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砂浜性スナガニ類の関東以南太平洋岸における分布

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Carcinological Society of Japan

原著論文

Cancer 27: 7–16 (2018)

砂浜性スナガニ類の関東以南太平洋岸における分布

Distribution of the ghost crabs (genus Ocypode) inhabiting the sand beach along

the Pacific coast of Japan, south of the Kanto District

渡部哲也

1

・淀 真理

2

・木邑聡美

2

・野元彰人

2

・和田恵次

2

Tetsuya Watanabe, Shinri Yodo, Satomi Kimura, Akihito Nomoto and Keiji Wada

Abstract: The distribution of the ghost crabs (genus

Ocy-pode) was investigated in 9 regions (the Boso Peninsula, the Izu Peninsula, south Shikoku, Amakusa, Kagoshima main-land, Tanegashima Ismain-land, Amami-Oshima Ismain-land, Okinawaji-ma Island and IriomotejiOkinawaji-ma Island) along the Pacific coast of Japan. The temperate species of Ocypode stimpsoni was rec-orded from Izu, south Shikoku, Amakusa, Kagoshima main-land and Tanegashima, with their abundance being lower than the tropical/subtropical species of Ocypode ceratophthalma and Ocypode sinensis in all the regions. Juvenile O. stimpso-ni, which occurred in Amakusa, Kagoshima mainland and Tanegashima, was not collected in Izu or south Shikoku. Ocy-pode ceratophthalma and O. sinensis occurred in all regions. Another tropical/subtropical species of Ocypode cordimanus was rec orded by a few specimens from south Shikoku, Ama-mi-Oshima Island and Okinawajima Island. In all the three tropical/subtropical species, the body size of the collected specimens was smaller in the mainland of Japan than in the Nanseishoto Islands. From the body sizes of the largest speci-mens collected in each region, the maturation was estimated to occur in regions southern from south Shikoku in O. cera-tophthalma and in regions southern from Izu in O. sinensis.

Key Words: ghost crab, sand beach, geographic distribution,

northern extension of tropical species はじめに

日本沿岸の砂浜海岸には,スナガニ属(Ocypode)

の種がこれまで5種記録されている.それらは,ス

ナガニOcypode stimpsoni,ツノメガニOcypode cera-tophthalma, ミ ナ ミ ス ナ ガ ニOcypode cordimanus,

ナンヨウスナガニOcypode sinensis,ホンコンスナ ガニOcypode mortoniである(淀ら,2006).このう ちホンコンスナガニは徳島県の室戸岬で2個体採集 された記録がある(Sakai, 2000)だけで,他の種は いずれも日本の沿岸域に広く分布しているが,スナ ガ ニ(Fig. 1A)が最も北まで分布する(佐々木, 2016;五嶋,2017)温帯性の種であるのに対し,ツ ノメガニ(Fig. 1B),ミナミスナガニ(Fig. 1C),ナ ンヨウスナガニ(Fig. 1D)は,南方に分布する熱 帯・亜熱帯性の種とされる(渡部ら,2012;真野

ら,2008;Lucrezi & Schlacher, 2014).

日本本土の沿岸では,これまで温帯性のスナガニ が優占し,熱帯・亜熱帯性のツノメガニやミナミス ナガニは,相模湾や紀伊半島沿岸,南九州沿岸など で 記 録 さ れ る こ と が あ る と さ れ て い た(酒 井, 1976;渡部,1976;三宅,1983).しかし近年ツノ メガニなどの南方系種が日本の沿岸で分布を拡げつ つあることが報告されるようになり(渡部・伊藤, 2001;高田・和田,2011;渡部ら,2012;和田・和 田,2015;締次,2017),反対に,温帯性のスナガ ニが,太平洋沿岸の地域で生息域を減らしつつある ことが懸念されるようになった(淀ら,2006;渡部 1 西宮市貝類館 〒662–0934 西宮市西宮浜4–13–4

Nishinomiya Shell Museum, 4–13–4 Nishinomiyahama, Nishinomiya, Hyogo 662–0934, Japan

2 いであ株式会社大阪支社

〒559–8519 大阪市住之江区南港北1–24–22 IDEA Consultants, Inc., 1–24–22 Nanko-kita, Suminoe,

Osaka 559–8519, Japan E-mail: [email protected]

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ら,2012).南方系種の分布北進は,浮遊幼生が黒 潮の流路に沿って北上する結果とみられ,黒潮の流 路に近接した太平洋沿岸域でその兆候が把握される であろう. そこで房総半島から沖縄諸島までの太平洋沿岸に おけるスナガニ類の分布状況を把握するため,2002 ~2003年に,房総半島,伊豆半島,四国南岸,熊 本県天草諸島,鹿児島県本土,種子島,奄美大島, 沖縄島,西表島の各沿岸の砂浜海岸で定量的なスナ ガニ類の採集を実施した.砂浜海岸に造穴するスナ ガニ類の分布を,これだけの広範囲に亘って定量的 に調査した例は,これまで知られていない.本論文 では,この調査成果とともに,近畿地方中南部沿岸 での既往の情報(淀ら,2006;渡部ら,2012)とと もに,房総半島以南の太平洋沿岸における温帯性の スナガニと熱帯・亜熱帯性の3種ツノメガニ,ナン ヨウスナガニ,ミナミスナガニの分布を特徴付ける とともに,各地の体サイズ組成から,繁殖の有無を 検討した. 材料と方法 野外調査を2002年6月~2003年11月に房総半島 (3地点),伊豆半島(6地点),四国南岸(徳島県・ 高知県・愛媛県)(7地点),熊本県天草諸島(3地 点),鹿児島県本土沿岸(9地点),種子島(4地点), 奄美大島(4地点),沖縄島(2地点),西表島(1地 点)で行った(Table 1, Fig. 2).各調査地点では, 数人で砂浜をまんべんなく探索し,確認されたスナ ガニ類の巣穴をショベル等で掘り起こしてカニ類を 採集した.各地点での採集時間は原則として1時間 とした.採集された個体は,種を同定し,雌雄の判 別,ノギスによる甲幅測定の後,現地に放逐した. 現地での種同定が困難な個体は,10%ホルマリンで 固定後,双眼実体顕微鏡による検鏡で種の同定を 行った. 種の同定に際しては,渡部(1976),酒井(1976), Huang et al. (1998)および渡部・伊藤(2001)を参考 に,以下の特徴を識別点とした.ツノメガニは大型 個体だと眼の先端に角状突起が出るので他種から容 易に区別できるが,中小型個体は角状突起がないた め,スナガニと混同されやすい.角上突起のないツ ノメガニは以下の点でスナガニと識別できる.大鉗 脚内面には,両種とも顆粒列が並ぶが,スナガニで は顆粒列の並び方が均等であるのに対し,ツノメガ ニでは下部に向かって並び方が密になってゆき,最

Fig. 1. Four Ocypode species collected from study sites. A, O. stimpsoni; B, O. ceratophthalma (juvenile); C, O. cordimanus

(juvenile); D. O. sinensis. Paired brown spots on the intestinal region of carapace of O. ceratophthalma is indicated by an arrow.

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砂浜性スナガニ類の分布 下部では再び間隔が拡がる.また鉗脚全体がツノメ ガニではより細長く,尾節の形状がスナガニでは半 円状なのに対し,ツノメガニでは縦長である.さら に生体標本では,ツノメガニの中小型個体の甲面腸 域には1対の茶色の斑紋がある(Fig. 1B)のに対し, スナガニではその部位は白抜きの斑紋を成してい る.大鉗脚内面に顆粒列のないミナミスナガニとナ ンヨウスナガニでは,ミナミスナガニでは眼窩下縁 に明瞭な切れ込みがあるのに対し,ナンヨウスナガ ニではその部分に切れ込みがない.また雄の大鉗脚 不動指がナンヨウスナガニでは基部付近が細く,先 端はわずかに上を向くのに対し,ミナミスナガニで は基部付近が幅広く,先端は明瞭に上を向く.なお Sakai & Türkay (2013)は,ナンヨウスナガニはミナ ミスナガニの小型個体として両者は同種異名だとし たが,両者間では,上記したような形態的相違が明 瞭であるとともに,遺伝的にも互いに独立している

こと(Wong et al., 2012)から,両者は別種として

Table 1. Localities of 39 sampling sites along the Pacific coast of Japan, with sampling dates.

Region Prefecture Locality No. Date

Boso Chiba Isumigawa 1 Oct. 17 2003

Yoshio 2 Oct. 17 2003

Ubara 3 Oct. 17 2003

Izu Shizuoka Ito 4 Sep. 17 2003

Sotoura 5 Sep. 15 2003

Matsuzaki 6 Sep. 16 2003

Toi 7 Sep. 16 2003

Odoi 8 Sep. 16 2003

Heda 9 Sep. 16 2003

Shikoku Tokushima Hiwasa 10 Sep. 21 2003

Kochi Ikumi 11 Sep. 21 2003

Nahari 12 Sep. 22 2003

Inoshiri 13 Sep. 22 2003

Ukibuchi 14 Sep. 22 2003

Ehime Shiroura 15 Sep. 23 2003

Osoudu 16 Sep. 23 2003

Amakusa Kumamoto Tomioka 17 Aug. 9 2003

Shirakio 18 Aug. 8 2003

Shiratsuruhama 19 Aug. 8 2003

Kagoshima Kagoshima Karahama 20 May 23 2003

Fukiagehama 21 May 23 2003 Goryo-Mawatari 22 May 24 2003 Obama 23 May 25 2003 Kokubu-Shikine 24 May 25 2003 Ushinefumoto 25 May 25 2003 Hamada 26 May 24 2003 Hetsuka 27 May 24 2003 Kunino-Matsubara 28 May 25 2003

Tanegashima Urada 29 Apr. 24 2003

Yokino 30 Apr. 24 2003

Kumano 31 Apr. 23 2003

Maenohama 32 Apr. 23 2003

Amami-Oshima Tomori 33 Apr. 26 2003

Ashitoku 34 Apr. 26 2003

Katoku 35 Apr. 27 2003

Seisui 36 Apr. 27 2003

Okinawajima Okinawa Zanpamisaki 37 June 8 2002

Katsuren 38 Nov. 21 2003

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扱うこととした.なお4種それぞれの最大個体の体 サイズは,ツノメガニ(最大甲幅43.6 mm)(Haley, 1973)とミナミスナガニ(45 mm)(Fellows, 1973) が,ナンヨウスナガニ(32 mm) (Huang et al., 1998) とスナガニ(31.5 mm)(渡部ら,2012)よりも大 きい. 結 果 温帯性種のスナガニは,伊豆半島,四国南岸,熊 本県天草諸島,鹿児島県本土,種子島から記録され た.伊豆半島では6地点中1地点(下田市外浦)で のみ6個体が採集された (Fig. 3)が,本採集地点で もツノメガニ (10個体)とナンヨウスナガニ(12個 体)の方が採集個体数は多かった.徳島県南岸から 高知県・愛媛県南岸までの四国南岸からは,7地点 中1地点(土佐市宇佐町)から7個体が採集された (Fig. 4).本採集地点ではスナガニ以外ではツノメガ ニのみが採集されたが,採集個体数はスナガニに比 べて際立って多かった(41個体).熊本県天草諸島 では3地点中2地点から計7個体採集された(Fig. 5) が,スナガニに比べてツノメガニの方が個体数は多 かった(計26個体).鹿児島県本土からは,薩摩半 島西岸・南岸の3地点と鹿児島湾内の4地点から計 46個体採集された(Fig. 5).このうち鹿児島湾内奥 部の3地点(霧島市,垂水市)ではスナガニだけが 13個体採集され,ツノメガニもナンヨウスナガニも 採集されなかった.種子島では4地点中1地点(中 種子町熊野)から8個体が採集された(Fig. 5).採

Fig. 2. Study sites (solid circles) of genus Ocypode in Pacific coast of Japan, south of the Kanto District. The localities of

Nos. 1–39 are referred to Table 1.

Fig. 3. Relative abundance of three Ocypode species

(O. stimpsoni, O. ceratophthalma and O. sinensis) in Boso and Izu Districts. The numeral shows the number of crabs collected in each site.

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砂浜性スナガニ類の分布 集されたスナガニの体サイズは,伊豆半島と四国南 岸では,甲幅15 mmを越す大型個体で占められてい たが,天草諸島,鹿児島県本土,種子島では10 mm 未満の小型個体も得られた(Table 2). 熱帯・亜熱帯性の3種については,ツノメガニと ナンヨウスナガニは,全ての地域から広範囲にわ たって多数個体採集されたが (Figs. 3–6),ミナミス ナガニは,四国南岸から2個体(甲幅11.9 mm雄, 16.4 mm雄),奄美大島で2個体(甲幅36.5 mm雌, 38.5 mm雄),沖縄島で1個体(甲幅13.9 mm雄)が 採集されたに過ぎない. 房総半島 (外房) では,3調査地点からツノメガニ 4個体とナンヨウスナガニ5個体が得られた(Fig. 3) が,いずれも甲幅15 mm未満の小型個体であった (Table 3).伊豆半島では,ツノメガニは調査地点す べての6地点から計67個体採集され,ナンヨウスナ ガニは4地点から計20個体採集された (Fig. 3).採集 個体の最大個体は,ツノメガニでは甲幅24.9 mmの 雄 (下田市外浦),ナンヨウスナガニでは甲幅29.5 mm の雌(下田市外浦)であった(Table 3). 四国南岸からは,7調査地点すべてからツノメガ ニが143個体,6調査地点からナンヨウスナガニが 31個体得られた(Fig. 4).採集個体の最大個体は, ツノメガニでは甲幅30.3 mmの雄(高知県黒潮町), ナンヨウスナガニでは甲幅23.4 mmの雌(徳島県日 和佐町)であった(Table 3). 熊本県天草諸島の3調査地点からツノメガニが26 個体,ナンヨウスナガニが8個体得られた(Fig. 5). 採集個体の最大個体は,ツノメガニでは甲幅14.2 mm の雄(苓北町富岡),ナンヨウスナガニでは甲幅 12.1 mmの雄(天草市高浜)であった(Table 3). 鹿児島県本土では,ツノメガニ・ナンヨウスナガ ニは,桜島より北の鹿児島湾奥部の3地点からは採 集されず,外海に面した海岸および桜島より南の鹿 児島湾から記録された(Fig. 5).このうちツノメガ ニは3地点から13個体,ナンヨウスナガニは6地点 から80個体が採集され,最大個体は,ツノメガニ

Fig. 4. Relative abundance of three Ocypode species

(O. stimpsoni, O. ceratophthalma and O. sinensis) in Shikoku District. The numeral shows the number of crabs collected in each site.

Fig. 5. Relative abundance of three Ocypode species

(O. stimpsoni, O. ceratophthalma and O. sinensis) in Amakusa, Kagoshima mainland and Tanegashima Districts. The numeral shows the number of crabs collected in each site.

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では甲幅40.8 mmの雄(頴娃町御領馬渡),ナンヨ ウスナガニでは甲幅29.7 mmの雄(日置市吹上浜) であった(Table 3).鹿児島県本土では,ツノメガ ニよりもナンヨウスナガニの方が,記録地点数,採 集個体数ともに優占したが,それは伊豆半島,四国 南岸,熊本県天草諸島といった日本本土の他地域の 記録とは逆の傾向となった. 種子島では,ツノメガニ・ナンヨウスナガニはと もに全4調査地点から記録された (Fig. 5).このうち ツノメガニは134個体,ナンヨウスナガニは60個体 採集され,最大個体は,ツノメガニが甲幅41.9 mm の雄(西之表市よきの),ナンヨウスナガニが甲幅 31.2 mmの雌 (南種子町前之浜) であった (Table 3). 奄美大島では全4調査地点からツノメガニとナン ヨウスナガニが記録された(Fig. 6).このうちツノ メガニが143個体,ナンヨウスナガニが29個体採集 され,最大個体は,ツノメガニが甲幅45.0 mmの雄 (笠利町土盛),ナンヨウスナガニが甲幅28.5 mmの 雌(笠利町土盛)であった(Table 3). 沖縄県の沖縄島・西表島では全3調査地点からツ ノメガニとナンヨウスナガニが記録された (Fig. 6). このうちツノメガニは34個体,ナンヨウスナガニ は13個体採集され,うち最大個体は,ツノメガニ が甲幅40.9 mmの雄(沖縄島残波岬),ナンヨウス ナガニが甲幅24.0 mmの雌(西表島月ヶ浜)であっ

Fig. 6. Relative abundance of two Ocypode species

(O. ceratophthalma and O. sinensis) in Amami-Oshima, Okinawajima and Iriomotejima Districts. The numeral shows the number of crabs collected in each site.

Table 2. Size distributions (carapace width in mm) of

Ocypode stimpsoni collected in each region of the Pacific coast of Japan, south of the Kanto District. Izu: the Izu Peninsula, Shikoku: south Shikoku, Amakusa: Amakusa, Kumamoto Prefecture, Tanegashima: Tanegashima Island.

Region N Range Mean±SD

Izu 6 15.1–18.3 17.07±1.33

Shikoku 7 19.9–25.7 22.80±2.43

Amakusa 7 6.3–21.4 15.03±6.19

Kagoshima 46 7.0–29.7 23.59±5.26 Tanegashima 8 6.4–26.4 16.36±8.03

Table 3. Size distribution (carapece width in mm) of Ocypode ceratophthalma and O. sinensis (excepting broken

specimens) collected from each region of the Pacific coast of Japan, south of the Kanto District. Boso: the Boso Peninsula, Chiba Prefecture, Izu: the Izu Peninsula, Shizuoka Prefecture, Shikoku: south Shikoku, Amakusa: Amakusa, Kumamoto Prefecture, Kagoshima: Kagoshima Prefecture mainland, Tanegashima: Tanegashima Island, Amami-Oshima: Amami-Oshima Island, Okinawa: Okinawajima Island and Iriomotejima Island.

Ocypode ceratophthalma Ocypode sinensis

Region N Range Mean±SD N Range Mean±SD

Boso 4 6.3–10.7 8.15±2.09 5 7.1–14.2 9.66±2.96 Izu 62 6.0–24.9 12.82±5.34 18 5.4–29.5 15.22±8.36 Shikoku 142 5.5–30.3 16.60±6.05 31 6.4–23.4 15.12±5.30 Amakusa 26 7.6–14.2 11.34±2.14 8 7.3–12.1 9.84±1.55 Kagoshima 13 6.0–40.8 21.02±10.03 80 6.0–29.7 20.55±4.55 Tanegashima 132 7.4–41.9 24.74±8.16 59 11.1–31.2 21.76±4.52 Amami-Oshima 143 7.8–45.0 27.61±9.84 29 8.9–28.5 19.49±5.47 Okinawa 34 5.9–40.9 21.26±11.06 13 8.0–24.0 15.42±5.32

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砂浜性スナガニ類の分布 た(Table 3). 全調査域間でツノメガニの体サイズを比較すると (Table 3),最も高緯度の房総半島で最大サイズ,平 均サイズともに最も小さく,熊本県天草諸島,伊豆 半島,四国南岸の順に最大サイズ,平均サイズとも 増大し,鹿児島県本土以南ではさらに大型化し,平 均甲幅が21 mmを超し,最大甲幅も40 mmを超す ようになっていた.またどの地域からも甲幅8 mm 未満の小型個体が得られた.ナンヨウスナガニの体 サイズを全調査域間で比較すると(Table 3),房総 半島と熊本県天草諸島で最大サイズ・平均サイズと も最小で,それ以外の地域では伊豆半島,四国南 岸,沖縄島・西表島で平均甲幅が15 mm前後と似 ており,鹿児島県本土,種子島,奄美大島が平均 甲幅19–22 mmとさらに大型化していた.なお甲幅 12 mm未満の小型個体はどの地域からも得られた. 考 察 温帯性種スナガニの分布 スナガニは,北海道の室蘭を北限として(佐々 木,2016;五嶋,2017),本州太平洋沿岸では岩手 県以南,日本海沿岸では秋田県以南の九州までに広 く分布するとされている(三宅,1983).しかし今 回の踏査域の伊豆半島・四国南岸では,記録地点 数,採集個体数とも,ツノメガニやナンヨウスナガ ニよりも少なかった.しかもこれらの地域では,甲 幅が15 mmを超す大型個体だけしか採集されてい ない.紀伊半島西岸の和歌山県から大阪湾にかけて も,スナガニの記録はツノメガニやナンヨウスナガ ニよりも少なく,ツノメガニやナンヨウスナガニが 優占する地域では,スナガニは大型個体だけが採集 される傾向にある(淀ら,2006;渡部ら,2012). 鹿児島県本土では,鹿児島湾の湾奥部にスナガニの 単独分布域があるが,大隅半島や薩摩半島の外海側 の地域ではツノメガニやナンヨウスナガニに比べて 記録が限られていた.その傾向は本種の南限地とな る種子島でも同様であった.総じて日本の太平洋沿 岸では,熱帯・亜熱帯性のツノメガニやナンヨウス ナガニがスナガニよりも優占して分布しており,そ のような地域では,スナガニは大型個体だけで占め られる傾向にあると言えよう.ツノメガニやナンヨ ウスナガニが混生するスナガニの生息地では,スナ ガニの稚ガニが,ツノメガニやナンヨウスナガニの 中大型個体により捕食されている可能性がある(淀 ら,2006).いずれにしても小型個体の消失は新規 加入世代の不在を意味し,そこのスナガニ個体群の 絶滅が危惧される.なお鹿児島県本土沿岸や近畿地 方中南部沿岸(渡部ら,2012)のスナガニ属の分布 情報からは,西日本の太平洋沿岸では,スナガニは 内海寄りの海域に限られた分布の仕方をしていると みてよい.ちなみに日本海沿岸や瀬戸内海では,一 部にツノメガニやナンヨウスナガニ,あるいはミナ ミスナガニの記録はあるものの,優占して分布する のはやはりスナガニである(上田,1963;Honma & Kitami, 1978;武田ら,2000;和田,2009;高田・ 和田,2011;和田・和田,2015;和田ら,2015). 本調査により種子島から初めてスナガニが記録さ れた.種子島はスナガニの日本における分布南限地 となるが,記録されたのは4地点中1地点だけであっ た.そこは種子島の沿岸の中では最も広い湾(熊野 浦)の砂浜海岸(中種子町熊野)で,スナガニが内 海寄りに分布する傾向が反映されているとみられる. なお同調査地では8個体のスナガニが得られたが, それらは甲幅19 mm以上の大型個体だけでなく, 甲幅6.4–7.3 mmの小型個体も3個体混じっており, 同地で新規加入が行われていることが示唆される. しかし種子島は,日本における本種の分布南限地で あり,日本の太平洋沿岸を流れる黒潮の上流に位置 するため,他の集団つまり日本本土の集団からの幼 生供給はほとんどないものとみられる.しかも同地 は,スナガニよりもツノメガニ(19個体),ナンヨ ウスナガニ (16個体) が優占しており,和歌山市の 名草浜のように (淀ら,2006),これら南方系の2種 が個体数を増やして,スナガニの消滅を招来するこ とが懸念される.そういった点から,種子島のスナ ガニは絶滅が危惧される貴重な個体群として,保全 の目を向けることが必要だろう. ツノメガニ・ナンヨウスナガニの分布 熱帯・亜熱帯性種であるツノメガニとナンヨウス ナガニの日本太平洋沿岸における分布の北限は,こ れまでの文献上の記録では,前者が東京湾,後者が 相模湾とされる(豊田・関,2014).今回房総半島

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(外房)から本2種が記録されたことから,両種の 分布域は少し北に伸びることになる.なお著者のひ とり和田は最近(2017年10月),今回の調査地点よ りさらに北の九十九里浜の砂浜海岸でツノメガニと ナンヨウスナガニを採集している.南方系種である 両種は,南西諸島では砂浜海岸における主要種であ るが,日本本土においても太平洋岸ではスナガニよ りも優占的にみられることが明らかとなった.その 傾向は紀伊半島西岸の和歌山県沿岸でも同様であっ た(渡部ら,2012).しかし日本本土でみられるこ れら2種は,未成熟の小型個体が主であることから, 南方の個体群から放出された幼生が日本の本土沿岸 に定着することで成立しているものとみなされてき た(渡部,1976;淀ら,2006).そこで今回の各調 査域でそれぞれの記録種の最大個体の甲幅をみるこ とで,それぞれの地域における繁殖の可能性を検討 してみる.海外の知見であるが,ツノメガニの性成 熟達成サイズは,雄で甲幅27 mm,雌で29 mmとさ れる(Haley, 1973).南西諸島では甲幅40 mmを越 す個体が採集されていることから,それぞれの地域 で繁殖活動をしていることは間違いない.日本本土 で,各地域の最大個体をみると,鹿児島県本土で甲 幅40.8 mm,四国南岸で30.3 mm,伊豆半島で24.9 mm となっている.また和歌山県沿岸では27.8 mmが記 録されている(渡部ら,2012).これらのデータか らみて,ツノメガニは四国南岸以南の地域では繁殖 している可能性が高い.一方ナンヨウスナガニの場 合は,甲幅20 mmですでに十分成熟するとされてい る(Huang et al., 1998).南西諸島では,最大個体が 種子島で31.2 mm,奄美大島で28.5 mm,沖縄島・ 西表島で24.0 mmとなっており,これらの地域では ツノメガニ同様,繁殖活動をしているとみてよい. 日本本土では,鹿児島県本土から最大個体で甲幅 27.6 mm,四国南岸で23.4 mm,伊豆半島で29.5 mm となっており,和歌山県からは24.6 mmが記録され ている(淀ら,2006).つまりナンヨウスナガニの 場合は,伊豆半島,和歌山県,四国南岸,鹿児島県 本土のいずれの地域でも現地で繁殖しているとみら れる.なお房総半島の個体は明らかに未成熟個体で あり,また最近見つかった伊勢湾のもの (締次,2017) も,その体サイズから未成熟個体とみなされる. 一方各地域の平均体サイズをみると,ツノメガニ では房総半島,熊本県天草諸島,伊豆半島,四国南 岸,鹿児島県本土以南の順に大きくなることがわかっ たが,伊豆半島と四国との間に位置する和歌山県か ら大阪府にかけての地域では,平均甲幅が11.4–14.5 mm (2002年)となっており(渡部ら,2012),伊豆 半島での数値に近いことがわかる.これに対してナ ンヨウスナガニでは,平均体サイズが伊豆半島・四 国南岸(甲幅約15 mm)が鹿児島県本土以南の地域 (甲幅約20 mm) よりもやや小さかったが,和歌山県 から大阪府にかけての地域の平均甲幅は9.7–11.0 mm (2002年) (渡部ら,2012)と,伊豆半島・四国南岸 よりも小さくなっている.同じ熱帯・亜熱帯性の種 であってもツノメガニとナンヨウスナガニの間で は,日本本土太平洋沿岸での体サイズの地理的勾配 は同じ傾向を示すわけではないと言える. ツノメガニとナンヨウスナガニの採集個体数はほ とんどの地域でツノメガニがナンヨウスナガニを上 回ったが,鹿児島県本土のみナンヨウスナガニがツ ノメガニを上回った.これは,調査時期が他の地域 では夏から秋の頃であったのに対して,鹿児島県本 土では春季(5月初旬)にあったことが関係してい るとみられる.日本本土では,これら熱帯・亜熱帯 性の種が.より南方の地域個体群からの幼生供給に より成り立っているところが大きいが,温暖期前の 春季にはまだ南方からの新規加入がなく,鹿児島県 本土の各地で春季に採集された個体はそのほとんど が越冬したものであったと思われるのである.日本 本土におけるこれら2種の越冬傾向は,ツノメガニ よりもナンヨウスナガニの方が強いことは,繁殖可 能サイズの個体が,ツノメガニよりもナンヨウスナ ガニの方がより北方域で採集されていることからう かがえる.また和歌山市の定点観測から,当地での 越冬はナンヨウスナガニではありえるが,ツノメガ ニでは考えにくいとされている(淀ら,2006)こと からも示唆される.鹿児島県本土でナンヨウスナガ ニがツノメガニを上回って採集されたのは,越冬直 後の個体を採集していたためであろう.鹿児島本土 で夏から秋にかけて調査をしていれば,新規加入数 の多いツノメガニが,採集個体数でもナンヨウスナ ガニを上回っていたかもしれない.

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砂浜性スナガニ類の分布 ミナミスナガニの分布 今回の調査域からは,ミナミスナガニはごく限ら れた地域からしか得ることができなかった.また和 歌山県から大阪湾にかけての地域からも,ミナミス ナガニの記録は極少であった (渡部ら,2012).これ に比べて,形態的に類似したナンヨウスナガニは, 紀伊半島沿岸(渡部ら,2012;締次,2017)や兵庫 県(和田・和田,2015)を含め,房総半島以南のす べての調査域から数多く記録されている.ミナミス ナガニは,ナンヨウスナガニが報告される(Huang et al., 1998) までは,九州以北の地域からも知られ ていた(上田,1963;蒲生,1965;田中,1969;渡 部,1976;酒井,1976;三宅,1983).しかしこれ らの多くは,ミナミスナガニではなく,生息数の多 い ナ ン ヨ ウ ス ナ ガ ニ で あ っ た と 思 わ れ る. 実 際 Huang et al. (1998)は,酒井(1976)のミナミスナガ ニはナンヨウスナガニであるとしているし,三宅 (1983)に掲載されたミナミスナガニの写真はナン ヨウスナガニに近い形状,体色を示している. 今回の調査域から得られたミナミスナガニは,個 体数は少ないものの,南西諸島(奄美大島)からは 甲幅36 mmを超す大型個体が得られているのに対 し,四国南岸からの2個体は甲幅17 mm以下の小型 個体であった.2002年と2010年に調べられた和歌 山県から大阪湾にかけての調査からは,ミナミスナ ガニが15個体 (2002年),6個体 (2010年) と比較的 多く採集されているが,それらの甲幅は7.8–19.4 mm となっており(渡部ら,2012),いずれも小型個体 である.ミナミスナガニは,最大個体の甲幅が約 45 mmになり,繁殖可能サイズは約30 mm以上だろ うとされている (Fellows, 1973).これを日本沿岸の ものに適用するなら,南西諸島のミナミスナガニは 繁殖しているが,四国南岸や和歌山県沿岸のものは 繁殖サイズまで成長しておらず,南方からの幼生供 給により成り立っているものとみられる. ミナミスナガニはツノメガニが主に分布する砂浜 海岸の高潮帯から潮上帯よりもさらに上の陸上部を 主な生息場所としており(George, 1980),海岸から 200 mも入った陸域まで分布することがあるとされ ている(Fellows, 1973).そのため日本の沿岸でも ツノメガニやスナガニに比べると見つけにくい種で あり,今回の調査でも採集個体数が極めて少なかっ たのは,砂浜後背部の林地まで詳しく踏査できてい なかったせいかもしれない.今後は,このような砂 浜後背部を広く含んだ詳しい生息状況調査を行う必 要があろう. 謝 辞 本研究の現地調査に際して採集協力をいただいた 石村理知氏(神戸大学),川根昌子氏(奈良女子大 学),高山順子氏(千葉県立中央博物館)に厚くお 礼申し上げる.本研究の一部は,WWF自然保護助 成事業(2003年度)による助成を受けて行われた. 文 献

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スナガニ属3種の和歌山市における生息状況:

Table 1.   Localities of 39 sampling sites along the Pacific coast of Japan, with sampling dates .
Fig. 3.  Relative abundance of three Ocypode species  (O. stimpsoni, O. ceratophthalma and O
Fig. 5.  Relative abundance of three Ocypode species  (O. stimpsoni,  O. ceratophthalma and O
Table 3.  Size distribution (carapece width in mm) of Ocypode ceratophthalma and O. sinensis (excepting broken  specimens) collected from each region of the Pacific coast of Japan, south of the Kanto District

参照

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