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(1)

ネットブートのキャッシュの有効性に着目した

教育用端末トラフィックの評価

上田 浩

1

石井 良和

2

外村 孝一郎

2

植木 徹

2 概要:ネットブートはPC端末を一元管理する有用なソリューションであるが,ネットワーク環境によっ ては起動に時間がかかるなどの問題が指摘されている. 本稿は,ローカルディスクをキャッシュとして用い てパフォーマンスを改善することを目指した京都大学の教育用端末システムを,ネットワークトラフィッ クの観点から,その有用性について議論する. トラフィックの分析の結果,キャッシュの有効性が示された ことに加え,ネットブートとは関係のないプロセスで時間がかかっていること,端末の起動とトラフィック に関する知見を得ることができた.

An Evaluation of Network Boot Traffic of Educational PC Focused on

the Effectiveness on Local Cache

Hiroshi Ueda

1

Yoshikazu Ishii

2

Koichiro Tonomura

2

Tohru Ueki

2

Abstract: Although Network-boot is a useful solution that centrally manages the PC terminal, depending

on the network environment problems such as time-consuming to start has been pointed out. This paper, that is to improve performance by using a local disk as a cache at Kyoto University educational terminal system which is aimed, in terms of network traffic, its utility discussed. Traffic analysis of, in addition to the effectiveness of the cache is shown and process not related to Network-boot in that takes time, it was possible to obtain information about the start and the traffic of the terminal.

1.

はじめに

大学における教育用端末は,情報リテラシー,プログラミ ングなどの講義に加え,レポートの作成,オンラインリソー スへのアクセスなど, 学生の自学自習に欠かせない基幹設 備である. 教育用システムは端末そのものに加えて, 認証 やストレージのためのサーバ群, ネットワーク接続のため のスイッチ群,プリンタ,印刷システムなどの複合システム であり,管理運用には幅広い知識が求められる. 加えて,講 義での一斉利用によるシステム負荷, 端末で利用する多様 なソフトウェア,またそのライセンス管理など,企業のPC 端末群にはない要件がある. 1 京都大学 学術情報メディアセンター

Academic Center for Computing and Media Studies, Kyoto University

2 京都大学 情報部

Information Management Department, Kyoto University

京都大学(以下「本学」と記述する)では教育用システム を5年ごとに更新しており,平成14年には仮想化技術によ るWindows, UNIXの同一端末による提供[1],平成19年 のLDAPによる利用者管理の統合[2],平成24年3月から ネットブート*1を採用した,全学で1,400台以上の端末群 を含む大規模システムの構築と運用を行ってきた[3]. ネットブートとは,端末が起動するローカルディスクを ネットワーク接続されたブートサーバから取得する方式で, Ardence やVHDをベースとした,主に Windowsに対応 した商用製品[4], [5]のほか, OS Xが標準でネットワーク ブートに対応している[6]. また, UNIXのディスクレス運 用を実現する手法として, NFSをrootファイルシステム としてマウントしブートする実装はよく知られている[7]. ネットブートを採用した端末システムの課題とされるの

*1 NetBootApple社のOS X Serverの機能であるが,本稿で

(2)

が,起動時間の短縮であり,一台のブートサーバに対するク ライアント数の調整や, ブートサーバとクライアント間を はじめとするネットワーク接続をより広帯域にすること, ローカルディスクをキャッシュとして利用するなどの対策 がある. 本稿は, 本学が採用した, ネットブート端末において ローカルディスクをキャッシュとして利用すること(以下 「キャッシュ」と記述する)の効果をトラフィックの観点か ら検証し,これまでの教育用端末の運用を総括し,次期シス テムの仕様策定に向けた基礎資料の提供を目的としている. 以下, 2章で関連研究を踏まえた本稿の立場を述べ, 3章 で我々が行った, キャッシュの有効性をトラフィックの観 点から検証する手法,続く4節で検証結果とそれを受けた 議論を行い, 5節で全体をまとめ,今後の課題に触れる.

2.

関連研究

ネットブートの教育用端末への採用は国内大学に限って も多数の事例があり,様々な部局の利用と複数のOS,ライ センス管理を両立させるため, あるいは大学で準備した環 境の端末イメージ管理のためのソリューションとなってい ることが伺える[8], [9], [10]. また,システム更新でネットブートからVDIに切り替え た大学の事例も報告されている. VDI基盤を無停電データ センターに構築し仮想マシンを常時起動させておくことで, ユーザが電源を入れてから50秒ていどでログイン可能と なったものの,その時間の大部分が OSの起動とは関係な い, シンクライアントじたいの起動のためのものであった という報告[11]や, ネットブートとVDIを同じ仮想基盤 上で構築し性能を比較したところ, ネットブートであって もVDIに遜色のない起動時間であったという報告[12]も ある. 個人の PC を大学に持参させる取り組みは, 教育用端 末システムの整備に対し多くの示唆を与えるものであ る[13], [14]. 2001年から先進的な取り組みを行ってきた齊 藤らは,セキュリティ対策上,個人の PCは信頼できない ものとしてシステムを設計すべきであること, 私有物であ る学生のPCへの大学への関与が限定的になること,環境 を統一できないこと, 盗難や紛失という問題があることを 指摘している[15]. 本稿は技術や手法の優劣を論じるものではないが, 大学 による学生の学習環境を統一的に管理する手法として,ネッ トブートは一定のソリューションになっている. 前述した ようにネットブートは, 環境によっては長い起動時間を必 要とすることがデメリットである. この問題に対し, ブー トサーバのディスク性能よりネットワーク帯域の増強が起 動時間を短縮する効果があるという事例が報告されている が,起動時間についての報告にとどまっている[16]. 一方, 起動時間だけでなく,ネットブートのトラフィッ ク分析を指向し、より詳細な知見を得るという立場の研究 もある. たとえば緒方はOS X Serverのネットブートトラ フィックの計測を行っており[17], サーバ1台とクライア ント5台という試験環境に関する報告を行っている. この ような背景のもと,我々は本学で実運用されているネット ブート端末システムのトラフィックの分析を進め,運用の 改善に有用な知見を得ることを標榜している。すなわち, ネットブートの本質的要素であるネットワークトラフィッ クの観点を持つことが本稿の大きなモチベーションとなっ ている.

3.

トラフィック計測・分析によるキャッシュ

有効性の検証

ネットブートとキャッシュを採用している,本学教育用 端末システムのトラフィックを計測・分析し,トラフィッ クの観点からキャッシュの有効性を検証する. まず,シス テムとネットワークへの最も高い負荷を想定し,教室内の PC が一斉ブートしたときのトラフィックについて,次い で実際の授業のトラフィックについて計測・分析を行う. 本節では,検証環境と2つのトラフィック計測を行った手 法について述べる. 3.1 検証環境 本学教育用端末システムのネットブート環境は Citrix XenDesktop 5.6 に含まれる Provisioning Services (以下

PVS)とシー・オー・コンブ社製のReadCache 4.xを用い,

以下の要素で構成されている.

PC 端末(2) NEC 製 Express5800/51Mb-S (CPU Celeron P4505 1.86GHz,メモリ4GB)であり,システ ム全体で1,434台をWindows7のPVSによるネット ブート運用を行っている. PC端末のディスクは図 3 に示す通り, ローカルディスクであるディスク 0と, PVSサーバ上にある仮想ディスクであるディスク1が あり,仮想ディスクからWindows7がブートし,ディ スク1のC:ドライブへのアクセスはすべてネットワー ク経由となる. キャッシュを導入すると,キャッシュが あれば, C:ドライブへの読み取りはすべてディスク0 の119.01GBのキャッシュ領域にリダイレクトされる ことにより,ネットワークを使用しないディスクアク セスとなる. ディスク0のD:ドライブは仮想メモリ, 端末固有の書き込み*2やログを格納する領域である.

PVS サーバ (1) NEC製Eco Center 20ノードのう ち6ノードを物理サーバとして使用している. それぞ れ10Gbpsで基幹スイッチに接続されている.

ファイルサーバ (4) NEC 製 iStorage NV7500/Ne3-20/M100の3系統で構成し,総容量92TB.ログイン・

*2 CitrixではこれをWrite Cacheと呼んでいるが,通常の利用で

(3)

1 NEC Eco Center 20ノード Fig. 1 NEC Eco Center 20 nodes

ログアウトの際ユーザ用領域(300MB/ユーザ)への アクセスがある.

CO-CO (CO-Client Operation) シー・オー・コンブ 社製のツールで, 端末の起動やログオン, シャットダ ウンなどを一斉に行うことができる. 本ツールのログ に PC 端末の状態が記録されることを利用し, 起動, シャットダウン, ログオン待ち, ログオン処理完了な ど, PC端末の状態の変化を検出している. これらの対象システムにおいて,図 5に示す以下の機材 を用いトラフィックのパケットキャプチャを行った. 基幹スイッチとサーバ群 PC端末を設置している演習室, 端末室 (本学では“サテライト”と呼んでいる), OSL (Open Space Laboratory:講義が行われない自習用の 端末室),サーバの接続を収容している. 基 幹 ス イ ッ チ と PVS サ ー バ, フ ァ イ ル サ ー バ は 10Gbpsで,その他のサーバは数Gbpsで接続. メディアセンター南館OSL東西,情報リテラシー系 の実習科目が開講される,メディアセンター南館2F 演習室はそれぞれ1Gbpsで基幹スイッチと接続. 計測対象トラフィックを含むVLANのトラフィック を1Gbpsのインターフェイスにミラー. キャプチャ用PC,データ保存用 NAS 基幹スイッチに おいてミラーしたトラフィックを,キャプチャ用PC においてlibpcap形式で保存し,定期的にデータ保存 用NASに移動する. 3.2 一斉起動トラフィックの計測 前節で述べた準備の後,まずブートサーバ,ネットワーク への最も高い負荷を想定し,教室内のPCが一斉起動した ときのトラフィックについて計測・分析を行った. 2014年 3月12 日 (水)に,メディアセンター南館OSL 西のPC 端末77台を一斉に起動,ログイン,シャットダウンしたと きのトラフィックを保存した. 本検証ではキャッシュの有効性に着目するため, キャッ シュ有効/無効,有効であっても初回の起動で実質キャッ 図2 教育用PC端末NEC Express5800/51Mb-s

Fig. 2 Educational PC NEC Express5800/51Mb-s

3 教育用PC端末のディスク情報

Fig. 3 Disk Usage of Educational PC

4 NEC iStorage NV7500

Fig. 4 NEC iStorage NV7500

基幹スイッチ 各サテライトへ 管理用スイッチ キャプチャ用PC データ保存用NAS ミラー用 管理用 サーバ OSL西 OSL東 図5 パケットキャプチャの概要

Fig. 5 An Outline of Packet Capture System

シュなし,キャッシュ有効であっても配信イメージが更新 されておりキャッシュが有効ではないと思われる状態,す なわち次の4 種類のトラフィックを, PC 端末の電源を入 れてからログオン画面が表示されるまで (以下起動トラ

(4)

フィックと記載)を計測することとした. ( 1 )キャッシュ無効 ( 2 )キャッシュ有効, キャッシュなし(以後キャッシュな しと記載) ( 3 )キャッシュ有効, キャッシュあり(以後キャッシュあ りと記載) ( 4 )キャッシュ有効, イメージ更新後(以後イメージ更新 後と記載) 次に,保存したトラフィックデータをホストごとに分類 し, OSL西に所属するホストについて集計することで,検証 対象であるOSL西のみトラフィックを抽出した*3.イメー ジ更新前後の端末のイメージは, 2014年2月のMicrosoft Updateの適用前,適用後*4のものを用いた. 3.3 授業時トラフィックの計測と保存 教育用端末システムの最も重要な利用である, 授業にお けるPC端末利用で,キャッシュの有効性を検証するとと もに, 授業でどのようなトラフィックが発生するのか把握 するため, PC端末を使用する授業におけるトラフィック の計測と保存を行った. 2015年1月26, 27日に授業担当教員の了解のもと,メ ディアセンター南館203, 204演習室において行われる授 業の出席者数,一斉Webアクセスを行ったかどうかのアン ケート調査を行った. 調査の結果, 1月27日(火) 8:45 ∼ 10:15に203演習室で行われた授業が20名と最も出席者 が多く,かつ特定のWebサイトへの一斉アクセスがあった との回答を得たため,保存されている203, 204演習室のト ラフィックから, 該当時間帯のトラフィックデータのみを 抽出し分析を行った.

4.

検証結果

本章では,まず表2に示す12の一斉起動トラフィック/ キャッシュ状態の組み合わせそれぞれについて,トラフィッ クの観点からキャッシュの有効性について分析を試みた後, 通常授業のトラフィックについて考察する. 4.1 一斉起動トラフィックにおけるキャッシュの有効性 キャッシュの状態と起動,ログオン,シャットダウンに要 した時間を表2に示す. 計測の基準となる,電源投入,ログ オン/オフなどの状態変化が起こった時刻はCO-COのロ グに記録されているものを用いた. *3 ミラーされているトラフィックはVLAN単位であり,検証の対

象であるOSL西と同一VLANに所属するOSL東のものも含

まれているため. *4 KB2862973, KB2817396, KB2817369, KB2837595, KB2837583, KB2775360, KB2760601, KB2687567, KB2901110, KB2901112, KB2909210, KB2898855, KB2916036, KB2911501, KB2898857, KB2836943, KB2909921の更新プログラムが適用されている 表1 一斉起動の所要時間

Table 1 Required Time for boot/logon/shutdown

起動 ログオン シャットダウン キャッシュ無効 約5分 約2分 約2分 キャッシュなし 約4分 約1.5分 約1分 キャッシュあり 約2分 約1分 約0.5分 イメージ更新後 約2分 約1分 約0.5分 -100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:10:30.000 11:11:00.000 11:11:30.000 11:12:00.000 11:12:30.000 11:13:00.000 11:13:30.000 11:14:00.000 11:14:30.000 11:15:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Disabled, Boot, All

out in

6 キャッシュ無効の起動トラフィック

Fig. 6 Boot Traffic (Cache Disabled)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:47:30.000 11:48:00.000 11:48:30.000 11:49:00.000 11:49:30.000 11:50:00.000 11:50:30.000 11:51:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Image Not Cached, Boot, All

out in

7 キャッシュなしの起動トラフィック

Fig. 7 Boot Traffic without Cache

4.1.1 起動トラフィック 起動トラフィック(合計)を図 6,7,8,9に示 す. 横軸が時間,左端がCO-COにより電源を入れた時刻, 縦軸がトラフィック量(Mbps)である. inはPC端末から 基幹スイッチの方向, outは基幹スイッチ・サーバからPC 端末の方向であり, inとoutのプロットが重なって視認性 が低下することを避けるため,本稿のすべてのトラフィッ ク量の図について, inは負の方向にプロットしている. 図6, 図7, 図8,図9 に共通する傾向として,電源を入 れて30 秒後から約30 秒間,ほぼ1Gbpsの帯域を使用し ている (合計で 3.75 GBほどサーバからデータをダウン ロードしている)という点が挙げられる. PXEでブートす る場合,最初にTFTPでブートローダを取得する必要があ るが,通常それらはキャッシュされない[18]. 加えてキャッ

(5)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 11:58:15.000 11:58:30.000 11:58:45.000 11:59:00.000 11:59:15.000 11:59:30.000 11:59:45.000 12:00:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Image Cached, Boot, All

out in

8 キャッシュありの起動トラフィック

Fig. 8 Boot Traffic with Cache

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 12:07:00.000 12:07:15.000 12:07:30.000 12:07:45.000 12:08:00.000 12:08:15.000 12:08:30.000 12:08:45.000 12:09:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Image Updated, Boot, All

out in

9 イメージ更新後の起動トラフィック

Fig. 9 Boot Traffic with Cache after Boot Image Update

シュのためのドライバの組込みなど, OSのブートの前提 となるトラフィックが発生していると考えられる. その後については以下の通り,一度取得したデータがロー カルディスクにキャッシュされ, それらが再利用された結 果,サーバからのデータの取得待ちの時間が短くなり,起動 時間が短くなるというキャッシュの有効性が確認できる. キャッシュ無効(6) OSの起動中に対応すると思われ る時間帯にネットワーク帯域の限界に近い約900Mbps のトラフィックが継続的に,全てのホストが起動完了 したと判断された5分の15秒前まで観測されている. キャッシュなし(7) 起動完了までの時間は 4 分で, キャッシュ無効の場合に比べ短縮されており, ネット ワーク帯域の限界に近いトラフィックの発生はキャッ シュ無効の場合より短くなっていることが分かる. キャッシュあり(8) 起動完了までの時間が2分に短縮 されているのに加え,最大のトラフィックが800Mbps となり,ネットブートトラフィックが削減できている ことがわかる. すなわち,図8の横軸11:59:20ごろか ら,ネットブートトラフィックは発生せず, PC端末は キャッシュを利用してOSのブートを行っている. イメージ更新後(9) 起動完了までの時間が 2 分であ -100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:10:30.000 11:11:00.000 11:11:30.000 11:12:00.000 11:12:30.000 11:13:00.000 11:13:30.000 11:14:00.000 11:14:30.000 11:15:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Disabled, Boot, Stacked

out: 1 - 11 in: 1 - 11 out: 1 - 22 in: 1 - 22 out: 1 - 33 in: 1 - 33 out: 1 - 44 in: 1 - 44 out: 1 - 55 in: 1 - 55 out: 1 - 66 in: 1 - 66 out: 1 - 77 in: 1 - 77 図10 端末起動順に集計したキャッシュ無効の起動トラフィック

11 Stacked Boot Traffice (Cache Disabled)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:47:30.000 11:48:00.000 11:48:30.000 11:49:00.000 11:49:30.000 11:50:00.000 11:50:30.000 11:51:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Not Cached, Boot, Stacked

out: 1 - 11 in: 1 - 11 out: 1 - 22 in: 1 - 22 out: 1 - 33 in: 1 - 33 out: 1 - 44 in: 1 - 44 out: 1 - 55 in: 1 - 55 out: 1 - 66 in: 1 - 66 out: 1 - 77 in: 1 - 77 図12 端末起動順に集計したキャッシュなしの起動トラフィック

Fig. 12 Stacked Boot Traffice without Cache

ること,最大トラフィックが800Mbpsの,図9の横軸 12:08:15 まではキャッシュあり (図8) と同様のトラ フィックの傾向を示すが,この時点以降, 900Mbpsの トラフィックが断続的に観測されている. ネットブートのPC端末を採用したPC教室の課題とし て, CBTなどの端末を用いた重要な試験を行う際,一斉起 動時の起動時間のホストによるばらつきがその円滑な実施 に支障を与えることが挙げられる. 一斉起動はネットブー トのシステムにとって最も高い負荷を与える状況であり, システムのパフォーマンスを評価するという観点からは一 定の意味があるものと考えられる. 図 11,12,13,14に,起動が早いホストから順に11台ずつトラフィッ クを集計したものを示す. inはPC端末から基幹スイッチ の方向, outは基幹スイッチ・サーバからPC端末の方向 であり, 1 - Nは起動が早かったN台の端末のトラフィッ クの合計を示している. いずれのトラフィックにおいても,起動が早い端末は他 と比べデータを取得し始めるタイミングが早く,他の端末 がデータを取得しはじめるまで帯域を占有していることが 分かる. 起動が遅い端末は,他の起動が早い端末がデータ を取得し終わるまでは残った帯域しか使えず,ネットワー

(6)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 11:58:15.000 11:58:30.000 11:58:45.000 11:59:00.000 11:59:15.000 11:59:30.000 11:59:45.000 12:00:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Cached, Boot, Stacked

out: 1 - 11 in: 1 - 11 out: 1 - 22 in: 1 - 22 out: 1 - 33 in: 1 - 33 out: 1 - 44 in: 1 - 44 out: 1 - 55 in: 1 - 55 out: 1 - 66 in: 1 - 66 out: 1 - 77 in: 1 - 77 図13 端末起動順に集計したキャッシュありの起動トラフィック

Fig. 13 Stacked Boot Traffice with Cache

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 12:07:00.000 12:07:15.000 12:07:30.000 12:07:45.000 12:08:00.000 12:08:15.000 12:08:30.000 12:08:45.000 12:09:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Updated, Boot, Stacked

out: 1 - 11 in: 1 - 11 out: 1 - 22 in: 1 - 22 out: 1 - 33 in: 1 - 33 out: 1 - 44 in: 1 - 44 out: 1 - 55 in: 1 - 55 out: 1 - 66 in: 1 - 66 out: 1 - 77 in: 1 - 77 図14 端末起動順に集計イメージ更新後の起動トラフィック

Fig. 14 Stacked Boot Traffice with Cache after Boot Image Update -200 0 200 400 600 800 1000 11:17:15.000 11:17:30.000 11:17:45.000 11:18:00.000 11:18:15.000 11:18:30.000 11:18:45.000 11:19:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Disabled, Logon, All

out in

15 キャッシュ無効のログオントラフィック

Fig. 15 Logon Traffic (Cache Disabled)

クがいわば空いてからその帯域を占有することができる. 4.1.2 ログオントラフィック ログオントラフィックを図 15,16,17,18に 示す. ログオン時には, Active Directoryによる認証とロ グオンスクリプトの実行のほか,グループポリシーの適用, プリンタドライバの登録などが行われている. キャッシュ無効とキャッシュなしの場合は, 起動時と同 -200 0 200 400 600 800 1000 11:52:00.000 11:52:10.000 11:52:20.000 11:52:30.000 11:52:40.000 11:52:50.000 11:53:00.000 11:53:10.000 11:53:20.000 11:53:30.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Not Cached, Logon, All

out in

16 キャッシュなしのログオントラフィック

Fig. 16 Logon Traffic without Cache

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 12:02:00.000 12:02:10.000 12:02:20.000 12:02:30.000 12:02:40.000 12:02:50.000 12:03:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Image Cached, Logon, All

out in

17 キャッシュありのログオントラフィック

Fig. 17 Logon Traffic with Cache

-200 0 200 400 600 800 1000 12:11:00.000 12:11:10.000 12:11:20.000 12:11:30.000 12:11:40.000 12:11:50.000 12:12:00.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Image Updated, Logon, All

out in

18 イメージ更新後のログオントラフィック

Fig. 18 Logon Traffic with Cache after Boot Image Update

様にほぼすべての時間帯で 1Gbpsのトラフィックが観測 されているが,キャッシュありの場合は 77 台の一斉ログ インを行ってもトラフィックは 1Gbpsに達することはな く,ログオンにおいてもキャッシュの有効性が示されたと 言える. イメージ更新後についても, 1Gbps のトラフィッ クが観測される時間は存在するものの,キャッシュ無効と キャッシュなしの場合より長くはない. これは,同一イメー ジの更新により変更されたブロックを各PC端末が一斉に

(7)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:20:30.000 11:20:45.000 11:21:00.000 11:21:15.000 11:21:30.000 11:21:45.000 11:22:00.000 11:22:15.000 Mbps Timestamp Total Traffic - RC Disabled, Shutdown, All

out in

19 キャッシュ無効のシャットダウントラフィック

Fig. 19 Shutdown Traffic (Cache Disabled)

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 11:55:00.000 11:55:10.000 11:55:20.000 11:55:30.000 11:55:40.000 11:55:50.000 11:56:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Not Cached, Shutdown, All

out in

20 キャッシュなしのシャットダウントラフィック

Fig. 20 Shutdown Traffic without Cache

アクセスするピークが重なった結果であると思われる. 4.1.3 シャットダウントラフィック シャットダウントラフィックを図 19,20,21,22に示す. 本学ではホームディレクトリはファイルサー バ(M:ドライブ)へのリダイレクト,固定プロファイルの 構成を取っており, シャットダウンの際にプロファイルの 書き戻しは発生しない*5. ログオン時同様,キャッシュなし,すなわちキャッシュは 行うが当初はキャッシュがない場合, 一度キャッシュした ブロックをローカル側でのアクセスにリダイレクトしてい ることから,帯域を使い切る時間が減少した. また,キャッ シュあり, イメージ更新後の場合に全体的なトラフィック 量が減少(ピークが700Mbps)した. 4.2 授業時トラフィックにおけるキャッシュの有効性 1月27日(火) 8:45∼10:15に203演習室で行われた, 出席者20名の授業についてのトラフィックを図23に示 *5 固定プロファイルではあるが,ブックマークなどの退避, Linux ファイルシステムで作成したファイルのファイルサーバへの書き 戻しを行っている.今回の実験では実際にユーザが利用した後の シャットダウンではないため,これらに起因するトラフィックは 発生しない. -100 0 100 200 300 400 500 600 700 12:04:00.000 12:04:10.000 12:04:20.000 12:04:30.000 12:04:40.000 12:04:50.000 12:05:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Cached, Shutdown, All

out in

21 キャッシュありのシャットダウントラフィック

Fig. 21 Shutdown Traffic with Cache

-100 0 100 200 300 400 500 600 700 12:13:00.000 12:13:10.000 12:13:20.000 12:13:30.000 12:13:40.000 12:13:50.000 12:14:00.000 Mbps Timestamp

Total Traffic - RC Image Updated, Shutdown, All

out in

22 イメージ更新後のシャットダウントラフィック

Fig. 22 Shutdown Traffic with Cache after Boot Image Update

す. また,トラフィックからファイルサーバ, PVSとの通 信を抽出したものを図24,25に示す. 前章で述べた通り,この授業は調査を実施した期間で最 も出席者が多く,かつ特定のWebサイトへの一斉アクセス があるとされ,メディアセンター演習室における典型的な PCを用いた通常授業と考えることができる*6. この授業 では, 9:00ごろ外部 Webサイトへの一斉アクセスがあっ たと調査への回答がなされているが, 図 23と図 25を比 較すると,基幹スイッチから見てinのトラフィック,すな わち PCが取得しているトラフィックのほとんどがPVS サーバとの通信であることが分かる. つまり,キャッシュ が導入されているとはいえ,言うまでもなくネットブート の端末はネットワークが生命線であり,図24が示す通り, この他にファイルサーバとの通信が発生していることも考 えると,たとえばキャッシュがない状態で,教室のネット ワークが1Gbpsであった場合,授業での使用に支障を来た す場合もあることが推察できる. 実際我々は,大きなイメー ジ更新が発生した時には,キャッシュを貯める目的で夜間 にすべての端末を起動するという運用上の工夫を行ってい *6 203演習室には71台のPC端末がある. 後期の授業は前期と比 較して出席者が少ない傾向にある.

(8)

-500 -400 -300 -200 -100 0 100 200 300 08:30:00.000 08:45:00.000 09:00:00.000 09:15:00.000 09:30:00.000 09:45:00.000 10:00:00.000 10:15:00.000 10:30:00.000 Mbps Timestamp Classroom Total Traffic 01/20 8:30 - 10:30

Out In

23 火1, 20人利用の教室トラフィック(全体)

Fig. 23 Classroom Traffic

-500 -400 -300 -200 -100 0 100 200 300 08:30:00.000 08:45:00.000 09:00:00.000 09:15:00.000 09:30:00.000 09:45:00.000 10:00:00.000 10:15:00.000 10:30:00.000 Mbps Timestamp

Classroom File Server Traffic 01/20 8:30 - 10:30

Out In

24 火1, 20人利用の教室トラフィック(ファイルサーバ)

Fig. 24 Classroom Traffic about File Server

-100 -50 0 50 100 150 200 250 08:30:00.000 08:45:00.000 09:00:00.000 09:15:00.000 09:30:00.000 09:45:00.000 10:00:00.000 10:15:00.000 10:30:00.000 Mbps Timestamp Classroom PVS Traffic 01/20 8:30 - 10:30 Out In 図25 火1, 20人利用の教室トラフィック(PVS)

Fig. 25 Classroom Traffic about PVS

る. この検証に,すなわち通常授業のトラフィックからも, キャッシュがネットブートの端末システムにおいて大きな 意味を持っていることが示されたと言える.

5.

まとめ

本稿では,ネットブートにおけるキャッシュの有効性を 検証することを目的に, PC端末一斉起動時と通常授業時 のトラフィックを分析し,起動時間とトラフィック,利用状 況の関係について考察した. PC 端末一斉起動時において,キャッシュは起動時間と トラフィックの削減の両方で有効であることが確認できた. しかしながら,キャッシュの有無にかかわらず,端末のディ スクからの起動に直接関係がない, PXEのプロセスによる トラフィックが1端末当たり58MBほど発生しており,ボ トルネックとなっていることが分かった. また,一斉起動時 に何らかの条件で早く起動した端末のPVSトラフィック による帯域の占有が起動時間のばらつきの原因であること も本検証により明らかになった. 加えて,ログオン,シャッ トダウントラフィックにおいてもキャッシュがそのトラ フィックとそれぞれに必要となる時間を削減しており,そ の有効性が示された. さらに,授業利用時のトラフィック についての分析からも,キャッシュが授業のスムーズな実 施に貢献していることが推察できた. 全体として,キャッシュが有効な場合はトラフィックの 削減と起動などにかかる時間の短縮ができており,キャッ シュを導入することによる効果は大きいと言える. 一般的 に同様のネットブートシステムでは, 端末 100台に対し て1台のブートサーバが必要とされているが,本学では約 1,400台の端末を6台のPVSサーバでブートしているこ とからもその削減の効果が分かる. 一方,一斉起動トラフィックの分析により,ネットブート の最大の利点である端末イメージ一元管理に関連した課題 が明らかになった. 複数の端末が同一のイメージを利用し ている場合,イメージ更新が行われた場合,更新後の起動で は, 同じ更新されたブロックに,複数の端末から同じタイ ミングでアクセスされることになり効率が悪い. この場合, 一斉に起動するのではなく,各PC端末を五月雨式にブー トするなどの運用上の工夫が考えられる. ネットブートは仮想化技術と融合し,今後もPC端末の 管理ソリューションの一つとして利用されると思われる. 本稿の検証ならびに考察は,トラフィックの観点からネッ トブートを見るという意味では始まりに過ぎない. 今後は トラフィックデータの統計的処理や,準リアルタイムによ るモニタリング手法の適用などにより,さらなる運用の改 善を目指して行くことが課題である. 参考文献 [1] 丸山伸,最田健一,小塚真啓,石橋由子,池田心,森幹彦,喜 多一:Virtual Machineを活用した大規模教育用計算機シ ステムの 構築技術と考察,情報処理学会論文誌, Vol. 46, No. 4, pp. 949–964 (2005). [2] 池田心, 森幹彦, 上原哲太郎, 喜多一,石橋由子, 石井良 和,竹尾賢一,小澤義明:京都大学における情報教育基盤 の整備と運用,平成19年度情報教育研究集会講演論文集 (2007). [3] 上田浩,喜多一,森幹彦,石井良和,外村孝一郎,植木徹,上 原哲太郎,梶田将司:ネットブートとデスクトップ仮想化 を採用した京都大学の教育用端末系の構築:TCO削減を

(9)

目指して,インターネットと運用技術シンポジウム2012 論文集,第2012巻, pp. 47–54 (2012).

[4] Inc., C. S.: Citrix Provisioning Server.

[5] パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社: OSV - VHD boot.

[6] Inc., A. C.: Mac OS X Server: NetBoot 対 応 コ ン ピュータ.

[7] Kuhlmann, G., Mares, M., Schottelius, N. and Horms, : Mounting the root filesystem via NFS (nfsroot). [8] Fujimura, N.: Bring your own computers project in

Kyushu university., in SIGUCCS, pp. 43–50 (2013). [9] 森藤義雄,今井慈郎:分散型情報サーバ環境におけるシン クライアントシステムの利用と課題,情報処理学会研究 報告.コンピュータと教育研究会報告, Vol. 2010, No. 14, pp. 1–8 (2010). [10] 大本英徹:NetBootによる学生ノートパソコンの教育専 用端末化環境の構築と運用,情報処理学会関西支部支部大 会講演論文集, pp. F–04 (2009). [11] 浜元信州,井田寿男,齋藤貴英:仮想化システムを利用した 演習端末室の構築,学術情報処理研究, No. 17, pp. 33–41 (2013). [12] 杉浦徳宏:VDI型クライアントシステムの構築と評価,学 術情報処理研究, No. 17, pp. 51–58 (2013). [13] 竹田尚彦:情報教育入門の8年間と今後, 教養と教育, No. 8, pp. 6–13 (2008).

[14] Fujimura, N.: The Latest Activity to Realize the Ideal ICT Environment in Kyushu University., in SIGUCCS, pp. 97–100 (2014). [15] 齊藤明紀,長瀧寛之,永井孝幸:個人所有ノートPCを用 いた計算機環境, 情報処理学会研究報告. DSM, [分散シ ステム/インターネット運用技術],第2005巻, pp. 29–34 (2005). [16] 浜元信州,三河賢治,青山茂義:教育用パソコンのネット ワークブート起動時間に影響を与える要因の評価,学術情 報処理研究, No. 15, pp. 46–52 (2011). [17] 緒方将人:ネットワークブート方式シンクライアントに おけるトラヒック計測, Technical report (2010). [18] Citrix Systems, I.: Provisioning Services Boot Process

図 1 NEC Eco Center 20 ノード Fig. 1 NEC Eco Center 20 nodes
Table 1 Required Time for boot/logon/shutdown
図 9 イメージ更新後の起動トラフィック
図 16 キャッシュなしのログオントラフィック Fig. 16 Logon Traffic without Cache
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参照

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