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企 業 と 経 営 の 概 念
一 コ ジ オ ー ル とR
.‑B.シ ュ ミ ッ ト を 中 心 と し て
海 道 ノ ブ チ カ
1.序
企 業 と経 営 の概念 は,経 済 性 と収 益 性 の概 念 と同 じ く経 営 経 済 学 の基 本 的な 概 念 で あ る。そ の概 念 規定 に よ り経 営 経 済 学 の 内容 が規定 され る。 ドイ ッ経 営 経 済 学 の文献 には 、企業 と経 営 の概 念 に つ い て さま ざま な見 解 が み られ る。 ま ず経 営 概 念 には,つ ぎの3つ の見解 が あ る。 そ の第1は,経 済 的 な概 念 と して の経 営 で あ り,第2は,技 術 的 な概念 と して の経 営 で あ り,第3は,社 会 学 的 な概 念 と して の経 営 で あ る。 第1の 経 済 的 な概 念 に は,経 営 に 家計 を ふ くむ見 解 と,家 計 を経 営 よ りのぞ く見 解 と,1つ の経 済単 位 の異 な る側 面 を企 業 と経 営 とい う概 念 で しめす 見解 が あ る。
へ
つ い で企業 概 念 に は,営 利経 済 の み を企業 と して と らえ る場 合 もあ れ ば,公 企 業,私 企 業 を 問わ ず 独 立 した生 産 経 営 を企 業 ど して と らえ る場合 もあ る。 こ
こでは,経 営 に家 計 を もふ くみ,ま た 企業 を営 利経 済 の み には 限定 しな い第2 次 大 戦 後 の代表 的 な見解 と して,コ ジ オ ール と,R.‑B.シ ュ ミヅ トの概 念 規 定 をつ ぎの2つ の視 点 よ り検討 す る。 まず 第1に,そ れ ぞ れ の概 念 規定 と先 行 す る理 論 との 関連 をあ とづけ,第2に そ れ ぞれ の規 定 の発生 あ必然 性 と歴 史 的 条 件 を社会 経 済 的 基盤 との関連 に お い て究 明す る。 この よ うな方法 に よって は
ロ
じめ て,各 々の概 念 規定 の真 の内 容 とそ の本質 的側 面 が 把握 され る。
2.コ ジ オ ー ル の 企 業 と経 営 の 概 念
コジオ ールが,企 業 と経 営 を どの よ うに規 定 し,な に を経営 経 済 学 の対象 と
'
原稿受領1977年5月30日
してい るのか,ま たそ れ と関連 して経 済 性 と収益 性 を どの よ うに と らえ て い る
ハ
の かに つ い て,1960年 の論 文 「経 営 経 済 学 の認 識 対 象 と方法 論 的 地 位」,お よ
ご あ
び1968年 の 『経 営経 済 学 入 門』 を 中心 に検 討す る こ とにす る。
まず コジオ ールは,統 一 的 な計 画 と独 自の価 値 循 環 を もつ 経 済 的 な活 動単 位
く
を経 営 と よぶ。 かれ は,ニ ッ ク リッシ ュの 『経 営 経 済』 に した が い 本源 的 な経 営 と派 生 的 な経 営 を区別 す る。 つ ま り経 営 を 家計 と企業 の上 位概 念 と して と ら
ぐるじ
え る。 ・
本源 的 な経 営 であ る家計 は,最 終 消 費 の場 であ るだけ では な く,家 計 で は 自
の
己 の需 要 の充 足 に必要 な 財が生 産 され る。 この 本来 の家 計 のほ か に コジ オ ール は,私 的 な派 生 的 家 計 もあげ て い る。 た とえ ば,消 費 者組 織 主 婦団 体,ス ポ ー ツ団体 ,教 育 機 関,消 費組 合,労 働 組 合 な どで あ る。 た だ し,こ れ らの団 体 が,構 成 員 の生 計 に役 にた つ だけ であ り,公 的 な性 格 を もた な い 場合 の み で あ る。一 般 に み られ る よ うに これ らの団体 が 外部 の もの の欲 求 を みたす な らば,
ゆ
そ れ ら は,,も は や(純 粋 な)家 計 で は な く,企 業 と な る 。
この
この家 計 にた い して派 生 的 な経 営 で あ る企 業 には,他 人 の需要 の充 足,経 済
う
的 な 独 立 性,自 発 的 に 市 場 で の危 険 を お う と い う3つ の メル クマ ー ル が あ る 。 他 人 の 需 要 の充 足 と い う メル クマ ール に よ って 企 業 と家 計 とが 区 別 され,経 済
(1)Kosio1,E.:,,ErkenntnisgegenstandundmethodologischerStand6rtderBe・
triebswirtschaftslehrè̀in:AnnalsoftheSchoolofBusinessAdministra・
tion,KobeUniversity,No.4(1960),BausteinederBetriebswirtschaf》slehre, Bd.1.BerHn1973,S.63ff.
(2)Kosol,E.:Einfilhrung'indieBetriebswirtscha∫lslehre,Wiesbaden1968.
(3)Kosol,E.:ebenda,S.23.
(4)Koso1,E.:ebenda,S.24,Nicklisch,H.:DieBetriebswirtschaft,Stuttgart ,1932,S.175f.
(5)Kosiol,E.:EinfilhrungindieBetriebswirtschaftslehre,a.a.0.,S.24 ff.
(6)Kosiol,E.:ebenda,S.25.
(7)Kosio1,E.:ebenda,S.29,コ ジ オ ー ル は,派 生 的 な 経 営 を 広 い 意 味 で の 生 産
経 営 と よ び,生 産 に は,工 業 で の 財 の 生 産 や 販 売 だ け で な く,あ ら ゆ る 種 類 の 用 役 の 生 産 や 販 売 も ふ く ま れ る 。
(8)Kosiol,E.:ebenda,S.28ff.,独 立 性 と 市 場 で の 危 険 に つ い て は ニ ッ ク リ ッ シ ュ 『経 営 経 済 』 に お け る 企 業 の メ ル ク マ ー ル と 同 じ で あ る 。
'
ノ
企 業 と 経 営 の 概 念 33
的 な 独 立 性 とい う メル クマ ー ル に よ って 企 業 が,支 店 や 部 門 や 工 場 よ り区 別 さ れ る。 こ こで 独 立 とは,企 業 が 自 己 の イ ニ シ ア テ ィ ブ や 責 任,自 己 の 計 画,経
〆
済 的 な思慮 に も とつ いて一 定 の範 囲 内 で独 自に決 定 をお こな うこ とであ る。 そ の さい企業 の独立 性 が一 定 の範 囲 内 に限 定 され て い る こ とに 注 意 しなけ れ ば な
ゆ
らな い 。 こ の範 囲 は,企 業 の 結 合 形 態 と経 済 秩 序 に よ っ て 大 き く左 右 され る。
独 立 性 の メル クマ ー ル と経 済 秩 序 の 関 係 に つ い て は,あ とで 詳 し くふ れ る こ と に す る。
歪
企 業 の第3の メル クマ ール で あ る経 済 的 な危 険 は,市 場 で の技術 的 な分業 や 経 済 的 な分業 の結 果 と して生 じる もの であ って,企 業 が みず か らす す ん で ひ き
うけ る市 場 の この危 険 は,家 計 のひ き うけ る,の が れ る こ とので きな い生 存 の
く ゆ
危 険 とは こ と な る。
これ ら3つ の メル クマ ー一ル を も った 経 済 単 位 を コ ジ オ ー ル は,企 業 とい う。
く ユき
した が って,企 業 概 念 は,非 常 に広 く,私 企 業 と公 企 業 の双 方 が企 業 概 念 の な か に ふ くまれ る。 また かれ は,企 業 を 独立 した生 産経 営 と して と らえ て い るの で,グ ー テ ソベル クとは こ とな り企 業 概 念 は,歴 史 的 な発 展段 階 や,そ の とき どき の経 済秩 序 とは 無 関 係 な概 念 と して定 式 化 され て い る。 した が って企 業 の メル クマ ール よ り利 潤 概念 は除 か れ て い る し,出 資 者が 個人 で あ るか,公 共 で
ぐユ コ
あ る か は,メ ル クマ ー ル と して は と るに た りな い も の と な る 。
ロ ケ
さ らに コジ オ ー ル は,エ グ ナ ーに も とづ き 経 営 に 公 的 な 家 計 もふ くむ 。 た と え ば,そ れ に は 国 家 の 財 政 が あ る。 こ の よ うな 公 的 な 家 計 の 特 徴 は,一 定 の 財
(安 全,秩 序,教 育,司 法,医 療 な ど)を 生 産 す る点 に あ る。 コ ジ オ ー ル は,
く む
以 上 の よ うな 経 営 を つ ぎ の4つ の カ テ ゴ リー に わ け る。
ド
(9)Kosiol,E.:ebenda,S.30.
(10)Kosiol,E.:ebenda,S.30.
(11)工6ffelho1乞,J.:Rψ ¢醜oプium4〃Be〃iebswirtschaftsle〃 θ,5.Auf1.,
Wiesbaden1975,S.20.
(12)Kosiol,E.:E伽 ノ勤7麗 〃8・ 痂4ゴ θBetrie∂swゴr'30加 メtsle〃8,a.a.0.,S.
31f.,66.
(13)Kosiol,E.:ebenda,S.26,Egner,E.:D〃Hausha〃,EineD〃8'θ 〃u〃g
εβゴ"ervotleswゴrtSchaftlゴchenGθs'alt,Berlin1952.
(14)Kosio1,E.:Ein/ilhrun、gi〃4'θB8〃ie∂swir'scha∫'ε16加8,a.a.0.,S.27.
1.家 計(自 己 の需 要 の充 足)
1.私 的 な(本 来 の,ま たは派 生 的 な)家 計(自 己 の需 要 の個 人 的 な充 足) 2.公 的 な(派 生 的 な)家 計(自 己 の需要 の 共 同的 な充 足)
皿.企 業(他 人 の需 要 の充 足 のた め の派 生 的 な経営) 3.私 企 業
4:公 企 業
た だ し,こ の よ うな広 い概 念 規定 に もか かわ らず,『 経 営経 済 学入 門 』 にお い ては 主 と して私 企業 の問題 のみ が あつ か われ て い る。 かれ は,「 どの よ うな 種類 の家 計 に つ い て も本書 で は,こ れ 以上 あつ かわ な い。 また公 企業 は,私 企
ごコうエ
業 と区 別 され な い 場 合 に の み あ つ か わ れ る」 との べ て い る。
と こ ろ で コ ジ オ ー ル は,ニ ッ ク リ ッ シ ュの 場 合 とは こ と な り,こ れ ら の企
ロ ひ
業,ま た は経 営 を直 接,経 営経 済学 の対 象 とす る ので は な い。 か れ は,ま ず 経 営 経 済 学 と国 民経 済 学 の双 方 を含 む経 済 科 学 の経 験 対 象 と して人 間 の文 化 世 界
く
を あ げ る。 この経 験 対 象 に は,企 業 で の経 済 的 な行 動 だけ で は な く,家 計,軍 隊,教 会 な どで の経 済 的 な行 動 もふ くまれ る。 そ して経 済科 学 の選 択 原 理 とし
ほ きヤ
て は,目 的 に た いす る手段 の相 対的 な稀 少 性が もちい られ る。 したが って かれ は,経 済 科 学 の認 識 対 象 を非 常 に広 くと らえて い る。
コジ オ ール は,利 潤極 大 化 を経済 科 学 の選 択 原理 と して もち い る のに批 判 的 で あ る。 か れ は,利 潤 極 大 化 のほ か に も,一 定 の利潤 の追 求,費 用 の補 償,損.
失 の極 小 化 とい った他 の規 準 が あ る と考 え る。 それ に よ って病 院 や交 通 経営,
こ むき
公 的 な 官 庁経 営 も経 営 経 済 学 的 に研 究 で き る と主 張 す る。
稀 少 な 手段 で人 間 の欲 求 をで き るか ぎ り充 足 しよ う とす る 目標 は、 あ らゆ る
ノ
(15)Kosio1,E.:ebenda,S.28.
(16)Kosio1,E.:,,ErkenntnisgegenstandundmethodologischerStandortderBe・
triebswirtschaftslehrè̀a.a.0.,S.5.
(17)Kosiol,E.:ebenda,S.2.
(18)Kosiol,E.:ebenda,S.2,こ の 目 的 に た い す る 手 段 の 稀 少 性 と い う 選 択 原 理 は, ハ ン ス ・ マ イ ヤ ー に も と つ い て い る 。
(1g)Kosiol,E.:ebenda,S.6f..Kosiol,E.:EinfithrungindieBetriebswirt・
schaftslehre,a.a.0.,S.266.
企 業 と 経 営 の 概 念 35
経 済 行 為 を実 質 的 に 説 明す る もので あ る。 したが って かれ は,欲 求充 足 を経 済 活 動 の実質 目標 とよび この実質 目標 を 市 場 で売 られ る給 付 の種類,量,時 期 と
こ ゆ
理 解 して い る。 ところ で人 間 には 合理 的 に 目標 を達 成 しよ う とす る意 思が あ る の で,合 理 的 な方法 や形 式 で経 済 活 動 がお こなわ れ る。 経 済 活 動 の合理 性 を最 大 に しよ う とす る 目標 は,実 質 目標 とは こ とな り,形 式 的 な 性 格を お び るの で 形 式 目標 とよば れ る。 そ して コジ オ ール は,実 質 目標 を経 済 科 学 の方 法 的基 礎
ゆ り
づ け と して は不 適 当で あ る と し,主 と して形 式 目標 を 問題 とす る。
この形 式 目標 の達 成 度 を しめす のに,経 済 性概 念 が もち い られ る。経 済 性 は,
こ
か れ に よ れ ば2つ の 層 か ら な る 。 す な わ ち,量 的 な 経 済 性(mengenmaBige Wirtschaftlichkeit)と 価 値 的 な 経 済 性(wertmaBigeWirtschaftlichkeit)で
あ り,前 者 は 技 術 性(Techni2itat),後 者 は 狭 義 の 経 済 性(6konomitat)と よ ば れ る 。 企 業 の狭 義 の経 済 性 は,収 益 性(Rentabilitat)と 同義 で あ る 。
コ ジ オ ー ル の 場 合,収 益 性 は,即 利 潤 極 大 化 を 意 味 す る の で は な く,か な り
きヤ
広 い概 念 で あ るが,こ こ で わ れ わ れ は,シ ジ オ ー ル に お い て経 済 性 の な か に 収
、
益 性概 念 が ふ くまれ て い る点 に 注 目 した い。 経 済 性 が 本来,何 を意 味す る もの で あ るか がお のず と明 らか で あ る◎
収益 性 に は 絶対 的 な収益 性 と相 対 的 な収 益 性 が あ り,絶 対 的 な収 益性,す な わ ち成果(利 潤 また は 損 失)は,つ ぎの よ うに あ らわ され る。
計 算 的 な成 果=給 付 一原 価 収 支 的 な成 果=収 益 一費 用
また相 対 的 な 収益 性 に は運 動 収 益 性(Bewegungsrentabilitat)'と 有 高 収益
(20)Kosio1,E.:ebenda,S.261.
(21)Kosio1,E.:ebenda,S.59,Kosiol,E.:,,Erkenntnisgegenstandundmethb・
dologischerStandortderBetriebswirtschaftslehrè̀a.a.0.,S.3.
(22)K・ ・i・1,E:・Eげ 〃 働 ン・ ゆ 励 ・B・ 〃 ゴ・δ・傭 ・・加 駕 ・鳩a・ ・ α,S・
20ff.
(23)Lδffelholz,J.:Rθ1》6'"oriu〃24θ7Bθ'7'θ うsz〃 〃'scha∫'slehre,a.a.10,,S.
856.
性(Bestandsrentabilitat)が あ り (1)運 動 収 益 性,た と え ば,
成 果
ご の
つ ぎ の よ うに しめ され る 。
販売 収益率=販 売(給 付 または収益)
(2)有 高 収益 性,た とえ ば 資 本収益 率
〔・)自 己 資本収益率 一自離 本
(も)総 資本収益率 一成果+繕 本利子
技 術 性 は,収 益 性 に よ ってわ くづ け られ た生 産 過 程 のなか で財 の流 通 時 間 の 最 短 化 や 財 の消費 の最 小化 を 命ず る もので あ り,収 益 性 目標 の手段 とな る。 と
ころ で収益 性 と技術 性 は,必 ず し も一 致 しな い。 技術 性が 低 い場 合 に収 益 性 が 高 い こ と もあ る。 また 逆 の場 合 もあ りうる。 た だ し技術 性が 上 昇す るな らば,
く
収 益 性 も改 善 され る。 〆
以 上 の べ た よ うに,ニ ッ ク リ ッシ ュに お い て 抽 象 的 な 合 理 原 則,お よ び 成 果 分 配 原 則 と して 定 式 化 され た 経 済 性 概 念 は,レ ー・マ ソを へ て コジ オ ー ル に お い
ば ひ
て さ らに 精 緻 な もの に され て い る。
コ ジ オ ー ル の 企 業 と経 営 の 概 念 対 象 の 問 題 経 済 性 の 概 念 に つ い て み た が,こ こで か れ の 企 業 の メル クマ ー ル の1つ で あ る 「独 立 性 」'と経 済 秩 序 との 関 係 に つ い て,グ ー テ ンベ ル クの 企 業 の メル ク マ ー ル の1つ で あ る 「自律 原 則 」 と対 比 しな が ら さ らに 論 究 し よ う。
グ ー テ ン ベ ル クは,周 知 の よ うに 経 営 を 「体 制 関 連 的 事 実 」 と 「体 制 無 関 連 的 事 実 」 とが 融 合 した 統 一 体 で あ る と考 え る。 経 営 で は,1こ の 体 制 関 連 的 事 実
(24)Kosiol.E.:EinfilhrungindieBetriebswirtschaftslehre,a.a.0.,S.
263,こ れ ら の 相 対 的 な 収 益 性 の 相 互 間 に は,つ ぎ の よ う な 関 係 が あ る 。 自 己 資 本 収 益 率=販 売 収 益 率 × 自 己 資 本 の 回 転 率
自己資本収益率一総資本収益率+(総 資本収益率一他人資本利子率)x普 含畿
(25)Kosiol,E.:ebenda,S.262.
(26)高 田 正 淳,「 コ ジ オ ー ル の 経 営 経 済 学 」,海 道 進,吉 田 和 夫 編 著,rド イ ツ 経 営 学 説 卑 』,ミ ネ ル ヴ ァ 書 房,1968年,193ペ ー一一・ジ 。
企 業 と 経 営 の 概 念 37
が,経 営 の指 導原 理 と して機 能 し,そ れ に よって経 済 体制 に特 有 の経 営類 型 が 成 立 す る。 資 本主義 経 済 体制 に特 有 の体 制 関連的 事 実 と しては,自 律原 則 と営 利経 済 原則 と単独 決 定 原則 の3つ が あ る。 した が って,生 産要 素 の体 系,経 済 性 原則,財 務 的均 衡 の原則 とい う体 制 無 関連 的 事 実 に い まのべた3つ の体制 関 連 的事 実 の くわ わ った ものが 企 業 で あ る。
こ こで 自律 とは,国 家 や そ の他 の上 部 の経 済 管理 機 関 が,個 々の経 営 の生 産
く エ
と販売 に なん ら関与 しな い こ とを意 味 して い る。 この よ うな グ ーテ ソベル クの 学 説 は,戦 後西 ドイ ッ経 済体 制 の 生 成 を背 景 に,「 競 争 秩 序 の維 持 形 成」,「社 会 的 介 入 の規 制 」,「生 産 手 段 の私 的所 有」 とい う社 会 的市 場 経 済原 理 に 対応 し て確 立 され た。 この 自律 原 則 は,そ の理 念 の1つ であ る 「社 会 的 介入 の規制 」 を反 映 した もの であ る。
これ に た い して コジ オ ・一ル の学 説 に お いて は,国 家 や経 済 秩 序 の企 業 に お よ
ぐ ヤ
ぽす 影 響 が考慮 され て い る。 これ は,1958年 の恐 慌 以降,西 ドイ ッ経 済 が 不 安 定 性 の増 大 期 に は い った こ と と関 連 が あ る。
ダ ご
グ ロ ッ ホ ラに も とつ い て コジ オ ー ル は,企 業 と国 家(経 済 秩 序)と の 関 係 に つ い て2つ の極 端 な 理 想 型,つ ま り非 現 実 的 な モ デ ル を 考 え る。 そ の1つ は, す べ て の計 画 が 経 営 内 で つ く られ る 場 合 で あ り1(内 部 に よ る 企 業 計 画),他 の
1つ は,す べ て の計 画 が 経 営 の 外 の 中 央 機 関 で つ ・く られ 経 営 に わ りあ て られ る
き エ
場 合 で あ る(外 部 に よる企 業 計 画)。 この両 者 の間 に 現 実 的 な企業 が あ る。 コ ジオ ール は,・これ を段 階 的 に5つ の類 型 にわ け て い る。
まず 第1の 現 実 的 な型 は,主 と して企業 内部 に お いて企 業 計 画が た て られ, そ の さい外 部 よ り国家 の保 護が あ る場 合 で あ る。 た とえば,国 家 は貨 幣秩 序 を
(27)Gutenberg,E.:GrundlagenderBetriebswirtschaftslehre,Bd.1.Die
Produktion,16.AufL,BerlinHeidelbergNewYork1969,S.448,溝 ロ ー 雄,
高 田 馨 訳 『経 営 経 済 学 原 理 』,第 ●1巻 生 産 編,千 倉 書 房,1957年,340ぺ ■・一・ジ,市 原
季 一,r西 独 経 営 経 済 学 』,森 山 書 店,1959年,180ペ ー ジ 以 下 。
(28)Ko蕊01,E.:Ein∫ilhrungindieBetriebswirtschaftslehre,a.a.0.,S.
58ff.
.(29)Gr㏄hIa,E.:BetriebundWirtscha∫tsordnung,1)asProblemder177irt.
schaftsordnungausbetriebswirtschaftlicherSicht,Berlin1954,S.46ff.
(30)Kosiol,E.:Einf物hrungindieBetriebswirtscha∫tslehre,a.a.0、,S.61.
維持 した り,慣 例 に応 じて契 約 法 を制 定 した りす る。 これ は企業 計 画へ の国 家 の影 響が もっ と も弱 い場 合 で あ る。第2の 現 実 的 な型 は,主 と して企業 内部 に お い て計 画 が た て られ,そ の さい外 部 よ り間接 的 に 管理 され る場 合 で あ る。 こ
の場 合に は,全 体 経 済 的 な計 画 よ り管理 方 策 が みち びか れ る。 そ の方 策 には, 貨 幣政 策,信 用 政 策,関 税 政 策,予 算政 策 な どが あ り,国 家 は,こ れ らの方 策 を利 用 して,た とえば企 業 の価 格 形 成過 程 に 影 響 を あた え る。
第3の 現 実 的 な型 は,企 業 計 画 に た いす る内部 と外 部 の 力 が 同 じ 場合 であ る。'したが って この場 合 に は,国 家 は直 接 企業 に影 響 をお よぼす 。 そ のた め の 方策 と しては 国 家に よる価格 の設 定,数 量 の 割 当て(輸 入 割 当制),投 資 の指 導 な どが あ る。第4の 現 実 的 な型 は,主 と して外 部 に お いて 企業 計 画 がた て ら れ,そ の さい企 業 内 部 か ら協 力が お こな われ る場 合 であ る。 それ は,中 央 の計 画機 関へ 企業 よ り人 を 送 った り,対 案 をた てた り,全 体 的 な計 画 を精 緻 化 す る
こ とに よ ってお こなわ れ る。
さ らに第5の 類 型 は,主 と して外部 に お い て企業 計 画 が た て られ,そ の さい 内 部 か ら中央 機 関 の全 体 計 画 のわ く内 で助 言 が お こな われ るに す ぎない 場合 で
ご ヤ
あ る。
この よ うに コジオ ール は,企 業 と国家 の関 係 を5つ の現 実 的 な類型 にわ け, 先 ほ どの べた 企業 の 本質 的 な メル クマ ール であ る独立 性 との関連 につ い てつ ぎ
の よ うに の べて い る。 す な わ ち,国 家 の重要 性 が増 す につ れ て,私 企業 や 公 企 業 に お い ては,内 部 に お け る計 画 の範 囲,つ 京 り個 々の企 業 の経 済 的 な独 立 性 は減 る し,極 端 な場 合 に は 消滅 す る と。 した が って一 企業 に とっ て本質 的 な ンル クマ ール で あ る一 企業 の独 立 性 とは,経 済秩 序 との関 係 に おけ る相 対 的
ぐち ひ
な 独立 性 に す ぎな いわ け であ る。
た だ しコ ジオ ールは,企 業 を 超 歴 史的 な もの と規 定 して お り,理 論 の一 貫 性 を 保 つ た めに,「 企業 の独 立 性 とい う事 実 それ 自体 は,経 済 秩 序 と関連 が な い。
した が って この事 実 は,体 制 無 関 連 的事 実 で あ る。 経済 体 制 に よってか わ るの (31)Kosiol,E.:ebenda,S.63f.
(32)Kosiol,E.:ebenda,S.65.
企 業 と 経 営 の 概 念'39
くヨきを
は,こ の独 立 性 とい う メル クマ ー ル の あ らわ れ か た で あ る」 とい う。 か れ は, 中 央 集 権 経 済 に お い て も この 独 立 性 とい う メル クマ ール を も った 企 業 とい う事 実 は,存 在 す る と考 え る。 す な わ ち 。 独 立 した 経 済 単 位 で あ る 国 家 が,公 的 な
ヨの
家 計 とい う役 割 の ほ か に 企 業 の 職 能 を 担 う と考 え る。 しか し,個 々 の企 業 に つ い て は,独 立 性 は もは や 存 在 しな い の で あ るか ら,こ の よ うな コ ジ オ ー ル の 考 え 方 に は 無理 が あ る とい え よ う。
以 上 み た よ うに グ ー テ ンベ ル ク と コ ジ オ ー ル の 問 に は,国 家 の 企 業 に た い す る介 入 に 関 して と らえ 方 の ち が い が あ る。 こ の ち が い の 背 景 の1つ と して,そ れ ぞ れ の 学 説 の 生 成 す る基 礎 とな った 第2次 大 戦 後 の西 ドイ ッ経 済 の 発 展 段 階 の ち が い を あ げ る こ とが で き る。 西 ドイ ッ経 済 の繁 栄 局 面 は,1958年 の部 分 的 恐 慌 現 象 に よ っ て終 っ た 。1962〜63年 お よび1966〜67年 に も恐 慌 現 象 が み ら
く ひ
れ,そ れ は 工 業 生 産 の 停 滞 に 明 確 に あ らわ れ て い る。 こ の よ うな 時 期 に は,西 ドイ ッ独 占 資 本 の 集 中 化 が,か つ て な い 規 模 で 展 開 され た 。1957〜60年 ま で に
「転 換 法 」(1956年),「 転 換 租 税 法 」(1957年)に も とつ い て 独 占企 業 に よ る子 会 社,参 与 会 社 の 吸 収 合 併,コ ン ツ ェル ン内 部 の 統 合 が 急 速 に す す み,同 一 資 本 系 列 内 の 企 業 集 中 が お こな わ れ た 。 この 合 併 に よ り,対 外 競 争 力 を 強 化 した 独 占 資 本 は,EECの 発 足(1959年)を 契 機 に 対 外 進 出 を 強 め て い った 。 こ の よ うな 対 外 進 出 と軍 事 生 産 の 拡 大 は,後 に 政 府 の 深 刻 な 財 政 危 機 を もた ら し, 戦 後 西 ドイ ッ経 済 体 制 の 指 導 原 理 で あ った 社 会 的 市 場 経 済 原 理 は,1つ の壁 に 直 面 した 。 この よ うに して,こ の 指 導 原 理 の 実 践 者 で あ った エ ア ハ ル トの 内 閣 は,1966年11月 退 陣 に 追 い こ まれ,社 会 民 主 党 を 含 め た キ ー ジ ソ ガ ー の 連 立 内 閣 が 成 立 す る に い た っ た 。 こ の キ ー ジ ソ ガ ー 内 閣 は,1967年 の 「経 済 安 定 ・成 長 促 進 法 」 に 端 的 に み られ る よ うに,社 会 的 市 場 経 済 原 理 の わ く内 に,新 た に
(33)Kosiol,E.:ebenζ 【a,S.65.
(34)Kosiol,E.:ebenda,S.66.
(35)工 業 生 産 指 数 で み る と,1953年 ・=100と す る と,1956年138,1957年146,1958年 150,1959年162で あ り,ま た1958年=100と す る と,1961年127,1962年132,1963年 137,1964年149で あ り,さ ら に1960年=100と す る と,1965年116,1966年117, 1967年114で あ る 。 国 際 連 合 統 計 局 編 世 界 統 計 年 鑑1961,1966,1968参 照 。
「制 御 され た経 済 成 長 」 とい う概 念 を もち こみ,経 済 政 策 に お け る政 府 の 権 限 の大 幅 な 強化 を お こな った。
この よ うな状 況 の もとに1966〜67年 の恐 慌 以 降 は,大 企 業 間 の合併,提 携, 合 併会 社 の設 立 が,.集 中化 運 動 の 中心 とな り,異 った コ ソ ッェル間 の集 中,提 携 が 目立 つ よ うに な った 。 そ の さい,こ れ らの大 企業 の集 中化 に お い ては,国 家が さ まざ まな方法 で積極 的 な役 割 をは た し(会 社法,租 税法 で の企 業 集 中 を 促 す 特別 立法,企 業 間 の協 力促 進 の政 策 な ど),市 場経 済 体 制 へ の介入 が顕 著
く コ
に な った 。 この 点 が,コ ジ オ ー ル の 独 立 性 の メル クマ ー ル と経 済 秩 序 の 関 係 に 反 映 して い る。 つ ぎに コ ジ オ ール 門 下 の シ ュ ミ ッ トが,従 業 員 の 利 害 を も考 慮
して 企 業 を どの よ うに と らえ て い る か を 考 察 しよ う。
3.R.‑B.シ ュ ミ ッ トの 企 業 と 経 営 の 概 念
シ ュ ミッ トに よる と経 営 とは,経 済 的 な活動 単 位 の こ とで あ り,一 貫 した 計 画が この経 済単 位 で,ま た この経 済単 位 のた め に作 成 され る。 封 鎖 的 な経 済 単 位 は,す べて基 本的 な経 営 また は 個別 経 営 と よば れ,こ の経 営 は,独 立 してお り,他 の経営 と結 びつ か な いで経 済活 動 をい とな む こ とが で き る。 この基 本的
ほわ
な経営 に は,本 源 的 な経 営 であ る家計 と派 生 的 な経営 で あ る企業 が あ る。
企業 で は他 人 の需 要 の充 足 が お こな わ れ,ま た 企業 は 自己 の責 任 に おい て企 業 の担 い 手 の利 害 に応 じて行 動 す る。 そ の点 で企 業 は,経 済 的 に 独 立 して い る 。 さ らに 企 業 は,み ず か らす す ん で 危 険 を お う。 した が っ て シ ュ ミ ッ トは,
コ ジ オ ー ル と 同 じ く他 人 の 需 要 の 充 足,経 済 的 な 独 立 性,危 険 の 負 旭 と い う3 つ の メル クマ ー ル を もつ 経 済 単 位 を 企 業 と よぶ 。 こ の 企 業 に は,私 企 業 と公 企
(36)独 占 企 業 の 集 中 に つ い て は,林 昭,r現 代 ドイ ツ 企 業 論 』,ミ ネ ル ヴ ァ 書 房, 1972年,前 川 恭 一,『 ド イ ツ 独 占 企 業 の 発 展 過 程 』,ミ ネ ル ヴ ァ 書 房,1970年,水 野 一不 二 夫 ,「 西 ドイ ツ に お け る 企 業 集 中 の 現 状 」,r世 界 経 済 評 論 』,第6巻 第7号,
1962年,森 禎 宏,「 西 ドイ ツ 寡 占 体 制 の 新 段 階 」,『 世 界 経 済 評 論 』,第12巻 第9号, 1968年 参 照 。
(37)Schmidt,R,‑B・:WirtschaftstehrederUnternehmung,Grundlagen,
Stuttgart1969,S.39,吉 田 和 夫 監 修,海 道 ノ ブ チ カ 訳,r企 業 経 済 学 』,第1巻 基 礎 編,千 倉 書 房,1974年,50ペ ー ジ 。
ノ
企 業 と 経 営 の 概 念 41
業 の両 方が ふ くまれ てお り,両 者 のちが い は,企 業 目標 を設 定 す る決 定権 が,
くヨロ
個 人 に あ るのか,ま た は 公 的機 関に あ るのか に よ る。
以上 の シ ュ ミッ トの 企業 と経営 の概 念 規 定 に は コ ジオ ール の影 響 が み られ る が,ま た研 究 対象 の規 定 に も師 の影 響が あ る。 か れは,社 会 で の人 間 の行 動 を 経 営経 済学 と国民経 済 学 の 双 方 を ふ くむ経 済 科 学 の経 験 対象 とみ なす 。そ して
エ
経 済 科 学 の選 択 原理 と して経 済 的 な決 定 を もちい る。 こ こで,経 済 的 な決 定 と は,一 定 の手段 に よ り最 大 の成 果 を え るこ とで あ り,ま た最 小 の手 段 に よ って 一 定 の成 果 を 達成 す る こ とで あ る。 つ ま り合 理 原 則 に も とつ く選 択行 為 の こ と で あ る。 シ ュ ミッ トは,こ の よ うに経済 性 を合理 原 則 の 意味 で と らえて い るに す ぎず,コ ジオ ール の経 済 性概 念 の 方が,す で に みた よ うに よ り精 緻 な もの で
ごるゆ
あ る。
と ころで この よ うに 認識 対象 が定 式 化 され るな らば,選 択 行 為 に も とつ く経 済 主体 の行 動 のす べ てが経 済 科 学 の 対象 とな る。 した が って シ ュ ミッ トも,選 択 原理 と しての利 潤極 大 化 には 批 判 的 で あ る。 な ぜ な らば,利 潤極 大 化 が選 択 原理 で あ る場 合 には,こ の 目標 を追 求 しな い経 営 は た どえ ば,利 潤 目標 が 限 定 され て い る公 企 業,公 的 な 官 庁 経 営,協 同 組 合,個 人 の 家 計 な どは ・一 す
べ て そ の 理 論 よ りは ず され る こ とに な るか らで あ る。 また か れ は,同 じ こ とが
にり
収益 性 を選 択原 理 と した場 合 に もあては まる との べ てい る。
とこ ろで シ ュ ミッ トは,学 問 の名称 と して経営 経 済 学 では な く企業 経 済 学 と い う名称 を もちい る。 これ は,企 業経 済 学 に お い て い ま まで経 営 経 済学 に よっ て詳 細 に研 究 された こ とがす べ て問題 に され るわ けで は ない か らで あ る。 す な わ ち,企 業 経 済 学 に おい ては,家 計 を もふ くむ経 営 では な く企 業 で の経 済 的 な 決 定 に研 究 の 分野 が か ぎ られ て い る。 ・
(38)Schmidt,R.‑B.:ebenda,S.41,前 掲 書,52ペ ー一ジ 。
(39)Schmidt,R.‑B.:ebenda,S.10,前 掲 書,12ペ ー ジ 。
(40)Schmidt,R.‑B.=ebenda,S・11,前 掲 書,12ペ ー ジ,Kosiol,E.:Einftihrung indieBetriebswirtscha]『tstehre,a.a.a,S。261ff.
(41)Schmidt,R‑B.:VVirtscha∫tslehrederUnternehmptng,a.a.0.,S.10, 前 掲 書,11ペ ー ジ 。
か れ は,以 上 の よ うに 規 定 され た 企業 を用 具 と して と らえ,あ らゆ る種 類 の 利 害 集団 が,自 分 た ち の個 人 的 な 目標 を達成 す るた めに この企 業 を利用 で き る
ごる コ
と主 張 す る。
か れは,企 業 を用 具 と してつ か う利 害 集 団 と して 自己 資本 出 資者,企 業 管理 者,従 業 員,他 人 資 本 出資者,顧 客,供 給 者,競 争 相 手,労 働 組 合,雇 主 団
に ヨコ
体,政 党,国 家,地 方 自治体,公 的機 関 な どをあ げ てい る。 しか し,こ れ らの 利 害 集 団 のす べ てが,企 業 の 目標 を設 定 で き るわ け では な い。 企業 の 目標 を設 定 で き るのは,企 業 の担 い 手 にか ぎ られ る。 シ ュ ミッ トは,担 い手 の メル クマ
・一ル を 明確 に す るた めに ,資 本 の提 供,危 険 の 負担,成 果 へ の参 加 とい う3つ の メル クマ ール を批 判的 に 検討 し,か れ 自身 は,企 業 政 策 の決 定 をお こな うこ とが 企業 の担 い 手 の メル クマ ー ルで あ る と主張 す る。 そ して具 体 的 に企 業 の担 い 手 と して 自己 資本 出 資者 と企 業 管理 者 と従 業 員 が あ げ られ てい る。'
ところ で企業 経 済 学 の第1巻 で は,企 業 は 用具 であ る とい うこの 命題 を もち い て,コ ジオ ール に おい ては論 究 され なかD'た 企 業 目標 の形 成 過 程 が,つ ま り 企 業 の担 い手 の利害 と企 業 目標 の関 係 が 明 らか に され る。 そ こで は担 い手 とな
りうる自己 資 本 出資 者 と企業 管理 者 と従業 員の もつ 個 人 的 な メ タ経 済的 な 目標 (名 声,権 力な ど)が,個 人 の経 済 的 な 目標(所 得 な ど)に 反 映 し,こ の個 人 の経 済 的 な 目標 に もとつ い て企 業 目標(成 果 目標,生 産 目標,流 動 性 目標)が 形 成 され る と説 明す る。 ところ で成果 目標 にお い ては,自 己 資 本 出資 者 と企業 管理 者 と従 業 員 が と もに企 業 の担 い 手 で あ る場 合に は,3者 の所 得は す べ て企 業 の成果 と して あつ か わ れ る。 この成 果概 念 に シ ュ ミッ トの学 説 の特徴 の1つ が み られ る と と もに 問題 点が あ る。
この よ うなか れ の学 説 の背 景 の1つ には,企 業 を労 資 の共 同体 と して と らえ る ドイ ツの伝 統 的 な 考 え方 が み られ る。 す なわ ち 出 資者 だ け を企業 の担 い 手 で
(42)Schmidt,R.一 ・B.lebenda,S.49ff.,前 掲 書59ペ ー ジ 以 下,企 業 が 用 具 で あ
る と い う 命 題 の 批 判 に つ い て は 、Ortmann,G.:Unternehmungszieleals∬de・
ologie,、K61n1976,S。39ff.参 照 。
(43)Schmidt,R.‑B。:WirtschaftslehrederUnternehmung,a.a.0.,S.65 ff.,前 掲 書,82ペ ー ジ 。
、
企 業 と 経 営 の 概 念 43
あ る とみ る の で は な く,従 業 員 も企 業 の 担 い 手 とみ る思 考 で あ る。 た とえ ば, こ の よ うな 考 え 方 は,す で に ニ ッ ク リッ シ ュ の 成 果 概 念 や レ ー マ'ソの価 値 創 造
じ コ
の概 念 に み られ,シ ュ ミッ トの 成 果 概 念 に も これ らの 学 説 と共 通 点 が あ る。
さ らに シ ュ ミッ トが 企 業 を用 具 と して と らえ る 考 え 方 の背 後 に は,西 ドイ ッ の 共 同決 定 の 現 実 が あ る。1951年 の 共 同 決 定 法,1952年 の経 営 組 織 法,ま た 第
くゆ ラ リ ラ
1巻 が 出版 され た段 階 では 成 立は してい なか った が,1976年 の新 共 同決 定 法 に も とつ く従 業 員の経 営 参 加 が,か れ の企 業 の内 容 の と らえ方 に 大 き く影 響 を お よぼ して い るo
この 点 につ いて グ ー テ ソベ ル ク とシ ュ ミッ トを対 比ず る と グ ーテ ソベ ル クに お いて は,自 律 原則 と営 利経 済 原 則 とな らん で単 独 決 定 原則 が 企業 の重 要 な メ ル クマ ール で あ った。 グ ーテ ソベ ル クは,自 由主義 的一 資 本主義 的経 済 体 制 に お いて特 有 の経 営 形 態 であ る企業 で は,資 本 所有 者 と経 営 者 以 外 は,経 営 の意
ぐるの
思 決 定 をお こな うことは で きな い とい う。 した が って,単 独 決 定 原 則が な くな った り,変 化 した りす る と 「企 業 」 とい う経営 形 態 は,純 粋 な形 を失 うと主張 し,グ ーテ ソベル クは 共 同決 定 権 を異物 的 な もの と して と らえ て い る。 す なわ ち,こ の単 独 決 定原 則 は,社 会 的 市 場経 済 原理 の1つ で あ る 「生 産手 段 の私 的
所有 」 に対応 した もので あ る。 隔
と ころが共 同決 定制 度 に も とつ く労 働 者 の権 利 の拡大 が,資 本主義 経済 体 制' の わ く内 の もの であ るに もか か わ らず,現 在 の西 ドイ ッ経営 経 済学 は 労 働 者 の 利 害 をな ん らか の形 でそ の理 論 に お い て,と りあ げ ざ るをえ な くな って きて い
ぐ ひ
る 。 こ の 点 が,シ ュ ミッ トに お い て は 企 業 を用 具 と して と らえ る考 え 方 に 反 映
に ひ
して い る し,さ らに また ヒ ミー レ ヴ ィ ッ チ の 学 説 に お い て も考 慮 され て い る。
(445シ ュ ミ ッ トの 成 果 概 念 に つ い て は,拙 稿,「R.‑B.シ ュ ミ ッ トの 成 果 概 念J,
『商 学 討 究 』,第26巻 第1号,1975年 参 照 。
(45)第1巻 で は,新 共 同 決 定 法 の 制 定 に つ い て の さ ま ざ ま な 議 論 が あ つ か わ れ て い る 。
(46)「 新 共 同 決 定 法 」 は,従 業 員2,000人 以 上 の 企 業 に 適 用 さ れ,監 査 役 会 の 構i成 は,労 資 同 数 で あ る 。 た だ し 労 働 側 に 管 理 職 よ り1名 参 加 し て い る 。
(47)Gutenberg,E.:GrundlagenderBetriebswirtschaftslehre,a.a.0.,S.
486,前 掲 書,287ペ ー ジ 。
4.結 ' コ ジオ ール とシ ュ ミッ トの企業 と経営 の概 念 規 定 を中心 と して考 察 して きた が,こ こで両 老 に共 通 す る特 徴 お よび問題 点 と してつ ぎ の もの をあ げ る こ とが で き る。
まず 第1に 企 業 と経営 の概 念 規 定 に お い て,利 潤 概 念 が 欠 落 して い る点 。第 2に 経 営 概 念 の拡 大 に よ り家 計が,経 営 概 念 に ふ くめ られ て い る点。 第3に 企 業 お よび経 営 に歴 史 性 や私 的 モ メ ン トが 欠 け て い るた め に経 済 性が 選 択 原理 と
して もち い られ る点 で あ る。 これ らの3点 は,相 互 に密 接に 関 連 して い る。
まず 第1点 に 関連 して,企 業 また は経 営 が 社 会 的側 面 と私 的 側面 を もって い る こ とに ふれ てお こ う。 資 本主義 企 業 は,一 一方に お いて社 会 的 有 用物 の 生産
(欲 求 の充 足)を お こな う組織 体 で あ る と同時 に,他 方,利 潤 追 求 をお こな う 組織 体 で もあ る。 企業 の特 徴 は,こ の社会 的 モ メ ソ トと私 的 モ メ ソ トの二 重 性 に あ る。 この二 重 性 を把握 しなけ れ ば,企 業 な い しは 経営 の正 確 な理 解 を お こ
く ラ
な う こ とは で き な い 。 と ころ が,コ ジオ ー ル の 概 念 規 定 に お い て は,企 業 は, (48)70年 代 に は い る と 既 存 の 決 定 論 的 経 営 経 済 学 に た い す る 批 判 的 な 研 究 の 動 き が
で て き た 。 そ の1つ は,マ ル ク ス 主 義 的 立 場 よ り経 営 経 済 学 を 批 判 的 に と りあ げ る い わ ゆ る 「ベ ル リ ン」 グ ル ー プ あ る い は 「メ ア ヴ ェ ル ト」 グ ル ー プ と よ ば れ る 人 々 の 研 究 で あ る 。 他 の1つ は,ド イ ツ 労 働 組 合 総 同 盟 に 付 属 の 「経 済,社 会 科 学 研 究 所 」 の プ ロ ジ ェ ク ト ・グ ル ー プ に よ っ て ま と め られ た 「労 働 志 向 的 個 別 経 済 学 」 の 動 き で あ る 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト ・グ ル ー プ は,今 ま で の 経 営 経 済 学 が 収 益 性 を 中 心 に 考 察 を お こ な い 労 働 者 の 利 害 を ほ と ん ど考 慮 しな か っ た 点 を 批 判 し,従 業 員 の 利 害 を 中 心 に お き,資 本 合 理 性 に か わ る 開 放 さ れ た 合 理 性 に も とつ く新 しい 個 別 経 済 学 を 展 開 し よ う と す る 。 現 在 の 経 営 経 済 学 が 「資 本 志 向 的 経 営 経 済 学 」 で あ る と い う こ の よ うな 問 題 提 起 に た い し既 存 の 経 営 経 済 学 者 た ち も これ を 無 視 す る こ と は で き な くな っ た 。 経 営 経 済 学 批 判 の 動 き に つ い て は,長 岡 克 行,「 西 ドイ ツに お け る 経 営 経 済 学 批 判 とr労 働 指 向 的 個 別 経 済 学 』(1)」,r東 京 経 大 学 会 誌 』,第97・98合 併 号,1976年,高 橋 俊 夫,rr批 判 的 』 経 営 学 の 胎 動 」,r経 営 論 集 』,第23巻 第1号, 1975年,「 労 働 志 向 個 別 経 済 学 の 提 起 」,r経 営 論 集 』,第23巻 第2号,1975年,rrW.
S.1』 報 告 の 関 連 報 告 を め ぐ っ て 」,r経 営 論 集 』,第24巻 第1号,1976年,「rW.
S.1』 報 告 の 討 議 を め ぐ っ て 」,r経 営 論 集 』,第24巻3・4号,1977年 参 照 。 (49)コ ジ オ ー ル 派 の ヒ ミ ー レ ヴ ィ ッチ は,「 労 働 志 向 的 個 別 経 済 学 」 の 問 題 提 起 に
応 え る形 で,『 経 営 経 済 学 に お け る 労 働 者 利 害 と 資 本 主 義 批 判 』 を 著 わ した 。 そ こ で は 企 業 は,体 制 無 関 連 的 な 制 度 と して と ら え られ て い る。
企 業 と 経 営 の 概 念 」45
ひ
他 人 の需 要 の充 足 とい う目標 を もつ独 立 した 生産 経営 と して と らえ られ,社 会 的 モ メソ トの みが と りだ され て い る。 同様 に シ ュ ミッ トに お いて も企 業 は,他 人 の需 要 の充足 を お こな うもの と規定 され,企 業 の メル クマ ールに は 利潤 概 念 は,あ らわれ て い な い。r
また 利潤 概念 を企業 と経 営 の概 念 よ り除 き,需 要 の充 足 に重 点 をお くた め, コジオ ール とシ ュ ミッ トに おい ては,経 営 の なか に 家計 を もふ くめた概 念 規 定 が お こな わ れて い る。 特 に コ ジオ ール では,公 的 な家 計 と して 国家 も経営 概 念 のなか に いれ て お り,公 的 な家 計 に お け る経 済 性 が 低 いた め,こ の経 営 の カテ ゴ リーを経 営経 済 学 的 に解 明す る こ とが経 営 経済 学 の将 来 の課 題 であ る とみ な
くらの
され て い る。 しか し経 営 経 済 学 の対 象 が,資 本主義 的企業 であ る ど とは,経 営 経 済 学 を成 立 させ るに いた った契 機 を み て も明 らか であ り,現 在 の決 定論 的 経 営 経 済 学 も,私 的 大 企業 で の管理 や 決 定 の問 題 を 中心 に あつ か ってい る。 これ
こらか
に た い して 私 的,公 的 家 計 は,経 営 経 済 学 の 直 接,対 象 で は あ りえ な い 。 した が っ て,コ ジ ナ ー ル とシ ュ ミッ トに お い て は,ニ ッ ク リッ シ ュ に も と つ い て 企 業,家 計,経 営 の 概 念 規 定 が お こな わ れ て い るが,具 体 的 な 研 究 対 象 か
らは,す で に の べ た よ うに 家 計 を 除 か ざ る を え な くな っ て い る。
さ らに こ の経 営 概 念 と結 び つ く経 済 性 の 問 題 に つ い て み る と,ニ ヅ ク リッ シ ュ層に お い て は,経 済 性 は,生 産 過 程 に お け る最 大 限 の 成 果 の 産 出 と分 配 過 程 に
1
お け る成 果 の給 付 に応 じた分 配 を命 じる抽 象 的 な合 理 原 則 の段 階 に と ど まって い た。 この合理 原 則 と して の経 済 性 は,コ ジオ ール の形 式 目標 に うけつ が れ て い る。 コジオ ール は,ニ ッ ク リッシ ュか ら レーマ ソへ うけつ が れ た経 済 性 の概 念 を さ らに精 緻 な もの にす るた め に それ を 技術 性 と狭 義 の経 済 性 にわ け,企 業 の狭義 の経 済 性 を 収益 性 と よん でい る。 た だ し,シ ュ ミッ トに お い ては 経 済 性 は,抽 象 的 な合 理 原 則 の段 階 た とど ま って い る。
(50)北 川 宗 蔵,『 経 営 学 方 法 論 研 究 』,淡 清 堂,1948年,138ペ ー ジ 以 下 。
(51)Kosiol,E.:Einl'i'hrungindieBetiebswirtschaftslehre,a.a.O.,S.31.
(52)Kosiol,,E.:ebenda,S.27.
(53)'北 川 宗 蔵,前 掲 書,143ペ ー ジ 。
と ころ で経 済 性 の本質 は なにか とい えば,そ れ は,収 益 性 に い た るた め の手 段 にす ぎず,シ ェー ソプル ー ク もい うよ うに カ ム フ ラージ ュ され た 収益 性に ほ 'か な らない。 理 論 的 に は経営 経 済 学 の科 学 性 を維 持 す るた めに もちい られて き
ぐゆ
た概 念 で あ る。 む しろ,各 時代 の要 請 を反 映 して収益 性 よ りも経 済 性 が主 張 さ れ な けれ ば な らな か った とい う点 に注 意 す る必 要 が あ る。
この よ うに経 済 性 概 念 は,本 来,収 益性 と矛 盾す る概 念 で は な い ので,コ ジ
こ コ
オ ールに お い ては レーマ ソ と同 じ く経 済 性 の重 要 な要 素 と して収 益 性が あ る。
経 済 性 概 念 が この よ うに収 益 性 と 真 正 面 よ り対 立 しない ことを 理 解 した うえ で,こ の概 念 が経 営 概 念 と密接 に 関連 してい る点 に 留意 しな けれ ばな らない 。 私 的,公 的 家計 や官 庁 経営 や公 企業 や 公益 企業 まで経 営 のなか に ふ くむ ため 利 潤 極 大 化 や収 益 性 を直 接,選 択 原理 とす る こ とが で き な くな ってい る。
ここでは 企業 と経 営 の概念 規 定 を みて きた が,こ れ らの概 念 規定 は,け っ し て1つ の遊 戯 では な い。 各経 営 経 済 学 者 に おい てそ れぞ れ こ とな る一 見,概 念 的 遊 戯 の よ うに み え る企 業 と経 営 の概 念 規 定は,学 説 史 を研 究 す る さい の重 要 な柱 の1つ で あ る社 会 経 済 的 な背 景 との 関連 に お い て もみ られ な けれ ば な らな い 。 経営 経 済 学 の学 説 は,社 会 経 済 的 な基 盤 と,密 接 に 関連 してい るか らで あ る。 第2次 大 戦 後 の社 会 的 市 場経 済 原 理 に もとつ く西 ドイ ッ経 済体 制 の生 成 は ,「自律 原 則」,「営 利 経済 原則 」,「単 独 決 定 原則 」 を企 業 の中心 的 メル クマ ール とす るグ ーテ ソベ ル クの学 説 に反 映 してい る し,ま た1958年 以降 の不 安定 性 の 増 大 期 は,国 家 の市 場経 済 へ の介 入 を 「相 対 的 な独 立 性」 とい うメル クマ ール に よ って 考慮 した コジ オ ールの企 業 概 念 や,従 業 員 の利害 を理 論 に くみい れ る た め に企業 を 「用 具 」 と して と らえた シ ュ ミッ トの学 説 に 反映 してい る。
(54)経 済 性 橿 念 の 本 質 に つ い て は,古 林 喜 楽,r経 営 学 方 法 論 序 説 』,三 和 書 房, 1967年,48ペ ー ジ 以 下,田 中 照 純 「 ドイ ッ 経 営 経 済 学 の 方 法 研 究 一 経 済 性 の 選 択 原 理 を 中 心 と し て 」,r立 命 館 経 営 学 』,第14巻 第4・5号 参 照 。
(55)Lehmann,M.R.:"DerBegriffderWirtschaftlichkeitinVolkswirtschaft,
BetriebundHaushalt",Z.f,B.,1926,S,166ff.,古 林 喜 楽,「 経 営 学 に お け る 経 済 性 概 念 に つ い て 」,『 内 外 研 究 』,第3巻 第2号,1930年 。