厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)
「新たなバイオテクノロジーを用いて得られた食品の安全性確保と リスクコミュニケーションのための研究」
分担研究報告書
人工ヌクレアーゼの特異性を調べる in vitro アッセイツールの開発
研究分担者 中村公亮(国立医薬品食品衛生研究所)
研究要旨:
本研究では、ゲノム編集食品の安全性評価法の一つとしてオフターゲット部位を網羅的に推定する
SITE-seq
法の有用性について検証を行った。本法を評価するため、近年、イギリスで開発された豚繁殖・
呼吸障害症候群ウィルス(porcine reproductive and respiratory syndrome virus [PRRSV])抵抗性 ゲノム編集ブタの事例を取り上げた。本研究結果より、オフターゲット予測は、各種オンラインオフタ ーゲット予測ツールを使った
in silico解析だけでは不十分であることが示唆された。相同性データベ ース解析は高確率で生じるオフターゲットを予測するが、そのリストは
SITE-seqの予測を完全にカバ ーできず、実際に起こったオフターゲットの切断を見落としたことを確認した。よって、ガイド
RNAを 設計する際には、まず
in silico解析により最もユニークな配列を選抜した後、そのガイド
RNAの潜在 的なオフターゲットを
SITE-seq法で生化学的に検証し、さらに培養細胞レベルでその切断の有無を確 認することが推奨された。この一連の解析について、高い再現性を有する試験法を確立することで、ゲ ノム編集作物の開発や安全性評価に役立つことが期待され、また、
Cas9の特異性に関する情報集積とそ の制御に貢献できると考える。また、本研究では、ゲノム編集食品を開発する研究者が
SITE-seq法を 容易に利用できるよう、汎用プロトコルとバイオインフォマティックス解析ツールの開発を行った。
協力研究者 木俣真弥 国立医薬品食品衛生研究所 協力研究者 秋本 智 国立医薬品食品衛生研究所
A. 研究目的
CRISPR-Cas9
システムは、RNA-DNA 相互作用を 利用したゲノム編集ツールの一つで、ゲノム編集 の標的ゲノム
DNAに相同な
20塩基のガイド
RNAと
Cas9ヌクレアーゼとを複合体化して、DNA の 二本鎖切断を誘導することができる。ガイド
RNAと
DNA間の完全な配列の一致は、狙い通りの
DNA切断(オンターゲット)を誘導する一方、その相 互作用の誤認識は意図せぬ
DNA切断 (オフターゲ ット)とそれによる重大な形質変化を招きかねな い。そこで本研究では、ゲノム編集食品の安全性 評価法の一つとしてオフターゲット部位を網羅 的に推定する
SITE-seq法の特異性と再現性につ いて検証を行った。近年、イギリスで開発された 豚 繁 殖 ・ 呼 吸 障 害 症 候 群 ウ ィ ル ス (
porcine reproductive and respiratory syndrome virus [PRRSV])抵抗性ゲノム編集ブタの事例を取り上げ、本法の有効性について評価した。また、ゲノ ム編集食品を開発する研究者が
SITE-seq法を再 現性良く容易に利用できるよう、 汎用プロトコル とバイオインフォマティックス解析ツールの開 発を行った。
B. 研究方法
1.培養細胞
ヒト胎児腎由来
HEK293T細胞とブタ腎臓由来
LLC-PK1細胞は、それぞれ
10% FBSと
1% ペニシリン-ストレプトマイシン-L-グルタミン溶液を 含む
DMEM培地と
3% FBSと
1% ペニシリン-ストレプトマイシン-L-グルタミン溶液を含む
DMEM培地を用いて、37℃、
5% CO2の条件下で培養した。
培養容器は、
75 cm2スケールのフラスコを用いた。
各細胞の継代は、
2~3日ごとに(50~70%コンフ
ルエント維持)行った。
2.ゲノム
DNAの抽出と精製
HEK293T
または
LLC-PK1培養細胞(75 cm
2フラ スコ
2個分)は、0.5%トリプシン-5.3 mM EDTA 溶液で剥離し、冷却
PBS緩衝液で
2回洗浄した。
細胞は
10 mLの冷却
PBSで再懸濁し、細胞濃度は 約 2×10
6~1×10
7 cell/mLとした。
各培養細胞からのゲノム
DNAの抽出と精製は、
QIAGEN Genomic-tip 500 G
カラムとその緩衝液 セット(C1、QBT、G2、GC および
GF緩衝液)を 用いて行った。細胞懸濁液
10 mLに、冷却
C1緩 衝液
10 mLと冷却滅菌水
30 mLを添加し、数回の 転倒混和後、氷中で
15分間インキュベートした。
1,300×
g、4℃, 15 分間の遠心条件で細胞を沈殿 させ、上清を破棄した。冷却
C1緩衝液
2 mLと冷 却滅菌水
6 mLを加え、細胞を再懸濁し、上記と 同様の遠心条件により細胞ペレットを得た。G2 緩衝液
10 mLと
DNase free-RNase A(10 mg/mL)10
µL を添加し、
30秒間の緩やかな懸濁後、37℃
で
30分間インキュベートした。ゲノム
DNAがせ ん断されるため、混和の際は、ボルテックスミキ サーは使用しない(以後、同様) 。さらに、
20 mg/mL Proteinase K溶液を 200 µL 添加し、50℃で
30分間インキュベートした。
この
DNA溶液全量を、QBT 緩衝液
10 mLで平衡 化した
Genomic-tip 500 Gカラムにロードした。
QC
緩衝液
15 mLで
2回カラムを洗浄し、RNase A 等を除去した。ゲノム
DNAは、50℃に加温した
QF緩衝液
15 mL×2(合計30 mL)で溶出した。QF
緩衝液
15 mLに対して、10.5 mL のイソプロパ ノールを添加し、
DNAが凝集するまで転倒混和し た。13,000×
g、4℃, 15 分間の遠心条件で
DNAを沈殿させ、上清を破棄した。冷却
70%(v/v)エタノール
4 mLで
DNAを洗浄し、遠心後、上清 を破棄した。溶液は完全に取り除き、
DNAが乾燥 する前に、合計 100 µL の滅菌水で
DNAを溶解さ せた。白濁の沈殿物は溶解しないため、遠心分離 で除去した。
DNA溶液 100 µL に
RNA secure(RNase 阻害剤)を
4µL 添加し、
60℃で10分間インキュ ベートした。
DNA溶液は室温まで冷却し、その濃 度を
Nanodrop 1000 Dで測定した。DNA 溶液は、
滅菌水を用いて、375 ng/µL(HEK293T)または 250 ng/µL(LLC-PK1)に再調製し、使用するまで 4℃に保存した(長期保存はせず、数日以内に使 用) 。
精製されたゲノム
DNAの品質は、1%(w/v)ア ガロースゲル電気泳動で評価した。
3.ガイド
RNAの合成と精製
ガ イ ド
RNAの 合 成 と 精 製 に は 、
Agilent SureGuide gRNA Synthesis Kitを用いた。付属 プ ロ ト コ ル に 従 い 、 本 検 討 で は 、 長 鎖 型 の
(extended backbone)シングルガイド
RNAを合 成した。まず、ガイド
RNA合成の鋳型となる二本 鎖
DNAを作成するため、次のプライマーを合成し た。Primer-Forward: 5’-CG ATG TAA TAC GAC TCA
CTA TAG GXX XXX XXX XXX XXX XXX XXX GTT TTA GAG CTA TGC TGA AA-3’; Primer-Reverse: 5’-AAG CAC CGA CTC GGT GCC ACT TTT TCA AGT TGA TAA CGG ACT AGC CTT ATT TTA ACT TGC TAT GCT TTT CAG CAT AGC TCT AAA ACY(「X」は標的とする
20塩基; 「X」
と「Y」は相補塩基とする;下線はオーバーラッ プする領域)。 「表
1」に記載したプライマーを使用し、以下の反応液(50 µL/反応)を調製した:
5x Herculase II reaction buffer (10 µL)
、2.5
mM each dNTPs(4 µL) 、
10 µM primer-forward (5µL)、10 µM primer-reverse (5 µL) 、Herculase
II Fusion DNA polymerase(1 µL) 、DW (28 µL) 。 この反応液を 95℃で
2分間、次いで 60℃で
1分 間、最後に 72℃で
3分間インキュベートした。
合成された鋳型
DNA(130 bp)は、Wizard SV Gel and PCR Clean-up System(Promega)を用いて精製し、吸光度測定結果をもとに、1 µM に再調製 した。
ガイド
RNAを合成するために、次の反応液(20 µL/反応)を調製した:DPEC water(7.5 µL) 、5x
Transcription buffer(5 µL) 、
rATP(1 µL) 、
rCTP(1 µL) 、rGTP(1 µL) 、rUTP(1 µL) 、0.75 M DTT
(1 µL) 、
Yeast Pyrophosphatase(0.5 µL) 、
RNase Block(1 µL)、T7 RNA polymerase(1 µL) 。この 反応液に 1 µM 鋳型
DNAを 5 µL 添加し、混和後、
37℃ で
4~
16時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。
RNase-free DNaseを 1 µL 添加し、37℃で
20分 間インキュベートした。十分量のガイド
RNAを得 るため(50 µM 以上) 、一種類のガイド
RNAあた り、4 反応分(100 µL)調製し、キット付属のプ ロトコルに従い精製した。ただし、次の工程を改 良した:
2反応液分のガイド
RNAを
1つのカラム に吸着させ、25 µL の
nuclease-free waterで溶 出させた。ガイド
RNA量は、Nanodrop D1000 で 測定し、濃度はその分子量(108 bp)をもとに算 出した。ガイド
RNAは、使用するまで-80℃に保
存した。 「表
2」に今回使用したガイド RNAの配
列を示した。
4.ゲノム
DNAの
Cas9切断
ゲノム
DNAの二本鎖切断は、様々な濃度のガイ ド
RNA-Cas9複合体(RNP)存在下で誘導した。本 検討では、Cas9 の終濃度は
1~1,024 nMの間で 変化させ、 ガイド
RNA濃度はその
15倍添加した。酵素反応は、1x CBB 緩衝液内(20 mM HEPES、150
mM KCl、10 mM MgCl2、
5% [v/v] glycerol [pH 7.4])で行った。まず、RNP 複合体を形成させるため、
15 µL のCas9(3.3x CCB
に溶解)と 15 µL のガ イド
RNA(DWに溶解)を
1 : 15の濃度比となる ように混合し(例:213 nM Cas9 : 3.2 µM ガイ ド
RNA)、37℃で
10分間インキュベートした。ガ イド
RNAは、95℃で 2 分間加熱後、室温で
5分 間静置してから使用した。ここに、20 µL のゲノ ム
DNA(HEK293T、375 ng/µL または
LLC-PK1、250ng/µL)を添加し、37℃で
16時間インキュベート することで、十分にゲノム
DNAを切断した。その 後、RNA 分解溶液
6.3 µL(10 mg/mL RNase A、4.4µL; 5x CCB、1.4 µL; DW、0.5 µL)を添加し、37℃
で
20分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 さ ら に 、
proteinase K(20 mg/mL)を 0.5 µL 添加し、55℃
で
20分間の処理で
Cas9を失活させた。次の工程 まで、氷中で一時的に保管した。
5.SITE-seq が示すオフターゲット切断の妥当 性
SITE-seq
が示すオフターゲット切断の妥当性
は、リアルタイム
PCRにて評価した。
RNPで切断 されたゲノム
DNAと未処理のゲノムDNAを鋳型と して、オフターゲット切断領域を増幅し、その
Ct値を比較した。
Cas9処理は、 「方法4」で使用 した濃度に準じたが、反応スケールは半量の
25µL とした。また、消化反応の停止後、
proteinase Kを失活させるため、95℃で
10分間加熱した。
消化
DNA溶液は、1 ng/µL となるように
DWで希 釈し、鋳型とした。
PCR反応液は次の通りに調製 した。一反応あたり、25 µL として、12.5 µL の 2x
FastStart Universal SYBR Green Master(ROX)、 各
0.4 µL の 50 µM プライマー対、6.7 µL のDWと 5 µL の鋳型
DNAを含めた。以下の温度サイク ルで
DNAを増幅させた:[50℃、
2分] x1、[95℃、
10
分] x1、[95℃、15 秒;60℃、1 分] x45 サイ クル。
6.シーケンスライブラリーの調製
SITE-seq
法でオフターゲット切断部位を特定
するため、Illumina MiSeq システムに対応した
DNAライブラリーを以下の通り作成した。図1で 示すように、Cas9 で切断された
DNAは、ビオチ ン-ストレプトアビジン相互作用を利用して精 製し、
Illumina製 次世代シーケンサー(MiSeq)
に対応したアダプターをPCRにより
DNAの両端に付加した(図
2)。すなわち、上記で
Cas9処理し
たゲノム
DNA(50 µL 全量)は、エタノール沈殿法により精製し、25 µL の
DWで溶解させた。
Cas9切断面末端にアデニンを付加するため、
DNA溶液
(25 µL)に
10x NEB2(5 µL) 、
10 mM dATP(5 µL) 、
Klenow Exo-(3 µL)、DW(12 µL)を添加し、37℃
で
30分間反応させた。この
A突出末端へのビオ チンアダプター(Adapter 1)の結合は、100 µM
Adapter 1 For(1 µL)、100 µM Adapter 1 Rev(1 µL)、DW (8 µL) 、2x annealing buffer(20 mM
Tris、100 mM NaCl、2 mM EDTA、pH 7.5)(10 µL)
を混合し 95℃で
5分間インキュベートした後、
室温で
45分間放置し、 この二本鎖化した
Adapter 1(2 µL)とdA付加した
DNA(38 µL)、NEB 10x T4
DNA ligase buffer(5 µL)、NEB Quick Ligase(5 µL)を混合した溶液を 20℃で
30分間、次い で 16℃で
16時間インキュベートすることで完了 した。
ビオチンアダプター付き
DNAは、マグネットビ ーズ型のサイズ別
DNA回収試薬
SPRISelect(ベックマン・コールター)を用いて、付属のプロト コルに従い精製した。DNA 溶液 50 µL に対して、
0.5
倍量の
SPRISelect試薬(25 µL)を加え、よ く混合した。室温で
5分間放置した後、マグネッ トスタンドを用いてビーズ(DNA)と上清を分離 し、上清を破棄した。ビーズを
85%(v/v)エタノール
175 µL で30秒間洗浄した。この洗浄は二 回繰り返した。完全にエタノールを取り除き、ビ ーズが乾燥する前に、50 µL の
DWを加え、十分 に懸濁した。室温で
10分間静置した後、
DWに溶 出した DNA 45 µL を回収した。
DNA
の断片化は酵素的に行った。上記
DNA(40µL)と
NEB 10x dsFragmentase buffer v2(5 µL) 、
NEB dsFragmentase Enzyme(1.5 µL) 、
DW(3.5 µL)
を混合し、37℃で
1時間反応させた(時間厳守;
長時間のインキュベートは
DNAを過度に分解さ
せる) 。12.5 µL の
0.5 M EDTAを添加し触媒を停
止させ、37.5 µL の
DWを加えた。その直後、
0.9x SPRISelect処理により、200~1,000 bp の
DNA断片を 45 µL 回収した。切断末端は、断片化
DNA( 27.7 µL ) と
NEB 10x End-repair reaction buffer(3.3 µL)、NEB End-repair enzyme mix(1.5 µL) 、
DW(0.5 µL)を混合した反応液を 20℃,
30分間に次ぐ
65℃、30分間のインキュベートで 修復した。修復面へのアダプター(Adapter 2)
の結合は、100 µM Adapter 2 N7 For(1 µL)と 100 µM Adapter 2 N6 For(1 µL) 、100 µM Adapter
2 N5 For(1 µL)、100 µM Adapter 2 Rev(3 µL) 、
2x annealing buffer(6 µL)を混合し 95℃で5分間インキュベートした後、室温で
45分間放置 し、この二本鎖化した
Adapter 2(1.25 µL)と末端修復
DNA(32.5 µL)、NEB Blunt/TA Ligase
Master Mix(7.5 µL)、NEB Ligase enhancer(0.5 µL) を混合した溶液を 20℃で
30分間、 次いで 16℃
で
16時間反応させることで完了した。
Cas9
で切断された
DNAの選択的な回収は、ビ オチン-ストレプトアビジン相互作用を利用した。
ま ず 、
1反 応 あ た り 、 25 µL の
Dynabeads(Invitrogen、ベリタス社)を
125 µLの
1x BW buffer(5 mM Tris、1 M NaCl、0.5 mM EDTA [pH7.5])で5
分間、回転させながら洗浄した。これ
を二回繰り返した後、41 µL の
2x BW bufferで ビーズを再懸濁した。ここに等量の
DNA試料(41 µL)を添加し、室温で
30分間、溶液を混合した。
マグネットで上清を破棄し、200 µL の
1x BW bufferで
30秒間洗浄した。 これを二回繰り返し、
さらに、同様の洗浄を
10 mM Tris-HCl(pH 8.5)を用いて行った。
DNAが吸着したビーズは、
20 µLの
10 mM Tris-HClで再懸濁した。
DNA
ライブラリーへのインデックス付加は、リ
カバリーPCR 後に行った。 上記で得た
DNA-ビーズ混合液(20 µL)と 10 µM Recovery PCR For primer
(2.5 µL) 、10 µM Recovery PCR Rev primer(2.5 µL) 、NEB 2x Phusion Master Mix(25 µL)を混 合し、以下の温度サイクルで
DNAを増幅させた:
[98℃、30
秒] x 1、[98℃、10 秒;61℃、30 秒;
72℃、2
分] x 12、[72℃、2 分] x 1、[4℃、∞]
x 1。ビーズと上清とをマグネットを用いて完全
に分離し、上清 30 µL を回収した。その上清 3 µL と DW 148.5 µL を混合し、次のインデックス
PCRの鋳型として用いた。鋳型
DNA(12 µL)と
NEB 2x Phusion Master Mix(20 µL)、5 µM Index primer For(4 µL)、5 µM Index primer Rev(4 µL)を 混合し、以下の温度サイクルで
DNAを増幅させ た:[98℃、30 秒] x 1、[98℃、10 秒;60℃、30 秒;72℃、2 分] x 12、[72℃、2 分] x 1、[4℃、
∞] x 1。使用したインデックス配列を含むプラ イマーは、 「表1」に列挙した。
目的サイズの
DNA断片(200~800 bp)は、複 数回の
SPRISelect処理で精製した。上記と同様 に
0.7x処理で
DNAを精製した後、別法により
1,000 bp以上の断片を排除し、さらに
0.7x処理
(一回目と同様)により僅かに残存したプライマ ーダイマー(~200 bp)を完全に除去した。 (ま た 、
1,000 bp以 上 の
DNA断 片 を 排 除 す る
SPRISelect
別法を記載する。ここでは、目的外
の
DNAサイズ断片をビーズに吸着させ、必要な
DNAサイズ断片を含む上清を回収する点に注意 する。 )まず、DNA 溶液に
0.5倍量の
SPRISelect試薬を混合し、室温で
5分間静置した。マグネッ トを用いて上清を全量回収し、この上清に
1.3倍量の
SPRISelect試薬を追加した(以下、通常 法に準ずる)。室温で
5分間静置した後、マグネ ットを用いて上清を破棄し、1 mL の
85%(v/v)エタノールで
2回洗浄した。廃液を完全に取り除 き、1 倍量の
DWで
DNAを溶出した。
調製した
DNAライブラリーの品質は、Agilent
Bioanalyzer High Sensitivity DNA chipを用い て評価した。 プライマーダイマーが存在しないこ と、また、>1,000 bp の
DNA断片が多量に含まな いことを確認した。
DNA濃度を見積もるため、ラ イブラリーの平均サイズ値を記録した。 (本方法 で作製されるライブラリーの平均
DNAサイズは、
約
650 bpである(図
3)。二本鎖
DNAの量は
Qubit HSで測定し、この数値(ng/µL)と平均
DNA分子 量値(X-bp x 660 g/mol)から
DNAライブラリー の濃度を算出した。異なるインデックス配列が付 加された各試料の
DNA濃度を同値に再調製した 後、これらを等量混合し分析試料とした。
7.MiSeq を用いたシーケンス解析
上記方法では、約
1~2 nM DNAライブラリーが 調製される。
MiSeq解析での効果的なクラスター 形成のために、qPCR でその濃度を再確認した。
ラ イ ブ ラ リ ー の 定 量 は 、
KAPA library quantification kitを用い、その付属プロトコ ルに従い実施した。算出された値をもとに
1 nMまたは
2 nM に再調製した。DNA
ライブラリーの変性は、サンプルと等量の
0.2 N NaOH
を添加し、室温で
5分間静置して完 了した。変性後、
DNAは直ちに氷中に移行させた。
MiSeq Reagent Kit v3(150
サイクル)に付属の
緩衝液
HT1を用いて、ライブラリーを
10 pMに希 釈した。この時、NaOH の終濃度は
0.001 N以下 とした。10 pM ライブラリー 600 µL を試薬カー トリッジ(同キット)の
17ポートにロードし、
フローセル(同キット) 、PR2 試薬(同キット)
とともに
MiSeqに取り付け、解析を開始した。フ
ローセルは、 取り付け前に超純水で塩を洗い流し、
エタノールで汚れと曇りをふき取った。
解 析 の ワ ー ク フ ロ ー は 、
Illumina Experimental Manager(IEM、
v1.16.1)で作成した。 (本ソフトは
Illumina社のサイトから無償で ダ ウ ン ロ ー ド 可 能 で あ る
[http://jp.support.illumina.com/sequencing/sequencing_software/experiment_manager/down loads.html?langsel=/jp/]。)IEM
を用いたサン プルシートの作成方法を以下に示す。まず、
Illumina Experimental Manager
を 起 動 し 、
「Create Sample Sheet」を選択する。 「MiSeq」
をクリックし、 「Next」ボタンを押す。次ページ で 、
Select Categoryは 「
Other」、
Select Applicationは「FASTQ Only」を選択し、 「Next」
を押す。 ワークフローのパラメーター以下の画面 の通りに設定した(UD index が選択される任意 の
work flow prepを 選 択 す る )。 画 面 右 の
specific settingsのチェックはすべて外した。
「Finish」ボタンを押すと、エクセル上で内容を 確認する。このファイル名はカートリッジに記載 されている
Cartridge Barcodeとして保存する。
MiSeq
装置本体に解析データを保存する場合、こ
のサンプルシートは
MiSeq装置の特定の場所に 保存した([Computer] < [Data] < [Illumina] <
[MiSeq Control Software] < [Sample sheets])
。
8.
DSBのリファレンスゲノムへのマッピングと クリフ判定
様々な
DNA断片種が収容されたライブラリー を
Cas9切断面側からシーケンスし、得られたリ ードは、オン・オフターゲット部位を特定する情 報とした(図
4)。MiSeq より得られたシーケン スファイル(Fastq)は、公開されているヒト又 はブタゲノムをリファレンスにマッピングし、
Cas9
で切断された位置候補の特定、切断位置の ゲノム上の情報、切断効率の情報取得を行った。
マッピングソフトウェア
bowtie2(バージョン 2.3.4.2)を用い、リファレンスゲノムにはヒト(
hg38 Illumina UCSC)、 ブ タ (
Sscrofa11.1Illumina Ensemble)をそれぞれ用いた。切断位
置候補は、原著論文内の切断位置検出スクリプト
(python)にて解析した。切断位置が遺伝子のコ ーディング領域内に位置するかは、公開されてい るアノテーションファイルと
bedtools(バージョン
2.27.0)にて参照した。また、個々の切断された位置情報は、IGV(Integrative Genomics
Viewerバージョン
2.4)を使用しマッピング状況の確認は目視で行なった。
9. Galaxy を使用した
DSB判定ツールの開発 上記「7.
DSBのリファレンスゲノムへのマッ ピングとクリフ判定」の中で使用した各種ソフト ウェアは、BioContainers(Docker)を用いて、
デ ー タ 解 析 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム
Galaxy(https://galaxyproject.org/)に実装させた
SITE-seq
解析用ワークフローを作成しツールを
開発した。
C. 研究結果
1.
SITE-seq法の再現性
ゲノム編集で生じた二本鎖切段位置を解析す るに当たり、ゲノムDNAをいかに物理的な分解な しにインタクトな状態で精製するかが、
SITE-Seq法の特異性を上げるため最も重要となる。 本研究 では、まず、DNA抽出精製キットを使用して培養 細胞からのゲノムDNAの精製を行った。得られた ゲノムDNAの品質は、
1%(w/v)アガロースゲル電 気泳動で評価した。0.5~1.0 µg DNAをアガロー スゲルのウェルにロードし、観察した。その結果、
培養細胞から高分子量DNAに相当する単一バンド が観察され、分解のない良質なDNA試料を精製す ることが可能であったことが示唆された(データ 示さず) 。
SITE-seq
法の原著論文(
Nature Methods, 14, 600-606, 2017)では、複数の標的(ガイドRNA)を用いて
SITE-seqの有効性が検証された。我々
は本法の明確な再現を得るため、その中からヒト
のゲノム
DNAのいわゆる 「ゲノムセーフハーバー
領域」を標的に設計されたガイド
RNAのオフター
ゲットが生じやすいガイド
RNAとそうでないも
のの代表として、 それぞれ
AAVS1と
FANCFを選択
し、その切断様相の違いを観察した。さらに、オ
フターゲットの出現場所と頻度はガイド
RNAの
配列だけでなく、ゲノム編集の際に使用される
Cas9の添加濃度とも関連することが報告されて
いる
1)ことから、様々な
Cas9濃度(1~1024 nM)
の存在下でヒトゲノム
DNA(HEK293T細胞由来)
を切断した。
その結果、
AAVS1のオンターゲット切断は、
1 nMと
1024 nM Cas9濃度では観察されず、試験した
内
64 nMのみオンターゲット切断が確認された
(図
5、7)。一方、
FANCFでは試験した
1 nMと
64 nM
の両方でオンターゲット切断が観察された
(図
6、8)。オフターゲット切断は広範囲な
Cas9濃度で生じ、その数は
Cas9濃度に依存して増加 した(図
7、8)。64 nM Cas9 処理における
AAVS1と
FANCFのオフターゲット数を比較すると、
AAVS1
のそれは
FANCFよりも
6倍以上多く検出さ れた。 以上の結果は、 原著論文と類似し、
SITE-seq法は再現性の高いオフターゲット検出法である ことが確かめられた。
2.SITE-seq 法で予測されるエクソン内オフタ ーゲット(ヒト)
ゲノム編集生物において、オフターゲット切断 に起因する形質変化が極大となる可能性の一つ に、標的切断配列以外の遺伝子コード領域(エク ソン)が非相同末端結合(non homologous end
joining [NHEJ])による不規則な編集により予期せぬ変異が導入されることが挙げられる。 そのよ うな変異遺伝子は、有毒・有害なタンパク質とし て発現、その結果、意図しない表現型が生成され ることも考えられる。よって、オフターゲット予 測では、まずエクソン内のオフターゲット位置を 再現よく特定する必要がある。この点を検証する ために、異なる
2人の実験者によって独立した解 析を行い、エクソン内切断位置のマッピングデー タを比較した。その結果、
AAVS1のエクソン内オ フターゲット数は、実験者間で異なった。そのオ フターゲット部位の共有率は、1 nM、64 nM と
1,024 nM Cas9処理において、それぞれ
25%、58%と
28%であり完全に一致しなかった。一方、高確率で共有されるオフターゲットは、オンターゲッ ト切断が起こる
Cas9濃度(64 nM)で出現しやす い傾向が観察された(図
7)。そこで、これら出 現再現性の高いオフターゲット配列(31 つの候 補)とガイド配列との相同性を照合すると、20 塩基中
3~8のミスマッチが許容されており、全 体的な相同性は必ずしも高くなかった(表
3)。 一方、いずれの候補には
PAM配列の存在が認めら れ、その 5’側近接(シード配列:切断の特異性
を決定する配列)の相同性は高かった。これと同 様のことは、
AAVS1よりも特異性の高い
FANCFで も観察され(表
4)、再現よく提示されるオフター ゲ ッ ト は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る
CRISPR-Cas9
システムの切断ルールに忠実であ
ることが示された。
上記の相同性に基づいたオフターゲット予測 は、ウェブツールでも可能である。そこで、最も 一般的なツールの一つである
CasOFFinderを用
いて、
SITE-seqが予測した候補配列を検索した。
AAVS1
のオフターゲット上記
31候補を調べた結
果、
CasOFFinderは
31候補中
14つしか予測でき なかった(表
3)。
FANCFにおいては、3 候補中
2候補の予測にとどまった(表
4)。以上より、オ フターゲットは
in silico解析だけでなく、
Cas9の活性をもとに予測する必要性が示唆された。
3.SITE-seq が示す予測オフターゲットの妥当 性(ヒト)
SITE-seq
法による予測の妥当性を評価するた
めに、オフターゲット切断部位を含む
DNA領域を リアルタイム
PCRにて解析した。
2回の独立した 解析で得られた共通オフターゲットの中から、マ ッピングされたリード数上位
3位を選択し、その 切断量をオンターゲットと比較した。切断量は、
Cas9
処理
DNAと未処理
DNA間の
Cq値の差(ΔCq 値)を算出することにより推定した。オンターゲ ットの切断効率を
100%とした場合、上位 3つの オフターゲット予測部位の切断効率は、
AAVS1で は
5.11~30.35%、FANCFでは
47.63~52.85%であった。その切断効率は、SITE-seq で得られたリ ード数に比例した。以上の結果より、SITE-seq 法のオフターゲット予測が定量リアルタイム
PCR法においても支持された(図
9、10)。
4.SITE-seq によるブタのゲノム編集に使用さ れたガイド
RNAの安全性評価(ブタ)
SITE-seq
法の食用生物への応用を目指し、ブ
タゲノム(LLC-PK1 細胞)を用いた解析を試みた。
疫病耐性ゲノム編集ブタの作出に使用されたガ イド
RNA(SL26と
SL28)2)について、その特異 性を図
4のワークフローに従って解析した。
AAVS1
のように、SL26 と
SL28のオンターゲッ ト切断は限られた
Cas9濃度範囲で観察された。
異なる
4濃度(1、64、256、1,024 nM)で処理し
た場合、それは
64 nMと
256 nMで現れ、低濃度
(1 nM)と高濃度(1,024 nM)の条件では未切断 と判定された。一方、オフターゲットはいずれの
Cas9濃度でも出現した(図
11)。その数は
Cas9濃度依存的に増加し、最終的に~80 候補程度に 達した。これらの内エクソンが切断されたのは、
SL26
で
4遺伝子、SL28 では
3遺伝子だった(表
5)。オンターゲット切断と同様、エクソン内切断もまた限られた
Cas9濃度ポイントで観察された。
SITE-seq
の予測を評価するため、各エクソン
内オフターゲット候補について、先述のリアルタ イム
PCR測定を行った。その結果、SL26 と
SL28の 各 候 補 の 内 、 そ れ ぞ れ
1遺 伝 子 (
SL26、C16H5orf34; SL28、SRFBP1
)で顕著な切断が観察 された(図
12、13)。切断が観察されたものとそ うでないものの違いは、ガイド
RNAとの塩基相同 性であった(表
5)。切断が検出されなかった標 的では、
PAM配列が欠落し、ゲノム
DNAとガイド
RNAが部分的な結合を示唆するまばらな一致性 を示した。一方、切断が検出された標的では、
PAM配列が存在し、かつシード配列(PAM 近傍の
8塩 基)との相同性が高かった。しかしながら、その 相同性は必ずしもインターネット上に公開され ている
CasOFFinder3)等の既存のガイド
RNA設計 オンラインツールで予測可能なほど十分ではな か っ た 。
SL26の オ フ タ ー ゲ ッ ト 配 列 は
CasOFFinderで予測できたが、
SL28の
RNAバルジ
(膨らみ)が生じた複雑な規則性の無いオフター ゲット配列は予測できなかった。以上の結果は、
実際にガイド
RNAと
Cas9の複合体をゲノム
DNAと反応させた活性を基盤とした
SITE-seq法の予 測の必要性を支持した。
5.ブタ
CD163遺伝子のエクソン内切断とその
オフターゲット(ブタ)
SL26
と
SL28ガイド
RNAは、ブタの疫病の原因 となる
PPRSウィルスの膜融合レセプターとして 機能するブタ由来
CD163遺伝子のイントロン切 断を指示する。他方、実際のゲノム編集ではエク ソン内を切断する例も多く、 その際に使用するガ イド
RNAはオフターゲット効果を最小限にする ため、専用のガイド
RNA設計ツールで設計される。
そこで、ゲノム編集作物の開発者側に立ち、
1例 としてブタ
CD163遺伝子の第
7エクソン内を標的 とするガイド
RNAを設計し、
SITE-seqを試みた。
ガイド
RNAは、ガイド
RNA設計ツール(CRISPR
direct4))を用い、高い特異性のある配列の中か
らガイド
RNAの標的配列を設計した。その結果、
複数のオフターゲット候補が挙げられたが、その ほとんどは不規則な切断面とともにマッピング された(データ示さず) 。これらはガイド
RNAに よるプログラムされた切断ではなく、物理的な
DNA切断であることが示唆された。一方、
SKA2遺伝子はエクソン領域で切断される最も有力な オフターゲットと推定された。オンターゲット切 断と同様、その切断は特定箇所で起こった。しか し、該当候補とガイド
RNAとの相同性は極めて低 く、リアルタイム
PCRによる判定でも、そのオフ ターゲット切断は認められなかった(図
14)。
6.Cas9 単体の非特異的切断(ブタ)
ガイド
RNA非存在下で
Cas9による
DNAの非特 異的切断の有無を検証するため、ブタゲノムを
DNA切断活性に必要過剰量の
Cas9(1,024 nM)を 添加し、SITE-seq を試みた。その結果、クリフ と判断された配列は十数個リストアップされた が、その候補配列の数は、同
Cas9濃度下で
SL26またはSL28を切断した条件よりも
3~4倍少なかった。
D. 考察
CRISPR-Cas9
を用いたゲノム編集技術の発展 に伴い、次世代シーケンサーを利用した
unbiasかつゲノムワイドなオフターゲット解析法が開 発されてきた(Digenome-seq
5)、GUIDE-seq
5,6)、
HTGTS7)、CIRCLE-seq
8)、SITE-seq 等) 。その中で も、Cas9 で切断されたゲノム
DNAを選択的に濃 縮し網羅的にシーケンスするタイプの手法は、 よ り多くのオフターゲット部位の情報を得られる 点で、今回の目的であるゼロトレランスな安全性 評価とマッチしている。また、SITE-Seq の原著 論文では、Digenome-Seq、GUIDE-Seq、HTGTS と 比較しても、SITE-seq 法で検出されるオフター ゲット候補は、それらの方法を用いて検出される 箇所をほぼ完全に網羅することが報告されてい る
9)。そこで、本研究では
SITE-seq法をオフタ ーゲット解析手法として選択し、まずはその再現 性を検証した。その再現性は、ヒトとブタの異な る
DNA基質で確かめた。
先ず、本法の最大の難点として、鋳型として使
用するゲノム
DNAの高い品質が求められること
である。 抽出精製過程で人工的な切断が生じた場
合、切断されたゲノム
DNAは、1%(w/v)アガロ
ースゲル電気泳動によって高分子量のスメアバ ンドとして、その程度に応じて観察される。培養 細胞からのゲノム
DNAは、
DNA抽出精製キットを 用いて抽出精製した結果、抽出精製過程で生じる 可能性のある物理的な分解をほぼ受けていない インタクトなゲノム
DNAを抽出精製可能である ことが示唆された。来年度は、動物細胞にはない 強固な細胞壁を有する食用植物(作物)からの抽 出精製を行い、本法の有効性についてさらに評価 を行っていく予定である。
CRISPR-Cas9
によるオフターゲットは
Cas9濃 度に依存して増加したため、その予測はヌクレア ーゼ活性に依存すると考えられた。一方、オンタ ーゲットが限られた
Cas9濃度で出現したように、
オフターゲットリストが
Cas9濃度の増加に応じ た積み上げ式ではなく、濃度ポイントで候補が異 なるランダム式で構築されたことは
Cas9の特異 性が非常にあいまいであることを示唆する。オフ ターゲットは基本的にガイド
RNA-DNA間の相同 性で決定されるものの、その部分的結合によって 生じるバルジ(不一致性)をある程度許容するた め、 特定箇所を再現よく切断することは困難であ り、また、候補部位が多ければ、それはより競合 的となると考えられる。従って、SITE-seq によ る高度なオフターゲット予測は、反応に関わる
Cas9濃度を高範囲に設定して実行されるべきで ある。
オフターゲット予測は、
in silico解析だけで は不十分である。相同性データベース解析は高確 率で生じるオフターゲットを予測するが、 そのリ
ストは
SITE-seqの予測を完全にカバーできず、
実際に起こったオフターゲットの切断を見落と したことを確認した。よって、ガイド
RNAを設計 する際は、まず
in silico解析により最もユニー クな配列を選抜した後、そのガイド
RNAの潜在的 なオフターゲットを
SITE-seq法で生化学的に検 証し、さらに培養細胞レベルでその切断の有無を 確認することが推奨される。 この一連の解析を確 立することで、ゲノム編集作物の安全性評価に役 立つことが期待され、また、Cas9 の特異性に関 する情報集積とその制御に貢献できると考える。
ガイド
RNA非存在下で
Cas9による
DNAの非特 異的切断の有無を検証した結果、 すべての切断候 補配列において、その切断面は不規則であった。
この切断様式から、Cas9 は決まった配列に左右 されない非特異的な切断を誘導されていた、また
は
Cas9の活性以外によりゲノム
DNAを物理的に せん断されていた可能性が示唆された。
本分担研究では、研究者が視覚的・直観的に
SITE-seq
で得られたデータを個々の研究に活用
できるように、データ解析プラットフォーム
Galaxy(https://galaxyproject.org/)に実装さ
せた
SITE-seq解析専用ワークフローを開発した
(図
15)。CUIを使用した解析では、複数の公
開ソフトウェアを順序だてて実行し結果を得て、
またそれぞれのソフトウェアの動作を自由に条 件指定出来ることが求められる。よって、研究者 のさまざまな希望に沿う解析が実行可能である が、パイプライン処理、スクリプト処理等の
CUIに不慣れな研究者にとっては、設定が多すぎて敷 居が高いと感じることが実情である。これらの処 理を一つの市販ソフトウェア(ワークフローソフ トウェア)を用いて行うことも可能であるが、高 額であるとともに、使用するソフトウェアは実は 無料のものばかりでるため、 未だに一部の研究者 が使用するのみの現状となっている。「Galaxy」
を利用することで、一連のソフトウェアの実行時 に必要な細かな設定を文字列で入力するのでは 無く、
Webブラウザ上で指定しコンピュータ間の
「データの編集し受け渡し」を行えるなど、解析 手順も順序だてて処理せずにデータが得られる ので、インターネット接続環境にある
PCが有れ ば十分に解析が可能となる。
本研究では、オンターゲットとオフターゲット の両方を含む
DSBの位置を推測できる
SITE-seq解析用ワークフローを「Galaxy」に実装させた。
開発しているツールは、今後、外部サーバーを借 りることで、 ネットワークセキュリティーが許す 範囲で一般に公開し、 研究者が無料で利用できる ような環境を整備する予定である。
参考文献:
1) Hsu, P. D., et al., Nature Biotechnology, 31, 827-832, 2013
2) Burkard C, et al., PLOS Pathogens 13, e1006206, 2017
3) Bae S, et al., Bioinformatics 30, 1473-1475, 2014
4) Naito Y, et al., Bioinformatics 31, 1120-1123, 2015
5) Kim D, et al., Nature Methods 12, 237-243, 2015
6) Tsai SQ, et al., Nature Biotechnology 33, 187-197, 2015
7) Frock RL, et al., Nature Biotechnology 33, 179-186, 2015
8) Tsai SQ, et al., Nature Methods 14, 607-614, 2017
9) Cameron P, et al., Nature Methods 14, 600-606, 2017
E. 結論
ゲノム編集食品の安全性評価法の一つとして オ フ タ ー ゲ ッ ト 部 位 を 網 羅 的 に 推 定 す る
SITE-seq
法の再現性について確認した。オフタ
ーゲット予測は、 各種オンラインオフターゲット 予測ツールを使った
in silico解析だけでは不十 分であることが示唆された。 相同性データベース 解析は高確率で生じるオフターゲットを予測す るが、そのリストは
SITE-seqの予測を完全にカ バーできず、 実際に起こったオフターゲットの切 断を見落としたことを確認した。SITE-seq 法を 再現性良く容易に利用できるよう、汎用プロトコ ルとバイオインフォマティックス解析ツールの 開発を行った。今後は、ゲノム編集食品として最 も開発の進んでいる植物を解析可能な汎用プロ トコルとバイオインフォマティックス解析ツー ルを併せて開発を行う予定である。
F. 業績 1.
論文発表
1) Kawaguchi, N., Tomita, C., Naradate, R., Higami, T., Nakamura, K., Date, K., Aikawa, K., Ogawa, H. A novel protocol for the preparation of active recombinant human pancreatic lipase from Escherichia coli, Journal of
Biochemistry, 2018
doi:10.1093/jb/mvy067
2) Takabatake, R., Kagiya, Y., Minegishi, Y., Futo, S., Soga, K., Nakamura, K., Kondo, K., Mano, J., Kitta, K. Rapid screening detection of genetically modified crops by loop-mediated isothermal amplification with a lateral flow dipstick. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 66, 7839-7845, 2018.
3) Soga, K., Nakamura, K., Kishine, M., Takashima, Y., Miyahara, T., Kimata, S., Mano, J., Takabatake, R., Ozeki, Y., Kitta, K., Kondo, K. Studies on the detection of maize genomic DNAs in cornflakes using real-time PCR. Bulletin of National Institute of Health Sciences, 136, 31-39, 2018
邦文(リアルタイム
PCRを用いたコーンフ レーク中のトウモロコシゲノム
DNA検出に ついて:曽我慶介、中村公亮、岸根雅宏、
高嶋康晴、宮原平、木俣真弥、真野潤一、
高畠令王奈、小関良宏、橘田和美、近藤一 成)
4) Nakanishi, K., Fujii, U., Nakamura, K., Ohtsuki, T., Kimata, S., Soga, K., Kishine, M., Mano, J., Takabatake, R., Kitta, K., Kawakami, H., Akiyama, H., Ikeda, M., Kondo, K. Effect of sodium carboxymethyl cellulose in processed rice foods on detection of genetically modified rice-derived DNA. Japanese Journal of Food Chemistry and Safety, 25, 77-85, 2018
5) Nakamura, K., Ishigaki, T., Kobayashi, T., Kimata, S., Fujii, U., Soga, K., Kishine, M., Takabatake, R., Mano, J., Kitta, K., Kawakami, H., Nishimaki-Mogami, T., Kondo, K. Identification of chickpea (Cicer arietinum) in foods using a novel real-time polymerase chain reaction detection method. Journal of Food Composition and Analysis, 71, 8-16, 2018
6) Kishine, M., Noguchi, A., Mano, J., Takabatake, R., Nakamura, K., Kondo, K., Kitta, K. Detection of DNA in highly processed foods. Food Hygiene and Safety Science, 59, 151-156, 2018
邦文(高度加工食品からの原材料農産物
DNA検出の検討:岸根雅宏、野口秋雄、真野潤
一、高畠令王奈、中村公亮、近藤一成、橘
田和美)
2. 学会発表
1) Kondo, K., Kato, R., Sakata, K., Nakamura, K. Mitochondria-resident non-releasable AIF mutant may regulate gene expressions related to cell differentiation and proliferation, 2018 ASCB EMBO Meeting, San Diego, CA, USA, 2018
年
12月
2) Nakamura, K., Kimata, S., Soga, K., Ohmori, K., Kishine, M., Mano, J., Takabatake, R., Kitta, K., Kondo, K. Effect of food additives in processed foods on endogenous gene detection, 132nd AOAC Annual Meeting & Exposition, Toronto, Canada, 2018
年
8月
3)
中村公亮、木俣真弥、秋本智、志波優、曽我 慶介、田中さやか、権藤崇裕、明石良、近藤 一成:SITE-seq 法とオンラインツールを用 いたゲノム編集におけるオフターゲット効 果の解析結果の比較と評価、 日本薬学会 第
139年会、千葉、2019 年
3月
4)
曽我慶介、中村公亮、石垣拓実、木俣真弥、
大森清美、 岸根雅宏、 真野潤一、 高畠令王奈、
橘田和美、名古屋博之、近藤一成:未承認遺 伝子組換えサケ検知法の開発、日本薬学会 第
139年会、千葉、2019 年
3月
5)
木俣真弥、中村公亮、石垣拓実、曽我慶介、
岸根雅宏、高畠令王奈、橘田和美、近藤一成:
遺伝子組換えバレイショ
Y9系統と
X17系統 を対象とした検知試験法の開発、第
54回全 国衛生化学技術協議会年会、神奈川、2018 年
11月
6)
曽我慶介、中村公亮、岸根雅宏、高嶋康晴、
宮原平、木俣真弥、真野潤一、高畠令王奈、
小関良宏、橘田和美、近藤一成:リアルタイ
ム
PCR を用いたコーンフレーク中のトウモロコシゲノム
DNA 検出法の検討、第54回全 国衛生化学技術協議会年会、神奈川、2018 年
11月
7)
菅野陽平、 青塚圭二、 坂田こずえ、中村公亮、
鈴木智宏、近藤一成:LAMP 法を用いた有毒
キノコ迅速判別法の構築-ツキヨタケとクサ ウラベニタケの同時検出に関する検討-、日 本食品化学学会 第
24回 総会・学術大会、
東京、2018 年
5月
8)
木俣真弥、中村公亮、石垣拓実、曽我慶介、
岸根雅宏、高畠令王奈、橘田和美、近藤一成:
ダイズにおけるゲノム
DNAの位置に依存し た
DNA分解度の違い、日本食品化学学会 第
24回 総会・学術大会、東京、2018 年
5月
G. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得
中村公亮、小林友子、近藤一成:遺伝子組換え植 物の判定法、特許第
6371949号、登録日:2018 年
7月
27日
2. 実用新案登録
なし
3. その他
なし
「表1」本研究で使用したオリゴ一覧 使用目的 オリゴ名 配列(5’ to 3’)
gRNA
鋳型
DNA TemplateDNA-AAVS1-forward
CGATGTAATACGACTCACTATAGGGGGGCCACTAGGGACAGGATG TTTTAGAGCTATGCTGAAA
Template
DNA-AAVS1-reverse
AAGCACCGACTCGGTGCCACTTTTTCAAGTTGATAACGGACTAGC CTTATTTTAACTTGCTATGCTTTTCAGCATAGCTCTAAAACA Template
DNA-FANCF-forward
CGATGTAATACGACTCACTATAGGGGAATCCCTTCTGCAGCACCG TTTTAGAGCTATGCTGAAA
Template
DNA-FANCF-reverse
AAGCACCGACTCGGTGCCACTTTTTCAAGTTGATAACGGACTAGC CTTATTTTAACTTGCTATGCTTTTCAGCATAGCTCTAAAACG Template-SL26-F CGATGTAATACGACTCACTATAGGGAATCGGCTAAGCCCACTGTG
TTTTAGAGCTATGCTGAAA
Template-SL26-R
「Template DNA-AAVS1-reverse」と同配列
Template-SL28-F CGATGTAATACGACTCACTATAGGCCCATGCCATGAAGAGGGTAGTTTTAGAGCTATGCTGAAA
Template-SL28-R AAGCACCGACTCGGTGCCACTTTTTCAAGTTGATAACGGACTAGC CTTATTTTAACTTGCTATGCTTTTCAGCATAGCTCTAAAACT Template-CD163-exon7-F CGATGTAATACGACTCACTATAGGCCAGTAGCACCCCGCCCTGAG
TTTTAGAGCTATGCTGAAA
Template-CD163-exon7-R
「Template-SL28-R」と同配列 ライブラリー:
アダプター付加
Adapter 1-Forward [BioON]GTTGACATGCTGGATTGAGACTTCCTACACTCTTTCCC TACACGACGCTCTTCCGATCT
Adapter 1-Reverase GATCGGAAGAGCGTCGTGTAGGGAAAGAGTGTAGGAAGTCTCAAT CCAGCATGTCAAC
Adapter 2 N7 Forward [PHO]GTCGTATTAGTAGTANNNNNNNAGATCGGAAGAGCACACG TCTGAACTCC
Adapter 2 N6 Forward [PHO]GTCGTATTAGTAGTANNNNNNAGATCGGAAGAGCACACGT CTGAACTCC
Adapter 2 N5 Forward [PHO]GTCGTATTAGTAGTANNNNNAGATCGGAAGAGCACACGTC TGAACTCC
Adapter 2 Reverse ACTACTAATACGACT
ライブラリー:
リカバリーPCR
Recovery PCR Forward GGAGTTCAGACGTGTGCTC Recovery PCR Reverse GTTGACATGCTGGATTGAGACTTC
ライブラリー:
インデックス付加
*Index-UDI0001-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACAGCGCTAGACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0001-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTACCGCGGTTGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0002-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACGATATCGAACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0002-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTATTATAACCGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0003-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACCGCAGACGACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0003-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAGGACTTGGGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0004-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTATGAGTAACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0004-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAAAGTCCAAGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0005-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACAGGTGCGTACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0005-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAATCCACTGGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0006-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACGAACATACACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0006-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAGCTTGTCAGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
ライブラリー:
インデックス付加
*(続き)
Index-UDI0007-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACACATAGCGACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0007-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTACAAGCTAGGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0008-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACGTGCGATAACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0008-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTATGGATCGAGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0009-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACCCAACAGAACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI0009-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAAGTTCAGGGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI0009-R2 CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATAGTTCAGGGTGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
Index-UDI00010-F AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTTGGTGAGACACTCTT TCCCTACACGACG
Index-UDI00010-R CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTAGACCTGAAGACTGGAGTTC AGACGTGTGCTC
切断領域の増幅
AAVS1-F (on) TATATTCCCAGGGCCGGTTA AAVS1-R ACAGGAGGTGGGGGTTAGAC Chr1_232239348-F (off) CACAGACATGGCCTCTGTGChr1_232239348-R TGAGCCAGGTTACATTGAGAC Chr6_83570674-F (off) CTCATCACAGACCTGGAGGT Chr6_83570674-R TCCCAAACCTCAATTCTTAG Chr6_40393238-F (off) CAGGCAGGCAACAGGAATA Chr6_40393238-R TCCTCGGTCTCTGACACATC
FANCF-F (on) TGAAAGCGGAAGTAGGGC
FANCF-R CTCTTGCCTCCACTGGTTG Chr7_102590385-F (off) TGTTGGCTAACTTGATGAGG Chr7_102590385-R AGGTCACTCTAGGTCTCCCAT Chr17_67743554-F (off) CACATGCTACAACAGGATGA Chr17_67743554-R CCCAGACTGAACCCATTA Chr10_42914583-F (off) TGACAGAAGGCAGCCAAG Chr10_42914583-R ACCTCTGACCTCCACAACTG SL26_On_F TCCCAGAATTGTCTCCAGG SL26_On_R CATGCCTCTTGGTTTTTCTG SL26_Off_CD38_F TTTCTGGATGACTTCAAAAC SL26_Off_CD38_R GTTGCTATGAGGAACAAATAT SL26_Off_C5orf34_F AGATAGCATGTACTTTGTCATC SL26_Off_C5orf34_R GGTTCCTGGGATAAATGA SL26Off_SLC2A2_F ACGTTAAAAACTCTTAGAATCC SL26Off_SLC2A2_R GTAACACTCTCACAACAATA SL26_Off_MUL1_F GCCTTAAGATGTGGATATGG SL26_Off_MUL1_R CTTCAGGAGCACAAGATG SL28_On_F AAGTGAGACCCAGGGAATG SL28_On_R CCAAGCGGATTTGTGTGTAT SL28_Off_miRNA_F TTTCTTCCATTCTTGTCCAC SL28_Off_miRNA_R CTGATTATGCTGCCTCGT SL28_Off_SRFBP1_F ACCAAAGACGAGCACAAC
SL28_Off_SRFBP1_R CA AAA TGT AGG CTG AGA GGA CD163-Exon7_On_F AAGGAAGTGGACAGATCTGG CD163-Exon7_On_R CTGCTGTGGCTACATGTCC CD163-Exon7_Off_SKA2_F AGGAGGATTGGCTGCTATAC CD163-Exon7_Off_SKA2_R CACCAATCGGAAGCTCTT
*太文字はインデックス配列
「表
2」使用したガイドRNA生物種 標的 ガイド
RNAの配列(5’ to 3’) 引用
Homo sapiens (ヒト) AAVS1 GGGGCCACTAGGGACAGGAT 5
FANCF GGAATCCCTTCTGCAGCACC 5
Sus scrofa (ブタ) SL26 GAATCGGCTAAGCCCACTGT 7
SL28 CCCATGCCATGAAGAGGGTA 7
CD163-Exon7 CCAGTAGCACCCCGCCCTGA
本研究
「表
3」SITE-Seqで予測された
AAVS1のエクソン内オフターゲット候補
AAVS1
ガイド
RNAと
64 nM Cas9で
HEK293Tゲノムを切断した時に生じるエクソン内オフターゲットを列
挙した。その配列とガイド
RNA配列との相同性はアスタリスクで示した。赤三角は切断部位、緑枠は
PAM配列を示す。ここに列挙したオフターゲット候補は、
2回の独立した解析で共通して見出されたものであ
る。各候補について、CasOFFinder によるオフターゲット予測の可否も表示した。
(表
3の続き)
「表
4」SITE-Seqで予測された
FANCFのエクソン内オフターゲット候補
FANCF
ガイド
RNAと
64 nM Cas9で
HEK293Tゲノムを切断した時に生じるエクソン内オフターゲットを列 挙した。その配列とガイド
RNA配列との相同性はアスタリスクで示した。赤三角は切断部位、緑枠は
PAM配列を示す。ここに列挙したオフターゲット候補は、
2回の独立した解析で共通して見出されたものであ る。各候補について、CasOFFinder によるオフターゲット予測の可否も表示した。
「表
5」ブタゲノムのCD163遺伝子を編集するガイド
RNAのエクソン内オフターゲット候補
「図1」SITE-Seq 法のワークフローの概略
SITE-Seq
法の概略は、その原著論文
Cameron P., et al (2017) Nature Methods 14(6): 600-609.より一部改変し引用した。
シーケンスに使用される
DNAライブラリーは、
CRISPR-Cas9システムで切断された
DNA断片から選択的に 生成される。
①高分子量のゲノムDNA
②gRNPでゲノムを切断
③切断面(3’側)をアデニル化
④ビオチンアダプターを付加
A A
A
T AT
⑤低分子量DNAに断片化 A T
⑥切断面をアデニル化 A
T A A
⑦アダプターを付加 A
T A A
T T
⑧ビオチン付DNAの精製 A T TA
⑨両端にインデックスを付加 A
A T
T P5
P7
⑩シーケンシング & マッピング 切断部分 リファレンス 解読した配列
gRNP=Cas9-ガイドRNA複合体
「図2」Cas9 切断部位を含む
DNA断片から作成される
DNAライブラリーの構造
SITE-Seq
法で最終的に作成されるライブラリー構造を示した。Cas9 由来の切断面側に
P5アダプター、
断片化した際に生じるランダムな切断面には
P7アダプターがそれぞれ付加される。P5 配列および
P7配 列は、フローセルに結合する領域である。8塩基(N)からなる
index配列は複数のサンプルを識別する バーコードであり、UD Index が使用される(Illumina Adapter Sequences 参照) 。Index 配列と目的の
DNA配列(DNA insert)は、シーケンスプライマー結合部位より解読される。
「図3」DNA ライブラリーのサイズ分布の例
MiSeq
でシーケンスする前に、Agilent BioAnalyzer で解析した典型的な
DNAライブラリーのサイズ分布 を示す。SITE-Seq 法では、300~2000 bp の
DNAを含むライブラリーが調製され、その平均サイズはおよ そ
650 bpとなる。
150~200 bpの
DNAはプライマーダイマーに相当し、シーケンスの質を低下させるため、
完全に除去する必要がある。同様に、1000 bp を超える
DNAの含量も最小限とする。
「図4」シーケンスデータから
Cas9切断部位を特定・可視化するまでのシステム概略
「図5」IGV ソフトウェア上で表示される
AAVS1のオンターゲット切断部位
AAVS1
のオンターゲット切断を赤矢印で示す。下方向に積み重ねられている棒は、リファレンスゲノム(ヒト)
に張り付けられたリードを指す。
「図6」IGV ソフトウェア上で表示される
FANCFのオンターゲット切断部位
FANCF
のオンターゲット切断を赤矢印で示す。下方向に積み重ねられている棒は、リファレンスゲノム(ヒト)
に張り付けられたリードを指す。
「図7」AAVS1-ガイド
RNAにおけるオフターゲット切断の出現推移
Cas9
濃度に依存したオフターゲット切断の増加を示した。AAVS1 を標的とするガイド
RNAを用いて、HEK293T ゲノムを処理した。この処理は異なる
2人の実験者(A と
B)により独立して行われた。折れ線グラフはオフターゲットの総数(左縦軸)、棒グラフはその内のエクソン内切断数(右縦軸)を示す。
「図8」FANCF-ガイド
RNAにおけるオフターゲット切断の出現推移
Cas9
濃度に依存したオフターゲット切断の増加を示した。FANCF を標的とするガイド
RNAを用いて、HEK293T
ゲノムを処理した。この処理は異なる
2人の実験者(A と
B)により独立して行われた。折れ線グラフはオフターゲットの総数(左縦軸) 、棒グラフはその内のエクソン内切断数(右縦軸)を示す。
「図9」SITE-Seq が示すオフターゲット予測の妥当性(AAVS1)
AAVS1
を標的とするガイド
RNAと
64 nM Cas9で処理した
HEK293Tゲノム
DNAまたは未処理の同細胞由来の
DNAを鋳型として、 オンターゲットまたはオフターゲット切断領域を含む
DNA断片をリアルタイム
PCRで増幅した。
処理
DNAと未処理
DNAの
Ct値差より、標的の切断を評価した。
「図10」SITE-Seq が示すオフターゲット予測の妥当性(FANCF)
FANCF
を標的とするガイド
RNAと
64 nM Cas9で処理した
HEK293Tゲノム
DNAまたは未処理の同細胞由来の
DNAを鋳型として、 オンターゲットまたはオフターゲット切断領域を含む
DNA断片をリアルタイム
PCRで増幅した。
処理
DNAと未処理
DNAの
Ct値差より、標的の切断を評価した。
「図11」SL26-または
SL28-ガイドRNAにおけるオフターゲット切断の出現推移
Cas9
濃度に依存したオフターゲット切断の増加を示した。
CD163遺伝子のイントロン領域を標的とする
SL26-または
SL28-ガイドRNAを用いて、LLC-PK1 ゲノム(ブタ)を処理した。折れ線グラフはオフターゲットの総
数(左縦軸) 、棒グラフはその内のエクソン内切断数(右縦軸)を示す(各
n=1)。
「図
14」SITE-Seqが示すオフターゲット予測の妥当性(CD163 遺伝子の第7エクソン)
64nM Cas9