J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 11, No. 1, pp. 25•`32, 1997
原
著
胎児 心拍 測 定法 の相違 が助 産婦 の
モニ タ リン グ行為 に与 え る影響
The
Effects
of Differences
in Methods
of Measuring
Fetal
Heart
Rate
on Monitoring
Activities
of Midwives
島 田 真 理 恵(Marie SHIMADA)* 要 約 リス クの低 い 産婦 の分 娩 第1期 に お け る助 産 婦 の モ ニ タ リン グ行 為 が,胎 児 心 拍 測 定 法 の相 違 に よ っ て どの よ う に変 化 す るか を明 らか にす る 目的 で,構 成 的 観 察 法 を用 い て 助 産 婦 の 行 為 を観 察 した 。 都 内一 私 立 病 院 の助 産 婦 を対 象 に,ド ップ ラ ー心 音 計 に よ る間歓 的聴 診 群33観 察 場 面,分 娩 監視 装 置 に よ る持 続 的 測 定群34観 察場 面,計67観 察 場 面 の デー タ収 集 を行 い,2群 を比 較 ・分 析 し,以 下 の よ う な結 果 を得 た 。 1.2群 に お いて,助 産婦 の経 験 年数 別 場 面 担 当数 お よ び助 産 婦 と産 婦 の 量 的 接 触 に差 は認 め られ なか っ た。 2.モ ニ タ リン グ行 為 過 程 は,1)情 報 へ の接 近,2)情 報 収 集,3)統 合 ・判 断,4)ケ ア の過 程 をた どる。 胎 児 心 拍 測 定 と い う情 報収 集法 の相 違 は,2)情 報 収 集,3)統 合 ・判 断,4)ケ ア の 内容 を変 化 させ た。 AbstractThe objective of this research is to determine how the two fetal heart rate measurement
methods, intermittent ausculation (AUS) and electric fetal monitoring (EFM), differ in their
effects on midwives' monitoring activities.
A checklist prepared by the author was used in observation of monitoring women in labor
conducted by 16 midwives at a private hospital in Tokyo. This checklist regarded each 30-
minutes observation period as one "scene". Data for 33 AUS scenes and 34 EFM scenes
were used in comparative analysis.
All 16 midwives engarged in both types of fetal heart rate measurement. No difference
were recognized among the midwives in their years of experience, the number of times they
conducted monitoring or the amounts of contact they had with the women in labor.
Among the results of analysis, it was found that with EFM it was more common for
palpation examination to not coincide with contractons, there was less frequency of asking
the women in labor about their feeling or desires and the number of directions given by the
*東 京 都 立 医 療 技 術 短 期 大 学 専 攻 科(Tokyo Metropolitan College of Allied Medical Sciences)
胎 児 心拍 測 定 法 の相 違 が助 産 婦 の モニ タ リング行 為 に与 え る影 響
midwives increased. Also, with EFM, internal examinations were conducted with greater
frequency and in the area of care, there was less frequency of back massage and changing
the position of the women in labor, while the women themselves had less freedom to assume
their desired positions.
Iは じ め に
分 娩 中 の 胎 児 の 状 況 把 握 は 主 と し て 胎 児 心 拍 測 定 に よ っ て 行 わ れ る 。 胎 児 心 拍 測 定 は 従 来 か ら 行 わ れ て い る トラ ウ ベ や ド ッ プ ラ ー に よ る 間歇 的 聴 診 法(Intermittent ausculation:以 下,AUS)と 分 娩 監 視 装 置 に よ る 持 続 的 測 定 法(Electric fetal monitoring:以 下,EFM)に 分 類 さ れ る 。 そ し て 現 在 の 日 本 の 病 産 院 で は,胎 児 仮 死 を 予 防 で き る 欠 く こ との で き な い 胎 児 モ ニ タ リ ン グ 法 と し て, EFMが 重 要 視 さ れ て い る 。 し か し,EFMは,1970年 代 よ り北 米 や ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 で 行 わ れ て い る 評 価 研 究 に よ っ てAUSの 場 合 よ り帝 王 切 開 率 を 上 昇 さ せ る が,出 生 し た 児 のApgar scores等 に は 差 が な い こ と が 共 通 に 認 め ら れ て い る1)∼3)。 ま た,Hodnett4)は,EFMは 産 婦 に 対 し拘 束 感 を 与 え,分 娩 に 対 す る コ ン ト ロ ー ル 感 を 低 く す る と述 べ て い る。 こ れ ら の こ と か らAUSを 選 択 し た 場 合 と EFMを 選 択 した 場 合 で は,助 産 婦 が 提 供 し て い る ケ ア の 質 に も違 い が 生 じ て い る の で は な い だ ろ う か とい う疑 問 を もっ た 。 そ して,リ ス ク の低 い産 婦 の 分 娩 第1期 にお い て,胎 児 心 拍 測 定 法 の違 い が助 産 婦 の モ ニ タ リン グ 行 為 を変 化 させ るか ど うか を明 らか に した い と 考 えた 。 II概 念 枠 組 み モ ニ タ リン グ行 為 と はモ ニ タ リ ング とい う看 護 者 の状 況 査 定 過 程 とそ れ に よ っ て 引 き出 され た ケ ア,あ るい はモ ニ タ リ ング と並 行 して行 わ れ た ケ ア を指 す。 本 研 究 の概 念 枠 組 み(図1)は,こ の モ ニ タ リ ン グ 行 為 の 過 程 を 示 し た もの で,Benner5)の 理 論,お よ び 内布 ら6)の質 的研 究 を参 考 に研 究 者 が 図1概 念枠組 み 26 日本 助 産 学 会誌 第11巻 第1号(1997)
胎 児心 拍測 定 法 の相 違 が助 産婦 の モ ニ タ リング行 為 に与 え る影響 自己作 成 した もの で あ る。 図1に 示 す よ うに助 産 婦 は,分 娩 期 の看 護 を行 うに あ た り,基 本 的 方 向性(目 標)を もっ て い る。 そ して,こ の 方 向性(目 標)に 向 か っ て刻 々 と変 化 す る産 婦 の心 身 の状 況 を把 握 す るた め に分 娩 期 の モ ニ タ リ ング が行 わ れ,並 行 して あ るい は モ ニ タ リング の 統 合 ・判 断 の 結 果 と して ケ ア が 行 わ れ る。 モ ニ タ リン グ行 為 は,情 報 へ の 接近 →情 報収 集 → 統 合 ・判 断 → ケ ア の 過 程 を た ど る。AUSと EFMと い う胎 児 心 拍 測 定 方 法 の違 い は,情 報 収 集 の 違 い と考 えた 。 モ ニ タ リング 行為 過程 は 円環 過 程 で あ るの で,情 報 収 集 法 の違 い は モ ニ タ リ ン グ行 為 過 程 全 般 に影 響 す る こ とが 考 え られ る。 そ のた め本 研 究 で は,同 一 の助 産 婦 集 団 に お い て, 胎 児 心 拍 測 定 がAUSの 場 合 とEFMの 場 合 に お い て助 産 婦 が 産 婦 に対 して 行 うモ ニ タ リ ング行 為 を観 察 し,そ れ を分 析 す る。 III研 究 の 目 的 リス ク の低 い産 婦 の 分 娩 第1期 に お い て,胎 児 心 拍 測 定 法 の違 いが,助 産 婦 の モ ニ タ リ ング行 為 を変 化 させ るか ど うか を明 らか に す る。 IV方 法 1.研 究 の 対 象 1)対 象 産 婦 観 察 の 対 象 とす る産婦 は,撹 乱 変 数 除 去 の た め 低 リス ク の者 と した 。 また,胎 児 仮 死 が疑 わ れ る た め にEFMを 行 っ た場 合 に は,対 象 か ら除 外 し た。 2)対 象 施 設 お よ び対 象 助 産 婦 対 象 施 設 は都 内 の一 私 立 病 院 で あ った 。 対 象助 産 婦 は分 娩 室 勤 務 の 助 産 婦 全 員 とした 。 対 象施 設 で は,入 院 時,分 娩誘 発 剤使 用 時,分 娩室 入室 が 間 近 な とき は,な る べ くEFMを 行 う 方 針 を も って い た 。 す な わ ち,同 一産 婦 がAUS, EFM両 方 法 の 胎 児 心 拍 測 定 を受 け て い る こ とが 多 か っ た。 2.研 究 期 間 本 調 査 は,1996年7月1日 か ら8月30日 まで行 った 。 3.デ ー タ収 集 の 方 法 助 産 婦 の モ ニ タ リ ング行 為 の観 察 は,30分 を1 観 察場 面 とす る 自己 作 成 に よ るチ ェ ッ ク リス トを 用 い て 行 った 。 チ ェ ッ ク リス トは,助 産 婦 の産 婦 に対 す る15項 目の モ ニ タ リン グ行 為(ア イ コ ン タ ク ト,タ ッチ, 陣 痛 測 定,胎 児 心 拍 測 定,内 診 等)を カテ ゴ リー シス テ ム に基 づ き,1分 ご とに チ ェ ッ クす る構 成 と した 。 す な わ ち1観 察 場 面 は30観 察 カ ラム で あ る。 また,行 為 の な か で ケ ア に関 して は,助 産 婦 が行 っ て い た ケ ア を各 該 当 カ ラム に そ の ま ま記 入 した。 助 産 婦 の発 語 に つ い て は,発 語 その ま ま を各 カ ラ ム に書 き留 め,観 察 終 了後,自 己 作 成 の10項 目 か らな る発 語 カ テ ゴ リー に分 類 した 。 研 究 者 の観 察 場 面 で の参 加 の しか た は,「参 加 者 と して の観 察 者 」7)の立 場 を と り,助 産 婦,産 婦 の 視 界 の 中央 に位 置 しな い よ う配 慮 した 。 そ して,産 婦 ご とに分 娩 所 要 時 間 が 異 な るた め に生 じる観 察 場 面 の不 均 質 を な くす た め,観 察 間 の イ ン ター バ ル を30∼45分 お きな が ら分 娩 室 入 室 まで 観 察 を繰 り返 し,分 析 に は分 娩 室 入 室 前3時 間 以 内 の 場 面 を採 用 し た。 4.予 備 調 査 プ レテ ス トを行 い,チ ェ ッ ク リス トの項 目の 修 正 お よ び追 加 を行 った 。 ま た,観 察 法 に つ い て 知 識 を もつ 助 産 婦 と と もに 同 じ場 面 を観 察 し,チ ェ ッ ク内 容 を比 較 した 。 観 察 者 間 信 頼 性 と して 一 致 度 を求 めた 結 果 は,平 均95%で あ っ た。 5.対 象 者 の 参 加 の 同 意 と倫 理 的 配 慮 (1)本研 究 で は,産 婦 の プ ラ イバ シ ー保 護 と助 産 婦 に脅 威 を与 えな い よ う にす るた め,ビ デ オ 撮 影 はせ ず,観 察 を行 った 。 (2)対象助 産 婦,産 婦 とも に個 々 の協 力 意 思 や 観 察 結 果 に よ って 不 利 益 を受 け る こ とは な い こ と, デ ー タ は研 究 目的 以 外 で は使 用 せ ず,す べ て匿 名 とす る こ と,観 察 途 中 の協 力 拒 否 もで き る こ と を保 証 した 。 6.分 析 方 法 統 計 的分 析 方 法 を用 い て,2群 間 の モ ニ タ リ ン 日本 助 産 学会 誌 第11巻 第1号(1997) 27
胎児 心 拍測 定 法 の相 違 が助 産 婦 の モニ タ リング行 為 に与 え る影 響 表1情 報収 集 注)モ ニ タ リン グ行為 の 平均 カ ラ ム数 と は,1観 察 場 面30カ ラ ムの う ちで,提 示 の モ ニ タ リング行 為 が観 察 された カ ラム の 平 均値 を示 す 。 グ行 為頻 度 を比 較 した 。 V結 果 1.対 象 の 背 景 本 研 究 は胎 児 心 拍 測 定 法 の相 違 に よる助 産 婦 の モ ニ タ リン グ行 為 の 比 較 を 目的 に して い るた め, 41名 の 産 婦 か ら得 られ た67観 察 場 面 を胎 児心 拍 測 定 法 の 違 い に よ っ てAUS群33観 察 場 面,EFM群 34観 察 場 面 に分 類 した 。 そ して,観 察 場 面 の 状 況 を左 右 す る要 因 と考 え られ る出 産 経 験,観 察 の 時 期,夫 立 ち 会 いの 有 無, 陣 痛 促 進 剤 の 使 用 の 有 無 な どに つ い て 比 較 した が,有 意 差 は認 め られ なか っ た。 また,対 象産 婦 を担 当 した の は22∼46歳 の16名 の 助 産 婦 で あ っ た 。 助 産 婦 の 経 験 年 数 別 にAUS群 お よ びEFM 群 を担 当 した 頻 度 につ い て比 較 した が,2群 間 に 有 意 差 は認 め られ なか った 。 2.2群 間 の モ ニ タ リン グ行 為 頻 度 につ い て 1)全 体 像 の 比 較 1観 察 場 面 中,助 産 婦 が 産 婦 と と もに い た 平 均 カ ラム 数,平 均 訪 問 回 数,助 産 婦 の発 語 頻 度 につ いて2群 間 に有 意 差 は認 め られ ず,量 的 接 触 は同 じで あ った 。 また,観 察場 面 中 で の 産 婦 の陣 痛 発 現 回数 に も 差 はみ られ ず,2群 はモ ニ タ リ ング行 為 頻 度 の 観 察 に お い て 同 じ条 件 下 で あ っ た。 2)情 報 へ の 接 近 情 報 の接 近 につ い て は産 婦 との関 係 を つ くる行 図2陣 痛 測定 一間欠 時,収 縮 時触診 の割 合 為 で あ る 「ア イ コ ン タ ク ト」,「タ ッチ 」 や 助 産 婦 の発 語 カ テ ゴ リー の 「行 為 の予 告 」 や 「関 係 性 を つ くる言 葉 か け」 等 が 該 当 した 。 これ らの観 察 カ ラム 数 を比 較 した が,い ず れ の 変 数 に お い て も2群 間 に有 意 差 は認 め られ な か っ た。 3)情 報 収 集(表1) 陣 痛 の状 況 を把 握 す る た め の腹 部 触 診 を手 掌 全 体 で行 っ て い た カ ラ ム数 は,AUS群 が 有 意 に多 か っ た(p<0.05)。 また,図2の よ うに,AUS群 の ほ うが 陣 痛 収 縮 時 に触 診 して い る頻 度 が 有 意 に 多 か っ た(p<0.01)。 内診 の 平 均 カ ラ ム 数 は,EFM群 の ほ うが 有 意 に 多 か った(p<0.05)。 また,「腰 を さす る の と押 す の で は ど ち らが い い で す か 」とい った,「 産 婦 に主 観 ・希 望 を 開 く」こ と は,AUS群 の ほ う が 有 意 に 多 か っ た(p< 0.01)。 28 日本 助産 学 会 誌 第11巻 第1号(1997)
胎 児 心拍 測 定 法 の相違 が 助産 婦 の モニ タ リング行 為 に与 え る影 響 表2統 合 ・判 断 注)モ ニ タ リン グ行 為 の 平均 カ ラム数 とは,1観 察 場 面30カ ラム の う ちで,提 示 の モニ タ リン グ行 為 が 観 察 されたカ ラ ム の平 均 値 を 示す 。 表3ケ ア 注)モ ニ タ リング行 為 の平 均 カ ラ ム数 とは,1観 察 場 面30カ ラム の うち で,提 示 の モニ タ リング行 為 が 観 察 され たカ ラ ムの 平 均 値 を示 す。 図3体 位 の バ リエ ー シ ョン 胎 児 心 拍 測 定 に関 して は,AUS群 の 平 均 カ ラム 数 は,1.24で,代 表 的 な産 科 学 書8)で 掲 げ られ て い る分 娩 第1期 の胎 児 心 拍 測 定 基 準 で あ る30分 に1 回 の胎 児 心 拍 測 定 を行 っ て い た。一 方,EFM群 で は,助 産 婦 が 産 婦 と と もに い た カ ラ ム の約38.6% で 胎 児 心 拍 測 定 が 観 察 され た 。 4)統 合 ・判 断(表2) 本 研 究 で は一 連 の モニ タ リ ング過 程 の な か で行 わ れ た 産 婦 へ の ケ ア,働 きか け の と きに発 す る統 合 ・判 断 に か か わ る助 産 婦 の 発 語 を も っ て,統 合 ・判 断 とみ な した 。 「内診 をす る の で 足 を しっ か り開 い て 」 とい っ た 行 為 の 指 示 に 関 す る発 語 は,EFM群 の ほ うが 有 意 に多 か った(p<0.05)。 5)ケ ア(表3) 表3の よ うに,分 娩 第1期 の ケ ア とし て全 例 に 実 施 が可 能 で あ る項 目に つ い て比 較 を行 っ た。 AUS群 の ほ うが,マ ッサ ー ジ,体 位 変 換 が観 察 され た カ ラ ム が有 意 に多 か った(p<0.01),(p< 0.01)。 ま た,図3の よ うに,AUS群 の ほ うが さ ま ざ まな体 位 で 過 ご して いた(p<0.01)。 3.2群 間 の モ ニ タ リン グ行 為 相 互 の 関係 性 の 違 い 1)情 報 収 集 の 項 目 と統 合 ・判 断 の項 目 との相 関 関 係 EFM群 は情 報 収 集 項 目 の 「胎 児 心 拍 測 定 」と統 合 ・判 断 の項 目 の 「判 断 ・情 報 の 提 供 」 が 負 の相 関 関 係 に あ っ た(p<0.01)。 す な わ ちEFM群 は, 分 娩 監 視 装 置 の胎 児 心拍 に耳 を傾 け て い た り,胎 児 心 拍 の提 示 や記 録 に 目 を向 け て い る 時 間 が 長 く な るほ ど,産 婦 に対 して 助 産 婦 の判 断 や 現 在 の状 況 を知 らせ る発 語 が 少 な くな っ た 。 しか し,こ の 関係 はAUS群 に は認 め られ なか っ た。 日本 助産 学 会誌 第11巻 第1号(1997) 29
胎児 心 拍測 定 法 の相 違 が助 産 婦 の モニ タ リング行 為 に与 える影 響 2)情 報 収 集 の 項 目 とケ ア の項 目 との 相 関 関 係 AUS群 は,情 報 収 集 項 目の 「産 婦 に主 観 ・希 望 を聞 く」 とケ アの 項 目 の 「マ ッサ ー ジ」 が 正 の 相 関関 係 に あ った(p<0.05)。 す なわ ちAUS群 は, マ ッサ ー ジ を多 くす る ほ ど産 痛 の部 位 や マ ッサ ー ジ の行 い 方 な ど を産 婦 に聞 い て確 認 す る こ とが 多 くな っ た 。しか し,こ の 関 係 はEFM群 に は認 め ら れ な か っ た。 3)情 報 収 集 の 内診 と統 合判 断 の 項 目 との相 関 関 係 AUS群 は,情 報 収 集 項 目 の 「内診 」 と統 合 ・判 断 の項 目 で あ る 「行 為 の 予 告 」 が 正 の相 関 関係 に あ っ た(p<0.01)。 す なわ ち 内診 が多 くな れ ば, 内診 を は じめ とす る助 産 婦 の 行 為 の 予 告 が 多 く示 され た。 一 方,EFM群 は,「 内 診 」 と 「行 為 の 指 示 」 が 正 の相 関 関 係 に あ っ た(p<0.01)。 す なわ ち 内診 が 多 くなれ ば,内 診 を行 うた め の 体 位 の具 体 的 体 位 の 指 示 な どが 多 く行 わ れ て い た 。 VI考 察 本研 究 の 結 果,同 一 助 産 婦 集 団 で あ って も,情 報 収 集 法 で あ る胎 児 心 拍 測 定 法 が 異 な る と,情 報 収 集,統 合 ・判 断,ケ ア の 内容 に違 い が生 じ る こ とが 明 らか とな った 。 そ こで,2群 の モ ニ タ リン グ行 為 の 差 異 が 特 徴 的 で あ っ た側 面 を 中心 に考 察 を述 べ て い く。 1.陣 痛 測 定 につ い て 触 診 は,第3次 元 パ ター ン の知 覚 とい わ れ,皮 膚感 覚 受 容 器 か らの情 報 の み に基 づ く触 知 覚 に よ る もの だ けで な く,触 運 動 知 覚 に よ っ て な され る とい わ れ る9)。触 診 と は能 動 的 に触 覚 を用 い て知 覚 し よ う とす る行 為 と理 解 で き る。AUS群 の 陣痛 測 定 は,産 婦 に子 宮収 縮 が起 こ りつ つ あ る の を産 婦 の様 子 を観 る等,自 己 の 感 覚 で と らえ,自 身 の 触 覚 を もっ て そ の持 続 時 間 や 強 さ を確 か な情 報 と しよ う とす る測 定 で あ った と考 え られ る。 一 方,EFM群 は 子 宮 収 縮 時 をね ら った 触 診 は 少 な く,か つ指 先 で の触 診 で あ った 。 これ は触 知 覚 は視 覚 に よ っ て コ ン トロー ル され る とい う視 覚 優 位 の 原 則 に よっ て,分 娩 監視 装 置 か らの視 覚 的 情 報 に 重 きが お か れ,触 情 報 が ブ ロ ッ ク さ れ る 「視 覚 的 捕 獲 」10)が起 こ っ て い た の で は な い か と 推 察 され る。 2.胎 児 心 拍 測 定 に 関 して EFM群 は 「胎 児 心 拍 測 定 」 と統 合 ・判 断 の 項 目 で あ る 「判 断 ・情 報 提 供 」 が 負 の相 関 関 係 を 示 し た 。 す な わ ち 助 産 婦 が 胎 児 心 拍 測 定 を多 くす る ほ ど 「判 断 ・情 報 提 供 」 の発 語 が 減 少 す る とい う こ とで あ る。 分 娩 監 視 装 置 は胎 児 心 拍 お よ び子 宮 収 縮 状 態 の 情 報 を持 続 的 に 得 るた め に装 着 され る もの で あ る の で,助 産 婦 が そ の モ ニ タ リ ン グ に多 くの 時 間 を 費 や す の は予 想 され る こ とで は あ った 。 しか し, そ れ に よ っ て産 婦 に対 す る情 報 提 供 が 減 少 す る状 況 を生 み 出 す こ とは 問題 で あ る と考 え られ る。 マ ッサ ー ジ の観 察 頻 度 が 低 い の も,助 産 婦 が 胎 児 モ ニ タ リン グ に終 始 し,ケ ア に移行 で き な い こ とが 一 因 と考 え られ る。 3.内 診 につ い て 「内 診 」の カ ラ ム数 はEFM群 の ほ うが 有 意 に多 か っ た 。 内 診 の 数 値 は産 婦 の 分娩 進 行 状 態 を最 も 一 般 化 で き る指 標 で あ るが ,他 の 行 為 に比 較 して 産 婦 自 身 の 苦 痛 を伴 う情 報 収 集 法 で もあ る。 また,EFM群 は産 婦 に 「行 為 の 指 示 」をす る発 語 がAUS群 と比 較 して 有 意 に 多 か った 。 そ し て EFM群 の 内診 と 「行 為 の指 示 」が 正 の相 関 関 係 に あ っ た。 一 方,AUS群 の 場 合 は 「内診 」 と 「行 為 の 予 告 」 が 正 の 相 関 関 係 に あ っ た 。 す な わ ち EFM群 の ほ うが 客 観 的 診 断 を下 す 内 診 が 多 く, か つ 産 婦 に指 示 的 で あ っ た。 これ はEFM群 の 場 合,助 産 婦 に は 分 娩 監 視 装 置 の 管 理 とい う役 割 が 加 わ る こ とに よ っ て,AUS 群 の場 合 と比 べ,客 観 的 に状 況 を判 断 し よ う とい う傾 向 が 強 く現 れ るの で は な い か と推 察 され る。 そ の よ うな 客観 的 問 題 解 決 者 で あ るべ き役 割 は, 助 産 婦 を援 助 す る人,産 婦 を援 助 され る人 と い っ た 一 方 的 な援 助 関 係 を強 くす る と考 え られ る。 4.「 産 婦 の 主 観 ・希望 を聞 く」 に 関 して 情 報 収 集 の産 婦 の 「主 観 ・希 望 を聞 く」 発 語 は, AUS群 の ほ うが有 意 に多 か っ た 。また,ケ ア で あ る 「マ ッサ ー ジ 」もAUS群 の ほ うが 有 意 に多 か っ 30 日本助 産 学会 誌 第11巻 第1号(1997)
胎 児心 拍測 定 法 の相 違 が助 産婦 の モ ニ タ リ ング行 為 に与 える影 響 た。 そ してAUS群 は 「産 婦 の 主観 ・希 望 を 聞 く」 と 「マ ッサ ー ジ 」 が,正 の相 関 関 係 に あ った 。 つ ま り産 婦 の 主観 ・希 望 を聞 き,そ れ を生 か しつ つ マ ッサ ー ジ を行 って い た こ とを示 す 。 Hodnett11)は,「す べ て の産 婦 に,あ るい は 同一 の産 婦 で さ え も,分 娩 経 過 中 ず っ と有 効 で あ る よ うな援 助 は存 在 しな い。 した が っ て産 婦 に行 っ て い るケ ア が産 婦 に とっ て よい か,そ うで な い か を 繰 り返 し確 認 す べ きで あ る」 と述 べ て い る。 助 産 婦 はEFMを 行 っ て い る と きは,AUSの と き よ りも産 婦 の 主 観 を聞 か な くな る可 能性 の あ る こ とを認 識 し,ケ ア を行 う こ とが 必 要 と考 え られ る。 5.体 位 変 換 につ い て AUS群 はEFM群 と比 較 して,体 位 変 換 が 観 察 され た頻 度 が有 意 に 多 く,自 由 な体 位 を とっ て い た 。 この 差 の 原 因 の一 つ は,自 由 な体 位 や 体 位 変 換 に よ って 分 娩 監 視 装 置 の 測定 状 態 が不 良 とな る の で,助 産 婦 が 体 位 変換 や 自由 な体 位 を勧 め な くな るた め と考 え られ る。 Roberts12)は,分 娩 第1期 に お い て 自由 な体 位 を とる こ とが 満 足 の い く分娩 に つ な が る と して, 投 薬 やEFMに よ って産 婦 を仰 臥 位 に 固 定 して 寝 か せ る こ とを問 題 視 して い る。 毛 利13)は,EFMや 点 滴 等 の 医療 介 入 が あ る と 主観 的拘 束感 が 有 意 に 強 くな る こ と,主 観 的拘 束 感 が 強 くな る ほ ど動 きの 対 処 評価,身 体 知 覚,分 娩 に対 す る コ ン トロー ル感 が低 くな る こ とを報 告 して い る。 す な わ ち,産 婦 はEFMに よ る身体 的 拘 束 感 か ら分 娩 進 行 に伴 う身体 的 違和 感 を強 く感 じた り, 自己 の 身体 の 変化 に つ い て い け な くな り,コ ン ト ロー ル感 を喪 失 す る状 態 に 陥 りや す くな る と推 察 され る。 VII結 論 助 産 婦 の モ ニ タ リ ング行 為 を構 成 的観 察 法 に よ っ て観 察 し,AUS群33観 察 場 面,EFM群34観 察 場 面 に つ い て比 較 分 析 を行 っ た。 そ の結 果,以 下 の こ とが明 らか とな っ た 。 1.各 群 を担 当 した助 産 婦 は 同一 集 団 で あ り,助 産 婦 の経 験 年 数 別 場 面 担 当数 に 差 は認 め られ な か っ た 。 2.助 産 婦 と産 婦 の 量 的 接 触 お よび 産 婦 の 陣 痛 発 現 頻 度 に も差 は認 め られ な か っ た 。 3.助 産 婦 の モ ニ タ リ ング 行 為 は,EFMの 場 合 AUSの とき と比 較 して以 下 の よ うに変 化 した 。 ・陣痛 測 定 を子 宮 収 縮 と一 致 して行 う こ とが 少 な か った 。 ・産 婦 に主 観 や 希 望 を聞 く頻 度 が 少 な く,産 婦 へ の 指 示 が 多 か った 。 ・内診 頻 度 が 多 か った 。 ・ケ ア 実施 につ い て は,腰 部 マ ッサ ー ジや 体 位 変換 頻 度 が 少 な く,自 由 な体 位 が とれ て い な か った 。 助 産 婦 は,こ れ らモ ニ タ リ ング行 為 の 変 化 を認 識 し,ケ ア に あた る必 要 が あ る。 謝辞 快 く研究 に協 力 して くだ さった産婦 の皆様,助 産 婦 の皆様,研 究協 力 を承 諾 して くだ さい ました病 院 の看 護部 長様 お よび産 科病 棟 婦長 様 に深 く感 謝 い た し ま す。 また,研 究 をご指 導 くだ さい ました聖路加 看護 大 学大学 院堀 内成子教 授 に深 く感 謝 いた します。 本研 究 は,聖 路加看 護大 学大学 院看護 学研 究科 に修 士論 文 として提 出 した もの の一 部 に修 正 を加 えた も のであ る。 また,こ の一部 は第2回 聖路 加看 護学会 で 発表 した。 引用文献 1) 葉久真理, 他: 持続的胎児心拍モニタリング法 と間歇 聴診法の比較研究, 日本助産学会誌, 9(1), 11-22, 1995.
2) Nelson, James P.: Electonic fetal heart rate monitoring during labor, Information from ran-dermized trials, BIRTH, 21(2), 101-110, 1994. 3) Grant Adrian ; Monitoring the fetus during
labor, Chalmer lain, et al. ed.: Effective care in pregnancy and childbirth, 846-882, Oxford university press. 1989.
4) Hodnett Ellen D.: Patient control during labor , Effects of two types of fetal monitoring, JOGNN, March/April, 94-99, 1982.
5) Benner, Patricia.: From novice to expert, excel-lence and power in clinical nursing practice .
1984, 井 部 俊 子, 他 訳, ベ ナ ー 看 護 論, 医 学 書 院, 1994. 6) 内 布 敦 子, 他: 看 護 の 質 を 構 成 す る 要 素 に 関 す る質 的
研 究 一 「モ ニ タ リ ン グ 機 能 」 に 焦 点 を 当 て て, 平 成6年 度 厚 生 省 看 護 対 策 総 合 研 究 事 業 報 告 書, 79-103, 1995. 7) Fegerhaugh, shizuko Y.: 参 加 観 察 法, 看 護 研 究, 15
胎 児 心拍 測 定法 の 相違 が 助産 婦 の モ ニ タ リング行 為 に与 え る影響 (3), 58, 1982. 8) 真 柄 正 直 著, 室 岡 一 改 訂: 最 新 産 科 学/正 常 編, 文 光 堂, 180, 1980. 9) 大 山 正, 他 編: 新 編/感 覚 ・知 覚 ハ ン ド ブ ッ ク, 誠 信 書 房, 1295, 1994. 10) 同 上 書, 88.
11) Hodnett, Ellen: Nursing support of the laboring
woman, JOGNN, 25 (3), 257-264, 1996. 12) Roberts, Joice: Alternative positions for
childbirth-part I; First stage of labor, Journal of midwifery, 25 (4), July/Augest, 11-18, 1980.
13) 毛 利 多 恵 子: 産 婦 の 身 体 拘 束 が 陣 痛 体 験 に 及 ぼ す影 響, 聖 路 加看 護 大 学大 学 院 修 士論 文, 1993.