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学校給食における地産地消の取り組み

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Academic year: 2021

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学校給食における地産地消の取り組み

著者 阪口 美香

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 18

ページ 217‑220

発行年 2009‑03‑31

その他のタイトル Approach of local consumption of locally produced products in school lunch

URL http://hdl.handle.net/10105/1035

(2)

1.はじめに

 近年「食」をめぐる様々な問題が起こっている。食 品偽装、残留農薬問題、BSE、遺伝子組み換えなど食 の安全性が脅かされている。

 日本の食料自給率は、先進国の中で最も低い40%

(カロリーベース) 1)であり、フードマイレージは世 界一という輸入大国である。輸入品に頼らず、地元の 新鮮で安全・安心な農作物を食べることは、消費者の 食の安全や生産者の生活を守ることにつながる。また、

農作物の生産・消費が同じ地域内で行われ、輸送距離 が短くなると、エネルギー資源や資材の節約、二酸化 炭素の排出量削減など、環境にやさしい社会作りにも 役立つといわれている。

 このような「地産地消」の利点を、給食作りにも生 かしたい、これからのからだの基礎をつくる成長期の 子どもたちに、より安全でおいしい給食を作りたいと いう思いから、地元食材の追求を長年している。学校 給食は、「おなかを満たすだけの食ではなく、子ども のからだをつくる大切な食」という意識を大切に考え ている。

 奈良教育大学附属小学校では、自校献立による単独 校方式の給食(以下、自校方式と略す)を週5日行っ ている。児童数約630人、教職員45人、約680人の給食 を、栄養教諭1人、調理員5人で毎日作っている。

『安全で豊かな給食を食べることで、子どもたちの

心と体を健やかに育てていく』というめあてのもとに 進めている。自校方式の給食のため、栄養教諭だけで はなく調理員や子ども、教職員、保護者の願いや意見 を反映しながら献立をたてることができる。また、食 材や使う食器などの追求もできる。給食は、教育活動 の一翼を担うものとして、意識的に取り組んでいる。

2.地産地消の取り組み

2.1.献立作成の視点

 栄養面では、文部科学省の学校給食実施基準2)をも とに、ご飯食・パン食を組み合わせて作っている。食 材を選ぶ観点は、①食品添加物の少ないもの、②国産 のもの、③低農薬のもの、④地元のもの、⑤産地直送 のものなど、より安全なものを使用している。調理は、

出来る限り手作りを心がけている。カレーやシチュー は、市販のルーは使わず国産の小麦粉とバターからブ ラウンルーやホワイトルーを作っている。だしは、化 学調味料などは使わずにかつおぶしから天然のだしを とっている。献立は、日本の伝統的な料理や地域で昔 から食べられている郷土食、世界各国の料理などを取 り入れ、小学校の6年間でいろいろなものを食べられ るように考えている。また、旬の野菜や果物、魚など を積極的に取り入れることで、季節感や自然との関わ りを持たせている。

 今日、なんらかの食物アレルギーをもった子どもた

学校給食における地産地消の取り組み

阪口美香

(奈良教育大学附属小学校)

Approach of local consumption of locally produced products in school lunch

Mika SAKAGUCHI

(Elementary School Attached to Nara University of Education)

要旨:奈良教育大学附属小学校では、自校献立による単独校方式の給食を週5日行っている。食の安全性が脅かされて

いる今日、学校給食も例外ではない。成長期の子どもたちが食べる給食だからこそ「顔の見える生産者」を大切に、

できる限りおいしく安全な食材の追求を行っている。本研究では、学校給食食材の追求過程をまとめ、地元の食材や 児童が収穫した農作物を給食に使うことで得られている効果を検討し、今後の課題を示したものである。

キーワード:学校給食 School lunch 地産地消 Local consumption of locally produced products 

      自校献立による単独校方式 Single school method by school menu

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ちが増えている。アレルギーのある子どもたちも、で きるだけみんなと同じ給食を食べてほしいという思い から、調理過程でできる範囲での除去食を実施してい る。

2.2.顔の見える生産者

 食材については「顔の見える生産者」を大切にして いる。顔が見えるということは、どこでだれが作った かの履歴が明らかであり、気になることは直接生産者 に聞くこともでき安心して使用できる。また、生産者 も自信を持って納品にこられる。近くで作っていると いうことは、それだけ配達に日にちをかけていないた め新鮮であるということも魅力の1つである。

 野菜や果物については、県内産のものを、生産者か ら産地直送で15年くらい前から積極的に取り入れてき た。しかし、より地元のものをということで、3年前 から市内で生産されたものも給食で取り扱うようになっ た。はじめは、奈良県の農政課の協力で生産者を紹介 してもらい実現に至った。奈良で昔から作られている 大和野菜の1つ大和まな(奈良市、大和高田市)や千 筋水菜(奈良市)や、なす(奈良市、天理市)、ねぎ

(奈良市)、ほうれん草(奈良市)、いちご(奈良市)

などを現在使用している。

 学校内には学級園があり、子どもたちがクラスや専 門部活動で様々な農作物を栽培している。収穫した農 作物は、給食の食材として使用している。大学の農場 では、毎年3年生の児童が米を、4年生の児童がさつ まいもを育てている。収穫したさつまいもは、「さつ まいもの味噌汁」や「大学いも」に、米も給食で使っ ている。自分たちで育てたものが給食に出るというこ とは、子どもたちにとってとてもうれしいようで、何 日も前から

「○日の給食に出るよね」「おいしく作ってね」「みん な食べてくれるかな」

などと楽しみにしている様子がうかがえる。当日この ことを全校に伝えると、他の学年の子どもたちも興味 をもちよく食べている。

 牛肉については、BSE問題が起こって以降、給食で は牛肉や牛エキスの入った製品など使用しなくなった。

給食に牛肉を使うのであれば、どこで育った牛か、ど んな餌を食べていたのかまで知らないと子どもたちに 食べさせたくないという保護者の意見もあった。それ らの事情から、県内産の牛肉を追求することにした。給 食運営委員会(副校長・教員・栄養教諭・調理員で構 成している委員会)で、夏休みに牧場見学に行き、牛 の様子や餌の配合などの話も聞いた。そして生産者に 依頼をし、餌の内容を書面で提出することで、現在は 奈良県の大和牛である黒毛和牛を使用している。納品 のときは、必ずBSE陰性の検査証(これには生産者の 名前や住所が書いている。・子牛の登記(牛の生年月

日や名前、両親・祖父母までさかのぼっての名前が書 かれている家系図で黒毛和牛にはすべてついている) 生産者からの餌の詳細の3枚を添付依頼している。学 校では、個体識別番号からインターネットで牛の履歴 を確認している。

 その後、豚肉も奈良県産になった。

 牛乳については、昨年度まで奈良県の教育委員会の 決めたメーカーのものを納品していたが、大手メーカー は、近畿一円の牧場から集められた乳をまとめて殺菌 し製品化しているため、本校に納品している牛乳がど こで育てられて牛かを特定することはできなかった。牛 乳は、給食で毎日出している唯一の食品である。生産 者の顔が見たいという思いを強く持っていた。そこで、

生産から販売まで行っている奈良市内の植村牧場に依 頼することにした。加工において120℃〜135℃で2秒

〜3秒の超高温瞬間殺菌の牛乳が主流になっている中、

植村牧場の牛乳は75℃15分間の殺菌によって、より生 乳に近いおいしさと風味を持っている。毎年2年生が 生活科で「ちち牛を育てる植村さん」という題材で学 習もしており、馴染みのある牛乳でもある。以前から、

植村牧場と給食の牛乳との味の違いをあげて、給食に 植村牧場の牛乳をだしてほしいという子どもの声や教 員からの声も聞かれていた。そこで、給食の牛乳を植 村牧場の牛乳に変えられないかと給食運営委員会で提 案をし、生産者とも話し合いを重ねた。保護者の牧場 見学会も実施し、意見も集め、教員会議を経て今年度 から実現することができた。

 子どもたちは、毎日牛乳の味の違いに敏感である。

「今日はあまい」「味が濃い」「ちょっと薄い」

と日によって味の違いを感じている子どもは多い。実 際、牛の餌の違いで味は変わるらしい。たとえば、きゅ うりやおからを食べさせすぎると、薄く感じるようだ。

これこそが、生きた牛からいただいているということ である。食べたものが乳に出るということは、ごく自 然なことだと改めて気づかされた。

 野菜・果物・肉・牛乳以外の食材でも地元産へのこ だわりをもっている。

 醤油は、明治12年の創業以来、国産大豆と国産小 麦で作っている奈良市の醤油屋から納入している。豆 腐も、奈良市内で製造しているので、毎朝できたての 手作り豆腐などが納品される。麺類も奈良市内の製麺 所から納入している。

2.3.地元の食材や児童が収穫した農作物を給食に 使うことで得られている効果

①収穫してからの時間が短いので、新鮮でおいしく残 食が少ない。

 毎年夏には、夏野菜の1つであるなすを使った「マー ボーなす」を献立に入れる。しかし、なす嫌いの子が 多く、毎年とても残食が多かった。そこで、奈良市産

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のなすに切り替えた。放送で生産者のコメントを伝え たり、実物を見せながら教室を回ることで、子どもた ちも意識的に食べようとし、残食も半分に減るという ことがあった。子どもたちは、なすだけではなく野菜 の多く入った献立を嫌う傾向にある。複数の野菜を使 用している「野菜のソテー」や「野菜のごまあえ」な どは残食が多い。しかし、その中の1つの食品が、地 元の食材や学級園の食材であると、その献立全体の残 食も少なくなるという結果も得られた。また、学級園 のさつまいもを使った「さつまいもの味噌汁」では、

学級園のさつまいも以外のときと比べ、残食が約41%

減少した。

②食材を身近に感じ、食べ物への感謝の気持ちや嫌い なものでも食べようとする意欲がみられる。

 給食に、学級園のほうれん草を使用した際、

「きょうのきゅうしょくにほうれんそうのごまあえが でた。やさいはきらいなので、いえではのこすけど、

○○のおにいちゃんがつくったからちょっとたべた。

おいしかったからぜんぶたべた。おにいちゃんつくっ てくれてありがとう。

と給食でも色の濃い野菜のあえものは特に食べない1年 生の男子が日記に書いていた。

奈良市の水菜を使用した際は、放送で生産者の手紙の 紹介を聞いた2年生の子どもたちが、

「うちのおじいちゃんも作っている」「八条(生産地)

は行ったことがある」「食べたことなかったけど食べ たらおいしい」

などと水菜を身近に感じ意欲的に食べている姿がうか がえた。同じような声は、他にも多く聞かれた。

③「顔の見える生産者」ということで、学校側だけで はなく保護者も安心して使用できる。

 本校では、教員、栄養教諭、各クラスから選ばれた 保護者で子どもたちの健康について話し合う学校保健 委員会が月に1度開かれる。委員会では、給食や食に ついてのことも話し合っている。給食室見学や給食の 納入業者さんとの話し合いをもち、より給食について 知ってもらっている。給食に納入している産地の見学 や食に関する講演会なども実施し、共に食について学 んでいる。以前、給食で納入している市内のいちご農 家へ見学に行った。実際、生産者から作っている様子 を聞いた。委員さんからは

「前の日に摘んだ新鮮ないちごが給食で食べられるな んて、子どもたちがうらやましい」「生産者がこんな に丁寧に作ってくださったいちごなので、子どもに安 心して食べさせられる」「今まではスーパーで値段や 名前や見かけだけで購入していたけれど、こんなに近 くでも作っているとは知らなかった」「収穫されてか らスーパーに並ぶまでの時間を考えるとやはり、より 近くで作られたものや県内産のものを買いたいと思う」

などの感想があった。

④生産者から直送の場合は、市場に卸さないので安い 価格で購入できる。

 たとえば、いちごの場合1パックあたり37%安価に なる。なすは5%・ほうれん草17%・水菜1%・ねぎ 7%(同時期の小売価格と比較)など、生鮮食品は日 によって値段が異なるが、比較的安く購入できる。

⑤給食調理時の時間短縮のために、学校側の意見を生 産者に伝えることができる。

 たとえば、葉ものはよく個袋に入っているのだが、

給食では量が多く袋をとる手間がかかるので、袋には 入れないでほしいということや、1つひとつ束にはせ ずにそのままコンテナで納品してほしいこと、また、

根は切り土をできるだけつけないようにしてほしいこ となどを、依頼し生産者の協力で実現している。

⑥生産者の思いを、子どもたちに伝えることができる。

 生産者に依頼をし、食材納品時に子どもたちへの手 紙をつけてもらい、全校に紹介している。たとえば、

水菜の時の放送を紹介する。

「今日の給食に、水菜の煮浸しがでています。この水 菜は千筋水菜と言って奈良で古くから作られている大 和野菜の1つです。今日の水菜は奈良市の八条の畑田 昇さんという方が作ってくださいました。畑田さんか ら、みんなにお手紙が届いています。

『附属小学校のみなさん こんにちは。今回は、私 の作った水菜を給食にだすことができ、大変うれしく 思っています。水菜は奈良県の特産物であり、八条で は昔から作っています。8月の中ごろに種をまき健康 で丈夫ななえを作り、9月の中ごろ苗を植えて育てま す。水菜は霜がおりるとやわらかくおいしくなります。

私は、野菜を作るときはできるだけ薬を使わずに、安 全で安心して食べてもらえるものを作るように心がけ ています。附属小学校のみなさんが、私の作った水菜 をおいしく食べてもらえるととてもうれしいです。 と書いてくださいました。畑田さんが心をこめて作っ てくれた水菜を味わって食べましょう。

という放送をし、全校に生産者の声を届けることがで きた。

3.まとめと今後の課題

 地産地消とは、地元のものを食べるだけではなく、

農作物に関わる人と人とのつながりをも子どもたちに 学ばせる場でもあると考える。食の不安を感じる今日 だからこそ、食べるということの大切さ、何をどう食 べるのかを給食を通して学ばせたい。

 給食では、家庭や地域とも連携をとっている。給食 だより、給食試食会、学校保健委員会、学級行事、PTA 行事などを通して学校の様子を伝え、食に関する意識 を高め、理解を深めるとともに協力を得ており、教職 員・家庭・地域とも一緒になって子どもたちの食のこ

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とを考えている。

 学校全体の食に関する指導としては、給食を生きた 教材として、現在、低学年では生活科(ちち牛を育て る植村さん・八百屋さんの仕事)、中学年では学級活 動や社会科(米作り、杉澤さんのいちご作り、さつま いも作り、向出さんのしょうゆ)、高学年では家庭科 で(大和まななどの大和野菜)と、地元の食材を題材 に、食に関する指導を実践している。給食の食材から 教科との関連を見つけ、子どもたちの学びにつなぐこ とも食の指導であると考える。

 今後の課題としては、成長期の子どもたちが食べる 給食だからこそ、顔の見える生産者を大切に自校方式 のよさを生かし、これからも地元の食材の追求と安定 した供給の実施をしていきたい。また地域の食材、学 級園や農園で栽培した食材を利用した献立により、

「食」や「農」についての理解を深め、地域の伝統や 食文化の伝承を図ることも大切である。

 食に関する指導については、学年ごとの系統性を考 えた指導の確立と、子どもたちの学習ともリンクした 献立も積極的に取り入れたい。また子どもだけではな く、家庭への食育も欠かせないと感じている。給食を 通して、家庭との連携もより深めたい。

 これからも、学校給食が子どもたちの健康の一端を 担っているという意識をもち、よりよい学校給食をめ ざしていきたい。

参考文献

1)食料自給率の推移 農林水産省

2)学校給食における食事内容について 学校給食実 施基準別表 文部科学省スポーツ第121号平成15年5 月30日

参照

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