長崎県沿岸における Vibrio vulnificus の分布 と環境および臨床由来株のクラスタリング
に関する研究
Studies on distribution of Vibrio vulnificus on the coast of Nagasaki prefecture and clustering of V. vulnificus isolates derived from
environmental and clinical samples
2018年5月
長崎県環境保健研究センター
右田 雄二
目 次
第1章 緒 言 ...........................................................1
第2章 長 崎 県 内 沿 岸 海 水 に お け る Vibrio vulnificus
の 分 布 と 有 明 海 の 環 境 特 性 ...................5 実 験 方 法 ...............................................................7 実 験 結 果 ...............................................................10 考 察 ...................................................................13 図 表 ...................................................................17
第3章 長 崎 県 沿 岸 に お け る 16S-23S rRNA 遺 伝 子 ITS 領 域 の 制 限 酵 素 断 片 長
多 型 に 基 づ く 高 病 原 性 Vibrio vulnificus 株 の ク ラ ス タ リ ン グ .........23 実 験 方 法 ...............................................................26 実 験 結 果 ...............................................................29 考 察 ...................................................................32 図 表 ...................................................................35
第4章 総 合 考 察 ........................................................46
謝 辞 ...................................................................49 引 用 文 献 ...............................................................50
1 第 1 章 緒 言
Vibrio vulnificus は 、 主 に 温 帯 地 域 の 沿 岸 海 水 に 広 く 常 在 し 、5~25 psu の 塩 分 を 好 み 、 水 温 が 20℃ を 超 過 す る と 活 発 に 増 殖 す る こ と が 知 ら れ て い る (Gram et al., 1999; Kaspar and Tamplin , 1993; Kelly, 1982; Lin et al., 2003; Mead et al., 2000)。 本 菌 は 国 内 外 を 問 わ ず 汽 水 域 に 広 く 分 布 し て お り 、 同 じ 海 域 に 棲 息 す る 多 様 な 種 類 の 魚 介 類 に も 常 在 し て い る(De-paola et al., 1994)。V. vulnificusの 分 布 密 度 に つ い て は 、 米 国 メ リ ー ラ ン ド 州 チ ェ サ ピ ー ク 湾 で 最 大 4.3 Log cells/100 mL(Oligonucleotides DNA probe 法 に よ る 計 数 )(Wright et al.,1996)、ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 パ ム リ コ 河 口 で 3-4 Log cfu/100 mL( 直 接 塗 抹 平 板 法 に よ る 計 数 )(P feffer et al., 2003)、 ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー 州 バ ー ニ ガ ッ ト 湾 で 4.7 Log cells/100 mL(Quantitative PCR 法 に よ る 計 数 )
(Randa et al., 2004) お よ び テ キ サ ス 州 ガ ル ベ ス ト ン 湾 で 3 Log MPN/100 mL で あ っ た (Lin et al., 2003)。 一 方 、 国 内 で は 東 京 湾 沿 岸 で 3.4-5.0 Log MP N/100 mL( 大 仲 ら ,2002)、島 根 県 沿 岸 で 4 Log MPN/100 mL( 福 島 ,2006)、八 代 海 に 面 し た 汽 水 湖 で 5 Log MPN/100 mL お よ び 有 明 海 東 岸 で 4 Log MPN/100 mL と 報 告 さ れ て い る( 宮 坂 ら ,2004)。
V. vulnificus の ヒ ト へ の 感 染 は 、 魚 介 類 の 生 食 や 皮 膚 創 傷 部 の 海 水 暴 露 を 介 し 、 稀 に ヒ ト に 劇 症 型 感 染 症 を 惹 き 起 こ す 。 ハ イ リ ス ク 群 は 慢 性 肝 疾 患 を 有 す る ヒ ト で 壊 死 性 筋 膜 炎 や 敗 血 症 シ ョ ッ ク に よ り 死 に 至 る 場 合 が 多 い(Hlad y and Klontz , 1996)。
ア メ リ カ 疾 病 管 理 予 防 セ ン タ ー (Centers for Disease Control and Prevention : CDC) の 2007 年 か ら 2014 年 ま で の 集 計 結 果(CDC,2013)に よ る と 、V. vulnificus 感 染 症 の 死 亡 率 は 29%(243 例 /824 例 )と 著 し く 高 い 。一 方 、我 が 国 の 1975 年 か ら 2005
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年 ま で の 患 者 報 告 を 取 り ま と め た 誌 上 調 査( 大 石 ら ,2006) に よ る と 、V. vulnificus 感 染 症 の 発 生 は 7 月 か ら 9 月 に 集 中 し 、 国 内 患 者 の 4 割 は 有 明 海 周 辺 地 域 で 発 生 し て お り 、63%(117例 /185 例 )の 高 い 死 亡 率 で あ っ た 。本 感 染 症 は 米 国 で は 生 ガ キ を 摂 食 し た 人 や 漁 業 従 事 者 に 多 く み ら れ る (Oliver, 2005)。 東 ア ジ ア 地 域 の 韓 国 や 台 湾 も 我 が 国 と 同 様 、 魚 介 類 を 生 食 す る 食 習 慣 が あ り 、 多 く の 患 者 が 報 告 さ れ て い る (P ark et al., 1991; Chuang et al. , 1992)。2001 年 に は 熊 本 県 で ア ナ ジ ャ コ に よ る シ ャ ク 味 噌 で 9 名 発 症 し 4 名 が 死 亡 し て い る ( 筌 場 ら ,2006)。 ま た 、V. vulnificus は 魚 類 の 感 染 症 原 因 菌 と し て も 知 ら れ 、 養 殖 池 の 多 く の 魚 介 類 に 同 菌 の 存 在 が 確 認 さ れ て い る(Moriarty, 1997)。V. vulnificusの ヒ ト へ の 感 染 は biotype 1が 中 心 で あ る が 、 biotype 2 は 、鹿 児 島 の 養 殖 池 に お け る テ ィ ラ ピ ア へ の 感 染(Sakata and Hattori , 1988)、
オ ラ ン ダ の ウ ナ ギ 養 殖 場 に お け る ウ ナ ギ と 養 殖 従 事 者 へ の 感 染(Haenen et al., 2014)
が 報 告 さ れ て い る 。 さ ら に 、biotype 3 は イ ス ラ エ ル で 養 殖 場 の テ ィ ラ ピ ア を 感 染 源 と し た ヒ ト へ の 集 団 感 染 が 報 告 さ れ て い る (Bisharat et al. , 1999)。 以 上 の こ と か ら V. vulnificus は ヒ ト だ け で な く 魚 類 の 感 染 症 原 因 菌 と し て も 捉 え る べ き で あ る 。
こ の よ う な 背 景 か ら 、 患 者 が 多 発 す る 地 域 の 沿 岸 海 水 中 に お け る V. vulnificus の 分 布 密 度 に 焦 点 を 当 て た 研 究 例 は 多 く 、 水 温 や 塩 分 等 の 環 境 因 子 と の 関 係 が 検 討 さ れ て き た 。 有 明 海 周 辺 地 域 は 国 内 で 最 も 患 者 が 多 発 す る 地 域 で あ り な が ら 、 有 明 海 に お け る 本 菌 の 分 布 と そ の 成 因 は 不 明 で あ り 、 解 明 す る 必 要 が あ る 。
病 原 因 子 に つ い て は 、 篠 田 (2005) が 莢 膜 、 線 毛 、 溶 血 毒 素 、 タ ン パ ク 質 分 解 酵 素 、 エ ン テ ロ ト キ シ ン 等 を 報 告 し て い る が 、 病 気 の 発 症 は 肝 硬 変 等 の 基 礎 疾 患 の 有 無 に よ る と こ ろ が 大 き い 。 大 仲 ら (2003) の V. vulnificus の 調 査 結 果 に よ る と 、 環 境 由 来 株 は 各 血 清 型 に 幅 広 く 分 布 す る が 、 ヒ ト 臨 床 由 来 株 で は 血 清 型 O1~O7 に 大
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部 分 が 分 布 し 、 両 由 来 間 で 分 布 が 異 な る と 報 告 し て い る 。 こ れ ま で 、 患 者 由 来 株 に 特 有 な 特 定 機 能 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 の 差 異 か ら ヒ ト に 病 原 性 の 高 い 株 を 識 別 す る 疫 学 マ ー カ ー 研 究 が 進 め ら れ て き た 。 現 在 、 本 菌 の 病 原 性 マ ー カ ー は 、 病 原 性 に 関 連 す る 特 定 OR F 領 域 (vcg 遺 伝 子 )(Rosche et al. , 2005)、 菌 の 莢 膜 生 成 に か か る 遺 伝 子 群 (CP S オ ペ ロ ン )(Chatzidaki -Livanis et al., 2006)、small subunit 16S rRNA 遺 伝 子
(Vickery et al. , 2007) お よ び 鉄 獲 得 に 関 与 す る シ デ ロ フ ォ ア 遺 伝 子 (viuB 遺 伝 子 )
(Panicker et al. , 2004) 等 の 塩 基 配 列 の 差 異 に 基 づ く タ イ ピ ン グ 法 や 、 複 数 の ハ ウ ス キ ー ピ ン グ 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 の 差 異 を 解 析 す る MLST(Multilocus sequence typing) 法 が 知 ら れ て い る 。近 年 で は 細 菌 等 の 16S-23S rDNA internal transcribed spacer (rITS)
領 域 の 遺 伝 的 多 様 性 に 着 目 し 、種 か ら 亜 種 レ ベ ル ま で 識 別 可 能 な RISA (Ribosomal Intergenic Spacer Analysis) 法 (Garcia-Martinez et al., 1999) が 注 目 さ れ て い る 。 い ず れ の 解 析 方 法 も 一 定 の 評 価 を 得 て い る が 、 病 原 性 と の 関 連 は 不 明 な 点 が 残 さ れ て お り 、 さ ら な る 研 究 成 果 が 求 め ら れ て い る 。
第 2 章 で は 、V. vulnificus 感 染 症 が 多 発 す る 有 明 海 沿 岸 域 の 本 菌 の 分 布 と そ の 原 因 と な る 環 境 因 子 を 明 ら か に す る こ と を 目 指 し 、2004 年 8月 ~2007 年 1月 に わ た り 有 明 海 沿 岸 と 橘 湾 沿 岸 を 、2006 年 と 2007 年 の 7月 ~9 月 に わ た り 離 島 を 含 む 県 内 沿 岸 を 、そ れ ぞ れ 表 層 海 水 を 採 取 し 、V. vulnificus 数 ,水 温 お よ び 塩 分 を 調 査 し た 。次 に 、 2007 年 10 月 ~2008 年 9 月 に わ た り 有 明 海 流 入 河 川 の 一 つ で あ る 船 津 川 流 域 ( 河 川 か ら 沖 合 ) を 月 1 回 、 連 続 観 測 し 、V. vulnificus 数 、V. parahaemolyticus 数 お よ び 環 境 因 子 〔 水 温 、 塩 分 、 溶 存 酸 素 (DO)、 総 窒 素 量 (T-N)、 総 リ ン 量 (T-P)、 全 有 機 体 炭 素 (TOC) お よ び ク ロ ロ フ ィ ル a 量 (Chl. a)〕 と の 関 係 を 調 査 し た 。 こ れ ら の 結 果 に 基 づ い て 、V. vulnificus の 生 息 環 境 と し て の 有 明 海 の 特 性 を 考 察 し た 。
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第 3 章 で は 、 第 2章 の 調 査 に お い て 分 離 し た 環 境 由 来 株 ( 有 明 海 由 来 、 有 明 海 を の ぞ く 長 崎 県 沿 岸 由 来 ) に 九 州 北 部 の 医 療 機 関 患 者 由 来 株 と 菌 株 保 存 機 関 分 与 株 を あ わ せ た 156 株 の V. vulnificus に つ い て 、3 種 の 制 限 酵 素 (AluⅠ, RsaⅠ お よ び Hae
Ⅲ ) 処 理 に よ る rITS-R FLP 解 析 結 果 に よ る ク ラ ス タ リ ン グ を 行 っ た 。 こ の 結 果 に 機 能 遺 伝 子 (vcg、CPS) の 型 別 ( 臨 床 型 ・ 環 境 型 ) 結 果 を あ わ せ 、 病 原 性 株 検 出 手 法 と し て の rITS-R FLP解 析 の 有 用 性 に つ い て 、 患 者 由 来 株 の 占 め る 割 合 、 臨 床 型 機 能 遺 伝 子 (vcg、CPS) の 保 有 割 合 お よ び 両 海 域 ( 有 明 海 と 県 内 沿 岸 ) 間 の 海 水 由 来 V.
vulnificus 株 の 保 有 割 合 の 違 い を 統 計 解 析 に よ り 評 価 し た 。
第 4 章 で は 、 長 崎 県 沿 岸 の う ち 有 明 海 に 生 息 す る V. vulnificus の 多 様 性 と ヒ ト に 感 染 リ ス ク の 高 い 株 の 出 現 性 に つ い て 考 察 し た 。
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第 2 章 長 崎 県 内 沿 岸 海 水 に お け る Vibrio vulnificus の 分 布 と 有 明 海 の 環 境 特 性
Vibrio vulnificus は 腸 炎 ビ ブ リ オ (V. parahaemolyticus) や コ レ ラ (V. cholerae) と 同 じ Vibrio 属 の 細 菌 で 、 特 に 温 帯 地 域 の 海 岸 と 河 口 域 に 広 く 生 息 し て い る 。 本 菌 の ヒ ト へ の 感 染 は 、 魚 介 類 の 生 食 や 創 傷 部 の 海 水 暴 露 に よ る が 、 健 常 人 に 感 染 す る こ と は 極 め て 稀 で あ る 。 し か し 、 肝 硬 変 な ど の 慢 性 肝 疾 患 を 有 す る ヒ ト に 感 染 し た 場 合 は 、壊 死 性 筋 膜 炎 や 敗 血 症 シ ョ ッ ク な ど の 致 死 的 な 転 帰 を と る こ と が 多 い(Hlady
and Klontz, 1996)。
V. vulnificus感 染 症 は 世 界 中 で 報 告 さ れ て い る 。米 国 で は メ キ シ コ 湾 周 辺 地 域 で 患 者 が 多 く 発 生 し 、 ア メ リ カ 食 品 医 薬 品 局 (Food and Drug Administratio n: FDA) に よ る と 1992 年 か ら 2007 年 ま で の こ の 地 域 で の 459 症 例 の う ち 51.6%が 死 亡 し て い る
(Jones and Oliver, 2009)。 近 隣 国 で は 、 韓 国 や 台 湾 に お い て 患 者 の 発 生 が 報 告 さ れ て い る (Park et al., 1991; Chuang et al. , 1992)。 一 方 、 日 本 で は 、 大 石 ら (2006) の 誌 上 調 査 に よ る と 、V. vulnificus 感 染 者 165 例 中 130 例 (79%) が 7月 か ら 9 月 に 発 生 し て い た 。 患 者 の 4 割 は 有 明 海 沿 岸 地 域 で 占 め ら れ 、 東 京 湾 、 伊 勢 湾 お よ び 瀬 戸 内 海 沿 岸 地 域 が こ れ に 続 い て い た 。
V. vulnificus の 分 布 密 度 に つ い て は 、 米 国 メ リ ー ラ ン ド 州 チ ェ サ ピ ー ク 湾 で 最 大 4.3 Log cells/100 mL(Oligonucleotides DNA probe 法 に よ る 計 数 )(Wright et al.,1996)、
ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 パ ム リ コ 河 口 で 3-4 Log cfu/100 mL( 直 接 塗 抹 平 板 法 に よ る 計 数 )(P feffer et al., 2003)、ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー 州 バ ー ニ ガ ッ ト 湾 で 4.7 Log cells/100 mL
(Quantitative PCR 法 に よ る 計 数 )(Randa et al., 2004)お よ び テ キ サ ス 州 ガ ル ベ ス ト ン 湾 で 3 Log MPN/100 mL で あ っ た (Lin et al., 2003)。 一 方 、 国 内 で は 東 京 湾 沿 岸
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で 3.4-5.0 Log MPN/100 mL( 大 仲 ら ,2002)、 島 根 県 沿 岸 で 4 Log MPN/100 mL( 福 島 ,2006)、 八 代 海 に 面 し た 汽 水 湖 で 5 Log MPN/100 mL お よ び 有 明 海 東 岸 で 4 Log MPN/100 mL と 報 告 さ れ て い る( 宮 坂 ら ,2004)。し か し な が ら 、有 明 海 の 周 辺 地 域 は V. vulnificus 感 染 症 が 多 発 す る に も 関 わ ら ず 、V. vulnificusの 分 布 に 関 す る 知 見 は 無 く 、 分 布 の 成 因 も 不 明 で あ る 。
Vibrio 属 細 菌 の 分 布 に 影 響 を 及 ぼ す 主 な 環 境 因 子 と し て 、 塩 分 と 温 度 が 知 ら れ て い る 。特 に V. vulnificus は 水 温 が 20℃ を 超 過 す る と 、V. parahaemolyticus よ り も 低 い 塩 分 環 境 (5 -25 psu) 下 で 増 殖 が 活 発 化 す る (Kaspar and Tamplin, 1993 ; Lin et al., 2003; Randa et al., 2004 ; 大 仲 ら ,2002)。 本 研 究 で は 、V. vulnificus感 染 症 が 多 発 す る 有 明 海 沿 岸 域 に お い て 、V. vulnificus の 分 布 を 明 ら か に す る こ と を 目 指 し 、先 ず 長 崎 県 内 の 沿 岸 海 域 と 有 明 海 西 岸 海 域 に お け る 本 菌 の 分 布 を 比 較 し た 。 次 に 、 有 明 海 流 入 河 川 で あ る 船 津 川 流 域 ( 河 川 か ら 沖 合 ま で ) を 観 測 す る こ と に よ り 、 本 菌 の 分 布 と そ の 生 息 環 境 を 調 査 し た 。そ れ ら の 結 果 に 基 づ い て 、V. vulnificus の 生 息 環 境 と し て の 有 明 海 の 特 性 に つ い て 考 察 し た 。
7 実 験 方 法
調 査 地 点
本 研 究 で は 、河 川 の 流 入 が み ら れ る 漁 港 に 調 査 地 点(Fig. 1)を 設 定 し 、V. vulnificus の 分 布 を 調 査 し た 。 地 点 を 海 域 ご と に ま と め る と 、 離 島 沿 岸 に 4 地 点 (St. 1~4)、
北 部 沿 岸 に 2 地 点(St. 5, 6)、閉 鎖 度 が 極 め て 高 く 潮 の 干 満 差 が 小 さ な 盆 地 状 の 大 村 湾 沿 岸 に 2 地 点(St. 7, 8)、断 層 海 岸 で 水 深 が 急 激 に 増 す 西 彼 杵 半 島 沿 岸 に 3 地 点(St.
9~11)、5 m に お よ ぶ 潮 の 干 満 差 が み ら れ 遠 浅 で 広 大 な 干 潟 を 形 成 す る 閉 鎖 的 な 有 明 海 沿 岸 に 5 地 点 (S t. 12~16) お よ び 断 層 海 岸 で 比 較 的 開 放 的 な 湾 形 の 橘 湾 に 2 地 点(St. 17, 18)の 計 18 地 点 で あ る 。さ ら に 、有 明 海 沿 岸 の 調 査 地 点 St. 12 に 開 口 す る 船 津 川 に つ い て 、河 川 上 流 部 か ら 河 口 を 経 て 沖 合 に 至 る 連 続 し た 10 地 点 を 設 け 、 河 川 域 (River: A~B), 河 口 域 (Inshore: C~F) お よ び 沿 岸 域 (Offshore: G~J) の 3 領 域 に 区 分 し た 。F 地 点 は 流 域 の 最 河 口 に 位 置 し 、St. 12 に あ た る 。
測 定 項 目
有 明 海 沿 岸 5 地 点(St. 12~16)お よ び 橘 湾 沿 岸 2 地 点(St. 17, 18)の 計 7 地 点 で 2004年8月 か ら 2007年1月 に わ た る 計 210検 体 、離 島 を 含 む 県 内 沿 岸 11地 点 で2006 年 と 2007 年 の 7 月 か ら 9 月 に わ た る 計 60 検 体 の 表 層 海 水 を そ れ ぞ れ 毎 月 一 回 採 取 し 、V. vulnificus 数 、 水 温 お よ び 塩 分 を 測 定 し た 。 船 津 川 流 域 10地 点 で は 、2007 年 10 月 か ら 2008 年 9 月 に わ た る 計 127 検 体 の 表 層 海 水 を 満 潮 時 に 毎 月 一 回 採 取 し 、 V. vulnificus 数 、V. parahaemolyticus 数 お よ び 環 境 因 子〔 水 温 、塩 分 、溶 存 酸 素(DO)、
総 窒 素 量 (T-N)、 総 リ ン 量 (T-P)、 全 有 機 体 炭 素 (TOC) お よ び ク ロ ロ フ ィ ル a 量
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(Chl. a)〕 を 以 下 の 方 法 で 測 定 し た 。
菌 数 の 測 定
V. vulnificus 数 は 種 特 異 的 な 細 胞 溶 血 毒 素 (cytotoxin-hemolysin) 遺 伝 子 (vvhA)
増 幅 の 有 無 に 基 づ い た Most P robable Number-Polymerase Chain Reaction(MPN-PCR)
法 (3本 法 )( 工 藤 ら ,2005)に よ っ て 測 定 し た 。す な わ ち 、リ ン 酸 緩 衝 液(PBS(-),
㈱ 日 水 製 薬, 東 京 )に て 希 釈 し た 試 水 の 各 段 階 希 釈 液 を ア ル カ リ ペ プ ト ン 水 (APW,
㈱ 日 水 製 薬, 東 京 )で 18 時 間 35℃ 培 養 し た 。培 養 液 の 一 部 を 遠 心 分 離(12,000rpm, 5min) し た 後 、 沈 殿 物 を TE 緩 衝 液 (10 mM Tris-HC1, 1 mM EDTA, pH 8.0) に 懸 濁 し て 、100℃ 、10 分 間 加 熱 し た 。 そ の 後 、 細 胞 懸 濁 物 を 再 度 遠 心 分 離 し 、 上 清 を テ ン プ レ ー ト DNAと し て 用 い た 。P CRの 条 件 は Hill ら(1991)の 方 法 を 一 部 改 変 し 、 反 応 条 件 は 95℃5分 pre-heat 後 、denature: 94℃1 分 、annealing: 67℃1分 、extension:
72℃30 秒 を 35 回 繰 り 返 し た 。 反 応 液 組 成 は HotStar Taq Master Mix(QIAGEN社 , ド イ ツ ):12.5 μL, Mix-Primer(Each 25 μM): 0.5 μL, D.W.: 9.5 μL, Template DNA: 2.5 μL の 計 25 μL と し た 。PCR 反 応 終 了 後 、 ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 い 、 エ チ ジ ュ ウ ム ブ ロ マ イ ド で 染 色 後 、 ト ラ ン ス イ ル ミ ネ ー タ ー に て 増 幅 DNA 産 物 を 確 認 し 、 培 養 試 験 管 ご と に 陽 性 / 陰 性 を 判 定 し た 。 得 ら れ た 結 果 よ り 、 最 確 数 表 を 利 用 し 、 菌 数 を 算 定 し た 。 ま た 、 同 じ 試 料 に つ い て 、V. parahaemolyticus は APW で 増 菌 培 養 し た 試 料 を ク ロ モ ア ガ ー ビ ブ リ オ 寒 天 培 地( ク ロ モ ア ガ ー 社 ,フ ラ ン ス )に 塗 抹 し 、 20 時 間 35℃ 培 養 後 に コ ロ ニ ー 形 成 を 指 標 に MPN 値 を 求 め た( 荒 川・島 田 ,2004)。
そ の 際 、V. vulnificus の 単 離 も あ わ せ て 行 っ た 。い ず れ の MPN 法 も 3.0 MPN/100 mL を 検 出 限 界 値 と し た 。
9 環 境 因 子 の 測 定
環 境 因 子 の 測 定 は 以 下 の 方 法 で 行 っ た 。 水 温 は ポ ー タ ブ ル 水 質 計 WM-22EP( ㈱ TOADKK, 東 京 ) に よ り 測 定 し た 。Chl. a は 海 洋 観 測 指 針 ( 気 象 庁 編 ,1990) に 準 拠 し 、DO、 T-N、 T-P お よ び Cl-は 日 本 工 業 規 格(Japanease Industrial Standard: JIS) 法 ( 日 本 工 業 標 準 調 査 会 ,1998) に 従 っ た 。 塩 分 は 硝 酸 銀 滴 定 法 ( モ ー ル 法 ) に て Cl-濃 度 を 測 定 後 に 塩 分 換 算 し た 。 換 算 の 方 法 は 調 査 地 点 の 10 水 試 料 の Cl-濃 度 と 塩 分 濃 度 屈 折 計 S/Milli-E( ア タ ゴ , 東 京 ) に よ る 測 定 値 と の 間 で 作 成 し た 検 量 線 に 基 づ い た 。 単 位 は psu 表 記 と し た 。 年 間 を 通 じ て 測 定 結 果 が 得 ら れ た 有 明 海 沿 岸 5 地 点 と 橘 湾 沿 岸 2 地 点 に お け る 、季 節 性 と 塩 分 の 検 定 に は 分 散 分 析(ANOVA)を 用 い た 。
10 実 験 結 果
長 崎 県 沿 岸 海 水 の V. vulnificus の 分 布 と 水 温 お よ び 塩 分
2006 年 と 2007 年 の 夏 季 (7~9 月 ) に お け る St. 1~11の V. vulnificus 数 、 水 温 お よ び 塩 分 を 平 均 値±標 準 誤 差 〔 非 検 出 (ND) は 0 と 扱 う 〕 で 示 す (Fig. 2)。 西 彼 杵 半 島 沿 岸 (St. 9~11) で は 、V. vulnificus は 低 い 菌 数 と な っ た 。 特 に 、St. 9お よ び St. 10 は 1 Log MPN/100 mL 未 満 で あ り 、塩 分 は 他 と 比 べ て 高 く 、変 化 が 小 さ い こ と が 特 徴 的 で あ っ た 。一 方 、そ の 他 の 県 内 沿 岸(St.1〜8)の 夏 季 の V. vulnificus 数 は 、 平 均 2-4 Log MPN/100 mLだ っ た が 、2006 年 夏 季 に St. 2、5お よ び 6で 4 Log MPN/100 mL を 超 過 し た (Table 1)。
2004 年 8 月 か ら 2007 年 1 月 に わ た る 有 明 海 沿 岸 5 地 点(St. 12~16)と 橘 湾 沿 岸 2 地 点 (St. 17、18) の 計 7地 点 の V. vulnificus数 、 水 温 お よ び 塩 分 を 季 節 ご と に 平 均 値±標 準 誤 差 〔 非 検 出 (ND) は 0 と 扱 う 〕 で 示 す (Fig. 3)。 有 明 海 沿 岸 5 地 点 の う ち 、St. 12、13 お よ び 15 で は 、 夏 季 の 塩 分 は 他 の 季 節 よ り も 低 下 傾 向 を 示 し た (p<0.05)。V. vulnificus の 季 節 変 動 は 、 概 ね 、 春 季 (4~6 月 ) は 1 Log MPN/100 mL 未 満 、 夏 季 は 2-4 Log MPN/100 mL、 秋 季 (10~12 月 ) は 1 Log MPN/100 mL前 後 、 冬 季 (1~3 月 ) は 非 検 出 の 結 果 で あ っ た 。 有 明 海 沿 岸 5 地 点 (St. 12~16) の 最 大 菌 数 は 4.4-6.4 Log MPN/100 mL と 高 い レ ベ ル に あ り (Table 1)、 い ず れ も 2006 年 夏 季 に 見 ら れ た 。
St. 17 で は 、 本 菌 は 年 間 を 通 じ て 検 出 さ れ 、 夏 季 に 2 -3 Log MPN/100 mL の 菌 数 で 推 移 し 、 冬 季 は 1 -2 Log MPN/100 mL で あ っ た 。 St. 17 は 一 年 を 通 し て 15~20 psu の 塩 分 域 に あ り 、 冬 季 で も 水 温 が 15℃ 以 上 に 保 た れ て い る こ と が 特 徴 的 で あ っ た 。
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一 方 、同 じ く 橘 湾 内 の St. 18 は 、夏 季 に 平 均 1-2 Log MPN/100 mL で 、最 大 で も 3 Log MPN/100 mL を 超 え る こ と は な く 、 冬 季 は 検 出 さ れ な か っ た 。St. 18 は 、 塩 分 域 が 30 psu 付 近 に あ る こ と が 特 徴 的 で あ っ た 。橘 湾 沿 岸 2 地 点(St. 17、18)は 、夏 季 の 塩 分 低 下 傾 向 は み ら れ な か っ た (p>0.05)。
船 津 川 流 域 の V. vulnificusの 分 布
満 潮 時 の 船 津 川 流 域 のV. vulnificus数 と 各 種 環 境 因 子 を 季 節 ご と に 平 均 値±標 準 誤 差 〔 非 検 出 (ND) は 0 と 扱 う 〕 で 示 し た (Fig. 4)。 塩 分 (Fig. 4c) が 0.5 psu 未 満 の 河 川 域(A~B)に お い て 、V. vulnificus 数(Fig. 4a)は 、水 温 (Fig. 4d)が 上 昇 す る 夏 季 で さ え 1 Log MPN/100 mL レ ベ ル と 明 ら か に 低 か っ た 。 一 方 、 塩 分 変 化 の 大 き い (8.4±3.0~27.0±1.0 psu) 河 口 域 (C~F) で は 2 -4 Log MPN/100 mL の 範 囲 で 検 出 さ れ た 。 測 定 期 間 に お け る 最 大 値 は C地 点 で 8 月 に 3.66 Log MPN/100 mL で あ っ た 。 安 定 し た 高 塩 分 (30.4±0.4~31.5±0.3 psu) の 沿 岸 域 (G~J) で は 、 沖 合 の 地 点 ほ ど 菌 数 は 減 少 し た 。こ の 傾 向 は 夏 季 に 明 瞭 と な っ た 。冬 季 は す べ て の 水 域 で vvhA 遺 伝 子 の 増 幅 に よ る 本 菌 の 存 在 が 確 認 さ れ た が 、 菌 は 分 離 さ れ な か っ た 。V.
parahaemolyticus(Fig. 4b) も V. vulnificus と 類 似 し た 分 布 パ タ ー ン を 示 し た が 、V.
vulnificus よ り 菌 数 が 多 い 傾 向 が 見 ら れ た 。二 菌 種 間 の 分 布 の 違 い は 、夏 期 の G お よ び H 地 点 で 顕 著 と な っ た 。
船 津 川 流 域 の 水 質
船 津 川 流 域 の 水 質 は 、河 川 か ら 沖 合 に 向 か う に つ れ 、T-N(Fig. 4e)が 減 少 し 、T-P
(Fig. 4 f)、TOC(Fig . 4g) お よ び Chl.a(Fig. 4h) は 増 加 傾 向 を 示 し た 。 各 濃 度 は
12
春 季 か ら 夏 季 に 高 い 濃 度 で 推 移 し て い た 。 飽 和 酸 素 百 分 率 ( %DO)(Fig. 4i) は 、 夏 季 に は 河 口 域 か ら 沿 岸 域 に か け て 低 下 し 、 夏 季 以 外 の 季 節 で は 流 域 全 体 が 概 ね 過 飽 和 状 態 と な っ た 。 こ れ は 、 河 川 域 で は 川 の 流 れ に よ る 大 気 中 の 分 子 状 酸 素 の 物 理 的 取 り 込 み 、河 口 域 か ら 沿 岸 域 で は 藻 類 や 植 物 性 プ ラ ン ク ト ン に よ る 光 合 成 の 亢 進 、 さ ら に 冬 季 の 低 水 温 に よ る 酸 素 溶 解 度 の 増 加 な ど に 起 因 す る と 考 え ら れ る 。 以 上 の 結 果 か ら 、V. vulnificus が 多 く 生 息 す る 河 口 域 は 、塩 分 が 汽 水 の 範 囲 で 多 様 に 変 化 し 、 夏 季 の 高 水 温 期 に 栄 養 塩 濃 度 の 増 加 と%DO の 低 下 が 同 時 に み ら れ る こ と が 特 徴 的 で あ っ た 。
13 考 察
V. vulnificusは 国 内 外 を 問 わ ず 淡 水 と 海 水 が 混 合 す る 汽 水 域 に 広 く 分 布 し 、夏 季 の 水 中 の 菌 数 は 一 般 に 3-5 Log MPN/100 mL に 達 す る 。 本 菌 の 増 殖 お よ び 生 残 に は 水 温 と 塩 分 が 大 き く 影 響 す る こ と が 知 ら れ て い る 。Randa ら (2004) は チ ェ サ ピ ー ク 湾 、メ キ シ コ 湾 お よ び バ ー ニ ガ ッ ト 湾 の 結 果 を あ わ せ て 解 析 し 、V. vulnificus は 水 温 25℃ 以 上 で 高 い 菌 数 と な る こ と 、 な ら び に 、5-10 psu の 塩 分 域 で は 水 温 (10~32℃
の 範 囲 ) と 無 関 係 に 本 菌 が 観 察 さ れ る こ と を 報 告 し て い る 。 ま た 、 福 島 ら (2006)
は 、 島 根 県 沿 岸 で は 、 本 菌 は 水 温 が 25℃ 以 上 か つ 塩 分 が 3.5-30 psu の 河 口 で 高 い 分 布 密 度 と な る が 、30 psu を 越 え る 高 い 塩 分 の 河 口 で の 分 布 密 度 は 低 い と 報 告 し て い る 。V. vulnificus の 生 残 性 と 塩 分 の 関 係 に つ い て Kasperと Tamplin(1993) は 、5 -25 psu の 塩 分 域 で の 高 い 生 残 性 と 30 psuを 超 え る 塩 分 域 で の 生 残 性 の 低 下 を 示 し て い る 。
本 研 究 で 明 ら か と な っ た 長 崎 県 周 辺 沿 岸 域 に お け る V. vulnificus の 分 布 結 果 は 、 こ れ ら の 報 告 と 概 ね 合 致 し て い た 。 諫 早 湾 か ら 島 原 半 島 沿 岸 域 に ま た が る 有 明 海 沿 岸 域 St. 12~16で は 、水 温 25℃ を 超 え る 7 月 か ら 9月 に か け て 平 均 2-4 Log MPN/100 mL で 推 移 し 、 各 地 点 で の 最 大 値 4.4-6.4 Log MPN/100 mL を 示 し た 時 の 塩 分 は 3.3
~23.1 psuの 範 囲 で あ っ た 。
有 明 海 沿 岸 で V. vulnificus 数 が 最 大 で 6 Log MPN/100 mLを 超 え た こ と は 、こ の 海 域 が 後 述 す る よ う に 、 他 と 比 べ て V. vulnificus の 増 殖 に 適 し た 水 温 お よ び 塩 分 環 境 を 形 成 し う る こ と を 示 唆 し て い る 。 諫 早 湾 の 水 温 、 塩 分 、 栄 養 塩 等 の 変 動 を 調 査 し た 九 州 農 政 局 (2011) の 報 告 と 気 象 統 計 情 報 (2008) に 基 づ い て 、2006 年 夏 季 に 有
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明 海 沿 岸 で 本 菌 が 著 し く 増 加 し た 原 因 を 次 の よ う に 考 察 し た 。 諫 早 湾 の 表 層 海 水 の 塩 分 は 、 例 年 、 梅 雨 期 に 河 川 水 の 流 入 量 が 増 加 す る た め 1 ヶ 月 間 程 度 低 下 す る が 、 2006 年 は 7 月 か ら 9 月 の 3 ケ 月 間 に わ た り 低 下 し て い た 。 特 に 7 月 は 15 日 か ら 24 日 に か け て の 記 録 的 な 大 雨 ( 雲 仙 岳 測 候 所 : 期 間 内 降 水 量 717 mm) に よ っ て 諫 早 湾 全 域 が 10 -15 psu の 低 い 塩 分 レ ベ ル ま で 低 下 し 、 湾 奥 で は 底 層 海 水 ま で も 塩 分 濃 度 が 低 下 し て い た 。 こ の と き Chl.a 濃 度 (28.9-53.7 μg/L) と 栄 養 塩 濃 度 ( 総 窒 素 量: 0.85-1.04 mg/L, 総 リ ン 量: 0.075-0.098 mg/L) は と も に 高 い 値 を 示 し た 。 こ の 大 雨 に よ っ て 、 船 津 川 流 域 の 河 口 付 近 か ら 沖 合 ま で V. vulnificus の 増 殖 と 生 残 に 好 適 な 塩 分 環 境 と な っ た う え 、 水 温 が 25℃ 以 上 を 維 持 し て い た た め に 、St. 12 で は 5 log MPN/100 mL に 達 し た と 推 測 さ れ る 。 さ ら に 、 他 の 諫 早 湾 内 の 調 査 地 点 も 船 津 川 流 域 と 同 じ 状 況 に あ る 可 能 性 が 高 く 、St. 13で は 6 log MPN/100 mL を 超 過 す る ま で 増 殖 で き た と 推 察 さ れ る 。
本 研 究 は 有 明 海 西 岸 域 の 状 況 を 調 査 し た も の だ が 、 有 明 海 東 岸 に は 、 集 水 域 の 大 き な 河 川 が よ り 多 く 存 在 す る こ と か ら 、 同 様 の 状 況 が 他 の 有 明 海 沿 岸 で も 発 生 し て い た 可 能 性 は 高 い 。県 内 の 沿 岸 で は 、離 島(St. 2)お よ び 北 部 沿 岸(St. 5, 6)で 5 Log MPN/100 mL レ ベ ル の 菌 数 が 見 ら れ た こ と か ら 、 大 雨 の 際 、 河 口 付 近 に 安 定 的 な 汽 水 帯 が 維 持 さ れ 易 い 特 徴 が あ る と 推 測 さ れ る 。
本 研 究 で 調 査 し た 県 内 の 沿 岸 海 域 の う ち 、 大 村 湾 沿 岸 (St. 7, 8) で は 3 Log MPN/100 mL レ ベ ル 、 西 彼 杵 半 島 沿 岸 (St. 9~11) お よ び 橘 湾 沿 岸 (St. 18) で は 、 3 Log MPN/100 mL の 菌 数 を 超 え る こ と は な か っ た 。大 村 湾 は 盆 地 状 の 海 底 地 形 で 潮 の 干 満 差 が 小 さ い 海 域 で あ り 、 西 彼 杵 半 島 沿 岸 お よ び 橘 湾 沿 岸 は と も に 断 崖 海 岸 で 水 深 が 急 激 に 増 す と い っ た 地 理 的 特 徴 を 持 ち 、 い ず れ の 沿 岸 に も 大 規 模 な 河 川 は 存
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在 し な い 。 し た が っ て 、 い ず れ の 海 域 も 有 明 海 沿 岸 域 と 比 べ て 小 規 模 な 汽 水 帯 し か 形 成 さ れ な い の で 、V. vulnificus 数 の 増 加 が み ら れ な か っ た と 推 察 さ れ る 。 し か し 、 橘 湾 沿 岸 の う ち St. 17 だ け は 、 年 間 を 通 じ 本 菌 が 確 認 さ れ た 。 こ の 付 近 で は 、 海 岸 沿 い に 数 多 く 存 在 す る 自 噴 温 泉 の 温 泉 水 の 影 響 に よ り 、 本 菌 に と っ て 好 適 な 水 温 と 汽 水 の 塩 分 が 維 持 さ れ て い た 可 能 性 が あ る 。
本 研 究 の 調 査 対 象 河 川 で あ る 船 津 川 は 長 崎 県 内 の 二 級 河 川 の 1 つ で あ り 、 有 明 海 全 体 の 水 質 に 及 ぼ す 影 響 は 大 き く な い 。 し か し 、 船 津 川 は 諫 早 湾 に 直 接 注 ぐ 河 川 の 1 つ と し て 、そ の 河 口 域 周 辺 の 環 境 変 動 を 監 視 す る 上 で 重 要 な 水 系 で あ る 。さ ら に 、 船 津 川 河 口 域 は 良 好 な ア サ リ 漁 場 と 近 接 し て い る の で 、 水 産 物 の 安 全 確 保 お よ び 漁 業 従 事 者 や 周 辺 住 民 の 感 染 予 防 の 観 点 か ら も 、本 河 川 で の ビ ブ リ オ 科(Vibrionaceae) 細 菌 の 分 布 解 明 に は 大 き な 意 義 が あ る 。本 研 究 の 結 果 、8~30 psu の 塩 分 と な る 河 川 感 潮 か ら 河 口 域 に 至 る 範 囲 だ け で な く 、 大 潮 時 の み 海 水 が 遡 上 す る よ う な 河 川 下 流 に お い て も V. vulnificus が 生 残 し 、 本 菌 が 河 口 域 で 最 も 高 い 分 布 密 度 を 示 し た こ と は 、河 口 域 が 河 川 お よ び 海 の 両 側 に 対 し て 、V. vulnificus の 供 給 源 と し て 機 能 す る 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。 船 津 川 に お け る V. parahaemolyticus の 分 布 パ タ ー ン は V.
vulnificus の 場 合 と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 。冬 季 に V. parahaemolyticus は V. vulnificus よ り も 低 密 度 に な っ た が 、 測 定 検 出 方 法 の 違 い に 起 因 す る 可 能 性 も あ り 、 今 後 の 検 討 が 必 要 で あ る 。ま た 、塩 分 が 海 水 に 近 い 30 psu と な る 船 津 川 最 河 口 か ら 諫 早 湾 沖 に か け て 、V. vulnificus よ り や や 高 い 塩 分 を 好 む V. parahaemolyticus も 同 様 の 減 少 傾 向 を 示 し た こ と は 塩 分 以 外 の 要 因 が 沖 合 側 に お け る Vibrio 数 の 低 下 に 関 与 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 要 因 の 一 つ は 菌 数 の 高 い 河 口 域 の 水 が 、 海 水 に よ り 希 釈 さ れ る こ と で あ る 。 し か し 、 そ れ 以 外 の 要 因 の 候 補 と し て 、 原 生 動 物 に よ る 捕 食 や フ ァ ー
16
ジ に よ る 溶 菌 (Kaspar and Tamplin, 1993) や 淡 水 が 海 水 と 混 じ り 合 う 際 に 起 こ る 非 生 物 的 な 凝 集 作 用 に よ る 細 菌 の 沈 殿 除 去 (Ritter et al., 1999; Marshall et al., 2000;
Jonkers et al., 2003) な ど が 挙 げ ら れ る 。
V. vulnificus は 他 の ビ ブ リ オ 科 細 菌 と 同 様 に 様 々 な 海 産 動 物 の 常 在 菌 の 一 種 で あ る こ と か ら 、 海 水 中 の V. vulnificus 数 の 増 加 は 、 棲 息 魚 介 類 に 常 在 す る V. vulnificus 数 の 増 加 に 繋 が る 可 能 性 が あ る 。反 対 に 、V. vulnificus を 保 持 す る 動 物 が 多 数 存 在 す る 場 で は 、 周 囲 の 海 水 中 の V. vulnificus 数 が 有 意 に 高 ま る 可 能 性 も あ る 。 船 津 川 河 口 域(Fig. 4: C〜F)の 河 床 に は 多 数 の 牡 蠣 が 着 床 し て お り 、2009 年 8 月 に は 、河 口 域 に 棲 息 す る 牡 蠣 か ら 6 Log MPN/10g 超 過 の V. vulnificusを 確 認 し て い る( 未 発 表 )。
Lin ら(2003)は 、牡 蠣 の V. vulnificus 数 は 水 温 上 昇 に 伴 っ て 増 加 し 、汽 水 の 塩 分 域 に 棲 息 す る 牡 蠣 か ら 高 い 菌 数 が 検 出 さ れ る と 報 告 し て い る 。さ ら に 、山 崎 ら(2009)
は 有 明 海 産 魚 介 類 が 橘 湾 産 魚 介 類 よ り も V. vulnificus の 検 出 率 と 菌 数 が 高 か っ た こ と を 報 告 し 、魚 介 類 の 常 在 V. vulnificus と 周 囲 の 海 水 の V. vulnificus の 間 に 密 接 な 関 連 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 し た が っ て 、 夏 季 の 有 明 海 沿 岸 の 河 口 域 に お い て は 牡 蠣 な ど の 海 産 動 物 が V. vulnificus の リ ザ ー バ ー と し て 機 能 し 、 海 水 中 の 本 菌 の 分 布 に も 影 響 を 及 ぼ し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。
本 研 究 で は 、 ま ず 有 明 海 沿 岸 と 県 内 各 地 の 沿 岸 の V. vulnificus の 分 布 を 比 較 し 、 そ の 違 い を 明 ら か に し た 。 次 に 、 有 明 海 流 入 河 川 で あ る 船 津 川 の 下 流 か ら 沖 合 に わ た る 本 菌 の 分 布 を 調 査 し 、 本 菌 の 生 息 環 境 に つ い て 議 論 し た 。 そ の 結 果 、 有 明 海 は V. vulnificus の 生 息 あ る い は 生 残 に と っ て 好 適 な 環 境 を 形 成 し 易 い 特 徴 を 持 つ こ と が 示 唆 さ れ た 。
17
20 km
East China
Sea
2
3
4
5 1
12 Ariake
Sea
Tachibana Bay Nish
isonog
i Pen insu
la
Mt.Unzen Isahaya
Bay 8 9
10 11
17 16
13 15 18
6
7
14
Sampling sites: four stations (St.1 to 4) in the coast of island, two stations (St.5 and 6) in the coast of northern, two stations (St.7 and 8) in Omura Bay coast, three stations (St.9 to 11) in Nishisonogi
Peninsula coast, five stations (St.12 to 16) on the west side of Ariak e Sea and two stations (St.17 and 18) in Tachibana Bay coast.
Fig. 1-(a)
18
Ariake
A B
Sea
C
G
J I
D E
H F
Funatu R.
0 3 6
9 A B C D E F G H I J
Water depth (m)
River Inshore Offshore
Sea level of height tide
700 m
Land 0 m Sea
500 m
Ariake Sea 12
Funatu R.
Sampling sites: ten stations (A to J) along the Funatu River.
*F: Same as St.12 Fig. 1-(b)
19
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5
St. 1 St. 2 St. 3 St. 4 St. 5 St. 6 St. 7 St. 8 St. 9 St. 10 St. 11 Temperature (℃) Salinity (psu)
Log MPN/100 mL
Island North
area
Omura Bay
Nishisonogi Peninsula
Distribution of V. vulnificus, Temperature and Salinity in coastal waters of
Nagasaki P refecture in summer (from July to September of 2006 and 2007).
* The plotted values are the mean. Error bars represent standard error.
* * Bar Graph: Number of V. vulnificus, □: Salinity and ○: Temperature.
Fig. 2
20
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5
St. 12 St. 13 St. 14 St. 15 St. 16 St. 17 St. 18 Temperature (℃) Salinity(psu)
Log MPN/100 mL Spring (April - June)
Ariake Sea Tachibana Bay
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5
St. 12 St. 13 St. 14 St. 15 St. 16 St. 17 St. 18 Temperature (℃) Salinity (psu)
Log MPN/100 mL
Summer (July - September)
Ariake Sea Tachibana Bay
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5
St. 12 St. 13 St. 14 St. 15 St. 16 St. 17 St. 18 Temperature (℃) Salinity (psu)
Log MPN/100 mL Autumn (October - December)
Ariake Sea Tachibana Bay
5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5
St. 12 St. 13 St. 14 St. 15 St. 16 St. 17 St. 18 Temperature (℃) Salinity(psu)
Log MPN/100 mL Winter (January - March)
Ariake Sea Tachibana Bay
* Seasonal variation of V. vulnificus, Temperature and Salinity in coastal waters of Ariake Sea and Tachibana Bay.
* The plotted values are the mean in the season. Error bars represent standard errors.
* * Bar graph: Number of V. vulnificus, □: Salinity and ○: Temperature.
Fig. 3
21
0 1 2 3 4 5
A B C D E F G H I J
(Log MPN/100 ml)
Points (a) V. vulnificus
Spring Summer Autumn Winter
Inshore Offshore River
0 10 20 30 40
A B C D E F G H I J
(psu)
Points (c) Salinity
Year
Offshore Inshore
River 0
1 2 3 4 5
A B C D E F G H I J
(Log MPN/100 ml)
Points (b) V. parahaemolyticus
Inshore Offshore River
60 80 100 120 140
A B C D E F G H I J
(%DO)
Points (i) %DO
Inshore Offshore River
0 100 200 300
A B C D E F G H I J
(μg/L)
Points (h) Chl.a
Inshore Offshore River
0.0 1.0 2.0 3.0
A B C D E F G H I J
(mg/L)
Points (g) TOC
Inshore Offshore River
5 10 15 20 25 30
A B C D E F G H I J
(℃)
Points (d) Temperature
Inshore
River Offshore
0.00 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15
A B C D E F G H I J
(mg/L)
Points (f) T-P
Inshore Offshore River
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
A B C D E F G H I J
(mg/L)
Points (e) T-N
Inshore Offshore River
* Seasonal variation of (a) V. vulnificus, (b) V. parahaemolyticus and Environmental parameter ((c) Salinity, (d) Temperature, (e) T-N, (f) T-P, (g) TOC, (h) chl.a and (i) %DO) along the Funatu River (Ato J). Spring: from April to June in 2008, Summer: from July to September in 2008, Autumn: from October to December in 2007, Winter: from January to March in 2008.
* * The plotted values are the mean in the season. Error bars represent standard errors.
Fig. 4
22
St. 1 3.7 (A) 3.0 (A)
St. 2 5.4 (A) 3.0 (J, A, S)
St. 3 3.4 (A) 3.0 (A)
St. 4 3.7 (A) 3.4 (A)
St. 5 4.4 (S) 2.0 (J)
St. 6 5.2 (A) 3.7 (A)
St. 7 3.4 (A) 2.8 (A)
St. 8 3.4 (J) 2.9 (J, S)
St. 9 1.0 (S) ND
St. 10 - 1.8 (J)
St. 11 2.7 (J)
St. 12 3.2 (A) 5.0 (A) 3.2 (S)
St. 13 3.3 (A) 6.4 (A)
St. 14 4.0 (A) 4.4 (A)
St. 15 3.0 (J) 4.4 (J)
St. 16 2.7 (J, A) 4.4 (J)
St. 17 4.0 (A) 3.4 (A)
St. 18 2.9 (A) 1.6 (J)
Tachibana Bay
- -
- -
Ariake Sea
-
- -
- -
- -
- -
Nishisonogi Peninsula
- -
- -
- - -
North area
- -
- -
Omura Bay
- -
- -
Island
- -
- -
- -
- -
Location Maximum number 〔Log MPM/100 mL〕
2005 2006 2007 2008
Table 1 Maximu m number of V. vulnificus in coastal waters of Nagasaki P refecture.
* * ND: not detected (Detection limit: 3.0 MPN/100 mL)
* * -: Not determined
* * * * (J): July, (A): August and (S): September
23
第 3章 16S-23S rRNA 遺 伝 子 ITS領 域 の 制 限 酵 素 断 片 長 多 型 に 基 づ く 長 崎 県 沿 岸 由 来 お よ び 臨 床 由 来 Vibrio vulnificus 株 の ク ラ ス タ リ ン グ
Vibrio vulnificus は , 主 に 温 帯 地 域 の 沿 岸 海 水 に 広 く 常 在 し ,5~25 psu の 塩 分 を 好 み , 水 温 が 20℃ を 超 過 す る と 活 発 に 増 殖 す る こ と が 知 ら れ て い る (Gram et al., 1999; Kaspar and Tamplin , 1993; Kelly, 1982; Lin et al., 2003; Mead et al., 2000)。 そ の た め , 本 菌 は 国 内 外 を 問 わ ず 汽 水 域 に 広 く 分 布 し , 水 温 上 昇 に 伴 い 菌 数 は 3-5 Log
MPN/100 mL ま で 増 加 す る (Lin et al., 2003; Wright et al. , 1996; P feffer et al. , 2003;
Randa et al., 2004; 大 仲 ら, 2002; 福 島, 2006; 右 田 ら, 2012)。 有 明 海 の よ う な 遠 浅 で 潮 の 干 満 差 が 大 き い 海 域 に お い て は , 梅 雨 期 に 河 川 か ら の 大 量 の 淡 水 流 入 に よ り 大 き な 汽 水 環 境 が 形 成 さ れ ,最 大 6 Log MPN/100 m Lレ ベ ル ま で 達 す る( 右 田 ら, 2012)。
ま た V. vulnificusは 沿 岸 域 に 棲 息 す る 多 様 な 種 類 の 魚 介 類 に 常 在 し(De-paola et al., 1994),特 に 汽 水 域 に 棲 息 す る 牡 蠣 に は 高 密 度 に 存 在 す る(Lin et al. , 2003)。養 殖 池 の 多 く の 魚 介 類 に も 同 菌 は 確 認 さ れ て お り(Moriarty, 1997),養 殖 環 境 は V. vulnificus の 貯 蔵 庫( リ ザ ー バ ー )に な る 可 能 性 が あ る 。V. vulnificusに は3つ の 生 物 型(biotype)
が 知 ら れ ,ヒ ト へ の 感 染 は biotype 1 が 中 心 だ が ,biotype 2 は ,鹿 児 島 の 養 殖 池 に お け る テ ィ ラ ピ ア へ の 感 染 (Sakata and Hattori , 1988), オ ラ ン ダ の ウ ナ ギ 養 殖 場 に お け る ウ ナ ギ と 養 殖 従 事 者 へ の 感 染 を 引 き 起 こ し た (Haenen et al. , 2014)。 さ ら に , biotype 3は イ ス ラ エ ル で 養 殖 場 の テ ィ ラ ピ ア を 感 染 源 と し た ヒ ト へ の 集 団 感 染 が 報 告 さ れ て い る(Bisharat et al., 1999)。こ れ ら の こ と か ら V. vulnificus は ヒ ト へ の 感 染 経 路 と し て の 魚 類 感 染 症 と も 捉 え る べ き で あ り , 迅 速 な 検 出 お よ び 生 物 型 の 同 定 は 水 産 養 殖 業 に と っ て 重 要 な 課 題 で あ る 。 今 回 , 我 々 が 提 案 す る 解 析 技 術 は 水 産 お よ
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び 衛 生 の 両 分 野 で 利 用 可 能 だ が , 本 研 究 で は , ヒ ト の V. vulnificus 感 染 症 と の 関 わ り で 報 告 例 が 多 い 生 物 型 に 焦 点 を 当 て て 論 ず る 。
V. vulnificus biotype 1に よ る ヒ ト へ の 感 染 は ,魚 介 類 の 生 食 や 皮 膚 創 傷 部 の 海 水 暴 露 を 介 し , 稀 に ヒ ト に 劇 症 型 感 染 症 を 惹 き 起 こ す 。 ハ イ リ ス ク 群 は 慢 性 肝 疾 患 を 有 す る ヒ ト で 壊 死 性 筋 膜 炎 や 敗 血 症 シ ョ ッ ク に よ り 死 に 至 る 場 合 が 多 い (Hlad y and Klontz, 1996)。 本 症 は , 米 国 で は 生 牡 蠣 を 摂 食 し た 人 や 漁 業 従 事 者 に 多 く み ら れ る
(Oliver, 2005)。 ア メ リ カ 疾 病 管 理 予 防 セ ン タ ー (Centers for Disease Control and Prevention : CDC)の2007年 か ら2014年 ま で のVibrio感 染 症 の 集 計 結 果(CDC 2013)
に よ る と ,死 亡 率 は V. parahaemolyticus で 1.0% (29 例 /2815 例 ),V. cholerae〔O1, O139 含 む 〕で 5.3%(26 例 /495 例 )に 対 し ,V. vulnificus は 29%(243 例 /824 例 ) と 著 し く 高 い 。 一 方 , 我 が 国 の 1975 年 か ら 取 り ま と め た 誌 上 調 査 ( 大 石 ら, 2006)
に よ る と ,V. vulnificus感 染 症 の 発 生 は 7 月 か ら 9 月 に 集 中 し ,国 内 患 者 の 4 割 は 有 明 海 周 辺 地 域 で 発 生 し て お り , 死 亡 率 は 63%(117 例 /185 例 ) で あ っ た 。2001 年 に は 熊 本 県 で ア ナ ジ ャ コ に よ る シ ャ ク 味 噌 で 9 名 発 症 し 4 名 が 死 亡 し た ( 筌 場 ら, 2006)。東 ア ジ ア 地 域 に あ る 韓 国 や 台 湾 に お い て は ,我 が 国 と 同 様 に 魚 介 類 を 生 食 す る 食 習 慣 が あ り ,多 く の 患 者 が 報 告 さ れ て い る(P ark et al., 1991; Chuang et al., 1992)。
病 原 因 子 に つ い て は , 莢 膜 , 線 毛 , 溶 血 毒 素, タ ン パ ク 質 分 解 酵 素 , エ ン テ ロ ト キ シ ン 等 ( 篠 田, 2005) が 報 告 さ れ て い る が , 病 気 の 発 症 は 肝 硬 変 等 の 基 礎 疾 患 の 有 無 に よ る と こ ろ が 大 き い 。 し か し 大 仲 ら (2003) の V. vulnificus の 調 査 結 果 に よ る と , 環 境 由 来 株 は 各 血 清 型 に 幅 広 く 分 布 す る が , ヒ ト 臨 床 由 来 株 で は 血 清 型 O1
~O7 に 大 部 分 が 分 布 し ,両 由 来 間 で 分 布 が 異 な る と 報 告 し て い る 。こ の よ う な 状 況 か ら 病 原 株 を 識 別 す る た め に 疫 学 マ ー カ ー 研 究 が 進 め ら れ て き た 。 現 在 , 本 菌 の 病