J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 12, No. 1, pp. 17-26, 1998. 8
原
著
自然分 娩 の骨盤 出 口部 にお け る
産 道 の形 態変化 と助 産術
Alterations
of Birth
Canal
at Pelvic
Outlet
during
Natural
Delivery
and Their
Significance
in Japanese
Midwifery
村 上 明 美(Akerni MURAKAMI)* 要 約 自然 分 娩 の 骨 盤 出 口部 に お け る産 道 の形 態 変 化 を,力 学 的 に 分 析 し た と こ ろ,以 下 の 「命 題 」 が 導 き 出 さ れ た 。 1)娩 出 力 が 陰 門 の 中心 に垂 直 方 向 に働 け ば,娩 出 力 は 骨 盤 誘 導 線 と一 致 し,産 道 は 力 学 的 に 合 理 的 な 形 態 変 化 とな る た め,会 陰 裂 傷 は生 じ に くい 。 骨 盤 出 口 部 に お け る産 道 の 形 態 変 化 を継 続 的 に観 察 す る こ と に よ り,娩 出 力 の 働 く部 位 と方 向 が 予 知 で き,意 図 的 に娩 出 力 の 方 向 を 調 整 す る こ とが 可 能 と な る た め,会 陰 裂 傷 の 予 防 を図 る こ とが で き る。 2)児 頭 娩 出 時 にdrive angleを 小 さ くす る と,娩 出 力 の 方 向 は骨 盤 誘 導 線 に 近 づ くた め,会 陰 裂 傷 は 生 じ に くい。 児 頭 娩 出 時 に は,大 腿 を屈 曲 す る,あ る い は 体 幹 を 前 傾 す る な ど,体 位 を工 夫 しdrive angleを 小 さ くす る と,お の ず と娩 出 力 の 方 向 が 調 整 され,会 陰 裂 傷 が 予 防 さ れ る。 3)骨 盤 底 筋 群 の抵 抗 が 小 さ い と,娩 出 力 は 前 方 に向 か い,反 対 に,骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 大 き い と,娩 出 力 は後 方 に 向 か う。 娩 出 力 が 後 方 に 向 か う と,会 陰 裂 傷 が 生 じや す い。 軟 産 道 組 織 の軟 化 を促 す こ と は,骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 を小 さ く し,会 陰 裂 傷 の 予 防 に つ な が る。 以 上 の 観 点 か ら助 産 実 践 を分 析 した と こ ろ,具 体 的 か つ 理 論 的 に行 為 を意 味 づ け る こ とが で き た 。 Abstract
Alterations of the birth canal at the pelvic outlet during natural delivery were mechani-cally analyzed. From this, three propositions were derived as follows.
1) When an expulsive force during delivery operates on the center of the vaginal opening, its line of force agrees with the pelvic axis. If the force causes the least alterations of the birth canal at the pelvic outlet, some lacerations are not liable to occur. Under continuous observation on the alterations of the vaginal opening, the mark and direction of the expul-sive force can be estimated previously. Therefore, the lacerations would be prevented by means of adjusting the direction of the force.
2) If a woman in delivery make her drive angle narrower on her fetal head expulsion, she
自然分娩の骨盤 出口部 にお ける産道の形態変化 と助 産術
is easy to fit the direction of the expulsive force to her pelvic axis and she may be relieved of some lacerations. Therefore, the lacerations would be prevented by making the drive angle narrower; flexing the thighs and/or leaning forward.
3) If a muscular resistance is weaker at the pelvic floor, the expulsive force tends to sift forward, whereas if the resistance is stronger there, the force backward. In the latter case, the perineal lacerations are liable to occur. Since a woman in pregnancy or delivery is adviced and trained soften the tissue of her birth canal, she can lower the power of resis-tance of the perineal mucles by herself; this leads to the prevention of perineal lacerations. Based on the analysis of the Japanese midwifery method from the abovementioned view-points, the significance of the midwives' professional techniques could be elucidated materi-ally and theoreticmateri-ally.
I緒 言 1.「 慣 例 化 され た 会 陰 切 開 」 の 曖 昧 性 わ が 国 に お い て は,昭 和30年 代 に 出 産 の 場 が 家 庭 か ら施 設 へ と急 速 に 変 化 し,現 在 で は約99%が 施 設 で の 出産 で あ る 。 産 科 学 の 発 展 に よ り,施 設 で は母 体 管 理 や 胎 児 ・新 生 児 管 理 を 目 的 に,分 娩 に 積 極 的 に 医 療 が 介 入 す る よ う に な っ た 。 し か し最 近 で は,医 療 の 管 理 下 に お か れ た 出 産 に疑 問 を 抱 き,自 然 に 出 産 した い と い う女 性 の ニ ー ズ が 世 界 的 に 高 ま っ て い る1) 。 慣 例 的 に行 わ れ て い る 医 療 介 入 の 一 つ に,分 娩 第II期 の 会 陰 切 開 が あ る が,産 科 学 的 な 立 場 か ら も,そ の 必 要 性 を主 張 す る意 見2)と 疑 問 視 す る 意 見3)4)5)が 存 在 し,統 一 見 解 を得 て い な い の が 現 状 で あ る 。 2.本 研 究 の 目 的 医 療 の 介 入 を前 提 と しな い 開 業 助 産 婦 の助 産 術 は,会 陰 裂 傷 の 予 防 に 大 き く貢 献 して きた 。 開 業 助 産 婦 に 出 産 の 援 助 を 求 め る母 親 は もち ろ ん の こ と,会 陰 切 開 を行 っ て い る 産 科 医 も,そ の 技 の卓 越 性 を認 め て い る 。 しか し残 念 な こ とに,今 日 ま で助 産 術 は 経 験 知 と して 受 け継 が れ て お り,そ の 理 論 的 根 拠 は明 らか に され て い な い 。 さ ら に,病 院 勤 務 の 助 産 婦 が 大 多 数 を 占 め る 今 日 の 現 状 で は,高 度 な 助 産 術 を伝 承 して い く こ とは 困 難 で あ る 。 本 研 究 で は,助 産 所 で の 自然 分 娩 に 着 目 し,産 婦 に 生 じ て い る 生 理 的 現 象 へ の 接 近 を試 み た 。 す な わ ち,助 産 術 解 明 の 手 が か り と して,骨 盤 出 口 部 に お け る産 道 の 形 態 変 化 を 明 らか に す る こ と を 目的 に産 道 形 態 の 力 学 的 な 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 か ら,産 道 の 形 態 変 化 に応 じ た助 産 術 の あ り方 を考 察 した 。 II研 究 の 対 象 と 方 法 1.対 象 茨 城 県 内 の 開 業 助 産 所Aに お い て,1995年6月 か ら10月 に 分 娩 予 定 の 産 婦 に,研 究 の 主 旨 と母 児 の 安 全 性 お よ び プ ラ イ バ シ ー の 保 持 を説 明 し,研 究 協 力 に承 諾 が 得 られ,か つ 産 道 の 伸 展 の 継 続 的 な 計 測 が 可 能 で あ っ た10名 を対 象 と した 。 2.デ ー タ 収 集 方 法 胎 児 は,骨 盤 出 口 部 に お い て は力 学 的 に抵 抗 の 少 な い 産 道 を通 過 す る た め,産 道 の 変 化 は,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(会 陰)や 陰 門(腟 口)の 観 察 に よ り 外 見 的 に把 握 が 可 能 で あ る。 今 回 は,力 学 的 手 法 を 用 い て,継 続 的 に 肛 門 ∼ 会 陰 交 連 お よ び 陰 門 を 計 測 した 。 デ ー タ収 集 の 手 順 は 以 下 の とお りで あ る 。 ① 分 娩 時,児 頭 が 排 臨 状 態 に な っ た 時 点(こ の 時 点 を0と す る)で,ス キ ン マ ー カ ー を用 い て 陣 痛 間 歓 時 に産 婦 の 肛 門 ∼ 会 陰 交 連 間 と陰 門 下 縁 に標 点 を う つ 。 標 点 に よ り 区 分 さ れ る5区 間 (a∼e区 間 とす る)が 等 間 隔 に な る よ う に, 標 点 は,肛 門,会 陰 交 連,肛 門 ∼ 会 陰 交 連 を3 等 分 す る2点,会 陰 交 連 を起 点 に 陰 門 前 方 へ 向 か う陰 門 縁 上 の2点(左 右 に う つ た め4点), 18 日本 助 産 学 会 誌 第12巻 第1号(1998.8)
自然 分娩 の 骨盤 出 口部 にお け る産道 の 形態 変 化 と助産 術 図1標 点の うち方 合 計8点 とす る(図1)。 ② 写 真 機 お よ び ビデ オ カ メ ラ に よ り,陣 痛 発 作 ご とに継 続 的 に会 陰部 お よび 陰 門 の変 化 を撮 影 す る。 3.分 析 方 法 分 析 は,工 学 的見 地 か ら専 門家 の指 導 の も とに 図2分 析手 順 図3全 症例 の模 式図
自然 分娩 の 骨盤 出 口部 にお ける産 道 の形 態 変化 と助 産術 以下 の 手 順 で 行 っ た(図2)。 ① 写 真 お よ び ビデ オ映 像 か ら肛 門 ∼ 会 陰 交 連 お よ び 陰 門 を平 面 的 に と ら え,標 点 お よ び陰 門 の形 状 を トレ ー ス す る。 ② 標 点 に よ っ て 区分 され る5区 間(a∼e区 間) の 各 標 点 間 の距 離 を測 定 す る。 ③ 各 計 測 時 点 ご との歪 を対 数 歪*と して 表 し,標 点 間 距 離 の変 化 を求 め る。 ④ 各 計 測 時 点 ご と に,陰 門 の 形 状 を,陰 門 縁 上 の 標 点 お よび 陰 門 最 前 縁 を通 る 曲線 に近 似 な3次 関 数 曲線 と して 求 め る。 ⑤ ④ で求 め られ た それ ぞ れ の陰 門 の 形 状 曲線 を, 肛 門 の位 置 を基 準 に重 ね 合 わ せ,肛 門 ∼ 会 陰 交 連 の変 化 お よび 陰 門 の形 状 の変 化 を求 め る。 ⑥ 各 症 例 の標 点 間 距 離 の変 化,肛 門 ∼ 会 陰交 連 の 変 化 お よび 陰 門 の 形 状 の 変 化 を簡 略 に理 解 で き る よ う に,各 標 点 間 の相 対 的 な(計 測 の最 初 と 最 後 の 時 点 を比 較 した)対 数 歪,陰 門 の 開 大途 中 の形 状,お よ び最 終 的 な陰 門 の形 状 を表 した 模 式 図 を作 成 す る。 ⑦ 以 上 を も とに,骨 盤 出 口部 に お け る産 道 の 形 態 変 化 につ い て分 類 し,関 連 因 子 を探 る。 III結 果 全 症 例 の模 式 図 は図3の とお りで あ る。 1.対 象 の 特 性 対 象 の 特 性 を 表1に 示 す 。 初 経 産 別 に み る と, 会 陰 裂 傷(I度)が 認 め られ た の は,初 産 婦4名 中2名,経 産 婦6名 中1名 の合 計3名 で あ り,児 体 重 は そ れ ぞ れ2,524g,2,950g,3,850g(全 体 平 均3,218.8±440.7g)で,児 頭 囲 は そ れ ぞ れ32,0cm,34.0cm,34.5cm(全 体 平 均33.8±1.1 cm)で あ っ た。 今 回 対 象 者 が 出産 した 施 設 で は,自 然 な 分 娩 経 過 を大 切 に し,産 婦 の 意 思 を尊 重 した 出 産 支 援 を 行 って い る。 助 産 婦 は,分 娩 進 行 状 況 に応 じ て適 宜 ア ドバ イ ス を行 うが,最 終 的 に分 娩 の場 所 や 姿 勢 を決 定 す るの は産 婦 自身 で あ る。 本 研 究 にお い て は,従 来 一 般 的 と され て い る仰 臥位 で の 分 娩 を 選 択 した 対 象 は い な か った 。 2.分 娩 体 位 と形態 変 化 分 娩 体 位 に よ り,骨 盤 出 口部 に お け る産 道 の 形 態 変 化 に違 い を認 めた 。 す な わ ち,① 形 態 が変 化 す る部 位 や 変 化 の程 度 が 異 な る こ と,② 会 陰 交連 に近 い陰 門 部(d区 間)の 伸 展 の程 度 が 異 な る こ と,③ 児 頭 娩 出直 前 の 陰 門 の形 状 が 異 な る こ との 3点 で あ る。 以 下 に その 相 違 点 を み る。 まず,変 化 す る部 位 と変 化 の程 度 で あ るが,側 臥 位 で は,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a∼c区 間)の それ ぞ れ の 区 間 にお いて,相 対 的 な対 数 歪 は正 の値 を 表1対 象 の特 性 ・対 数 歪 歪 とは,固 体 に外部 か らの力 が加 わ った とき に起 こ る長 さ ・形状 の変 化率 で あ る。 対 数 で表 す利 点 は,経 時 的 な変化 を相加 法 則 に よ り,簡 便 に把 握 で き る こ とで あ る。 変 化 の状 況 は,対 数歪 の値 か ら,正 の値 の とき は伸 展,負 の 値 の ときは縮 退,0の 値 の ときは変 化 な し と解釈 で きる。 20 日本 助産 学 会誌 第12巻 第1号(1998.8)
自然分娩 の骨盤出口部 にお ける産道 の形態変化 と助産術 図4分 娩体位 別 の陰門形状 示 し て い た 。 この こ とか ら,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a ∼c区 間)の 各 区 間 は最 終 的 に伸 展 し,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a∼c区 間)の 広 範 囲 に 力 が 加 わ っ て い た とい え る。 一 方,坐 位 と四 つ ん 這 い の 場 合 は,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a∼c区 間)の 相 対 的 な対 数 歪 は部 分 的 に 0の 値 を示 し て い る こ とか ら,こ の 区 間 の 最 終 的 な伸 展 は部 分 的 に 行 わ れ た と い え る。 し か し,伸 展 の 程 度 は,坐 位 の ほ うが 四 つ ん 這 い よ り も大 き く,伸 展 部 位 に加 わ る力 は 坐 位 の ほ うが 四 つ ん這 い よ り大 きい 傾 向 を認 め た 。 これ は,坐 位 の 場 合 は,娩 出 力 に重 力 が 加 算 さ れ た 力 が 肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a∼c区 間)に 働 くが,四 つ ん這 い で は,重 力 が この 区 間 に加 わ りに くい 体 位 で あ る た め,伸 展 の 程 度 に違 い が 生 じた と考 え られ た 。 次 に,会 陰 交 連 に近 い陰 門 部(d区 間)の 伸 展 の 程 度 に つ い て で あ る が,こ の 区 間 が 最 も伸 展 し た とい う現 象 は,分 娩 体 位 にか か わ らず どの 症 例 に も共 通 し て い た 。 しか しな が ら,伸 展 の 程 度 は 分 娩 体 位 に よ っ て 異 な っ て い た 。 伸 展 の 程 度 が 最 も大 きか っ た の は 坐 位,次 い で 側 臥 位,最 も小 さ か っ た の が 四 つ ん這 い で あ った 。 し た が っ て,会 陰 交 連 に近 い陰 門 部(d区 間)に 加 わ る力 が 最 も 大 きか っ た 分 娩 体 位 は坐 位,次 い で 側 臥 位,最 も 小 さか っ た の は 四 つ ん這 い で あ った と解 釈 で きた 。 児 頭 娩 出直 前 の 陰 門 の 形 状 は,側 臥 位 分 娩 の 場 合 は 雨 滴 形,坐 位 分 娩 の場 合 は縦 楕 円形,四 つ ん 這 い 分 娩 の 場 合 は ほ ぼ 円形 を呈 して い た(図4)。 幾 何 学 的 に 考 え る と,同 一 面 積 の 図 形 で 周 囲 の 長 さ が 最 小 とな る の は 円 形 で あ る。 上 述 し た3つ の 形 状 の う ち,横 径 を 等 し く した 場 合,図 形 周 囲 の 長 さが 最 小 な の は 円 形,次 い で 雨 滴 形,最 大 な の は縦 楕 円 形 で あ る。 こ の こ と よ り,四 つ ん 這 い 分 娩 で は,側 臥位 分娩 や坐 位分 娩 よ りも小 さい周 囲 で児頭 が娩 出 され やす い こ とが 示唆 され た。 3.計 測 時点 ご との形態 変化 今 回 は,均 等 な陣痛 回数配 分 の経 時 的観察 で は e区 間 d区 間 c区 間 b区 間 a区 間 図5各 標点間距離 の対数歪 の変化 の 比較(側 臥位 ・坐位)
自然分娩 の骨盤 出口部 にお ける産道 の形 態変化 と助産術 な い た め,厳 密 な 言 及 は不 可 能 で あ る が,計 測 時 点 ご と の産 道 の 変 化 は お お よ そ 以 下 の よ う な特 徴 を明 示 で き る 。 こ こで は最 も特 徴 的 な側 臥 位 と坐 位 の 分 娩 に つ い て 取 り上 げ る。 そ の 理 由 は,四 つ ん 這 い分 娩 は 坐 位 分 娩 に比 べ 伸 展 の 程 度 は小 さ か っ た もの の, ほ ぼ 同 様 の 変 化 を 示 し て い た か ら で あ る。 図5 は,側 臥 位 と坐 位 の 代 表 的 な 各1症 例 に つ い て, 計 測 時 点 ご との 各 標 点 間 の 対 数 歪 の 変 化 を比 較 し た もの で あ る 。 陰 門 部(d・e区 間)の 変 化 は,双 方 の 体 位 で 共 通 点 を認 め た 。 す な わ ち,会 陰 交 連 に 近 い 陰 門 部(d区 間)は,初 め に大 き く伸 展 した 後 もわ ず か に伸 展 し続 け,そ の 後 再 び 大 き く伸 展 す る傾 向 が あ り,会 陰 交 連 か ら離 れ た 陰 門 部(e区 間) は,伸 展 し た 後 に 一 度 縮 退 し,そ の 後 また 伸 展 す る とい う傾 向 が あ っ た 。 一 方 ,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(a∼c区 間)の 変 化 は,2つ の 体 位(側 臥 位 ・坐 位)に 相 違 を 認 め た 。 坐 位 の 場 合,最 終 的 に は 変 化 を 示 さ な か っ た 区 間 (図5に お い て はb・c区 間)で あ っ て も,計 測 途 中 の 各 区 間 に お い て 伸 展 と縮 退 の 両 方 を 認 め た が,側 臥 位 の 場 合 に は,肛 門 ∼ 会 陰 交 連(図5の a∼c区 間)は ほ とん どの 時 点 で 伸 展 し て お り, 縮 退 は ま っ た く認 め な か っ た 。 4.分 娩 既 往 と形 態 変 化 一 般 に ,初 産 婦 と経 産 婦 で は,軟 産 道 組織 の 軟 度 が 異 な る 。 そ こ で,全 症 例 の模 式 図 を初 経 産 別 に 分 類 し た(図6)。 陰 門 の 開 大 途 中 の 形 状 を初 経 産 別 に比 較 し て み る と,初 産 婦 の 場 合 は 全 症 例(4/4)が 縦 楕 円 形,経 産 婦 の 場 合 は ほ と ん ど(5/6)が ほ ぼ 円 形 で あ っ た 。 初 産 経 産 図6初 経産別模式図 22 日本 助 産 学 会誌 第12巻 第1号(1998.8)
自然 分娩 の骨盤 出 口部 にお け る産道 の 形 態変 化 と助 産術 表2側 臥位分 娩 の各 区間 の対 数 歪 また,対 象 が 少 な いた め厳 密 性 に欠 け る が,側 臥位 分 娩 とい う条 件 を統 一 し,初 産 婦 と経 産 婦3 名 ず つ の 各 区 間 の 変 化 の 状 況 を比 較 して み る と (表2),肛 門 ∼ 会 陰 交 連 お よ び会 陰 交 連 に近 い陰 門 部(a∼d区 間)の 歪 の値 は,初 産 婦 の ほ うが 経 産 婦 よ り も大 きか っ た。 す な わ ち,側 臥 位 に お い て は,肛 門 ∼ 会 陰 交 連 お よび会 陰 交 連 に近 い 陰 門 部(a∼d区 間)は 初 産 婦 の ほ うが 経 産 婦 よ り も大 き く伸 展 して い た。 IV考 察 1.骨 盤 の解 剖 学 的 形態 に よ る影響 全 症 例 に共 通 して い た の は,会 陰 交 連 に近 い陰 門 部 が 最 も伸 展 して い た こ とで あ る。 本 来,娩 出 力 が 陰 門 周 囲 に均 等 は働 くの で あ れ ば,陰 門 の形 状 は 円形 を呈 し,あ る特 定 の部 位 が大 き く伸 展 す る こ とは な い。 した が っ て,全 症 例 に お い て陰 門 周 囲 の 伸 展 は不 均 等 に行 わ れ て い た と解 釈 で き る。 陰 門 の形 状 が 円形 を呈 す る よ うな変 化 が 可 能 な の は,骨 盤 の 形 態 が 円筒 形 で,か つ娩 出力 が 骨 盤 軸 に一 致 し て加 わ る と きの み で あ り,解 剖 学 的 に 考 え て,ヒ トの 骨 盤 で は不 可 能 とい え る。 進 ら6)は,人 類 が4足 歩 行 か ら2足 歩 行 へ と進 化 した結 果,ヒ トの 脊 柱 がS字 状 に彎 曲 し,そ れ に伴 っ て骨 盤 もJ字 型 にな った た め,ヒ トの 骨 盤 は分 娩 に不 利 な形 態 で あ る こ と を指 摘 して い る。 した が っ て,ヒ トの場 合 は骨盤 出 口部 にお いて, 彎 曲 した 骨 盤 を通 過 す る児 頭 に よっ て会 陰 交連 に 近 い 陰 門 部 が 最 も圧 迫 さ れ る の で あ ろ う。 その 結 果,ど ん な 分 娩 体 位 の場 合 に も,会 陰交 連 に近 い 陰 門部 が 最 も伸 展 す る とい う現 象 が現 れ た と推 測 で きる。 2.分 娩体 位 と娩 出力 の 働 く部位 お よび 方 向 分娩 体 位 別 に骨 盤 出 口部 に お け る産 道 の 形 態 変 化 を比 較 す る と,肛 門 か ら会 陰 交 連 に か けて の 区 間 の伸 展 が 最 も大 き いの は側 臥 位,次 い で 坐位, 最 も小 さい の は 四 つ ん 這 いで あ っ た。 また,側 臥 位 で は,肛 門 か ら会 陰 交 連 に至 る すべ て の 区 間 が 伸 展 して い た の に対 し,坐 位 ・四 つ ん這 い で は, あ る区 間 が部 分 的 に伸 展 して いた 。 児 頭 娩 出 直 前 の 陰 門 の 形 状 は,側 臥 位 は雨 滴 形,坐 位 は縦 楕 円形,四 つ ん 這 い は ほ ぼ 円形 を呈 して い た。 この よ うな現 象 は,娩 出 力 の働 く部 位 や 方 向 が 分 娩 体 位 に よっ て異 な るた め に生 じた と推 測 で き る。 側 臥 位 ・坐 位 ・四 つ ん 這 い の 体 位 の 違 い と し て,体 幹 と下 肢 の 動 き の 自 由 度 を指 摘 で き る。 driveangle(脊 柱 と子 宮 の な す 角 度)が 小 さ い と胎 児 の 娩 出 が 容 易 な こ と は知 られ て い る6)。 McRoberts体 位 の よ う に 大 腿 を体 幹 に 引 きつ け れ ば,driveangleは 小 さ くな る。 坐 位 分 娩 の場 合,椅 子 に座 る体 位 で は下 肢 が 固 定 され,産 婦 が 下 肢 を屈 曲 させ てdriveangleを 調 節 す る こ とは難 し い。 また,側 臥位 分娩 で も, 産 婦 は下 側 下 肢 が 固 定 され,上 側 下 肢 の み の調 節 とな る。 この よ うな場 合,体 幹 を前 傾 させ る以 外 に はdriveangleの 調 節 が 困 難 とな る。 し た が っ て,坐 位 や 側 臥 位 で は,娩 出力 の働 く部 位 や 方 向 が 一 定 化 しや す く,陰 門 周 囲 に加 わ る力 が不 均 等 に な る た め,児 頭 娩 出時 の陰 門 が 縦 楕 円形 や 雨 滴 形 を呈 した の で は な いか と考 え られ る。 一 方 四 つ ん 這 い は,側 臥 位 や 坐 位 の 体 位 に 比 べ,産 婦 が 体 幹 や 下 肢 を 自 由 に動 か す こ とが 可 能 で あ る。 産 婦 は陣 痛 発 作 時 に大 腿 を体 幹 に 引 きつ け る こ とで,自 らdriveangleを 小 さ くす る こ と が で き る。 この 動 作 に よ り,娩 出力 が 陰 門 の 中 心 に向 けて 垂 直 方 向 に,す なわ ち骨 盤 誘 導線 と一 致 した 方 向 に向 か いや す くな り,陰 門周 囲 に加 わ る 力 が 分 散 され るた め,児 頭 娩 出時 の陰 門 の形 状 は 円 形 に近 くな った と考 え られ る。 以 上 は,分 娩 体 位 と娩 出 力 の方 向 との 関 係 を述 べ て い る寺 尾7)8)の 見 解 を 支 持 す る も の で あ っ た。 本 研 究 で は さ ら に,分 娩 体 位 を考 慮 した う え で骨 盤 出 口部 の 産 道 の 形 態 変 化 を詳 細 に観 察 す る
自然分娩 の骨盤 出 口部 にお ける産道 の形態変化 と助産術 骨盤底筋群 の抵抗 が小 さい と 娩 出力 は前 方向 へ向か う。 骨盤 底筋群 の抵抗 が大 さ いと 娩 出力 は骨盤底方 向へ 向か う。 図7軟 産道組織 の抵抗 と娩 出力 の方向 こ と に よ り,娩 出 力 の働 く部 位 や 方 向 の 予 知 が 可 能 と な る こ とが 示 唆 さ れ た 。 す な わ ち,娩 出 力 を 骨 盤 誘 導 線 の 方 向 と一 致 さ せ て,娩 出 力 の 働 く部 位 や 方 向 を調 整 で きれ ば,会 陰 の 過 剰 な 伸 展 を 防 ぎ な が ら,陰 門 の 形 状 が 円 形 を 呈 す る よ う に 形 態 変 化 を促 し,会 陰 裂 傷 の 予 防 を 図 れ る と考 え る。 3.骨 盤底 筋群 の抵 抗 によ る影 響 陰 門 の開 大 途 中 の形 状 は,初 産 婦 は縦 楕 円形 に,経 産婦 はほ ぼ円形 に変 化 す る傾 向 があ った。 一般 に ,骨 盤 底筋 群 の抵抗 が 小 さい経産 婦 の場 合 は,娩 出力 が骨盤 誘 導線 に一 致 して働 きやす い た め,開 大 の途 中 で あ って も陰 門 は 円形 に 開大 し,一 方,骨 盤 底筋 群 の抵抗 が大 きい初 産婦 の場 合 には,娩 出力 の 方向 が骨盤 誘 導線 か ら後 方 にず れ や す く,陰 門 後方 に娩 出力 が加 わ るた め,陰 門 の形状 は縦 長 に変形 して開大 した と推 測 された。 側 臥位 分娩 の初産 婦 と経産 婦 で は,初 産 婦 に肛 門 か ら会 陰交 連 に近 い陰 門部 にか けての 広範 囲 に わ た る大 きな伸 展が 認 め られた。 これ も,骨 盤底 筋 群 の抵 抗 が大 きいた め に,娩 出力 の方 向が骨 盤 誘 導 線 か ら後 方 に ず れ て 生 じた 現 象 で あ る と考 え られ る 。 娩 出 力 の 方 向 と骨 盤 底 筋 群 の抵 抗 の 違 い か ら, 会 陰 裂 傷 の 発 生 要 因 に つ い て も検 討 が 可 能 だ ろ う。 第3回 旋 時 に は,娩 出 力 は骨 盤 底 方 向 と前 方 向 と に2分 さ れ,そ の カ の ベ ク トル が 新 た な娩 出 力 とな る7)。骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 大 き い と,骨 盤 底 へ 向 か う力 は 大 き くな り,反 対 に,骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 小 さ い と,前 方 へ 向 か う力 が 大 き くな る (図7)。 した が っ て,比 較 的 骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 大 き い初 産 婦 の ほ うが,経 産 婦 よ り も会 陰 裂 傷 が 生 じや す い と い え よ う。 4.助 産術 への 応用 助 産術 として代表 的 な分 娩介助 術 に,本 研 究 の 結果 を どの よ うに生 か せ るか を考察 す る。 本 研 究 で は,分 娩 第II期 の骨 盤 出 口部 にお け る 産道 の形 態 変化 を継 続 的 に観察 す る ことで,娩 出 力 の働 く部位 や方 向 を推 測で きる こ とが示 唆 され た。 娩 出力 が骨 盤誘 導線 に一致 して働 けば,骨 盤 出 口部 の産 道 は均 等 に伸 展 し,伸 展 の程 度 は全 体 24 日本 助 産 学 会 誌 第12巻 第1号(1998.8)
における産道 の形態変化 と助産術 自然分娩の 骨 盤 出 口 部 的 に 小 さ くな る。 こ の よ うな 変 化 が 力 学 的 に 最 も 合 理 的 で,会 陰 裂 傷 も生 じ に くい とい え る。 これ らの 観 点 か ら助 産 実 践 の 分 析 を試 み た と こ ろ,具 体 的 か つ 理 論 的 な 解 釈 が 導 き出 せ た 。 側 臥 位 分 娩 で は,肛 門 か ら会 陰 交 連 の 区 間 が 伸 展 し続 け る傾 向 が あ っ た こ とや,陰 門 の 形 状 が 雨 滴 形 を呈 した こ とか ら,娩 出 力 は肛 門 か ら陰 門 後 方 に か け て 広 い 範 囲 に 加 わ っ て い る と解 釈 で き た 。 側 臥 位 分 娩 の 児 頭 娩 出 時 に は,助 産 婦 は,適 宜 会 陰 に軽 く手 を 添 え,会 陰 保 護 を行 っ て い た 。 こ の 介 助 技 法 は,会 陰 保 護 を行 う こ とで,骨 盤 誘 導 線 か ら後 方 に ず れ や す い 娩 出 力 を,陰 門 の 中 心 に 向 か わ せ る方 向 調 整 機 能 を備 え て い た と考 え る こ とが で き る、 坐 位 分 娩 で は,会 陰 交 連 に 近 い 陰 門 部 が 強 く引 き伸 ば され る 傾 向 に あ った 。 ま た,児 頭 娩 出 直 前 の 陰 門 の 形 状 が 縦 楕 円 形 を 示 して い た こ とか ら, 児 頭 は 最 小 周 囲 以 上 の 大 き さ で娩 出 され て い る と 考 え られ た 。 坐 位 分 娩 の 児 頭 娩 出 時 に は,助 産 婦 は,Ritgen変 法 な ど を 用 い て 第3回 旋 を 助 け る こ と に 集 中 して い た 。 こ の技 法 は,会 陰 交 連 付 近 に大 き く加 わ る力 を減 少 さ せ な が ら,で き る だ け 児 頭 周 囲 を小 さ く して 娩 出 を促 し て い た と解 釈 で き よ う。 四 つ ん 這 い 分 娩 で は,肛 門 か ら会 陰 交 連 に か け て の 伸 展 の 程 度 が 小 さ く,陰 門 の 形 状 が ぼ ぼ 円 形 に変 化 して お り,力 学 的 に は 最 も合 理 的 な形 態 変 化 で あ る と考 え られ た 。 実 際 に,助 産 婦 は特 に会 陰 保 護 や 回 旋 の 介 助 を行 わ ず,胎 児 の 自然 な 娩 出 を待 っ て い た 。 む し ろ,会 陰 裂 傷 を予 防 す る 目 的 で 会 陰 保 護 や 回 旋 の 介 助 を行 う こ と は,娩 出 力 を 過 度 に 陰 門 前 方 に 向 か わ せ,小 陰 唇 裂 傷 を生 じ さ せ る可 能 性 を高 め る こ と に な ろ う。 この よ う な 視 点 で 助 産 実 践 を分 析 し,そ れ ぞ れ の行 為 を意 味 づ けて い く こ とで,今 ま で 経 験 知 と さ れ て きた 助 産 術 の 解 明 が 徐 々 に可 能 に な る と考 え る 。
V結
論
助 産 所で の 自然分 娩 を選択 した産婦 を対 象 に, 分娩 第II期 骨盤 出 口部 にお け る産 道 の形態 変化 を 力 学 的 に 分 析 し た 結 果 か ら,以 下 の こ とが 明 ら か に な っ た 。 1)産 道 の 形 態 変 化 の 程 度 は産 道 の 部 位 に よ り異 な るが,全 症 例 に 共 通 して,児 頭 娩 出 の 際 に 会 陰 交 連 に近 い 陰 門 部 が 最 も伸 展 して い た 。 2)産 道 の 変 化 の 過 程 は,会 陰 交 連 に近 い 陰 門 部 で は,児 頭 が 娩 出 す る まで 伸 展 し続 け る傾 向 が あ り,他 の部 位(肛 門 か ら会 陰 交 連 に か け て の 区 間 ・会 陰 交 連 か ら離 れ た 陰 門 部)で は,陣 痛 に 合 わ せ て伸 展 と縮 退 を繰 り返 して い た 。 し か し,側 臥 位 分 娩 で は こ の 特 徴 が 現 れ に くか っ た 。 3)分 娩 体 位 に よ り,産 道 の 形 態 変 化,す な わ ち,児 頭 娩 出 直 前 の 陰 門 の 形 状 お よび 肛 門 か ら 会 陰 交 連 に か け て の 区 間 の 伸 展 が 異 な っ て い た 。 児 頭 娩 出 直 前 の 陰 門 の 形 状 は,側 臥 位 分 娩 で は 雨 滴 形,坐 位 分 娩 で は 縦 楕 円 形,四 つ ん 這 い 分 娩 で は ほ ぼ 円 形 を 呈 した 。 ま た,肛 門 か ら 会 陰 交 連 に か け て の 区 間 は,側 臥 位 分 娩 で は 全 体 が 伸 展 し,坐 位 お よ び 四 つ ん 這 い 分 娩 で は部 分 的 に伸 展 して い た 。 し か し,伸 展 の 程 度 は, 坐 位 分 娩 の ほ うが 四 つ ん 這 い 分 娩 よ り も大 き か っ た 。 4)陰 門 の 開 大 途 中 の 形 状 は,初 産 婦 は縦 楕 円 形 に,経 産 婦 は 円 形 に開 大 す る傾 向 が あ っ た 。 ま た,初 産 婦 は側 臥 位 分 娩 に お い て,経 産 婦 よ り も肛 門 か ら会 陰 交 連 に近 い 陰 門 部 に か け て 広 範 囲 に 大 き く伸 展 して い た 。 以 上 の 結 果 か ら,次 の よ うな 「命 題 」 を 導 き 出 した 。 1)娩 出 力 が 陰 門 の 中 心 に 向 け て 垂 直 方 向 に働 け ば,娩 出 力 は骨 盤誘 導 線 と一 致 し,肛 門 か ら会 陰 交 連 に か け て の 伸 展 の 程 度 は 小 さ く,陰 門 の 形 状 は 円形 を呈 す る。 この よ う な 産 道 の形 態 変 化 が 力 学 的 に合 理 的 で あ り,会 陰 お よ び 小 陰 唇 の裂 傷 は 生 じ に くい 。 骨 盤 出 口 部 の 産 道 の 形 態 変 化 を継 続 的 に観 察 す る こ とで,娩 出 力 の 働 く 部 位 と方 向 を 予 知 で き,意 図 的 に娩 出 力 の 方 向 を調 整 す る こ とが 可 能 に な る た め,会 陰 お よ び 小 陰 唇 裂 傷 の 予 防 を図 る こ とが で き る。 2)児 頭 娩 出 の 際,driveangleを 小 さ くで き れ ば,娩 出 力 の 方 向 が 骨 盤 誘 導 線 と 一 致 し や す く,裂 傷 は生 じ に くい 。 した が っ て,児 頭 娩 出自然分娩の骨盤 出口部 にお ける産道の形態変 化 と助 産術 時 に大 腿 を屈 曲 した り,体 幹 を前 傾 す る な ど, driveangleを 小 さ くす る よ う な 工 夫 を す る こ と は,お の ず と会 陰 裂 傷 の 予 防 に つ な が る 。 3)骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 小 さ い と,娩 出 力 は 前 方 に 向 か い,反 対 に 骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 が 大 き い と,娩 出 力 は 後 方 に 向 か う。 娩 出 力 が 後 方 に向 か う と,会 陰 裂 傷 が 生 じや す い 。 した が っ て, 妊 婦 体 操 の 励 行 や 分 娩 期 の リラ ッ ク ス は,軟 産 道 組 織 の 軟 化 を促 し,骨 盤 底 筋 群 の 抵 抗 を小 さ くす る た め,会 陰 裂 傷 の 予 防 に つ な が る 。 以 上 の 観 点 か ら助 産 実 践 を 分 析 し た と こ ろ,具 体 的 か つ 理 論 的 に 行 為 を 意 味 づ け る こ と が で き た 。 今 後 は,こ れ らの 命 題 の 検 証 が 必 要 で あ る 。 本 研 究 で は,こ れ まで 経 験 知 と され て きた 助 産 術 の 解 明 に わ ず か な が ら踏 み 込 み こ とが で き た と 考 え る。 しか し,今 回 は 平 面 的 な 画 像 分 析 の 方 法 を 用 い た た め,分 娩 現 象 を立 体 的 に と ら え る こ とが で き な か っ た 。 今 後 は,対 象 へ の 倫 理 的 配 慮 を行 い つ つ,よ り正 確 な 測 定 方 法 を確 立 し て い くこ とが 課 題 と し て残 さ れ た。 そ の 他 の 研 究 の 限 界 と し て, 対 象 者 が 少 な い こ と,陰 門 全 周 の 形 態 変 化 を 計 測 し て い な い こ と,3種 類 の 分 娩 体 位 の み の 比 較 で あ る こ とな どが 挙 げ ら れ る。 また,分 娩 時 の 産 道 形 態 に 影 響 を及 ぼ す 因 子 と し て,産 婦 の 個 体 差 や 心 理 状 態 な ど も考 え ら れ る。 今 後,こ れ らの 問 題 に 取 り組 み,分 娩 現 象 を多 面 的 に 明 らか に し て い く こ とで,助 産 術 が よ り解 明 さ れ,高 度 な 技 の 伝 承 が 可 能 に な る と思 わ れ る。 謝 辞 本 研 究 に ご理 解 ・ご協 力 をい た だ いた 助産 院 ベ ビー ヘ ル シ ー 美 蕾 院 長 瀬 井 房 子 先 生 を は じめ,産 婦 や 助 産 婦 の 方 々,分 析 方 法 に関 して 親 切 に ご指 導 い た だ い た東 京 工 業 大 学 教 授 宇 治 橋 貞 幸 先 生,助 産 学 の 観 点 か ら貴 重 な示 唆 を い た だ い た 日本 赤 十 字 看 護 大 学 教授 平 澤 美 恵 子先 生 に心 よ り感 謝 申 し上 げ ます。 (本研 究 の要 旨 は,第11回 日本 助 産 学 会 学 術 集 会 で 発 表 した 。 な お,本 論 文 は1995年 度 日本 赤 十 字 看 護 大 学 大 学 院 修 士 論 文 の一 部 を抜 粋 し,加 筆 した もの で あ る。) 文 献
1) Balaskas, J.: New Active Birth, 1992,佐 藤 由 美 子 ・ き く ち さ か え 訳,ニ ュ ー ・ア ク テ ィ ブ ・バ ー ス, 現 代 書 館,1993. 2) 進 純 郎 ・小 川 博 康:会 陰 裂 傷 は な ぜ 起 き る?,ペ リ ネ イ タ ル ケ ア, 13(3), 49-54 (231-236), 1994. 3) 千 村 哲 朗:会 陰 切 開 縫 合 術 の ル チ ー ン 化 と 問 題 点,助 産 婦 雑 誌, 39(9), 50-53 (790−793), 1985. 4) 工 藤 尚 文 ・江 尻 孝 平 ・峠 好 子:会 陰 切 開 の 母 体 適 応, ペ リ ネ イ タ ル ケ ア 冬 季 増 刊, 19-24 (1551-1556), 1988.
5) Caldeyro-Barcia, R.; The influence of maternal bearing-down effort during second stage on fetal well-being, Birth and Family Journal, 1(6), 17-21, 1979. 6) 進 純 郎 ・瑪 依 努 爾 ・松 下 径 広 ・荒 木 勤:会 陰 切 開,ペ リ ネ イ タ ル ケ ア12春 季 増 刊, 157-161, 1993. 7) 寺 尾 俊 彦:分 娩 介 助 法 と 会 陰 保 護 ① 一 医 師 の 立 場 か ら−,ペ リ ネ イ タ ル ケ ア12春 季 増 刊,139-143, 1993. 8) 寺 尾 俊 彦:産 道 と分 娩 体 位,産 科 と 婦 人 科,3,57-65(353-361), 1995. 26 日本 助 産学 会 誌 第12巻 第1号(1998,8)