著者 入江 智也, 管藤 美穂
雑誌名 北翔大学北方圏学術情報センター年報
巻 10
ページ 97‑111
発行年 2018
URL http://id.nii.ac.jp/1136/00002931/
研究報告
障がいのある学生の社会参加支援に向けた取組
入江 智也 管藤 美穂
北翔大学教育文化学部 北翔大学保健センター
抄 録
本報告は,全国的な課題である障がいのある学生における卒業後の社会参加について,その 課題を解消するべく,進路先の選択肢の つである「就労移行支援事業所」「就労継続支援事 業所」に対し,実態把握,事業所との連携の模索,学生への紹介に有益な情報収集の 点を目 的として行った,インタビュー調査の記録である。
本調査を行った結果,インターネットやパンフレットの閲覧だけでは知り得ない情報が多 かったことから,学生のニーズに応じた情報提供をするために,実際に足を運んで情報を収集 することの重要性が示された。さらに,事業所によって構造や支援内容・方法は様々である が,いずれの事業所においても障害者手帳の有無によらず学生の見学や体験に積極的であるな ど,その間口は広いことが明らかとなり,今後の積極的な関わりが期待される。
一方で,現状では大学と事業所の連携について実践や研究が進んでいないため,連携の方法 については検討を重ねていく必要がある。連携を行う目的や個人情報の取り扱いに関する事項 を明確にし,学生が在学中から卒業後に至るまでニーズに応じた適切な支援を受けられるよう な体制を構築していくことが今後の課題である。
キーワード:障がい学生支援,社会参加支援,就労支援事業所,インタビュー調査
Ⅰ.は じ め に
日本学生支援機構が発表した「障がいのある学生の修 学支援に関する実態調査」によると,平成 年度の全国 の高等教育機関に在籍する障がい学生数は , 人で,
平成 年度と比較して , 人増加している。また,障 がい学生在籍率は . %で,平成 年度( . %)と比 較して . ポイント増加している。
このように,障がいのある若者の高等教育機関進学数 が増加する中,大学においても様々な特性を持った学生 への対応が求められている。
私立大学における障がいのある学生への合理的配慮は 努力義務とされているが,本学でも障がいのある学生の サポート機関として「障がい学生支援室」が,障がいの 有無によらず学生生活上の相談を受ける「学生相談室」
が設置されており,合理的配慮の提供に努めている。
学内支援体制が整備される一方で,障がいのある学生 における卒業後の社会参加支援には全国的に課題が残っ ている。
日本学生支援機構によると,平成 年度に大学を卒業 した 名の障がいのある学生の進路は,進学が 人,就職が , 人であり,約 .%の学生が就職もし くは進学に繋がっている。(表 )
しかし,上表のどのカテゴリーにも当てはまらない者 が 名,「死亡・不詳の者」が 名と, 名の学生に ついては,卒業後の社会参加が難しかったか,卒業後の 情報を得ることが困難な状況にある。
これらのことから,大学では障がいのある学生に対す る在学中のサポートに加え,卒業後の社会参加について 在学中から支援を行い,卒業後も切れ目のない支援に繋 げることが学生支援に携わる者としての職務であり,喫 緊の課題でもある。
障がいのある学生における社会参加の選択肢として
「就労移行支援事業」「就労継続支援事業」の利用が挙 げられるが,筆者らはこれまでに,事業所の実態把握の 機会や情報の不足から積極的に学生に利用を勧めること に逡巡する場面に数多く遭遇した。
障がいのある学生における社会参加支援の課題を解消 し,学生の個性やニーズに応じた支援を卒業前に提供す
るために,まずは筆者ら支援者側の事業への理解及び実 態の把握,事業所との関係性構築が急務であると考えら れた。
そこで,①「就労移行支援事業所」「就労継続支援事 業所」の実態把握,②事業所との連携の模索,③学生へ の事業所紹介に有益な情報収集の 点を目的として,筆 者ら 名で事業所へのインタビュー調査を試みた。本稿 では,その実践を報告する。
Ⅱ.方 法
研究目的を踏まえ,研究は以下の手順で行った。
.「学生と就労支援〜スクールカウンセラーと就労 支援事業所のディスカッション〜」勉強会への参 加
就労支援事業所との連携のきっかけづくりとして「札 幌就労支援員ネットワーク勉強会」に参加した。
.就労支援事業所への訪問
勉強会でできたつながりを基に,事業所見学及びイン タビュー調査を行った。インタビュー調査のデザイン は,以下の通り行った。
)事業所への見学・調査依頼
訪問する事業所への見学と調査の依頼を行った。
勉強会に参加した 事業所すべてにおいて見学とイン タビュー調査,および本報告書掲載の許可を得た。
)主題と質問項目の設定
本研究目的の中でも,特に「実態把握」「学生への事 業所紹介に有益な情報収集」に重点を置き,筆者ら 名 で事前に協議の上,質問項目の設定を行った。設定した 項目は以下の通りである。
① 得意分野(グループ活動が多いか,個人作業が多い か)
② スタッフの職種
③ 障がいの種類
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,事 業所を出るまでの経過について
⑤ 就職率
⑥ 障害者手帳・診断書がなくても利用可能か
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希望 者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経験も 無い方が利用を希望して来所された場合の対応につい て)
⑧ 在学中の利用は可能か
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感じ ている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしておくこ と等
)インタビュー調査の実施
設定した質問項目を元に,インタビュー調査を実施し た。各事業所ごとにインタビュアーと記録者を設定し,
役割に準じた。
表 障がい学生の卒業後の進路(平成 年度卒業生))
)記録
各事業所訪問終了後,活動を振り返り,その内容を記 録した。情報集約の方法は,まず自らが記録を担当した 事業所のインタビュー調査における逐語記録を作成して 互いに持ち寄り,「話された内容が質問項目の①〜⑩の どれに該当するか」「研究目的に沿った内容であるか」
の観点から筆者ら 名で KJ 法を行い,内容を検討し た。
Ⅲ.経 過
.就労支援事業所への訪問日時
年 月〜 月(全 回)
.各事業所の取り組み
インタビュー調査において各事業所から聴き取りを 行った記録を,趣旨を損なわない範囲で適宜修正し,以 下に記載する。
)ミライク(就労継続支援 B 型)
① 得意分野(グループ活動が多いか,個人作業が多 いか)
製作が主な活動である。しかし,入口は製作ではある が,基本的には利用者がやりたい活動をしていく。ゆっ くりと製作の基礎技術を身につけていく。
広告代理店と関わりがあり,月に 本程度製作物を納 品している。
個人作業が主となり,グループ活動はほとんどなく,
皆で清掃を行う程度である。
マンガを描いている利用者は出版を目指している。ア クセサリーを作成している利用者は「ミンネ」「元気 ショップ」に登録している。また,スタッフと利用者が 共同でブランドを立ち上げようと計画中である。ブラン ド像のイメージをシェアしながら,ウェブ上で販売した い。
② スタッフの職種
設置基準に沿い,職業指導員と生活指導員から構成さ れている。特定の福祉等の資格要件はない。製作に関す る技能をもつ人をスタッフとして採用しており,公募時 にポートフォリオの提出を必須としている。業務は,そ の製作技能に応じたものとしており,利用者が行ってい る製作活動に応じて該当する技能を有するスタッフを担 当制として個々に配置している。
③ 障がいの種類
発達障がい,うつ,睡眠の問題を抱える方が多い。身 体障がいの利用者もいる。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
登録者は 名( 年 月 日現在)。始まって間も ない事業所であることからあまり事例が多くないが,辞 めていった事例もある。事業所を出て働き出す人は多い が,続かない人もいる。
事業所として,事業所内でしっかり稼ぐということを 方針としており,就職を目指すことを強要はしない。働 いても続かずに戻ってくる人は,製作をやらなくなって しまうことが多い。就職を強く目指す人は全体の 〜 割程度。本事業所に限ったことではないが,B 型から移 行支援に移っていくという事例はほとんどみられない。
⑤ 就職率
上記同様事例が多くはないが, 名アルバイトをする ために卒業していった。事業所には外部での就職を考え ていない人も多い。事業所内でアクセサリーを作って売 るなどして稼ぐ利用者もいる。
⑧ 在学中の利用は可能か
高校では夏休みや冬休みの利用は認められているので 受け入れを行っている。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか 特別支援学校との連携はあるものの,大学との連携は ほとんど事例がない。大学を卒業してストレートで来る 人はほとんどおらず,中退してくるという人も少ない。
養護学校には事業所からスタッフが赴いて,事業所の取 り組みの紹介等を行っている。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感じ ている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしておく こと等
大学卒業生だからという理由で課題に感じていること はない。他の利用者同様,スキルと自信がないという人 が多いことから,寄り添って対応していく方針である。
)LITALICO ワークス(就労移行支援)
① 得意分野(グループ活動が多いか,個人作業が多 いか)
LITALICO の特徴は,「企業が得意」「体系化された プログラムがある」「実習先がある」の つである。よ く,環境因子と個人因子が就労には重要だと言われる が,環境因子に働きかけて変える術があるのが強みであ ると思う。工賃は発生しない。
ワークシートを用いて,就労に向けて体系的なプログ ラムを実施している。LITALOCO から就職に繋がった 人に講演をしてもらうこともある。
プログラムは,例えば「働くとは?」「働いたら生活 はどう変わるか」「身体はどう変わるか」などの働くこ とについての自己理解についてのワーク,履歴書の書き
方指導等の実際に就職活動を行う上でのスキルトレーニ ング,ビジネスマナー,「報連相」等就職後に必要なス キルのワーク,ストレス対処のトレーニング等である。
普段あまり考えることのない,長く働くためのモチ ベーションの原点を考えている。モチベーションが上が ると,長く働くことへと繋がる。これらを書き出し,皆 でシェアすることもある。
また,体験実習も月に 〜 件行っている。受け入れ 先も多く,東急ハンズ,スポーツデポ,ピザハット,道 庁などである。
体験をすることで,自分に合った仕事を見つけること に繋がる。また,体験をすることで働くことのメリット を確認したり,適性を把握したり,就職先を選択した り,自信と準備性の確認をしたりしている。
また,実習に行くことは自信へとつながる。だいたい つくらい実習に行くと就職率もあがり,定着率もあが る。
ワークには資格について考える項目もある。実際に は,資格が必要な仕事は少数で,むしろ働く意欲が重要 である。意欲がないと退職に繋がる。スキルは続けてい ると身につくため,意欲,人柄,コンディションが重要 であると利用者にお伝えしている。
このようにして自己理解が進んだ利用者は,環境を変 えればきちんと働くことのできる人が多い。また,これ らのことは障がいの有無に関わらず役に立つことである と思う。
プログラムは,LITALICO 本社で 〜 名くらい で作成した。
その他,自殺リスクのアセスメントも行っている。AI を用いて記録からリスクがあると判断された利用者が ピックアップされる仕組みとなっており,ピックアップ された利用者には面談の機会を設けるなどして対応して いる。事業所全体の自殺率は低下している。
利用者の生活面の支援については,適切な相談相手に 相談するということを大切にしてあまり深く立ち入らな いというスタンスを保っている。同様の理由で,生活面 のスタッフの担当制も採っていない。
訓練のステージごとにスタッフが 名,担当者として 配置される。ステージの担当は循環するように配置変更 を行う。固定しないことにより,多角的な視点で支援が 可能となり,利用者が幅広く人と関われるようになるこ とを目的としているからである。
PC は利用者に一人一台あたるようになっており,
Word,Excel,PowerPoint,簡単なプログラミング等 の事務スキルを学ぶことが出来る。
作業系の訓練もあるが,それを就職に結びつけるとい うよりは手先の器用さのアセスメントであったり,集中
力のトレーニングとして役立てている。
また,利用者だけで模擬会社のようにして部署を作 り,来客対応等も担当している。模擬的な会社のように することでコミュニケーションが発生し,社会性も広が る。
② スタッフの職種
サービス管理責任者,元販売員,元教育系,ケアマ ネージャー等様々である。資格を元々持って入社してく るスタッフもいるし,持たずに入社するスタッフもい る。様々なスタッフがいろんな得意を活かして働いてい る。
特に福祉の資格を持つ人を採用しているということは ない。社会福祉士や介護福祉士はいるが,必須ではな く,現段階では精神保健福祉士はいない。
センター長,エリアコーディネーター等,役職もたく さんある。入社後は東京にある研究センターにて 週間 程度の研修を行い,社会や心理・福祉について学ぶこと となっている。
③ 障がいの種類
知的障がいの利用者が %,身体障がいの利用者が
%,あとは他の障がいとも重複するが,発達障がいの 方 %程度を含む精神障がいの方である。すべての障が いを受け入れている。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
だいたい ヶ月〜 ヶ月で就職につながることが多 い。途中退職は 名程いるが,今年( 年)は途中退 職の利用者はまだいない。札幌で就職に関して言えば,
コンポステラさんか LITALICO が就職に繋げることを 得意としているように思う。
登 録 者 は 名( 年 月 日 現 在)。定 着 支 援 も 行っており,職場訪問などでフォローを行っている。こ れに期限はない。次回訪問までの期間を長くするなどし て少しずつフェードアウトしていくようにしているが,
職場に適応できずに再利用となる方もいる。
事業所を利用後,入院となる方もいる。福祉サービス なので,基本的に受け入れ拒否は出来ず,状態によらず 受け入れを行っている。
⑤ 就職率
定員 名に対し, 名就職している。
現在,利用者の正社員としての就職率は %くらいで ある。
⑥ 障害者手帳・診断書がなくても利用可能か
自立支援医療受給者証,障害者手帳があれば %利 用可能である。診断名がついていれば利用可能である が, %とは言えない。
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希 望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経 験も無い方が利用を希望して来所された場合の対応 について)
体験に制限はないので,どなたでも受け入れている が,地域の相談事業所等にまずは継続支援をお願いする のが良いのかもしれない。関連機関等,様々なリソース を紹介することも可能である。
⑧ 在学中の利用は可能か
札幌市では,ガイドラインによって大学 年生からは 長期休暇の利用が認められた。受給者証を区役所で発行 してもらう必要がある。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか まずは体験という形も可能であるし,大学にスタッフ が案内に行くことも可能である。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感 じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしてお くこと等
特に感じていないが,情報を共有してもらえると有り 難い。客観的事実を教えてもらえると嬉しい。
大学生は,中退してくる学生,自分でインターネット を見て来る学生,親に連れられてくる学生等がいる。潜 在的なニーズはあると思うので,早期にアプローチでき ると良いと思う。しかし,親と子のニーズが違うことも しばしばあるため,難しいこともある。
その他
さまざまな事業所がある。中には就職者をほとんど出 さない移行支援事業所などもある。利用したい人にとっ て有益な事業所を探すということが重要。就業・生活支 援センターが出しているデータや,自立支援協議会に加 盟している事業所などを確認して,案内をすることが望 ましい。
)ブリッジ(就労移行支援)
① 得意分野
就労移行はパソコンでの作業,B 型(グループ内事業 所)では軽作業を行いネットオークションに出品したり している。個人作業が主であるが,コミュニケーション プログラムもあり,グループワークも行っている。その 他,レクリエーションや調理の企画などもある。
プログラムはコース制である。ウェブ制作系のコース では基礎から最近のトレンドまで,経験のあるスタッフ が教えて,実務レベルを目指す。DTP コースは,デザ インなどを学んでいき,印刷物の製作などを行う。その 他,イラストコースと初級(office など)のコースがあ る。コースは最初から決める人もいれば,色々と体験し てから決める人もいる。いずれにしても, つに絞って
取り組んでもらう方針である。 年 月現在は,ウェ ブ制作系コースの利用者が最も多く, 〜 名いる。
担当については個別担当制であり, 人のスタッフが 就活までをサポートする。担当と仲良くなっていく方が 良いだろう,というスタンスである。ただし,就活など は全員でサポートしている。サイボウズを用いてスタッ フは日々面談記録等の情報交換を行っている。週 回ス タッフ間ミーティングを実施し,詳細な情報の共有を 行っている。
② スタッフの職種
年 月現在, 名在籍している。特定の福祉の資 格がある職員ではなく,サービス管理責任者,生活支援 員,職業支援員で,支援の経験がある人や,広告製作業 の経験がある人で構成されている。採用する段階で,PC や福祉などのスキル・経験がある人を採用している。
③ 障がいの種類
割くらいが精神障がいの利用者で,割が発達障がい である。身体・知的障がいの方も利用している。身体障 がいのある方はトイレまで伺でいけるようであれば 階 で作業をしてもらうようにしている。発達障がいの利用 者は,大人になってから診断された方が多いのが特徴で ある。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
多様であるが,早い人は カ月で就職となる。 年 通って A 型に行くという利用者もいる。ヒアリングを して,本人の希望に基づいて動いている。外に出る習慣 をつけたいという利用者もいる。事業所に通う中で,就 職を目指すようになっていく方もいる。
⑤ 就職率
就職を希望する方の就職率は .%。web 関連の就職 に限らず,コールセンターや介護系に就く方もいる。全 体のうち, %程度は積極的な就職希望ではないという 印象がある。 年 月現在の登録者は 名,日々の通 所者は平均で 名前後である。
⑥ 手帳・診断書がなくても利用可能か
自立支援医療を利用していたり,医師の意見書があっ たりすることで通所されている方はいる。手帳取得は本 人の意思を尊重している。実際に手帳を取得せずに就労 される人もいる。精神科に通う意思があれば,対応を開 始することが多い。
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希 望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経 験も無い方が利用を希望して来所された場合の対応 について)
サポートを受けていない段階で,相談したいといって 来所される方もまれにいる。その場合は,医療機関を勧
めたり,事業所を見学してもらうといった対応を行って いる。
⑧ 在学中の利用は可能か
卒業年次であれば可能である。利用を前提として,イ ンターン先として利用することも可能である。基本的に は長期休暇の利用ではあるが,ケースバイケースである と考えている。その都度関連機関と相談をして検討を行 う。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか まずは見学に来てもらったり,説明をしたりすること ができる。大学との連携というのは今まではないが,ク リエイティブ系の教育機関には話をしに行ったりしてい る。要望があれば,大学にいって直接学生に説明すると いうこともできる。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感 じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしてお くこと等
課題はあまり感じない。幼少期に療育を受けていた利 用者や,学校を通さずにネット検索をして来所される利 用者が多い。
大学を卒業している人は PC に慣れている方が多いの で訓練を導入しやすい印象がある。
大学への希望は,基本的な PC スキル,web の知識が あれば良いと感じる。HTML,CSS,Illustrator,Pho- toshop 等,画像加工のスキルがあればなお良いかもし れない。
また,自身の特性について,どのような時に体調が悪 くなるか,指示は口頭が良いのか,それとも図示や文章 が良いのか,調子を崩した時にどうしてもらえれば良い のかが分かっていると良い。
本事業所では,ナビゲーションブックというものを利 用者と作っていく。ナビゲーションブックは,自身の取 り扱い説明書のようなものであり,利用者の自己理解に も役立つものである。クリエイティブ系の企業に特化す るような形で,内容は既存のものをカスタマイズしたも のである。就活で利用しているが,かなり有効である。
そういった,自身の長所や短所などを,在学中に考えて おいたり,アルバイト経験を積んでいたりすることが,
就労への移行に役立つと思われる。
療育の対象となっている人は,「サポートファイル さっぽろ」といって,療育内容をつながる先々と共有し ていくためのファイルがある。そのような形で,障がい のある学生についても情報を共有していくような仕組み があると良いように感じている。
)エリオス SAPPORO(多機能型就労支援)
① 得意分野(グループ活動が多いか,個人作業が多 いか)
エリオスは,就労移行支援と,就労継続支援 B 型の多 機能型である。B 型の利用者は就職をすることが難しい ため,まずは生活支援を行っているところである。生活 基盤を固めて次に行くことを重視しているため,どの程 度できているのかを最初にアセスメントする。
生活支援として一時的な金銭管理等も行っているが,
長期間行うことはできないため,少しずつ自身でやれる よう支援をしていく。
コミュニケーションに慣れることを目的とした関わり も多い。日本語だけでは「こんなこと言って良いのか な」と言えなくなってしまう人もいるので,英語の先生 に来てもらい,英会話で言いたいことを言いやすくして いる。ゲームを取り入れ,質問カードで答えてもらう形 式であるが,その質問カードで「昨日こんなことがあっ たのか」と,利用者のことを理解することもある。
また,地域の方々が関わってくることに違和感がない ようにしている。洋裁部門があるが,地域の方々が洋服 のお直しなどを頼みに来ることがある。その際に挨拶が 出来たり,報告をしたりすることが出来ようにトレーニ ングをしている。
発達障がいの方には特に,出来ていない部分への工夫 をかみ砕いて教えるようにしている。出来ているものと そうでないものを比較して,「これは売り物にならない からダメ,やり直し」などと教えている。ダメなものは ダメ,ときちんと伝えている。
また,体験も多く取り入れている。例えば A 型事業 所での農業体験に参加させてもらったり,わんにゃん譲 渡会の会場を貸し出したりしている。その準備や片付 け,地下歩行空間でのバザー出店,地域の草むしり等も 行っている。
地域のぬくもりサポート事業にも,事業所として登録 している。サポーターとなり地域の方々のお手伝いをす る。ボランティアであるので報酬は 回 円の交通費 が出るのみであるが,社会との繋がりを感じられたり,
お仕事の つ,と認識したりすることが出来る。終了後 はボランティア報告書を出してもらっている。
また,会社に入れば役割が与えられることから,事業 所でも役割を担ってもらっている。例えば「清掃部」は トイレットペーパーがなくなったら補充する等の簡単な ことであったり,「広報」は事業所通信をデザインが得 意な人に作ってもらったりする。何でも職員がやって当 たり前,という感覚にならないようにしている。
月は就労支援月間であり,厚労省がポスターを公募 したが,それに応募して 人受賞した。地域のペット川
柳の公募にも 人が応募し,人が受賞した。受賞したこ となどは,履歴書に書けるようになるし,自信にもつな がる。
また,「ダスキン」が社会貢献事業として障がいを テーマにしたお芝居をやっており,招待してくれたた め,皆で観に行った。このように,障がいがあっても楽 しむことを重視している。
また,障がい受容ありきの話となるが,ハローワーク の障がい者求人で,ピアサポーターなどの募集もある が,応募後ミスマッチを防ぐために,まずは見学をする ようにしている。
事業所の予定表にある,「マイプラン」の欄の時間 は,ご本人がやりたいことをやる時間としている。今は ファイナンシャル・プランナーになるための勉強をして いる方,履歴書を書いている方,Win の効率的な使い 方を勉強している方などがいる。マイプランの時間は自 身で何かをやる時間,それ以外は皆で何かをやる時間,
と,それぞれ時間を分けている。
実際の会社には一つの仕事しかしないということはな い。よって,一つしかできません,ではなく,実際に働 いた時に動揺しないように,ここにいる時から言われた ことを全うしてもらうような関わり方をしている。
実習受け入れ先も多い。実習先として,パン屋さん,
びっくりドンキー,老人ホームなどがあり,HBC での テープ編集のような実習もある。これらはすぐに就職に 結びつく性質のものではなく,スキル到達点を確認する ものである。
実習の最初と最後にはスタッフが同行し,特性の報告 をしたり,実習時の様子を聞いたりしている。事業所か ら歩いてハローワークに行く日もあり,予定に組み込ま れている。
② スタッフの職種
支援員は現在 名。B 型の洋裁やアートは美術系を経 験したスタッフが担当している。
外に出るのは運動経験のある人にお願いしている。私
(調査回答者)はサービス管理責任者で,社会福祉士と 介護福祉士の資格を持っている。
代表は初任者研修を持っていて,実務者研修を持って いる人もいる。無資格のスタッフもいる。
家庭訪問時などは,自分が実際に行くスタッフに対し て確認するポイントを指導したりする。
スタッフは皆それまでの社会経験を活かして働いてい る。社会経験のある人がスタッフだと,役職の序列や,
上司に対する話し方のマナーなどの具体的な内容を教え ることが可能である。
③ 障がいの種類
発達障がいが 名,聴覚障がいが 名,身体障がいが
名,知的障がいの方や,重複しているが依存症の方,
統合失調症の方もいる。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
過去 年の間でフェードアウトした方も複数いる。ア ルバイトをしてうまくいかず,戻りたいけど以前利用時 に利用していた利用者がいることで戻れないという方も いた。
⑤ 就職率
まだ 年目という新しい事業所であるが,過去 年間 で一般就労は 名。現在研修に行っている方がおり,そ の方が OK ならば 人目となる。
登録者数は現在 名,定員は 名である。移行支援は 名,B 型は 名の定員であるが,移行支援の現在の登 録者数は 名,B 型はまだ空きがある。
就職者は,移行支援の手続きを からスタートした人 である。B 型から移行支援の手続きをして就職に至った 利用者が 名, から移行支援に行き就職をした利用者 が 名である。
⑥ 障害者手帳・診断書がなくても利用可能か 手帳も診断書も自立支援医療もまだない利用者が 人 おり,慣れることを目的としている。自立支援医療受給 手続きが完了するまでは,体験利用として来てもらって いる。交付を受けられたら正式に利用開始という流れで ある。
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希 望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経 験も無い方が利用を希望して来所された場合の対応 について)
ボランティアとして利用してもらい,自分もこういう 生きにくさを抱えているな,と気付くこともある。
また,「病気じゃない!」という方にはまず若者サ ポートセンター,心のリカバリーセンターなどを勧めた り,発達外来,閉じこもり支援を紹介したりする。保護 者からの相談もある。
保護者の方が納得しない場合や,保護者は知っている けど本人には告知していないという場合もある。しかし 最近は一般就労では入社が難しいようなところからの障 がい者求人も多い。北洋銀行,大学,石屋製菓,JR,
NTT などである。大手の企業は障がい者支援担当者が 設置されていて,それを見て寧ろ本人に告知をした方が 良いのでは,と考える保護者の方もいる。
⑧ 在学中の利用は可能か
通信制高校生の利用実績がある。最終学年次の長期休 暇で利用可能。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか 例えば相談の時間の後に大学に行き,傾向や働き方に
ついて話をすることができる。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感 じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしてお くこと等
障がいや病状の重い人たちに関しては, 〜 年をか けて支援をしていく。大学まで通常で来た方々は半年 等,短いスパンで就職することを目指すことを切り口す ると良い。そのような支援の中で自身に足りないものが みつかることもある。こういう方法もありますよ,と か,見学してきたらどうかな,等と勧めてもらえると良 いかもしれない。
)アーカス(多機能型就労支援)
① 得意分野(グループ活動が多いか,個人作業が多 いか)
アーカスは,就労継続支援 B 型と就労移行支援からな る多機能型である。
B 型では,主に机上で手を動かし納品を行う軽作業を 行っている。今は,薬局で売っているボトルにシールを 二枚貼って納品したり,缶詰に貼る食品表示シールを 枚袋に入れて納品したりしている。仕事が終わらない時 は,夜の作業になることもある。
年齢層は 〜 歳くらい,同じポジションでいろんな 年齢層の方がいるのは通常の仕事も同じであり,いろい ろな方と事業所でコミュニケーションを取ることにも意 味がある。
B 型では,生活支援とメンタル支援に力を入れてい る。また,自主性を大事にしている。他の事業所では私 語を禁止などとしているところもあると思うが,アーカ スは OK である。
移行支援では,Excel,Word,PPT 等の訓練も行う が,生活や職業準備性の支援が多い。
PC 作業も行うが基礎的なことである。一般事務を目 指し,資格取得を目指す方には訓練を取り入れる。
また,厚労省が出している職業適性検査を行うこと で,普段の支援だけでは分からない発見もある。検査で 苦手を発見し共有したり,結果を受けて伸ばしたいとこ ろのトレーニングを,ワークサンプルトレーニングを用 いて訓練したりしている。
また,個別に 年間のカリキュラムを作成している。
カリキュラムでは,何が出来ていて何が出来ていないの かを自己理解できるような,障がいの理解に関するもの や,オリジナルブックを使用した就労に向けてのトレー ニングを行ったりする。
事業所内実習,グループワークや社会的スキル訓練
(SST)も取り入れている。これらは基本的に移行支援 のカリキュラムに組み込まれているが,B 型の利用者も
希望に応じて行うことが出来る。
余暇支援も行っている。キャンプやクリスマス会をし たり,散歩をして体力面のサポートをしている。
このように,生活支援から就労移行まで,手厚くサ ポートしている。
姿勢としては,希望されれば支援を行うスタイルであ る。「ここまでしかやりません」はない。
アーカスを出て行った利用者にはスタッフ 名で基本 的に対処している。スタッフとの番号交換は必要時は OK にしている。たとえ就職をしても,そのままにする ことはしない。
生活困窮者支援も行っている。生活困窮者支援もアー カスの利用者もプログラムは同じであるが,適性にあわ せた作業をお願いしている。
事業所が狭いのも特色であるが,狭いからこそ接触が あったりやりとりが生じたりすることもある。
また,B 型と移行支援が壁を挟んだワンフロアにある ので,B 型から移行支援への移動もスムーズに事業所内 で行うことができる。両者の交流も生まれる。
② スタッフの職種
スタッフは法人で 名,グループホームの職員も含ん でいる。
職種は移行支援でサービス管理責任者,職業支援員,
生活支援員,就労支援員,精神保健福祉士,社会福祉 士,産業カウンセラーである。福祉系の専門資格を持っ た人が自然に集まってきたかたちとなった。
③ 障がいの種類
精神の方が 〜 割,療育手帳を持っている方が 割。身体障がいは現在受け容れていない。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
長い方では 年くらい,出戻りの方もいる。
⑤ 就職率
これまで移行支援は 年やって, 名強の利用で就労 は 名,定員の %程である。ハローワークとの相談も スムーズに行うことが出来ている。
⑥ 障害者手帳・診断書がなくても利用可能か 見学は可能である。体験は無料,手続きもいらない。
体験の方は食事も無料で提供する。また,体験時は近く の駅まで迎えに行くこともできる。事業所というとハー ドルは高く感じるかもしれないが,まずは来て見て様子 をみて,利用者と会って話をしてもらうとで誤解はなく なると思う。利用は手帳ではなく医師の意見書でも可能 である。いくつかの事業所を見学してもらった後に本人 に判断してもらうことも可能。
生活困窮者支援利用には診断書や医師の意見書が必要 であるが,引きこもりの方は病院に繋がっていなかった
りする方も多い。そのような方も,札幌市で認定されれ ば利用可能となっている。この制度を使った方で,就職 を目指している方もいる。
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希 望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経 験も無い方が利用を希望して来所された場合の対応 について)
手続き,書類提出等の同行も可能である。相談室や医 療機関に繋いだり,アーカス以外の本人の希望に応じた 専門の事業所に紹介したりすることもできる。事業所は
つ同時に登録することも可能である。
⑧ 在学中の利用は可能か
これまでに在学中の利用者はいない。特別支援学校の 実習先としての利用はある。卒業年次の最後の休みは利 用可能である。札幌市の場合ケースバイケースなので,
問い合わせることも可能である。
在学中でも体験は可能である。大学中退や,卒業後に 通っている利用者も何名かいる。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか こちらで対応できる案件であれば,どうしてほしいと 言ってくれたら動くことが出来る。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感 じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしてお くこと等
コミュニケーションに困っている人が多い印象であ る。アセスメント時に話を聞くと,過去のいじめ体験や コミュニケーションに困難が生じた場面の話が出てくる ことが多い。
また,両親がどの段階で障がいを認めているかも重要 である。
大学生に限らないが,本人と保護者の障がい理解に差 があることがある。また,若い人は手帳を嫌う人が多 い。せめて病院に行ってくれたらな,と思う。
)事務支援センター リオン(就労継続支援 B 型)
① 得意分野
主に個人作業である。月に 回,自由参加のレクリ エーションを開催している。その他,忘年会や新年会な どがある。ほとんどの方がコミュニケーションに課題が あるので,まずは職員とコミュニケーションをとること で練習している。利用者同士でもコミュニケーションを とられているが,適度な距離をとってもらうことを推奨 している。掲示物を用いて,利用者同士の連絡先の交換 を禁止している。スタッフも担当制とはせず,相性など もあるので状況に応じて全員で対応している。面談や利 用者の情報共有のためのミーティングも日々行ってい る。
事業所の活動内容としては,資格の取得をバックアッ プすることと,生活リズムと自信をつけることを目指し ている。事業所が情報処理検定協会の会員となっている ため,事業所で試験を行うことができる。
② スタッフの職種
スタッフは 名である。特定の福祉の資格を有するわ けではないが,事務系の資格に関する講座の講師をする 資格をもっており,支援員全員が試験官になることが可 能である。
③ 障がいの種類
精神障がいの方が 割を占める。定員 名に対し登録 が 名である。
④ 就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,
事業所を出るまでの経過について
B 型なので長期間利用する方もいれば, 〜 年で就 職に繋がるように支援する方もいる。事業所を出た後,
就労移行に行く方もいたり,数は少ないが直接就労に至 る場合もあり,様々である。
⑥ 障害者手帳・診断書がなくても利用可能か 医療機関に関わっていれば対応可能。現在の利用者は 全員医療機関にかかっている。
⑦ まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希 望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経 験も無い方が利用を希望して来所された場合の対応 について)
まずは相談室に行くのがよいと思う。事業所を利用す るためには,一般就職ができないというアセスメントが 必要である。事業所としてできることは,まずは実習を 行い,通院するよう勧める流れになる。
⑧ 在学中の利用は可能か
大学在学中の利用というものはないが,特別支援学校 の実習生が来ていたりはする。
⑨ 大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか 前例がないので特に定まってはいない。
⑩ 大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感 じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしてお くこと等
利用者の 分の くらいは大学を卒業した方である。
卒業後すぐに利用に繋がったケースの場合,事業所が社 会にでる準備をする初めてのところになるため,一般常 識の指導等にも力を入れる。
Ⅳ.質問項目における各事業所の比較
表 得意分野における比較
①得意分野(個人作業か,グループ作業か)
ミライク ・製作が主な活動であるが,基本的には利用者がやりたいことを行う
・個人作業が主
LITALICO ・「企業が得意」「体系化されたプログラムがある」「実習先がある」
・体験実習を取り入れている
・自殺リスクのアセスメントを行っている
・個人作業もグループも行っている
・模擬的な会社のように部署を作り,来客対応等を行っている ブリッジ ・就労移行はパソコンでの作業,B 型では軽作業で,個人作業が主
・プログラムはコース制で, つに絞って取り組んでもらう方針
・コミュニケーションプログラム,レクリエーション,調理の企画などもある
・個別担当制
エリオス ・就労移行支援と,就労継続支援 B 型の多機能型
・B 型では生活支援をまずは行っている
・活動内容は,コミュニケーションに慣れることを目的とした活動,体験活動,ボランティア,実習,等
・事業所内での役割を担ってもらっている(「清掃部」「広報」,等)
・個人作業もグループ作業も取り入れている アーカス ・就労移行支援と,就労継続支援 B 型の多機能型
・B 型では主に軽作業を行っており,生活支援とメンタル支援に力を入れている
・移行支援では,excel,word,PPT 等の訓練も行っており,個別に 年間のカリキュラムを作成している
・事業所内実習,グループワークや SST も実施
・生活支援から就労支援までを手厚くサポート
・生活困窮者支援も行っている
・B 型から就労移行への移動も可能 リオン ・主に個人作業
・月に 回自由参加のレクリエーションを開催している
・利用者同士のコミュニケーションは,適度な距離を取ることを推奨
・スタッフは担当制ではなく,全員で対応
・事務資格の取得,生活リズムと自信をつけることを目指している
表 スタッフの職種における比較
②スタッフの職種
ミライク ・職業指導員と生活指導員からなる。特定の福祉等の資格要件はない
・製作に関する技能をもつ人をスタッフとして採用
・製作活動に応じた技能を有するスタッフを担当制で配置している LITALICO ・サービス管理責任者,元販売員,元教育系,ケアマネージャー等様々
・資格を元々持って入社してくるスタッフもいるし,持たずに入社するスタッフもおり,特に福祉の資格を持つ人を 採用しているということはない
・センター長,エリアコーディネーター等,役職もたくさんある ブリッジ ・ 年 月現在, 名在籍
・特定の福祉の資格がある職員ではなく,サービス管理責任者,生活支援員,職業支援員で,支援経験者や広告製作 業経験者で構成
・採用する段階で PC や福祉などのスキル・経験がある人を採用している。
エリオス ・支援員は現在 名
・サービス管理責任者,社会福祉士,介護福祉士,初任者研修,実務者研修を持っているスタッフ,無資格のスタッ フもいる
・皆それまでの社会経験を活かして働いている アーカス ・法人で 名(グループホーム職員含む)
・職種は移行支援でサービス管理責任者,職業支援員,生活支援員,就労支援員,精神保健福祉士,社会福祉士,産 業カウンセラー
リオン ・スタッフは 名。
・特定の福祉の資格を有するわけではないが,事務系の資格に関する講師をする資格をもっている
・支援員全員が事務系資格における試験官になれる資格を持っている
表 障がいの種類における比較
③障がいの種類
ミライク ・発達障がい,うつ,睡眠障がいが多く,身体障がいの利用者もいる
LITALICO ・知的障がい %,身体障がい %,あとは他の障がいとも重複するが,発達の方 %程度を含む精神障がい
・すべての障がいを受け入れている
ブリッジ ・ 割くらいが精神障がい,割が発達障がい,身体・知的障がいの方の利用もある
・発達障がいのある人は,大人になってから発覚した人が多いのが特徴
エリオス ・発達障がい 名,聴覚障がい 名,身体障がい 名,知的障がいの方,重複しているが依存症の方,統合失調症の 方もいる
アーカス ・精神障がいの方が 〜 割,療育手帳を持っている方が 割,身体障がいは現在受け入れていない リオン ・精神障がいの方が 割を占める
表 転帰・経過における比較
④就職・非就職問わず,事業所を出た後の転帰や,事業所を出るまでの経過について ミライク ・始まって間もない事業所であることからあまり事例が多くないが,辞めていった事例もある
・働き出す人は多いが,続かない人も多い
・就職を強く目指す人は全体の 〜 割程度
・B 型から移行支援に移っていくということはほとんどない LITALICO ・だいたい ヶ月〜 ヶ月で就職につながることが多い
・定着支援を行っており,職場訪問等でフォロー
・職場に適応できずに再利用となる方もいる
・入院となる方もいるが,状態によらず受け入れを行っている ブリッジ ・多様であるが,早い人は カ月程度で就職
・ 年通って A 型に行くという方もいれば,外にでる習慣をつけたいという目標の方もいる
・通所するうちに就職を目指すようになる方もいる エリオス ・過去 年の間でフェードアウトした方も複数いる アーカス ・長い方では 年くらい,出戻りの方もいる
リオン ・ずっといる人もいれば 〜 年で就職に繋がるよう支援する人もいる
・事業所を出て就労移行に行く方や,少ないが直接就労に至る場合もある
表 就職率の比較
⑤就職率
ミライク ・事例が多くないが,名アルバイトをするために卒業していった
・事業所には外部での就職を考えていない人も多い
・事業所内でアクセサリーを作って販売する利用者もいる LITALICO ・定員 名に対し, 名就職している
・正社員としての就職率は %くらいである ブリッジ ・就職希望をする方の就職率は .%
・web 関連の就職に限らず,コールセンターや介護系に就職する方もいる
・利用者全体のうち, %程度は積極的な就職希望ではないという印象 エリオス ・まだ 年目という新しい事業所であるが,過去 年間で一般就労は 名 アーカス ・移行支援事業 年で, 人強の利用で就労は 名,定員の %程
・ハローワークとの相談もスムーズに行うことが出来ている
表 利用についての比較
⑥障害者手帳・診断書がなくても利用可能か
LITALICO ・自立支援医療受給者証,障害者手帳があれば %利用可能
・診断名が降りていればほぼ利用可能
ブリッジ ・自立支援医療利用や,医師の意見書があり通所される方もいる
・精神科に通う意思があれば対応を開始することが多い
エリオス ・手帳も診断書も自立支援医療もまだない利用者が 名おり,自立支援をもらうまでは体験利用,交付を受けられた ら正式に利用開始となる
アーカス ・見学は可能,体験は無料,手続きも不要
・利用は手帳ではなく医師の意見書でも可能 リオン ・医療機関に関わっていれば利用可能
表 サポートのない場合の比較
⑦まだ医療的・福祉的サポートがない場合の利用希望者の対応について(障害者手帳も医療機関受診経験も無い方が 利用を希望して来所された場合の対応について)
LITALICO ・体験に制限はないので,誰でも受け入れている
・関連機関を紹介することもできる
ブリッジ ・医療機関を勧める,事業所を見学してもらう等の対応をしている エリオス ・ボランティアとして利用可能
・病識のない方には関連する他機関を紹介したりする
・保護者からの相談もある アーカス ・手続き,書類提出等の同行も可能
・相談室や医療機関に繋いだり,アーカス以外の本人の希望に応じた専門の事業所に紹介したりすることも可能 リオン ・まずは相談室に行くのが良いと思う
・利用するためには,一般就職ができないというアセスメントが必要
・まずは実習を行い,通院等を始めるように勧める流れとなる
表 在学中の利用における比較
⑧在学中の利用は可能か
ミライク ・高校では夏休みや冬休みの利用は認められているので受け入れている
LITALICO ・札幌市では,ガイドラインによって大学 年生からは長期休暇の利用が認められたが,区役所にて受給者証を発行 してもらう必要がある
ブリッジ ・卒業年次であれば可能
・利用を前提として,インターン先として利用することも可能
・基本的には長期休暇の利用 エリオス ・通信制高校生の利用実績がある
・最終学年次の長期休暇で利用可能
アーカス ・これまでに在学中の利用者はいない(特別支援学校の実習先としての利用はある)
・卒業年次の最後の休みは利用可能
・札幌市の場合ケースバイケースなので,問い合わせることも可能
・大学中退や,卒業後に通っている利用者も何名かいる。
リオン ・大学在学中の利用はないが,特養の実習生が来ていたりはする
表 連携における比較
⑨大学と連携を行う際にどのように動いてくれるのか
ミライク ・特別支援学校との連携はあるものの,大学との連携はほとんど事例がない
・大学を卒業してストレートで来る人はほとんどおらず,中退してくるという人も少ない
・特別支援学校には事業所からスタッフが赴いて,取り組みの紹介等の営業は行っている。
LITALICO ・体験も,大学にスタッフが案内に行くことも可能
ブリッジ ・まずは見学にきてもらったり,説明をしたりすることができる
・大学との連携事例はこれまでにはない
・要望があれば大学に行って直接学生に説明することもできる
Ⅴ.考 察 と 課 題
.得意分野(個 人 作 業 か,グ ル ー プ 作 業 か),ス タッフの職種,障がいの種類について
事業内容は事業所の方針や特色により様々であった が,概ね製作や資格取得等,技能習得に特化した事業所 については個人作業が多かった。一方で,就労を目指す ことを主な目的としている事業所においては個人作業や グループワークを織り交ぜて行うところが多かった。
また,利用者の担当も,個別担当制の事業所や作業担 当が日常相談を受けている事業所,担当は置かず全員で 支援にあたる事業所等,様々であった。
在籍スタッフの職種も様々であったが,スタッフの採 用にあたり,福祉資格よりも社会人経験を重視している 事業所が多かった。また,技能習得を目指すことに特化 した事業所は,技能を活かした職務経験の有無重視して いることが多かった。
利用者の障がいの種類においては,概ねの事業所が障 がいの種類によらず利用者の受け入れを行っており,全 体を通してみてみると発達障がいを含む精神障がいのあ
る利用者が多かった。しかし,内訳については,事業所 ごとに偏りが見られた。
これらのことから,学内で障がいのある学生へのキャ リア支援を行うにあたり,まず学生の障がいの特性を理 解した上で,事業所利用の目的や,得意不得意を丁寧に 聴き取る必要がある。その上で,本人の希望に応じてこ れらを事前に事業所に伝えられるような資料を準備した り,事業所利用後のミスマッチを防ぐために,本実践結 果を学生に提示し,事業所選択の参考としてもらった り,今回構築した事業所との関係性を基に,事前に学生 が見学や体験利用ができるようなアプローチを行ったり する等,可能な限り早期から支援を進めることが重要で あると考える。
.事業所を出た後の転帰,事業所を出るまでの経過 及び就職率について
利用期限が定まっている就労移行支援事業所は,次の 所属先が決まるまでの時間が短かった。また,事業所の 方針によって利用期間は様々であった。
同じ就労継続支援でも,A 型と B 型によって違いがあ り,事業所や利用者が目指すものによっても転帰に至る までの流れに違いがあることが明らかとなった。これら エリオス ・大学に行き話をすることができる
アーカス ・こちらで対応できる案件であれば,どうしてほしいと言ってくれたら動くことが出来る
表 課題・大学での準備における比較
⑩大学卒業生(学生)の受け入れについて課題に感じている点・事業所に繋ぐ前に大学で準備をしておくこと等 ミライク ・大学卒業生だからという理由で課題に感じていることはない
・他の利用者同様,スキルと自信がないという人が多いことから,寄り添って対応していく方針 LITALICO ・特には感じていないが,情報を共有してもらえると有り難い
・大学生には潜在的なニーズがあると思うので,早期にアプローチできると良い
・親と子のニーズが違うこともしばしばある ブリッジ ・課題はあまり感じない
・小さい頃に療育を受けていた利用者や,学校を通さないでネット検索をして来所される利用者も多い
・大学への希望として,基本的な PC スキル,web の知識があれば良いが,HTML,CSS,Illustrator,Photoshop 等,画像加工のスキルがあればなお良い
・自身の特性や対処法について分かっていると良い
・長所や短所などを在学中に考えておいたり,アルバイト経験を積んでいたりすることが就労への移行に役立つと思 われる
・障がいのある学生について,情報を共有できるような仕組みがあると良い
エリオス ・大学まで通常に来た方は短いスパンで就職することを目指すことを切り口すると良い
・「こういう方法もありますよ」「見学してきたらどうかな」等と勧めてもらえると良いかもしれない アーカス ・コミュニケーションに困っている人が多い印象
・アセスメント時に話を聞くと,過去のイジメ体験やコミュニケーションに困難が生じた場面の話が出てくることが 多い
リオン ・利用者の 分の くらいは大学を卒業した方
・卒業後すぐに利用に繋がったケースの場合は,事業所が社会にでる準備をする初めての場所になるため,一般常識 の指導にも力を入れる
のことから,学生に事業所の情報を提供する際は,事業 や事業所の特色の違いを明らかにして明示し,学生の ニーズに応じた情報提供や事業所を紹介する事が重要で ある。
また,事業所を利用することで,就職先の決定や,就 労の継続が可能となったケースが存在する一方で,定着 の難しいケースも存在することがわかった。
就職率においても事業所の特色によって様々であり,
利用者側が就労についてどのように考えて事業所を利用 しているかによるところが大きいように思われる。
また,企業が積極的に障がいのある方を正社員として 採用していくことが,障がい者の就職率向上に繋がると 考えられる。
.障害者手帳や診断書,医療的・福祉的サポートが ない場合の利用希望者の対応について
自立支援医療受給者証,障害者手帳があれば利用可能 であり,なくても診断名がついていれば利用可能である ところが多かった。
また,必ずしも障害者手帳を所持していなくても,診 断がついていれば利用できる事業所も存在した。
さらに,医療的・福祉的サポートが全くない場合で も,見学・体験利用が可能である事業所が多かった。
医療機関や福祉窓口などに繋がるための手続きをサ ポートしてくれる事業所,横の繋がりを基に適切な機関 への紹介を行っている事業所も存在した。見学・体験を してから障害者手帳の取得を検討することも可能である と考える。
大学の支援者としては,たとえ事業所が学生のニーズ や利用条件に合わなかったとしても,適宜必要なところ に紹介してもらえることは安心感へと繋がる。どのよう な学生においても,興味がある学生がいたら「気になっ たらまずは足を運んではどうか」と勧めることが出来る ため,大変心強い。
これらの情報を,必要な学生に周知することが重要で ある。
.在学中の利用,大学と連携,卒業生(学生)の受 け入れについての課題について
在学中の利用において,最終学年次の長期休暇での利 用が認められていると回答される事業所が多かった。体 験や見学は,卒業後の利用先を決める上で重要であるた め,これらの情報は,大学でも学生に積極的に伝えると ともに,教職員への周知を行い,気になる学生に伝えて もらうように依頼する等の働きかけが必要である。
また,卒業後の利用を前提として,インターン先とし ての利用も可能である事業所も存在した。最終学年次の
長期休暇に利用出来る事は共通していても,事業所に よって体験利用,実習,インターン等,内容は様々であ るため,学生のニーズに応じた紹介をする必要がある。
大学との連携については,連携事例がない事業所が多 かったが,大学まで説明に来てくれると回答された事業 所も存在した。本実践では,広く「連携を行う際の動 き」について質問を設定したが,事例がないというある 程度一貫した結果が得られた。まだ実践や研究が進んで いない分野であるため,これからの課題でもあることか ら,どういう連携,何のための連携をしたいという意図 を大学の支援者が持ち,連携することが重要である。
事業所側が大学に説明に来てくれるという機会は,大 学側としても資料の提示だけではなく,実際に足を運ば なくても話を聞く機会を設けることが出来る。それは,
事業所利用を迷っている学生にとって貴重な機会となり 得る。
また,学生のみならず教職員を対象に話を聞く機会を 設ける事で,関連部署のみならず,教職員からのサポー トもより円滑になっていく可能性がある。
また,大学卒業生の受け入れにおける課題について は,特別何かがあるわけではないと回答し,学歴に関わ らず積極的に利用者の受け入れを行っている事業所が多 かった。
インタビュー前に参加した勉強会でも,大学での合同 事業所説明会の実現について積極的な話が挙がってい た。しかし,個人情報の取り扱いに関してはまだ明確に なっていないため,今後検討を重ねていく必要がある。
「学生が障がいの存在を他の人に知られたくないので はないだろうか」という懸念は事業所側にも大学支援者 側にもあり,学生のニーズを慎重に調査する等,開催に あたっては慎重に協議を行うことが重要である。
Ⅵ.お わ り に
本調査を行った結果,事業所によって構造や支援内 容・方法は様々であるが,その間口は広く,手帳の有無 によらず学生の見学や体験にも積極的であることが明ら かとなった。インターネットやパンフレットの閲覧だけ では知り得ない情報も多かったことから,学生のニーズ に応じた情報提供をする上で実際に足を運んで情報を収 集することの重要性が示された。
大学として,まずは学生と保護者を交えた三者面談を 行い,ニーズの把握や事業所の理解を促進させる機会を 持つなどして,段階を追った支援を行う必要がある。学 生相談室や障がい学生支援室は,保護者を交えた面談の 機会を持ちやすい部署であるため,その際に卒業後を見 据えた話をする機会を持つことが重要である。
また,大学との連携については実践や研究が進んでい ないことが推察され,今後の課題となった。支援者が連 携方法,連携目的について明確な意図を持ち,個人情報 保護に留意しつつ,在学中から卒業後を見据え連携を行 いながら支援することが重要であると考える。
付記
本研究は,北方圏学術情報センターによる研究助成を 受けた。
謝辞
本実践を遂行するにあたり,お忙しい中インタビュー
調査や本報告書掲載をご快諾下さった,「就労継続支援 B 型ミライク」「LITALICO ワークス」「就労支援ブリッ ジ」「エリオス SAPPORO」「多機能型就労支援事業所 アーカス」「事務支援センター リオン」のご担当者様 に,心より感謝を申し上げます。
引用文献
)平成 年度( 年度)大学,短期大学及び高等専 門学校における障がいのある学生の修学支援に関する 実態調査結果報告書( ),日本学生支援機構