NII-Electronic Library Service 理 学 療 法学 第 19巻 第4号 410
〜
415 頁 (1992
年)報 告
脳卒 中
患
者
の
骨粗鬆症
と
骨折
に
っい
て
*高 橋
茂
* *佐 藤 秀
一
三
村 健
庄 子
美 和
佐 藤 礼 人
本
田
勇
岡本五 十
雄
要 旨脳 卒中患 者
210
例に対 し,
骨 粗 鬆 症と関 連 すると思われる因 子10 項 日(年齢
・
性・
発 症後期聞・
6 項 日の機 能 障 害・
起 居 移 動 動作の自 立度 )および骨折との関係を調べ た。 骨 糧 鬆 症を有 する頻 度は 2io 例 中34
例 (16.
2% )で特に女 性に有 意に高かっ た (p< 0.
01)。
ま た起居 移動動作の自立度が低 くな る にっ れて頻度は有 意に増 加し た (p<0.
Ol
)。
骨 折は21例 (10.
0%,
椎 体骨折18
例,
大腿 骨頸部骨折 3 例 ) であっ た。
椎 体 骨 折は骨 粗 鬆 症を有 するもの に有意に高く (p<O.
Ol
),
大腿骨頸部骨 折は年 齢が 着 く骨粗鬆 症 を 有 して いない例におこっ
て いた。
以E
か ら,
脳 卒 中患 者の リハ ビ リテー
シ ョ ンにおい て,
骨 粗 鬆 症に留 意 す るとと もに充 分な転 倒 防 止 対 策 を とることが 必要であると思われた。 キー
ワー
ド 脳卒中,
骨 粗 鬆症,
骨折 は じ め に 骨粗鬆症は骨の吸収と形成のバ ラ ン スが崩れ,
骨塩量 が 減少す る疾患の総 称であ る1〕。 な かで も臨床 的に問題 と な るの は, 閉経後あ るい は老 人 性 骨 粗 鬆 症で あ る。 高 齢 者におい てはこう し た骨の脆 弱 化に加え,
運 動 能 力の 低 ドにより容 易に転 倒 するの で,
骨 折の危 険 性が高 くな る。
特に脳 卒 中 患 者に おい て は,
立 位 保 持 能 力やバ ラン ス 能力の低下が あり,一
度歩行を再獲得していなが らも転 倒,
骨折を起こす ケー
ス も少な くな く,
ま た 骨折は 下肢 筋力の低 下な どの廃用性症候群を起こ し,
日常生活に も 重 大な支 障をきたす。 そこで今 回 我々 は,
脳 卒 中患 者の 骨 折の背 景と なる骨 粗 鬆 症にっい て,
種々 の囚 子および 骨 折との関 係につ い て分 析 を試み たの で報 告 する。
’
Osteoporosisand Fracture in Patients with ApopLexia ll
北 海 道 勤 医協 札 幌〔
i.
珠 病 院リハ ビリ テー
ショ
ン部Sigeru Takahashi
,
RPT,
Sylluiti Satou,
RPT,
KenMimura
,
RPT,
Miwa Syouji,
RPT,
Rcito Satou,
RPT,
Isamu Honda
,
RPT,
Isoo Okamoto,
MD :Dept、
of Physi−
cal Therapy
,
Hokkaido Kin・
ikyo Sappore OkadamaHospital 別 刷 請 求 先 :高 橋 茂 (現 北 海 道 脳 神 経 外 科 記 念 病 院 理 学 療 法室 ) (受
f
寸日1990t下1月4口/受理 日1991年IO大]23日)1
対 象と方 法勤医協札幌 丘 珠 病 院に 1985年 5月 か ら1988 年
5
月ま で の3
年 間に入 院して い た脳卒 中 患者の う ち, 早期転 院 例や内科 的 合 併 症に よ る再入 院例を除き, 1
か月以 上 1」 ハ ビ リ テー
シ ョ ンをう けて い た患者 210 例を対 象と し た。 性 別で は男 性 128 例 (平 均 年齢61.
1
±10.
3
歳),
女 性82
例 (平均年 齢61.
1
±13.
9
歳)で,
内訳は脳 梗 塞 145 例,
脳出「幡2
例,
く も膜 下 出血 な どそ の他 工3例で あっ た。 骨粗 鬆症の判 定にっ い て は,
慈 恵 医科大学式 骨萎縮度 分類2) (以 下,
慈 医大 式 分類と略 す ) を指標と し た (図 1)。 次に骨 粗 鬆 症と年齢 性 別,
脳卒 中発 症後 期 間,
6項 目の機 能 障 害お よ び能力障害との関係にっ いて検討した。 機 能 障 害につ いて は,
下 肢 ブル ン ス トロー
ム ス テー
ジ (以 下Br−
stage と略 す),
腰痛,
健側下肢筋力,
痴呆,
下 肢 表 在 感覚,
下肢 深部感覚の 6 項 目をとりあげた。 な お,
健 側 卜.
肢 筋 力 測 定はダ= エ ル の徒 手 筋 力 検 査 法 を用 い,
痴 呆は長 谷 川 式 簡 易 痴 呆スケー
ル に従っ た。 ま た能 力 障 害につ い ては起 居 移 動 動 作 能 力 と し,
二木3) の4
段 階の 自立 度レ ベ ル に そっ て分類 した。 N工 工一
Eleotronio Library脳卒 中患者の骨粗鬆症 と骨折につ い て 411 表 1 骨粗鬆症の重 症度と男女比 (N
− 210
) tl”
es縮 畷 正 常 性 初 期 1度 Il度 憫 度 初期 1度 II度 男.
匹E 93 29 6 0 0 (72.
796) (22.
7%) ( 4.
7%) ( 0.
O%) ( 0.
0%) 夂.
囲≧ 30 24 19 8 1 (36.
6%) (29,
3% ) (23,
2%) (0.
09% ) (O,
01% ) P〈0.
Ol
表2
男 女別の年齢 と骨粗鬆症 との 関係 (N≡
210) III皮 性 年 齢 0−
49歳 50−
59歳 60−
69歳 70−
79歳 8Q−
89歳 男 性 0 (22) L (36) 0.
0% 2,
8% 女 性 0 (1Q) 1 (24) 0,
05% @4.2
3
(44
)1
(19
)1
( j 6.8%5.3%
14 3% 14 (
30
) 12 (17
) 1 1)
46
,7%70
.6%1
.0%
図1
骨 萎縮 度 分類 〔慈 医 大式 ) ()は そ 年 代の 総数 骨折
例 に っいては, 診 療記 録 とX
線 真に
よ り調査
し,骨
折率, 骨折部 位,骨粗鬆 症 と の 係を
調 べ た 。な お , 統計的処 理にはx2検定とWilcox
2
標 本順位和 検 定を 用 い た。 表3
脳 卒 中 発症後期 間 骨 粗 鬆 症 と の 関 係(
N
羸210
)
且.
結 果および考案 A .骨粗鬆症と 年齢 , 性,脳卒11
発症 後期間
お よび機能 障害,
能力障 害との関 係1
.
骨萎縮 度 症度 分 類 ,性差,年 齢構成 骨萎 縮 度の 重 症 度分 と男女
比 に つ い てみ ると 〔 表 1)
,骨粗
鬆症を有 し ている者1
, ll , 皿度の者
)は210
例 中34
例(16 ,
2
% で ある。 性差を比 較すると
,女性 は82
例中28
例
(34 .1
%)
,男性 128 例[
−1
」6
例(4
.7
%) にみら れ,推計 的に 有意に女牲におけ る骨
粗鬆症の 合 併頻度が 高い (p
0
.Ol
)。 次 に, 性別の年 齢 構成 と 骨 粗 鬆 症との 係 〔表 2)に っいてみ る と,
骨 粗鬆 痕 は男 女 共に50
以 上にみ ら れ,女 性では60
歳 代から 頻度 が 高く っている
。また 男性 で は80
歳 代 で7 例 中1
例 (14
3
% )と
較的高
か コ たが , 著 明 な 差は 見 ら れ な か た 。2
, 脳卒中発
症 後 期 間 と 骨 糧鬆症 と の関係 表3
に 示 し た よう に ,骨 粗 鬆症を合 併してい るものは
,脳
卒 発症
後1
年 以内 では142 例中23
例(
16 .2 %),
1 〜2 年 以内で は32 例 中5例(
15 ,6% ),2
年〜5
年以 内 は18
例中2
例 ll . 1% ), 5 以 巳 では18
例中4
り 2 な
1 度 (% 16.
5f6
[ 0 1 2 16 1.15
年計 以
上
4
34
14
176
.216
.2
例 (22
.2 % ) となり,
発 症後 期間 による影 響はみら
れ ない。3
.機能 障害と骨 粗鬆 との関係(表
4,表 5
) 麻痺の
程 度(Br− stage )と骨
粗鬆 症との 関係 つい て は (表4
−a
) ,Stage
I ,
ll
}t
StageM
〜IV
に 比 べて骨
粗
鬆 症の合 併 度が 高 い という結 果を示 し た が ,両 者間 に推計学
的な有
差 は 認めら れない 。次に ,腰痛 の 有無 と骨 粗鬆症と 関係を骨 萎縮度 別 にみる と(表
4
− b), 骨 萎縮の程 度 が増すにつ て 腰痛
を 有する ものの
率 が 高 くなる 傾向に あり(p
O
.05
,Wcoxon
2
標本川 頁 位和検 定 ) , 腰痛の原
因の一
と し て , 骨 粗鬆 症に
よる影 響 が 考えられ る。 に ,痴呆 と骨粗
鬆 症と
の 関係をみると( 表5
−a
), 長谷川 式痴
呆スケール
で 準 痴呆,
痴 呆の者が骨 粗鬆
症 を 有 す 頻 度は,正常 ,準
正
常の者
に 比 べて
有 意に高い ⊂p
<O
NII-Electronic Library Service 412 理 学 療 法 学 第 19巻 第 4号 常の者に比べ,
60
歳以上 か ら その人 数が増 加 して い る (p
< 0.
Ol)。 以 上 より,
骨 粗 鬆 症は,
痴 呆による 日常の 活 動 量の減 少4〕や,
寝たき りの傾 向 等の影 響 は否 定で き ないが, 年齢の影 響を 強く う け ていると推 測される。 その 他,
健側下肢筋力, 下肢深部感覚,一
ド肢 表在感覚 と骨粗 鬆症との関係にっ いて は,一
定の傾向は な い。4.
起 居 移 動 動 作 能 力の 自立度と骨 粗 鬆 症との関 係 表6に示 したように,
全 介 助レ ベ ル の者の骨 粗 鬆 症の 表6 起居移動動 作の 自立 度と骨 粗 鬆 症との関 係 (N ≡210
) 骨 粗 鬆症 噸 全介助毳
晶 髀
歩行罸
歩 行 り し 鮒 度 あ な 頻 10 1934.
5
8 3817,
4 7 4114.
69
7810,
3 表4
機能 障害と骨粗 鬆症と の関係 麻 痺の程度と骨粗鬆症との関係 (N− 210
) P〈 0.
05Wilcoxon
の 2 標本順 位 和 検 定 Br・
stage ItiSE
鬆症 皿 皿 IV V あ り 2 2 7 8 7 8 な し 5 535453749 歩頁度 (% ) 28.
6 28.
6 16.
7 15,
1 15.
9 14.
0 〔b) 腰 痛と骨 粗 鬆 症との関 係 NStt
正 ・ 初 ・ 1度 ll・
皿度 あ り 22 上4 7 4 な し 101 39 18 5 腰痛o:)発生 率 (%) 17.
8 26.
4 28.
0 44.
4 pく O.
05Wilcoxon の 2標本順位和検定 表5
(a) 痴呆と骨粗 鬆症と の関係 (N;210
) 腎粗 鬆 症 闘 呆スケー
ル 正常 準正常 準 痴 呆 痴 呆 あ り 8 129
5 な し112
37
20 7 頻 度 (%)6.7
24.
5 31.
0
41.
7 pくO.
OOI
表5
(b
) 対象患 者の年齢別の痴呆ス ケー
ル (N=
210) スケー
ル 年齢痴呆 10〜 39
歳 40〜
59 歳 60〜
89歳 正 常 準 正 常 匚 り O 08ρ
U − 5153 準 痴 呆 痴 呆 00 ひ一
4丁
482 Pく.
O正, κ2検定 頻 度は34.
5
%,
ベ ッ ドE
生 活 自立レベ ル の者は 17.
4%,
屋 内歩行 自立レ ベ ル の者は14.
6
%,
屋 外 歩 行 自立 レ ベ ル の者は10.
3
% で,
自立 度 が 低 くなる にした がっ て骨 粗 鬆 症の頻 度は高く なっ て いる (pく0,
05, Wilcoxon
2
標 本順位 和検定)。 以L
の結 巣より,
運 動 量や活 動 量の低 下は骨 粗 鬆 症に 関 係 する と考え られ る。
諸 家の報 告に よ る と,
運 動によ る骨 塩 量の増 加が知られて お り5),
骨へ の荷重と運動は 骨 塩 量の維 持,
増 強に必 要な こ と が わ か る。
ま た 運動を 行わ ない例で は骨塩 量は減少する。 し た が っ て,
自立度 の低い もの は,
臥 床を余 儀な く さ れ,
抗重力 肢 位を と る こと が少なく,
運動量 も少ない。 そ れ故,
骨 塩 量が低 ド し,
骨 粗 鬆 症の頻 度 が増 す と考 え られる。 B.
骨 折と骨 粗 鬆 症と の関 係 骨折患者数は男性10
例, 女性11
例の計21
例で, 骨 折 率は10
% で あ る。 骨 折は脊 椎圧 迫骨 折と大 腿 骨 頸 部 骨折で あ る。 脊椎圧 迫 骨折は18
例で,
部 位は表7
に示 すごと くTh 12 , L 1の い わ ゆる胸 腰 椎移行 部に多い。 ま た骨 折し た椎 体の数は 1推 体の み が 12例と多い。
性 別で は男 性7
例, 女性11
例である。 大腿骨頸部 骨折は, 3例と も に男 性で,
2例が外 側 骨折で 1 例が内側骨折で ある。 骨粗 鬆 症を有し た患者34
例 中,
骨 折し た患者は8
例 (23.
5% )で,
骨 粗 鬆 症を有さ ない患 者 176例 中 骨 折し た患者13
例 (7.
4
%) に比べ 有意に高い (p<0.
01
)。 (表 8−
a) 起 居 移 勤 動作能力の 自立度と骨 折お よ び骨 粗 鬆 症との 関 係 (表8−b
) を み る と,
非 歩 行 群 (全介 助お よ び ベ ッ ド上 生 活 自立レベ ル)で骨粗鬆症を有 して い る患者 は18例で,
こ の う ち骨 折は3
例 (16.
7
%)で あ る。 同 様に歩 行 群 (屋 内,
屋 外 歩 行 自立 レベ ル)で骨粗鬆症を 有 して い る患 者は 16例で,
この うち骨 折 患 者は5例 N工 工一
Eleotronio Library脳卒 中患者の骨粗鬆 症と骨 折につ い て 413 表 7 骨折例の内訳 脊椎 圧 迫 骨折 18 例 大 腿骨頸 部 骨 折
3 例 <部 位>
Th
6
Th
7
Th
8
Th
g Th IO Th l1 伊 仞 伊 仞 伊 伊 互311128
例 〈 部 位〉 内側骨折 外 側 骨 折Th
12L
1 6 例2
例 2例 3例1
例 2例 9臼
り
Q4 LLL <骨折脊椎の数>1
椎体骨 折12
例 2椎 体 骨 折 4例3
椎 体 以 上の骨折 2例 表8 骨 折 と骨 粗 鬆 症 との関 係 (a) 骨 折 例 (21
例 )における骨 粗 鬆 症との関 係 骨 折 あり 骨 折な し 骨折 率 骨折 鬆症あり 骨 粗 鬆 症なし813
26163
21
:
纜
コ
・ * :p< 0.
01 (b) 脊椎圧迫骨折例 (18
例)}こお け る 起居移動動作の 自立度か ら み た骨粗鬆症 との関係 骨 粗 鬆 疣 骨折 率 骨粗 鬆 症 骨折 率 あ り あ り (%) な し あ り (%) 非歩行群 (73伊lj) 歩 行 群 (134仮1亅) 18163 16.
7 55 3 5.
5 5 3L3 1187 5.
9 非歩行群蘓
全 介 助,
ベ ッ ド上 生活 自立 歩 行 群=
屋 内,
屋 外 歩 行 自立 (31.
3% )で あり に れ ら はすべ て脊 椎 圧 迫 骨 折で あ る),
骨 粗 鬆 症を有 する患者で は, 歩行群に骨折の頻 度 が高 くなっ て いる が,
推 計学的に は有 意 差は認め られな いo 脊 椎圧 迫 骨折につ いて は,
骨 粗 鬆 症 を 有 するもの に,
骨 折の発 生 頻 度が高い。 ま た歩 行が自立 して い る群にや や骨 折 率が高い理由と して,
歩行群は, 活 動 性 が高く,
脊 椎に対 する外 力を受 け易いた めで は ないか とい うこと があ げられる。 また,
骨 折 部 位と して胸腰椎移行 部に多 い ことは水 野 ら6)の研 究とも一
致 しており,
脳卒 中患者 も,一
般の脊椎圧 迫 骨 折 と比べ て部 位にそ う違い は ない こと を示して いる。
しか しなが ら, 大 腿骨 頸 部 骨 折におい て は
,
全例60
歳 未 満の男性で,
骨 粗 鬆 症を認め ら れず,
骨折の原因が 骨 粗 鬆症以 外の因子の影響を受け てい るもの と考えられ たので,3
例の受傷機転を調 査し た。 <症 例 1> 氏名S.S,
44 歳 男 性 診断名 脳梗塞,
僧 帽 弁 狭 窄 症 障害 名 左Ff
麻痺,
左半側視空 間失 認T
字 杖と下 肢 装 具にて屋内介助歩 行レ ベル であっ た。 発 症 後6カ月,
トイレに い こう と して転倒。
左 頸 部 外 側 骨 折 を 生じ た。 <症 例2
> 氏 名T ,
Y .
51歳 男 性 診断名 脳 梗 塞 障署名 両 側 麻 痺 T 字杖にて屡 内 歩 行 監視レ ベ ル であっ た。 発 症 後5
年6
ヵ月で玄関先の段 差にっ まづき転 倒,
右 頸 部 外 側 骨折 を生 じた。 <症 例3
> 氏 名T .
N .59
歳 男性 診 断 名 多 発 性 脳 梗塞 障 害 名 失 調 症,
痴 呆歩行器 歩 行 監 視レベ ルであ
っ
た 。 発 症後4
ヵ月で夜 間 にベ ッ ド か ら転 落し,
右 頸 部内側 骨折を生 じた。 以E3
例にっ いて は比 較 的 年 齢 が若 く,
骨 折の原 因が 転倒,
転 落に よ るもの で あ るこ と,
運 動 麻 痺に加え複 数 の障害を持っ て いることが わかる。
しかし,
本 研 究の結 果と照 らし合 わせてみ る と,
年齢 性, 起居移動動作の 自立度におい てすべて矛盾し た結 果と なっ てい る。
林η は,
大 腿 骨 頸 部 骨折が生じ るに は転倒とい う外 力と と も に骨 萎 縮が強い とい うこと が重な ら な け れ ば な らな い と 述べて いる が,一・
方で は大腿骨頸部の骨 萎 縮は上 肢や腰 椎の骨 萎 縮と は相関性が少ないこと を述べ てい る。
これ には大 腿 骨頸 部の X 線にて Singh 指数を 評 価 するか,
ま た は,
二重線束骨 塩 分析機で局 所の骨 塩 量 を 測 定 する 方法が望ま しいと して いる。 以 上か ら, 脳卒 中患者の脊椎 圧 迫 骨 折は,
骨 粗 鬆 症をNII-Electronic Library Service
414
理学 療 法 学 第 19巻 第4号 有し てい る もの に多いが,
若 年 者の大 腿 骨 頸 部 骨折に お い て は,
転 倒 などの外力が加わる こと が必 要と なる よ う で ある。
し た が って,
骨折の原 因と な る転 倒を防 ぐた め に,
歩 行 時の不 安 定 性 などの運動能力に関 する要 因 と,
段差,
照 明な どの環境 的要因など を十二分に考慮し,
特 に ADL や行 動 範 囲の拡 大を図る場合には慎重に対 処し,
しっ かりと家 庭 内や院 内で の転 倒防止策を とって リハ ビ 「丿テー
シ ョ ンを進め ること が必 要であ る と 思 わ れる 。 ま と め 1.
脳 卒 中 患者210
例を対象と し,
骨 粗 鬆 症とこれに 関 連 すると思わ れ る種々 の因子お よ び骨 折との 関係につ い て検 討 した。
2.
骨粗鬆 症の頻度は16.
2
%で あっ た。 その割 合は,
女 性は男 性に比して 有 意に高く,
ま た 60歳 以上 に多 かっ た。3.
骨 粗 鬆 症と機 能 障 害との関 係におい て,
麻 痺や筋 力 等の運 動 能 力との間に有意な差は 認 め られ な かっ た。 又 痴 呆との間には有意 差 を認め た が,
年齢の影響によ る ものと推 測さ れ た。 4,
起 居 移 動 動 作の自立 度との関係では,
自立度が低 くな るに した が っ て骨 粗 鬆 症の頻度が有意に高かっ た。 5,
骨 折 率は 10,
0%で あっ た。 骨折は脊 椎圧迫 骨 折 と大腿 骨 頸 部 骨 折で,
脊 椎 圧 迫骨折は胸 腰 椎 移 行 部に多 かっ
た。 また骨 粗 鬆 症 を有し た34
例の う ち, 骨 折 例は 8 例, 23.
5% を占め,
骨 粗 鬆 症 を有さ ない患 者に比べ 有意に骨折率が高かっ た。 6.
大腿 骨 頸 部 骨 折 例は,
全例骨粗鬆症を有して いな かっ た。 受傷機転の調 査で は,
転 倒,
転落とい う外力が 直接の原因で あっ た。7
.
以上か ら,
脊椎圧 迫 骨 折は,
骨 祖 鬆 症 を有するも の に多く, ま た大 腿 骨 頸 部 骨 折は,
脊推の X 線像に お いて骨粗鬆症が無く とも転 倒,
転 落によ り骨 折を起こし う るの で, 特にADL
や 生 活 行 動 範 囲の拡大に あ たっ て は,
充分な転倒 防止対策を とっ て リハ ビリテー
ショ ンを 進めること が必 要であ る と思 わ れた。本論文の要 旨は
,
第24
「司日本 理 学 療 法 士学会におい て発 表し た。 引 用 文 献 1) 折 茂 肇,
白木正孝:骨疾患と代 謝.
囗木 老 年 隆 学会雑誌 17二237−
240,
1980.
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診断と治 療の現 状一.
整 形・
災 害外科 31:1631−
1637,
1988,
3)二木 立:脳 卒 中 リハ ビ リテー
シ ョ ン患#の早期自立 度 予 測.
リハ 医学 19:201−
223,
1982.
4)浜田博文,
朝 倉 哲 彦・
他 :中 枢神 経疾患の リハ ビリテー
ショ ンにお ける片 麻 痺.
ADL と精 神機 能 低 下との関 連 性に つ いて.
総合リハ 16:301304,
1988,
5) 西沢 良 紀,
中 塚 醤 義:運動 療 法.
Pharma Medica 5 :82−
88,
1987,
6)水野 耕 作 :高 齢 者の脊椎骨折にっ い て.
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1984,
7) 林 泰 史:ね た き り 老人の原 因 疾 患 と して の骨 粗鬆症.
Pharma Medica 5 ;89−
92,
]987.
N工 工一
Eleotronio LibrarytiX'.EP
tiMg
{DEI{ELptfi
t
Riff
tzo Lli-c
415<Abstract>
Osteoporosis and Fracture inPatientswith Apoplexia
Shigertt
TAKAHASHL
RPT,
Syuuiti
SATOU,
RPT, KenMIURA,
RPT,
Miwa
SYOUJL
RPT,
Reito
SATOU,
RPT,
Isamu
HONDA,
RPT,
Isoo
OKAMOTO,
MD
Dept.
of
Physical7]}iempyHblehaidoKin-iklj,oThis study was performed to
invetigate
osteoporosis accompanying apoplexia andits
relat-ed factors,and toclarify therelationshipbetween
osteoporosis ancl fracture.The subjects con-sisted of 210 patients.A
totalof 10items
were investigatedasfactors
associated with osteopo-rosis: age, sex, duration after the onset of apoplexia, grade of paralysis, lumbago, muscle strength of thesound side of thelower
extremity,dementia,
superlicial and deep sensations ofthe sound side of thelower extremity, and disabilitylevel.
Result showed that osteoporosis occurred
in
34of the 210patients(L6.2%),
and itsinci-dence was significantly higher infemales
(px<
O.Ol). The incidence increasedsignificantly asthe
degree
of ADI. independence decreased(p<
O,05),
Twenty-one
ofthe
210 patients(10.0%)
suffered fracture:18 patientssuffered vertebralfractureand
3
suffered fractureof the femoral neck. The incidence of vertebral fracturewas significantlyhigher
(23.5%;
p<O.Ol)
when osteoporosis was present,whereasfemoral-neek
fracture was common in relatively younger patients in whom osteoporosis was not seen.