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生体電気インピーダンス法を用いた体水分動態の解明

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(1)

はじめに

 産婦人科の診療領域(研究領域)は主に腫瘍、周 産期、不妊・内分泌の3つの分野に分類されます

(図1)。すべての分野は女性の生涯と深く関わって おり、昨今の女性のライフスタイルの変化に伴って 様々な問題が出現しています。

 例えば、腫瘍分野では、女性の晩婚・少産といっ た女性のライフサイクルの変化に伴い、排卵が絶え 間なく繰り返されること、子宮内膜が増加すること などにより、卵巣がんの発生が増加しています。周 産期領域では、胎児の生命予後や出生後の発育に長 期にわたって影響を及ぼす流産・早産の頻度がわず かながらも増加傾向にあることが報告されています。

不妊・内分泌領域では、妊娠・出産年齢の上昇に伴っ て卵子の老化や着床不全などの問題が顕著となって きており、生殖補助医療が進歩した現在でも臨床的 妊娠率や生産率はほぼプラトーに達しているといっ た問題があります。

 このような現況の中、女性の生活に寄り添う産婦 人科医として、我々は日々研究にも邁進しています。

卵巣がんに対しては分子標的治療薬の開発、流産・

早産に対してはその原因となる絨毛膜羊膜炎の遺伝 子解析、不妊・内分泌領域では妊娠率を左右すると もいわれる着床不全の治療のために脂肪幹細胞を活 用した再生医療を行っております。

腫瘍~卵巣がん治療薬開発~

 当教室では、へパリン結合型増殖因子(HB-EGF が卵巣癌、乳癌、胃癌などの治療標的分子であるこ とを世界で初めて証明し、HB-EGF 特異的抑制剤

BK-UMの創薬開発を行っています。BK-UMは、第

Ⅰ相臨床試験で高い安全性を示し、有効性が期待で きる薬剤として全国5大学で第Ⅱ相臨床試験を行い ました。

 さらに我々はBK-UMによる創薬開発にともなう 治療適応を診断するミニアレイ(コンパニオン診断 薬)の作製にも力をいれています。癌増殖過程で特

異的にHB-EGF発現機構が亢進した場合においてマ

イクロアレイ解析を行うことで(図2)HB-EGF 発現を制御する分子の検索や、HB-EGF によって発 現抑制をうける因子の検索を行っています。

 一つはCGH Array です。3種類の細胞を用いて二

次元培養細胞と免疫不全マウスの皮下に細胞を移植 し、発育した腫瘍を回収し、DNA 抽出を行いまし た。これらの比較で、3種類の細胞で共通してDNA のコピー数が増加していた遺伝子を3つ同定でき、

このうち Y14 protein に着目して解析を行っていま

す。

 二つ目はExpression Array で、DNA を損傷する酸 化脂質を取り除くscavenger receptor X に着目しまし た。我々は、卵巣癌症例の腹水中には、酸化 LDL

―  ―11 研究機関研究所近況

基盤研究機関 先端分子医学研究所

福岡大学医学部産婦人科学教室の近況報告

漆山 大知、平川 豊文、清島 千尋 四元 房典、城田 京子、宮本 新吾

産婦人科

図1 産婦人科の診療領域と当科における研究

(2)

が非常に高い濃度で存在することを明らかにしてお り、このscavenger receptor X は、酸化LDL を細胞 内に取り込み、その脂質代謝経路がHB-EGFの転写 も活性化することがわかりました。今後はscavenger receptor X を発現している細胞から抗体産生の hybrid- omaを作製し、酸化LDL- scavenger receptor X によ

HB-EGFの分泌機構を抑制する抗体を選定してい

く予定です。

 三つ目は microRNA Array です。HB-EGF に関連 したmiRNA と臨床的予後に関連したmiRNA をアレ イ解析し、real-time PCR や卵巣がん細胞株を用いて 検証し、miR-A-3p を同定しました(特願2080

血液中のmicroRNA による卵巣がんの予後診断方

法)。今後は核酸医薬としての有効性を検証する非 臨床試験を実施し、臨床応用に向けての核酸医薬の 共同研究・開発を行い、DDS(Drug Delivery system)

の解決のための超音波治療(ナノバブル)開発も予 定しています。

周産期~

Microbiome

 従来からの培養法で検出が可能な微生物(B群溶 連菌、サイトメガロウイルス、HIVウイルスなど)

に関しては、子宮内感染が胎児の脳発育に影響を及 ぼして、出生後の脳性麻痺、精神発達遅滞、自閉症 スペクトラムなどの発症に関与していることが指摘 されています。しかしながら、現在多くの微生物は

従来の培養法では検出困難であり、そのような微生 物が宿主(胎児)とどのように相互作用して胎児や 出生後の疾患の発症に関与するかは全く不明である のが現況です。

 このような背景のなか、当教室では、ヒト羊水を

用いて16S rRNA 遺伝子解析を行い、子宮内感染群

で特徴的な細菌組成のパターンを同定し、その主因 となる11菌種を同定しました(特願2 絨毛膜羊膜炎関連微生物同定ならびに検出方法、

Urushiyama, et al. Scientific Reports, 2017。さらに現 在は、より簡便な方法で臨床応用できるよう研究を 進めるとともに、絨毛膜羊膜炎例の羊水中メタゲノ ム解析を通してファージやウイルス感染との関連解 析もについても検討する予定です(図3)

 また、上記研究と並行して、子宮内感染に関連す

る羊水中microRNA の発現解析を進めています。探

索されたmicroRNA についてはデジタル PCRを用い て妥当性を検証します。

不妊・内分泌~脂肪組織由来幹細胞(

ASCs

 21年に皮下脂肪組織の中から接着性の多能幹細 胞が世界で初めて同定されて以来、皮下脂肪組織由 来幹細胞adipose-derived stromal cells(ASCs)に関 する研究は急速に発展してきています。この皮下脂 肪組織由来の再生幹細胞は、性質・機能の面で骨髄 由来の間葉系幹細胞に非常によく似ていますが、そ

―  ―12

図2 癌増殖過程で特異的にHB-EGF発現機構が亢進した場合のアレイ解析

(3)

の最大の特徴は脂肪組織から採取される幹細胞が同 程度の骨髄液から採取される幹細胞の1,0倍も多く 含まれているという点です。また、種々の細胞減の 中でも比較的簡単にしかも安全に必要なだけの移植 細胞が採取できるという報告もあります。

 我々は着床不全の症例の子宮腔内にこのASCs 投与することで着床率の改善を得ると考えています。

ASCs の分離については、すでに多くの臨床研究で 使用されているサイトリ社のセリューション遠心分 離機を使用し、ASCs が採れることを確認しました

(図4)。予備実験を終了し、昨年末から福岡大学病 院で臨床試験として再生医療を開始し、1例目では 子宮内膜の活動性が増したことをヒトで初めて確認 できました。

―  ―13

図4 ASCsの分離と同定

図3 絨毛膜羊膜炎のマイクロバイオームと宿主の反応

(4)

はじめに

 小児交互性片麻痺(AHC)は希少な神経難治性疾 患である(1)。患者は月齢2以内より異常な眼球運動 を呈し、次第に発作性の交代性片麻痺や四肢麻痺が 出現し、自律神経症状や不随意運動を呈する。てん かんを発症する症例もあり、典型的症例では重篤な 精神運動発達遅滞や退行を生じ、中には寝たきりに 至ることも少なくない。 発症頻度は、10万人出生 に1名とされており、医療者の認知は高くなく、多 彩な症状を呈するため確定診断に至らない症例が多 い。しかし、我々を含めた遺伝子研究によりATPase ポンプ 3サブユニットをコードするATP1A3遺伝 子の変異に由来することが判明した(24)ATPase ンプは、活性化酵素の触媒成分であり、細胞膜を隔 てて細胞内へのナトリウムイオンと細胞外へのカリ ウ ム イ オ ン の 交 換 輸 送 と 連 動 するAdenosine-5’- triphosphateATP)の水酸化を触媒する。この働きに より、細胞内外でのナトリウムイオンとカリウムイ オンの電気勾配を維持する。この電気勾配は恒常性、

様々な有機物や無機物とナトリウムイオンとの共輸 送、神経や筋肉の電気的興奮に重要な役割を果たす。

ATP1A3 遺伝子変異の同定以降、遺伝子診断は可能

となった。ATP 1 A 3 遺伝子の異常は AHCのみなら Rapid-onset dystonia-parkinsonism RDP)にも認め、

近年では、Cerebellar ataxia, areflexia, pes cavus, optic atrophy, and sensorineural hearing loss CAPOS)症候 群でも見られることが判明した(5,6)。現在では、AHC ATP1A3- related disorders の一つの表現型との概念

となりATP1A3遺伝子異常で起こる疾患の網羅的解析

が求められている。そこで、継続してAHCAHC 類似疾患に対してATP1A3 遺伝子変異の探索を行っ た。

 また、原因となる遺伝子が判明した一方で、AHC 対する有効な治療法は乏しく、多くの症例では抗て

んかん薬が使用されている。しかし、非てんかん性 発作での効果を示すものはなく、多くは発作予防と しての効果が報告されている。非選択性カルシウム イオンチャネルブロッカーである塩酸フルナリジン は、長期治療薬として一般的に使用されている。塩 酸フルナリジンは、麻痺発作の頻度の減少と発作強 度の低下に有効であることが報告されている。しか しながら、依然として小児交互性片麻痺のゴールド スタンダード治療は存在しない。AHCで同定された 変異の中には、ATPポンプ活性を低下させることが 報告されている。これらの ATPase ポンプの機能か ら、ATPの投与により、Na/KATPaseの機能不全 を改善し、症状を緩和するとの作業仮説を立てた。

この作業仮説に基づき、ATP1A3 遺伝子変異をもつ AHCの1症例に対して経口 ATP 製剤による治療効 果を検証した(7)

方法と対象

 60名のAHC患者と疑い患者、1名のCAPOS 候群、1名のCAPOS症候群非典型症例の計62症例 に対して、ATP1A3 遺伝子の従来の PCRシークエン ス法と次世代シークエンサーによるATP1A3遺伝子 を含む遺伝子パネルシークエンスを実施した。

 経口 ATP製剤投与については、共同研究施設で倫 理委員会の承認のもと、ATP 1 A 3 遺伝子にDe novo スプライシング変異(c. 25421GA)が同定され た7歳の男児に対して、経口 ATP製剤で2年間の治 療を行った。治療効果は、フォローアップ期間での 片麻痺と精神運動発達の改善を評価した。副作用に 対しては定期的に評価した。

結 果

 49例(8.7%)で ATP1A3 遺伝子に変異を見出し た(表1)。両親の検体が利用できた44名では全て

―  ―14 研究機関研究所近況

基盤研究機関 てんかん分子病態研究所

小児交互性片麻痺の遺伝子解析と新規治療戦略

てんかん分子病態研究所 石 井 敦 士

(5)

De novo 変 異 で あった。最 も 高 頻 度 に 認 め た p.

Glu815Lysは16名(3.7%)、次にp. Asp801Asn の1 名(2.6%)であった。この2つで30名(6.3%)を 占める結果となった。また、p. Gly755 ではCys, Ala, Serと異なるアミノ酸への置換でもAHCに至ること が判明した。p. Gly123Arg をもつ発端者の母は軽症 型の AHC 症例であったが検体が提供されていない ため変異の確認が取れなかった。p. Glu818Lys 変異

CAPOS 症候群や CAPOS を満たさない症例にも

見られた。

 経口 ATP製剤投与の症例では、初診時の3歳時は 右側の片麻痺を繰り返し、動揺性歩行と転倒しやす さがしばしば見られた。通常は10分、長いもの で40分間程度継続する片麻痺症状を示していた。日 に10回以上の頻度で生じ、最大2週間続くことも あった。筋力はMMT3/5で、筋緊張の低下が見られ、

間欠期に回復はなかった。時折、左眼の斜視があっ たが、ジストニア発作や眼振や自律神経失調症状は 見られなかった。臨床所見と各種検査での除外診断 より、AHCと診断され、フルナリジン 5mg/day 1年間治療を行ったが発作頻度や持続時間に明らか な改善はなく、フルナリジンは中断となった。

 6歳時より経口 ATPの投与を開始した(図1) 初期量は 20mg/day で1週間後に倍量の 40mg/day 分2とした。片麻痺症状が増悪した際は、10日間 40mg/dayで経静脈的に投与した。初期維持量は20mg 1日2回(2mg/kg/day)で、ATP開始以前に比べて 発作回数も持続時間も低下した。呼吸器感染や疲労 により片麻痺発作が誘発された際にも、経静脈的ATP 製剤投与後の23日で治まった。次第に、100 mg 1日3回(15mg/kg/day)まで増量した。発作の頻

度は著名に減少し、1か月ないこともあった。160mg 1日3回(24mg/kg/day)とした際には、右上下肢 に数分程度持続する軽度の麻痺が見られた程度で、

2か月間で僅か3回しか見られなかった。また、MMT は4/5まで改善した。ATP投与量の増加と共に、片 麻痺発作の頻度は有意に減少し、持続時間も短縮し た。ATPによる治療により、小児交互性片麻痺症状 は著名に改善し、精神運動発達も改善した。また、経 ATP の 最 大 投 与 量 は 1日25mg/kgと なった が、

ATP 治療は忍容性が高く、中断の要望はなかった。

2年間の投与にわたって、嘔気や嘔吐、腹痛、胃腸障 害といった副作用はなく、特記すべき訴えもなかっ た。アルブミン、ビリルビン、電解質は年2回確認

―  ―15

表1. AHCCAPOS症候群でのATP1A3遺伝子変異 n (%)

AHCN60

.

p. Glu815Lys

.

p. Asp801Asn

. p. Gly947Arg

. p. Gly755Ser

. p. Thr771Asn

. p. Ser137Tyr

. p. Pro808Leu

. p. Met738Lys

. p. Met724Lys

. p. Ile274Asn

. p. Gly755Cys

. p. Gly755Ala

. p. Gly751Glu

. p. Gly358Asp

. p. Cys927Tyr

. p. Cys927Phe

. p. Asp992Tyr

. p. Asp923Asn

.

変異陽性 CAPOSN2

. p.Glu818Lys

図1.片麻痺エピソードの頻度とATP 投与用量

(6)

し、異常はなかったが、尿酸値が上限よりやや高値 だった。

考 察

 AHCではATP1A3 遺伝子に8.7%の頻度で変異を 検出する。また、なかでもp. Glu815Lysp. Asp801Asn で6.3%に達しいる。p. Gly755 では、異なるアミノ 酸への置換でも発症する。また、CAPOS症候群や CAPOSを満たさない非典型症例でも同じp. Glu818Lys で発症することから、変異特異的な表現型が存在す ることが示唆された。ATPaseの特定の部位の障害が AHCの発症や症状に関与していると考えられた。そ のため、非典型例を含めさらなる網羅的ATP1A3 伝子の解析が求められる。

 AHCの男児での経口 ATP 製剤による治療に対し て2年間のフォロアップを行った。経口 ATP製剤に よる治療は、AHCに対する高い有効性を示す治療の 1つであると考えられた(7)

参考文献

1.Krageloh I, Aicardi J. Alternating hemiplegia in infants: report of five cases. Developmental medicine and child neurology. 198022(6)784-91.

2.Rosewich H, Thiele H, Ohlenbusch A, Maschke U, Altmuller J, Frommolt P, et al. Heterozygous de- novo mutations in ATP1A3 in patients with alternating hemiplegia of childhood: a whole-exome sequencing gene-identification study. The Lancet Neurology. 201211(9)764-73.

3.Aminkeng F. Mutations in ATP1A3 cause alter- nating hemiplegia of childhood. Clinical genetics.

201383(1)32-3.

4.Ishii A, Saito Y, Mitsui J, Ishiura H, Yoshimura J, Arai H, et al. Identification of ATP1A3mutations by exome sequencing as the cause of alternating hemiplegia of childhood in Japanese patients. PloS one. 201382e56120.

5.de Carvalho Aguiar P, Sweadner KJ, Penniston JT, Zaremba J, Liu L, Caton M, et al. Mutations in the Na+/K+ -ATPase alpha3 gene ATP1A3 are as- sociated with rapid-onset dystonia parkinsonism.

Neuron. 2004432169-75.

6.Demos MK, van Karnebeek CD, Ross CJ, Adam S, Shen Y, Zhan SH, et al. A novel recurrent mutation inATP1A3 causes CAPOS syndrome. Orphanet journal of rare diseases. 2014915.

7.Ju J, Hirose S, Shi XY, Ishii A, Hu LY, Zou LP.

Treatment with Oral ATP decreases alternating hemiplegia of childhood with de novo ATP1A3 Mutation. Orphanet journal of rare diseases. 2016 11(1)55.

―  ―16

(7)

1.はじめに

 ヒトの身体構成組織は脂肪と除脂肪に大別され、

これらの割合は水中体重法や空気置換法といった密 度法や、二重X線吸収法(DXA 法)によって評価 することができる。一方、より簡便な方法として、

身体に微弱な電流を流して得られる電気抵抗値から 身体構成成分量を推定する生体電気インピーダンス 法がある。他の方法と比べ安価であり、非侵襲的に 測定できることから家庭用の体重計などにも組み込 まれ、アスリートから有疾患者まで広く利用されて いる。

 身体の抵抗値は、気温、姿勢、直前の食事や運動 など身体構成成分量の変化とは独立した要因によっ ても変動しやすい1,2)。とはいえ、生体電気インピー ダンス法により推定される身体組成値は標準法(安 定同位体希釈法)に比べてポピュレーションレベル では比較的良い精度を有することが報告されている

3)。さらに、他の先行研究では、生体電気インピー ダンス法で推定された細胞内液量が運動中や運動直 後に生じる骨格筋の無機リン酸/クレアチンリン酸 比や筋 pH の変化と呼応するように変化する様子が 報告されている4)。このように、上記の測定条件を 厳密に統一することで、細胞内外で生じる微細な体 水分の変動をBISで観測できる可能性がある。

2.グリコーゲンと体水分

 グリコーゲンはグルコース残基が結合した貯蔵多 糖であり、人体においては主に骨格筋、肝臓、脳に 存在する。骨格筋に貯蔵されたグリコーゲン(筋グ リコーゲン)は主に運動時の ATP産生に用いられて おり、長時間に及ぶスポーツ種目では筋グリコーゲ

ン量の多寡がパフォーマンスを決定する一要因とな 5,6)

 筋グリコーゲンは、数日間の高炭水化物食摂取に より貯蔵量を一時的に増加できる(カーボローディ ング)7)。しかし、筋グリコーゲン量を測定するには 筋生検法や炭素磁気共鳴分光法など専門的な機器や 技術が必要となるため、貯蔵量が増えたか否かの判 別は難しい。ところで、カーボローディングにより 筋グリコーゲン量が増加した場合、体水分量も増加 することが報告されている8)。先行研究の結果から、

筋グリコーゲン1g あたりおよそ 24g の水が結合す ると推定されており、カーボローディング時には全 身でみると 12kg の体水分量が増加すると推算で きる。視点を変えれば、体水分量状態から筋グリ コーゲン量の変化を間接的に推定できる可能性があ る。

3.筋グリコーゲン量と体水分量に関する研究  我々は、独立行政法人日本スポーツ振興センター 国立スポーツ科学センターと協働で、カーボローディ ング時に生じる体水分量の変化を生体電気インピー ダンス分光法(bioimpedance spectroscopy; BIS)を用 いて検出できるか調査した。さらに、カーボローディ ング時の全身および各身体部位の体水分動態を調査 し、その特徴を明らかにすることを試みた。

4.研究方法

 本研究は8名の健常男性を対象に行った。対象者 はおよそ90分間の長時間高強度自転車運動を行った 後、3日間にわたり体重 1kgあたり12g/日の炭水化 物を摂取した。

―  ―17 研究機関研究所近況

基盤研究機関 身体活動研究所

生体電気インピーダンス法を用いた体水分動態の解明

―カーボローディング時における検討―

身体活動研究所 スポーツ科学部助教 塩 瀬 圭 佑

身体活動研究所長 スポーツ科学部教授 檜 垣 靖 樹

身体活動研究所 スポーツ科学部名誉教授 田 中 宏 暁

(8)

 運動前、運動直後、1、2、3日後に炭素磁気共 鳴分光法(13C-Magnetic resonance spectroscopy, 13C- MRS)を用い、大腿部の筋グリコーゲン量を測定し た(図1)。測定には3テスラMR装置(シーメン ス社、Verio)を用いた。直径10cmの表面コイルを 用いて13Cスペクトルを計測し、基準溶液(120mM グリコーゲン+50mM 塩化カリウム)と比較するこ とで筋グリコーゲン量を算出した9)

 運動前と運動3日後に全身と各身体部位の体水分 量を測定した。全身水分量の測定には、標準法であ る安定同位体希釈法とBIS(ImpediMed社、SFB7)

を用いた。上肢、体幹、下肢部の部位別水分量の測 定にはBISを用いた。安定同位体希釈法では体重

1kgあたり 0.06g の重水を経口投与し、投与3、4

時間後に採血を行った。その後、血清中の安定同位 体濃度を安定同位体比質量分析計を用いて測定し、

体水分量を算出した。BIS では cole-plot Hanai mixture theory を基に細胞内液(intracellular water, ICW、細胞外液(extracellular water, ECW)を算出 した0)

5.研究結果

 筋グリコーゲンは、運動前に比べ運動直後で顕著 に低下した(P<0.01)。運動1日後には運動前の値 まで回復し、2日、3日後には運動前に比べ高値を 示した(P<0.05)

 安定同位体希釈法により推定された全身水分量は、

運動前に比べ運動3日後で増加した(運動前39.3±

3.2L, 運動3日後40.2±3.0L; P0.01BIS により 推定された全身水分量は、ECWでは有意な変化は なかったが(運動前16.4±1.5L, 運動3日後16.4±

1 . 5 LICWでは運動前に比べ運動3日後に増加が 認められた(運動前22.7±2.0L, 運動3日後23.0±2.1L;

P0.05

 BISにより推定された部位別水分量を表1に示す。

簡潔に、上肢と体幹部のICWECWは運動前に比 べ運動3日後で有意な変化はなかった。一方、下肢 では運動前と比べてECWに変化はなかったが、ICW は運動3日後に有意に増加した(P<0.05)

6.考察とまとめ

 本研究では、カーボローディング時の全身、およ び各身体部位の体水分動態を安定同位体希釈法と BISを併用して調査した。

 運動後に3日間の高糖質食を摂取することで、先 行研究の結果と同様に7)、筋グリコーゲン量の増加 とそれに伴う全身水分量の増加が認められた。高分 子であるグリコーゲンは細胞内で水分と結合し(結 合水)、貯蔵されるという構造的特徴があると考え らえている。したがって、本研究で観測された体水 分量の増加は、グリコーゲン結合水の増加に起因す ると推察される。

 本研究では、安定同位体希釈法と同様にBISでも 体水分量の増加が認められており、カーボローディ ング時に生じる体水分の変動をBISでも捉えうるこ とが示された。さらに、BISを用いた部位別体水分 量測定により、カーボローディング時には部位特異 的な細胞内液量の増加が生じることが明らかになっ た。この結果は、カーボローディング時における体 水分量の増加が細胞内の結合水の増加に起因すると

―  ―18

図1.13C-MRSを用いた筋グリコーゲン量の測定

表1.各身体部位の細胞外液・細胞内液量の変化 変化率(%)

3日後 運動前

-1.3±2. .0±0.

.2±0. 上肢(L

ECW

-1.8±2. .4±1.

.6±1. 体幹(L

 1.0±6. .3±0.

.9±0. 下肢(L

 1.6±3. .3±0.

.0±0. 上肢(L

ICW

 3.0±3. .3±1.

.9±1. 体幹(L

 3.5±3. .9±0.*

.8±0. 下肢(L

平均値±標準偏差.*運動前との差 P0.05 ECW, 細胞外液量; ICW, 細胞内液量

Shiose K et al.,J Appl Physiol:,.改変)

(9)

いう考えを支持するものである。

 カーボローディング期間中は、多量の糖質摂取の ため総エネルギー摂取量が通常時を超える場合が多 く、その間の身体組成変化はアスリートにとって懸 念材料となる。BISを用いることで、カーボローディ ング時における体重の増加が筋グリコーゲン量とそ れに伴う体水分量が増加によるものか、あるいは脂 肪量などの他組織の増加によるものかを推定でき、

カーボローディングの成否を判別する一助となる可 能性がある。今後、より多くの対象者と多様な条件 下において調査を継続したい。 

7.参考文献

1)Baumgartner RN, Electrical impedance and total body electrical conductivity, In: Human body compo- sition, Roche AF, Heymsfield SB, Lohman TG, Eds.Human Kinetics, Champaign, IL, 79-108, 1996.

2)Shiose K, Yamada Y, Motonaga K, Takahashi H, Circadian variation of extracellular and intracellular resistance of the leg, arm, and trunk in healthy humans: A segmental bioimpedance spectroscopy study. Biomedical Physics & Engineering Express 3: 2017.

3)van Marken Lichtenbelt WD, Westerterp KR, Wouters L, Luijendijk SC, Validation of bioelectrical- impedance measurements as a method to estimate body-water compartments. Am J Clin Nutr60: 159- 166, 1994.

4)Raja MK, Raymer GH, Moran G, Marsh G, Thompson RT, Changes in tissue water content measured with multiple-frequency bioimpedance and metabolism measured with 31 P-MRS during progressive forearm exercise. Journal of applied physiology101: 1070-1075, 2006.

5)Bergström J, Hermansen L, Hultman E, Saltin B, Diet, muscle glycogen and physical performance.

Acta Physiol Scand71: 140-150, 1967.

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7)Bergström J, Hultman E, Muscle glycogen synthesis after exercise: an enhancing factor localized to the

muscle cells in man. Nature210: 309-310, 1966.

8)Olsson KE, Saltin B, Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta phys- iologica Scandinavica80: 11-18, 1970.

9)Takahashi H, Kamei A, Osawa T, Kawahara T, Takizawa O, Maruyama K, 13C MRS reveals a small diurnal variation in the glycogen content of human thigh muscle. NMR in biomedicine 28: 650-655, 2015.

0)De Lorenzo A, Andreoli A, Matthie J, Withers P, Predicting body cell mass with bioimpedance by using theoretical methods: a technological review.

Journal of Applied Physiology82: 1542-1558, 1997.

―  ―19

(10)

【背 景】

 再生医学研究所で掲げる重要なテーマの一つが1 型糖尿病に対する細胞移植療法の膵島移植である。

1型糖尿病は若年発症性の糖尿病で、自己免疫によ り膵臓内におけるβ細胞が破壊されることにより発 症する。体内唯一のインスリン産生細胞であるβ細 胞が完全に破壊され消失するためにインスリンが枯 渇して生じる糖尿病である。1型糖尿病患者は発症 後、血糖値のコントロールのためにインスリン注射 を余儀なくされるだけでなく、命に関わる重大な合 併症である無自覚性低血糖発作に悩まされる。現在、

強化インスリン療法や24時間持続インスリンポンプ などの新規の血糖コントロール療法も開発されては いるが、それでもなお無自覚性低血糖発作に悩まさ れる患者が存在する。膵島移植はこの様な患者を救 済するための究極的治療の一つとして選択される。

本邦では、現在「重症低血糖発作を合併するインス リン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナー からの膵島移植」が日本医療研究開発機構(AMED)

の臨床研究・治験推進研究事業の一つとして進行中 であり、当教室も参画して症例を集積しているとこ ろである。一方、世界的にはカナダのアルバータ大 学を中心に広く行われており、膵島移植の治療法と しての重要性は疑う余地もない。

 現行のヒト臨床膵島移植は、ドナー膵臓から単離 した膵島を門脈経由で肝臓に移植し生着させる手法 で行われている。この手法は13年Kemp らのラッ トによる成功報告に基づき始められ、現在もヒト膵 島移植の代表的手法として確立されている。移植部 位としての肝臓のメリットは、血流が豊富で生着し やすく、また膵島から分泌されたインスリンが最初 に肝臓で代謝を受けるために、膵臓内の膵島が分泌

したインスリンが肝臓において代謝を受けるのと同 様の経路を辿り、他の移植部位に比べてより生理的 であることにある。しかしながら、肝臓への膵島移 植は経門脈的に行われるため、血液中の凝固補体 系 の 活 性 化 を 受 け て 生 じるInstant Blood Mediated Inflammatory Response(IBMIR)を惹起し、移植し た膵島の約70%が破壊されてしまうことが知られて いる。また、免疫担当臓器である肝臓では、NK 胞などの自然免疫が強く作用し移植膵島は障害を受 け、障害を受けた移植膵島から放出されるDamage- associated molecular patternsDAMPs)により自然免 疫反応はさらに増強し、炎症反応の負のスパイラル が生じる(Itoh, Pancreas, 2015)。そのため、肝臓は 移植部位として決して理想的な部位とは言い難い。

これまでに様々な移植部位(筋肉内、皮下、腹腔内、

腎被膜下、骨髄、眼球、精巣、大網、胃壁など)の 研究が行われてはいるが、いずれも現実的な移植部 位としては確立されていない。一方、われわれはこ れまでに新規の移植部位として脾臓に着目して研究 を進めてきた。これは、脾臓細胞を糖尿病自然発症 モデルであるNODマウスに投与することで一度発 症した糖尿病が治癒し、その効果が永続的にみられ、

さらに膵臓内で膵島が再生していることを過去に報 告したことに端を発する(Kodama, Science, 2003) 再生医学研究所発足以来、私たちのグループは脾臓 内膵島移植に関連し、2本の国際論文(Itoh, PlosONE, 2017; Itoh, Xenotransplantation, 2016)を発表した。本 誌ではそのうち1篇について紹介し活動報告とする。

【目 的】

 現在臨床で行われている肝臓への膵島移植と、わ れわれの注目している脾臓内への膵島移植について

―  ―20 研究機関研究所近況

基盤研究機関 再生医学研究所

移植効率最適化を目指した新規移植部位としての 脾臓内膵島移植の有用性について

吉松 軍平、山田 哲平、坂田 直昭、小玉 正太

医学部 再生・移植医学講座

(11)

その移植効率、および早期炎症反応に与える影響を 同種同系マウス移植モデルにて検証した。

【方 法】

 ドナー、レシピエントには、雄性 C57BL/6マウ スを用いた。糖尿病マウスはStreptozotocinを尾静注 することで作成し、その後血糖値が400mg/dL以上 となったマウスをレシピエントとして用いた。膵島 単離は全身麻酔下にドナー膵臓にコラゲナーゼを注 入し、摘出した膵臓を37℃培養器に入れて消化。消 化した組織から膵島を回収した後、これらを一晩培 養し、作成した糖尿病マウスに移植した。移植膵島 数は20、10、10、50個とし、移植後の血糖値を モニタリングした。また移植部位における炎症反応 の影響を見るために移植後6時間の採血から血漿成 分を遠心分離し血漿中のサイトカインのタンパク定 量を行った。さらに、血糖コントロール下における 脾臓内膵島移植が、血糖コントロール治療を終了し たのちに血糖値をコントロールするのに必要な最低 膵島数を見いだすために、25個の脾臓内膵島移植と 0個の腎被膜下膵島移植を同時性に行い、その後 約8ヶ月後に移植した腎臓を摘出して脾臓内に移植 した膵島の機能評価を行った。

【結 果】

1.血糖値正常値化に必要な移植膵島数に関する検

 脾臓内への膵島移植では50個の膵島によって血糖

値が正常値化するが、肝臓内への膵島移植では20 個、腎被膜下への移植では100個の膵島が必要であ ることが分かった(Figure 1)。すなわち、脾臓内膵 島移植では、臨床で行われている肝臓内への移植と 比較して25%の膵島数で血糖値が正常値化すること を意味する。

2.移植部位が与える炎症反応への影響

 移植後6時間の血漿サンプルからサイトカインの タンパク定量を行ったところ、脾臓内への膵島移植 においてMCP-1, G-CSF, HMGB-1をはじめとして主 要なサイトカインの抑制がみられた(Figure 2)

3.血糖コントロール下における脾臓内膵島移植の 持つ可能性についての検討

 STZ誘導糖尿病マウスに25個の脾臓内膵島移植を 行い、同時に血糖値を完全にコントロールするため に10個の腎被膜下膵島移植を行っておき、約8ヶ 月後にこの腎臓を摘出した(Figure 3。これにより 脾臓内に移植した膵島による血糖コントロールが観 察できるのだが、11例中8例が腎臓摘出後も正常血 糖を示し、血糖コントロールを厳密に行うことによ り、理論上ではあるが、脾臓内膵島移植では肝臓へ の移植と比べて、約1.5%の膵島数で血糖値を正常 値化できる可能性が見いだされた。また、脾臓内の インスリン含有量は移植時と比べて明らかに増加し ており、膵島の再生分化、もしくは膵島のインスリ ン産生機能増強の可能性が示唆された。

―  ―21

Figure 1. 血糖値正常値化に必要な移植膵島数の検討

(12)

【考 察】

 本研究により脾臓内膵島移植が臨床で行われてい る肝臓内への膵島移植や、実験手技において頻繁に 用いられている腎被膜下移植と比較して明らかに少 ない膵島数にて移植後の血糖をコントロールするこ とができることを証明した。そのメカニズムとして、

早期の炎症反応を抑制すること、また、脾臓内での 移植膵島の分化誘導もしくは機能増強が働いた可能 性が考えられる。実際に、マイクロアレイにより脾 臓の分化増殖に関わる master regulator gene である

Tlx 1(Hox 11)関連遺伝子の検索を行ったところ、

増殖に関わるRrm2b と調節性T細胞やマクロファー ジなどで抗炎症に関わるPla2g2d の高発現が認めら れている。

【結 語】

 われわれは脾臓内膵島移植の有用性をマウスの同 種同系移植モデルを用いて証明し、そのメカニズム についての検証を行った。再生医学研究所の膵島グ ループとしては今後、脾臓内自家膵島移植の妥当性 について大動物実験を施行する予定である。

―  ―22

Figure 2. 移植部位が与える炎症反応への影響

Figure 3. 血糖コントロール下における脾臓内膵島移植の持つ可能性

(13)

自己紹介

 平成30年4月より、資源循環・環境制御システム 研究所の管理事務室に入職致しました。

 昭和31年12月に北九州市の八幡で生まれ、昭和5 年に福岡大学工学部化学工学科を卒業。前職は、福 岡クロス工業㈱と言う電線被覆テープのメーカーに 勤務していました。

 約6年間福岡の工場勤務後、大阪営業所に約8年、

そして東京営業所に約22年間、主に営業を担当、一 昨年12月に定年退職し、現在61歳です。

 今までに培ってきた営業での経験を活かして、母 校と郷土に貢献すべく、少しでもお役に立てればと 思い頑張ってまいりますので、よろしくお願い申し 上げます。

資環研に入職して思う事

 さて、私が生まれて育った昭和30年から40年代の 北九州市は、4大工業地帯の1つとして高度成長の

波に乗り、凄い勢いで繁栄していました。

 現在『11』のプレートが掲げられた八幡東区に ある東田第一高炉の現役時代、煙突からモクモクと 勢いのある煙を毎日眺めて育ちました。 

 毎年11月に開催される製鐵所の企業祭は盛大で、

サーカスや見世物小屋が出店し、全盛期の歌手が大 谷体育館のステージで歌い、道路は露店で埋め尽く され、その賑わいは、今思い出しても現在の首都圏 の人混みにも負けない状態だったのを覚えています。

 また、北九州工業地帯繁栄のかけ橋として、東洋 一の吊り橋、若戸大橋が完成し、誇りに思ったもの でした。

 当時、北九州市の繁栄の象徴が煙で、盆踊りの歌 などの歌詞にも使われていました。

 『今日は、皿倉山の何合目までスモッグが掛かった。

『今日は、風向きが悪いから洗濯物が干せない。』と 言うのは、普通の会話で、父が製鐵所勤めだった事 もあり、全く違和感のない会話でした。

 また、子供の頃、紫川の名前は、川の水が紫色を しているからだと思いこんでいました。

 洞海湾の海水は真っ黒で、これだけ工場に囲まれ

―  ―23 研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 資源循環・環境制御システム研究所

新任のご挨拶と今年の活動

資源循環・環境制御システム研究所 管理事務室 新室長 白 石 信 之

七色の煙が空を蔽う鉄都八幡

*北九州市の観光(昭和38年2月10発行)より 東洋一の吊橋「若戸大橋」が完成

*北九州市の観光(昭和38年2月10発行)より

(14)

ていたら仕方ない事だと思っていました。

 今思えば、繁栄の裏側では、環境汚染が深刻で、

私たちの世代は、有害物質を多く体の中に取り込ん でおり、決して長生き出来ないのでは無いかと身を 案じています。

 昨年2月に、約40年振りに北九州市へ移住と言う 形で帰って来て、改めて、紫川の水が綺麗になって いることに、大変驚いています。

 また、洞海湾に魚が生息していることには、あの 汚れた水を知っている私には、今でも信じられない のが正直な気持ちです。

 いくら溶鉱炉や、工場が減っているとは言え、ま だ、洞海湾の海底には、当時のヘドロや重金属など が沈んで居るのかも知れませんが、あの死ノ海をよ みがえらせたのは、凄い事だと、感銘しています。 

 幼少の頃、北九州市の環境汚染の真っただ中で生 活してきた私にとって、きれいな水、青い空、美味 しい空気を取り戻すことの重要性を十分認識してい るつもりです。

 縁あって、資源循環・環境制御システム研究所に ご採用頂き、勤務する事になりました。

 資源循環と環境制御の技術を勉強して、再び環境 を汚染させない様、広報活動を行い、お手伝いがで きればと思います。

資源循環・環境制御システム研究所の今年の予定  昨年、設立20周年を迎え、今年6月には、設立2 周年記念研究成果発表会を開催致します。

 今年度もこれまで同様に、環境研究の継続は勿論、

環境展への出展、エコスクールの開校、資環研への 見学者受入れも行いますので、どうぞよろしくお願 い申し上げます。

 

1.平成29年度研究成果発表会 日 時:6月22日 1:0~1:

場 所:ホテルクラウンパレス小倉 香梅の間 共 催:北九州市

その他:講演後、当該ホテルにて交流会を行いま す。

2.展示会への出展 5月22日~5月25日

 東京ビッグサイト『2018NEW 環境展』

0月10日~10月12日

西日本総合展示場『エコテクノ28』

3.エコスクール開催

5月12日、7月14日、9月22日、10月19日、

 11月17日 計5回

 今年は、10年目の節目に当たります。

―  ―24

(15)

1.はじめに

 アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)は、

緩徐進行性の神経変性疾患であり、認知機能障害の 周辺症状として暴言や暴力行為などの攻撃性増加が 認められる。この攻撃性の増加は、患者のみならず、患 者の家族や介護者への負担になっている。しかし、攻 撃性増加に対する有効な対処法は確立されていない。

 不眠症に用いられる漢方薬の一つである酸棗仁湯

SAT)は、酸棗仁、茯苓、川 、知母、甘草の5つ の生薬によって構成されている。現在、SAT AD 患者の興奮や易怒性への改善効果が症例報告されお り、このことから攻撃性増加に対しても有効である ことが期待される。しかし、その効果に関する報告 は未だ無い。

 基礎研究において、1ケージに1匹のマウスで個 別に飼育したマウス(Isolation マウス)は、1ケー ジに複数のマウスと集団で飼育したマウス(Group マウス)と比べて攻撃性増加が認められることが知 られている。そこで、SAT の攻撃性に対する効果と その作用機序を明らかにするため、Isolation マウス の攻撃性増加に対するSAT の抑制作用を評価するこ とを目的とした。

 Isolation マウスの攻撃性には視床下部の神経活動

変化の関与が提案されている。視床下部ではセロト ニン(5-HT)神経伝達とγアミノ酪酸(GABA)神 経伝達によるarginine vasopressinAVP)神経の活性 制御が攻撃性の抑制に寄与しており、視床下部の GABA 神経細胞はドパミン(DA)神経伝達を介して 活性が抑制される。また、視床下部で産生されるオ レキシンや視床下部に作用するコルチコステロンは、

Isolationマウスで上昇することが認められている。

 そこで、Isolationマウスの攻撃性増加に対するSAT の抑制作用を評価後、視床下部DA 神経・5-HT神経 伝達物質量ならびに、血漿中コルチコステロン・オ

レキシン量の測定を行い、SAT の攻撃性抑制作用機 序を明らかにすることを企てた。

2.方法

 5週齢の雄性ddYマウスを1ケージに1匹の条件 で6週間単独隔離飼育した。正常対照マウスとして、

1ケージ内に3~5匹入れて飼育したGroupマウス を使用した。SAT はエキス剤の剤型で株式会社ツム ラより供与して頂いた。SAT は、蒸留水に懸濁し、

5週間目からSAT(1,000 mg/kg/day)を2週間反復 経口投与した後、攻撃行動を測定した。また、vehicle 群には蒸留水を経口投与した。

 新規環境のケージ内に試験マウスを1時間入れた 後、これまで接触経験の無い対峙マウスを入れた。

その後、対峙マウスへの攻撃回数を10分間測定し、

攻撃行動を評価した。

 評価直後に視床下部を採取し、DA 量、5-HT量、

それぞれの代謝物量を高速液体クロマトグラフィー

(HPLC)で測定した。また、血漿中コルチコステロ ン、オレキシン量をEIA法により測定した。

3.結果

 Isolationマウスの攻撃回数はGroupマウスと比べ 有意に増加した。さらに、SAT 投与はisolationマウ スの攻撃回数増加を有意に抑制した(Fig. 1  全ての群においてDA 量と代謝物である 34ジヒ ドロキシフェニル酢酸(DOPAC)量に変化は認めら れなかったが、最終代謝物であるホモバニリン酸

HVA)量はSAT 投与により有意に増加し、HVA/DA 比も増加した(Fig. 2)。また、tryptophan量、5-HT 量、5ハイドロキシインドール酢酸(5-HIAA)量に 変化は認められなかったが、SAT 投与により 5-HT/

tryptophan比が増加した(Fig. 2。一方、コルチコス テロン、オレキシン量に変化は認められなかった。

―  ―25 研究機関研究所近況

産学官連携研究機関 加齢脳科学研究所

単独隔離飼育マウスの攻撃行動に対する酸棗仁湯の効果

渡辺 拓也1、2)、岩崎 克典1、2)

薬学部 臨床疾患薬理学教室1)、加齢脳科学研究所2)

(16)

4.考察

 Isolation マウスの攻撃行動に対して、SAT は有効 であることが明らかとなった。さらに、SAT HVA 量とHVA/DA 比の増加を示すことから、DA 代謝促 進作用があることが示唆され、5-HT/tryptophan比の 増加を示すことから、5-HT 合成促進作用があること が示唆された。すなわち、SAT は視床下部での DA 神経伝達減弱と5-HT神経伝達増強を示すことが考 えられた。今後は、ドパミン代謝酵素のモノアミン 酸化酵素やカテコールOメチル基転移酵素ならび 5-HT 合成酵素のトリプトファン水酸化酵素、芳 香族 Lアミノ酸脱炭酸酵素の活性や発現についてSAT の効果を検討する必要がある。

 視床下部のGABA 神経細胞はドパミンD2 受容体

―  ―26

Figure 1 Isolationマウスの攻撃行動に対する酸棗仁湯の抑制効果  新規マウスに対する攻撃行動(噛みつき、尾振威嚇)を10分間 測定した。Groupマウス(Group: n=34)、溶媒投与(vehicle: n=38)

SAT 投与SAT: n=47)、データは平均値±標準誤差で示した。

*p<0.05 vs Group、#p<0.05 vs Vehicle、Tukey’s multiple comparison test。

Figure 2 視床下部DA5-HT神経系に対する酸棗仁湯の効果

 DA 量、HVA 量、HVA/DA 比、5-HT量、Tryptophan量、5-HT/ Tryptophan比。Groupマウス(Group: n=14、溶媒投与(vehicle: n18SAT 投与(SAT:

n17)、データは平均値±標準誤差で示した。*p0.05 vs Group#p0.05##p 0.01 vs VehicleTukey’s multiple comparison test

Figure 2  視床下部 DA ・ 5-HT 神経系に対する酸棗仁湯の効果
Fig. 3   The results of tensile shear test: ( a ) original.   ( b ) modified by SCCBC

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