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部隊と共にパトロールを始めたのである トルコ軍の攻撃を避けるため YPG の車両には米 国の国旗が掲げられ 米軍と YPG の緊密さが強調された さらにこれに追い打ちをかけるように 5 月 8 日 トランプ大統領は YPG に対する直接の武 器供与を承認すると発表した すでにイラクではモスル西部地区

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http://i-sugawara.jp/ シ リア ・クル ドへ の 武 器 供 与 に 踏 み 切 った 米 国 ラッカ奪還作戦をめぐる米国とトルコの対立がますます強まっている。 これまで取り上げてきた通り、トランプ政権は、オバマ政権の政策を引き継いでクルド民兵組 織YPGと組んでラッカ奪還作戦を進めることを決めたため、トルコ側の反発が強まっている。 トルコはYPGをテロ組織として指定しており、米国がISというテロ組織を倒すために、別のテ ロ組織を支援するのは受け入れられない、として米国に対して政策の変更を求めてきた。 しかし、その要望が聞き入れられないと見るや、トルコは4月25日、シリア北東部のYPGの 拠点を空爆し、18名のクルド人戦闘員を殺害した。これに怒ったYPGは、翌日トルコ南部の ハタイ県にあるトルコ軍の拠点に迫撃砲による報復攻撃を行った。トルコ軍側に被害は出な かったものの、シリア北部のトルコとの国境付近で、トルコ軍とYPGの軍事衝突がエスカレー トするリスクが高まった。 YPGとしては、北からトルコに攻撃されていては、南下してラッカを攻めることに集中出来な い。トルコのこの攻撃は明らかに、米軍とYPGの進めるラッカ奪還作戦を妨害する、もしくは 米軍にトルコの不満を示すための行動だったと思われる。 トルコは同時にイラク北部のシリア国境に近いシンジャールを拠点とする「クルド労働者党(P KK)」の拠点にも空爆をしているので、YPGとPKKが同じテロ組織なのだという従来の主張 を、米国に見せつけることも狙っていたのであろう。 しかし、これに対して米軍は4月28日、「トルコ軍とクルド人部隊のさらなる衝突を防ぐため、 米軍によるトルコ・シリア国境でのパトロールを開始した」と発表。トルコ軍とクルド人部隊の 衝突が、米軍の進めるIS作戦の妨げになるとの認識を示した。 これ以上、トルコ軍とYPGの衝突が激化するのを避けるため、米軍はYPGの部隊と共にシリ ア北部でのパトロールを開始したのである。 米国は、同盟国であるトルコ政府の要請を断り、トルコが「テロ組織だ」と主張しているYPGの

2017 年 5 月 15 日号

「ポストIS」のシリアをめぐる諸勢力間の抗争と取引

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http://i-sugawara.jp/ 部隊と共にパトロールを始めたのである。トルコ軍の攻撃を避けるため、YPGの車両には米 国の国旗が掲げられ、米軍とYPGの緊密さが強調された。 さらにこれに追い打ちをかけるように、5月8日、トランプ大統領は、YPGに対する直接の武 器供与を承認すると発表した。 すでにイラクではモスル西部地区への攻撃が始まっており、モスル奪還作戦は最終フェーズ に入っている。米軍は、モスル奪還作戦と同時にシリアのラッカ奪還作戦を進めることで、IS に対する圧力を倍増させることを狙っており、これ以上ラッカ奪還作戦を遅らせることは出来 ない、とトランプ大統領に迫ったのであろう。 こうしてトランプ大統領は遂にYPGに対する武器支援に踏み切った。米国がクルド人部隊に 供与するのは、重機関銃、迫撃砲、対戦車ミサイル、装甲車両や重機械などで、ISとの戦闘 には不可欠なものばかりだ。これまで自動小銃や弾薬程度しか受け取っていなかったYPG の士気を高めるのに十分なものだろう。 米政府は一応、トルコへの配慮から、クルド人部隊に供与されるのはラッカ奪還作戦に必要 な量の武器・弾薬だけであり、作戦終了後には余った武器・弾薬は回収し、供与した武器・弾 薬が横流しされないように追跡調査もしっかり行うこと、YPGにはラッカを占領させないこと等 を説明したという。 しかしトルコ政府の立場からすれば、どんな理由をつけられようと、米国が「トルコの敵」に 堂々と武器を供与するという事実に変わりはない。 ア サ ド政 権 の 統 治 を容 認 す るトランプ政 権 こうしたトルコの不満にも関わらず、ラッカ奪還作戦やその後のラッカ統治について、米国は すでにシリアのアサド政権に任せることを容認する方針のようである。 5月8日、アサド政権の外務大臣を務めるワーリド・ムアレム氏は、シリア内戦が始まって以 来初めて、「YPGを含むシリア民主軍がラッカを攻めてISと戦うことは正統な行為だ」と述べ て、シリア・クルドと米軍によるラッカ奪還作戦をシリア政府として支持・承認したのである。 トランプ政権は、シリア内戦後の国造り支援に関心があるわけではない。関心があるのはIS を打倒することだけである。ISがいなくなった後、ラッカやその他の旧IS支配地域を、誰が統

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http://i-sugawara.jp/ 治しようが構わない。すなわちアサド政権が再び支配しても問題はないという姿勢を、アサド 政権やロシアに水面下で示している可能性がある。 米『ウォールストリート・ジャーナル』によれば、欧米の外交官たちの間で、IS掃討後のラッカ の統治は、YPGからアサド政権に近い地元の議会に渡され、最終的には地元の議会が統治 の権限をアサド政権に戻すという手順が考えられているという。 5月11日にロシアのボドガノフ外務副長官は、「ロシアもISから奪還した地域の統治のため に地元の議会を発足させることに賛成だが、最終的なシリア政府の統治の妨げになってはな らない」と述べており、アサド政権に敵対する勢力への権限移譲には反対の立場を明確にし ている。 米国の軍・情報関係者は同紙に対し、「米軍はラッカに侵攻した後に地元の有力な部族の指 導者などを探して統治を任すことは可能だろう。しかし、すでにアサド政権はそうした詳細な情 報を持っているはずであり、彼らは当然自分たちに近い地元の指導者と取引し、徐々にこれ らの地域を取り戻すことになるだろう。我々は2020年までラッカにいるなんてことはないわけ だが、シリア政府はずっとあの国にいるのだから」と述べている。 米軍が支援するYPGはすでにシリア北部のマンビジュという町をISから奪還した後、この地 を支配するのではなく、アサド政権に引き渡す合意を結んでいる。米国の軍・情報関係者は、 このマンビジュでの合意が、ラッカ奪還後の統治に関する青写真になるとコメントしている。 アサド政権側としても、シリア・クルドYPGの協力が得られれば、旧IS支配地域の再統治確 立の近道になる。当然、YPGはその引き換えにトルコ国境沿いのシリア北部におけるクルド 人の自治権についてアサド政権側の合意を取り付けようとするだろう。 ラッカ奪還作戦の裏で、長期的なシリアの統治と、自分たちの利益確保のため、水面下での 交渉や取引がますます活発になってきているようだ。 始 ま った 米 軍 撤 退 後 を 見 据 え た 駆 け 引 き このようにみていくと、トランプ政権は、シリアへの巡航ミサイル攻撃を実施したにもかかわら ず、アサド政権に対する姿勢に変化はないことが分かる。4月6日のミサイル攻撃の直前の3 月30日、トランプ政権はそれまでのオバマ政権の政策を転換し、シリア内戦の解決のために は「アサド大統領の退陣はもはや優先事項ではない」と明言していた。

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http://i-sugawara.jp/ 同日、ティラーソン国務長官も記者会見で「アサド政権は存続すべきか」と問われたのに対し、 「それはシリア国民が決めるべきだ」と答え、従来の「アサド氏の退陣が不可欠」との立場を示 さなかった。 さらにその翌日31日には、ホワイトハウスのスパイサー報道官が、このトランプ政権の政策 は、「政治的な現実」を受けたものだと説明していた。 化学兵器攻撃のセンセーショナルな報道が浮上した後、トランプ大統領は「アサド政権に対す る見方が変わった」と述べて巡航ミサイルの発射にゴーサインを出したが、この軍事攻撃の 直後の4月9日、ティラーソン国務長官は米ABC放送とのインタビューで、「我々の一番の優 先課題はISISを敗北させることである」と述べて、この軍事行動によって政権のシリアにおけ る目標が変わったわけではない、との説明をしていた。 ロシアの同盟国であるシリアを攻撃したにしては、米ロ関係が決定的に悪化しなかったのは、 トランプ政権がロシアに対し、「アサド政権打倒を目指しているのではない。アサド存続を認め る」ということを水面下で伝えていたからなのかもしれない。 このままでは、アサド政権の存続は確実となり、シリア・クルドの勢力圏も拡大することになり、 トルコにとっては不利な戦略環境になってしまう可能性がある。 トルコがこのまま黙ってこの状況を受け入れるとは考え難く、時期を見て行動を起こすと考え た方がよさそうである。 トルコは4月中旬にシリア東部地域から50あまりの有力なスンニ派アラブ人部族の指導者た ちを、トルコ南部の町シャンルウルファに集めて、YPGに対する抵抗に関して協議をしたと伝 えられている。 トルコ軍は、ラッカの北のトルコとの国境の町タラビヤドに侵攻する準備を進めているとの情 報もある。タラビヤドは現在シリア・クルドYPGの支配下にあるが、アラブ人が多数派を占め る町である。 トルコは、この町を攻めることで、アラブ人とクルド人の対立を煽り、クルド人の統治に対する 「反乱」を起こさせようと考えている節がある。 トルコは4月19日に、シリアのアラブ人部族から構成する「東部防衛軍」を結成しており、タラ

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http://i-sugawara.jp/ ビヤド周辺の部族も同軍に参加しているとされている。YPG支配地域での「武装反乱」計画を 着々と進めていると考えることもできよう。 現在は、米国がIS掃討作戦のために軍を派遣し、様々な支援を提供して影響力を強めてい るが、米国がこの地から遅かれ早かれ出ていくことは間違いない。この地に住む諸勢力は、 そこまで計算に入れて、自分たちの利益を守り、もしくは拡大させるために、誰とどのような関 係を築くか、慎重に見極めながら複雑な駆け引きをしている。 「ポストIS」のシリアをめぐる諸勢力間の抗争と取引は、まだ始まったばかりである。 編集・発行人 菅原 出 発行日:2017 年 5 月 15 日(月)

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