使用する消費者がエコラベル認証のある製品を選択する場合,自己の経済的 便益と環境保全という,その他の社会的便益の両方を考慮する(Ward et al., 2011)こと が指摘されている。すなわち製品を介した電力のエコラベルには,社会的便益に関する情 報提供機能があることが示唆される。
Truffer ら(2001)は,アメリカの電力市場の自由化により,電力の環境特性に基づく 差別化が消費者戦略として重要であると強調している。また,電力にエコラベルを使うこ とで,消費者が調査や評価コストをかけずに,自分の選好を満足させる手段となり意義が あると主張している(Truffer et al., 2001, p. 895)。同研究では,ヨーロッパとアメリカ の既存の電力のエコラベルを比較して,エコラベルのデザインが簡素で,環境基準が比較 的低いか中程度であり,または製品関連の環境への影響の全体像を表すことを目的とする エコラベル戦略がより選択されていると分析している(Truffer et al., 2001)。また,初 期段階では迅速に設定されたエコラベルが市場での基準を設定するためにかなりの利点が あるが,中長期的には国民の意識が高まり,消費者は環境影響に関する包括的な情報を求 めるであろうと予想している(Truffer et al., 2001)。
Heinzle および W stenhagen(2012)は,ドイツの消費者を対象に,テレビのエネル ギー効率を示すエコラベルに関する選択実験による調査を行い,製品の電力消費の効率を 示すAからGの7段階の格付け尺度を,A+++,A++,A+,A,B,C,DというA ランクを拡大した格付け尺度に改訂すると,消費者の電力効率に対する認識が下がったこ とを明らかにしている。この結果をもとに,Heinzle および W stenhagen(2012)では,
消費者側にとって判断がつきやすい表示でなければ消費者の意思決定に役立たず,さもな ければエコラベルの役割でもある情報の非対称性を克服する能力が下がると批判している。
3 電力供給のエコラベル
電力供給のエコラベルについては,電力の発電源の認証や検証を提供する制度,あるい は自主的な第三者によって認められたエコラベルなど様々ある。様々なステークホルダー によるカーボンバランスの改善への取り組みや,消費者の電源への関心の高まりを背景に,
再生可能電力が市場商品として取引され,様々なスキームが混在している(Br ckl et al., 2011, p. 4)。再生可能エネルギー証書,取引可能な再生可能エネルギー証書,グリーンタ
グ, 再生可能エネルギークレジットなど,再生可能エネルギーの属性を説明するための 様々な用語が使われるが,おおむね同義とみなされる(Holt and Bird, 2005, p. 9)。
最初に,発電源証明(guarantee of origin: GO)は,最終消費者に電力が再生可能な 資源から作られていることを証明することを唯一の目的とするもので,情報開示と製品の 差別化に利用される(Br ckl et al., 2011)ものである。欧州連合(European Union: EU)
では 1996年に EU 指令(EU Directive 96/99/EC)で電力自由化が採択され,2001年の自 然エネルギー指令(Directive 2001/7/EC)では再生可能エネルギー源による電力量を2010 年までに 22%に引き上げることを目指しており,この指令で再生可能エネルギー電力の発 電源証明の発行が制度化された(ISEP, 2005, p. 3)。EU 加盟国は2009年の再生可能エネ ルギー促進指令(Directive 2009/28/EC)の下で,再生可能エネルギーの電源供給量を発 電源証明に基づいて管理している(小此木, 2016, pp. 12)。前述の2001年 EU 指令では発 電源証明の記載内容として,1
)再生可能エネルギー源,2
)発電期間,3
)発電場所や 容量,4
)補助金や支援の程度,5
)設備の稼動開始時期,6
)発行日・発行国・ID 番号 を定めている。
発電源証明は制御された発電量(1MWh あたり1GO)で電子的に発行され,供給さ れた電力の供給元の顧客への証拠としてサプライヤーによって取引およびキャンセル(使 用)される(Br ckl et al., 2011, p. 6)。発電源証明は電力起源を示す電子的データであり,
それ自体に経済的な価値はなく,それ自体を売買することは出来ないが,証書化すること で売買の対象となる。ドイツの場合,発電源証明の有効期限である1年間が経過した場合 か,あるいは電力の小売業者によって有効期限内の発電源証明が無効化された場合のいず れかの方法で発電源証明は証書化され,売買の対象となる(小此木, 2016, p. 5)。電気の 小売事業者は,自社が提供する電力メニューの必要量に応じて発電源証明を調達する必要 があり,相対・仲介所・取引所での取引を通じて発電源証明を購入するが,一方,消費者 には電力の請求書上に発電源証明に基づく電源構成が明記される(小此木, 2016, p. 9)。 すなわち,電気小売業者は電源を開示し,消費者は電源やそれに付随する様々な「環境価 値」要素の比較が容易となる(小此木, 2016, p. 12)情報開示のスキームといえる。
発電源証明と同様のものには,再生可能エネルギー証書(Renewable energy certificates:
REC)がある。再生可能エネルギー証書は,再生可能エネルギー源から生成される電力の 属性を表すものである。この属性は物理的な電力からは切り離されて運用され,再生可能 エネルギー証書と電力は別々に販売取引される。再生可能エネルギー証書は,商品電力の 地理的および物理的制限の影響を受けないという事実のために,再生可能エネルギー市場 の通貨ともみなされている。 再生可能エネルギー証書は, ユーティリティおよびマーケ ティング担当者が最終利用者の顧客に再生可能エネルギー製品を供給したり,再生可能エ ネルギーの義務などの規制を遵守していることを実証したりするために利用される(Holt and Bird, 2005, p. 1)。
ヨーロッパでは,発電源証明の導入前から,再生可能エネルギーのトレーサビリティー のための民間の仕組みである再生可能エネルギー証書システム(Renewable Energy Cer- tificate System: RECS)があった(Br ckl et al., 2011, p. 6)。このシステムは再生可能 エネルギーの生産の承認,および再生可能エネルギー証書の発行,取引,キャンセルを行 うもので,再生可能エネルギー証書は基本的に前述の発電源証明と同じであり, エネル ギーの一定の割合が再生可能資源から生産されていることを最終顧客に証明する機能をも つ(Br ckl et al., 2011, p. 6)。再生可能エネルギー証書は発電源証明が採用されるにつれ 段階的に廃止される可能性がある(Br ckl et al., 2011, p. 6)。
アメリカの再生可能エネルギー証書について,その歴史を振り返ると,カルフォルニア での1995年ごろの再生可能エネルギーのポートフォリオ基準のデザインを巡る議論や,
1997年のニュー・イングランドでの環境情報開示の議論にそのアイデアの始まりが見いだ
わが国の類似のスキームにはグリーン電力証書がある。 グリーン電力証書については正田
(2001)などが詳しい。
せる(Holt and Bird, 2005, p. 7)。当時の利害関係者は,電力供給者が主張する燃料の混 合と排出量のデータを検証しようとしたが,スポット市場からの電力購入においてはそれ が非現実的であるため,燃料と環境の属性を商品とは別に取引することが提案された(En- ron in cited at Holt and Bird, 2005, p. 7)。1998年には再生可能エネルギーだけの電力 の市場取引が Automated Power Exchange(APX)で始まり,1999年に電力はテキサ ス州で米国最初の再生可能エネルギー信用取引プログラムの規則が設定され,2000年には ボンネビル環境財団がグリーンタグを米国環境保護庁(EPA)に初めて売却し,2001年に スターリング・プラネットが全国的に再生可能エネルギーの認証製品を発表し,2001年の 後半には市場で新しい再生可能発電プロジェクトの開発を支援するために再生可能エネル ギー証書を購入するよう顧客に要請し始めた。しかし,証明書の小売マーケティングの急 増とともに,消費者の混乱のリスクと誤解を招く広告の可能性がすぐに明らかになり,取 引可能な再生可能認証製品の認証基準の確立が求められ, 再生可能エネルギー証書の Green-e 認証基準が2002年の初めに採用されることとなった(Holt and Bird, 2005, p.
8)。
アメリカの電力のエコラベルの制度は,消費者の知る権利と選択する権利を確保するた めの,電力全般の情報公開の制度として始まった(ISEP, 2005, p. 3)。アメリカ法定公益 法人協会(National Association of Regulatory Utility Commissioners: NARUC)
が,ニューハンプシャー州での1996年の電力小売りプログラムでの様々な問題をきっかけ に,電力の価格,価格差,電源構成,環境面の特性を,小売り客が容易に知ることができ るように,法的拘束力のある情報公開とラベルの基準を採用するようにアメリカ各州に求 める決議をし,その後,アメリカの電力のエコラベルともいえる Power Content Label を使った情報開示が1998年に世界に先駆けて始まった(ISEP, 2005, p. 7)。アメリカのほ とんどの州では電力供給者に情報公開を義務づけ,電源構成と排出物のラベルへの表示を 定期的に求めている。カリフォルニア州の供給電力の電源構成を顧客に報告する制度の Power Content Label では,カリフォルニアの標準的な電源構成と自社商品の電源構成 の宣言を比較できる形式をとる(ISEP, 2005, pp. 78)。
発電源証明,再生可能エネルギー証書,アメリカの電力のエコラベルとは別に,任意の 第三者が許可するエコラベルがある。発電源証明の場合は規制に基づくが,非営利団体が 提供する電力のエコラベルは民間の取り組みである。またこのような任意のエコラベルで は消費者に電力の発電源(透明性)についての情報を提供するだけでなく所定の追加性や 生態学的適格性基準を要求する場合がある(Br ckl et al., 2011, p. 6)。
これまで見てきた発電源証明や再生可能エネルギー証書を含め,何らかの再生可能エネ ルギーに関する情報が電力消費者に何らかのエコラベルの形式で提供される場合,再生可 能エネルギーにどれぐらい価格プレミアムが生じるかについて,これまで研究されてきて いる。Roe ら(2001)は,アメリカの電力市場での再生可能電力に対する価格プレミアム の重要な要因を分析した。同研究で,供給電力に占める新たに生み出された再生可能エネ ルギーの電源割合が1%増加すると,月次で1,000kWh の電力を利用する世帯での価格プ レミアムが年間6ドルであると分析している(Roe et al., 2001, p. 924)。また,温室効果 ガス排出量の削減の価値も感じられているものの,電力のエコラベルの認証やブランド名 が価格プレミアムの要因となっていると分析している。すなわち,環境便益が,消費者が 信頼できる認証機関によって保証されており,その保証がエコラベルのロゴの形式でコ ミュニケーションされているというブランド名の価値が認識されているという(Roe et al., 2001, p. 924)。Borchers ら(2007)らの研究でも再生可能エネルギー電力に対する消 費者の支払意思が明らかにされており,公共政策上,再生可能エネルギー源の発電構成の 情報開示が競争的な電力市場が開かれる点で重要であると指摘されている。Kaenzig ら
(2013)による2009年に実施したドイツの住宅の電力の消費者を対象とした調査では, 再 生可能エネルギーからの電力に約16%のプレミアムの支払意思が明らかにされている。同 調査では価格とは別に電力構成が最も重要な製品属性であることも明らかにされている。
Ⅳ 電力のエコラベルの比較分析調査
1 調査の目的と方法
調査目的は,電力のエコラベルのより望ましいデザインのために,最近の世界で普及す る電力に関連するエコラベルのデザインの特徴を比較分析することである。調査は2020年 5月に,Big Room 社(Big Room Inc.)の「エコラベル・インデックス」のデータベー スを利用し,「electricity」の用語で検索して11件のエコラベルを抽出した。加えて11件の エコラベルに関する情報をエコラベル・インデックスと各エコラベルの設立に関する組織 のウェブサイトも閲覧して入手した。11件のうち,「エコラベル・インデックス」で得た 情報をエコラベル・インデックスが参照元とする関連組織のウェブサイトで容易に確認で きなかった2件については除外した。その結果,合計9件を比較分析した。比較項目は,
エコラベルの設立年,普及地域,対象分野の数と区分(製品・サービス(エネルギー・エ ネルギー以外)), 情報内容(環境・サスティナビリティ),認証の独立性(第二者・第三
者),認証組織区分(営利・非営利・政府),認証機関名(本籍地)とした。
2 調査結果
調査結果は図表4および図表5のとおりであった。9
件のエコラベルは1988年から2016 年までに設立されていたが,うち4件が2000年以前から長期にわたり普及してきたもので あった。普及が見られる国・地域については,北欧諸国をはじめとする欧州諸国が多い。
その他,北アメリカ大陸諸国,旧ソ連諸国,オーストラリア,またアジア諸国での普及が 見られた。アジア諸国では日本,シンガポール,中国が含まれていた。広域で普及してい るもの(4件),国内で普及するもの(4件)と同数であった。注目できる点として EKOenergy のように欧州だけでなく旧ソ連諸国やアジアの国々を含む34か国で広範囲に普及している ものもあった。対象分野についてはエネルギー分野に特化したもの(6件), 製品も含む もの(3件)であった。エネルギー分野に特化したものの中では,Green-e Energy のよ うに,再生可能電力および再生可能エネルギー証書(REC)を対象とするものもあった。
図表4 電力関連のエコラベルの比較
情報内容 対象分野
普及の国・地域 設立年
名称
№
区分
数 持続可
環境 能性 サービス 製品
国・地域名
数 エネル
ギー以外 エネル
ギー
○
○
○
○ 11 デンマーク,フィンラ ンド,ノルウェー,ス ウェーデン
4 1988 Good Environmental Choice“Bra Milj val”
1
○
○
○
○
○ 16 オランダ
1 1992 Milieukeur: the Dutch en- vironmental quality label 2
○
○ 3
カナダ,アメリカ 2
1997 Green-e Energy
3
○
○ 1
オーストラリア 1
1997 GreenPower
4
○
○
○
○ 24 オーストラリア,チリ,
日本,シンガポール 4
2006 Carbon Neutral Prod- uct Certification 5
○
○ 1
ドイツ 1 2008 RenewablePLUS
6
○
○ 2
N/A N/A 2013 HKN NEU100
7
○
○ 欧州,旧ソ連諸国,ア1
34 ジア 2013 EKOenergy
8
○
○ 1
ドイツ 1 2016 European Green
9
出典 Big Room Inc., Ecolabel Index(2020年5月現在)および各エコラベルのウェブサイト(図 表6参照)。筆者一部加筆修正。
情報内容については環境を主に扱うもの(8件), 環境を含む持続可能性も扱うもの(1 件)があった。認証の独立性については第三者(7件)の方が第二者(2件)よりも多 かった。認証組織の区分では非営利(7件)が営利(1件),政府(1件)と比べて多かっ た。
ここで分析対象とした9件のエコラベルについて,その特徴的な点を前述の Big Room 社および各エコラベルのウェブサイトの情報(図表5)をもとに整理していきたい。
図表5 電力関連のエコラベルの認証の比較 認 証 エコラベルの名称
№ 組織名称(本籍地)
ウェブサイト 組織区分
独立性
政府 非営利 営利 第二者 第三者
Swedish Society for Nature Con- servation(SSNC)(スェーデン)
https://www.naturskyddsforeningen.se/
○ Good Environmental ○
Choice“Bra Milj val”
1
Milieukeur Foundation(SMK)
(オランダ)
https://www.milieukeur.com/275/
home.html
○
○ Milieukeur: the Dutch environmental quality label
2
Center for Resource Solutions(ア メリカ)
https://resource-solutions.org/
○
○ Green-e Energy
3
A joint initiative of the ACT, NSW, SA and VIC governments(オー ストラリア)
https://www.greenpower.gov.au/
home.aspx
○
○ GreenPower
4
Carbon Reduction Insitute(オー ストラリア)
https://noco2.com.au/
○ Carbon Neutral Prod- ○
uct Certification 5
Bischoff & Ditze Energy(ドイツ)
https://www.bd-energy.com/en/
renewables/europeangreen/
○
○ RenewablePLUS
6
Bischoff & Ditze Energy(ドイツ)
https://www.bd-energy.com/en/
renewables/europeangreen/
○
○ HKN NEU100
7
EKOenergy Network(フィンランド)
https://www.ekoenergy.org/ja/
○
○ EKOenergy
8
Bischoff & Ditze Energy(ドイツ)
https://www.bd-energy.com/en/
renewables/europeangreen/
○
○ European Green
9
出典 Big Room Inc., Ecolabel Index(2020年5月現在). 筆者一部加筆修正。
Good Environmental Choice“Bra Milj val”:グッド環境チョイス
Bra Milj val は,スウェーデン自然保護協会(Swedish Society for Nature Conservation:
SSNC)が1988年に設定したエコラベルである。Bra Milj val はスウェーデン語で「良い 環境選択」を意味し,英語で Good Environmental Choice を意味する。
このエコラベルを表示するには製品やサービスが特定の要求事項を満たしている必要が ある。このラベルの特定の要件や基準は,環境改善や市場への影響を考慮して様々な専門 家によって作成され,関係者の意見を聞いて設定されている。SSNC は,エコラベリング は最も重要な環境問題に焦点を当てた場合に最も大きな影響を与えるものと認識している。
また,エコラベルに要求する基準を段階的に高くし,目標を掲げ続ける方針をそのウェブ サイトでも主張している。SSNC では要求基準を満たしているかどうかを無作為抽出によ る検査で確認し,違反の場合,エコラベルのライセンスをはく奪することとしている。こ のエコラベルのスキームでは,エコラベルはあくまでも製品に対して適用されるものであ り,会社全体に適用されるというような消費者の誤認を防ぐためにエコラベルの使用方法 のルールを定めて広告している。
このエコラベルは,環境に大きな影響を与えるもので,かなり広く使用されている製品 とサービスを対象とする。SSNC は,環境に影響を与えるのは消費財だけではなく,旅行 や電力消費などの要因も環境に重大な影響を与えるとして,サービス分野をエコラベルの 対象としており,そのための旅客輸送,貨物輸送,電力供給に関する基準を設けている。
このエコラベルはスウェーデンで唯一の民間の電力のエコラベルであり,再生可能エネ ルギーによる発電を厳しく要求するラベルである。SSNC は1996年以前に建設された水力 発電所,太陽光発電,風力発電,バイオ燃料はすべて再生可能エネルギー源と見なしてエ コラベルを付けている。この活動は SSNC の全体的なエネルギープロジェクトの一部とさ れる。エコラベルが付けられたサービスの需要と供給は地理的に急速に拡大し,ノルウェー やデンマークに基準が広がっている。
Milieukeur: the Dutch environmental quality label:ミリユーカ オランダ環境品 質ラベル
Milieukeur は,製品とサービスを対象とするオランダの環境品質ラベルである。この エコラベルはオランダ政府のサポートを受けている。対象分野には野菜,ジャガイモ,果 物,ビール,豚肉,木や植物からコンクリート製品,消火器,花屋,肉屋,グリーン電力,
洗車を含んでおり,食品,消費者向け製品,サービスのための様々な環境基準を設けてい
る。
このエコラベルは非食品製品とサービスをより持続可能なものにするための統合的アプ ローチを採用しており,そのアプローチの一部として様々な持続可能性テーマ間の健全な バランスを目指している。一般的な持続可能性のテーマには気候変動とエネルギー,有害 物質や微粒子,包装と廃棄物,原材料,水質と水量,労働条件が含まれる。
このエコラベルの基準は,製品またはサービスのライフサイクル全体に関連し,持続可 能性への統合されたアプローチをとる。認証スキームは,原材料,エネルギーと水の消費,
有害物質,包装材と廃棄物,植物保護,肥料,動物福祉,自然管理,食品安全,従業員の ケアなど,持続可能性の問題に対応している。なお,持続可能性を対象としているのは,
9
種類のエコラベルの中で,このエコラベルのみである。またこの基準は,企業や市民社 会組織との協議のもとで作成され,維持されている。独立認証機関が製品とサービスがこ のエコラベルの要件を満たしているかを定期的に調べる。認証スキームの開発と改訂,製 品やサービスの検査と認証は, 製品認証のヨーロッパ規格(ISO / IEC 17065)に従って 行われ,認定はオランダ認定評議会の監督の下で行われる。
Green-e Energy:グリーン・イー・エナジー
Green-e Energy はアメリカとカナダの消費者と企業が電力使用による環境への影響を 低減していることを保証するエコラベルである。このエコラベルは,明確な指針,開示,
基準を通じて,新興の,規制されていない自主的な再生可能エネルギー市場における消費 者保護のために,1997年に設立されたものである。このエコラベルは,透明性のある基準 とその基準の設定と改訂に参加している数多くの利害関係者を有する, 再生可能エネル ギーのための厳しい消費者保護プログラムである。このプログラムの管理はアメリカの非 営利組織である Center for Resource Solutions が行っている。
GreenPower:グリーンパワー
このエコラベルのプログラムは,オーストラリアの消費者団体(Choice),グリーンピー ス,オーストラリア自然保護基金,世界自然保護基金などのエネルギー業界や様々な非政 府組織との協議を経て,共同イニシアティブとして1997年に設立され,オーストラリア州 政府機関のコンソーシアムによって管理されている。このプログラムは,家庭や企業の代 わりに電力供給者が再生可能エネルギーを購入することを可能にする唯一の自主的な政府 認定プログラムである。
このプログラムの目的は,オーストラリア全体に新しい再生可能エネルギー発電機の設 置を促進し,再生可能エネルギーに対する消費者の需要の増加を奨励すること,信頼でき る再生可能エネルギー製品に対する消費者の選択肢を提供し,消費者の信頼を高めること,
再生可能エネルギーと温室効果の問題に対する消費者の意識を高めること,発電に伴う温 室効果ガスの排出を削減することにある。このプログラムではエネルギーサプライヤーか ら供給される再生可能電力製品の厳しい環境基準および報告基準が設定されている。
Carbon Neutral Product Certification:カーボンニュートラル認証
このプログラムは,オーストラリアの民間企業である Carbon Reduction Institute が 提供するプログラムである。このプログラムは,製品の生産と流通で使用される原材料,
燃料,電力,廃棄物からの二酸化炭素排出量を包括的に計算する LCA ベースのカーボン 監査を要求する。認証機関はこの他にも複数のカーボンに関する認証を提供している。
RenewablePLUS:リニューアブルプラス
このエコラベルは前述の欧州の発電源証明に基づくグリーン電力のラベルで,2008年に ドイツで設立されたものである。このエコラベルは新しい設備や既存の設備の拡張,再生 可能エネルギー生産に関連する環境対策への投資に関するものである。このエコラベルの 認証は独立監査人のテュフラインランド社の監査によってなされる。 このエコラベルの ウェブサイトでは,電力供給を受ける潜在的顧客が再生可能エネルギーの発電源証明を得 ることで,環境的に健全で未来志向のエネルギー供給を受けており,環境配慮や CSR の 点でアピールできるため他社より競争優位になると主張する。
HKN NEU100:エイチケイエヌ・ニュー100
このエコラベルは前述の欧州の発電源証明に基づくグリーン電力のラベルで,2013年に 設立されたものである。このエコラベルは,新しい再生可能エネルギー設備が実際に使用 されてグリッドに統合されることを保証するものである。このエコラベルの目的は,再生 可能エネルギー源の新しい生産設備を促進し,拡大する再生可能エネルギー生産設備の蓄 積が実際にエネルギー供給システムとその開発に組み込まれるようにすることである。使 用されている発電源証明の100%は新規の施設からのものとし,稼働から6年以内のプラ ントだけが扱われる。このエコラベルの認証は独立監査人のテュフラインランド社の監査 によってなされる。
EKOenergy:エコエナジー
このエコラベルは欧州の EKOenergy ネットワーク(欧州20か国以上の30以上の環境 NGO のネットワーク)が管理する電力のラベルである。このエコラベルは欧州全体の市 場で機能し,またすべての欧州諸国の利害関係者が認める欧州全体の協議プロセスから生 まれた唯一の電力ラベルである。最初の EKOenergy 基準は2013年2月に承認されている。
EKOenergy として販売できるのは再生可能エネルギー源からの電力のみとされる。加え てこのエコラベルでは,消費者への電力生産地の情報,持続可能性と気候変動の要素も基 準に加えている。前述のネットワークによって設定された持続可能性要件に適合すること を求めている。このエコラベルはさらに欧州の最善実務を踏まえた基準を設定することや,
独立監査人が監査と検証を行うこととしている。
European Green:ヨーロピアン・グリーン
このエコラベルは2016年に多様で統一された欧州の再生可能エネルギー生産の促進を目 的に設立された。設立主体の Bischoff & Ditze Energy(BDE)は,2008年にドイツ市場 で独自のグリーンエネルギーラベルを確立した初めての民間企業であり,欧州の発電源証 明ビジネスのパイオニアであり,市場でグリーンエネルギーラベルを開発および確立する 多くのノウハウの蓄積を自負している。
このエコラベルは発電源証明に基づく再生可能エネルギー電力のラベルであり,欧州の エネルギー供給システムを1つに統合して相互接続する持続可能なエネルギーシステムに 移行することを支援することを目的とする。このエコラベルは多くの欧州諸国からのいく つかの再生可能エネルギー源のブレンドを組み込んでいる。このエコラベルが販売する発 電源証明パッケージは4つ以上の異なる再生可能資源からのエネルギーで構成されている ことや,4
つ以上の異なる国で製造されていることを要求する。このエコラベルは独立し た監査人であるテュフラインランド社の認定および監査を受ける。
Ⅴ 討 議
ソーシャルビジネスの社会影響を情報開示するためのエコラベルのデザインは,どのよ うにあるべきかを,これまでの議論と分析結果を踏まえて議論していきたい。まず,エコ ラベルはそもそも単純なシールやロゴを使用したラベルだけをいうものではなく,様々な 範囲と特質のあるものが近年発達してきている。よってエコラベルのデザインで考えるべ
きは,エコラベルで何を伝えるかという情報内容である。ソーシャルビジネスでいえば,
ビジネスの目的でもある持続可能性について,どのような内容を伝えるかという点の検討 が必要である。新電力の場合,再生可能エネルギーの電力量に占める割合や二酸化炭素排 出量のみでなく,地域の社会影響の内容について消費者が望んでいる可能性があるため,
例えば地域のエネルギー自給率や,雇用や経済への影響,地域の廃棄物問題の解決の度合 いなどの情報を付与することで,再生可能エネルギーを生産している地元では,より価格 プレミアムが大きくなる可能性がある。この点は,今後の検討課題に値するだろう。
次に,エコラベルや情報スキームが,通信チャネルを提供し,エコラベルのシグナリン グ効果によって情報の非対称性が解消するという役割を果たすとの議論を踏まえると,そ のような役割を果たすに十分な情報量はどの程度かについて検討する余地があろう。Truf- fer ら(2001)のエコラベルの比較の議論を踏まえると,中長期的な国民の意識の高まり により,消費者はより包括的な情報を求めるようになると予想できる。ただし,包括的な 情報においては情報量が多くなるため,情報の具体的内容や最適な情報量についての選好 を調べる余地があろう。
3つ目に,これまでの2つの議論の基盤となる,エコラベルの情報の信頼性に関わる問 題がある。 今回取り上げた世界のエコラベルの特徴として,非営利の組織による認証ス キームが多かった点が挙げられよう。どのような組織がどのような目的で,エコラベルの プログラムを設立し,それを運営管理するか,基準はどのように設定しているか,認証ス キームに誰が関与しているかという視点は,エコラベルの普及のポイントの一つであるか もしれない。また,今回調査分析した世界のエコラベルのうちには,政府がかなり関与し ているエコラベルも相当程度見られ,政策との連携の重要性が伺えた。仮にそうであれば エコラベルのデザインにおいて,認証のスキームにかかる項目や運営によっては,エコラ ベルの認証が増加し,市場での価格プレミアムを生む可能性もあろう。このような認証の あり方を検討するに,欧米を中心に普及しているエコラベルの付与組織とその運営に関す る有用な情報が必要となろう。国境を越えて普及しているエコラベルがあるが,これは,
エコラベルの運営如何によっては,国際的デファクト・スタンダードとなる可能性を示唆 するものといえる。
第三者による情報のデータによる裏付けや,あるいは継続して情報の信頼性を担保する 審査や厳しい基準への準拠に関する検証手続きがある場合に,エコラベルの情報の信頼性 が高まると消費者が考えるとするならば,そのことによってどの程度の価格プレミアムを 生むのか,さらに,自己宣言のラベルと認証のあるラベルとを比較して,どの程度の価格
プレミアムの差があるのか,という消費者の選好にかかる問題が解決できれば,エコラベ ルの認証,とりわけ第三者による認証の価値を高める基礎的情報となりうる。そのような 研究においては,Truffer ら(2001)の研究成果を踏まえて,わが国の状況を明らかにす ることも,関係者のエコラベルへの認識を変化させる可能性の面で非常に重要であろう。
世界のエコラベルの中には,単に再生可能エネルギーの利用にとどまらず,投資の促進 を目指したプログラムがみられたが,国際的に持続可能な開発目標の達成に向けた取り組 みが求められる中で,わが国でも同様に,様々な関係者における再生可能エネルギーの利 用や投資に対する関心が今後ますます高まる可能性があるとした場合に,投資促進を促す エコラベルのデザインについても検討が必要になるだろう。
本研究の限界として,現在,世界で普及するエコラベルの情報を入手するために民間企 業のウェブサイト上のデータベース情報を利用した点であるが,データベースの情報の正 確性を確認するためにエコラベルの認証組織のウェブサイトも閲覧して情報を補完的に入 手しており,調査目的の達成には問題はないと判断している。
Ⅵ 結 論
本稿では,ソーシャルビジネスの社会情報を開示できるエコラベルのあり方を検討する ために,エコラベルの分類の視点を吟味し,また電力関連のエコラベルを比較検討してき た。本研究は,ソーシャルビジネスの社会影響をどのように情報開示することがビジネス の利益や消費者の選択の自由度の拡大,情報の非対称性の低減という社会的便益を増加さ せるかという研究の予備的調査として実施した。第1章で問題の所在を確認し,第2章で エコラベルの分類の視点に関する先行研究をレビューした。第3章で電力エコラベルのデ ザインを検討し,第4章で実際の電力エコラベルを比較分析し,第5章でエコラベルのデ ザインの視点を議論した。
結論として,ソーシャルビジネスの社会影響についてエコラベルを通じて情報開示する 際に,より高い価格プレミアムを生み出すエコラベルのデザインは,情報内容(情報の項 目), 情報量, 情報の信頼性の観点から検討できるといえる。これらの観点から消費者の 選好の研究をすることに意義があるだろう。
謝 辞
本研究は,独立行政法人日本学術振興会の科研費15K03801の助成を受けたものです。
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