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市場社会主義と競争-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第70巻 第1号 1997年6月 1-53

市場社会主義と競争

安 井 修

I . 課 題 設 定 本稿の課題は,われわれが考える市場社会主義に企業相互の競争過程を導入 することにある。われわれは,これまで市場社会主義を『資本論』体系と関連 させながら考えてきたが,拙稿(8 )では『資本論』の第1巻の資本主義的蓄 積過程を参考にしながら,社会主義的蓄積過程はどうあるべきかを考察した。 蓄積論に続く議論としては,本来なら『資本論』第2巻の議論がある。しかし, 拙稿(7]では「市場社会主義が市場機構と資本形式を利用する以上~.資本論』 第 2 巻の『資本の循環~ ~資本の回転.~ ~社会的総資本の再生産と流通』は,市 場社会主義でもほとんどそのまま活用できるのではないかと考えているJ (1

5

9

頁)と述べたが,その見解はいまでも変わっていない。したがって,本稿では, 拙 稿 (8 ) に 続 く 分 析 と し て 資 本 論 』 第3巻の個別資本の競争過程を参考に しながら,社会主義的競争過程がどうあるべきかを考察することにしたい。わ れわれの対象が市場社会主義である以上,崩壊した旧社会主義とは異なり,最 終的には市場の判断に依拠することとなる競争過程の分折は欠かせないものと なるが,それが資本主義的競争と比較してどのように異なるものとなるかがそ の中心的な論点となるだろう。 ところで,拙著(6 )では『資本論』体系に競争を積極的に導入して0"資本 論』を競争論的な観点から再構成しようとした。それによって,マルクスが主 として描こうとした平均的な世界もその内容がより豊富なものになることとな る。従来の『資本論』研究では,マルクス自身が与えた競争論的叙述を越える ものはほとんどなかったが,拙著(6 )ではマルクスがほとんど取り扱わなかっ

(2)

2 香川大学経済論叢 2 た商業部門や利子・信用部門の競争過程までもその考察の対象とした。市場社 会主義における競争過程も,そうした部門での競争や部門聞の競争も対象とす べきであるが,本稿では,とりあえずマルクス自身が生産価格論で扱っている 競争過程だけを対象とすることとする。 II.置塩モデ1レ ここで,生産価格論で扱われている競争論全体をもう一度取り扱う必要はな いだろう。われわれの立場は拙著(6 )ですでに明らかにしたからである。わ れわれは,マルクスの競争論のなかの一部の議論は市場社会主義でもほとんど そのまま活用できると考えている。たとえば,新生産方法の導入をめぐる議論 などがその典型である。したがって,本稿では,資本主義的競争過程と社会主 義的競争過程の違いが明確になるようなテーマを集中的に取り上げることとし たい。具体的にいえば,労働者が主人公であるべき社会主義で,市場機構と資 本形式を,それ故競争過程を全面的に導入しながら,どこまでそうした社会主 義の精神が貫かれるかが焦点、になるだろう。そして,そのためにはその違いが 明確に比較できるような分析方法を採用しなければならない。置塩(2 )は, 生産価格を成立させる競争過程を BASICプログラムを使って分析している。 この分析は,マルクスが考えた生産価格成立メカニズムが本当に成立するかど うかを明らかにしたものであるが,ここでは,このモデルとその動きを資本主 義的競争過程とし,モデルを市場社会主義的に組み替えた上で,その動きを明 らかにし(市場社会主義的競争過程),そこから両者を比較することとしたい。 まず,置塩モデノレを紹介することとしよう。モデルは,二部門モデルであり, 定差方程式体系で示される。部門の違いは下付で示され,時間の流れは上付で 示される。 L 利潤率 価格と利潤率の関係は次の二式で示される。通常,生産価格体系は価格と平 均利潤率を決定するものと理解されるが,ここでは,両部門の利潤率を決定す

(3)

3 市場社会主義と競争 -3ー る関係と理解される。価格と貨幣賃金率は以下にみるように別に与えられるか らである。 pt1

=

(1+rt1)(a1pt1 +n1wt) ptz

=

(1+rtZ)(azpt1 +nZwt) 2 生産財の価格 (1) (2) 価格は需要と供給によって決まるが,まず,生産財の価格から考えよう。生 産財に対する需要は,次のように設定される。それぞれの部門は,前期の売上 高に利潤率の高さを勘案したものを資金額と考える。それぞれの資金額は, (1+βrトII)Pト11Xト11

(1+βrt-1z)pト1ZXt-1 Z β>0 ここでは「前期の利潤がプラスならば,前期の売上高以上に資金を調達する。 この場合,売上高には利潤が含まれているのであるから,前期の利潤以上に新 投資を行なうということを意味している。この資金調達は,企業の内部留保に よる必要はない。ここでは銀行からの借入によると想定しておこうJ (8頁)と されている。なお,新投資といっても,固定設備を捨象しているので,それは 流動不変資本部分に相当することとなる。以上の想定の下で iこれを t-1時点、 での生産財投入価額・労働賃金額の比で t時点における生産財投入価額と労働 賃金額に分けるJ (8---9頁)と,各部門の生産財の需要は, Dt1 = (1+βrt-11)pト11Xtー1Ia1pt-11/(a1Pト11+n1Wt-1) Dtz

=

(1+βrtー1Z)p1zxt-1zazp11/(aZp11+nZwt-1) これに(1)(2)式を入れると,

(

3

)

(4) Dt1二 (1βrト11)(1+rt-11)Xト11a1Pト 11 (5) D

九二

(1+βrt-1z)(1+rt-1z)xt-1zazpt-11 (6) 置 塩 (2

J

では「ある時点における生産量X1,Xzは,それより l期間以前の 投入活動によって決定されており,その意味では先決された所与の量である」 ( 8頁)とするため,たとえばxtという場合,これはt期の生産量ではなく, tー1期の生産量になる。こうして,生産財の供給はすでに与えられているから, 生産財価格は決定される。

(4)

-4- 香川大学経済論叢 4 pt1 = (Dt1十Dt2) /xtl (7) この場合の価格は,市場を清算する価格となり,分母はたとえば鉄何トンで あり,分子は何億円であるから,価格(p)は1トンあたり

Ox

億円となる。そこ で,(7)式からたとえばど1が100トンであるのに対し,需要が総計で 100億円と すると ,pt1は

1

億円となり,需要が総計で

2

0

0

億円あると ,pt1は

2

億円になる。 後者の場合は,価格が上昇するから,同じ貨幣を投下しでも前者の場合の半分 の生産財しか確保できないということになる。市場を清算する価格である所以 である。いずれにせよ,今期利用できる生産財は Dt1とDらをそれぞれ pt1で 害リったもの(この場合であれば,総計100トン)ということになる。これが今 期実際にそれぞれの部門で利用できる生産財になる。そして,今期の生産量

(

x

t刊はあくまでも

t

期の生産量であり ,

t+1

期にはすでに与えられた大きさ となっている)は,それぞれの部門の今期の生産財から技術的に決定される。 xH11ニ Dtl/ptlal (8) Xt+12

=

Dt2/ptla2 (9) 生産財は,前期に生産された生産物が各部門に分割されて今期の生産が開始 される時に使われる必要があるし,その際,この式が示すように,価格水準が 決定されていなければならない。したがって,生産財部門では商品交換は期首 に行われ,価格もそれ故利潤率も期首に決定されることとなる。 3.. 消費財の価格 今期利用できる生産財が決まれば,今期利用すべき雇用量も決まる。今期の 労働雇用量を生産量と関連づけるとすれば,上の関係を前提とする以上,今期 の労働雇用量はそれぞれの部門の次期の生産量に技術的に関係づけられること となる。次期の生産量が今期の雇用量を決めるような形になっているが,

x

t+1 というのは,あくまでも t期の生産の結果であることを想起すれば問題はない。 Nt

=

n1xt+l1+n2xt+12 (10) 貨幣賃金率は,労働力再生産に必要な実質賃金率 (R)と比較して,前期の実質 賃金率が高いか低いかによって前期の水準を上下するとする。したがって,実

(5)

5 市場社会主義と競争 -5-質賃金率が R水準に収束する運動を行うことを定式化することとなる。 wt=wト1(1+f(R-wt-1/ptー12))

f>O

d H H l ( 消費財の価格は,消費財に対する需要((10)と(11)式から与えられる)と供給 ((9) 式から与えられる)によって決まる。ここでも,市場清算的価格であり,分母 はたとえば小麦何トンであり,分子は何億円であるから,価格(p)は

1

トンあた り

Qx

億円となる。 pt2

=

wt

N

t/Xt2 ) α y u l ( (1) 霞 塩 (2 )では,最後にこの定式に疑問を出している。「実質賃金率がRより低かった としても,もし労働の雇用量ムが減少しているときには貨幣賃金率の上昇を勝ちとること は困難である。また,実質賃金率がRより高かったとても,もし労働の雇用量が増大して いるときには貨幣賃金率の引下は困難で、あるJ(14頁)。こうした疑問に答える論文が誼塩 C 3)である。といっても,箇塩(3 )はあくまでも『資本論』第1巻第23章第1節を 検討するものであるから,資本の有機的構成不変の蓄積を対象としたものである。そし て,その下で,く実質賃金率は雇用比率がある臨界値を越えると上昇し,下回ると下落す る〉という定式を採用してプログラムを動かすと,実質賃金率と雇用量は循環的な運動を するが,その循環運動は次第に減衰し,搾取率がOの単純再生産に収放していくこととな るとする。但し,資本家による独立的な個人消費,労働供給量の増加,新技術の継続的導 入(新技術といっても資本の有機的構成が不変の新技術である)という 3つの要因を入れ ると,利潤が存在する拡大再生産が実現することとなるとしている。 賃金率がいかに決まるかという観点から考えれば(変数は,実質賃金率ではなく貨幣賃 金率とした方がふさわしいという意見は別として),賃金率決定には当然労働力需給関係 が大きな影響を与えるから,雇用比率がある点を越えるかどうかを基準とするという震 塩 (3 )の議論の方が適合的である。しかし,資本主義的蓄積過程を代表するのは,資本 の有機的構成が高度化する蓄積過程である。実質賃金率が低くて労働者が生きていけな くても,実質賃金率が高くて労働者が資本家に上昇転化しでも,資本主義的生産関係は成 り立たなくなる。それ故,資本は,賃金水準を資本の価値増殖欲に適合する範間内に抑え る必要があり,そのために,人間の代わりに機械を導入することによって,いつでも都合 よく産業予備軍をつくり出すのである。スタグプレーションの過程では,産業予備軍効果 の喪失という現象が指摘されたから,こうした手段を資本がいつも自由に駆使してきた わけではないが,資本主義を一つのモデルとして考える時には,こうしたプロセスがきち んと進行するものとして捉える必要がある。確かに (11)式は,資本家と労働者の聞の賃金率 決定をそのまま表現したものではない。本来は,資本の有機的構成の高度化も含めたさま ざまな要素の結合として定式化される必要が、ある。しかし,

ω

式が,以上のような資本主 義生産関係の本質を表した定式であることは事実である。競争論的な観点、からは不十分 な定式ではあるが,われわれの最終的な目的は市場社会主義的な競争過程との比較であ るから,資本主義的生産の本質を表した(lD式の定式をそのままここでも採用することと する。 なお,後述するように,われわれは

ω

式を(その意味内容を変更しつつではあるが), 市場社会主義でも利用できる定式であると考えている。

(6)

6 香川大学経済論議 一βー 置塩モデノレの動き 4“ (プログラムはすべて最後に掲 ここでは,ソフトウェアは

Q

u

i

c

kBASIC

を利用している。いうまでもなく,プログラミングは,上から 下へと実行されるし,一つ一つの行では右辺が左辺を決めるという意味になる。 先にみたように, (1)と (2)式は r という式に変更される必要があり, PlとP2 と

w

の初期値が与えられていなければならない。また, Xlと む に つ い て は

2

(マイ 置塩モデノレと同じプログラムがプログラム

1

載することとする)である。 クロソフト社) 期前の初期値から与えておく必要がある。見やすいように,利潤率を点で打つ (pset文を使用する)ようにし,面画上に利潤率の大きさ(Rl,R2)と賃金率の 大きさ (w)が出るようにし,更に,成長率(Gl

=

Xt+1l/Xtl, G2

=

Xt+1Z/XtZ)と 実質賃金率(wp

=

w/PZ)と相対価格(pP

=

Pl/PZ)を計算し,画面上に出すよ うにした。このプログラムを動かした結果が図1である。但し,図に出ている

t

置塩モデル

ハ ︿ U ハ ︿ U 1I4lnU 向 ノ L n / ﹄ 4 B & - F n A V 円 H U 4 1 i ==nHU

J 1 J =

n

u

n

u 、

1f 円 H U 門 H u n H U A / ﹄ 内 / ﹄

n u

i

-- t

n ζ

ハ ノ 民 / ﹄ J11 n H H H β h u n V E ' ' M W 内 A V 内 ︿ υ ' 内 / ﹄ 4 1 A 4 1 A n H U 門f

ハ / ﹄ 円 / ﹄ 円 H U F h J V

・ ・

n H u

n

u

t

-f

i

==nHU= 1JtBJ=1J n H U 門 H U

t f n H u n H u n H u n H u n H U ハ / ﹄ 内 / ﹄ n H u n / L J1ftn/ ﹄ J 1 4 1 i 4 1 i J f 1 n v B nkpUMwnr ・ ・今 円 . ー・ u H夙 川 . 川1"":''':川、.,・:吋::.::.':..:..,...."."".・ ・トh恥 川 一 わ 引 , .

.

1

R

l

R

2

(7)

7 市場社会主義と競争

7-R

l

R

2

ム ロ

85

E ・ 0ο41 の L 4 E 4 1 A 4 1 A n u v iru--FhJV I 4 l n u U 4 1 ・ ・ ﹄ H r ゐ 見 ==nHU

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t

I

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J J R E n H u n H u n H U

R

白 川

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L f t 、 目 n v n 竹内 h u n ド -L V ' ' H 川 W ー , ノ ﹁ h J v h h v ' 内 ︿ υ . J V A U U 4 1 A n H U 円 ベ リ ζ J n u -n U H 斗 -一 回 ・ ・ n H U 寸 寸 n H U 4 2 A

4 1 ﹄口四一一 = n u = -ず b F . 、 } ︿ 1 ・ f = 、I f E E -一 円 H u n H U

E f n H U ロ 耳 目 円 H u n H U 円 H U n H U ηζηLnuηL J 1 1 J 1 1 内 / ﹂ J I 1

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t

のは,利潤率も賃金率も成長率も最期の値である。利潤率の均等化が作用して いることは明らかである。そして,利潤率の収束した水準は,成長率の収束し た水準(この値から

1

を引けば,通常の成長率になる)と一致している。この 利潤率と成長率の関係は,置塩(2 )でも確認されている。いうまでもなく, (2 ) 使用しているQuickBASICはMS-DOS版である。ところが,現在私が使用している

OSは.Windows 95であるため,実はWindows95から一度MS-DOSに入り,そこか

らQuickBASICを起動させている。そして,プログラムをはしらせた後,画面を切り取っ

てクリップボードに保存し(この点は非常に便利になった).Windows 95上のソフトウ エアで(プログラムのなかにあるアクセサリ→ペイントで)白黒反転させた後(白黒反転 のため.psetの色を緑と白に指定している)印刷をしている。 Windows95で動く

VISUAL BASICは,優れたソフトウェアかもしれないが,従来のN88BASICゃ Quick

BASICのように,索人に使いやすいソフトウェアになっていないように思われた。本稿

とは直接関係しない論点、であるが,経済学でシミュレーションをしようというような場 合には,最近のソフトウェアの進化はかえって不都合なことかもしれない。

(8)

-8- 香川大学経済論叢 8 この収束する水準自体には,賃金率が労働力再生産に必要な実質賃金率の水準 をめぐって変動するという関係式((11)式)が大きな役割を果たしている。そこ で, Rの値を 0..1から 0..5まで動かすようなプログラム(プログラム 2)と図 2を作ってみた。 Rが上昇していくと,収蝕していく間の変動幅が大きくなり (振幅が大きくなり),それ故,両部門の利潤率がほぽ均等化した水準になる時 期が遅れることとなり, (図

2

の一番下のラインが

R

=

0..5のケースであるが, そのケースではまだ変動幅が大きく,利潤率が均等化した数値に到達していな い),同時に均等利潤率は低下していくこととなる。図

2

だけではわからないが, 画面をみていると,

R

の値が上昇すると,下の方に移動していくことがわかる のである。利潤率と成長率は収束した水準では一致するし,利潤率がRの上昇 とともに低下していくから,成長率も同じように

R

の上昇とともに低下してい くこととなる。置塩モデルは,このように,均等利潤率が成立するモデルであ るが, W/P2はRを越える値に収束していく(図1でも図2でも,収束する実 質賃金率は0..3を越えている)から W はたえず減少し続ける形でOに収束し ていくし, Plも P2もともに

O

に収束していくモデルとなる。このことはプログ ラムをはしらせればわかることであるが,(1)と (2)式をみてみれば,均等利潤率 が存在し,しかもそれが (Rの変化とともに)変化していく以上, WがOに収 飲するならPlも P2もOに収束しなければならないし,収束しながらも W/P2 とPl/P2が (Rの値とともに変化する)ある一定の値をとるように変化しなけ ればならないことがわかる。 賃金率の変動が労働力の再生産の水準に収敬するメカニズ、ムというのは,ま (3 ) 箇塩モデルで設定されているさまざまなパラメータを動かしてみよう。シミュレー ションしてみた結果は次の通りである。まず技術係数は,どれも値を高めていくと,利潤 率・成長率は低下する方向に移動する。値が小さいと収束しない場合もあるが,多くの場 合は収束しながら,収束する水準が低下していく。技術係数は,生産財や消費財1単位生 産に必要な資本や労働の量であるから,それが大きくなると成長を{尽くするように作用 するわけであり,これは当然の結果であろう。他方,投資の反応係数(β)や労働力の価値 に収束させる係数(f)については,いずれもこの値を高めていくと,利潤率・成長率は上 昇する方向に移動する。βの場合はある程度以上大きくなると,収束しなくなる。資本家 の投資行動の活発さは成長率にプラスに作用するが,極端に高くなると不規則な動きを 示すこととなるわけである。このことは,置塩(2)の13頁にも指摘されている。

(9)

9 市場社会主義と競争 -9 さに資本主義の資本主義たる所以を示すものである。その意味、で,置塩モデlレ が資本主義モデノレを端的に表現したものであることを意味している。但し,マ ルクスが労働力の価値規定を与えた時,そこには精神的要素や文化的要素を考 慮し,更に,歴史的に変化するものであることを付け加えていることを忘れる べきではない。したがって,資本主義的なモデルといえども,

R

の水準が固定 されたものと考える必要はない。 Rの変化を示したのが,プログラム 2と図 2 であり,資本主義は利潤率均等化傾向と実質賃金率を労働力の価値に収束させ る傾向を買きながら(プログラム1),同時に,労働力の価値が変化していく関 係(プログラム2)も貫かれると考えればよい。 III. 市場社会主義における競争オ1) われわれの市場社会主義モデノレには,いくつかの特徴がある。それぞれの特 徴がいかなる意味を持つかを分析するために,特徴を一つずつ取り出す形でモ デルを構築し,プログラムを作り,シミュレーションさせてみるのがよいだろ

1.. モデノレ

1

一賃金率の決定一 まず,働く人聞が自ら受け取る部分をどう決めるかを考えなければならない。 置塩モデルのような資本主義的モデノレとの違いはそこから始まらねばならない からである。もちろん,市場社会主義も社会主義である以上,自らの賃金を自 ら決めるものでなければならない。とはいえ,社会主義といえども市場社会主 義である以上,この決定にはさまざまな制約条件が加わることとなる。第一に, 市場社会主義では企業の商品は市場で評価されるから,商品を生産するために 投下された全体の労働=付加価値全体は市場の評価に依存している。第二に, 初期値も同じように動かしてみよう。初期値の変更は,最終的に収束する値を変えるも のではない。そこがパラメータを変更した時との差である。しかし,いず、れにせよ,初期 値の値にかかわらず,収束運動を示すと考えてよい。ただ, xの値はO期でも1期でも値 を小さくした場合,ぬがOになり, i 0で除算しました」と出る。また, W とP2は初期値 を大きくした場合,同じようにむがOになり,しかも収束する運動自体を示さなくなる。

(10)

-10-ー 香川大学経済論叢 10 企業内の個別的労働の評価も市場による評価とならざるをえない。複雑労働や 熟練労働の評価は,労働契約で決まるが,その決定には市場機構が作用する。 ここでは職業選択の自由があるから,納得できるまで企業を探すことができる からである。契約が結ぼれたら,後は実績に応じて評価・査定(ここには,経 営者だけでなく,労働者も参加すべきであるが)を受けることとなる。このよ うに考えると,働く人聞が自ら決定するのは,賃金の平均的水準(の上昇率) ということになる。したがって,春闘で何%の賃金引き上げという形と類似し たものとなる。そして,これを決めれば,市場が決める付加価値全体の評価の うち,賃金部分と利潤部分の分け方を決めることとなる。 以上については,拙稿(7)を参照されたい

(

1

4

7

'

"

'

-

'

1

4

8

頁)。但し,これだけ の説明では,まだ賃金率は決まらない。賃金の平均的水準(の上昇率)を自由 に高くもできるし低くもできるからである。しかし,もし社会主義だからといっ て賃金率を自由に高めていけば (f親方赤旗」方式を行えば),それは旧社会主 義が崩壊したのと同じ帰結をもたらしかねない。したがって,何らかの形で, 賃金が企業の業績に対応して変動する(インセンティブを与える)システムに なっていなければならない。その意味では,賃金の平均的水準(の上昇率)の 決定にも,市場の評価を利用した方がよいということになる。そこで,ここで は,各部門毎に貨幣賃金率は独自に決まるとし,前期の平均的な利潤率(下付 きに*を付けたものを平均値とするープログラム上は

RR

一)より高ければ,企 業経営者との話し合いで前期の水準より高い賃金率を実現できることとしょ

rト

1

*

ニ (rt-

1

1

+r

t-1z)/ 2 wtl wtー

1

1

(1

+

f

(

r

t

-

l

l

-

r

t

-

l

*

)

)

wtz = wトlZ(1

+

f

(

rt

-

1

z

-r

1

*

)

)

f>O

(1

-

1

1

-

1) (1

-

1

1

-

2

)

(1

-

1

1

-

3

)

ここでは,置塩モデルのように,貨幣賃金率が労働力の再生産に必要な水準

(

R

)

をめぐって収束する運動をするとはみなされていない。それ故,実質賃金率 が最終的に落ちつく先は与えられていないのであり,モデルをシミュレーショ

(11)

11 市場社会主義と競争 11ー ンで動かしてみた結果で判断する以外にない。そして,消費財価格は当然次の ように変更される。 pt2

=

(Wt 1n1X件11+wt2n2Xt+12)/Xt2 ( 1 -12) 以上の他は,置塩モデルを(賃金率を二部門毎に分ける以外は)そのまま使 うこととしよう。 2.. モデノレ1の動き プログラム3と図 3参照されたい。ここでは,まず、パラメーター fを 0..1とし た。モデルの動きは,置塩モデルとは全く異なるものとなる。もし,このプロ グラムを1000期位動かしてみたら,両部門の利潤率も両部門の成長率も, 0を めぐって上下に変化しつつ, 0に(成長率の場合は1に)収赦していくことが確 n f ﹄ 4 1 F h J -A H U ﹁ 円 J v a A 守 内 H U 4 1 & 内 / ﹄ n n v n h u n H u h u v 内 ︿ U n H U L V ・ -= 1 ノ -n u -、 1 J 2 = = = n H U -﹁ J 、 J t ,

r

、 J n H U -n H U n H U n H U O L 守 寸 n u n u u n U J 1 1 世 E h n / ﹄ 内 / ﹄ の f ﹄ 内 / ﹄ 当 事 J 3 1 P 4 1 p ・ a ・ 戸 ﹄ 円 / ﹄ つ L n ζ M W 4 3 n k p U H W '

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t

(12)

-12- 香川大学経済論叢 12 認できる。その意味では,利潤率の均等化作用は貫徹しているといってもよい が,注目すべき点は,均等化作用よりも,このモデルは利潤率がOに収散する モデノレであるという点にある。置塩モデルが貨幣賃金率を Oにしていくモデ、ノレ なら,このモデルは利潤率をOにしていくモデルである。社会主義にふさわし く貨幣賃金率を重視し(但し,だからといって実質賃金率重視かどうかはわか らないが),利潤率を犠牲にしたモデノレとなるO そして,最終的には利潤率と成 長率がOに収放するから,単純再生産に近づくこととなる。 次に,両部門の賃金率を点で打つこととし,パラメーターfをOれ1"-'0..5まで 動かしたのが図

4

である(プログラムの番号と図の番号は一致させたが,プロ グラムについては紙数の関係上いくつかは省略することとした。そして以下の プログラム5以降は,掲載する場合も,プログラム上 r'基本的関係」と記載さ れている箇所だけに限定することとした。この基本的関係さえあれば,プログ ラム 1~3 を参考にして,全体のプログラムは再現できるはずである。なお, プログラム全体はホームページに掲載しであるので,参照されたい。 http:// fourier..e

c

.

.kagawa-u..a

c

.

jpj-yasuijyasui-21html)。賃金率をみると,このモデ ノレでは両部門の貨幣賃金率・実質賃金率は格差をもったままであり, f=O..lで も収放する水準で倍近い差が発生していることがわかる。(図3参照)。それで も, fの値が小さいと賃金率の格差はまだ、小さいが, fの値の上昇につれて消費 財部門の賃金率が生産財部門の賃金率を大きく上回るようになり,最終的には, 生産財部門の賃金率はOに収赦していくこととなる。ところで,このようにパ (4 ) ここでは, Wの初期値を置場(2 )と同じものを使っている。但し,ここでは霞塩(2) とは異なり,両部門の賃金率を別々に定義しているから,とりあえず両部門とも初期値を 1という値で動かしている。そこで,WlとW2の初期値を異なるものとしてみよう。まず, Wl(O)を小さい値から大きい値に変更していくプログラムを走らせてみる。すると,Wlの 収束値はWl(O)の変化に対応して一貫して上昇していくが,そのうちに上昇率自体が鈍 化してくる。他方, W2の収束値は一度低下した後 (Wl(O)の変化が0.5位までは低下す る),その後は逆転して上昇していく。したがって,収束値でみると,最初はW1<W2の 大きな格差から始まり,その後一度格差は縮小するが,後はー貸してWl<W2という格差 は拡大していく。しかし,両方の賃金率の収束値とも拡大しているから, w1(0)が大きく なると,全体の賃金率の収束値は上昇していくこととなる。次に, W2(0)を小さい値から 大きな{直に変更していくプログラムを走らせてみる。すると, W2の収束値は一貫して上 昇していく。他方 W 1の収束値は一度上昇した後,低下していく。したがって,収束値

(13)

13 市場社会主義と競争 13ー ラメータのfの債を大きくしていくと,実は,単純再生産ではなく,拡大再生産 が成立する。利潤率も成長率も激しく変動するが, fの値を小さくした場合のよ うにOに収散していくわけではないのである。各種の値を薗面に出して観察す ればすぐ明らかになるが, fの値を大きくしていくと,次第にWlがOに収束す る(当然Wl/PZもOに収束する)ようになり,少し遅れてPlがOに収束して いくようになる(図 4の

pp

一相対価格ーを参照)。生産財部門の価格は,需給 関係から大暴落するが,その部門の実質賃金率も激減し,結果として利潤率が 高くなっていくから,投資需要は拡大し,生産高も増加し,拡大再生産が実現 していくこととなるのである。 社会主義社会が働く者の生活の向上を目標とする以上,このような結果はた だちに否定されるべきことではない。置塩モデルのような資本主義モデルと比 較するにはかえって好都合である。しかしながら,一見賃金率や消費を重視す るかにみえるモデルが最終的に賃金率や消費を拡大するモデルになっているか どうかは冷静に考える必要がある。まず,パラメータfの値が小さい場合で考え ると次のようになる。このモデノレでは,賃金率が落ちつく先は与えられていな かったが,消費財部門の利潤率がリードしながら,消費財部門の賃金率が上昇 でみると,最初は W,>W2の状態から出発しながら, W2(0) =0..7辺りで逆転し,その後 は W2(0)の値が大きいほど, W,<W2の格差は一方的に拡大していく。 以上のシミュレーションから,ごつのことが確認できる。一つは,置塩モデ/レでは,初 期値の変更は最終的に収束する値を変えるものではなかったが,市場社会主義モデルで は異なっており,収束値は初期値に影響されるということになる。賃金率の落ち着く先を 決めていないモデJレであるから,この結果はある意味では当然である。もう一つは,初期 値を大きくしていくと, w,(O)であろうと W2(0)であろうと, W2の拡大にその影響.が大き く出てくる。このことは,このモデルは消費を拡大するモデルであるから,消費財部門が 発展をリードしていくことを示すものとなる。 初期値として, p,(O)とめ(0)を動かしてみると,前者は賃金率の格差を縮小するが,後 者は複雑で,一度格差は縮小するが,その後開いていくこととなる。価格水準自体は市場 で決まるのが市場社会主義であるから,価格は操作できるものではないが,両部門の賃金 率を均等化しようとするなら, p,(O)は高く, P2(0)は低く出発するとよい。 ( 5 ) 成長率の変動が激しい時には,画面の数値やグラフをみていただけでは,拡大再生産か 単純再生産かは判定がむつかしい。そこで,後でも使う手法であるが,ぬとおの対数を とって,それを画面に出せばよい。 fの値が小さいと,しばらくは上昇するが次第に水平 の直線になっていく。これに対してfの値を大きくすると,変動を繰り返しながらも上昇 トレンドをもつこととなるから,拡大再生産を維持していることは明らかとなる。

(14)

-14-同

1

W

2

香川大学経済論叢

4

市場社盆主義モデ

j

1

-

2

F

=

5

/

1

0

R

l

(

2

0

0

)

=

0

.

1

0

8

R

2

(

2

0

0

)

=

0

.

7

0

2

G

1

(

2

0

0

)

=

1

.

1

4

5

G

2

(

2

0

0

)

=

2

.

5

7

2

W

1

(

2

0

0

)

=

0

.

0

0

0

.

W

2

(

2

0

0

)

=

7

.

2

1

7

.

.

.

W

P

1

(

2

0

0

)

0

.

0

0

0

W

P

2

(

2

0

0

)

=

0

.

5

8

8

P

P

(

2

0

0

)

=

0

.

目μ ¥ 一一 ・・山・・ーr・ .“・ .一..一.・.・ι・J・・ . . ι ι一ー一一、 ー・ 14

t

し,消費財部門の需要とそれ故価格が上昇し,それが再び消費財部門の利潤率 を引き上げていく。こうした過程が展開されていくこととなる。それ故,この モデノレでは,賃金率や消費を拡大させていくメカニズムが作用するかのように みえる。かつて井村(1)は,第一部門の不均等的拡大が,社会主義計画経済 であれば最終的に消費の増加に結実させていくことができると強調し,ところ が資本主義ではそれが恐慌の究極的な原因になっていくと主張していた。われ われは,利潤率と成長率が不均等に発展していくモデルを考察対象としていな いが,そもそも井村(1)が考えたような社会主義計画経済を念頭に置いてい ない。そして,そのような社会主義計画経済は,現在では現実的な社会主義像 とはいえないであろう。そこで,われわれは,むしろ市場を利用しながら,消 費中心の社会主義の経済システムを構築しようと考えたわけである。しかし, われわれが設定したモデノレは,賃金率と消費を拡大させていくかのようにみえ

(15)

15 市場社会主義と競争 15-るが,同時に,最終的には生産財部門を食いつぶし,単純再生産に帰結してい くこととなる。再生産表式分析が明らかにしたように,第二部門の不均等発展 の断続は最終的には単純再生産に収飲していくことになるからである。そうす ると,このモデルは,結局賃金率や消費を拡大するメカニズムにはなっていな いかもしれないという疑問が浮かんでくる。そこで,賃金率と雇用量をかけて 貨幣賃金の大きさを計算し,貨幣賃金を消費財価格でわって実質賃金の大きさ を計算してみよう。詳細な計算結果はここには掲載しないが,長期的にみた場 合,置塩モデルのような資本主義モデルの方が両方ともはるかに高い値となる。 他方,短期的(たとえば20期以内)でみると,貨幣賃金は市場社会主義モデル の方が高くなるが,実質賃金はやはり資本主義モデノレの方が高いのである。も ちろん,貨幣賃金とか実質賃金は,賃金率に雇用量をかけているから,雇用の 拡大が必要な経済では大きな意味をもっているが,完全雇用に近い経済では特 別の意味をもっていないかもしれない。そうした経済では,むしろ貨幣賃金率 や実質賃金率の方が重要である。貨幣賃金率は,明らかに市場社会主義モデノレ の方が高い値を維持している。しかし,重要なのは,実質賃金率の方であり, それをみると,究極的に単純再生産に近づいていく市場社会主義モデルは,置 塩モデルのような資本主義モデJレより高い値となる。図1・図2・図3のW P を比較されたい。図3は,賃金率が両部門で荊離しているが, fの値を小さくし て,両部門の賃金率の講離を小さくしていくと,実質賃金率は両部門とも 0..7位 に収蝕していく。これに対して,図 1 は実質賃金率は O ド 5~0..6 の間である(もっ とも, R

=

0..7とし, fを0..2とすると,置塩モデルでも,貨幣賃金率も Oとは (6 ) 先の注(1)でみたように,憧塩 (3)は,く実質賃金率は雇用比率がある臨界値を越える と上昇し,下回ると下落する〉という定式を採用してプログラムを動かすと,最終的に単 純再生産に収赦していくとしていた。マルクスが予想していなかった結果が導かれてく ることは事実である。しかし,資本主義モデルが一定の条件下で単純再生産に収飲してい く場合があることを明らかにしても,それだけでは経済的にいかなる意味があるのかを 理解することはむつかしい。産業循環の一局面は別として,資本主義が単純再生産に収飲 するということはなかったからである。しかし,われわれの社会主義モデJレで,労働者の 賃金率が上昇し続けると,結果として単純再生産に収数していくという結論は,経済学的 に意味があるし,問時に, I日社会主義の成長率鈍化の一つの要因を明らかにしていると いってもよいだろう。

(16)

16 香川大学経済論叢 16 ならず,実質賃金率は0..7位になる。但し,その場合は利潤率が極端に低くな るから,資本主義はそれを許容しないだろう)。このように,市場社会主義モデ ルは,最後の実質賃金率の動向をみることによってはじめてその優位性を示す ことができることとなる。これらの点から総合的に考えると,われわれは,資 本主義モデルの強靭さを改めて知らされると同時に,市場社会主義モデルはこ のままの形では採用することがむつかしいということとなるであろう。 他方,パラメータfの値が大きければ,単純再生産ではなく,一応拡大再生産 も実現していくこととなる。しかし,価格が大暴落するという拡大再生産が実 現可能だとは考えられない。その点以外にも,この拡大再生産は生産財部門の 実質賃金率がOに収束していくなかで実現していくものであり,その意味から も,社会主義社会が取るべき方向、ではない。井村(1)の均等的拡大再生産の 概念を借りれば,社会主義である以上,両部門の実質賃金率がある程度均等的 に発展していくことは必要であろう。 かくして,このモデノレが社会主義にふさわしい動きをするためには,消費財 部門の不均等的拡大が最終的には単純再生産に帰着していくという局面の発生 を阻止しなければならないということになる。そこで,次に,賃金率決定を利 潤率の高さと関連する部分と

R

をめぐって収束する部分とを組み合わせたも ので考えることとしよう。但し,このモデルは資本主義ではないから,後者の 部分では,この水準

(

R

)

が労働力の再生産の水準に固定される必要はない。むし ろ,国家のマクロ的な政策判断によって決まると考えるべきである。先にみた ように,市場社会主義モデルは,そのままでは賃金率(特に,消費財部門の賃 金率)が拡大していくことによって,結局は,逆に賃金(特に実質賃金)の拡 大や消費の拡大そのものを抑制してしまうのである。賃金率が

R

をめぐって収 束するという動きは,それを防ぐ機能を果たすこととなる。したがって,この Rは,国家が政策によって変化させることができるものであるから,プログラ ム上は,先のプログラム

2

R

を変化させたのと同じように変化させてやれば よい。とはいえ,市場社会主義モデルでは,置塩モデルのようにこのRをめぐっ て収束する部分が常駐していなければならないというものではない。賃金率が

(17)

17 市場社会主義と競争 -17-ー 暴走するのを防ぐためにだけ,状態が悪化しそうな場合にだけ導入したらよい のである。但し,プログラムで動かす場合には,常駐した形で動かすこととな るから,最終的には収束するモデノレになる場合が多いし,収束した状態では置 塩モデ、/レと類似した結果が出てくることとなる。これが,プログラム

5

と図

5

である。図は上から下へと変化しており,

R

の値が大きくなると均等利潤率は 小さくなる。図

5

は図

2

と類似したものとなっている。但し,図

2

では,

R

=

0

5

でまだ収束していないが,図

5

ではもはや収束しており,そのため,画面上の 最期の値は異なっている。しかし,両プログラムとも Rの変化に対応して収束 する水準自体は閉じとなっており,そのことは印刷したものを重ねれば確認す ることができる。収束する水準が同じになるのは次のような理由からである。 まず,後に詳しく述べるが,たとえ

fl>f2

としてもその靖離が大きくならない

5

市場社会主義モデ)

v

1

-

3

R

1

I

R

=

5

1

1

0

R

1

(

2

0

0

)

=

0

.

1

01

.

R

2

(

2

0

0

)

=

0

.

1

0

1

R

2

I

G

1

(

2

0

0

)

=

1

.

1

0

1

G

2

(

2

0日

)

=

1

.

1

0

1

W

1

(

2

0

0

)

=

0

.

0

0

0

W

2

(

2

0

0

)

=

0

.

0

0

0

W

P

f

(

2

0

u

)

=

0

.

6

1

0

W

P

2

(

2

0

0

)

=

0

.

6

1

0

P

P

(

2

0

0

)

;

'1

.

4

9

3

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t

(18)

-18- 香川大学経済論叢 18 ことが収束する条件であるが,プログラム 5ではパラメータのflとf2を同じ 値で動かしているので収束している。次に,収束する場合ならプログラム5の flは収束する水準自体を変化させない。かくして,収束する水準を変化させる パラメータであるプログラム 2のfとプログラム 5のf2も問じ値 (05)で動か しているから,収束する水準が同じになるのである。 3.. 市場社会主義の政策 市場社会主義的政策をもっと具体的に考えてみることとしよう。プログラム

5

はf1と f2を同じ値で高く

(05

で)設定しているが,まず, flとf2をこの ように固定した状態で, Rが変化した場合を考えてみよう。図 5は,収束する値 では図2と同じであるが,調整過程では図2と明らかに異なっているところが ある。即ち,図5ではRが小さい(利潤率が高い)ほど,収束するまでの変化 が大きく時間も長くかかり,その点は図 2と全く逆であるということである。 プログラム5はRをめぐる運動を導入したから,図2の調整過程は図5でも同 じように作用しているはずである。したがって,これは,プログラム5のflの 影響が図

2

で働いた調整を打ち消すほどに逆に強く作用した結果であると考え る以外にない。つまり,図5でRの値が小さいと貨幣賃金率を低い水準に強力 に収束させることとなるが,それが利潤率の動向に貨幣賃金率を連動させるfl の動きと衝突することとなれ調整に時間がかかるということである。そして, Rの値が大きい(利潤率が小さい)と,それは賃金率の変動を許容する範囲が大 きくなることを意味するから, flの影響との衝突が少なく,調整も早く達成さ れるということであろう。これらの点は,市場社会主義の政策を実施していく 場合に参考となるかもしれない。 次に,今度はRを固定化したままで,flとf2のパラメータの値を変化させて みよう。 flを上昇させれば利潤率の高さに応じて賃金率を変化させるというメ カニズムが前面にあらわれ,逆にf2を上昇させれば,実質賃金率がある上限を もっという制限が賃金率の決定の前面にあらわれる。そして, fl<f2とすると, 当然図5と同様の収数運動を示すこととなるが,逆に, fl>f2とすると,図5

(19)

19 市場社会主義と競争 -19 のようなくさまざまな変数が収数する〉という動きを示さなくなり,場合によっ てはきわめて不規則な運動を示すこととなる。

fl>f2

の場合は,

R

をめぐる運 動に収束させようとする

f

2

の動きに対して,

f

l

の影響の方が大きくなるため,

f

2

の動きで運動を収束させることができず,結果として不規則な動きを示すこ ととなるわけである。その意味では, R を動かした場合の図 5と(現象的には 異なるが,実質的には)同じ因果関係が働いていることとなる。このことは, 社会主義社会を安定的に運営していくためには,利潤率に連動させて賃金率を 決定するという側面には強い制約条件が働かなければならないことを意味して いる。社会主義は労働者が主人公の社会であるとしても,労働者には厳しい自 己管理が要求される社会でもあるということである。 以上のようなさまざまなパラメータの動きを前提とした上で,次に市場社会 主義的な政策としてより大きな問題となるのは,利潤と賃金の聞のトレード・ オフの関係である。社会主義が資本形式を利用する以上,利潤範鴎は必要不可 欠であり,利潤範腐を取りいれる限り,利潤と賃金の聞にはトレード・オフの 関係が成立する。トレード・オフの関係は成立するが,しかし同時に,資本主 義的なトレード・オフとの違いが明確にされなければならない。そこで,まず, 利潤率はプラスの値を維持しながらも,消費をできる限り大きくする政策を考 えたとしよう。プログラム 5を使って試してみればよい。 Rの値を大きくする と,利潤率と成長率は低下していく。プログラム 5では, R を 0..1きざみでみ た場合,

R

=

0

.

.

8

にすると,利潤率・成長率はマイナスとなる(実は,先の置 塩モデルでも,

R

の値を大きくすると,マイナス成長が出現していたのである)。 マイナス成長の場合,実質賃金率は同じ値を維持するが,貨幣賃金率と価格は 上昇し続けることとなる。マイナス成長にならない値として,

R

=

0

伽?とする と,均等利潤率と均等成長率は0.6%となる。ここでも実質賃金率は同じ値を維 持するが,貨幣賃金率と価格の方は低下し続けることとなる。但し,この場合 はパラメータの

f

l

f

2

を両方とも Oゎ5で動かしている。そこで,次に,パラ メータの値を動かしてみよう。

f

l

の変化は,先にみたように,収散しなくなる ほど

f

l

f

2

の差を大きくしない限り,均等利潤率や均等成長率の水準を変え

(20)

-20ー 香川大学経済論議ー 20 るものではない。ところが,

f

2

の方は,この値を小さくしていくと,均等利潤 率や均等成長率の水準自体を下げていくこととなる。たとえば

f

2

=

0

,,

2

とする と,均等利潤率と均等成長率は

0

.

.

3

%

に低下し,貨幣賃金率と価格は低下し続け る。そして,実質賃金率は0..7位に収束している。したがって,消費を大きく 拡大するマクロ政策とは,

R

の値を大きくし,

f

2

の値を小さくすることである。 但し,この政策は成長率を低くするから,こうした政策を取るかどうかという 点については,別の判断が必要となる。 そこで,逆に,利潤率を高め,賃金率や消費を低める政策を考えてみよう。 もうすでに明らかなように,

R

を小さくし,

f

2

を大きくすれば,利潤率や成長 率は高くなる。その上で,選択肢としてはごつのことが考えられる。一つは, f1を小さくすることである。この場合は,利潤率と成長率が高くなると同時に, 変動幅が小さく,経済システムは安定的に推移する。利潤率が高くなることは, 生産財に対する需要を高めることであるから,激しい競争のなかで,賃金や消 費を我慢し,ひたすら蓄積に遇進する形である。企業の利益・成長中心主義的 な行動であり,日本の企業労働者が取ってきた道と類似している。これに対し て,f1を大きくすると,収束する水準は同じように高いが,激しい変動を受け ることとなる。企業が利益を上げれば,賃金は上昇するが,すぐさま

R

の制約 条件に衝突し,上昇にストップがかけられる。といってもそれで怠げていると, 今度は逆に賃金率が切り下げられる。労働者個々人に激しい競争が展開される 形態である。どちらを取るにしても,この激しい競争は,人聞が資本の論理に 従属するだけであり,このような物象化された人聞の生き方は,社会主義が本 来取りうる道とは到底いえないであろう。 かくして,市場社会主義の経済政策として,賃金・消費を一方的に高める政 策も,利潤・蓄積を一方的に高める政策も本来のものではないといわねばなら ない。両極端をとるべきではないとして,ではどこに落ち着かせるべきかとい うと,これは経済学が示すべきものではないというべきであろう。市場社会主 義の構成員全員で判断すべきことであるからである。そして,構成員全員で判 断できるところが,資本主義的なトレートオフと市場社会主義的なトレード・

(21)

21 市場社会主義と競争 -21ー オフとの違いといってもよいのではないだろうか。最後に,ここで三つの注意 を付け加えておきたい。一つは,資本主義的モデノレである置塩モデルでも,先 にも述べたように,

R

の値やfの値を同じように設定してやれば,ほぼ同じ結果 が得られることである。しかし,資本主義モデルではRを自由に変化させるこ とはできない。 Rはあくまでも労働力を再生産するために必要な水準として設 定されているからである。もう一つは,われわれが考えている政策は,資本主 ( η 義であれば所得政策といってもよいかもしれないということである。しかし, 所得政策の目的は資本と労働の聞の調停にあるが,社会主義社会では,国家は 労働者の意思を代理するものであるから,国家がなすべきことは,労働者自ら が賃金・消費を高めるにせよ低めるにせよ,自分の首を絞めることにならない ように対応しようとするものでなければならないということである。どこまで いっても,最終的な主人公は労働者自身でなければならないからである。最後 の点は,置塩モデルと比較すると,市場社会主義モデルは不安定な動きを示す 場合が多いということである。その意味では,市場を導入するといっても,マ クロ的な管理をきちんと行わないと,市場社会主義は安定的に動かないことと なる。これは,計画的要素が必要なことを示しており,本稿の

r

V

I.結語」で そのことをもう一度確認することとしたい。 (7) 丸尾 C5 )によれば,スウェーデンのEFOモデルでは,次のように賃金上昇率が決め られる。まず,国際貿易にさらされている部門の価格上昇率は外生的に与えられていると する。他方,国内的に庇護されている部門の価格上昇率は,賃金上昇率と労働生産性上昇 率の差によって決まってくる。そして,全体の価格上昇率は,それぞれの部門の価格上昇 率にその部門が全体に占める比重をかけた値を計算し,それを加えることによって決 まってくる。こうして,全体の価格上昇率と賃金上昇率がトレード・オフの関係として定 式化される。国際競争に生き残ることができ,なおかつ,全体の価格上昇率をある範囲内 に抑えるとすれば,賃金上昇率はどこまでが実現できるか。こうした計算に基づいて,賃 金上昇率を決めていくこととなる。 こうした社会民主主義的な政策では,労働生産性上昇の範囲内での賃金率引き上げと いう観点が貫かれていることとなる。上のモデルでいえば,労働生産性上昇を越える範囲 で賃金率引き上げをすれば,それは必然的に価格の上昇に転嫁されるということを前提 としているからである。これに対して,市場社会主義的モデルでは,企業の利潤は聖域で はない。労働者が経営者とともにきちんとコントロールしていくべき領域である。但lし, 利潤は決して聖域ではないが,その存在を無視しては市場社会主義の政策運営はうまく 機能しないことも厳然たる事実である。だからこそ,このRのような制約条件を導入する 必要があるのである。

(22)

-22- 香川大学経済論叢 22 IV.市場社会主義における競争(2) われわれの市場社会主義では,レーマーのクーポン経済を採用し,そこでは 市場原理が完全に機能する。そこで,経営者は高い利潤率を求める行動を取り, 高い利潤は高い配当をもたらし,高い配当は株式価格の上昇で表現される。株 式はすべてフアンドが所有し,ファンドは高い配当をもたらす株式を持とうと する。市民すべては,フアンドへの権利をクーポン券という形で所有し,クー ポン券の販売はできないがそのポートフォーリオの変更はできるので,それを 通してファンドの行動を監視する。以上の点の詳細については,拙稿(

9

)を 参照されたい。そこで,この利潤の分配の仕方が,社会主義的競争にどのよう に影響を与えるかをみてみよう。 1.. モデル

2

一利潤の分配一 置塩モデJレの(l)~(7) まではそのまま使うことができるし,モデノレ 1 でわれわ れが与えた賃金についての定式化((1 -11-1) から(1-12) までの式)も修正 しながら利用することができる。われわれのモデルの利、潤の扱いに関する特徴 は,それらの点を変更することにあるのではなしむしろ,利潤の処分に関す る扱いのなかで社会主義的な精神を織り込むことにあるからである。では,利 潤の処分のうち,配当はどのように扱ったらよいのか。 利潤 (PR)と配当 (DV)は次のように定義されは:配当率),消費財価格の決 定式も次のように変更される。 PRtj = (ptj_ajptj -njwtj)xtj PRt2

=

(pt2-a2ptj-n2wt2)xt2 DVtj =δ(ptj -ajptj -njwtj)xtj DVt2 = o(pt2 -a2ptj -n2wt2)xt2

o>u

pt2 = (wtjnjxt+jj +wt2n2x件j2+DV¥+DVt2)/xt2 仰) ( 14) (2-12) 配当は,利潤から分配されるものであるから,本来は利潤が決まってからで

(23)

23 市場社会主義と競争 -23-なければ決まらない。しかし,利潤は価格に依存するし((1)と (2)式),価格は配 当も含めた需要に依存している(仰式)。したがって,配当が期首に決定される とすれば,プログラムにも,そうした相互決定関係が含まれるものを入れなけ ればならない。具体的には, FOR文の繰り返しのなかに,更にFOR文を作れ ばよい。即ち,配当のうち,消費財価格が関与してくるのは消費財部門の配当 だけであるから,まず,生産財部門の配当だけを考慮して,消費財価格を与え てみる。その価格で消費財部門の配当を計算し,今度は両部門の配当を含めた 形で消費財価格を計算する。その消費財価格で配当を計算するということを繰 り返す。修正をある程度繰り返した上で,決まってくる消費財価格をもとの FOR文に戻してやればよい。 このようなやり方は,かつて置塩がマルクスの費用価格の生産価格化という 問題で処理した方法でもあり,さまざまな変数が同時に決定されるということ をプログラム上で行ったことになる。しかし,これ以外の問題は,このように 試行錯誤を繰り返して収束した値を受け取るということは行っていないので, 若干の違和感が伴っている。同時決定でないようにするには,配当もしくは配 当からの支出を前期の利潤から行うとすればよい。そこに

1

期のずれを導入す れば,問題は解決する。実際にプログラムで動かしてみると,どちらを採用し でも大きな差は出てこない。とりあえずは(次のプログラム6では), FOR文を 使用する同時決定の体系で示したが,後の展開では 1期のずれを入れたものを 中心的に使用することとなる。 この配当は,ファンドを通して市民に分配される。原理的にいえば,資本主 義であれば,剰余価値のうち資本家の消費に向けられる部分に相当する。それ が市民に分配されるのであるから,ここには社会主義の特徴が端的に表現され ている。いうまでもなしこの受け取りは,賃金部分と異なり,自分の所属す る企業の業績とは関係がない。自分が所有しているクーポン券の構成次第で決 まってくるものだからである。運用がうまいファンドのクーポン券を多く所有 していれば,この受け取りは大きくなる。したがって,配当はすべての市民に 平等に分けられるわけではない。とはいえ,この部分は賃金部分ほど変動は大

(24)

24 香川大学経済論叢 -24ー

市場社会主義モデル

2

-

1

ハ ︿ U A H u n -V 8 A ﹃ n u u 円 f E 4 1 A ハ H U 4 1 A

4 1

4 1 i ﹁ h υ n H U

=

円 H U 4 1 4 1 ¥ / = = = n H U 、 ︺ { } ︿ l r n u n H u n u u n H u n / L n u n H u n H U J r

-内 / ﹄ 円 / ﹄ 内 / ﹄ n v t r r t 、 I g t 、 , , f 丸 、 ハ リ f ﹄ 内 / ﹄ 内 / ﹄ 内 / L H 山 刊 nkFhuuw' ' ' ' 内 / ' ﹄ 4 1 ﹄ Z D 4 1 A R . u 凋 刈 ﹃ ハ / ﹄ n H U 司 A V 円 f s n H u n H u h h v

F 円 U

nHu -4 1 A n H U = 門 川 U ===、、,J= 1 ﹄ ︿ 、 f t 3 J 円 U 1 1 f n H u n H u n H u n H ︼ 門 H U n u n u n u η f ﹄ n u つ ' ﹄ 内 / ι n f 7 ・1 内 / ι r d z 、 、 r , , 、 ‘ , z t 、 d a a A , J , 、 、 4 B i 4 1 A 4 1 A n F e n H I n k n h u u w u w p a

6

W

1

W

2

i

l

-きくないだろうし,ポートフォリオの変更を通して均等化傾向が強く作用する。 その意味では,市場社会主義の構成員の基礎消費をまかなう部分となることで

t

あろう。 モデル2の動き 新しく導入した配当部分は,それが消費に向かう以上,消費を拡大し,その 結果,消費財部門の拡大をもたらし,消費財部門の利潤率や賃金を生産財部門

2

“ と比較して高めるであろう。 fの値をOド1にしたままで賃金率で比較してみよ う(プログラム6と図6参照)0oの値(プログラム上はhの値)を小さく入れ てみても,先の図 4と比較しでも,賃金率の格差は広がっていることが確認で きる。では,利潤率や成長率はどのように動いているのか。そうした関係を明

(25)

25 市場社会主義と競争

-25-図

7

市場社会主義モデルト

2

・ •

• • ••

2

t

確にみるためには,利潤率や成長率が収束するモデルとした方がよい。そこで, 国家のマクロ的政策判断で決められる

R

をめぐる動きを導入するモデルを考 えよう。プログラム

7

と図

7

がその一例である。ここでは,配当に

1

期のずれ を導入したものを採用し,更に,早く収束させるために,

R

の制約条件が強く 作用するように設定しである。

(R=0

.

1)。図

7

をみてみると,利潤率は

0

.

.

4

0

8

(

F

O

R

文を使った同時決定の場合をかっこ内に示すと,利潤率はO“

4

2

2

)

に収 束していて,均等化を実現している。そして,それ以外の収束している値は,

G

L3

7

3

(

1

3

8

0

)

WP

=

0

.

.3

6

4

(

0

.

.

3

5

4

)

PP

=

L7

3

1

(L7

4

4

)

である。プログラ ム

7

h

O

とすると,つまり,配当部分がないものと想定すると,利潤率は

0

.

.

3

4

5

であり,

G

=

1

3

4

5

WP

=

0

.4

0

8

PP

=

1.

6

7

7

である。

h

=

0

の場合は,

FOR

文を使った同時決定でも当然同じ結果になる。

(26)

-26 香川大学経済論叢 26 この両者を比較すると,配当部分が消費に向かうことにより,二つの点が違っ てくることがわかる。一つは,均等利潤率と均等成長率が一致しなくなり,均 等利潤率の方が高くなるということである。すでに述べたように,置塩モデル では均等利潤率が均等成長率と一致することが置塩(

2

)のなかで指摘されて いる。そこでは証明もされているが,われわれの市場社会主義モデルでも,配 当部分がない時は同じように証明できる。置塩C

2

)では

1+r

を変数とする 方程式と

G

を変数とする方程式が一致するため,

G

=

l+r

になるとされてい るが,賃金率を両部門で変化させても,両方の方程式は同じ式になるからであ る。ところが配当部分が入ってくると,

l+r

の方程式は(1)と (2)式から導かれる から,配当部分がない場合と同じ方程式になるが,

G

の方は消費財価格を決定 する

(

2

-

1

2

)

式に異なる部分が挿入されるから,もはや配当部分がない場合と 同じ方程式にはならなくなり,当然Gは1

+r

と一致しなくなる。 もう一つの異なる点は,配当が入ってくることによって,配当が存在しない 場合と比較して,利潤率は上昇し,実質賃金率は低下することである。配当部 分が消費財の購入にまわり,それが消費財価格を上昇させ,実質賃金率を低下 させ,利潤率を上昇させるのである。そして,成長率 (L373)も,利潤率ほど ではないが,配当が存在しない場合 (L345)よりも高くなる。しかし,成長率 の動きには注意が必要である。置塩モデノレのような資本主義モデルでは,配当 部分がないことは事実上資本家の消費を捨象したモデルになっていたといって よい。だから,置塩モデルにこの部分を導入したら,資本家の消費を導入した モデノレになっていたはず、であ

Z

。資本家の消費を捨象して,利潤をすべて蓄積 にまわすということは,もっとも高い成長を実現する経路であると考えるのが (8 ) もっとも,置塩モデルに戻らなくてもプログラム7でパラメータを変化させてやれば 確認できる。まず, Rを0.3とし, flをOとする。次に, hをOで動かすと,置塩モデル のプログラムlと同じになるから,当然利潤率が0..213,成長率が1..213,実質賃金率0 510で収束していく(図1参照)。この状態で, hを0.1とすると, 200期で完全に収束し ていないが,利潤率が0..259,成長率が1..233,実質賃金率が0..473で収束していく。こ こでも, hがOの場合より,利潤率も成長率も高い値となる。配当に1期の遅れを入れた もので動かすと,若干の違いは出るが,配当部分が入る方が利潤率と成長率が高く出るこ とに変わりはない。

参照

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