一 ヨーロッパ共同市場構想への 「対抗提案」
決定過程,1956年 (3)
目次
序章 「対抗提案」一 Counter lni」auve"― の起源 第 1章 ク ラーク作業部会の作業開始 まで :56年 1月 〜2月
(以上,法 経論叢第 21巻 2号 掲載。)
第 2章 ク ラーク作業部会報告の完成 まで :56年 3月 〜4月 (以上,法 経論叢第 22巻 2号 掲載。)
第 3章 自 由貿易地帯構想― Plan G"一 の誕生 :56年 5月 〜7月 (以上,本 号掲載。)
第 4章 閣 僚 レベルでの合意形成への過程 :56年 8月 〜9月 第 5章 自 由貿易地帯構想の発表 と反応 :56年 10月 〜11月 結章 FTA交 渉の開始 に向けて
1
4月 20日 のクラーク作業部会報告提 出後 ほ どな くして,作 成 に関与 した各省庁 内部では報告書 に示 された対 ヨニロッパ新 イニシアチブヘの 対応 をめ ぐって議論が開始 された。その議論 に閣僚 自らが深 く関与 し,
7月 末 までの間,関 係省庁 ・閣僚 間のや りとりを最 も積極的にリー ドし ていったのは商相 ソーニクロフ トと商務省であった。
商務省で は, 4月 24日 にはブ レザー トンによ リクラーク作業部会報
実
益 田
論 説
告 を評価す る省内文書が作成 された。ブ レザー トンはまず,ク ラーク作 業部会報告 中の提案 を実行 に移すのであれば, タイ ミングの問題が極 め て重要であるとしていた。 ヨーロツパの経済協力 を継続 させ,特 に ドイ ッをそ こにつ な ぎとめることを望 むのな ら,こ の夏,「で きれば 7月 の OEEC閣 僚理事会の充分前 に,我 々は明確 な指針 を示す必要がある」 と 彼 は述べていた。六つの提案の中では,A:OEECに おける積極的協力 政策,BI欧 州審議会 とOEECの 合併,D:鉄 鋼 自由貿易地帯,の 三つは 実質的で も野心的で もない として退け られていた。残 る三つについてブ
レザー トンは,CIヨ ーロッパ産品関税構想は 「 何 らかの形で実行可能」
である,E:ヨ ーロッパ との部分的自由貿易地帯構想は,「さらなる検討 をおこなう価値がある」が,そ れは,「工業製品についての自由貿易地帯 という形式をとり,農 業を除外あるいは別の基盤で取 り扱った場合に限 る」,ま た 「これは明らかにコモンウェルス諸国との大掛か りな協議を意 味する」 ,F:ス トラスブルグ関税構想 (ヨーロッパ =コ モンウェルス特 恵制度)は , コモンウェルス全部が参加するとは思えず,彼 らが 「 好意 的に検討することさえ疑わしい」 と述べていた ①
。
5月 8日 にはブレザー トンの上司に当たるコーエンも,ク ラ ーク作業 部会に参加 していた大蔵省次官補 フランス宛書簡の中で,F:ヨ ーロッ パ =コ モ ンウェルス特恵制度に対 して強い否定的見解 を示 していた。
コーエンは,F実 現のためにはコモンウェルスの結束 した支持が不可欠 であるが,(a)インド産綿花や麻にヨーロッパが関税削減をおこなうとは 考えがた く,イ ンドもまた植民地主義諸国との協力に政治的に反発する だろう,(b)南半球の旧自治領諸国の農産物輸出に対 してヨ ーロッパ側が 数量規制や関税の削減に応 じるとは考えにくい,(C)カナダの工業製品輸 出はヨーロッパに市場を見出せるかもしれないが,カ ナダは対米通商差 別を意味する特恵プロックの新設には反対するであろうし,イ ギリス市 場でのヨーロッパ製品と比較 しての輸出上の優遇(自由参入や特恵関税)
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の放棄 も望 まないであろ う, と述べ ,主 要 コモ ンウェルス諸 国の不参加 に よ り Fは 実現不 可 能 で あ る と した。 また特 恵制 度構 築 が ドイ ツの西 側への拘束 ・ヨーロッパ域内での優越の防止 という目的にとつても有効 かどうか疑間であると彼は述べていた。そもそもイギリス自身の経験か らいっても特恵制度は政治 。経済的結束を必ず しも提供 してこなかった し, ヨーロッパ =コ モンウェルス特恵は自動的にメッシナ共同市場を阻 止するわけでもないというのがコーエンの主張であった。また彼は,農 業製品を排除 して Fが 意味を持つ とは思えないが,農 業分野を含むこと によってイギリス国内農業生産を減少させることは政治的に極めて困難 であるとも述べていた②。
5月 11日 には,ソ ーニクロフ トと商務省幹部官僚たちによる省内会 議が開催 され,新 イニシアチブとして採用すべ き構想の絞込みがおこな われた。ブレザー トンはまず,外 務省の現時点での見解は,イ ギリスに よる経済的イニシアチブは ドイッを西側に拘束するためには「望ましい」
が,「必要」とまでは言えないというものであると断った上で,Eま たは Fと いった大掛か りな構想 を採用せず,A〜 Dま でを採用することでも, 一年程度は状況への対処は可能であると述べた。これに対 してコーエン は,Eも しくは Fを 究極の目的とする,あ るいは両者を完全に却下する, ということを明示せずに A〜 Dの みを提案することは困難であると述 べ,単 なる時間稼 ぎは困難であるとの見方を示 した゛。
次いで発言 したソーニクロフ トはまず,メ ッシナ共同市場は提案され ている四つの段階のいずれかの時点で行 き詰まることはあ り得るのでは ないか, したがって当面,共 同市場には加盟 しないが 6カ 国による関税 削減の第一段階には参加 し,食 品 。農業製品を除 く全品目の一律 10%関 税削減まで同意することは可能ではないかという意見を述べたが, ブレ ザー トンは,そ れは結局のところ第三国とコモンウェルスに対 しての差 別的関税削減であ り,Eと 異なるものではないと指摘 した ④
。
論 説
これ らの意見 を受けソーニクロフ トは, 6ヵ 国の関心 を一時的にそ ら す構想 は無意味であるとして A〜 Dを 退けたが,同 時 にイギ リス不参加 の ままで共同市場が成功す ることも失敗することも望 ましくはな く,積 極 的な共同市場へ の関与 は不可欠である,し たがって,Eな い しFの 採 用が必要である との考 えを示 した。その上で彼 は,保 守党 とコモ ンウェ ルス双方か らの合意獲得のためには, コモ ンウェルスか らの農産物輸入 は維持 しなが ら同時 に,大 陸か らの農産物輸入拡大のための国内農業生 産削減 は回避 しな くてはな らない として,食 糧 と農業 を除いた部分的 自 由貿易地帯 =Eだ けが受 け入れ可能であると述べた゛。
続 いて彼 は今後 の進め方 としてまず,対 ヨーロ ッパ ・対 コモ ンウェル ス通商上の新たな行動の必要性 と,イ ギ リス不参加の ままでの共同市場 完成 回避の必要性 を論 じ,Eの 採用 を主張する文書 を作成する,そ の上 で農水食糧相 ヒース コー ト=エ イモ リ (Derek Heathcoat―Amory)と 非 公式 に会談 し,Eと は独立に,し か しそれを補完す るもの として,農 業 ・ 食糧分野での別個のイニシアチブの可能性 について検討 を要請す る,そ
してその後で,外 相,蔵 相その他関係 閣僚 に商務省作成文書 を提 出す る との指示 を下 した⑥
。
この商相 自らによる指針の決定後 も省内にはなお少 なか らぬ疑間の声 は存在 した。特 に疑問視 されたのは,農 産物 ・食糧 の自由貿易地帯か ら
の除外 とその排他的貿易ブロック的性質 という二点であった。 5月 14 日には商務省関税局次官代理ノウエル (R.M.N6well,Under― Secretary, Tarif D市 ision)が ,コ ーエンに対 して,新 たなイニシアチブは食糧を除
く自由貿易地帯構想 とすべ きとのコンセンサスが省内にはあるが,食 糧 の除外はヨーロッパ,特 にデンマークのような農業輸出国には売 り込み に くいのではないか ? ま たアメリカ製品をヨーロッパおよびコモ ン ウェルス製品よりも差別的に扱 うことはアメリカには受け入れがたいの ではないか ? と の疑間を述べていた。これに対 してコーエンは,ア メ
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リカ政府上層部は, ヨーロッパ統合に大 きく資する計画をイギリスが提 案するならある程度の通商上の差別的扱いは受け入れるであろうし,E は,ア メリカ製品についてヨーロッパ諸国が採っている以上の差別をす るものではない, また食糧については,農 産物の余剰生産を抱えるフラ ンスがそれをイギリス市場に輸出できないのであれば自由貿易地帯提案 を受け入れるか疑間であるし,デ ンマークには魅力が薄い, しかし政治 的にも経済的にもスカンディナビア諸国の自由貿易地帯への参加が望ま
しいので, この点は注意する必要があると述べていた0。
同 日,再 度の省内幹部会議が開かれこの点 も議論 されたが,ソ ー ロフ トは,確 かに農業の除外 はデ ンマークなどには魅力が乏 しいが,現 時点では国内政治か らもコモ ンウェルスか らの支持取 り付 けのために も 不可欠であると述べた。会議はそのまま新 イニシアチブの閣僚 レベルで の決定手続 きについての議論へ と進み, 6月 末開催予定のコモ ンウェル ス首脳会議 までに閣議 レベルの決定 を得 ることは不可能であるが, 6月 中には,新 イニシアチブヘの閣僚たちの意見分布 を探 ることが不可欠で あるとして,上 記の商務省文書の完成 ・送付後 に,関 係 閣僚の予備会談 の召集 を蔵相マクミランに要請す ることが決定 された③。
この決定後 もなお商務官僚の一部には,農 業 ・食糧 を除外 した自由貿 易地帯の成功 を疑 問視 し,少 な くとも将来的な農業 自由貿易化 の議論の 可能性 は残すべ きではないか ? 6カ 国は農業 も含めた共同市場 に 「原 則 として」同意 しているのに,イ ギリスだけが除外 を要求 してそれが容 認 されるだろ うか ? 新 イニ シアチブを提示する以上 は,い ずれは農業 分野の 自由貿易化 を求める圧力 も回避で きないのではないか ? と する 声 も存在 した。 しか し,以 後,商 務省 はソーニクロフ ト自らの強い意思 の もとでクラーク作業部会報告提案 中の Eを 基礎 とした新 イニ シアチ プの作成 を他省庁 に働 きかけることとなった゛。
論 説
2
商務省 とともにクラーク作業部会で中心的役割 を果た していた大蔵省 で も報告完成後,省 内で本格的な新 イニシアチブの選定作業が開始 され たが,そ の過程では対外経済政策 をめ ぐって,商 務省 よりも明確 に省内 での意見対立が浮 き彫 りになった。
大蔵省ではまず 4月 24日 に,ブ リッジス (事務次官),ギ ルバー ト (上 席次官代理),ロ ーワン (上席次官代理,海 外金融局担 当)と いった幹部 官僚 とクラーク, フ イガース, フランス, コリアの作業部会参加者 たち による会議が開催 された。
出席者たちの間ではまず,真 のイニ シアチブ と言 えるのは Eと Fだ けである,Aん Dは 原則 的に承認可能である,重 要 なのはフランスの姿 勢 であ り,フ ランスが参加す る意図があれば共同市場 は成功 し,A〜 D の ような構想 には誰 も興味 を示 さないだろう, しか しフランスの反対 に よ り共同市場が失敗すれば,A〜 Dで も充分 にヨーロッパか らは歓迎 さ れるだろう, としヽった発言がなされた゛ω
。
Eと Fに ついては, ローワンか ら明確 な反対意見が示 された。彼 は, これ らの構想 はコモ ンウェルス との関係 を緊張 にさらし,世 界規模の貿 易 自由化 と通貨交換性 回復 を目指す コレクテ イブ・アプローチに反 し, イギ リス国内産業 を激 しい競争 にさらす ものであると批判 し,閣 僚たち にはその問題点 を周知すべ きであると主張 したい)。
議論の中では,Eと Fど ち らの場合 も,そ の国際収支や国内産業 に対 す るコス トを正確 に見積 もって閣僚 の判 断の根拠 とす るのは困難であ り,選 択 は政治的な ものにな らざるを得 ない との意見がだ された。最終 的にブ リッジスは,Eと Fに ついては閣僚 レベルでの政治的判断が必要 であるが,政 治的見地か らのみ決定すべ きではな く,経 済的影響 につい て も追加報告 を作成 し,蔵 相 と予備的検討 をお こない,そ の結果次第で,
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必要な ら関係省庁の次官 レベルで検討す るとの決定 を下 した。 この決定 を受 けて作成 されたマクミランヘの報告 は,A〜 Dは ,「効果的な新たな イニシアチブとするには不充分」であ り,蔵 相 は Eま たは Fを 検討すべ きであるが,「最終的には新 たなイニ シアチブの必要性 と国際収支へ の 不確実 なリスクとの間の選択」が求め られると指摘す るものであった⑫。
クラークは会議の翌 日ブリッジス宛 に書簡 を送 り,Eと Fは ,双 方 と もイギ リス国内の産業 ・農業への保護の削減 と引 き換 えに新 たな輸出機 会 を提供するものであ り,イ ギ リス経済が この新たな機会 に即応で きな ければその結果 は 「破・Fin的」となる危険は存在するが,「しか し 『何 もし
ない』ことがより安全とはならないであろう」と述べ,新 イニシアチブ にはリスクや問題はあるが,行 動を起こさないことにもまた大きなリス クがあることを指摘 したl131。
一方,ロ ーワンも5月 4日 に海外金融局 としての Eと Fへ の批判的 見解 をまとめた長文の覚書 を作成 し省内に配布 した。 ローヮンはまず, クラーク作業部会報告書にある, ドイツの勢力の増大 と独 自性の発展, フランスの衰退の継続,代 替案無 しでのメ ッシナ構想失敗が 「ヨーロッ
パの混乱」( the disruption of Europe")に つながる,と いう三つの前提
について,報 告が提案する方法が ドイツの拘束 ・ヨーロッパ内での優越
の防止 に役立つ とは思 えない し,フ ランスを支 えることに もならない, またメ ッシナの失敗がそれほ どの深刻 な危機 につながる とも考 えがたい との疑間を呈 した。その上で彼 は,E,Fと もに,カ ナダやオース トラリ アに とっては合衆国への通商上の差別的扱いか ら承認困難であ り,イ ン ド亜大 陸や他 の新興 コモ ンウェルス諸国か らも 「植民地帝 国主義者 ブ ロック」として反発 されるであろうと述べ,特 に Eの 場合はスタ‐ リン グ地域の弱体化,Fの 場合 はイギ リス政府 自らの提案 によ り帝国特恵の 終焉 を早めることになる と批判 した。海外金融局 としては,そ の前提た る危険が本当に深刻であることが確認 され,他 に対応策がない との合意論 説
が成立 しない限 りEま たは Fの 採用 は受 け入れがたい とい うのが彼 の 結論であった゛う
。
5月 8日 はマクミランも出席 して再度,省内幹部会議が開催 されたが, ここでの議論 は基本的に前 回の議論 をなぞるものであった。A〜 Dは 全 体 としては劇的な効果は期待 で きず,Eと Fを 却下す る と決 まった場合 にのみ考慮すればよい,Eと Fは 斬新かつ多 くの点で魅力的であ り,F は特 にその新奇性が魅力であるが コモ ンウェルス特 にカナダは反対す る であろう,Eま たは Fを 提案すればコモ ンウェルスの結束が危険にさら されス ター リング地域の安定が揺 るが される,国 際収支が不健全で外貨 備蓄が危機的に少 ない間は性急 な結論 をだすべ きではない,合 衆国の反 応 は不明であるが原則 として ヨーロッパ統合 に資するものであれば支持 は得 られるだろう, しか しアメリカは世界規模 の貿易 ・決済の自由化 を 継続す ることも求め るであろ うか ら Fよ りは Eを 好 むか もしれ ない,
といった点が指摘 された。 これ らの議論 を受けてマク ミランは,な お数 日かけて検討 し,再 度,官 僚 と会合す るとの断 を下 し,こ の時点では彼 個人の選好が どこにあるかは明確 にはな らなかった0。
結局,こ の予定 された再度の省 内会議 は開かれず,5月 31日 の関係 閣僚会議直前の時 点で もなお大蔵省 内の見解 は幹部官僚 レベルでは統一 されることはな かった。そ してマ クミランの選択 は閣僚会議の場で示 されることになっ た。
3
この間,外 務省では経済官庁 と比較 してクラニク作業部会報告につい て日だった検討作業はおこなわれてはいなかった。 しかし,そ の対 ヨ ー ロッパ経済協力問題,あ るいは対 ヨーロツパ新イニシアチブについての 外務省の考えは,大 蔵省内に存在 した,既 存の政策を優先 し新規の大規
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模 なイニシアチブに対 しては懐疑的な姿勢 と共通す るものであ り,そ れ は 5月 1日 に訪英 した西 ドイツ外相 フォン 。ブ レンターノ との会談用 に 外務省 内で用意 された閣僚用 ブリーフ中の ヨーロッパ統合 問題 について の記述 にも示 されていた。その中では,メ ッシナ構想 にはヨーロッパ を 分裂 させ西側 を弱体化す る危険があ リドイツを西側 に政治的 ・軍事的に 結びつ ける最良の方法であるとは考 えられず,む しろイギ リス, コモ ン ウェルス,合 衆国, ヨーロ ッパ を一体 とす る既存 の世界経済へ の one world apprOach"が 政 治 的 ・軍事 的 に は最 重 要 で あ り,具 体 的 に は
OEECと NATOと いう合衆国とカナダを含む機関において協力が進め られるべ きであると記載 されていた。これは 56年前半,ク ラーク作業 部会の活動 と並行 して進んでいた大西洋官僚会議での議論を反映したも のであった ゛ の
。
このブリーフとは別に外務省相互援助局担当次官補 ライ トは4月 30 日付けでクラーク作業部会報告についての覚書を作成 していた。彼の見 解は,A〜 Dに は外交上の問題はなく利点 もあるだろう, しか しEと F はその差別的性質によリアメリカから反発され,同 時に国内政治上 も問 題が多い,そ れゆえ新イニシアチブとしては,一 定の経済協力の成果が 期待でき,対 米関係上 も,対 コモンウェルス関係上 も最 も問題の少ない Cの ヨーロッパ産品関税削減構想 を推すべ きであるというものであっ た゛ つ
。
5月 17 日 に もライ トは再度覚書 を作成 し,フ ランスの衰退 と ドイツ の台頭 による西 ヨーロッパ分裂 を回避す るのは重要 な課題であ り,そ の ためにはイギ リス もヨーロッパ との関係 を強化する必要がある として, クラー ク作業部会報告 の提案 を歓迎すべ きである と認めていた。 しか し,Eと Fに ついてはやは り,そ の差別的性質にアメ リカが反発 し,同 時に帝国特恵の見直 しを含 まざるを得 ない ものである として彼 は批判的 であ り,イギ リス国内の政治的理由 もしくはコモ ンウェルス との関係上,
論 説
Eや Fが 採 用 で きないので あ れ ば,主 要 なイニ シアチ ブ は Cと な らざ る を得 ない と述べ ていた。 そ して この ライ トの議論 に対 して外務事務 次 官 キ ヤ ッシア も,意 義 の あ る イニ シアチ ブ は Cし か ない と同意 し,ま ず この種 の経 済 的 イニ シアチ ブ を実行 し,そ の後 で OEECと 欧 州 審議会 の合併 な どの政治 的イニ シアチ ブを追求す るこ とが妥 当 な方 向である と 述べ てい た ゛ つ
。
4
こうして主要関係省庁内部でのクラーク作業部会報告へ の評価がお こ なわれるとともに,関 係省庁 閣僚 レベルでの新 イニシアチブについての 議論が, 5月 後半か ら本格的に開始 されていったが, 5月 上旬 にはすで に閣僚 レベルで も温度差が表面化 し始めていた。
その最初の兆候 は 5月 1日 のフォン ・ブレンターノ訪英時のイギ リス 政府 閣僚 たち との会談の席で示 された。 ヨーロ ッパ における安全保障に 関 しての意見交換 の中でフォン ・ブ レンターノが示 した,NATOに おい て も軍事問題 にとどまらず, よ り全般的な政治問題協議の機会 を増やす 必要があるのではないか との提案 に対 して,外 相 ロイ ドは直ちに賛意 を あ らわ し,北 米 を含む既存組織内での協力拡大 を目指す とい う外務省の 主張に沿 った発言 をお こなっていた。一方,同 じ席で,「英独経済関係 と ヨーロッパ貿易の発展」 とい う議題が取 り上げ られた際に参加 したソー ニクロフ トは,フ ォン・ブレンターノに対 して,共 同市場 によって 「ヨー ロ ッパ を二つに分断する高関税障壁 に囲 まれた集団」が形成 されるとい う 「最悪の事態」 を回避す るためには, よ り広範な経済協力枠組みが必
要 で あ るが,こ れ を OEECと 結 びつ け るの は困難であ る と述べ ,イ ギ リ ス 自 らの イニ シアチ ブに よ り何 らかの新 た な組織 。協力体 制 を形成す る 可 能性 を示 唆 していた ゛ ° 。
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また 5月 以降はこれまで議論 に積極的に関与することのなかったコモ ンウェルス関係省か らもクラーク作業部会報告 に含 まれる提案が対 コモ ンウェルス関係お よび帝国特恵制度に与 える影響 について懸念が示 され 始めていた。 5月 8日 ,コ モ ンウェルス歴訪中の コモ ンウェルス関係相 ヒューム (Lord Home)は ,滞 在先のカナダか らマク ミランに宛てて電 文 を送 り, コモ ンウェルスに関す る限 り,A〜 Dま では受け入れ可能だ が,Eと Fは 問題が大 きい と考 える,そ れゆえ帰国 までこれ ら提案 につ いての判断は留保 したい と述べていた゛の。
5月 15日 には,そ の前 日の商務省 内会議での決定 を受 けソーニクロ フ トか ら依頼 されたマ クミランが,関 係 閣僚 (農水食糧相 ヒース コー ト
=エ イモ リ,植 民相 レノックス =ボ イ ド (Alan Lennox―Boyd),枢 密院
議長 ソールズベ リ (Marquess Of Salisbury,Lord President of the Coun―
cil)(不在 中の ヒュームの代理 として),ロ イ ド,ソ ーニクロフ ト)に 宛て て,ク ラーク作業部会報告検討のための会合 を 5月 31日 に開催 したい
との招請 をお こなった゛)。
翌 5月 16日 には,これ も5月 14日 の省内会議の決定 にしたがい,ソー ニクロフ トは幹部官僚たちを同席 させ, ヒース コー ト=エ イモ リお よび 農水食糧省幹部官僚たちと会談 をお こない,Eの 推進 を求める商務省の 意向を説明 し,同 時に農業 ・食糧 を除外する自由貿易地帯が持つ問題点 を緩和す るために, コモ ンウェルス ・ヨ‐ロッパか らのイギ リス国内市 場への農産物輸入 を拡大す る可能性 を打診 した。 ソーニクロフ トはまず イギ リスが直面す る通商上 の問題 として,コ モ ンウェルス に関 しては オース トラリアか らの特恵制度見直 し要求, ヨーロッパ に関 しては共同 市場構想 ・OEECで の関税削減要求が存在す ることを指摘 し,商 務省 と しては,農 産物 を除外 した ヨーロ ッパ 自由貿易地帯の形成が, 1億 5000 万人 を擁する大陸 ヨーロッパ市場へのアクセスを確保 し,同 時に帝国特 恵 を最大限維持で きる最善の対応である と考 えるに至 ったことを説明 し
論 説 た 1 2 2 1 。
農水食糧省側か らは,第 一 に,農 産物 を除 く自由貿易地帯 はヨーロ ッ パの農業国には歓迎 されないのではないか,第 二に,農 産物 を除外 して もなお コモ ンウェルス諸国市場 におけるイギ リスか らの輸 出への特恵は その規模 も範 囲 も削減 されて しまうのではないか との疑 間が呈 された が,これに対 してソーニクロフ トは,最初の点については確かにデ ンマー
クのような国は農業の除外に反発するであろうが, どこの国も国内農業 については何 らかの特別扱いをしてお り,こ の要求は正当化できる,そ して 「 我が国が農業 と園芸を除 く自由貿易地帯を獲得できる唯一のチャ ンスは最初の時点にある。その時点ならばヨーロッパ側は,イ ギリスを ヨーロッパに結びつけるという政治的な利益 と引き換えに農業と園芸の 除外 という代価を支払う用意があるかもしれない」 と主張 した。また第 二の点についてはコモンウェルス市場での全ての特恵維持は当然不可能 となると認めた上で,政 治的には, ヨーロッパ との緊密な統合は回避 し がたいのであ り,率 先 して部分的自由貿易地帯を形成することによって こそ少なくとも特恵の一部を維持する可能性が生まれる,そ してコモン ウェルス農産物について全 く新たな政策を作 り出せば,そ の輸入を増や しイギリスのコモンウェルス市場での特恵維持の譲歩を引 き出せる可能 性があると反論 した。同席 した商務事務次官リーも,特 恵の全てを維持 しようと思えばその代価は高 くつきす ぎるし,何 のイニシアチブもなし で放置 したら,「個々のコモ ンウェルス諸国との見苦 しい一連の交渉に ようて次第に特恵を喪失するという重大な危険に直面するであろう」 と 述べた 1231。
これらの意見に対してヒースコー ト=エ イモリは,オ タワ協定はいず れ長続きはしないであろうからイギリスは何 らかのイニシアチブを提示 すべきであろう, またヨーロッパにおける自由貿易地帯の外部にとどま るよりは内部に入るべきである,農 産物を除くヨーロッパ自由貿易地帯
( 6 2 )
は,新 イニシアチブであ り同時に妥協でもあるという点でメリットを持 つであろうとまでは同意 したが,新 イニシアチブの結果 として国内農業 生産の全体量が減少 してはならないとも主張 し,商 務省が求める農産物 輸入拡大のための農業政策見直 しが可能かどうかについてはなお検討す
る必要があると述べた い)。
5月 22日 には,先 の商務省内会議で作成が決定 されていた商相名で
の覚書文書が完成 し,「ヨーロッパにおけるイニシアチブ」と題 してマク
ミラン主催の閣僚会議出席閣僚および首相に配布された。ソーニクロフ
トは冒頭で,イ ギリスはこれまで,GATTに 体現される多国間国際貿易
枠組みと帝国特恵 という差別的貿易制度の双方からメリットを享受 して
きたが,い まやその双方が 「同等の危険」にさらされていると警告を発
していた。オタワ協定については,現 状を可能な限 り長 く維持すること
が商務省 としての提言であるが,す でにオース トラリアから見直 し要求
が出されている。また共同市場が成功すれば,西 ヨーロッパの主要工業
国市場からイギリスは関税障壁で隔てられるが,逆 にこれが失敗すれば
イギリスの参加拒否がその主要な原因として非難されるというジレンマ
にイギリスは直面 している ° つ 。「 何 もしない」 というのは最 も魅力的か
もしれないが,最 も困難かつ危険でもある。クラーク作業部会が提示 し
た六つの具体的構想について言えば,A,B,Dは 上記問題への対応策で
はないし,Cは ,OEECの 場で微温的な関税削減の議論をするだけで時
間稼 ぎにしかならない。Fに は大 きな問題がある。コモンウェルス側が
主に利益を期待するのは農業分野であ り,そ れはヨーロッパ諸国側から
は最 も譲歩 しがたい部分であろう。また北米 とヨーロッパ =コ モンウェ
ルス間の関税障壁を構築することはカナダや合衆国から嫌悪されるであ
ろう。Eに は多 くの魅力があるが,全 てのヨーロッパ産品への関税撤廃
は, コモンウェルスがイギリス市場で享受する特恵の廃上を意味 し, コ
モンウェルス市場でイギリスが享受する特恵の維持は期待できない。そ
論 説
こで浮上するのが, ヨーロッパ との 自由貿易地帯形成 を提案するが,農 業 ◆園芸分野の除外 を絶対条件 として明確 にするとい う案である。 コモ
ンウェルス諸国,特 に南半球の旧自治領はイギリス市場への農業製品輸 出につ き特恵 。自由参入が維持 されれば,工 業製品輸出で ヨーロッパ諸 国 と比較 して差別 を受けて もその実質的な利益は保護 される。 またイギ リス国内業者 に対 して もコモ ンウェルス市場 での特恵削減の引 き換 え に, ヨーロッパ市場への輸出機会の拡大 という代償 を提示できる。そ し てこの構想 に加 えて何 らかの形でコモ ンウェルスおよびョーロッパ側に 自由貿易地帯 とは別枠組みで農業輸出についての有利 な取 り決めを提示 で きれば,イ ギ リスの利益 は守 られ合意形成が可能である, というのが ソーニクロフ トの主張であった゛°。
この ソーニ クロフ トの提言 に対 して首相 イーデ ンは簡潔な賛意 を示 し②
,具 体的作成 に関与することが求め られる関係省庁内で もおおむね 商務省案へ の賛同が示 されは したが, まだ懐疑的な見解 も消え去 っては いなかった。
外務省では,ラ イ トによってソーニクロフ トの覚書への評価 を兼ねて 5月 31日 の閣僚会議 に備 えての外相用 ブリーフが作成 された。彼は商 務省案 について,(a)Eの 修正版 を提唱するのならそれは確実に実現可能 なものでなければな らない,(b)合衆国の支持を確保することが重要であ る,(C)メッシナ構想 の主唱者たちか らも賛同を得 るべ く予備的な打診 も 必要であろう, と指摘 し, これ らを踏 まえてロイ ドに対 しては,商 務省 案 を含 む各種提案の中で,最 大公約数的な支持の得 られる合意を形成す
るよう働 きかけるべ きであると助言をおこなったの。
これに対 して次官キャッシァは 「同意するが一点だけ留保 したい」と して, 新 イニシアチブ採用の可否は西ヨーロッパの分裂を回避するとい う政治的理由により決定されるべきではなく,経 済的利害を検討して, それが最善と考えられる場合にのみ,商 務省案のようなヨーロッパとの
(64)
経 済 的 関係 強化 が はか られ るべ きで あ る と述べ た。 も しも ドイ ツの 中立 化 や西 ヨー ロ ッパ の分 裂 な どの事 態 が生 じる とす れ ば, そ れ は大 陸諸 国 側 の政 治 的決 断か ら生 じる ものであ り, イ ギ リス に よるいか なる経済 的 イニシアチブによってもそれを回避することは不可能であるというのが 彼の主張であった。「 言葉 をかえるならばもし我々が ヨーロッパの仲間 入 りをするのなら目を見開いて正 しい理由に基づいてそうすべ きであっ て, ヨーロッパ とともに経済的統合に前進すると同時に前世紀以来の七 つの海にまたがる貿易の推進 とを維持できるとの怪 しげな信念による外 交問題についての推測的理由に基づ くべ きではないのである。 」短期的 にはヨーロッパにおける経済的イニシアチブから政治的利益は得 られる であろうし,外 務省 としてもそれを支持するのはやぶさかではない。 し か し,「経済省庁によって間違った責任ある立場に追いや られてはなら ない」 というのがキャッシアの考えであった 1291。
大蔵省では,マ クミラン自身はクラークに対 してソーニクロフ トの覚 書に言及 しなが ら 「 商務省の文書についてのコメントを寄せてもらいた いが,し か し実際のところ Eで はないだろうか ?」 と述べ,商 務省案へ の賛意を示 していたが ° ①
,依 然 としてローヮンは新イニシアチブには強 く反対 してお り,結局はクラーク作成のブリーフ,ローワン作成のブリー フという二つの対立する文書に,ギ ルバー トが付加的なブリーフを添え て 5月 29日 に提出するという異例な形で蔵相への助言がおこなわれた。
クラーク作成のブリーフは,当 面,蔵 相はEも しくはFに 集中すべ き であるが,Eと Fの 間では,商 務省案に沿った形での Eの 変種,す なわ ち農業を除 くヨーロッパ 自由貿易地帯を採るべ きであると勧告するもの であった。作業部会報告書作成段階ではFが 有望 と考えてぃたが,現 時 点では商務省の議論に同意するというのがクラークの考えであ り,Fに 対 しては,多 様な利害を持つコモンウェルスからは一致 した支持が期待
できず,新 たな大型の差別的貿易ブロック形成にはアメリカからも強い
論 説
反発が生 じるだろうと彼は指摘 していた CD。
一方,Eに ついてクラークは,も し閣僚たちがそれを採用すれば,ヨー ロッパは 「まず間違いなくそれに飛びつ く」であろうし,合 衆国もそれ を 「 容認するしかない」だろう, またい くつか問題はあるがコモンウェ ルス側 も深刻な反対はしないであろうと述べていた。帝国特恵への影響 は相対的には小 さなものであ り,国 内産業保護 と対 コモンウェルス関係 について原則的に問題がなければ,具 体的計画の立案は早急に可能であ る, もし問題があるとすれば自由貿易地帯形成によリイギリスが ヨー ロッパ とのより強固な統合へ引 き込まれるのではないかという点であろ うが, ヨーロッパ との統合強化の可能性を提供することは,イ ギリスの 対外 コミットメント削減をも可能にするものであ り,将 来の国際情勢の 変化によっては,む しろEの メリットにもなりうるというのがクラーク の意見であった 0。
クラークはまた閣僚たちが Eと F双 方を却下 した場合にはどのよう な対応をすべ きだろうかとも問いかけ,共同市場が形成された場合には, Eだ けが 「 協力関係形成の可能な唯一の形態」であ り, もしそれを却下 するのであれば,必 然的に 「 我々はメッシナ ・プロジェク トを完全に抹 殺 しなければならない」, しか しA〜 Dま での組み合わせに,さ らに何 らかの強力な世界規模のイニシアチブを追加 したとしても,メ ッシナ構 想の抹殺は困難であろうと示唆 し,事 実上,E以 外の選択肢はないとの 考えを示 していた 6°
。
一方,同 時に提出されたローワン作成のブリーフは,経 済面において は従来か らのコレクティブ 「アプローチの維持を勧告 し,Eで あれ他の ものであれ,ク ラーク作業部会報告にある構想の採用には反対 し,新 た なヨーロッパヘのイニシアチブは NATOに おける政治的協議の拡大 と いう形で追求すべ きであるというものであった。ローワンによればコレ クティブ ・アプローチの目的は,ポ ンドの交換性を回復 し世界規模での
( 6 6 )
貿易 と決済の自由化をめざすことであ り,そ れはコモンウェルスを統一 し,大 西洋 ・ヨーロッパ ・コモンウェルスという三つの輪の中心にある イギリスの世界規模の利害を考慮 した上で, ヨーロッパに対 しても真の 主導権発揮の機会をイギリスに与えるものであった。それに対 して,E の採用はヨーロッパの一部を支援 し,合 衆国から一時的な賞賛を得るた めだけにこれまでの経済政策を放棄することを意味するのであ り,ア メ リカは当初は賞賛 して くれても,以 後 「完全なメッシナ共同市場への参 加への恒常的圧力」が生 じるであろうとローワンは警告 していた。そう なった場合,イ ギリスは,「何 らかの形の政治的統合 というメッシナの最 終的目的」を受け入れることができず,同 時にアメリカからは統合への 圧力 と矛盾する世界規模での自由貿易実現への圧力 も継続的に加えら れ,極 めて困難な立場に追いや られるというのが彼の主張であった゛ °
。 これらの議論を根拠に,ロ ーワンは 「全体 として私は,ク ラーク委員 会によるものであれ商務大臣によるものであれ,イ ギリスがヨーロッパ でイニシアチブをとることは大いに不利益をもたらすものだと考える」
と述べ,そ の可能性は極めて低いが, もしヨーロッパ共同市場実現への
「 真正の」動 きが生 じたならば,コ モンウェルスおよび他のヨーロッパ 諸国 と協議 して Eの 線で動 くべ きであろうが,現 時点ではコレクティ ブ ・アプローチに集中すべ きであると提言 していた0。
ローワンも,西 ヨーロッパ との関係強化の必要性その ものは認めてい たが,「イニシアチブ提案の場 はメ ッシナの前線 よりもNATOの 政治 ― 軍事的前線」であ り,OEECに おける経済問題の議論 と同程度に NAT0 で政治的問題が議論で きれば,対 ヨーロッパ関係上 も, ヨーロッパ =北 米関係上 も,真 の前進の可能性があるというのが彼の考 えであったG°
。 これ らの対立する二つのブリーフをマクミランに提出するに当たって ギルバー トは,問 題の重要性 と省内の大 きな見解の相違 を考慮 して,あ えてそれぞれを同時に提 出 した と述べ,Eも しくは Fの 政策 としての是
論 説
非について彼 自身の論評は加 えてはいなかった。彼の文書の主な内容 は,閣 僚会議参加予定の各省庁次官級幹部が 5月 28日 に非公式に開催 した会合での意見分布を紹介 し, さらにその場での合意に基づ き,今 後 の検討作業の進め方についてブリーフするというものであった に つ 。
ギルバー トはまず,日 程上の問題 として,6月 27日 より開催のコモン ウェルス首脳会議および 7月 16〜18日開催の OEEC閣 僚理事会までに は,Eな いしFに ついての詳細な検討を終えることは不可能であ り, し たがってこれらの機会に新イニシアチブ検討中であることを明示すべ き ではないと勧告 していた。ついで彼は,Eや Fの ような大規模なイニシ アチブの必要性そのものについて省庁間で大 きな意見の相違があるとし て,外 務省 と商務省の見解 をそれぞれ紹介 していた。それによれば,ま ず外務省の考えは,(i)新イニシアチブは, ヨーロッパに対する政治的救 済策 としてではなく,イ ギリス経済への利益の有無によって採否を決定 すべ きである,(五)新イニシアチブの有無と関係なくフランスの共同市場 参加の可能性は低 く,仮 に共同市場が完成 してもドイツの西側への拘束 としては不充分である,(血)ドイツの問題はヨーロッパ と北米の双方を含 む枠組みの中で対応すべ きであるというものであった。一方,商 務省の 考えは,(i)ド イツの封 じ込めのためには新イニシアチブが不可欠である, (ii)長 期的にはコモンウェルスとの関係は衰えるので, ヨーロッパ との自 由貿易地帯形成はイギリスにとっても利益があるというものであるとさ れていた ゛ °
。
最後にギルバー トは, この問題は政治的に極めて重要であ り,最 終的 決定は閣僚によるものでなくてはならないと述べ,今 後の検討課題 とし ては,(1)自由貿易地帯構想に農業を含むべ きかどうか,(五)コモンウェル スの反応はどのようなものとなるか,(面)新イニシアチブが既存のコレク ティブ 。アプローチと両立するかどうかの三点を指摘 していた ゛ ω 。
( 6 8 )
5
5月 31日,対 ヨーロッパ新イニシアチブに関する関係閣僚会議は,マ クミランの司会により大蔵省において開催された。前節で述べた招請状 を受けた閣僚たちに加えて官僚 として大蔵省か らクラークとフイガース も参加 した。検討の素材はクラーク作業部会報告書 と5月 22日付の商 務省覚書であった。まずマクミランは,イ ギリスにとっての選択肢 とし て,「何 もしない」,E,F,の 三つを挙げ,「何 もしない」という選択肢は, 短期的には帝国特恵 も維持できるし,メ ッシナ構想が失敗するのであれ ば最 も魅力的な選択肢 となるだろうが,長 期的には確実にヨーロッパを 弱体化 させ,米 ソと比較 してほとんど意味のない存在にしてしまうもの であるとして退けた。残る二つのうち Fに ついては,魅 力はあるが 「時 代遅れ」であるとして,彼個人の選択はEで あることを明らかにした ω)。
外相ロイ ドはこれに対 して,長 期的にはヨーロッパの地位低落回避の ために何 らかの行動が必要であることには同意するが,短 期的にはどの ような行動が最善かを決めるのは極めて困難であると述べた。経済面で の行動はそのメリッ トの判定が難 しく,む しろ,軍 事面での NATOや 経済面での OEECに 相当する大西洋共同体を基礎 とした政治的組織 を 形成することが新イニシアチブにふさわしいのではないかというのが彼 の主張であったが,同 時に彼は,他 の閣僚たちがヨーロッパにおけるイ ニシアチブを不可避 と考えるならそれを支持するとも述べていたにD。
より積極的にマクミランの意見に賛意を示 したのは,ヒ ースコー ト=
エイモリであった。彼は,政 治的存在 としてのコモンウェルスの長期的
存続の可能性は低いとして,Eに 基づ く真剣な検討が必要であると主張
した。ただし,工 業製品についてヨーロッパ諸国と自由貿易地帯を形成
しなが ら,同 時にコモンウェルス市場でイギリスが享受する輸出特恵を
維持するには, コモンウェルス諸国からの,イ ギリスヘの農産物輸出を
論 説
増加させるという代償が必要であろうが,そ の手段として,国 内食品需
要 を増大 す るの も, 国 内農業 生 産 を削 減す るの も, どち らも極 め て困難 であろうと彼は指摘 した 1422。
経済官庁側の提案に真っ向から反対 したのは, コモンウェルス関係相 ヒュームの代理 として出席 していた枢密院議長ソールズベリと植民相 レ ノックス=ボ イ ドという,帝 国の遺産 としてのイギリスの政治的地位や 経済的権益 を代表すべ き立場 にある二人であった。ソールズベ リはま ず,商 務省覚書は, ドイツの中立化 ・ヨーロッパ分裂の可能性,帝 国特 恵解体の可能性 という二つの 「 危険」を誇張 してお り,む しろ,Eの 採用 こそがコモンウェルスの解体 とその合衆国への接近 という危険を増大さ せると主張 した。一方,Fに ついては,実 現可能であれば優れた構想で あるが,合 衆国をツト 除しての実現は困難であるし, コモンウェルス諸国 も大半が加盟を望まないであろう, したがって,検 討すべ きは A〜 Dで あ り,当 面はEも Fも 却下すべ きであるというのが彼の意見であった。
そ してレノックス=ボ イ ドもこれと完全に一致する見解 を述べた t431。
これらの否定的見解への反論はソーニクロフ トによってなされた。彼 はまずロイ ドの見解について,確 固たるイギリスの対 ヨーロッパ政策を 定めず して,新 たな政治的協力の場を作ることは望ましくないと指摘 し た。ついでソールズベリとレノックス=ボ イ ドに対 しては, コモンウェ ルスエ業製品のイギリス市場への自由参入は継続され,そ の農産物輸出 のイギ リス市場での特恵 も継続 されるのであ り,そ こに付 け加 えて, GATTや OEECの 制約か ら離れた立場で,何 らかのイギリス市場での
コモンウェルス農産物消費拡大の方法を提示できれば, コモンウェルス にも充分に魅力的な提案は可能であ り,Eに よってコモンウェルス解体 が促進されることはないと反論 した f44)。
コモンウェルス農産物のイギリス市場への輸入拡大のために実際にい かなる方法が可能なのかはソーニクロフ トは言及 してお らず,そ の意味
( 7 0 )
で彼 の主張 はヒースコー ト=エ イモ リの示 した懸念 に対 しては何の回答 にもならない ものであったが, ともか く,閣 僚たちは,商 務省案 に沿っ た形で Eの 修正 をお こない,ヨ ーロッパ とコモ ンウェルスの双方 に魅力
的なものとすることが 「 可能ならば」 ,相 当に魅力的な提案にはなると合 意し,官 僚たちにその具体的検討を委ねることを決定 した 得)。
会合の結論は,「1.作 業部会報告にある各種の構想の中で,A,B,D は当面,予 備 とする。 2.Cの 構想については検討は進めない。 3.E の構想について,特 に下記の点を考慮 してより詳細な検討をおこなう : 一(a)商 相の提案する線に沿って, この構想をコモンウェルスに対 してよ
り魅力的なものとするべ く,工 業製品のイギリス市場への自由参入の維 持,農 産物への特恵協定の継続,そ しておそらくは購入保証協定など何 らかの形でのコモンウェルス産農産物へのイギリスでの市場拡大を含む 形で拡張する,(b)一定の期間を通 じて現存の対 ヨーロッパエ業製品保護 関税 を廃止 してい くことのイギリス産業への影響,(C)この構想が,通 貨 交換性回復 とGATTに ついてのコレクティブ ・アプローチに与える影 響および共存可能性,に )このような構想を提案することを決定 した場合 の工程表 ;その実行は, どの程度速やかにあるいはゆっくりとおこなえ るか, どの程度速やかにその効果が現れるか。 4.コ モンウェルス関係 省に,必 要であれば植民省 とともに,今 後,10か ら15年 間の間のコモン
ウェルスの発展の可能性およびコモンウェルスにとって最 も適合的な全 般的な世界の政治経済的パターンについて検討することを求める。 5.
これらの検討が進められる間は,そ の結果望 ましいと考えられるものと 両立 し得ない行動方針にはコミットしないことが重要である。 したがっ てオース トラリア (との関税交渉)(括 弧内引用者)に ついては,お そら くは小麦を対象に,短 期的取引の基盤が至急に見つけられなければなら ない ω
」というものであった t471。
この決定を受けマクミランは,議 会が夏季休会に入る前に閣議レベル
論 説
での議論を開始 し, 9月 には新イニシアチブについて正式な閣議合意が 得 られるよう作業を進めることを指示 した。作業の取 りまとめ役は再び クラークに委ねられたが,非 公式な省問組織であったクラーク作業部会 とは異なり,今 回はギルバー トが委員長を務める次官級常置委員会であ る経済運営委員会の監督下におかれ,大 蔵,商 務,外 務, コモンウェル ス関係,植 民,農 水食糧の各省およびイングランド銀行の代表で構成さ れる正式の小委員会 「 連合王国の対 ヨーロッパ ・イニシアチブに関する
小委員会」(̀the Sub̲Committee on the United Kingdom lnitiative in Europe'),通称,EI(European lnitiative)作 業部会によって検討作業が
おこなわれることとなった。そしてこの新たな体制の整備 とともに,新 イニシァチブ候補たる,農 業を除 くヨーロッパ 自由貿易地帯構想には, これまでの A〜 Fの 各構想に引 き続 く新たな構想 として 「 Plan G」とい う名称が与えられた い)。
Plan Gという名称は以後,自 由貿易地帯構想が正式なイギリス政府提 案 として対外的に公表されるまで継続的に使用 されることとなり, この 5月 31日 の閣僚会合が,結 果的には,農 業を排除するというその基本的 枠組みを定めることになった。この時点でのマクミランおよびソ ーニク ロフ トの政策立案過程への関与については,い かにすれば他の閣僚たち の支持が得 られるかを重視するものであ り,農 業を排除する自由貿易地 帯がヨーロッパ側には魅力に乏 しいと警告する 一部官僚たちの声にもか かわらず, 6カ 国および他のヨーロッパ諸国にとっての受け入れ可能性 を軽視 してお り,イ ギリスがヨーロッパ諸国に対 して持つ影響力を過大 評価するものであったとの指摘がミルワー ドやエリソンによってなされ ている の)。
筆者 も基本的にそのような評価は妥当と考えるが,同 時に, それを閣僚たちのみの責任に帰することは困難であるとも考える。確か に閣内での合意獲得は閣僚個人の積極的関与な くしては不可能である が,官 僚が準備 し,閣 僚に提示される選択肢 としてそもそもA〜 Fで あ
( 7 2 )
れ,Plan Gで あれ,根 本 的 に,イ ギ リス発 の イニ シアチ ブは大 陸の統合 主義者 たちが唱 える一見壮大 な構 想 よ りもはるか に実際 的であ り,直 ち に歓迎されるはずであるという,あ る種の知的な優越感を基礎にするも のであったとの印象を受けぎるを得ない。確かに農業排除に無理がある ことを指摘する声は官僚 レベルで存在 したがそれは明らかに圧倒的な少 数意見であった い の 。そしてまさにイギリス政府内においてこのような, 彼 らが言 うところの現実的な構想に向けての決定がなされつつある時
に,官 僚であれ閣僚であれイギリス政府の多数が,そ れを非現実的と考 え,成 功をなお危ぶんでいたメッシナ共同市場構想は着実にその実現へ 向けての進展を遂げつつあった。
6
4月 21日 クラーク作業部会報告 とほぼ同時に, 6カ 国によるスパ ー ク委員会報告が公表 され,関 税 同盟形式の 6カ 国共同市場 は 4年 を一段 階 として三段 階計 12年 (最大 3年 追加の可能性 あ り)で 実現 される,関 税同盟 と第三国 との間に何 らかの協定 を結ぶ可能性 はある,共 同市場運 営組織 として政府間で全般的経済政策の調整 をお こなう 「閣僚理事会」
(̀a Council of Ministers')と加盟国政府推薦の委員か らな り実際上の 主要決定 をお こなう 「欧州委員会」(̀a European Commission')が設置 される,特 に欧州委員会が最重要 な機構 とされる, 6カ 国間の通商の拡 大 と均衡 のためには農業分野の除外 は不可能である,欧 州委員会が農業 問題の検討 をお こない 2年 以内に勧告 をお こなう, といった点が明 らか にされた゛D。
5月 29・30日 にはベニスで 6ヵ 国外相会談が開催 され,終了後,スパー ク委員会報告 を EURATOMと 共 同市場設立のための条約起草の基礎 と し,6月 26日 以降,ス パークの司会でブラッセルにて条約起草のための
論 説
会議 を開催す るとの共同声 明が発表 され,同 時にイギ リス政府 に対 して もこの会議への参加招請が伝 え られた0。
この招請に対 して,イ ギ リス では外務省 によりその対応が検討 されたが, 6カ 国側の招請は,単 なる オブザーバー としての参加 を求めるものではな くスパーク委員会報告の 承認 と条約起草作業への完全 な参加 を求めるものであ り,受 け入れ不可 能であるとい うのがその結論であった153b。
外務省内においては,ベニス会議での 6ヵ 国間の合意にもかかわらず, というよりもむしろ,そ こで示 された参加国,特 にフランスの要求内容 に接することにより,共 同市場実現の可能性についての悲観的な観測が さらに強まっていた。スパーク委員会報告にあった,共 同市場では関税 削減 と同時に賃金水準 ・賃金規則 。雇用者の福祉負担などの社会政策の 調和 も進められるべ きであるという勧告には6カ 国全てが同意 していた わけではなかったが, フランスは第一次関税削減ラウンドまでに,社 会 政策調和に向けての手続 きを制定することを要求 し,そ れなしでの自国 市場の開放はあ りえないと主張 していたし, 自国の海外領土 も共同市場 の対象範囲に含められねばならないとも主張 していた鰊)。
こうして外務省は, 6ヵ 国駐在のイギリス大使館からベニス会談の成 功 を指摘する情報が複数寄せ られたにもかかわらずその成果を疑問視 し,イ ギリス政府内では共同市場成功の可能性については悲観的な観測 が主流のままで,Plan Gの 本格 的検討が進め られてい くこととなっ た (")。
7
5月 31日 の閣僚会議後,Plan G検 討のための新組織,EI作 業部会 は, マクミランの意向に従 って 9月 の閣議決定を目指 して報告書の作成作業 をお こなうことになったが,6月 中旬 までは,部 会の構成 ・検討課題や
( 7 4 )
手続 きの整理な どの準備作業が大蔵省 内で進め られ,実 質的作業の開始 は 6月 下旬 まで待 たねばならなかった゛の
。 この大蔵省主導のスケジュー ルについて不満 を持 ったのは商務省であ り,ソ ーニクロフ トは 6月 中, マクミランに対 して検討作業の迅速化 を求め続 けた。
商務省側が このような要求 をした背景 には, 6月 末のコモ ンウェルス 首脳会議 と同時 に開始 されることになっていたオース トラリア とのオ タ ワ協定改定交渉 に臨むためには,早 期 に将来の通商政策枠組み を決定 し な くてはな らない とい う認識があった。 6月 8日 には,商 務次官 リーに よって進め られていた帝国特恵の将来についての包括的再検討報告が主 要 閣僚 の構成す る内閣経済政策委員会 (the Economic Policy Commit―
tee:EPC)に 提 出されていた。 リー報告 は,特 恵制度が コモ ンウェルス 市場 において,ア メリカ製品, ヨーロッパ製品に対す るイギ リス製品の 優位性 を確保 させ る効果 を認めていたが,「独 立 した コモ ンウェルス諸 国においてはすでにコモ ンウェルス特恵 システムには活発 な生命 は残 さ れていない」 とも述べてお り, も しも状況が許すな ら, コモ ンウェルス 産品への輸入課税賦課の法的禁止 を撤廃 し,将 来の制度変更の可能性 を 残す ことを勧告 していた゛の
。
この報告 に対 しては,イ ギ リス側が特恵制度改変 に乗 り出せ ば,イ ギ リス国内か らの制度変更圧力 も強 ま り, コモ ンウェルス諸国 も第三国に 自国市場 を開放す る形での帝国特恵の再交渉 を求めて くる危 険がある, またイギ リス国内の特 に保守党支持層か らの コモ ンウェルス との連帯支 持 の声 も考慮する必要があるとして,イ ギ リス政府 は積極的な改変作業 には乗 り出すべ きではない とい う決定 をお こなった。 しか し商務省 は, 帝国特恵 とは別 に, コモ ンウェルス側 にもある程度 の魅力 を持つ対 ヨー ロ ッパ通商政策上の新 イニシアチブを早期 に確定すれば,帝 国特恵改変 への圧力 を回避で き,将 来,特 恵存続が困難になった場合 にもより柔軟 な対応がで きると考 え,迅 速な検討作業 を要求 した。 これに対 して大蔵
論 説
省 は,イ ギ リスが ヨー ロ ッパ にお ける貿易 上の イニ シアチ ブ を考慮 中で あ る と早期 に公表す る こ とはむ しろ短期 的 にはオース トラ リアや他 の コ モ ンウェルス諸 国の特 恵制度改訂要求 を高める危 険がある と考 え,商 務 省 の要 求 に反対 した 6い
。
6月 8日 ソーニ クロ フ トは, 5月 22日 付 の商務省 覚書 を同封 した書 簡 をイ ー デ ンに送 り,「 ヨー ロ ッパ お よび コモ ンウェルス にお け る事 態 の展開は遠 くない将来,我 々にかつてないような決断を採ることを強い るであろう」 と述べ,帝 国特恵の侵食を補 うためにもヨーロッパ との通 商関係強化が必要であ り, これはオース トラリアとの関税交渉において も重要な要素 となるとして,首 相を含む閣僚が事前に意見交換をするこ とを提案 し,イ ーデンからの同意を獲得 した゛"。
ソーニクロフ トは6月 9日 にはマクミランにも書簡を送 り, 6月 20 日オース トラリア首相メンジース (Robert Menzies)イ ギリス到着, 6 月 27日 コモンウェルス首脳会議開幕, 7月 16日マクミランとソーニク ロフ トOEEC閣 僚理事会出席 といった日程からは7月 中旬に閣議 レベ ルで新イニシアチブについての決定を下すのは不可能であるが,「7月 第一週 までには,充 分な背景と分析 を盛 り込んだ文書を用意 し,閣 議が それに基づいて基本的な問題を議論 し,広 い意味での政策決定を下すこ とが可能になるよう目指すべ きである」 と提案 し,さ らにコモンウェル ス首脳たちにも 「大雑把な形では我々の目指 しているところを率直に伝 えるべ きである」 と述べていた ①
。
これに対 してマクミランは,6月 18日,ソ ーニクロフ トとイーデンに それぞれ書簡を送 り,ま ずソーニクロフ トに対 しては,OEEC閣 僚理事 会終了まではEI作 業部会の報告完成を待ち帰国後に関係閣僚間で非公 式に議論をおこなうべ きである,議 会の夏季休会までに閣議に提案をお こなう時間的余裕は充分にあ り,コ モンウェルス首脳会議 とOEEC閣 僚理事会では現時点で提出されている以上の発言をすべ きではないと述
( 7 6 )
ベ, コモ ンウェルス首脳会議においてイギリス政府 として提示すべ き通 商問題 についての声 明文草案 も同封 した D 。一方,イ ーデ ンに対す る書 簡の中では, マ ク ミランは, 5月 3 1 日 閣僚会議の結論 を同封 した上で, 過去数 ヶ月 にわた り通商政策 を変更 し, ヨーロ ッパ との よ り緊密 な協力 関係 を築 く可能性 を検討 して きたが,イギ リス国民の支持 を得 られ, ヨー ロッパ ・コモ ンウェルス 。合衆国にも受 け入れ られる実行可能なプラン
が形成できるかどうかはまだ明言できないとだけ説明し, コモンウェル ス首脳会議でどう発言すべ きかは商相 との間で検討中であると述べてい た ⑫
。
これ らの書簡 を受 けイーデ ンは 6月 22日 にオース トラリア との通商 交渉問題お よび対 ヨーロッパ経済イニシアチブについて関係 閣僚会議 を 開催す ることを決定 し,その間にコモ ンウェルス首脳会議での声 明文 も, ソーニクロフ トか らの よ り明確 に新 イニシアチブ提 唱の可能性 を示唆す べ きとの声 を抑えて,イ ギリス政府 はメッシナ共同市場形成を視野にい れて対 ヨーロッパ経済政策 を検討中であるが,具 体的には何 の決定 もな されてお らず,必 要であれば 9月 に開催予定のコモ ンウェルス蔵相会議 において議論 をす るか もしれない とだけ説明するマ ク ミランの文案が採 用 されたω
。
6月 22日 オース トラリア通商交渉 とヨーロ ッパ共同市場 に関す る閣 僚 委 員 会 が 開催 され た。 出席 者 は,イ ー デ ン,国 璽 尚書 バ トラー
( R i c h a r d A . B u t l e r , L o r d P r i v y S e a l ) , マ ク ミラ ン, ヒ ュー ム, ソ ーニ ク ロ フ ト,ヒ ース コー ト=エ イモ リ,外 務担 当相 レデ イング (Marquess of
Reading,Minヽter of Stat6 for Foreign A」hirs)で あ り,特 に政権の中枢にあ りなが らこれ までこの問題 に関与す ることのなかったイーデ ンおよ びバ トラーにとっては,「対抗提案」=「 新 イニシアチブ」の検討開始以 来,マ ク ミランお よびソーニクロフ トと直接議論 をするは じめての機会
となった。