スクールソーシャルワーカー活用の指針
令 和 元 年 5 月
長 崎 県 教 育 委 員 会
いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待など、生徒指導上の課題に対応するため、教 育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識・技術を有するスクールソ ーシャルワーカーを各市町教育委員会及び関係県立学校に配置し、児童生徒が置かれ た様々な環境へ働き掛けたり、関係機関等とのネットワークを活用したりして、問題 を抱える児童生徒の支援を行うものです。 このような状況の背景には、子どもをとりまく環境が影響している場合があります。ス クールソーシャルワーカーは、関係機関と連携しながら、その環境を改善し、児童生徒が 抱える問題の解決を図るものです。 スクールソーシャルワーカーは、地方公務員法第3条第3項第3号に規定する特別職 であり、非常勤職員として任用されています。よって服務規律は、地方公務員の常勤 職員に準じます。 スクールソーシャルワーカーは、各市町教育委員会及び校長の指揮監督の下に、概ね 以下の職務を行います。 【対象となる児童生徒の状況例】 ・児童生徒の学校生活の様子が気になる(落ち着かない、授業に参加できない、 集団で行動できない、保健室に行きたがる、忘れ物が多い等) ・不登校、登校しぶり ・非行、暴力行為 ・いじめなど、子ども同士のトラブル ・子どもの養育状況(虐待の疑いも含む)や家庭環境(地域的孤立・経済状況等) が気になる ・学校と保護者のコミュニケーションがうまくいかない など
Ⅰ スクールソーシャルワーカー活用事業とは
Ⅱ スクールソーシャルワーカーの服務
Ⅲ スクールソーシャルワーカーの職務
【ささえる】
児童生徒本人や保護者への面接、家庭訪問を通して、社会福祉援助の視点から関 係調整を行い、支援します。また、教職員、スクールカウンセラーに対しても、情 報提供や相談に応じるなどのサポートに努めます。 ○児童生徒や保護者、教職員等への相談活動 ※病気や障害、生活困窮等によって保護者自身の支援が必要な場合があり、保護 者のニーズを把握し、その保護者の代弁者になることもあります。 ○相談活動等に関する情報収集 ○教職員や保護者等に対しての、問題解決のために活用できる社会資源の提供 ○教職員と保護者の橋渡し ○教職員の支援スキル向上のための指導・助言 ○教職員や保護者に対しての研修会活動 「スクールソーシャルワーカーの視点からの児童・生徒支援」等について教職員 の校内研修やPTA(保護者)の研修会にて講演を行います。【つなぐ】
児童生徒やその家族を支援するため、関係者のネットワーク形成を行います。そ して、児童生徒が抱える課題に対して、本人をとりまく人々と連携しながら解決を 図ります。 ○スクールカウンセラーと連携をしながら校内ケース会議への参加とケースのアセ スメント(見立て)及び、問題解決へのプランニング(解決に向けた目標設定と 具体的な手立て)へのサポート ○社会福祉の専門的視点に基づく具体的支援に向けてのコンサルテーション(専門 家による指導・助言を含めた検討) ○校内支援チーム体制づくりの助言・サポート 1 問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働き掛け 2 学校内における組織体制の構築、支援【つくる】
児童生徒をサポートする人的資源や期間が十分に整うよう、行政や関係機関に働 きかけ、地域全体でのサポート体制を構築します。 ○関係機関への訪問、電話等による情報交換、調整によるネットワークの構築 市町のこども・福祉・保健部局と連携して活用できる市町の社会資源や施策について 情報収集を行います。 ○ケース会議の企画、実施等による関係機関との行動連携 ○校種間の連携 長崎県教育委員会では、平成27年7月に「児童生徒の継続的な指導・支援のた めの引継ぎガイドライン」を作成し、小学校から中学校へ、中学校から高等学校 へ切れ目のない引継ぎを求めています。スクールソーシャルワーカーは、学校長 の指示のもとに情報収集や情報提供を行いながら校種間の連携に努めます。 Q&A 3 関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整 Qアセスメントとは 問題を抱える児童生徒の学校生活、家庭環境、発達・心理・疾病状況など、生活全般に関 わる様々な情報を収集し、問題の背景や原因を見極めることです。 問題の要因を表面的に判断するのではなく、「子どもがなぜそのような 行動をとるのか」 「子どもは何に困っているのか」等子どもが抱える本質的な 課題を見立てていくことが大切 です。 Qプランニングとは 問題の解決に向けた目標の設定や手立て役割分担など具体的な取組を計画することです。SSW SSSW
SSW
S SSSWWSC
SC 教教員員 指導 受容 心理 社会 Qスクールソーシャルワーカー(SSW)とスクールカウンセラー(SC)との違い スクールソーシャルワーカーは、児童生徒に影響を及ぼしている家庭・学校・地域環境の改善に 向けて、学校・家庭・地域の支援ネットワークを築く福祉の専門家です。 スクールカウンセラーは、心理療法や心理検査等を通して、児童生徒本人の抱える心の問題を改 善・解決していく心理の専門家です。 Q要保護児童対策地域協議会とは 児童福祉法第25条の2では、要保護児童への支援ネットワーク構築を図り、地方公共団体 に対して要保護児童対策地域協議会の設置の努力義務を課しています。 長崎県では県内21 市町すべてに設置されています。各関係機関による情報の共有化、役割分担と責任体制の明 確化を行います。 Qコンサルテーションとは 異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象者の問題の状況について検討し、よりよい援助の あり方について話し合うプロセスのことです。 例えば、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが教職員等に対して、児童 生徒の抱えている問題をより効果的に解決できるように支援する取組のことです。専門機関との連携を図る場合には、その専門機関の専門性を理解した上で、適切に行うこ とが必要です。その際には、スクールソーシャルワーカーが自己判断で外部の専門機関と 連絡を取ることなく、学校長の了解のもと行うようにしてください。特に新規のケースに ついての連絡や、初めて接触する関係機関の場合は、管理職が一報を入れてから担当者間 でやりとりを行なって下さい。 児童生徒への対応として家庭訪問を行うケースがあります。学校と連携して保護者の理 解を得た上で、できるだけ指導主事や担当教員などの同行をお願いします。 スクールソーシャルワーカーは、毎日の活動記録(日誌)を記入し、指導主事や担当教 員に報告をするとともに、年度末においては継続的な支援が必要な児童生徒についても引 継ぎを行います。 スクールソーシャルワーカーの活動にあたっては、守秘義務が課せられます。個人情報 は、電磁的記録媒体を用いて教育委員会や学校外に持ち出すことは原則禁止されています。 紙媒体によるもの(ケース記録等)は、鍵のかかる引き出し・ロッカー等に収納します。 これらも外部への持ち出しは禁止され、やむ得ない場合の外部への持ち出しについては学 校長による持ち出しの許可が必要です。 ※ 長崎県教育委員会では、年度初めに「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要 項」及び「非常勤職員(スクールソーシャルワーカー)配置要綱」を作成し、勤務 形態等を示していますので、参照の上確認をお願いします。
Ⅳ
スクールソーシャルワーカーの業務の遂行にあたっての注意事項 1 守秘義務と情報管理 2 専門機関との連携 3 家庭訪問について 4 引継ぎについてスクールソーシャルワーカーが関係機関とのネットワークを構築するためには 以下のような取組みが求められます。 (1)スクールソーシャルワーカーの役割を理解し、積極的に活用するための体制 づくりを行うために活動の拠点を決定します。(教育委員会、少年センター、 適応教室、学校など) (2)各学校に対して、スクールソーシャルワーカーの周知を行うとともに、効果 的に活用するための体制を整えるよう指導・支援します。 (3)関係機関に対してスクールソーシャルワーカーの周知を行います。(スクー ルソーシャルワーカーが調整するケース会議等への参加、協力を依頼する) (4)スクールソーシャルワーカーの申請・活動記録・資料作成等の様式を明確に します。 令和元年度の配置校 ・ 長 崎 市:長崎東中学校・長崎東高等学校 (長崎鶴洋高等学校、鶴南特別支援学校) 鳴滝高等学校(長崎明誠高等学校、長崎工業高等学校定時制) ・ 佐世保市:佐世保北中学校・佐世保北高等学校 佐世保中央高等学校(西彼杵高等学校、佐世保工業高等学校定時制) ・ 大 村 市 : 大村高等学校 ・ 諫 早 市:諫早高等学校附属中学校・諫早高等学校 ・ 平 戸 市:猶興館高等学校(平戸高等学校、北松農業高等学校) ・ 島 原 市:島原高等学校(島原工業高等学校、口加高等学校) ・ 対 馬 市:上対馬高等学校 ・ 壱 岐 市:壱岐高等学校
Ⅴ スクールソーシャルワーカーの効果的な活用の流れ
1 市町教育委員会の支援体制 2 県立学校の支援体制・ 五 島 市:五島海陽高等学校(五島高等学校定時制、五島南高等学校) ・ 新上五島町:上五島高等学校(中五島高等学校) ・ 小値賀町:(北松西高等学校) ※( )内は太字で表記した学校を拠点とするエリア校。北松西高等学校は町教 育委員会に配置したSSWが担当する。 上記配置校を拠点として近隣の県立学校に対して派遣を行います。派遣申請等の 手続きについては、長崎県教育委員会までお問い合わせ下さい。 学校長のリーダーシップのもと、教育相談コーディネーター等が中心となって、ス クールソーシャルワーカーを活用した校内教育相談体制の構築に向け、組織的に取り 組むことが必要です。 (1)相談の受付 教職員や保護者及び児童生徒からの申込みだけでなく、学校が抱える案件や児 童生徒の状況の変化に気を配り、能動的にケースを掘り起こす。 (2)事案の見極め 当該児童生徒の抱える問題について、何らかの支援が必要な場合や、判断に迷 う場合はスクールソーシャルワーカーにつなぐ。(主として心の問題の場合は スクールカウンセラーにつなぐ。両方の支援が必要な場合は、まずスクールソ ーシャルワーカーに相談する) (3)校長は(各市町で定める様式にて)市町教育委員会にスクールソーシャルワーカ ーの派遣を申請する。 (4)スクールソーシャルワーカーに対応を依頼したケースについて情報を整理する。 ・学校での様子(出席状況、友人関係、学力等) ・家庭環境(家族構成、経済状況等) ・心身の健康状況(疾病・障害等) (5)スクールソーシャルワーカーによる教職員、保護者、児童生徒等との面談の実 施 (6)スクールソーシャルワーカーを含めたケース会議の計画、実施 ※事案によっては(5)、(6)の順番は調整する (7)ケース会議の結果をふまえた取組の実践 (8)学校いじめ対策委員会との連携 3 学校での活用
<管理職の役割> 学校におけるいじめ、不登校、暴力行為、児童虐待などの生徒指導上の課題への 対応の基本は、「組織的対応」です。担任やスクールソーシャルワーカー一人が取 り組んでも状況の改善は困難です。学校内の連携を強め、組織的な対応を行うため には、日頃から共通理解が必要であり、校長等をリーダーとした「校内支援チーム」 を編成して対応することが大切です。 ○いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待等の課題に対して効果的に対応するため、スクー ルソーシャルワーカーの役割を充分に生かしつつ、学校として生徒・保護者への指導支 援体制を構築します。 ○スクールソーシャルワーカーを入れた全教職員の共通理解のための校内研修やケース会 議を積極的に取り入れます。 ○保護者や地域関係者とスクールソーシャルワーカーの“つなぎ”を行います。 <活動記録例>
・事例について、関係者からの聞き取りを行う ・ケース会議に出す情報の収集 (学校での様子、家庭環境、心身の健康状況等) ・ケース会議への参加者の決定 当該児童生徒に関わりのある教職員等 問題解決に向け、支援をいただきたい関係機関職員等 ・ケース会議の日程調整 ①前回の目標の確認 ②働きかけの状況の確認 ③児童生徒、家族の変容の確認 ④効果と新たな課題の確認 ⑤今後の目標と役割分担を再確認 ⑥次回の会議の日程、参加者、協議内容の確認 ・事前の確認 守秘義務の確認、批判的発言の禁止、多面的発言の奨励、 参加者全員の力を結集 等 ・目標と具体的取組の共通理解 ・次回の会議日程、参加者、協議内容(取組結果の報告等)の確認 〈アセスメント〉 ・担当者からの児童生徒の状況に関 する情報提供。 ・本人関係者からの各種情報提供。 ・情報を集約して、当該児童生徒に 係 る 課 題 や 具 体 的 困 難 点 を ま と める。 4 ケース会議の流れ(例) 〈プランニング〉 ・実行可能な短期目標及び取組内 容(2週間後を目途)の設定。 ・長期目標及び取組内容(1~2 カ月後を目途)の設定。 ・取組内容について、具体的に誰 が何をするのか、役割の確認 準備段階 ケース会議(初回) ケース会議(2回目以降)
<事例:経済的課題が見られるケース> ケース概要 ・中学1年生男子で不登校。母子家庭。 ・給食費の支払いが滞る。体操服が洗濯されていない。 アセスメント ・不登校の背景として、経済的な面も含めた生活の不安定さが見られる。 プランニング ・生活が安定し、再登校できるようにする。 ・関係機関との連携を図り積極的に介入する。 プラン実行 ・ケース会議の開催(児童相談所等の関係機関を含めて) ・スクールソーシャルワーカーは民生児童委員と同行し定期的に家庭訪問を実施 ・スクールソーシャルワーカーは母親に同行し福祉事務所に相談に行き、生活保護を申 請。 ・スクールカウンセラーが男子生徒を対象に、カウンセリングを実施した。 経過 ・母親は経済的な不安が軽減され、家事を行う余裕が出てきた。 ・滞納されていた給食費が納入されるようになった。 ・男子生徒は登校できる日が増えた。 (1)目的 スーパーバイザーを置くことで各スクールソーシャルワーカーからの相談に対する 助言及び支援を行う体制づくりを行い、学校の支援体制及び相談機能の充実を図ります。 (2)スーパーバイザー (県南地区) 配置先 :県立鳴滝高等学校 木村 和子 先生 相談日時:木曜日 11:00~17:00 連絡先 :095-820-0056 (事務室) (県北地区) 配置先 :県立佐世保北高等学校 岩本 眞理子 先生 相談日時:水曜日 9:00~12:00 連絡先 :0956-22-5520 (事務室)
Ⅵ スクールソーシャルワーカーが機能した事例
Ⅶ スーパーバイザーについて
関係機関 主な活動内容 福祉 児童相談所 ・18 歳未満の子どもに関する相談活動(主な相談種類:養護相談(児童虐待 含む)、非行相談、育成相談、知的障害相談等) 福祉事務所 ・児童福祉に関する相談(家庭児童相談室) 要保護児童及び児童虐待の通告を受理し、当該児童の状況把握 ・障がい者福祉に関する相談活動 ・生活困窮からの自立支援 ・生活保護に関する実施機関 ・ひとり親・女性に関する相談活動 児 童 家 庭 支 援センター ・児童家庭に関する専門的な知識及び技術を用いた相談援助 ・児童相談所の委託での相談援助(通所や家庭訪問等) 主 任 児 童 委 員 、 民 生 ・ 児童委員 ・児童等の生活・環境の状況把握、児童の福祉の増進 保健 保 健 所 、 保 健センター ・児童の健康相談、健康診査、保健指導等 ・思春期教室 ・薬物乱用等の相談 精 神 保 健 福 祉センター ・精神保健に関する相談・指導・支援 行政 市町 (こ ど も ・福 祉部局) ・要保護児童及び児童虐待の通告を受理し、当該児童の状況把握 ※要保護児童対策地域協議会の事務局 更正・ 保護 警察署 ・非行少年や犯罪被害の相談、非行少年の検挙・補導 少 年 サ ポ ー トセンター ・少年非行の相談活動、犯罪被害少年への助言・支援 法 務 少 年 支 援センター (少年鑑別所) ・非行少年に関する心理相談、能力・性格の調査 司法 関係 家庭裁判所 ・送致、通告された非行少年の調査、審判 県弁護士会 ・日本司法支援センター(通称:法テラス) 法的なトラブルの解決に必要な情報提供や助言 ・子ども担当弁護士制度(通称:コタン弁護士) 親権者及び親族から協力を得られない20歳未満の子どもを対象として、子 どもの法的権利の保護及び生活の自立を目的として適切な支援を弁護士が行 う制度 その他 医療機関 ・児童の発達特性や心のケアのための診療と治療(薬物治療を含む) 療育施設 ・個々の発達特性に応じた療育・訓練 社会福祉協 議会 ・生活福祉資金 低所得者等を対象に低利子(一部無利子)で貸付 ※多くの市町のこども・福祉部局で作成している社会資源の一覧表の「福祉のしおり」等を活用することも効果 的です。各自治体で「福祉のしおり」の名称が異なりますので確認が必要です。
Ⅷ スクールソーシャルワーカーが「つなぐ」主な関係機関
【参考文献】
・神奈川県教育委員会「スクールソーシャルワーカー活用ガイドライン」 ・福岡県教育委員会「スクールソーシャルワーカーの活用についてQ&A」 ・北海道教育委員会「スクールソーシャルワーカーの活用を図るために」