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田北海道立北方民族博物館研究紀要第 18 号 Bulletin of the Hokkaido Museum of Northern Peoples 18: (21X)9) 資料紹介 北海道立北方民族博物館所蔵 ツァータンのシャマン衣装について中* 篤 Tsaatans'Shaman

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北海道立北方民族博物館研究紀要第18号 Bulletin of the Hokkaido Museum of Northern Peoples 18: 111-116 (21X)9) 〈資料紹介〉

北海道立北方民族博物館所蔵、 ツァ

タンのシャマン衣装について

篤*

Tsaatans'Shaman Costume of Hokkaido Museum of Northern Peoples

Atsushi NAKADA

This is a report about a Tsaatans' shaman costume (inventory number

H16.108) collected by Hokkaido Museum of Northern Peoples in 2004. This

set of costume is composed of 6 items: headgear, jacket, boots, drum,

drumstick and Jew's harp.

In this short report the external forms, accessories, sizes and materials

of them are described and meanings of them are briefly discussed.

はじめに 北海道立北方民族博物館では、

2001

(平成

13)

年度よりモンゴル北部でトナカイ飼育を おこなうツァータン注1) の民族資料を収集してきた。 現地では現在もシャマンが活動して おり(西村

2001)

、 シャマンに関連する資料の収集が可能な状況にある。 そのため、 当館 では、 協力者にシャマンの衣装や関連する道具類の製作を依頼し、 完成したものを

2004

(平成

16)

年に収集することができた。 本稿では、 これらの資料の概要について紹介する。 資料の概要 平成

16

年度収集のツァータンのシャマン衣装式(資料番号

H16.108)

は、

6

点の資料 (「羽飾り付かぶりもの」(斑料番号

Hl6.108.l)

上衣」(資料番号

H16.108.2)

靴」 (資料番号

Hl6.108.3)

、「太鼓」(資料番号

H16.108.4)

、「ばち」(汽料番号

H16.108.5)

「口琴」(資料番号

H16.108.6))

から構成されている。 これらに共通する情報は次のとおりである。 収集年月日:

2004

9

4

日(製作:

2004

2

月) 収集地:モンゴル国フプスグル県ツァガーンノル郡 製作者:

50

歳台男性とその家族 本資料は実際に使用されたものではないが、 収集当時、 製作者はシャマンとして活動す る母親と同居していたため、 実物と同様の形態と考えてよいと思われる。

*北海道立北方民族博物館学芸

.fl

(Hokkaido Museum of Northern Peoples) キード ツァタン、 シャマン衣装

Key Words Tsaatan, Shaman Costume

(2)

中Ill 北海道立北方民族博物館所蔵、 ツァークンのシャマン衣装について 各資料の詳細について 各四料に関する説明について特に記述のない場合は、 2004 年の収集時に製作者から直接間いた内容を中心に、 一部2006 年9月にそれ以外の複数の成人男性から得られた梢報に基づ いている。 なお、 本毀料は、 全体として 「屈」 を象徴している。 羽根飾り付きかぶりもの(資料番号H16.108.1) 長さ54cm、l立大幅16cmの帯状の布に羽飾りや紐が付けられ たかぶりもので、 後頭部で紐を締めて装滸するようになって いる。 羽飾りにはライチョウ(モンゴル語でcoiip、 以下同 様)の羽が24枚使用され、 帯部分の中央には人の顔の形が縫いこまれている。 耳の部分に は長さ約13cmの紐が3本付けられ、 その紐の先端には切目を人れて総状にした革片が装滸 されている。 幣部分の裏側には長さ16cmの白い布が2本、 耳と同様の紐が3本ずつ3束付け られている。 ]01-IANSEN (1997 /98)によれば、 1908年に収集されたトバの女性シャマンのかぶりもの にも「目」が縫いこまれていた (JOIIANSEN 1997 /98: 208)。 この 「目 」 は、 シャマンが 湿的な世界を見ている間、 シャマンの身体の周辺を監視するためのものと考えられる。 ま た、 この究料にはフクロウの羽が使われていたが` これは、 暗附で悪霊を発見し、 捕らえ て滅ぽすと考えられていたフクロウの特殊な能力の獲得を象徴している。 一方、 1960年代にツァータンの生業や文化についての調査をおこなったバダムハタンに よれば、 シャマンのかぶりものに縫い付けられた人の顔は、 チンギス ・ン時代 と戦い、 当地のシャマンに崇拝された英雄ゴナン・ オラルであり 羽飾りに もちいられるワシかエゾヤマドリの羽根は、 ゴナン・ オラトルの矢羽であると いう(バダムハタン1969: 27)。 上衣(資料番号H16.108. 2) 上衣は丈約100cm、 桁約73cm、 前開きで、 3ヶ所の紐で閉めるようになっている。 上衣の前面4ヶ所には、 紐の束が縫いつけられている。 まず、 両手の袖の部分に長さ約 40cmの紐が7本ずつ付けられ、 それぞれの先端には、 総状に加工された革が縫いつけら れている。 胸部の左右両側にも長さ約90cmの同様の紐束がある。 こちらは、 二つに分かれ た紐の先に、 左胸部のものは8本と9本、 右胸部のものは9本と7本の紐束が付けられた ものである。 さらに、 紐の基部にはテープ状の白い布が4本ずつ結びつけられている。 上衣の背面には、 まず、 背面中央部、 掠のすぐ下に長さ約70cm、 幅約10cmの幣状の布が 112

(3)

北面道ゞl北方民族博物館研究紀'災 第18-l} (2009.:l) 縫いつけられている。 布部分には二重丸の文様が一列に7つ 描かれ、 布の下端にはさらに先が二つに分かれた長さ約20cm の革の紐が付けられている。 次に、 同じく楳のすぐ下に付けられた紐には、 恥さ約1 1cm 幅約17cmの半円型の金屈板が結びつけられている。 そしてそ のすぐ下には、 円錐型の金具(長さ13.5~15.Scm ) が7つ付 けられている。 同じく半円型金屈板の下、 円錐型金具の両脇には、 前而と 同様の紐の束が縫いつけられている。 これら二つの紐の束 は、 長さが約100cmで、 向かって左側は帯状の白い布5本と紐 20本、右側は帯状の白い布7本、紐20本から構成されている。 さらに、 左右両側の肩の裏から肘の辺りにかけて. 切目を 入れた布が2ヶ所ずつ、 袖の裏には切目を入れた革片が縫い つけられている。 ]01-TANSENが調査したトバの女性シャマンの上衣には、 前 面に9本、 背而に29本のヘピを模した紐が付けられていた。 また、 上衣のJ,iにはフクロウの羽の束、 肩甲骨の間には鈴と 5つの輪が付けられており、 各輪には1り錐形の金具が3個吊 り下げられていたQOI-IANSEN 1997 /98: 205 )。 さらに、 背 面の右左両側に付けられた二つの鉄の輪には、 約lmの紐が 結び付けられていたQOI-IANSEN 1997 /98: 208)。 ヘピを模 した紐は、 シャマンを悪霊や他のシャマンの攻繋から護る働 きをしている(JOIJANSEN 1997 /98: 207)。 また、 背中の鉄 輪に付けられた紐は粟で、 飛ぶときに助けとなる(JOIIANSEN 1997 /98: 208)。 バダムハタンも同様に、 シャマンの服に付けられた房、 羽、 金具 などについて紹介して いるが、 彼はこれらをシャマンをあらゆる事態から守 るよろいとしている(バダムハタン1969 : 28)。 シャマン用履物(査料番号H16.108.3) 布製の股物で、 靴というよりは、 内/復きのようにみ える。 左右両方の両側中央には、 長さ1 2~15cm程度の テープ状の白い布4~6本と紐1本が縫いつけられて いる。 JOHA沢SENは、 シャマンは特別なプーツを股いてい

(4)

中田 北海道立北方民族博物館所蔵、 ツァータンのシャマン衣装について なかったとしているが 001-IANSEN 1997 /98: 205)、 バダムハタンによれば、 シャマ ンの 靴はカモシカの脚を表しており、 カモシカの革で製作し、 胴部にはカモシカの蹄を取り付 けるという(バダムハタン1969: 31)。 太鼓(費料番号H16.108.4)、 ばち(費料番号H 16.108.5) 枠の 部分に9つの突起を持つほぽ円形の太鼓 で、 長径が62.0cm、 最大厚が12. 5cmである。 雌シ カの皮が張られており、 表面上方には木が、 下力 にはシカの舟仔が赤い色で描かれている。 シカの 母仔はシャマンの乗物であり、 木は自然界(xa11raii) の象徴であるという。 枠の材料としては、 モミ (rauyyp)を使う注2)0 裏而をみると、 中央部に一本の取手(最大幅 6.3cm)がついている。 取手の上部に穿たれた窪 みには長方形の2つの穴には針金が渡され、 それ ぞれ直径約1 cmの金属製の輪が5個ずつ取り付け られている。 取手の」::から約16cmの部分に滞.がつ けられ、 そこに紐が結びつけられている。 紐の取 手近くの部分には白い布が結ばれ、 紐はその先で 2本に分かれている。 紐 の先端には、 総状の短い 布が一方には5本、 もう方には7本付けられて いる。 枠の内側上方、 取 っ手の両側には、 幅6.0cmの 針金がコの字状に取り付けられている。 それぞれ の針金には、 円錐形の金具(長さ5.7~7.2cm)が 3個ずつ取りつけられ、 白い布が結ばれている。 取手の輪と枠の円錐金具は、 太鼓を叩いた際に、 それぞれが別の音を出すための装骰になって いると思われる。 ばちは長さ23.5cmで、 太鼓を打つ部分には ヤギの毛皮が張りつけられている。 毛皮は、 可能であれば野生ヤギ(51IIrllp)のJI塁の毛皮 をもちいるが、 これには商く跳べるようにという謡図が込められている。 先端部に作られ た長さ6.0cm、 幅3.5cmの窪みには針金が渡され、 その針金には直径約 1 cmの金屈製の輪が 114

(5)

北海道立北方民族博物館研究紀要 第18り (2009.3) 4つ通されている。 この輪も、 太鼓を叩いた際に音を出す装骰であると思われる。 ]OIIANSENによれば、 太妓はシャマンの乗物、 ばちは鞭である(JOHANSEN 1997 /98: 208)。 バダムハタンによれば、 男性シャマンは野生ヤギ、 女性シャマンは雌シカの皮で太 妓を作り、 枠は落宙にあったカラマツを材料とする。 太鼓の表側の中央には、 男性シャマ ンは15の角のあるシカを、 女性シャマンは雄シカを描き、 両側に日月、 その中間に星、 下 方には9本のカラマツを描く。 ばちにはヤマネコの足の皮を張り、 その内側にはトナカイ の毛あるいは白いヒッジの毛で作った詰め物を入れる(バダムハタン 1969: 29)。 口琴(貧料番号H16.108.6) 日琴は、 この地域ではシャマ ンが催礼をおこなう際に)llいる 楽器である。 艮さ約10cmのII琴 本(本は木製のケースに人れら れ、 ケースには先端に総が付い た長さ約40cmの紐が5本、 テー プ状の白い布7本、 そして泊jさ 約11cm、 幅約8cmの袋が結びつ けられている。 袋にはアルツ (apu) (針娯樹)の船が入れら れている。

おわりに 本f.t料の材質や形態・ 文様の持つ意味などについては、 収集時に製作者とその周辺から 大まかな梢報を得ていた しかし、 それらの梢報と先行研究との間には食い近いがみられ る。 こうした迎いが地域的な変異によるものなのか、 あるいは時間的な変化によるものな のかfE3)については、 梢報払·が少ないため判断不能である。 今後こうした点を明らかにす るために、 再度現地を訪間し、 製作者やその周辺、 現役のシャマンなどを対象に補足的な 調究をおこないたいと考えている。 注 1. ツァータンとは モンゴル国北部のフプスグル県北西部、 ロシア連邦トバ共和国との 国境付近に住み、 J守猟とトナカイ飼育を主生業としてきた民族集団で 約40世帯200 人が、 約600頭のトナカイを飼育しながら季節的な移動生活を送っている(National -3

(6)

中田 北海道立北方民族博物館所蔵、 ツァータンのシャマン衣装について

Human Rights Commission of Mongolia 2005: 11)。 本来の自称 トバ」は、 モンゴ ル高原北西部のエニセイ川源流部に住むチュルク系民族の名称でもある(田中1994: 511)。 現在のモンゴル国とロシア連邦トバ共和国との国境付近で移動生活を送ってい たトバの一部が、 両国の国境画定によってモンゴル側に生活拠点を定めることになっ た。 彼らは、 モンゴル人によってツァータン(モンゴル語で トナカイを持つ者」の 意) と呼ばれていたが、 それが現在では自称にもなっている(西村2003: 47)。 2. 2006年の訪問時に聞いた製作者以外の複数の男性の話による。 3. 時間の経過に伴い、 多くの地域でシャマンの衣服の構成要素が消失している(ハル ヴァ 1971: 449-450)。 文献 バダムハタン,

s.

1969 フプスグル地方トナカイ遊牧民の生活形態のあらまし(その二)」田中克彦訳 「北アジア民族学論集」6:17-42. 北アジア民族学研究グループ 金沢大学法文学

部東洋史研究室:金沢(6a八aMxaTaH, C. 1962 Xoocroiitt u.aaTaH ap)lblH a氷6ai辺^blH

TO恥.ぬaaH6aaTap) ハルヴァ, ウノ

1971「シャマニズムーアルタイ系諸民族の世界像」田中克彦訳 三省堂:東京

JOHANSEN, Ulla

1997 /1998 The universe of Tuva shamaness representations of the shaman's spirits. Ural-Altaische Jahrbucher 15: 202-210.

National Human Rights Commission of Mongolia

2005 The Rights of National Minority: Research Report. National Human Rights Commission of Mongolia: Ulaanbaatar.

西村幹也 2001 トナカイ飼育民ツァタンにおけるシャマンの活動、 移動経路にみる世界観 モンゴル北部フプスグル地域における事例」国立歴史民俗博物館ポスターセッショ ン衰料 2003 ポスト社会主義時代におけるトナカイ飼蓑民ツァタンの社会適応 モンゴル北 部タイガ地域の事例」帯谷知可・林忠行編「スラプ・ユーラシア世界における国家

とエスニシティIl」JCAS Occasional Paper no. 20: pp.45-58, 国立民族学博物 館:大阪

田中克彦

1994 トゥヴァ」石川栄吉他編「文化人類学事典」p. 511. 弘文堂:東京

参照

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