茨城大学教育学部教育研究所紀要14号特集(1981)157−173 157
校内宿泊学習における生活行動(調理活動)の評価法に関する試み
菱 沼 昇 一・石 川 弘 容・四日市 ゆみ子 本 多 康 博・茨 木 恵美子・染 野 弘 子
(1981年10月31日受理)
は じ め に
校外宿泊学習での入浴時間。皆が出終った浴槽の中に生徒が一人だけ入っており,湯につかって いるにはもう耐えられないという表情のKS。教師の方を時々チラチラ見るばかりで一向に浴槽を 出る気配もない。「熱いのなら出なさい」と,教師が一言声をかけると,ぱっと浴槽から飛び出す のであった。「出なさい」の指示が得られないために,浴槽を出るに出られず,「先生早く何とか してよ」と言わんばかりに教師の方をじっと見ているのである。KSに家庭での様子を聞いてみる と,1つ1つ指示を受けながら入浴し,指示があって,浴槽を出る等,この行為は,長い年月を経 て,家庭で身についた消極的な行動と思われる。「着替えやタオルを持たずに浴室に入る」「洗体 せずに入浴する」「石けんをつけずに体を洗う」「衣服,タオル等を浴室に忘れても気付かない」
「持物の片付けが出来ず途方にくれる」等,身のまわりの基本的な生活習慣が確立されていない生 徒が意外に多いのである。
これらの状況をどう評価するかということは,何をどのように学習させたらよいかということに 密接に関係するものである。
通常の学校生活において,みることのできない生徒一人ひとりのユニークな生活行動の過程を含 めて,どうかかわり,妥当な評価を生み出すか等,教育上重要な課題がこれらの実態をとおして提 起されるであろう。ここに本研究をまとめる動機とその必要性が生まれてきたのである。
1.指示によっての行動とは
校外宿泊学習にみられた生徒の活動の困難さは,指示が他(主に教師)より与えられると,消極 的ではあるがすばやい取り組みをみせ,解消が図られることが多い。このことは,困難と思われ た活動を十分になし得る潜在的生活能力を保持していると考えてよい。評価の面から考えた場合,
「できる」「できない」との二者択一的な評価の方法においては,上記の指示に従っての行動は,
「できる」の評価を受けるであろう。しかし,「生きる力の獲得」をめざした教育的観点から生徒
を眺めた場合,そのような単一的な評価ではなく,生徒の行動の裏にひそんでいるものに注目しな o
ッればならない。
我々の眼前に展開される生徒の生のものを評価するとともに,「行動の妨げとなっているもの」
にまで焦点をあてなければ評価の持つ教育的妥当な意味は失われてしまうであろう。しかも,実際 の指導において何ら生かされることのない,評価のための評価に終ってしまう危惧がある。
校外学習でみられた生徒の行動は,他からの指示によってが多く,そこには,自分から意図し,
課題に取り組むという積極的な内容を含んだ活動はほとんどみられない。
2.意図し,努力すること
学習のめざすことは,ただ単に機械的に知識だけを教えこむことにあるのではなく,課題に対し て取り組み,努力し,解決することにあり,結果よりもむしろその一連のプロセスに評価の観点を 置いているのである。教師の役割りは,生徒自らが意図し,努力し,解決するための援助者にすぎ
ない。
前項で「教育的な内容を含んだ行動がほとんど見られない」と述べたことは以上のことにあり,
主体(児童・生徒)がかかわって,はじめて教育的価値を含むことになる。
生徒は,指示によって活動するという受動的な行動を成育過程において余りにも多く経験してき たために,意図し,努力する能動的な行動を自己の枠内に封じ込めたまま成長してきた感が強い。
又,従来,神経・生理学の分野で扱われ,実証されてきた「場面が変わることにより,以前可能 だった行動に停止が見られる」というような精神薄弱児の特性の一つとして扱われてきた事柄につ いても,教育現場では,十分検討吟味し,数多くの生活体験の場を与え行動の安定を図る課題があ るように思われる。
3.積極的な行動を自己の枠内に取り込むためには
アクティブな行動を自己の枠内に取り込むためには,課題の解決を意図し,努力することにより 得られ,学校におけるその援助者は,教師であり,家庭においては主に母親となるわけである。前 述のようにその援助は,生徒の実態に合ったものでなければ,能動的な活動を促すことはできず,
指示によってしか行動できないという傾向をますます強めることになる。そのために,教師・母親 が共に生徒の実態をは握し,ありのままを評価するとともに,生徒自らが課題解決のための状況を 見通し,意識できる過程が大切のように思われる。そうすることによってはじめてアクティブな行 動を自己の枠内へ取り込む第一のステップが得られるのではないかと考えている。
その方法としては,多くの援助が得られない場面に生徒を追い込み,その中でどのように課題に 取り組み,解決への努力をはからせるかという活動の展開を試み 生徒の主体的な働きかけによっ て,どう課題を解決するかの手だてを探ることにした。
4 校内宿泊学習について
(1)経 過
学校内の設備が整いはじめ,宿泊が可能となった昭和55年7月,第1回の校内宿泊学習を行 った。さらに,その年の工0月,第2回校内宿泊学習を実施し,56年度の,4月,7月の実施を 含めて,第4回校内宿泊学習まで実施している。
施設は,調理実習室,高等部研修室(11畳),和室(20畳)等を利用し,それに,小学部,
中学部,高等部の浴室(各工)を使用した。調理に必要な買物は,学校近辺のスーパーマーケッ トなどの商店を各グループごとに利用していたが,便利さと品物の豊富さから,現在では全グル
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一プが同一のスーパーマーケットを利用している。
活動の内容は,第1回校内宿泊学習から第4回校内宿泊学習までほとんど変化はみられなかっ た瓜卒業,入学と昭和56年4月を境に中学部在籍者数が16名から12名に減り,それに伴い,
生徒の実態にも変化があらわれている。
調理場面での夕食の献立は,第1回校内宿泊学習から第3回校内宿泊学習まで生徒の選択に任 せた。選んだ献立は,生徒が校外での学習で経験し,最も嗜好が強いと思われるカレーライスを 選んだ。第3回校内宿泊学習後は,家庭における調理の指導が頻繁に行われている様子がうかが われ,第4回校内宿泊学習では,カレーライス以外の調理を計画し,実施した。生徒が選んだ献 立は,ハンバーグ,野菜妙めであった。
「第2回校内宿泊学習」までは,活動を評価する場面が,調理場面のみであったが生活評価の 観点を広げることにより,生徒個々の実態を多面的,総合的には握できるよう,入浴,就寝準備,
を加えることにした。しかし,今回,紙数の都合で,本稿では,主として調理場面にしぼって詳 細に評価にかかわる点を述べていきたいと思う。
校内宿泊学習は,家庭を離れての宿泊を伴う学習であり,火気や壊れ易い物を扱うため,全校
をあげての協力体制のもとで,安全や健康に対して十分なる配慮を払った。 /
(2) 生徒の実態表(第4回校内宿泊学習)
グル 生 徒 の 実 態
一プ 氏名 性別 学年 IQ グループの実態
言 語 活 動 そ の 他 細かい指示に従 質問されても応答は余りみ 好きなこと以外は活動が不
Aグ OH 男 2 43 った行動がとれ られず。言語不明りょう。 活発。
ず,手をそえた 言語は不明りょうであるが 自ら進んでの活動は余りみ
ノレ OY 女 1 37 援助が必要。 会話にはならない。 られず。指示により動く。
1 測定 言語表出は乏しく,おうむ 電気のソケットなどに興味
プ MK 男 3 不能 返しが多い。 を示す。
自分を中心とした話し方で 肥満で動きが鈍い。人に命
OM 女 1 37 相手を意識した会話は不得 令するが自ら動こうとはし
意。 ない。すぐにすねる。
B 発語までに時間がかかる。 動作が緩慢。能力はあるが
グノレ NN 男 1 52 細かい指示によ 言語に不明りょうさがみら 黷驕B
自主性に乏しい。
1
り活動が可能。
言語を媒介とした活動が目 消極的な面が薄れ,活発な
KS 男 2 34 立ってきたが,不明りょう。 活動がみられるが,集団へ
プ 「ぼくが」を連発。 の参加はまだ不十分。
不明りょう。自分を中心と 他の生徒の面倒を見る。指
KY 男 3 46 した会話。 示の理解に乏しい。
言語活動は内容も豊富であ 活発に活動をする。グルー
C KT 男 1 48 り発音も明りょう。 プを明るくしている。
大まかな指示を 発音はや、不明りょうであ 好きな課題には,積極的に グ SK 男 2 40 必要とするが, るが,言語活動は活発。 取り組み活動できる。
ノレ
測定 工夫した活動が 発音不明りょう。言葉使い マヒのため身体のバランス
i KN 男 2 不能 できる。 はていねい。 悪い。他への面倒みよい。
プ 測定 言葉使いは乱暴である。発 他の生徒に指示をし,自ら
IK 女 2
不能 音はや、不明りょう。 も活発に活動する。
Dル 一人で活動でき 言語において何ら支障はみ すべての面で積極的に取り
捗 SS 男 3 68 る。 られない。 組む。学部のリーダー。
(3)活動の計画(第4回校内宿泊学習)一活動総時数 16時間(1単位時間50分)一
① 事前の活動(2時間)
主な活動 。事前の日程の説明や各場面での注意事項を聞く。 (全体活動)
。夕食の献立をたてる。 (グループ活動)
・材料(種類・量) ・調理の方法,手順 ・調理器具等
配慮事項 。事前学習を行う前に朝の会等で調理に関する活動を話題にしたり,「生活の記録」
(家庭への連絡帳)で献立の内容を連絡することにより事前学習への動機づけ をはかった。
② 事中の日程(1泊2日 12時間)
第 一 日 目 第 二 日 目
8:50〜13:15 通常の日課 6:00〜7:00 起床・朝食
13:15〜13:40 清 掃 荷物整理
13:50〜19:00 買物・調理 11:00〜11:30 調 理 19:00〜21:00 入浴・就寝準備 11:30〜11:50 休 憩
21:00 就 寝 11:50〜12:30 昼食(学校給食)
13:15 下 校
※費用 1000円〜食事材料費(2食分),雑費
③ 事後の活動(2時間)
主な活動 。調理場面のVTR視聴(全体活動)
配慮事項 。友達の活動や自分の動き等に気付かせる。
5.記 録
(1)観察場面での留意事項
校内宿泊学習は,指導の形態として従来,生活単元学習で行なわれているものと何ら変わるこ とがない。指導内容においても,校内宿泊学習は,仕事,役割,きまり,金銭等生活単元学習の 内容を含んでいる。又運用面においても,作業単元学習とはあまり異った点はみられないが,
教材の組み方,迫り方等においては,多少異っているものと思われる。
校内宿泊学習を総合的な学習形態として取り上げた場合生徒の意欲的,主体的活動を引き出 す上で,指導場面に見られる教師の援助は,極力控えるという指導の方法をとっている。そのね
らいは,活動場面でのグループ及び生徒個々の実態のは握,課題解決等のプロセスを含めて,評 価を明確にすることにある。言語指導等による援助が多いと観察者である教師のみならず,課題
に取り組んでいる生徒までが混乱し,どこにつまづきがあるかを見失っでしまい,評価自体があ いまいになってしまうことは,学習においてしばしばみられるところである。そのため,明確な 評価が得られるよう次の2項目を観察における基本的な視点とした。
● ● ・ ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ ・ o
A けがややけど等の危険が予想されない限り,又は生徒からの質問がない限り教師からの援助 は,さし控える。 (活動を規制しない)
. ■ ■ o ● ■ ● ● ● ● ● ■ ● o ■ ●
C 客観的な態度で生徒の活動を見守り,表出した行動だけをありのまま観察し,記録する。(生
、
4
菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動(調理活動)の評価法に関する試み 161
の行動現象を中心に)
(2)記録の方法
① VTRの活用
図1 調理場面及びVTR配置 VTR機器2台を使用して,調理実習 室での食事作り,配膳,後片付け等を記 録する。図1は,第4回校内宿泊学習で のVTRに配置図で固定カメラは,特定 ハ_ンディカメラ グリレ_プ(Aグル_プ)を対象に.、ンデ
イカメラは,Aグループ, Bグループ,
Cグループ,Dグループの4グループの 活動の様子を記録する。
、固定カメラ
② 行動観察表
校内宿泊学習における買物,入浴,就寝準備の場面観察に用いられるが,調理場面の記録に はVTRとともに用いられる。生徒個々の活動の様子を時間の経過に従って記入する。又,生 徒個々の活動をありのままにとらえるために,項目は, 「時間」 「生徒名」 「活動内容」 (教 師の指示内容も含む)と簡単に押さえ,次のような記録例を整理して,実態の傾向をは握する
ことに努めた。記述された結果を,単に横断的に捉えるのではなく,そこに至った過程を縦断 的に捉えることを評価は意図していることから,数多くの客観的な資料が必要とされる。
表1観察場面圃 観賭茨木 7月9日
時 間 生徒名 活 動 内 容 3:37 作りはじめてよいことを指示する。
3:55 豆腐とそぼろ納豆はわるくなるので冷ぞう庫に入れることを指示。
OH 豆腐の入っていたビニール袋(水が入っている)をそのまま調理台の上におく。
三人共何もしないでいる。
4:0ユ 石川先生から指示がある。「OH班長だろう。何をやるかみんなに言いなさい。わからな ければMKくんになにをやるかききなさい。」
4:04 OH プリントを手渡す。
3:00 OH 買い物袋から品物をとりだす。OY手伝う。
3:37 OY もやしの袋をあける。流しの戸びらをあける。しめる。
4:01 OH 中華なべをだして「これという」一フライパンの方がいいことを指示。
フライパンをガスコンロの上にのせる。
4:02 わからないことを聞くように指示する。
4:12 OY ガスを点火しようとするが,つまみをさわっているだけ。
③ 家庭における日常生活経験調査用紙(別紙参照)
校内宿泊学習の事前に用紙を配布し,生徒の家庭における経験の実態(広まり,深まり)を 調査する。記入者は,主に母親が行っており,記入内容から生徒に対する家庭のかかわりの様
子などをうかがうことができる。ただし,傾向として,母親は 子供の持っている能力以上に 高く評価する傾向にある。たとえば,経験をさせてもいない項目にまで「できるであろう」と いう推測で記入していることがたびたび見うけられる。評価項目に正確に記入されていない場
合,生徒によっては,指導上過重になったり,混乱することもあるので十分に留意する必要が 」
ある。
評価項目は,生徒が日常生活の中での経験の頻度の高いと思われる活動場面を「洗顔」 「衣 服の着脱」「入浴」「洗たく」「就寝・起床」「掃除」「調理」「配膳」「食事」「片付け」
の10項目に分け,さらにそれらを53の小項目に分類した。
評価段階は, 「一人でできる」「指示がわかりできる」「できない」「まだ経験したことが ない」の4段階評定法とした。
この家庭における日常経験調査のほかに,家庭における生徒の日常生活状況を調査するもの として,VTR視聴感想文や入浴場面実態調査表などがある。
他に,日常の学校生活及び家庭生活の様子を連絡し合う「生活の記録」等も含まれている。
これには,校内宿泊学習実施前後の家庭における調理や入浴の指導の様子,校内宿泊学習を経 験しての生徒の感想などが具体的に書かれており,生徒の活動の評価には重要な資料となって
いる。
6.課題解決の手だて
(1)調理場面における活動の様子(第4回校内宿泊学習)
表2 Aグループの活動の様子
[Tコ生徒の活動
時間 教師の指示内容 活 動 内 容
OH (2年男) OY (1年女) MK (3年男) 1活動の継続
3:37 「始め」の指示 い す に 座 っ た ま ま
1
3:55 豆腐・納豆を冷蔵庫 袋から豆腐を出して調整 1
に入れるよう指示 台の上におくだけ 1 1
i 1
4:00 献立表を渡す 渡された献立表を見ている 1 1
買物袋から品物をとり出す i
1
もやしの袋をあける。
しの戸 1
中華なべを出し「これ」と
4:02 フライパンの方が良 言う 1
いと指示 フライパンを出しガスロ ガスを点火しようとする 1
の上にのせる がつまみにさわるだけ 4:07 わからないことは聞
くように指示 1 1
ハンバーグをパックから 1 1
出し手のひらにのせている 1 1
F
菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動(調理活動)の評価法に関する試み 163 」 [ 1 画
己
h l
「ハンバーグどうする」と 8 1
ガスに火をつけ,フライ
教師に聞く 8
パンに油を注ぎノ・ンバ 1 1
4:12 一グを入れることを指 ハンバーグをパックに戻す 1
不一
ガスの元栓をあけようと つまみから手をはなし nHの手もとを見ている
コ,プで1水を飲む
コンロを手前に寄せ するがあかない 1
て栓をあけやすくし 1 1
てやる 1
栓を開ける 1
1
教師に「油」と言う 1
1 1
4:17 教師用調理台にある
アとを指示 油を持ってきて袋からと 1 i
り,フライパンに注ぐ
4:22 ガスに点火
ハンバーグを手でフライ
パンに3コ入れる 1
強火のままなので火
を弱めるよう指示 1
火をとめる
はしを見つける 1
フライ返しを渡す \
フライ返しでハンバーグ 1
を返す 1
4:28 ハンバーグを先に焼 「ごはん」と教師に言う 1
くよう指示
ガスに点火するが弱火 1
弱火にするよう指示 にしようとはしない フ
1 ラ
フライパンのブタを 1
フラ
あけのぞく と
1
4:34
こげると食べられな
フライ返しでハンバーグ 返す
で
P ある
いことを伝える i く
4:36 OYのそばに立ち見て
いる ガスを止める
1
4:41 皿を持ってきてOHのフ
1 ライ返しをとり返しもる 1
1
4:42 1 を してもやしを
1 け流しに行き水を 1
1 れる。そのまま, 1
ガス台にかけ,ひき
だしからはしをだし 1
1 て時々かきまぜる 4:54 「次は何をするのか」 はしを受けとりかきまぜ OHの眉をたたき,
ヘしを渡 1
をことばかけする る 「やって さい」と 1
4:56 MKに米をとぐよう MKに指示す 1
に指示 1 だしの袋をあけよう
1 OYに包丁を渡す 1 とするがあかない
5:00 丁で袋を切り袋の 1
中身全部を入れる 1
みその量を指示 1 1
1 のグループから
1 噌を持ってきて,全 1
MKに電気釜を持っ 部入れようとする
5:07 てきて米をとぐよう
ノ指示 みそ汁の味見をする
米をかごに入れ,流し ナとぎはじめる。
みそ汁の味見をする MKにとぎ方の指示
曽
5:15一 コードをさしこみスイ
ッチを入れる
表3 Bグループの活動の様子
教 師 の 活 動 内 容
時間 指示内容 KY(3年男) NN(1年男) KS(2年男) OM(1年女)
3:40 「始め」の指示 米をポールに2 他の生徒を見ている キュウリを手でΨ ェに折りK.T,0.
の に菖。回 ナ指示し自分か
合入れる ら動こうとはしない
Mに注意を受ける 1
1 2合でよいかと
@ に尋ぬる
米を全部(8合)
?黶Cとぎはじ 包丁でキュウリを輪切りにする 1
KY める
KYよりポール
をひったくり,水 4:10 KS, NNが切っ
スキュウリをボー ュに入れかきまぜ
道を独占して米 とぎはじめる 閧ツきはよい OMに米とぎは
4:25
「もうよい」と言う 人参の皮をむか いすに腰かけ切ったキュウリを 教師に「よい」といわ黷驍ワでといでいる 調理台に並べる
ずに乱切りする
水加減を指示 1 水加減を尋ねる
1
1 電源のあるところを
1 見つけ電気釜を運ぶ。
1 スイッチを入れるが
保温を押しているの
1 で教師に指示され直
キ
5:00 野菜妙めの役割り 生しいたけ,もやし,キャベッ,人参玉ねぎを洗って切る
を分担する 玉ねぎの皮むき
1 1 を懸命にする
トマト切り手早く 油をしいて,いたあ始める 形よく切る
1 緊張気味で額に油
廷磐妄渉豫
1 憩をとる
5:20
表4 Cグループの活動の様子 活 動 内 容 時間 教師の指示内容
IK(2年 女) SK(2年 男) KN(2年 男)
3:50 「始め」の指示 心となり活動の内 容を皆に指示 ボールに水を汲み,キャベ
tを一枚戸枚入札洗う キャベツの葉を包丁で切
驍ェ途中から手でちぎる 智欝哩配鋲
を拾っている 4:00
KNが米をこぼしたのを見て「まぬけ」と非難する
フラフラと出歩く 米ととぐ分量は2合
4合にするよう 程度 1
指示 IKとかわってとぐ 1
1
水加減をみる 購重麟響
炊飯器をセットし,コンセントをさし込み,スイッチを入れ,点 火の確認まで,3人で協力して行う
ガス台に鍋をかけて,点火ナベのかけ方良好 こぼれた米をはく
舞
沸いたお湯にハンバーグを入れ,IKがSKに 1 4:25 「これでよいか」と尋ねSKは「よい」と答え
る 9
・ 、ち し,みそ゜の 備をする
@ 1
1 1
菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動(調理活動)の評価法に関する試み 165
4:35 「夕食のみそ汁 教師の質問に対し,具が貝であることに気付かない 1
は何」と尋ねる 1
ハンバーグができあがり,袋に入ったまま皿にのせる 1 SKを見る 袋に気がつき包丁で切 1
って,袋からハンバー
グを皿に出す 1
1 1
1
4:40 野菜を洗い切る
フライパンの油をのばす
フライパンをガスにかけ油を入れる
臨雛鍵2器K
4:48 野 菜 を 妙 め る
@ 1 1
4:55 貝を洗いみそ汁作りを再びはじめる
1 貝の砂ぬきしてあ
?驍アとを伝える 脇縮欝まい」 1
1 鍋に水と貝を入れ火をつけ,みそを入れる 1 貝が煮えないうちに味見をし,「これでよい」と言し、互いにうなづきあっている
「お腹が痛くなる ゥら」と辞退
煮えたみそ汁を他のクツレーフのところに味見をす 味見をしてと教師のとこにみそ汁を持ってくる
2回3回と味見をしている るよう盛んに待ってゆく
5:05
表2〜表4は,グループ内での活動の様子をまとめたものである。Aグループ, Bグループ,
Cグループの活動の状況を比較してみると,3グループが互いに異った活動内容を示している。
特徴を大まかにとらえみると,Aグループは,課題への取り組みが弱く意図した活動がみられな い。Bグループは,調理の流れと関係なく,各自が課題に取り組みという動きである。 Cグルー プにおいては,各自が協力して課題へ取り組む状況が生まれてきている。このような3グループ のそれぞれ異った活動は,グループの実態からみて活動前から予想されたことである。
第1回校内宿泊学習から第3回校内宿泊学習での調理活動場面では,社会的行動力において比 較的等しい生徒同志がグループを組むなどの形態をとおしての活動を展開した。グループ内の生 徒の能力が接近していることから,生徒がそれぞれに課題へ取り組む反面,グループの協調性に は欠けるではないかと思われたが,実察の場面ではリーダーとなる生徒が自然発生的につくられ,
その生徒を中心としたまとまりある活動を展開することができた。
このことは,グループという大きなまとまりをもった評価の指標と考えている。しかし,個人 内の差異に焦点をあてた場合,課題を解決するための手だてとなる評価の視点は,はっきりとと
らえることができなかった。全体的に生徒の活動を観察してみると,そこには,言語活動と経験 の度合を基とした状況が予測されるのである。第4回校内宿泊学習において,これらをより客観 的に捉えるため,活動面での諸能力がより接近したグループを編成して考察を深めることにした。
(2)グループにおける言語活動
Aグループ 言語,身体表現によるコミュニケーションがほとんどみられず,指示言語が一回 されただけで3人の間では,会話が全然交されていない。
生徒個々の様子であるが,OMは,事前学習で自からグループ長に立候補している。そのせい か,いままでの校内宿泊学習を通じて最も活発な活動を行ったが,自分からの課題への取り組み はみられず教師の指示に従って動くのが精一杯である。
OYは,指示されれば活動する。それまでは指示を待ってじっと立っているだけであるが,仕 事の内容は理解している。常に調理台から離れずすぐにも活動にかかわる様子を示しており,指 示が与えられればOM以上に活発な活動を展開している。
活動全体を通じてMKの行なった仕事は,教師に指示をされての米をとぐことと電気釜のプ ラグをコンセントにさし込むことだけである。それ以外ほとんどの場面でイスに座り.あたりを きょろきょろと見回しているか,ふらふらと出歩いているだけで,他の二人が活動していること など全然眼中にない様子である。不思議と食卓には一番最初につき配膳を待っている。
このように,言語活動がほとんどみられなかったAグループは,目の前に提示された課題への 取り組み方について話し合うこともなく,ただ3人がうろうろしているだけである。その状態は,
まさに他からの指示を待っている姿である。
「わからないことは聞くように」と言語活動による課題解決の手だてを暗示したが,それに対 する反応は,数回繰り返すことによってはじめて得られた。しかし,その課題の解決をみると,
またうろうろという状態になってしまっている。
Bグループ 生徒個個の課題への取り組みは,活発である。そのため,一見役割りを分担した 能率的な活動を行なっているように見えるが,それは興味のある仕事に熱中しているだけで,そ の活動が最終的に食事に結びつくという概念にたった内容は伴ってはいない。
たとえば,NN, KSの2人は,キュウリを輪切りにする作業を夢中で行ったが,それが終了す ると次の活動に入ろうとはせずに切ったキュウリで遊びはじめ,教師の次の指示が与えられるま で延々30分以上も続いている。
OMは, Bグループのリーダーに立候補した。誤ったリーダー意識が強く,他の生徒に命令口 調で指示をするが,自ら活動しようとはせず,イスに座りっぱなしである。自分の興味のある活 動となると他の生徒から奪ってまで行ない,NN, KS同様,他からの制止が入るまでいつまでも 続けている。
KYは,他の3名と異なり,いままでの経験を基とした活動がみられ,わからないことは教師 に聞くという場面が見られている。その活動も他の生徒を加えての協力をしながらの活動にまで にはいたらず,自分一人だけの活動となっている。
Aグループ同様,活動に関する会話は,ほとんどなされておらず,生徒が個別に活動し,言語 を媒介としての協力した作業を進めることは行なわれてはいない。そのため,教師の指示の回数 も多くなり,詳細な作業内容の説明を必要とした。
Cグループ 1年のKTが発熱のため参加できず3名の活動となった。 KNは,活動開始早々,
米を床上にこぼし,他の生徒の非難を受け,活動に入るきっかけを失ってしまった。そのため,
調理に関する活動のほとんどは,IKとSKの二人で行なわれた。
菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動(調理活動)の評価法に関する試み 167
IKとSKは,共に言語に障害を持ち,語意の聞きとりに困難さを感じることが多い。活動の 中では二人とも,言語の不自由さを意に介さず,互いに煩雑に会話をかわしており,わからない 活動内容を教え合い,さらに解決が困難な課題に直面したときには,すぐに担当教師に質問をぶ っつけ,課題の解決をはかっている。このようにしてIKとSKには,次から次へと課題への自 主的な取り組みをみせ活動の中断はほとんどみられなかった。
KNは,ほうきとちり取りを持ってきてこぼした米の後始末をしていたが,ぐずぐずといつま でも終ろうとせず,調理台に寄りかかりながら二人の活動をみているだけである。みそ汁の味見 をするときにやっと活動に加わり,それ以後,配膳や食事の後片付けなどグループのメンバーと
してスムーズに活動できた。A, B両グループに比べ,活発な活動を展開しており,生徒の間に かわされる会話は,むしろ騒々しい感じさえ受けるが,その活発な言語活動に比例して,調理の 活動も進み,1時間以上も他のグループより,早く食事の準備ができている。
(3)課題解決としての言語活動
言語の働きを評価する場合2つの観点があるように思われる。1つには,語いの豊富さや発音 の明りょうさなど言語そのものをとらえての国語科の観点であり,2つには,主体によって言語 がどのように用いられるかという心理学的な観点からである。本稿で述べている調理場面での言 語活動に対する評価の観点は,後者となる。
調理学習は,生徒にとって日常習慣化された活動ではない。さらに,教師からの積極的な援助 を受けず,3人から4人の生徒でグループを編成して取り組むわけであるから,活動に対する生 徒の不安は,観察者の予想をはるかに越えるものがある。
このような状況の下でまず生徒同志の結びっきが行なわれるであろうと予測したが,言語表出 に乏しいグループほど活動のまとまりが得られず,グループとしての機能はほとんど果せないで いる。このことは,言語表出の少ない生徒ほど,他の生徒や教師への働きかけ,質問等ほとんど 行なわれず他からの援助を待つという消極的な行動しかとれないからである。反面,言語表出の 活発な生徒は,発語は不明りょう(構音障害)であるが,活発に言語を用いて,他の生徒や教師 へ働きかける課題意識を持っている。それがグループに反映して,志気を高め全体として活動を 活発なものとしている。
言語に関する能力がどのように高いものを持っていたとしても,それが必要に応じて表出され なければ,言語の持つ本来の意味は,生きてこないであろう。意図し,努力して課題を解決する 手段として,言語活動を活発に発揮できるように,一人ひとりのもつ内的言語を引き出していた いものである。
(4)言語活動と経験の度合を基盤とした活動とのかかわり
言語活動が一連の課題解決の手だてとなることを評価の側面として述べたつもりであるが,常 に言語活動のみで課題解決の手だてときめつけることはできないであろう。校内宿泊学習を通し て現在までわかってきたことは,言語活動が経験を基盤としていることが,生徒個々の活動から その状況をみることができる。
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菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動 (調理活動)の評価法に関する試み 169
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MK(表5),OH(表6),KS(表7)は,毎回同じ動きを繰り返し,活動に固執する傾向 が見られる。これらの生徒は,調理活動の開始とともに,先に経験した活動のみにとどまり,そ の活動が終了しても新たな活動への移転はみられない。このことは,経験によって自己の枠内に 取り入れた活動を行うことによってのみ安定した状態を保ってしまう等の行動特性によるものと 思われる。そのため,安定した状態から離れると新しい取り組みができず,ふらふらと出歩くか,
指示を待ってじっと立ったままでいることが多い。又,言語活動が高いわりには,調理活動に不 活発の生徒もいる。
生徒の経験度合からみた諸活動の特徴をさらに,「経験の拡大,経験の系統化」といった観点 から考察をすすめてみると,次のような傾向がは握できる。
(5)課題解決の手だてとなる経験の拡大
経験を基盤にし,課題を解決する手だてをとおして必要とされることは,経験を積み重ね,経 験を拡大させ,その系統化が考えられることである。
経験の積み重ねは,精神薄弱児の指導,特に日常生活の指導において一般的にとられる方法で ある。課題によっては,かなりの効果をあげることができるが,指導に多くの時間がかかるため に,ややもすると評価の結果が単に時間や回数にのみとどまる傾向が強いのである。主体がいつ のまにか,なおざりにされ,結果的には,指導による発達か,年齢的な発達によるものか,曖味 な評価しか得られない場合が多い。そのため,経験の積み重ねからの評価は,次の機会にとりあ げることにする。
表8は,56年度に入学した生徒の日常生活での経験の変化の推移をは握し,評価するための 資料として掲載したものである。KT, NN 2名のプロフィールを包括的にみると,第3回校内宿 泊学習後,前回の調査に比べてのぞましい状況の変化を見出すことができる。
NNは,知的活動に活発さを示し,調理に関する活動の内容を理解する能力を持っているが,
第1回の家庭における実態調査での「調理」の項目がすべて3と4の低い評価の段階にあった。
NNは一人子で,家庭では,教科を主とした指導が熱心に行われ,調査に関する活動に携わる経 験の少ない生徒である。しかし,NNにとっていままで未経験の分野であった調理活動(第3回 校内宿泊学習)の様子については,観察者(本多)から次のように記録が示されている。「2・
3年生に劣らず野菜を切ったり,皮をむいたり等の活動が見られた。ただ包丁の使い方など技術 的な面において経験の不足が感じられた」等。又,母親の感想として「家でまったくやったこと がなく,すべてのことがはじめてです。グループのなかでは一番活動したと思います」 (第3回 校内宿泊学習VTR視聴感想文)とある。しかし,このような活動を行なったNNであったが,
「なかなか動きません。無理にやらせようと思えば動きますが家では難しい」という家での様子 を述べているが,これは家庭環境からみて当然のように思われる。反面,「自分一人でご飯を盛 ることができる」「包丁を使おうとする」という様子も報告されているので,家庭におけるかか わり方が改善されてきているとみている。
KTの第3回校内宿泊学習調理場面における活動も,はじめての経験にもかかわらず積極的で あった。VTRを視聴した母親からも「よくやった」との感想を得ている。以後,家庭で「カレ 一ライス作りをしている。
NN, KTともに校内宿泊学習において未経験だった調理を経験することにより,それまで自
菱沼他:校内宿泊学習における生徒行動(調理活動)の評価法に関する試み 171
己の活動の範囲外であった分野にまで目を向け,興味を持って取り組み,活動の高まりをみせて
いる。
表8 第1回,第2回の生活経験(調理)度による比較
〈KT> 〈NN>
家庭における日常生活経験
イ査 第 1 回 第 2 回
家庭における日常生活経験
イ査 第 1 回 第 2 回
評 価
?@目 1 2 3 4 1 2 3 4 評 価
?@目 1 2 3 4 1 2 3 4
ガステーブルが使える ガステーブルが使える
調 包丁を使って切る 調 包丁を使って切る
米 を と ぐ 米 を と ぐ
理 米の水加減をする 理 米の水加滅をする
電気(ガス)釜が使える 電気(ガス)釜が使える
準 食器をならべる 食器をならべる
備 ご は んを も る 準 ごは んを も る
み そ 汁を も る 備 み そ 汁を も る
片 食 器 を 運 ぶ 食 器 を 運 ぶ
付 食 器 を 洗 う 片 食 器 を 洗 う
け 食 器 を ふ く 付 食 器 を ふ く
食器を片付ける け 食器を片付ける
日常生活経験調査用紙による第1回の調査 56.4 評価 1.1人でできる。 2.指示がわかりできる。
第2回の調査 5a 7 3.できない。 4.いまだに経験なし。
以上のように経験を自己の枠内に取り込めばそれを手だてとして,自分から取り組み,努力し 解決する等積極的な態度を身につけることができるのである。
(6)経験の系統化
一般的に活動を考えた場合 1つの活動が終るとそれで全体の活動が停止するものではなく,
それ自体発展を含んでいる。今回の合宿時の調理活動にしても,生徒は,事前での活動の内容を 受け,それをさらに高め,次の段階へ移行するという連続した活動であり,1つ1っの活動が意 味を持って系統化された活動の流れである。しかし,精神薄弱児にとって系統だった活動を行な
うには,困難さが見られるため,細いステップを組んだ学習法がとられている。これは,生徒の 知的障害の特牲からみて,理解できることではあるが問題は,この後活動状況をどう捉え,
価するかの見方にあるように思われる。ややもすると「できた」「できない」だけの機械的な評 価になってしまい,主体がどのようにかかわったかという活動の発端から終局に至るまでの一連 の評価が得られないままに結果を出してしまうなど,十分注意を払いたいところである。
「玉ネギの皮をむかずに切る」「油も入れず,野菜を入れ,カレー粉を乗せたまま火にかけて いる」「カレー用の肉を塩揉みし,さらに細かく切る」等カレーを作る場面でのできごとや「塩 のついたワカメを長いまま切らずに汁の中に入れる」「袋全部のみそをみそ汁の中に入れようと する」「水分がなくなってもみそ汁を火にかけている」等みそ汁を作る場面でのできごと,これ らは校内宿泊学習において毎回目にすることである。このような一見誤った活動は,系統だった 活動を経験せずに部分的な活動だけを経験したことによる,まさに,全体の流れからみて意味を なさない活動とも受けとれる。しかし,系統的な経験することによって「あくを取るためにボー ルに水を用意しておく」「タワシで新じゃがの皮をむく」など細い点まで気を配った活動が徐々
に見られてきたことも事実である。これらの活動は,校内宿泊学習経験を生かして家庭において も指導が行なわれたことの成果によるもので,指導のつなぎによっては,細い点まで配慮した活 動ができることを意味している。
生徒に1つ1つの課題を実際的に取り組ませ,それを解決する方向で活動を展開することは,
極めて重要な経験学習であると考える。さらに,重要なことは,活動の全体の流れを経験させる ことである。系統化された活動の経験は,ただ単に部分的に課題を解決するという評価のみにと どまらせることなし,生徒一人ひとりが課題の持つ意味を認識し,努力をはらって,活動してい るプロセスそのものが大きな意味をもっている。
お わ り に
本稿でとりあげた校内宿泊学習では,主体(生徒)が課題に対しどう取り組み,解決するという 手だてに対してどのような過程がみられたかを述べたものである。そこで得られた最大の特徴的傾 向は,生徒が自ら課題に取り組み,努力し,解決するという自主活動においては,全般的に乏しい という実態がより現実的な課題としては握されたことである。このことは,生徒の日常生活が「転 ばぬ先の杖」によって必要以上に取りまかれていることを実感として受け止めざるを得ない。しか し,生徒のかかわり合いの仕方によって,学習経験を積み上げていけば(家庭との連帯をはかるこ とを含めて)生徒自らの力で課題解決の手だてを発見していくことも可能であろうか。(P20から)
精神薄弱児の全人格的な発達をうながすためには,子供という主体が自らの力で課題を解決して いくことにあり,それに必要な指導の内容と方法が実態に応じて精選されることが肝要である。又 評価にしても,決して「できる」「できない」という短絡的な評価による指導ではなく,個人内の 評価目標を明確にしていきたいと考える。この点については,今回,十分な考察をすすめることが できなかったので今後の課題としておきたい。
最後に本研究をまとめ,検討していく中で,従来の教育課程からは見出せなかった評価視点が得 られたことである。「課題解決のための適切な働きかけ方」「役割りを分担しての活動のもち方」
等妥当な評価を引き出すためのねらいが,この活動形態から数多く指摘できたことも附記して結語 としたい。