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地すべり176号

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Academic year: 2021

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1.はじめに 平成16年10月23日に発生した「2004年新潟県中越地震」 では,震源域が内陸山間部であったため地震による土砂 災害が多発し,旧山古志村をはじめ各地で集落が孤立し た。この地震災害では,孤立集落での被害状況の把握が 困難であったこと,道路交通寸断により救助・避難・物 資供給手段がヘリコプターの活用しかなかったこと,被 災者に高齢者が多く避難方法や場所に十分な配慮が必要 であったこと,河道閉塞等の発生により二次的な災害の 発生が懸念されたことなど,中山間地の集落散在地域に 特有の問題と課題が明らかとなった。 本 報 告 の 対 象 地 で あ る 群 馬 県 は,新 潟 県 に 隣 接 し 「2004年新潟県中越地震」の被災地と類似した地形・地 質条件や社会条件をもつ地域が広く分布している。群馬 県では,この地域特性を踏まえて大規模地震発生時の地 すべりや崩壊の危険箇所分布を検討し,その後の豪雨に よる二次災害の恐れのある場所や孤立集落の抽出なども 加えて,大規模地震による土砂災害のハザードマップを 作成した。本報告は,その作成手法や危険箇所評価手法 について取りまとめたものである。 2.対象地域と想定地震 対象範囲は図−1に示すように群馬県全域とした。ま た,震源の深さや地震の規模は,「平成9年度群馬県地 震被害想定調査」1)に準じて,表−1のように設定した。 震源は,現在認識されている活断層以外であっても発生

■地震とその後の豪雨による土砂災害ハザードマップについて

−地震時の地すべり・崩壊危険度評価と地震後の豪雨による孤立集落の抽出−

Hazard mapping of sediment disasters caused by an earthquake and following heavy rainfall −Susceptibility assessment of landslide and slope failure hazards during an earthquake,

and identification of settlements isolated by torrential rainfall after the earthquake−

キーワード:地震,地すべり,崩壊,危険度評価,ハザードマップ

Key words:earthquake, landslide, failure, susceptibility assessment, hazard map

図−1 対象範囲とした群馬県とその地質図

国際航業株式会社/中筋章人 Kokusai Kogyo Co., Ltd./Akito NAKASUJI 国際航業株式会社/原口勝則 Kokusai Kogyo Co., Ltd./Katunori HARAGUCHI

国際航業株式会社/鈴木知明 Kokusai Kogyo Co., Ltd./Tomoaki SUZUKI 群馬県砂防課/新木圭一 Erosion Control Division, Gunma Prefecture Government./Keiichi ARAKI

表−1 震源および規模の設定

図−2 震源および規模の設定概念図

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する可能性があると考え,図−2のように県下全域につ いて,地表面を5km地下に平行移動した震源面を想定 することとした。 3.地震時の地すべり・崩壊危険箇所抽出手法の概要 地震時の地すべり・崩壊危険箇所評価および二次災害 の危険箇所や孤立集落の抽出は,以下の手順でおこなっ た。なお危険箇所評価の対象とした地震時の災害現象は, 大規模な地すべり・崩壊と群発する表層崩壊(山腹崩壊) に分けて解析した。 地震による地すべり・崩壊の事例と関連文献の収集 近年,全国各地で発生した地震による地すべり・崩壊 の事例について,既往の調査・研究成果を整理・分析す るとともに,群馬県下に分布する活断層,過去の地震の 震源・規模,地形・地質に関する資料を収集整理した。  危険度分類手法の検討 事例分析をもとに,地震による地すべり・崩壊の発生 形態を分類整理し,それらの素因や発生条件などから危 険度分類を行う手法について検討した。また,県内全域 でほぼ一様な精度で得られる数値情報を利用するため, 数値情報の精度に適合した危険度分類手法を検討した。  危険度の検証と危険度分布図の作成 検討手法を用いて得られた危険度分布データおよび地 域特性からモデル斜面を選定し,動的解析(二次元)に よる危険度の検証(3箇所)を行なったのち地すべり・ 崩壊危険度分布図を作成した。  地すべり・崩壊土砂到達範囲の想定 地すべり・崩壊危険度分布データおよび既存文献の分 析から,地すべり・崩壊土砂が到達する可能性の高い範 囲を想定し,その移動土砂による災害(道路の寸断,河 道閉塞等)箇所を抽出した。  二次災害箇所の想定 地すべり・崩壊で発生する河道閉塞に伴う湛水域とそ の後の降雨による二次災害(土石流等による道路の寸断, 河道閉塞等)の恐れのある箇所について検討した。  孤立集落の抽出 崩壊危険度分布データと二次災害の想定結果をもとに, 道路ネットワークや集落との関わりを評価した上で,孤 立の恐れのある集落を抽出した。  土砂災害ハザードマップの作成 以上検討した地震時の大規模地すべり・崩壊と表層崩 壊の危険箇所分布,ならびに二次災害の危険箇所と孤立 集落などを重ね合わせ,主題図の種類・縮尺・表現方法 を検討した上で,地震時と地震後豪雨時の土砂災害ハ ザードマップを作成した。 4.地震による大規模地すべり・崩壊の危険度評価手法 地震による大規模地すべり・崩壊に関する研究は, 個々の要因との関係を整理したものが多い(例えば,土 木研究所,19952)など)。また中筋ら(23)3)は,地震時 の複数の要因を整理し,要因毎に発生しやすさに応じた 配点を行っているものの,要因間の重み付けまでは言及 していない。 地震動を用いた大規模地すべり・崩壊に関する危険度 分類の例としては,中筋(2001)4)が加速度と傾斜の組み 合わせた方法を提案している。この方法は,過去の大規 模地すべり・崩壊事例の加速度と傾斜の関係から,加速 度が400gal以上で,かつ地すべりは傾斜が12°以上,崩 壊は25°以上で多発するとし,3ランクの危険度分類を 提唱している。また地形・地質等の要因を考慮すること により危険度分類の精度を高められる可能性も述べてい る。 4.1 事例分析結果 本検討では,過去の地震による大規模土砂移動事例 (37地震,105事例)5)および24年新潟県中越地震の事 例6)をもとに,加速度と傾斜を用いた危険度分類を基本 として,地質条件を加味することが可能であるかを検討 した。 図−3は,大規模土砂移動事例の加速度と傾斜をプ ロットしたものである。この結果,加速度は230galを下 限値として,傾斜によって以下のようなランク分けが出 来ることが明らかとなった。事例(発生頻度)の多さが 危険度合いと対応すると仮定すると,ランクAが最も危 険度が高く,ついでランクB,ランクCの順に危険度が 低くなる。 ランクA:傾斜35°以上は,大規模崩壊が優勢であり, 発生事例数が最も多い(46%). ランクB:傾斜25°∼34°は,大規模崩壊と地すべりが 混在し,事例も多い(33%). ランクC:傾斜12°∼24°は,大規模地すべりが優勢で あるが,事例が少ない(21%). ランクD:傾斜11°以下は,大規模崩壊・地すべりの 実績がない. なお,ここでは地震による大規模地すべり・崩壊の目 安をすべり土塊で106 m3 以上とし,地すべりと崩壊の区 分は,移動土塊がそのままの形状で残っているものを地 すべりとした。また図−4は,地質別に加速度と傾斜を 図−3 大規模地すべり・崩壊の加速度・傾斜関係図

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プロットしたものである。この結果からは,第三紀層が 最も多いことはわかるが,第三紀層の中でも,あるいは 他の地質であっても加速度や傾斜との間に何の相関も見 られなかった。つまり,このデータからは地質条件に応 じて,あるいは地質条件を加味して大規模地すべり・崩 壊の危険度を分類することは無理である。 4.2 群馬県下への適用 図−3のランクに基づき群馬県下の大規模地すべり・ 崩壊の危険度を評価した。ベースとなる大規模地すべ り・崩壊の検討単元(ブロック)は,防災科学技術研 究所が公開している地すべり地形データベースに加えて, 群馬県県土整備局,農業局,環境森林局および林野庁営 林局所管の地すべり危険箇所とし,総数で4745ブロック となった。各ランクの総数はランクAが60箇所,ランク Bが1032箇所,ランクCが2943箇所,ランクDが593箇所 となった。これらのブロック別評価結果を図示したのが, 地震時の大規模地すべり・崩壊危険箇所分布図であり, その一部を図−5に示す。 4.3 動的解析による大規模地すべり・崩壊危険度の 検証 前節で抽出された危険箇所,とくに危険度ランクAと ランクBが新潟県中越地震の規模に対してどのような形 態で崩壊するのか,あるいは現状からどの程度安定度を 低下させるのかを検証するために,代表的な3箇所で動 的解析(二次元)を行った。対象箇所は,比較的地質構 造や土質データが豊富な譲原地区・四万地区・少林山地 区とした。 従来の動的弾塑性FEM解析は,残留変形量の予測に 主眼が置かれていたが,ここでは崩壊するか否かに着目 し,すべり層付近の地盤をひずみ軟化が生じる材料と仮 定し解析を行った。ひずみ軟化モデルは弾完全塑性モデ ルを拡張した簡易モデル,すなわち若井他(2005)7) によ る簡易ひずみ軟化モデルを用いた。また解析に用いた入 力地震波形は,新潟県中越地震のK−Net小千谷観測波 形のEW成分を採用した。 解析結果は,ランクBとされた譲原地区が地震発生3 秒後から大きな変位速度が生じ,地震動がおさまった後 もさらに変位を続け崩壊に至った。図−6には50秒後の 残留変形性状を示す。また同じくランクBの四万地区も 崩壊したが,ランクDと判定された少林山地区は3秒後 に大きな変位速度が生じたものの地震動が収まると同時 に変位運動は終息した。以上の結果から,危険度ランク AとランクBは,新潟県中越地震規模では大規模地すべ り・崩壊を発生させる可能性が高いと言えよう。また, 危険度ランクCは検証していないものの,危険度ランク Dが崩壊しなかったことから,危険度ランク区分はほぼ 妥当であると考えられる。 4.4 大規模地すべり・崩壊の土砂到達範囲の想定 大規模地すべり・崩壊による土砂到達範囲は以下の手 順で想定した。 移動土塊の体積の推算 50mDEMを用いて移動土塊の体積を以下の式より推 算した。 体積=面積×層厚×(1/3) また層厚は,「地すべり対策事業の手引き」(全国地す べりがけ崩れ対策協議会編)を参考に地すべり幅の1/ 7を用いた。  等価摩擦係数(見通し角TAN )の算出 図−4 地質区分別の加速度・傾斜関係図 図−5 ランク別の危険箇所分布図 図−6 地震発生50秒後の残留変形性状(譲原地区)

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過去の大規模崩壊の崩壊土砂量と等価摩擦係数の関係 図8)を参考に, で算出した体積に対応する等価摩擦係 数を算出した。算出に用いる値は,誤差を勘案して10の べき乗ごとの代表値を適用した。  崩壊土砂の到達点の設定 移動土塊の頭部を起点として見通し角上の延長線と現 地形との交点をDEM・地形図を用いて特定し,これを 到達点とした(図−7図−8参照)。 5.表層崩壊の危険度評価手法と結果 既往事例を参考に,地震時に群発的に発生する表層崩 壊(山腹崩壊)の危険度評価を行った。地震時の表層崩 壊に対する危険度分類の方法は, 有限要素法などを用 いて三次元動的振動解析を基本とする方法と,既往地 震時の崩壊実績から地形・地質等と崩壊地分布の関係に 基づく統計的手法の2つに大別される。 の手法は,物理的な解析手法に準拠するため,地震 による被災事例がない地域や,異なる特徴をもつ地震動 波形による斜面の危険度評価に用いることが出来る利点 があるが,十分な地下情報を得られないことが多いなど 課題もある。一方の手法は,GIS技術の進歩により実 用性は高いと考えられており,過去の調査研究成果では, 複数の要因間の重みを評価した危険度分類手法として神 奈川県による手法が「地震による地盤災害に関するゾー ニングマニュアル(地盤工学会,1998)」9)に紹介されて いる。また国土交通省国土技術政策総合研究所(以下, 国総研)からは,数値地形情報(DEM)を用いた危険 度判定の手法10) が提案されている。さらにこの手法を 2004年中越地震へ適用した事例が,平成17年度国土交通 省国土技術研究会11)において発表されている。以上を踏 まえ,「神奈川県による手法」と「国総研による手法」の 双方について適用性の良否を比較検討した。 5.1 各手法の概要 神奈川県による手法は,1974年伊豆半島沖地震,1978 年伊豆大島近海地震,1984年長野県西部地震の3つの大 地震で引き起こされた斜面崩壊の事例より導きだされた ものである。この手法では,500m×500mのメッシュ毎 に斜面崩壊に影響を与える次の7つの要因,地表最大加 速度・斜面の水平長・起伏量・地盤のかたさ・断層の長 さ・人工斜面の長さ・斜面の断面形を用いており,危険 度の分類は,メッシュごとにウェイトの合計点(W)を 求め,ランク別に想定される崩壊数に応じた危険度ラン ク区分を適用している。 国総研による手法は,1995年兵庫県南部地震における 崩壊事例をもとにした多変量解析により導きだされたも のである。この手法では地震時に斜面崩壊危険度を判定 する説明変数として「斜面勾配」「平均曲率」「地表面最大 加速度」を用いて,次の判別関数式(論文では「基礎式」 と記述されている)により危険性を判断した。ここでF は判別得点で,値が大きいほど斜面崩壊の危険度が高い ことを示す。また基礎式は,1997年鹿児島県北西部地震 および2000年神津島地震においても汎用性が確認された。 F=0.075I−8.9c+0.0056a−3.2 ………「基礎式」 F:判別得点,I:勾配(°),c:平均曲率, a:地表面最大加速度gal(cm/s2 さらに国総研では,新潟県中越地震における崩壊事例 をもとに同様の判別関数式を検討した結果,次式が得ら れ(以下「中越式」と呼ぶ),前式との比較から相対的 な危険度評価に利用できることを示した。 F=0.079I−35c+0.018a−7.3 ………「中越式」 5.2 新潟県中越地震における有効性の比較検討 前記2手法の有効性を比較検討するため,加速度や崩 壊に関する情報が多く残っている2004年新潟中越地震被 災地で検証を行った。検証範囲は,新潟中越地震で崩壊 が多発した旧山古志村の芋川流域を中心とした10km× 10km(100km2)とした。 解析結果のうち判別得点と崩壊発生率の関係は,図− 9に示すように両手法とも崩壊発生率の上昇にともない 判別得点の増大が概ね確認され,いずれも地震による斜 面崩壊発生の相対的な危険度を評価しうることが明らか となった。また的中・空振り状況は,「国総研による手 法」には対象地域の平均的な加速度である1000galを適 図−7 到達点の設定(縦断図表示) 図−8 到達点の設定(平面図表示)

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用した結果,「神奈川県による手法」にくらべ良好な値 を示した。さらに,「国総研による手法」のうち,「基礎 式」と「中越式」には顕著な差は認められなかった。 以上の結果,群馬県内における表層崩壊危険度検討手 法は,「国総研による手法」の中でも兵庫県南部地震のほ か,鹿児島県北西部地震,神津島地震など複数の地震に おいて汎用性が確認された実績がある「基礎式」を適用 することとした。この「基礎式」を用いて全県下の50m メッシュで計算した危険度分類図の一部を図−10に示す。 6.地震後の豪雨による土石流危険渓流の抽出 土石流の大部分が崩壊に起因して発生することが知ら れている12) 。この点を踏まえ地震後の豪雨による土石流 危険渓流の評価は,5章の地震時表層崩壊の危険度評価 に降雨時の危険度評価を加えたものとし,流域内に両者 を合わせた崩壊危険メッシュがあれば土石流発生の可能 性が高い渓流とした。 降雨による崩壊は,雨水の集中地形と急勾配地形条件 のもとで発生しやすい。そのため,降雨による危険度分 類には,傾斜と集水面積をもとに崩壊の危険度を表した 指標である「地形的滑動力示数(F値)」13)を適用した(図 −11参照)。 F値=(A/W)1/3×tan A/W:川幅あたりの集水面積, :傾斜 演算結果より,県内の地形的滑動力指数は概ね0∼3 の範囲に分布することから,この範囲を群発する表層崩 壊の危険度と同様に4等分(図−12)して降雨による相 対的な危険度分類とした。 地震後の豪雨による土石流危険渓流は,図−13のよう に地震時の表層崩壊の危険度と降雨による危険度の合計 点が高いメッシュが崩壊の危険性が高いと解釈し,流域 内に危険度が高いメッシュが含まれる渓流を,土石流発 生危険渓流とした。 7.土砂災害ハザードマップの作成と孤立集落の抽出 土砂災害ハザードマップは,2種類作成した。まず, 図−9 判別得点と崩壊発生率の関係図 図−10 群馬県下の地震時表層崩壊危険度分布図の一例 図−11 西三河山地における地形的滑動力指数の検討例 図−12 降雨による崩壊に対する危険度区分 図−13 地震後の豪雨時に崩壊発生危険度の評価図

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地震時の土砂災害ハザードマップは,4章の大規模地す べり・崩壊の危険度評価結果と5章の表層崩壊の危険度 評価結果を合わせたものであり,図−14に一例を示すよ うなものとなった。ついで,地震後の豪雨による土砂災 害ハザードマップは,6章の地震後の豪雨による土石流 危険渓流の表示に加えて,以下に述べる大規模地すべ り・崩壊の湛水域と孤立集落を図示したものである(図 −15参照)。 大規模地すべり・崩壊の湛水域の設定は,堰き止め土 量(ここでは崩壊土砂量を適用)と堰き止め高の関係図14) より堰き止め高を推算し,堰き止め高を水平に上流方向 へ延ばした範囲までを湛水域とした。湛水域設定の対象 は,危険度ランクA・ランクBと過去に地震による崩壊 で天然ダムが生じた実績の多い崩壊土砂量106m以上の 大規模なブロックを目安として抽出した。 ついで孤立集落の抽出を行った。孤立状態とは,内閣 府におけるアンケート調査を参考に,道路交通による外 部からのアクセス(四輪自動車で通行可能な一般道幅約 3m以上を目安)が困難となり,住民生活が長期間困難 もしくは不可能となる状態を想定した。具体的には,集 落へのすべてのアクセス道路が大規模地すべり・崩壊危 険箇所とその到達想定範囲,湛水域,降雨後の土石流の 図−14 地震時の土砂災害ハザードマップ事例 図−15 地震後の豪雨時土砂災害ハザードマップ事例

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高い渓流にかかる地区とした。対象とする集落は,2万 5千分の1地形図において家屋表示のある範囲を基本と した。以上の結果,地震直後の孤立集落は162地区,地 震後の豪雨による孤立集落は197地区が抽出された。こ れらの成果を踏まえた地震時と地震後の豪雨による土砂 災害ハザードマップは,その一部を図−14と図−15に示 すようなものとなった。 8.おわりに 群馬県全域を対象として,地震時の大規模地すべり・ 崩壊および表層崩壊危険箇所抽出を行った。危険度評価 に際し,大規模地すべり・崩壊は防災科学技術研究所 が公開している地すべり地形データベースを活用し,表 層崩壊は国土地理院発行の数値地図50mメッシュ(標高 データ)を活用して,地形条件を主とした統計解析手法 による危険度評価をおこなった。さらに,地震時と地震 後豪雨による孤立集落の抽出を行った結果,合わせて 359集落が対象箇所として抽出された。この被災危険箇 所や孤立集落情報は,地震時と地震後豪雨時の2種類の 土砂災害ハザードマップとして表示した。これらのハ ザードマップや危険箇所情報は,今後の地域防災計画や 防災対策事業等の計画策定への活用が期待される。 土砂災害ハザードマップの作成手法としては,随所で 粗い解析や強引な設定もあるが,全県下という広範な対 象地から概略の各種危険箇所を短時間で抽出するという 目的は十分に果たしていると思われる。 報告に際し,検討会等で適切なご指導をいただいた群 馬大学の鵜飼恵三教授ならびに前橋工科大学の土倉 泰 助教授に感謝いたします。また動的解析では群馬大学の 若井明彦助教授や国際航業の室住治伸氏のご指導をい ただきました。ここに記して感謝いたします。最後にな りましたが,様々な資料提供やご意見をいただいた群馬 県砂防課の方々にも深く感謝いたします。 参考文献 1)群馬県総務部消防防災課(1998):群馬県地震被害想定調査 報告書,164p. 2)建設省土木研究所(1995):平成6年度地震時の土砂災害防 止技術に関する調査業務報告書(その3),大規模土砂移動 編,108p. 3)中筋章人・宮田直樹・西真佐人(2003):日光火山地域にお ける大規模崩壊危険度評価と影響予測,日本地すべり学会誌, 第40巻,第1号,pp.57−62. 4)中筋章人(2001):地震時の斜面崩壊発生危険度,第40回日 本地すべり学会研究発表会講演集,pp183−186. 5)建設省土木研究所砂防部砂防研究室(1997):地震による大 規模土砂移動現象と土砂災害の実態に関する研究報告書,土 木研究所資料第3501号,261p. 6)石井康雄他4(2005):平成16年新潟県中越地震により発生 した地すべりの特徴,第44回日本地すべり学会研究発表会講 演集,pp.15−18. 7)若井明彦他2(2005):高町団地における地震時盛土崩壊の 数値シミュレーション,第44回日本地すべり学会研究発表会 講演集,pp.51−54. 8)古谷尊彦(1996):ランドスライド,古今書院,pp.124 9) 地盤工学会(1998):地震による地盤災害に関するゾーニ ングマニュアル,マニュアル編集委員会,155p. 10)国土交通省国土技術政策総合研究所(2004):地震による斜 面崩壊危険度評価手法に関する研究,国土技術政策総合研究 所資料,第204号,91p. 11)内田太郎(2005):地震による斜面崩壊危険度評価手法の提 案,平成17年度国土交通省国土技術研究会,建設技術研究開 発平成16年度成果発表会. 12)中筋章人(2000):土石流のハザードマップ,平成12年度日 本応用地質学会シンポジュウム予稿集,pp.16−24. 13)武居有恒監修(1980):地すべり・崩壊・土石流,鹿島出版 会,pp.225 14)田畑茂清・水山高久・井上公夫(2002):天然ダムと災害, 古今書院,pp.54−60. (原稿受付2006年8月9日,原稿受理2006年11月1日)

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