地球惑星物理学特別研究
太陽天体流体力学入門:観測編
地球惑星物理学科 4 年 松井悠起1
アブストラクト
本研究ではひので衛星を使って太陽フレアの観測的な研究を行った。特に分光観測を用いた太陽 フレアの標準モデルにおけるインフローの発見を最大の目的とした。本研究ではインフローの発見 には至らなかったが、今後の研究の足がかりとなる研究ができ、今後の研究に期待出来る。2
イントロ
太陽はもっとも身近な天体であるといえるが、その表面では非常に活発な活動が起こっている。 特に太陽フレアは現在の太陽系では最大のエネルギーの爆発現象である。このような現象は最近の 観測や数値シミュレーションによって磁気流体現象として説明できることがわかってきた。 この研究では主に日本の太陽観測衛星ひのでの観測をもとに、フレアの理論モデルの検証を行った。3
太陽フレア
太陽フレアとは太陽大気中で磁気エネルギーが突然解放される爆発現象で、エネルギーは 1029− 1032ergに達する。またあらゆる波長帯で観測され、観測からループ状の構造がわかっている。 黒点近傍の磁気エネルギーは Emag= B2 8πL 3∼ 4 × 1032 ( B 100G )2( L 105km )3 erg (1) となりフレアのエネルギーとして十分である。このことからもフレアのエネルギー源が磁気エネル ギーであることがわかる。3.1
メカニズム
磁気エネルギーを解放するメカニズムとしては以下がある。ここで問題となるのはエネルギーを 解放する時間である。太陽フレアでは数分∼数時間でエネルギーが解放されるので、この時間ス ケールを説明する必要がある。3.1.1 ジュール散逸 まず電流のジュール散逸によるエネルギー解放が挙げられる。100 万度のコロナのクーロン衝突 による抵抗を計算すると η = 104cm2/s ( T 106K )−3/2 (2) 誘導方程式から流れの項を無視すると ∂B ∂t = η∇ 2B (3) なので磁気拡散時間 tDは tD≈ L2 η ∼ 10 14sec ( L 104km )2( η 104cm2/s )−1 = 300万年 (4) となり、ジュール散逸ではフレアの時間スケールを説明できない。ここで L はフレアのスケール で L∼ 104kmとした。 3.1.2 磁気リコネクション フレアを説明する有力な説が磁気リコネクションである。磁気リコネクションとは図 1 のように 反平行の磁力線がつなぎ変わる現象である。磁力線のつなぎ変わる点のことを X ポイントと呼ぶ。 Xポイントでつなぎ変わった磁力線は磁気張力によって X ポイントから離れていく。このとき、プ ラズマは磁力線に凍りついているので磁力線にともなってプラズマが加速される。このときの速度 はアルフベン速度になる。また X ポイントのプラズマが排出されることで X ポイントの圧力が低 くなる。したがって外側のプラズマをともなって X ポイントに近づき、さらに磁力線のつなぎか えを起こす。このようにして正のフィードバックが働き、効率よく磁気エネルギーを変換できる。 図 1: 磁気リコネクションの模式図 磁気リコネクションの理論としては次の二つが代表的である。 • スウィート=パーカーモデル スウィートとパーカー (Sweet 1958;Paker 1957) による磁気リコネクションのモデル。図 2 がその模式図である。磁気リコネクションによって外側に排出されるプラズマの流れのこと をアウトフローと呼ぶが、この速度は前述したようにアルフベン速度となり、この速度は磁 気リコネクションのモデルに依らない。したがってエネルギー変換の時間スケールを決める のは X ポイントに流れ込む流れ(インフロー)の速度となる。スウィート=パーカーモデル ではインフロー速度は vi∼ CAR− 1 2 m (5)
となる。ここで CAはアルフベン速度、Rmは磁気レイノルズ数でアルフベン波がサイズ L を 横切る時間をアルフベン時間 tAとすると、アルフベン時間と磁気拡散時間の比 Rm= tD/tA で表される。 太陽コロナ中では CA= 104km/sなので tA= L CA = 1sec (6) よって磁気レイノルズ数は Rm= tD tA = 1014 (7) となる。磁気レイノルズ数はプラズマの磁力線への凍りつきの度合いを示すもので Rm≫ 1 の場合、プラズマの凍結定理がよく成り立つ。 これよりエネルギー変換の時間スケールを計算すると tSP= L vi = tAR 1 2 m= 107sec∼ 数ヶ月 (8) となり、スウィート=パーカーモデルでは太陽フレアの時間スケールとしてはまだ長すぎる ことがわかった。 • ぺチェックモデル 磁気リコネクションの時間スケールを大幅に短縮する画期的なモデルがぺチェックモデル (Petschek 1964)である。ぺチェックモデルでは図 3 の模式図のように磁気流体衝撃波を利用 してプラズマを加速· 加熱する。図 3 の X ポイントから伸びている破線が磁気流体衝撃波で ある。図 3 のように磁気流体衝撃波が外側に開いていることでアウトフローの幅が広がり、 結果的にインフロー速度が速くなっている。 ぺチェックモデルによると MA= π 8 1 log(8RmMA2) (9) ここで MAはインフロー速度のアルフベンマッハ数 (MA= vi/CA)である。 太陽の磁気レイノルズ数 Rm= 1014を代入すると MA= 0.01となる。したがってぺチェッ クモデルによる太陽フレアの時間スケールは tPetschek= L vi = tA MA = 100sec (10) となり観測と一致する。
3.2
太陽フレアの理論モデル
磁気リコネクションを太陽フレアに適用したモデルが図 4 で発案者の頭文字 (Carmichael-Sturrock-Hirayama-Kopp-Pneuman)を取って CSHKP モデルと呼ばれている。 CSHKPモデルでは、太陽表面の磁場が磁気リコネクションを起こし、太陽表面に近い側の磁力 線はループ構造を、太陽表面から遠い方はプラズマのかたまりであるプラズモイドを形成し、惑星 間空間へ放出する。磁気リコネクションを起こした際に加熱が起こるが、これは図 4 の磁力線の形 に加熱されるので、先のとがったカスプ構造と呼ばれる形をする。次々と磁力線がつなぎ変わるの図 2: スウィート=パーカーモデル (現在の天文学 「太陽」) 図 3: ぺチェックモデル (現在の天文学「太陽」) でループは外側に広がっていく。また、太陽コロナの下部に彩層と呼ばれる高密、低温の領域が存 在する。コロナは高温のプラズマなので磁力線方向に熱伝導が強く、彩層に磁力線に沿って熱が伝 わると彩層のプラズマが急激に膨張する現象が起こる。この現象は彩層蒸発と呼ばれていて、彩層 蒸発によってループ下部からの上昇流が起こる。3 次元構造は図 4 のようになっていて、磁力線の ループはアーケード状になっている。プラズモイドも 3 次元的な構造を持ち、太陽表面の磁場とつ ながってフィラメント構造を作る。 図 4: CSHKP モデル (Shibata et al.1995)
4
モデルの観測・シミュレーションによる検証
4.1
ようこうによるカスプ構造の観測
1996年 2 月 21 日に起こった長寿命フレアがようこうによって観測された1。 図 5 は観測したフレアの温度などの分布を示している。X 線の分布からループ状の構造がわか る。このループ状の構造は時間とともに外側に広がっていき、また先のほうがとがったカスプ構造 をしていることや外側のループの温度が内側より高いことから図 4 の CSHKP モデルと非常に似 ていることがわかる。したがってこのフレアではループの頂上付近で磁気リコネクションが起こっ ていると考えられる。リコネクションによる外部コロナの希薄化も観測されている。 図 6 はこの観測による太陽フレアの構造の想像図である。ループの上に X ポイントがあると考 えられ、その高さはプラズマの冷却時間を考えると 14− 24 × 104kmとなる。X ポイントにスロー ショックが接続していて、そこに流入するインフローの速度はショック前後の保存則により 56km/s と計算できるアルフベンマッハ数は 0.07 と大きいのでリコネクションが断続的に起き、速いイン フロー速度が保たれていると考えられる。 アウトフローのエネルギーフラックスは Eflow ∼ 5 × 1027ergs/s、スローショックにより加熱さ れる熱は EH∼ 9 × 1027ergs/sなので、エネルギーの合計は 1.4× 1028ergs/sとなる。フレアのエ ネルギーは 3.1 より 1027− 1028erg/sなので十分であると言える。X ポイントに流入する磁場のエ ネルギーは EB ∼ 6 × 1027ergs/sなので、磁場のエネルギーのほとんどが運動エネルギーとプラズ マの加熱に使われたことがわかる。 このような観測により太陽フレアが磁気リコネクションで起こっていることがほぼ確かなもの となった。しかし、この観測からは磁気リコネクションを促進する力が何かはわからなかった。リ コネクションによって正のフィードバックがかかる自発的ファストリコネクションモデルが有力視 されているが、このフレアの観測だけでは不十分なので多くの太陽フレアの観測が必要となって いる。 図 5: 温度、エミッションメジャー、X 線、圧力 の分布 (Tsuneta 1996) 図 6: 構造の想像図 (Tsuneta 1996) 1Tsuneta 19964.2
シミュレーションによる再現
MHD数値シュミレーションによって太陽フレアの再現も行われた2。 それまでの研究から反平行磁場の間に局在化した抵抗を配置することでぺチェックモデルの磁気 リコネクションを起こすことが知られていた。この論文では磁気リコネクションのシミュレーショ ンに熱伝導と彩層蒸発の効果を取り入れている。特に熱伝導は高温プラズマなので磁力線方向に非 常に強く働くので、非等方的な熱伝導を仮定している。 シミュレーションの結果が図 7 である。4.1 の観測でみられたカスプ構造がよく再現されている。 図 8 は各物理量の x 方向の変化の様子を示しているが、それぞれ不連続面が見られショックが存在 していることがわかる。彩層蒸発によるプラズマの上昇は見られたが、X ポイント付近までは上昇 していないので磁気リコネクションへの影響は少なかった。図 7: シミュレーションの結果 (Yokoyama & Shi-bata 2001)
図 8: 各物理量の x 方向の変化の様子 図 7 で z = 15での値。(Yokoyama & Shibata 2001)
ここで、フレアループの加熱を熱伝導によるものとすると Q =∇ · (κ∇T ) = ∇ · (κ0T5/2∇T ) ≈ 2κ0T7/2 L2 loop (11) 加熱は磁場のエネルギーによると考えると Q =Bin 4π × CA;in Lloop ≈ B0 4π × CA0 Lloop = B 3 0 4π√4πρinLloop (12) ここで Bin, CA;in, ρin, Lloopはそれぞれインフロー域での磁場強度、アルフベン速度、密度、ルー プの長さである。 これよりフレアループの温度 T の理論値を得る。 Ttop≈ ( B3 0Lloop 8πκ0 √ 4πρin )2/7 ∝ β−3/7h2/7 η κ−2/70 (13)
ここで β はプラズマベータ、hηは X ポイントの高さ、κ0は熱伝導係数である。シミュレーション
で β, hη, κ0の値を変化させて式 (13) の理論値と比較したのが図 9 である。点線は理論値で ‘top’
はファストモードショックのすぐ後ろのループトップ、‘jet’ はスローショックの間のジェットでの 値である。シミュレーションの値は理論値とよく合っている。
図 9: 理論値とシミュレーションの結果 (Yokoyama & Shibata 2001)
4.3
インフローの観測
3.1.2より、磁気リコネクションの時間スケールはインフローの速度が決める。インフローは 4.2 の MHD シミュレーションでも再現されている。インフローの速度を観測的に求めることは太陽フ レアのモデルとしてだけではなく、磁気リコネクションの理論としても非常に重要となる。 これまでのインフローの観測は大きく分けて撮像観測と分光観測に分けられる。それぞれの代表 的な観測例を紹介する。 4.3.1 撮像観測:Yokoyama et al. 2001 SOHO3の EIT4による撮像観測でインフローに伴うプラズマの動きが観測された。 図 10 がインフローを観測したフレアで、図 11 は図 10 上の黒線での時間変化を表している。図 11から X ポイントの方へ動くプラズマの様子がわかる。この動きはインフローと考えられていて、 この観測によるとインフロー速度は 1.0-4.7km/s となり、インフロー域の磁場がアウトフローのガ ス圧と等しいとしてアルフベン速度を求めると、リコネクションレートは 0.001-0.03 となる。この 値は大雑把にはペチェックモデルの磁気リコネクションに合う。 4.3.2 分光観測:Hara et al. 2006 乗鞍コロナ観測所のコロナグラフによる地上観測を行い、2 つのプラズマの流れと、線幅の広い FeXの輝線を見つけた。見つかった流れの一つはフレアループのトップに位置し、もう一つはポス トフレアループ中に見つかった。 2001年 9 月 12 日にリム付近で起こったフレアについて、FeX6374˚A(Te= 1.0× 106K)の分光 観測を行い、ループ頂上でのドップラー速度の時間変化を調べた。図 12 はこの観測において観測3Solar and Heliospheric Observatory 4EUV Imaging Telescope
図 10: EIT によるフレアの画像 (Yokoyama et al.2001) 図 11: 図 10 上の黒線での時間変化 (Yokoyama et al.2001) されたフレアの SOHO/EIT による画像と、ループ上のスリットの位置を示している。その結果、 図 12 の点 A,B,C において図 13 下のようなドップラー速度の時間変化が観測された。B 点に対し て A 点と C 点はドップラー速度の変化の仕方が逆向きなので、B 点に対して双方向の流れがある ことがわかる。図 13 上は同時刻のインテンシティの時間変化である。 磁場などの観測からループが図 14 のような構造をしていることがわかった。図 14b が図 14a の 模式図で、図 14c は図 14b を正面から見た図、図 14d は上から見た図となっている。図 14d のよ うに、観測者から見て右側のループが手前に来ている。図 13 は点 B に対して点 C 側はレッドシフ ト、点 A 側はブルーシフトしているので、図 14d のようなインフローまたはアウトフローが考え られる。 図 13 で t1− t2の間はインテンシティの増加が見られず、t2の後インテンシティとドップラー速 度がともに増加していることから t1− t2ではインフローが t2− t3ではループ中の上昇流が観測さ れていると考えられている。ループの構造の模式図は図 15 となる。 観測されたインフロー速度は 3.4km/s となった。コロナ中のアルフベン速度を 1000-3000km/s と仮定するとこのフレアのリコネクションレートは 0.001-0.003 となる。
5
太陽観測衛星ひので
太陽の研究で非常に重要な役割を果たしているのが太陽観測衛星ひのでである。 ひのでは日本が 2006 年の 9 月に打ち上げた太陽観測用軌道天文台で、現在も運用中である。主な 観測機として、可視光望遠鏡:SOT(Solar OpticalTelescope)、X 線望遠鏡:XRT(X-Ray Telescope)、 極端紫外撮像分光装置:EIS(Extreme-ultraviolet Imaging Spectrometer) が搭載されている。この研究では主に EIS による分光観測と XRT による撮像観測を行った。以下は EIS について説 明する。
図 12: EIT の画像とスリットの位置 (Hara et al.2006) 図 13: スリット上でのインテンシティ(上) ドップラー速度 (下) の時間変化 (Hara et al.2006)
5.1
EIS
EISは極端紫外線 (EUV) の分光観測を行う。 太陽大気の構造は図 16 のようになっていて、EUV を出すのは主に遷移層からコロナである。 EUVでの太陽放射スペクトルは図 17 のように多くのイオンからのライン放射が含まれる。分光観 測によってこれらのライン診断が行えるのが EIS の特徴である。 5.1.1 性能 EISの性能は以下の通りである。 • 観測波長域:170 − 210˚A, 250− 290˚A • 空間分解能:スリット方向:1”/pixel、スリット幅:最小 1” • 波長分解能:ピクセル分解能:22m˚A、観測装置によるライン幅の広がり:50m˚A • 時間分解能:最高 0.5 秒 5.1.2 ドップラー速度の観測 ライン診断を行うことでプラズマの運動がドップラーシフトとして観測出来る。図 18 は FeXI I195˚Aのスペクトルにガウス関数をフィッティングした様子で、ガウス関数のピーク位置のずれか らドップラー速度を求めることが出来る。図 14: ループの形状 (Hara et
al.2006) 図 15: ループの模式図 (Hara et al.2006)
図 16: 太陽大気の構造 図 17: 極紫外域での太陽放射スペクトル 5.1.3 ラスタースキャン EISの特徴の一つとしてスリット位置を移動することで撮像が可能となるラスタースキャンがあ る。図 19 のようにスリットは太陽の南北方向に平行に向かっている。このスリットを分光しつつ 図 19 の緑矢印方向に動かすことで図 20 のような 2 次元の画像が得られる。各ピクセルでドップ ラー速度を調べることでドップラー速度の分布を調べることができる。 しかし同時に分光しているので、観測に時間がかかってしまう。時間変化の速い現象に対しては あまり効果的ではない。 またスリットの動く方向は太陽の西から東の方向に限られる。
5.2
EIS
の観測例
EISによる観測で有名なものは次がある。図 18: Fe XII のスペクトルにガウス関数をフィッティングした様子 (Mariska et al.2007) 図 19: スリットの位置 図 20: ラスタースキャンの例 5.2.1 Hara et al.2008 2006年 12 月 17 日に西端で起こった長寿命フレアを観測したもので、カスプが観測された。EIS では様々なラインで観測され、それぞれのループの様子とドップラー速度を示したのが図 21 であ る。この観測ではループ中にレッドシフトとブルーシフトが観測されたが、これらはループ中の圧 力差によるサイフォン流だと考えられている。
6
研究の目的
この研究ではひので衛星の観測データを使ってインフローを発見することが最大の目的となって いる。特に EIS の分光観測によるドップラー速度の観測を中心に研究を進める。EIS の高時間、空 間分解能のある分光観測を用いることでこれまでのインフローの観測よりもさらに詳細なインフ ローが観測出来ると期待出来る。 インフローを探すにあたって、比較的インフローが見えやすいと思われるリム付近のフレアを中図 21: 各輝線のインテンシティとドップラー速度 (Hara et al.2008) 心に探した。また太陽活動が 2008 年頃から極小期に入ったのでそれ以前の 2007 年の観測を重点 的に探した。 その結果インフローらしきパターンを発見した。
7
観測
今回インフローらしきパターンを発見したのは 2007 年 12 月 18 日に西端で起きたフレアである。 図 22 は今回観測した時間の GOES 衛星による X 線の増光の様子で、C クラスフレアが起こって いる事がわかる。この時の太陽全球の様子が図 23 の SOHO の EIT による画像で、太陽西端でフ レアが起こっていることがわかる。またこのとき西端の他ではフレアは起こっていないので図 22 の増光はこのフレアで起こっていることがわかる。 このフレアはひので衛星の XRT、EIS でも観測を行っていて図 22 の時間は EIS のラスタース キャンの時間に対応している。よって C クラスフレアが EIS のラスタースキャン中に起こってい る事がわかる。7.1
EIS
の観測
EISのラスタースキャンによるこのフレアのインテンシティの図が図 24、ドップラー速度が図 25である。ラインは Fe XII195˚Aを使っている。ドップラー速度はレッドシフトを赤色、ブルーシ フトを青色で示している。データは EIS チームによるソフトウェア:EIS PREP にてフラットフィールド補正、暗電流、宇 宙線、ホットピクセルの除去、打ち上げ前に計測された光度の補正を行っている。ドップラー速度 は同様に EIS チームによるソフトウェア:EIS AUTO FIT によってガウス関数のフィッティング を行い、衛星軌道によるドップラー速度の補正も行っている。
7.2
XRT
の画像の変化
EISと同時に XRT でも観測を行っていた。図 22 でのフレアの前の XRT の画像が図 26、フレ アの後の XRT の画像が図 27 である。XRT が観測した時間での EIS のスリットの位置を白線で示
図 22: GOES 衛星による X 線の増光の様子 図 23: SOHO/EIT による 195˚Aの全球の様子 している。フレア前後で緑の楕円で示した部分にループが現れていることがわかる。またその時刻 に EIS のスリットがループ上部に当たっている。
7.3
インフローらしきパターン
図 27 のスリット上のドップラー速度が図 28 である。正方向がレッドシフトで、負方向がブルー シフトを示している。 図 28 をスリット方向に 20 点平均を取った図が図 29 で図 27 のループ上部に当たっているスリッ トの位置を緑色の楕円で示している。このドップラー速度の様子から、図 27 のループの上部に双 方向の流れがあることがわかる。7.4
議論
ループの位置からこの流れはインフローのように見える。しかしこのループの空間的な構造がわ からないので、双方向の流れが内向きの流れなのか、外向きの流れなのか区別がつかない。またこ のループと図 22 に見られるフレアとの関係を明らかにする必要がある。また似たようなパターン が他にも見られるが、それらとの関係もよくわからない。 このパターンがインフローだとすると、インフロー速度は視線方向で 2-3km/s となる。これは 4.3での観測例のインフローとだいたい同じくらいである。 今回の観測からではインフローと結論付けることは難しい。しかしこのフレアについては TRACE(Transition Region and Coronal Explorer)でも観測が行われているので、今後の研究に期待出来る。またこのフレア以外にも EIS が観測したフレアはあるので、今後それらのフレアについても並 行して研究を進めていきたい。
太陽活動が 2010 年にはいって極大に向かっているので、これから起こるフレアについても期待 出来る。インフローを見つけるためにはスリットが上手く当たる必要があるので、今後の観測では 短い観測時間での観測が効果的である。
図 24: インテンシティ 図 25: ドップラー速度
8
謝辞
本研究において横山央明先生に様々なご指導をいただきました。また横山研究室のみなさまにも 大変協力していただきました。またひので衛星は ISAS/JAXA によって打ち上げられ、国立天文 台に大きな協力を得ています。また NASA と STFC からも国際的な協力を受けています。この場 を借りて感謝の言葉を述べさせていただきます。9
参考文献
桜井隆 小島正宜 柴田一成ら編,2008, 現代の天文学第 10 巻「太陽」(日本評論社), 第 5 章 太陽の 大気と活動領域· 第 7 章 フレアと CME 現象 柴田一成,1999, 活動する宇宙 柴田一成ほか編 (裳華房) , 第 3 章 太陽・星の磁気流体現象 Asai, A.,Hara, H.,Watanabe, T.,Imada, S.,Sakao, T., Narukage, N.,Culhane, J. L.& Doschek, G. A. 2008,ApJ,685,622Hara,H.,Nishino,Y.,Ichimoto,K.& Delaboudiniere ,J.P 2006,ApJ,648,712
Hara,H.,Watanabe,T.,Matsuzaki,K., Harra,L.K.,Culhane,J.L., Cargill,P., Mariska,J.T.& Doschek,G.A. 2008,PASJ,60,275
Imada, S.,Hara, H.,Watanabe, T.,Asai, A.,Minoshima, T.,Harra, L. K.& Mariska, J. T. 2008,ApJ,679,155 Mariska,J.T.,Warren,H.P,Ugarte-Urra,I.,Brooks,H.D.,Williams,R.D& Hara,H. 2007,PASJ,59,713 Shiota,D., Isobe,H.,Brooks,H.D., Chen,P.F & Shibata,K. 2007,ASP Conference Series, Vol. 369,
Tsuneta,S. 1996,ApJ,456,840
Wang, T., Sui,L.,& Qiu,J. 2007,ApJ,661,207 Yokoyama,T.,& Shibata K. 2001,ApJ,549,1160
図 26: フレア前 図 27: フレア後