卒後教育・管理の現状と展望

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(1)理学療法学第 712 42 巻第 8 号 712 ～ 713 頁（2015 年）理学療法学第 42 巻第 8 号. 大会シンポジウム 5. 卒後教育・管理の現状と展望＊ ─上尾中央医科グループの場合─ 前園徹＊＊. 上尾中央医科グループ（以下，AMG）は，「医療」・「福祉」・. 営する部門や各部門を統括する部署がある。AMG 協議会リハ. 「教育」の 3 つの柱を掲げ，関東圏 1 都 5 県（東京・神奈川・. ビリテーション部は，部長・副部長および現場と兼務の PT，. 埼玉・千葉・山梨・茨城）に 27 病院・20 介護老人保健施設を. OT，ST が 4 名，および事務職 4 名（求人担当 2 名，業務担当. 有する病院・福祉グループである。職員数は，16,000 人を超え，. 2 名）で構成されている。. PT，OT，ST も 2,000 名（平均年齢 28.4 歳）を超え，どのよ. グループ全体の方向性に関しては，各部門の代表者が毎週 1. うに管理・教育していくか日々試行錯誤している。. 回，情報交換・提案などを行い，月に 1 回最高幹部会（会長・. グループ全体では，秋の運動会，春のバレーボール大会など. 副会長および各部門責任者）で最終確認・業務拡大などの方針. の行事において，団結と連帯を図っている。昨年は，保有する. の確認を行っている。ここで，決まったことを月 1 回程度開催. 社会人女子バレーボールチーム（上尾メディックス）が，V・. される事務長会（病院の事務長の会，老健の事務長の会）や運. プレミアリーグに昇格し，職員が一丸となって応援することも. 営委員会（病院・老健の事務長・看護部長・各部の代表者の. 団結をつくるうえで役立っている。また，研究・発表の場とし. 会）にて報告・検討し，グループとして統一した事業運営が行. て，学会（CMS 学会・AMG 学会・AMG 多職種合同学会など）. われる。. や業務改善についての発表の場（ワークアウト大会など）を通. リハビリテーション部門での統一を図るためには，11 回／. して，業務推進のための教育をして，事業を進めている。. 年行われる各病院・老健のリハビリテーション科の所属長会. 情報を伝達する手段として，広報誌（くたかけ）3 回／年，. （病院チーフ会 2 回，老健チーフ会 2 回，地区別チーフ会 6 回，. 保健新報 4 回／年，協議会ニュース（本部からの職員向け情報）. 全チーフ会 1 回）で伝達・検討し，事業が円滑に実施されるよ. 6 回／年がある。また，リハビリ部単独の伝達ツールとしては，. うにしている。. リハ通信 6 回／年がある。. このような仕組みを通して，リハビリテーション部門の企. 大半の病院において，リハビリテーション部門の拡大がなさ. 画・提案が，本部内の各会議を通して，各病院・施設へ徹底. れるようになっているが，AMG においても例外なく，リハビ. でき，各病院・施設のリハビリテーション科にも徹底されて. リテーション部の業務拡大が進んでいる。そのためには，PT，. いる。. OT，ST スタッフ増員と技術教育や，コンプライアンスの順守. たとえば，近年の介護保険の大きな変化に対応するために，. のための管理教育は欠かせない。. 老健におけるリハビリテーション部門の発言力を高める必要が. リハスタッフ数は，毎年 150 ～ 200 人ずつ増え続けている。. あり，施設戦略会議（事務の長，看護の長，介護の長，リハビ. スタッフが多いということは，多くの管理職が必要になる。リ. リの長，相談員の 5 役の会議）の開催を位置づけ推進している。. ハビリテーション部門の管理職は部長・副部長職 2 名，科長職. このことにより，PT，OT，ST が，経営参画できるとともに，. 31 名，係長職 45 名，主任職 221 名が一般職 1,768 名を管理し. リハビリテーションを各部署に理解してもらえる体制が整って. ており，毎年多くの管理職が経験を積みながら誕生している。. いる。このような取り組みが，老健施設においても業務拡大の. 管理職の育成も重要な課題である。理学療法士から老健施設の. もと平均 PT，OT，ST 数 20 名体制の実現につながっている。. 事務長職に進んだ者もいる。. 各病院・施設のリハビリテーション科の事業計画・予算に関. 多くのスタッフとともに業務拡大を図っていくための仕組. しては，所属長会において，計画案の確認，進捗状況報告な. みとしては，AMG 協議会（本部）内にグループ全体を管理運. どで情報交換を行い，独自のデータ管理ソフト（Reha-MIND）を使った分析・管理を行うことで軌道修正も行うことがで. ＊. Current Issues and Perspective on Postgraduate Education in Physical Therapy: In the Case of Ageo Central Medical Group ＊＊上尾中央医科グループ協議会リハビリテーション部（〒 362–0075 埼玉県上尾市柏座 1–10–3–58 AMG 協議会ビル 3F） Toru Maesono, PT: Ageo Central Medical Group Organization Rehabilitation Depart Physical Therapist キーワード：卒後教育，管理，大規模病院・福祉グループ. きる。また，職種別（PT，OT，ST 別），地域別（埼玉・東京・千葉・神奈川など），業務別（訪問リハ・地域包括ケアなど），事業別（気道吸引委員会，育成委員会，厚生委員会など），看護局との合同会議（1 回／月）などの各種会議を通してさらに細.

(2) 卒後教育・管理の現状と展望. 713. 図上尾中央医科グループリハビリテーション部 27 年度組織図. かな企画運営・業務徹底・管理などを行うことが可能となって. 先に述べたリハビリテーション部主催の会議や研修会の予算. いる。結果，小さな会議も含めると，年間約 200 回の会議が開. は，600 万円を超えてきている。. 催され，情報が隅々にまでいきわたるとともに多くの意見や提. これらの取り組みによって，リハビリテーション部門だけ. 案を吸い上げられるようになっている。. で，年間 150 億円以上の収入を達成することができるように成. あたり前のことではあるが，訪問リハを拡充しようとすると. 長してきている。. そのために必要な知識・技術の教育が必要となる。教育・研修. 現在，専門性の向上ばかりでなく，部門のリーダーの育成に. は，欠かすことのできない業務拡大のツールのひとつである。. も力を入れている。グループとして各職種のリーダーには，「部. グループ方針実現のための研修については，業務上必要な研修. 下育成力」「役割認識力」「実行力」「目標達成重視力」等，強力. という位置づけで勤務扱いになるので，指定してしっかり教育. なリーダーシップが求められることから，様々な職種に人財開. が行える。リハビリテーション部門のみ主催する研修会は，年. 発部よりノン・テクニカルスキルである「役割認識・モチベー. 間 70 ～ 80 回にものぼる。. ションアップ研修」が提供されている。また，それに加えて，. 最近の流れとして，多職種連携の充実が求められているた. リハビリテーション部独自規格のリーダー研修（2 クール／年）. め，AMG としても多職種での学会や研修会を多く実施するよ. では，半年間で実行した結果を研修最終日に発表するなどの長. うになってきている。特に看護職，介護職，ケアマネージャー，. 期にわたる課題達成研修となっている。また，宿泊を伴う研修. 相談員などとの連携は重要で，（回復期リハ検討会，訪問系サー. 会も年間 2 回実施しており，リーダー育成とともにリハビリテー. ビス検討会，入所サービス検討会，療養病床検討会，住宅改修. ション科管理職同士の横のつながりも図っている。このことで，. 勉強会）など年間 6 回以上の研修会が企画されて多職種で情報. お互いに困ったときに助け合う風土が育成されている。. 共有することができている。また，ケアマネージャーの育成に. 現在，教育に関しては，段階的教育システムの構築を整備し. 関してもリハビリテーション部と看護局合同で，年間 10 回以. ている。グループ全体共通のリハビリテーション部門のラダー. 上の研修会が企画されている。また，研修会場で，グループ内. はあるものの，病院・老健ごとのラダー整備に差のあることか. の研修施設（AMG 学習館）や 2 校ある看護学校，リハ専門学. ら，26 年度からの 3 年間ですべての病院・老健で仕組みがで. 校を利用することも多く，会場使用料を最少に抑えることがで. きるように進めている。. きる点でも多くの研修会実施へつながっている。. すでにラダー整備が進んでいる病院・施設からの報告会，ラ. もちろん，PT 協会や PT 士会の主催する研修会にも予算化. ダー整備説明会を通し，また 2 年目にはラダー報告会（ラダー. して積極的に参加できるようにしている。また，各病院・施設. 整備に取り組んでいる病院施設からの中間報告会）などを実施. 単独でも研修会・勉強会を行っているので，スタッフにとって. して達成可能へと進めている。. は勉強する機会はかなり多く充実している。.

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