中国の対外経済関係に関する考察
谷 口 洋 志
*高 鶴
**1 .は じ め に
2 .二国間貿易関係に関する単純な考察 3 .米中貿易関係における相対的視点 4 .国際経済関係における非対称性 5 .お わ り に
1 .は じ め に
2017年 1 月20日にトランプ政権が誕生して以来,米国政府は,中国,メキシコ,日本,ドイツ,
インド,韓国などに対して,貿易赤字解消や貿易協定の見直しなどを要求してきた.米国は,主に 二国間協議を通じてこれらの国に直接的な圧力を及ぼす一方,イランへの制裁措置発動に伴い,こ れらの国がイランとの貿易を抑制するように間接的な圧力も及ぼしてきた.
米国が最も強い圧力をかけてきたのは,中国に対してである.米国の貿易赤字は,2017年の 8,052億ドルから2018年の8,873億ドルへと増加するなかで,対中貿易赤字は3,759億ドルから4,193 億ドルへと拡大した(表 1 ).米国の貿易赤字全体に占める対中貿易赤字の割合は,2018年には 5 割近く(47
.
3%)に達している.トランプ政権は,中国から受けた不利益には貿易赤字だけでなく,中国政府・企業による知的財 産権侵害や技術移転強要などもあるとして,2018年には 3 次に及ぶ関税引き上げ措置を導入した.
中国もこれに対抗して 3 次に及ぶ報復関税を実施し,米中貿易摩擦は米中貿易戦争の様相を呈して きた.さらに,2019年 5 月末にトランプ政権が一般特恵関税制度の対象からインドを除外すること を発表すると,インドはその撤廃を求める一方,2019年 6 月16日には米国からの輸入に対する報復 関税を実施した.
本稿の目的は,一方的ともいえる米国の対外経済関係是正要求を念頭に,そうした要求をどのよ うに理解するかについて,中国と諸外国との関係を例にとって考察することである.一見すると,
米国の主張は自明のことであり,批判の余地がないように思える.しかし,実際には,自明ではな
いことが多数存在する.また,ちょっと考えればすぐに理解できそうな単純な事実であっても,実 際にそれが共有されていないと見逃してしまう論点も存在する.本稿の目的は,これらの点を明る みにすることである.
第 2 節では,二国間貿易関係に関する単純な考察を行う.第 3 節では,米中関係1)を例にとりな がら,二国間貿易関係における相対的な視点を取り上げ,二国間のどちらの観点でみるかによって 異なる結論が得られることを論じる.第 4 節では,中国と諸外国との経済関係における非対称性の 問題を取り上げる.第 5 節は,結論である.
2 .二国間貿易関係に関する単純な考察
いま, 2 か国(Aおよび
B
とする)のGDPをYaおよびYb, 2 か国間の貿易額をTとする.た だし,Ya≧Ybとする2).ここで,Yaに対するTの比率Yat(=T/Ya)を「Aの対B依存度」,Ybに対するTの比率Ybt(=T/Yb)を「Bの対A依存度」と定義する.このとき,以下の関係 が成立することは自明である.
Ya=Ybのとき,Yat=Ybt
1 ) 牛山(2018),関山(2018),三井住友信託銀行(2016)は,本稿とは異なる観点から諸外国の対中依 存・対米依存を論じている.最近の米中貿易戦争が日本に及ぼす影響については,木内(2018)を参照.
2 ) ここでは,Ya,Ybや
T
はすべて共通の通貨単位,例えば米ドルで表示されるものと仮定している.したがって,対相手国依存度の大きさは為替レートの影響も受けることとなるが,以下では省略する.
表 1 米国の貿易収支:2017年と2018年
国
2017年 2018年
貿易収支 貿易・
サービス収支 貿易収支 貿易・
サービス収支 中国 ▲3
,
759 ▲3,
357 ▲4,
193 ▲3,
787メキシコ ▲761 ▲687 ▲873 ▲785
日本 ▲700 ▲566 ▲689 ▲580
ドイツ ▲641 ▲667 ▲687 ▲668
イタリア ▲317 ▲347 ▲317 ▲353
インド ▲230 ▲274 ▲213 ▲243
カナダ ▲227 28 ▲255 12
韓国 ▲226 ▲93 ▲175 ▲53
全 体 ▲8
,
052 ▲5,
501 ▲8,
873 ▲6,
277(注)単位:億ドル.
(出所)U.S.DepartmentofCommerce,BureauofEconomicAnalysis,“In- ternationalTradeinGoodsandServices,”2019年 6 月19日,より作成.
Ya>Ybのとき,Yat<Ybt
つまり,二国間のGDPが等しければ,「Aの対B依存度」と「Bの対A依存度」は等しい.ま た,AのGDPがBのGDPより大きければ,「Aの対B依存度」は「Bの対A依存度」より小さ い.つまり,同じ二国間関係でありながら,相手国への依存度は小国ほど相対的に大きいという関 係が成り立つ.したがって,米国が世界最大のGDPを持つ限り,米国の対相手国依存度は,相手 国の対米依存度より必ず小さい.
図 1 は,日中間の相手国依存度をみたものである.ここでは,貿易額=輸出額と輸入額の平均,
としている.したがって,
日本の対中依存度=(中国への輸出と中国からの輸入の平均)/GDP
=(日本の対中輸出/GDP)と(日本の対中輸入/GDP)の平均 =日本の対中輸出依存度と対中輸入依存度の平均
図 1 より,日本の対中依存度と中国の対日依存度は2010年に逆転している,これは,この時期に 日中のGDP規模が逆転したことを意味する.2010年を過ぎると,中国のGDPは日本のGDPを 上回り,その差が拡大していることから,日本の対中依存度が中国の対日依存度を上回る度合いが 大きくなっている.つまり,相対的な意味での日本の小国化と中国の大国化である3).
図 1 日本の対中依存度と中国の対日依存度:1999~2018年
(注)日本の対中依存度=(日本の対中輸出入額÷ 2 )/日本のGDP 中国の対日依存度=(中国の対日輸出入額÷ 2 )/中国のGDP 日本は日本側統計より計算,中国は中国側統計とIMF統計より計
算.
(出所)財務省貿易統計「輸出入額の推移(地域(国)別)」,内閣府経済社 会総合研究所「統計表一覧(2019年1-3月期 2 次速報値)」;中国国家 統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」;IMF,World Eco- nomic Outlook Database,April2019,より作成.
2000 2005 中国の対日依存度
日本の対中依存度
2010 2015 5
(%)
4 3 2 1 0
3 ) 日中経済関係のその他の側面については,大木(2018),谷口(2019)を参照.
次に,GDP(Yとする)の成長率4)をg,貿易額の成長率をtとすると,
g<tのとき,T/Yは上昇 g=tのとき,T/Yは不変 g>tのとき,T/Yは下落.
図 1 より,2010年以降,日本の対中依存度が上昇し,中国の対日依存度が下落している.中国の GDP成長率をGa,日本のGDP成長率をGb,日中貿易額の成長率をTabとすると,2010年以降 の動向は,Ga>Tab>Gbであったことを意味する.2010年から2018年までの実績では,Ga=
10.42%(IMFの米ドル・ベース,国家統計局の人民元ベースでは10.26%),Tab=1.20%(国家統計局 のドル・ベース,財務省貿易統計の円ベースでは3
.
57%),Gb=1.16%(内閣府経済社会総合研究所の円 ベース)であった.3 .米中貿易関係における相対的視点
米国の貿易赤字が拡大し,そのなかでも対中貿易赤字が拡大していると,中国に対して米国が貿 易戦争を仕掛けることには一定の合理性があると考えるかもしれない.しかし,そのように結論す る前に検討すべき点がある.
図 2 は,米中貿易関係を図示したものである.図より,米国の対中依存度(第 2 節の
T/Y
に相 当する)はリーマン・ショック前の水準よりも高く,米国の対中貿易赤字のGDP比も高くなり,2 % 前後となっている.すなわち,米国の対中依存度は,2008年の1.4% から2018年の1.6% へ上昇 し,米国の対中貿易赤字のGDP比も1.8% から2.0% へと拡大している.ここで,
米国の対中依存度=米国の貿易依存度×米国の対中貿易依存度 と分解して考える.ただし,
米国の対中依存度=T/Y,T=米中の貿易額,Y=米国のGDP 米国の貿易依存度=E/Y,E=米国の貿易総額5)
米国の対中貿易依存度=T/E T/Y=(E/Y)×(T/E)
図 3 の(a)は,米国の対中依存度を 2 つの要素に分解したものである.図より,米国の対中依
4 ) ここで考えている成長率はすべて名目成長率である.
5 ) ここでは,貿易額も貿易総額も,輸出額と輸入額の平均値で考える.
存度の高まりは,米国の対中貿易依存度の高まりに起因する.つまり,米国の貿易依存度があまり 変化しないなかで全体の貿易に占める中国の比重が高まったことによる.これは,中国の比重が高 まった裏側では比重が低下した国が存在することを意味する.実際,中国,メキシコ,日本,ドイ ツなどに対するトランプ政権の強気の発言の裏側では,中南米諸国,中国香港やシンガポールに対 する米国の貿易黒字には一切言及がなく,産油国(OPEC)やカナダなどからの輸入の割合が低下 していることには全く無関心である.その意味で,貿易赤字に対するトランプ大統領の発言は極め て恣意的である.
図 2 はさらに興味深い論点を示唆する.米国の動きとは逆に,中国の対米依存度(T/Yに相当)
と中国の対米貿易黒字のGDP比はともに2006年をピークに大きく低下していることである.つま り,米国の対中貿易赤字のGDP比は上昇しているのに対し,中国の対米貿易黒字のGDP比は低 下している.これは,米国側の対中貿易赤字問題がヒートアップする割には,対米貿易黒字問題へ の中国側の関心が低いことを説明する.
図 3 の(b)により,中国の対米依存度が低くなった要因を分解してみると,中国の貿易依存度が 大きく低下したことが原因であることが判明する.つまり,中国の貿易全体における米国の比重に は大きな変化はない.
図 2 米中貿易関係:1999~2018年
(注)米国の対中依存度=米国の貿易依存度×米国の対中貿易依存度 米国の貿易依存度=(米国の輸出依存度+輸入依存度)/ 2 米国の輸出依存度=米国の輸出総額/米国のGDP 米国の輸入依存度=米国の輸入総額/米国のGDP
米国の対中貿易依存度=米国の対中輸出入額/米国の輸出入総額 中国についても同様に定義される.
(出所)U.S.DepartmentofCommerce,BureauofEconomicAnalysis,“InternationalTradeinGoods andServices”and“GrossDomesticProduct”;中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計 月報」;IMF,World Economic Outlook Database,April2019,より作成.
2000 2005 中国の対米貿易黒字の
GDP比(左目盛)
中国の対米依存度
(左目盛)
米国の貿易赤字総額に対する 対中貿易赤字の割合(右目盛)
米国の対中依存度
(左目盛)
米国の対中貿易赤字 のGDP比(左目盛)
2010 2015 5
6
(%) (%)
4 3 2 1 0
50 60
40
30
20
10
0
念のために,輸出だけに限定すると,中国の対米輸出のGDP比(中国の対米依存度)は,2006 年の7.3% をピークに,2018年には3.6% まで低下している.図 3 の(c)が示すように,中国の対米 輸出依存度の下落は,中国の輸出依存度(=輸出総額/GDP)の下落にもっぱら起因するものであ
図 3 米国の対中依存度と中国の対米依存度:1999~2018年
(注)各変数の定義については,図 2 の注を参照.
(出所)図 2 と同じ.
(b)中国の対米依存度
(a)米国の対中依存度
(c)中国の対米輸出依存度
2000 2005
米国の対中貿易依存度
米国の貿易依存度
2010 2015 18
(%)
16 14 12
6 8 10
4
2000 2005
中国の貿易依存度
中国の対米貿易依存度
2010 2015 35
(%)
30 25 20 15 10
2000 2005
中国の輸出依存度
中国の対米輸出依存度
2010 2015 35
(%)
30
25
20
15
る.中国の輸出における米国の比重は,2013年の16.7% から2018年の19.2% へと若干上昇したもの の,1999~2005年までの21% 前後よりは低い.こうした面からも,米中間の貿易不均衡に対し て,米国ほどには中国側が強い問題意識を持ちにくいことが示唆される.
図 4 はさらに追加的な問題を提起する.すなわち,どの国あるいはどの国際機関の数値が使用さ れるべきかという問題である.図 4 は,米国側の輸出入統計と中国側の輸出入統計には大きな誤差 があることを示している.とりわけ,米国の対中輸入ないし中国の対米輸出のデータには無視でき
(a)輸出入
図 4 米中貿易統計におけるデータの誤差
(b)貿易収支
(注)中国→米国(中国統計)は,中国から米国への輸出,あるいは米国への中国から の輸入を中国側統計でみたものであることを意味する.その他も同様.
(出所)U.S.DepartmentofCommerce,BureauofEconomicAnalysis,“International TradeinGoodsandServices”;中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統 計月報」,より作成.
2000 2005
中国→米国(米国統計)
中国→米国(中国統計)
米国→中国(中国統計)
米国→中国(米国統計)
2010 2015
6,000
(億ドル)
5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0
2000 2005
米国の対中貿易赤字
中国の対米貿易黒字
米中の貿易収支差額の不一致
2010 2015
5,000
(億ドル)
4,000
3,000
2,000
1,000
0
ない誤差があり,米中間の貿易不均衡の数値には1,000億ドル前後の誤差が生じている.2018年の 場合,米国が対中貿易赤字を4,193億ドルとしているのに対し,中国は対米貿易黒字を3,233億ドル としているのである.
しかも,米国側統計をみても,2018年における米国の対中サービス収支は388億ドルの黒字,中 国香港に対する米国の貿易収支は314億ドルの黒字,同サービス収支は23億ドルの黒字となってい る.これら 3 つを合計すると,米国側は725億ドルの黒字となる.中国側からすると,米国はサー ビス収支の黒字は前面に出さず,しかも中国香港を利用して間接的に中国に商品を輸出していると 映る.こうした面からも,米中貿易不均衡に対する米中間の熱意には微妙な違いが生じることにな る.
4 .国際経済関係における非対称性
( 1 )中国の貿易構造
第 2 節で取り上げたように,二国間貿易関係において,大国の対小国依存度は,小国の対大国依 存度よりも必ず小さい.比喩的にいえば,小国が風邪をひいても大国はあまり影響を受けないのに 対し,大国が風邪をひくと小国も風邪をひくことを意味する.近年の国際機関の経済見通しでは毎 回必ずといって良いほど中国経済の成長減速に言及し,その世界経済に及ぼす負の影響を取り上げ ているのは,中国経済が崩壊に向かっているからではなくて,中国経済の大国化が世界経済に及ぼ す影響がそれだけ強まっていることを認識しているからである6).
以下では,中国と諸外国との貿易関係における非対称性をみるために,最初に中国の貿易動向に ついて整理する.
表 2 は,中国の地域別貿易の動向をみたものである.まず表の上半分において過去20年間の動向 をみると,アジア地域と北米地域の構成比が低下し,中南米と大洋州の構成比が上昇している.た だし,アジア地域の構成比は,最近でも50% 前後を占めている.また,輸出ではアジア・北米・
欧州の比率が高く,輸入ではアジア・欧州の比率が高い.
一方,表の下半分において過去20年間の動向をみると,ASEAN(東南アジア諸国連合10か国)・ BRICS諸国(ブラジル・ロシア・インド・南アフリカ)・中東産油国の比率が上昇し,日韓・中国 3 地区(中国香港・中国澳門・中国台湾)・北米・EUの比率が低下している.上半分ではアジア地域 の比重の高さが目立ったが,下半分では近年,どの地域とも偏りなく取引している.
次に,図 5 により,中国の主要な貿易相手 5 か国・地域の構成比の推移をみると,日本の構成比 が徐々に低下し,現在は米国が第 1 位となり,2018年は13.7% となっている.どの国・地域でも全
6 ) 例えば,IMF(2019),OECD(2019)を参照.
表 2 中国の地域別貿易構成比 区分 地域 1999・
2000(a) 2006・
2007(b) 2010・
2011(c) 2017・
2018(d)(b)-(a) (c)-(b) (d)-(c) (d)-(a)
輸出
アジア 52
.
9 46.
8 46.
9 48.
1 ▲6.
1 0.
1 1.
2 ▲4.
8 アフリカ 2.
1 2.
9 3.
8 4.
2 0.
8 0.
9 0.
4 2.
1 欧州 18.
2 22.
9 22.
1 19.
0 4.
7 ▲0.
8 ▲3.
1 0.
8 中南米 2.
8 4.
0 6.
1 5.
9 1.
2 2.
1 ▲0.
2 3.
1 北米 22.
5 21.
6 18.
9 20.
5 ▲0.
8 ▲2.
7 1.
6 ▲2.
0 大洋州 1.
6 1.
7 2.
1 2.
3 0.
1 0.
4 0.
2 0.
7輸入
アジア 62
.
1 65.
6 58.
7 55.
9 3.
5 ▲6.
9 ▲2.
8 ▲6.
2 アフリカ 2.
0 3.
7 5.
1 4.
4 1.
8 1.
4 ▲0.
7 2.
4 欧州 18.
9 14.
6 16.
0 17.
8 ▲4.
3 1.
5 1.
7 ▲1.
2 中南米 2.
1 4.
8 6.
7 7.
2 2.
7 1.
9 0.
5 5.
1 北米 12.
4 8.
4 8.
3 9.
0 ▲4.
0 ▲0.
1 0.
7 ▲3.
4 大洋州 2.
6 2.
8 4.
9 5.
8 0.
3 2.
1 0.
8 3.
2輸出入
アジア 57
.
2 55.
2 52.
5 51.
6 ▲2.
0 ▲2.
7 ▲0.
8 ▲5.
5 アフリカ 2.
0 3.
3 4.
4 4.
3 1.
3 1.
2 ▲0.
1 2.
3 欧州 18.
5 19.
2 19.
3 18.
4 0.
7 0.
1 ▲0.
8 ▲0.
1 中南米 2.
5 4.
4 6.
4 6.
5 1.
9 2.
0 0.
1 4.
0 北米 17.
8 15.
8 13.
9 15.
3 ▲2.
0 ▲1.
9 1.
4 ▲2.
5 大洋州 2.
0 2.
2 3.
4 3.
9 0.
2 1.
2 0.
4 1.
8輸出
ASEAN
6.
6 7.
5 8.
9 12.
6 0.
9 1.
3 3.
7 6.
0BRICS
2.
3 5.
2 6.
9 6.
9 2.
8 1.
7 0.
0 4.
6EU15
15.
4 17.
8 17.
0 14.
1 2.
4 ▲0.
8 ▲2.
9 ▲1.
3EU28
16.
5 20.
0 19.
3 16.
4 3.
4 ▲0.
6 ▲2.
9 ▲0.
1 中国 3 地区 20.
7 17.
8 16.
0 14.
3 ▲2.
9 ▲1.
9 ▲1.
6 ▲6.
4 中東産油国 2.
0 2.
9 3.
5 3.
4 0.
9 0.
6 ▲0.
1 1.
5 日韓 20.
9 13.
5 12.
1 10.
4 ▲7.
4 ▲1.
4 ▲1.
7 ▲10.
5 北米 22.
5 21.
6 18.
9 20.
5 ▲0.
8 ▲2.
7 1.
6 ▲2.
0輸入
ASEAN
9.
4 11.
3 11.
1 12.
7 1.
9 ▲0.
2 1.
6 3.
3BRICS
4.
2 5.
9 7.
8 8.
1 1.
7 1.
9 0.
3 3.
9EU15
14.
5 11.
1 11.
4 12.
0 ▲3.
5 0.
3 0.
6 ▲2.
5EU28
14.
8 11.
5 12.
1 13.
0 ▲3.
2 0.
6 1.
0 ▲1.
7 中国 3 地区 15.
8 12.
2 8.
6 8.
8 ▲3.
6 ▲3.
5 0.
2 ▲7.
0 中東産油国 2.
2 4.
2 6.
0 5.
6 1.
9 1.
8 ▲0.
4 3.
4 日韓 29.
8 25.
4 21.
5 18.
3 ▲4.
4 ▲3.
9 ▲3.
2 ▲11.
4 北米 12.
4 8.
4 8.
3 9.
0 ▲3.
9 ▲0.
1 0.
7 ▲3.
3輸出入
ASEAN
7.
9 9.
2 9.
9 12.
6 1.
3 0.
7 2.
7 4.
7BRICS
3.
2 5.
5 7.
3 7.
5 2.
3 1.
8 0.
1 4.
2EU15
15.
0 14.
8 14.
3 13.
2 ▲0.
2 ▲0.
5 ▲1.
2 ▲1.
8EU28
15.
7 16.
2 15.
9 14.
9 0.
5 ▲0.
3 ▲1.
0 ▲0.
8 中国 3 地区 18.
4 15.
3 12.
5 11.
8 ▲3.
1 ▲2.
8 ▲0.
7 ▲6.
6 中東産油国 2.
1 3.
4 4.
7 4.
4 1.
3 1.
2 ▲0.
3 2.
3 日韓 25.
0 18.
8 16.
6 14.
0 ▲6.
3 ▲2.
2 ▲2.
5 ▲11.
0 北米 17.
8 15.
8 13.
9 15.
3 ▲2.
0 ▲1.
9 1.
4 ▲2.
5(注)単位:%.各 2 年間の平均値.中国 3 地区は,中国香港,中国澳門,中国台湾の 3 地区.EU15は,2000年段階での EU加盟国15か国,EU28はEU加盟国28か国の合計.
(出所)中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」,より作成.
般的な下落傾向がみられる.その結果,主要貿易相手 5 か国・地域のシェアの合計は,1999年の 61.0% から2006年の49.9%,2018年の39.2% へと下落している.図 6 により,この点をさらに代表 的な集中度指標であるハーフィンダール指数7)でみると,1999年の865から,2006年の546,2018年 の353へと大きく低下している.このように,中国の貿易構造は分散化傾向にあり,特定の国・地 域との取引が相対的に弱まる傾向にある.
図 5 中国の主要貿易相手 5 か国・地域の構成比:1999~2018年
(注)単位:%.中国の輸出入総額に占める上位 5 か国・地域の構成比.
(出所)中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」,より作 成.
2000 2005 日本
米国 中国香港
韓国 中国台湾
2010 2015 20
(%)
15
10
5
0
図 6 中国の主要貿易相手 5 か国・地域に関するハーフィンダール指数
(注)中国の輸出入総額に占める上位 5 か国・地域のハーフィンダール指 数.それぞれのシェア(% で示す)の 2 乗を足した合計.
(出所)中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」,より作成.
2000 2005
ハ―フィンダール指数
2010 2015
1,000 800 600 400 200 0
7 ) ハーフィンダール指数は,市場構造の集中度を示すために用いられる代表的な指数であり,完全独占 の場合には10000(=100の 2 乗),完全競争の場合にはゼロとなる.ハーフィンダール指数の定義や他の 関連指数については,Martin(2002)を参照.
( 2 )諸外国の中国依存8)
表 3 と表 4 は,諸外国の対中依存度と対中貿易収支の自国GDP比をみたものである.利用可能 なデータのある191か国・地域のうち,対中依存度(=対中輸出・輸入総額平均/自国
GDP)
が10%を超えるのは25, 5 % 以上が53(10% 以上の25を含む.以下同じ), 3 % 以上が89であり,これらは 中国との貿易関係が比較的強い.
2018年のGDPが 1 兆ドル以上では韓国(9
.
7%)とオーストラリア(5.
4%),5,000億ドル~ 1 兆 ドルでは中国台湾(19.
2%),3,000億ドル~5,000億ドルでは中国香港(42.
8%),マレーシア(15
.
3%),シンガポール(11.
5%),タイ(9.
0%),フィリピン(8.
4%),南アフリカ(5.
9%),UAE(5.4%)が目立っている.1,000億ドル~3,000億ドルではベトナム(30.6%),アンゴラ(13.1%),チ リ(7
.
2%),イラク(6.
7%),クウェート(6.
6%),カザフスタン(5.
8%),ペルー(5.
1%)が目立 つ.GDPが1,000億ドル未満では,オマーン,ミャンマー,ザンビア,カンボジア,コンゴ共和 国,モンゴル,ギアナ,ベナン,モーリタニア,タジキスタン,トーゴ,キルギス,南スーダン,リベリア,ジブチ,ソロモン諸島,ガンビア,ツバル,マーシャル諸島がそれぞれ10% を超えて いる.
次に,対中貿易黒字がGDPの 5 % 以上となっているのは20, 3 % 以上が29( 5 % 以上の20を含 む)であり,GDPが 1 兆ドル以上では韓国(5.9%)とオーストラリア(4.1%),5,000億ドル~ 1 兆ドルでは中国台湾(21
.
9%),3,000億ドル~5,000億ドルではマレーシア(5.
0%)が目立ってい る.1,000億ドル~3,000億ドルではアンゴラ(21.
9%),クウェート(8.
6%),イラク(6.
5%)が目立 つ.GDPが1,000億ドル未満では,オマーン,トルクメニスタン,ザンビア,コンゴ共和国,モン ゴル,ガボン,赤道ギニア,南スーダン,ソロモン諸島がそれぞれ10% 以上となっている.一方,対中貿易赤字がGDPの 5 % よりも大きいのは38, 3 % より大きいのは70(38を含む)あ る.GDPが5,000億ドル~ 1 兆ドルではオランダ(6
.
6% の赤字),3,000億ドル~5,000億ドルでは中 国香港(80.9%)が目立っている.1,000億ドル~3,000億ドルではベトナム(8.3%),バングラデ シュ(5.
8%)が目立つ.GDPが1,000億ドル未満では,パナマ,カンボジア,ベナン,タジキスタ ン,トーゴ,キルギス,リベリア,ジブチ,ガンビア,コモロ,ツバル,マーシャル諸島がそれぞ れ10% を超えている.このように,中小国・地域のなかには中国との貿易関係が非常に強く,中国経済の影響を強く受 ける経済が多数存在している.こうした経済的相互依存関係が強ければ強いほど,中国の政治的影 響力が大きくなることはいうまでもない.これらの経済は,中国との良好な政治的関係がなけれ ば,いつなんどき中国との相互依存関係が解消されてもおかしくない状況にあるといえよう.
8 ) 筆者による初期の議論については,谷口(2014)を参照.そこでは,中国の主要貿易相手10か国・地 域の対中依存度を取り上げた.
表3 諸外国の対中依存度 指標
範囲等
GDP
(2018年) 合計 全体億ドル未満10,000
5,
0004,
0003,
0002,
0001,000
800600400200100503020105 億ドル以上10,
000 5,000
4,
0003,
0002,
0001,000
800600400200100 50302010 5 該当国15951112116817192714851149191(対中輸出入総額平均/自国GDP)
対中貿易依存度
(%)
以上未満 5011 4050112 304012115 203011 10201211122311116 51022232241711128 452111222112 343111241122122124 233211214562111232 127314412346542450 0100111214224220 最大9
.
719.
2942.8
30.6
13.1
13.
211.
19.6
15.
132.4
34.7
31.5
42.
626.
35.3
513.
7513.7
最小1.
11.
20.7
1.7
1.3
0.9
1.
40.
80.9
0.
80.5
1.1
0.7
0.
20.
32.3
0.
80.2
中位2.3
2.
33.9
3.1
3.3
3.5
2.
82.
92.5
2.
12.9
3.5
3.8
1.
71.
74.2
3.
52.7
(出所)中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」;IMF,World Economic Outlook Database,April2019,より作成.表4 諸外国の対中貿易収支の
GDP
比 指 標範囲等
GDP
(2018年) 合計 全体億ドル未満10,
0005,000
4,
0003,
0002,
0001,000
800600400200100503020105 億ドル以上10,000
5,
0004,000
3,
0002,
0001,
000800600400200100 50302010 5 該当国15951112116817192714851149191(対中貿易収支/自国GDP)
対中貿易収支依存度
(%)
貿易黒字国
以上未満 5011 30501113 2030112 102011125 510111112119 451113 34112116 231113 12111115 014131111111116
貿易赤字国
-10312223152122 -2-1321312121124225 -3-22111121162321 -4-311214431320 -5-43111311112 -10-5121141642325 -20-1011114 -30-20112 -50-301113 -5011114 最大5
.9
21.
91.6
5.0
6.
521.
919.
40.8
17.7
12.4
56.
84.
038.7
1.
635.
9-4.4
0.
956.8
最小-2.4
-6.
6-3.2
-80.9
-8.
3-3.
7-5.
6-10.5
-7.1
-18.
9-20.
1-68.
0-57.5
-85.
2-25.
1-10.7
-995.
7-995.7
中位-0.4
-0.
90.4
-1.3
-0.
8-1.
4-2.6
-2.3
-2.
7-2.
7-1.
4-4.9
-3.
1-1.
1-1.5
-6.6
-5.
3-1.
7 (出所)中国国家統計局「統計数据」,中国海関総署「統計月報」;IMF,World Economic Outlook Database,April2019,より作成.5 .お わ り に
本稿では,中国と諸外国との間での二国間関係を例にとって,米国トランプ政権のような極端な 主張がすんなりとまかり通るほど話が単純ではないことを論じた.
第 2 節では,二国間貿易関係に関する単純な考察として,いくつかの単純な事実について言及し た.第 1 は,GDPが同規模同士の貿易では,双方の対相手国依存度が等しくなること.実際,
GDPがほぼ同規模となった2010年頃の日中両国の間では,日本の対中依存度と中国の対日依存度 はほぼ等しかったのである.第 2 は,相手国への依存度は小国ほど相対的に大きいという関係が成 り立つこと.例えば,米国が世界最大のGDPを持つ限り,米国の対相手国依存度は,相手国の対 米依存度より必ず小さいことである.第 3 は,相手国への依存度が高まるかどうかは,自国の名目 GDP成長率と,相手国との貿易額の成長率の大小関係に依存すること.ただし,双方の依存度が 互いに高まるという保証はない.例えば,2010年以降の日中関係のように,日本の名目成長率が著 しく低く,中国の名目成長率が著しく高く,双方の貿易額の成長率が両者の中間にある場合には,
日本の対中依存度が上昇し,中国の対日依存度が下落するのである.
第 3 節では,米中の貿易関係を例にとって以下の点を明らかにした.第 1 は,米国の対中依存度 と対中貿易赤字のGDP比は上昇しているのに対し,中国の対米依存度と対米貿易黒字のGDP比 はともに低下していること.第 2 は,米国の対中依存度と対中貿易赤字のGDP比が上昇した要因 は,米国の貿易依存度があまり変化しないなかで全体の貿易に占める中国の比重が高まったこと.
他方,中国の対米依存度と対米貿易黒字のGDP比が低下した要因は,中国の貿易全体における米 国の比重には大きな変化がないなかで,中国の貿易依存度が大きく低下したこと.この点は輸出だ けに限定しても同じであり,中国の対米依存度の下落は,中国の輸出依存度の下落にもっぱら起因 するものであった.第 3 は,米国側の輸出入統計と中国側の輸出入統計には大きな誤差があるこ と.とりわけ,米国の対中輸入または中国の対米輸出のデータには無視できない誤差があり,米中 間の貿易不均衡の数値には1,000億ドル前後の誤差が生じている.以上の点から,米中貿易不均衡 の問題に対しては,米国側が熱心に論争を仕掛けるのに対し,中国側がもっぱら防戦に回っている ことが理解される.
第 4 節では,すでに経済大国化した中国にとっての対外依存度は,小国である相手国の対中依存 度より小さいという事実を確認した.二国間関係におけるこうした非対称性の問題は実際に,対中 依存度が桁違いに大きくなっている小国を多数生み出している.2018年には,対中依存度(=対中 輸出・輸入総額平均/自国
GDP)
が10% を超える国・地域が25,対中貿易黒字が自国GDPの 5 % 以上となっている国・地域が20,対中貿易赤字が自国GDPの 5 % を上回っている国・地域が38も 存在する.小国経済における中国経済へのこうした過度の依存は,二国間経済関係が強力な二国間政治関係と密接不可分になることを示唆している.
参 考 文 献
牛山隆一(2018)「対中貿易依存度が高い国々はどこか ?」『月刊資本市場』No.397, 9 月号,34-42頁.
大木博巳(2018)「日中韓台の相互貿易の発展と対中依存リスク」『国際貿易と投資』No.111, 3 月,2-34 頁.
木内登英(2018)『トランプ貿易戦争―日本を揺るがす米中衝突』日本経済新聞出版社.
関山健(2018)「米中貿易戦争の展望―なぜ経済相互依存の米中が対立するのか」『鹿島平和研究所』11月,
1-9頁.
谷口洋志(2014)「諸外国の中国依存」『商学論纂』第55巻第 3 号, 3 月,269-316頁.
谷口洋志(2019)「日中経済関係はどこまで緊密なのか―過去40年を振り返る」『改革者』 6 月号,26-29頁.
三井住友信託銀行(2016)「変化するアジア経済の対米・対中依存度」『調査月報』 9 月号,1-5頁.
IMF(2019),World Economic Outlook,April.
Martin,Stephen(2002),Industrial Organization: A European Perspective,OxfordUniversityPress.
OECD(2019),OECD Economic Outlook,No.105,May.
(*中央大学経済学部教授 博士(経済学))
(**長春工業大学経済管理学院副教授 博士(世界経済))