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インフルエンザウイルス感染における肺由来エクソソーム内microRNAの同定と機能解析

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Academic year: 2021

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[課程―2] 審査の結果の要旨 氏名 前村 忠 本研究は、インフルエンザウイルス感染時に肺から放出されるエクソソーム内の microRNA(miRNA)の機能を明らかにするため、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のエクソソ ームに着目して解析を行い、下記の結果を得ている。 1. インフルエンザウイルス(PR8 株)感染マウスから継時的に気管支肺胞洗浄液 (BALF)を採取しエクソソームのマーカー蛋白質である CD63 と CD9 の発現量を western blot.で解析した結果、経時的に発現が増加したため、PR8 株感染時に BALF エクソソームが増加することが示された。 2. PR8 株を感染させたマウスの BALF エクソソーム内 miRNA のプロファイルをマ イクロアレイにて解析した結果、感染後経時的にエクソソーム内に誘導される miRNA の種類が増加すること、さらに PR8 株感染マウスと poly(I:C)を経鼻接種し たマウスのBALF エクソソーム内には共通の miRNA が存在していることが示され たことから、インフルエンザウイルス感染時のBALF エクソソーム内 miRNA は自 然免疫応答に関与する可能性が示唆された。 3. マイクロアレイの結果から選抜した miRNA について、マウスⅡ型肺胞上皮細胞 (MLE12)で機能解析を行った結果、miR-483-3p、miR-374c-5p、miR-466i-5p を導 入した細胞でウイルス感染時のIFN-β遺伝子や炎症性サイトカイン遺伝子の発現が 有意に増加することが示された。 4. miR-483-3p は、PR8 株のみならず季節性のインフルエンザウイルス株である A(H1N1)pdm09、鳥インフルエンザウイルスである H7N9、H5N1 亜型のウイルス を感染させたマウスのBALF エクソソームにも多く存在しており、BALF エクソソ ーム内への miR-483-3p の誘導はインフルエンザウイルス感染時の宿主応答として 保存されたメカニズムであることが示された。

5. miR-483-3p を導入した MLE12 では転写因子である IRF3 と NF-κB の核移行が 促進しており、さらにRIG-I like receptors を介するシグナル伝達に重要な分子であ るMAVS をノックダウンした細胞では miR-483-3p による IFN-β発現増加が認めら れないことから miR-483-3p は RIG-I シグナル経路依存的に機能していることが示 された。

6. miR-483-3p を導入した MLE12 での遺伝子発現マイクロアレイ解析により、miR-483-3p の標的遺伝子として RIG-I シグナル経路の負の制御因子である RNF5 を見

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出した。miR-483-3p 導入細胞で RNF5 は蛋白質レベルで発現が低下しており、さら に3’UTR ルシフェラーゼレポーターアッセイの結果、配列特異的に miR-483-3p に より制御されていることが示されたが、RNF5 をノックダウンした MLE12 では IFN-β遺伝子の発現増加は認められなかった。一方で RNF5 を過剰発現させた細胞では IFN-β遺伝子の発現低下が認められた。 7. マイクロアレイの結果をもとに IFN-β遺伝子の発現を増加させる遺伝子のスクリ ーニングを行った結果、RNF5 に加えて、miR-483-3p の標的遺伝子、さらに RIG-I シグナル経路の負の制御因子として CD81 を見出した。CD81 をノックダウンした MLE12 では IFN-β遺伝子の発現増加を認めた。miR-483-3p 導入 MLE12 で CD81 は蛋白質レベルで発現が低下しており、さらに3’UTR ルシフェラーゼレポーターア ッセイの結果、配列特異的にmiR-483-3p により制御されていることが示された。 8. 高病原性鳥インフルエンザウイルスである H5N1 亜型のウイルスを感染させたマ ウスの血清中エクソソームでは miR-483-3p が有意に多く存在していることが示さ れた。miR-483-3p はエクソソームを介して移行したマウス血管内皮細胞(MS1)にお いても、炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増加させた。 以上、本論文はインフルエンザウイルス感染時に肺より放出されるエクソソーム内 に存在するmiRNA の有する自然免疫活性化機構を明らかにした。本研究は、これまで不 明であったインフルエンザウイルス感染時の肺由来エクソソームの機能の解析に寄与す ると考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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