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第 12 号 Ni 451 日本金属学会誌第 82 巻第 12 号 ( 2018) レーザメタルデポジションにより作製した炭化物粒子分散型 Ni 基金属間化合物合金肉盛層の組織と特性 1, * , * 2 1 大阪府立大学大学院工学研究科 2 大阪産業技術研究所和

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J︲STAGE Advance Publication date : September 7, 2018 日本金属学会誌 第 82 巻 第 12 号(2018)451-460

レーザメタルデポジションにより作製した炭化物粒子分散型

Ni 基金属間化合物合金肉盛層の組織と特性

田 中 美 樹

1,

*

1

  山 口 拓 人

2

   萩 野 秀 樹

2

  千 星   聡

3

金 野 泰 幸

1

   高 杉 隆 幸

1,

*

2 1大阪府立大学大学院工学研究科 2大阪産業技術研究所和泉センター 3東北大学金属材料研究所

J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 82, No. 12 (2018), pp. 451-460 Ⓒ 2018 The Japan Institute of Metals and Materials

Microstructure and Properties of Laser Clad Ni-Base Intermetallic Alloys Reinforced with Car-bide Particles

Miki Tanaka1,*1, Takuto Yamaguchi2, Hideki Hagino2, Satoshi Semboshi3, Yasuyuki Kaneno1 and

Takayuki Takasugi1,*2

1Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University, Sakai 599- 8531

2Izumi Center, Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology, Izumi 594-1157 3Institute of Materials Research, Tohoku University, Sendai 980- 8577

Microstructure and hardness of two︲phase Ni3Al and Ni3V intermetallic alloy layers reinforced with VC, NbC and WC particles, which were clad by laser metal deposition on SUS304 steel, were studied, focusing on the effect of the charged carbide species. In VC and NbC composite layers, premature microstructure composed of Ni solid solution and Ni3Al phase was developed in as︲clad layers while stable microstructure composed of the Ni3Al and Ni3V phases was developed in annealed one. Hardness level in the both composite layers was increased by annealing. In WC composite layer, microstructure composed of the Ni3Al and Ni3V phases was developed in as︲clad layer while microstructure composed of Ni solid solution and Ni3Al phase was developed in annealed one. Hardness level in the WC composite layer was conversely decreased by annealing. The VC and NbC particles were relatively stable during cladding as well as annealing, resulting in unaffected matrix composition. The WC particles were unstable, resulting in degenerated matrix composition. The present work reveals that reinforcement of VC and NbC particles into the two︲phase Ni3Al and Ni3V intermetallic alloy is favorable as cladding layer from the point of microstructural stability as well as mechanical prop-erty. [doi:10.2320/jinstmet.J2018028]

(Received May 30, 2018; Accepted August 2, 2018; Published September 7, 2018)

Keywords: laser cladding, Ni-base intermetallic alloy, carbide, microstructure, hardness

1. 緒   言  我々の研究グループでは Ni 基金属間化合物をベースとした 次世代型耐熱・耐摩耗材料の研究を行い Ni 基二重複相金属間 化合物合金(Ni 基超々合金)が開発された.本合金は,現行γ/ γ’型 Ni 基超合金と類似した組織形態をとるが,立方体状の初 析 Ni3Al(L12)相とその間隙部(チャンネル)が Ni3V(D022)相と Ni3Al相の共析組織からなることを特徴とする1︲6).二重複相 組織は結晶整合性や相安定性が高いことから,優れた高温力 学的特性を示す1︲6).高温域では高温工具鋼や超硬合金の硬さ を上回り高温耐摩耗材料としての高い潜在力が示唆されてい る7,8).これら知見に基づき,Ni 基超々合金に関する用途の一 *1大阪府立大学大学院生,現在:本田技研工業(株)(Graduate Student, Osaka Prefecture University, Present address: Honda Motor Co., Ltd.)

*2 Corresponding author, E-mail: takasugi@mtr.osakafu-u.ac.jp

つとして肉盛による部材作製が検討され,SUS304鋼基材への レーザ肉盛がなされ,好ましい肉盛層の組織と硬さをもたら すプロセス条件が調査された9).その結果,良好な基材との 密着性ならびに二重複相組織を保持する肉盛層が形成され, 汎用溶製法によるバルク材を上回る硬さが示された10).しか し,二重複相組織だけでは中低温域における硬さが工具鋼や 超硬合金よりも低いため,改善が望まれる.この対策として, 硬質粒子と複合化された肉盛層が形成できれば広い温度域に おいて高い耐摩耗性の実現が期待できる.  レーザ肉盛11)は従来法に比べて入熱が少ないために,基材 成分による希釈の低減に加え,硬質粒子を完全に溶融させる ことなく複合材料皮膜12)を形成させることが可能である.そ れらの特徴を活かして,レーザ肉盛により硬質粒子を耐熱合 金に分散させる研究が試行されてきたが13,14),金属間化合物に

分散させる研究は,Ni3Alに Cr7C3炭化物15)あるいは(Ni3Al+

NiAl)複相金属間化合物に TiC 炭化物16)を分散させた研究例

(2)

超々合金中に分散させた肉盛層の組織と硬さを調査し,組織 安定性と高い硬さレベルを発現する炭化物種の探索を行うこ とを目的とした.肉盛層中に投入した炭化物は溶損が少なく, マトリックスとして振る舞う Ni 基超々合金と成分的相互作用 が少なく,二重複相組織形成を阻害しない炭化物種が期待さ れる. 2. 実 験 方 法 2.1 使用合金粉末とレーザ加工条件  本研究では,既報告の炭化物を含まないレーザ肉盛層9,10) 同成分(Table 1)の Ni 基超々合金アトマイズ粉末(粒径:125 μm 以下)を用いた.本成分における添加元素 Nb は二重複相 組織を安定化させるのみならず本合金に固溶強化をもたらす ことがわかっている6).分散炭化物粒子としては VC 粉末(粒 径:75~150 μm),NbC 粉末(粒径:125 μm 以下),WC 粉末 (粒径:53~150 μm)の 3 種の炭化物を用いた.今回,炭化物 粉末入手の制約により個々に粒子径,粒子分布ならびに形状 が若干異なっていた.Table 2 には今回使用した各炭化物の諸 特性を示す.一方,基材には Table 1 に示す化学成分からな る SUS304(寸法:10×20×60 mm)を用いた.  本研究で使用したレーザ加工システムでは,Ni 基超々合金 粉末と炭化物粉末を二つの供給ユニットにそれぞれ投入し, ユニット内のディスク回転速度をおのおの一定にして,前者 の粉末に関しては17.4 g・min︲1,後者の VC 粉末,Nb 粉末, WC粉末に関しては,おのおの,9.6(0.152),12.0(0.114), 20.4(0.104)g・min︲1(mol・min︲1)の供給量で同時に供給した. 肉盛用粉末の送給のためのキャリアガスならびにシールドガ スには Ar ガスを用いた.ワークディスタンスは 20 mm とし, 粉末の収束位置とレーザ光の焦点位置を基材表面に一致する ようセットした.レーザ光の波長は 940 nm,レーザ出力を 1.6 kWに固定し,ビームスポット形状はビームホモジナイ ザーを用いることにより,焦点位置において 1 辺が 5 mm の 正方形とした.今回の実験では,肉盛ヘッドの移動速度を 5 mm・s︲1に固定し,単層ビードによる肉盛形成実験を行った. ビード幅は約 5 mm,ビード高さは約 2 mm,ビード長さは 約 50 mm であった. 2.2 肉盛層の組織観察と硬さ試験  各種観察と測定は,注記しない限り肉盛層の走査方向に対 し垂直面に切断した厚さ約1 mm の試料を用いて行った.諸 観察は肉盛ままの試料と高温真空雰囲気中で1553 K で5 h 保 持した後 10 K・min︲1の速度で冷却した 2 種類の試料に関して 行った .  上記試料をエメリー紙を用いて湿式研磨した後アルミナ懸 濁液を用いてバフ研磨を施した.さらに,これら試料を約 263~253 K に冷却した CH3OHと H2SO4が85:15からなる電 解研磨溶液中で,20︲30 V の条件下で電解研磨した.この試 料を電界放射型走査電子顕微鏡(FE︲SEM: JSM︲7001F)(加速 電圧 15 kV)を用いた観察に供した.組織中の元素分析は波長 分散分析装置を装備する電子線マイクロアナライザ(EPMA: JXA︲8530F)を用いて加速電圧 15 kV で行った.  組織観察および構造解析は透過型電子顕微鏡(TEM: JEM︲ 2000FX)でも行った.透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料は, まず放電加工機を用いて肉盛層から直径約 3 mm の円筒状試 料を切り出した後エメリー研磨を施したものを用いた.その 後,ツインジェット法により上記電解研磨液中で開孔した後 に,Ar イオンミリングにより 3.7 keV 程度の低加速電圧下で 薄膜試料を仕上げた.  肉盛層の硬さをマイクロビッカース試験とマクロビッカー ス試験により評価した.前者の試験は肉盛層中のマトリック スの硬さを測定するために室温で行った.ここでは,荷重 0.1 kg,保持時間 10 s の条件で行い,肉盛層中央の頂点から基材 へ向かって数百 μm 間隔で測定を行い肉盛層中の硬さプロ

Table 2 Properties of laser clad materials used in this study.

Table 1 Nominal chemical compositions of the Ni︲base intermetallic alloy powder (at%) and substrate (mass%) used in this study.

1

Table 1 Nominal chemical compositions of the Ni-base intermetallic alloy powder (at%) and substrate (mass%) used in this study.

Material Ni Al V Nb Fe Cr B*

Powder 75 9 13 3 - - 0.005

SUS304 8-10.5 - - - Bal. 18-20

(3)

フィールを描いた.後者の硬さ試験は炭化物を含む肉盛層全 体の硬さを評価するために,ベークライト樹脂に埋め込みし た試料に必要な研磨を施した後,室温で荷重 50 kg,保持時 間 10 s の条件で行った.  さらに,室温から 1073 K までの高温マクロ硬さ試験を AVK︲HF(明石製)を用いて行った.基材面と平行になるよう に研削した肉盛層に,荷重 10 kg,保持時間 30 s の条件で 行った. 3. 結   果 3.1 肉盛層の外観と断面マクロ組織  ビードの外観写真と断面マクロ写真を Fig. 1 に示す.VC, NbC,WC 粉末を複合化させたいずれの肉盛層も外観不良は 見られなかった.また,肉盛層内部に明瞭な割れやボイド等 の欠陥も見られなかった.投入炭化物粒子の大部分は溶融せ ずに複合化されていた.VC および NbC 炭化物粒子は肉盛層 中で約35%の体積率を示し均一に分散していた.しかし,WC 炭化物粒子は基材面近くに多く偏在し離れるにしたがい少な くなる傾向を示し不均一であった.肉盛層全体で平均すると 約30%の体積率を示していた. 3.2 肉盛層のミクロ組織  それぞれの複合肉盛層に関する SEM 二次電子線像(SEI)組 織を Fig. 2︲Fig. 4 に示す.いずれの複合肉盛層においても, 低倍率で観察した肉盛ままの肉盛層では投入(未溶解)炭化物

Fig. 1 (a, b, c) Appearances and (d, e, f) macrographs of the (a, d) VC, (b, e) NbC and (c, f) WC composite layers. (e)

(f) (d)

Fig. 2 Microstructures of the VC composite layers that were (a, b) as︲clad and (c, d) annealed at 1553 K for 5 h. (a, c) and (b, d) were taken at low and high magnifications, respectively. Dispersions marked by arrow are suggested to be carbides recrystallized from liquid.

Ni3Al

(4)

に加えて再晶出により生じたと思われるデンドライト状(花弁 状)炭化物が観察された.低倍率で観察したマトリックスでは 濃淡のある組織として,高倍率では特徴のない組織として観 察された.熱処理を施した複合肉盛層では,再晶出した炭化 物は粗大化と粒状化の傾向が観察された.マトリックスでは 炭化物以外の第 2 相は消失し,いずれも二重複相組織を示唆 する矩形状初析 Ni3Al相とチャンネル部からなる組織が形成 されていた.VC および NbC 複合肉盛層マトリックスではこ

Fig. 3 Microstructures of the NbC composite layers that were (a, b) as︲clad and (c, d) annealed at 1553 K for 5 h. (a, c) and (b, d) were taken at low and high magnifications, respectively. Dispersions marked by arrow are suggested to be carbides recrystallized from liquid.

Ni3Al Channel

Ni

3

Al

Channel

Ni

3

Al

Channel

m

m

Fig. 4 Microstructures of the WC composite layers that were (a, b) as︲clad and (c, d, e, f) annealed at 1553 K for 5 h. (c, d) upper area and (e, f) middle and bottom areas. (a, c, e) and (b, d, f) were taken at low and high magnifications, respectively. Dispersions marked by arrow are suggested to be carbides recrystallized from liquid.

(5)

れら二重複相組織が一面に一様に形成されていた.今回観察 した初析 Ni3Al相サイズは,炭化物と複合化していない肉盛 層を 1553 K︲5 h で熱処理した試料で測定されたサイズ(約 200︲500 nm)に近く9,10),溶製材で形成されたそれらのサイズ (約 0.5︲1 μm1︲6))より小さいことがわかる.一方,WC 複合肉 盛層では,肉盛層上部では立方体状の初析 Ni3Al相が観察さ れたのに対し,WC 粒子が多く存在する中央部から下部では 丸みを帯びた初析 Ni3Al相が観察された.Ni3Al相の形状は, マトリックスと整合する粒子同士の弾性相互作用エネルギー が支配するとき立方体形状を示し,界面エネルギーが支配す るとき丸みを帯びたものになるといわれている.精緻な格子 定数等の測定により粒子形状の違いを明らかにする必要があ る.

 肉盛層組織の EPMA 元素分析が行なわれた.Fig. 5 と Fig. 6 には,おのおの,各複合肉盛層のマトリックス組織と未溶 解炭化物粒子に関する元素分布を示す.また,Table 3 にはマ

Fig. 5 Elemental mapping on the matrices in the (a) as︲clad and (b, c, d) annealed (a, b) VC, (c) NbC and (d) WC composite layers.

SEI

(b) (a) (c) (d) High Low

SEI

1 μm

Fig. 6 Elemental mapping on the undissolved carbide dispersions in the (a, b, c) as︲clad and (d) annealed (a) VC, (b) NbC and (c, d) WC composite layers.

(b) (a)

(6)

トリックスと再晶出炭化物に関する定量元素分析結果を示す. これらは複数個所から測定した値の平均値である.まず,マ トリックスの元素分布についてみれば,代表例として,VC 複 合肉盛層(Fig. 5(a))に示されるように,いずれの肉盛ままの 複合肉盛層でも明瞭に異なる組成差からなる領域が観察され ず,複数の相があっても極めて組成差が小さいことが示唆さ れる.ここで,NbC 複合肉盛層の SEM 像に見えている組織 (Fig. 3(b))は EPMA(組成像)からは識別できなかった.熱処 理を施した肉盛層についてみると(Fig. 5(b), (c), (d)),いず れの肉盛層も矩形状あるいは粒形状の Al︲rich な領域とその 間をチャンネル状に存在する V︲rich な領域からなる組織すな わち二重複相組織に対応する元素分布が観察され,先の高倍 率 SEM 組織と符合する.一方,定量分析値(Table 3)から, VC複合肉盛層では,V 濃度が 13 at%を上回り,過剰な V は 投入 VC 炭化物の分解により供給されていることが分かる. Nb濃度は 3 at%から 1.1~2.0 at%に減少し VC 炭化物に取り 込まれていることが示唆される.NbC 複合肉盛層では,V 濃 度は若干減少するものの Nb 濃度の変動は少ない.WC 複合 肉盛層では,V 濃度が 13 at%から 9 at%程度まで減少し,特 に肉盛層下部では熱処理を施すことによりさらに約 3.7 at% まで減少し WC 炭化物に取り込まれていることが示唆される. また,2.9~3.7 at%の W 濃度が測定され,それらは WC 炭化 物の分解により供給されていることが示唆される.Nb 濃度 は 0.4~2.4 at%に減少し Nb が WC 炭化物に取り込まれてい ることが示唆される.  基材成分である Fe に着目すると,VC および NbC 複合肉 盛層のマトリックス中に約 2.8~5.1 at%,WC 複合肉盛層中 にはそれらより少なく,肉盛層中下部で 1.1~2.5 at%,上部 で 0.7~1.0 at%含まれていた.これら Fe 濃度勾配は下部に高 密度に存在する WC 炭化物により Fe の長距離希釈が妨げら れたためと推測される.基材由来の Fe,Cr ならびに炭化物 由来の W は二重複相組織中のチャンネルに濃化する特徴が観 察された.これら元素分布の振る舞いは各種添加元素の分配 挙動に関する先行研究結果と一致する17)  次に,再晶出炭化物に関する EPMA 結果をみる(Table 3). VC複合肉盛層では,約 6 at%の Nb を固溶する MC 複炭化物 が観察され,NbC 複合肉盛では,約 9 at%の V を固溶する MC複炭化物が観察された.これらの特徴は熱処理を施した 肉盛層でも変わることはなかった.一方,WC 複合肉盛層で は,MC 複炭化物では比較的多量の V, Nb が濃化しているこ とが Table 3 のみならず Fig. 5(d)の元素分布においても明示 された.この場合,主要な M 元素は W でなく V であったこ とは興味深い.MC 複炭化物の組成比(M:C)はいずれの場合 も概ね 1 : 1 の化学量論組成が保たれていた.  投入炭化物とマトリックスとの反応をみてみると,VC 炭 化物粒子とマトリックス界面領域には Nb と V からなる針状 もしくは塊状 MC 複炭化物層が肉盛ままで形成されていた (Fig. 6(a)).NbC 炭化物粒子とマトリックス界面領域には明 らかな反応生成物(層)が観察されずあっても薄い MC 複炭化 物層であることがわかる(Fig. 6(b)).一方,WC 複合肉盛層 では,肉盛ままでは W のかなりが V で置換された薄い塊状 MC炭化物層が形成されることが元素分布図(Fig. 6(c)および

SEM組成像(COMP)(Fig. 7(a))からわかる.熱処理を施す

と,新たに W, C, Ni を主要構成元素とする中間層が成長する ことが Fig. 6(d)および Fig. 7(b)からわかった.中間層は分 析された組成比から W10Ni3C3.4(hP34: P63/mmc, a=0.7837 Table 3 Average chemical compositions (at%) of the matrices and recrystallized carbide dispersions for the (a) as︲clad and (b) annealed composite layers.

3

Table 3 Average chemical compositions (at%) of the matrices and recrystallized carbide dispersions for the (a) as-clad and (b) annealed composite layers.

Element powder as Used matrix

Composite with VC Composite with NbC Composite with WC

Matrix Carbide Matrix Carbide Upper Matrix Carbide

region Middle~bottom region

Ni 75 69.1 2.3 69.1 2.6 72.6 73.4 4.0 Al 9 8.1 0.1 7.2 0.1 8.5 8.2 0.1 V 13 14.0 43.5 11.1 9.9 8.9 8.7 31.3 Nb 3 2.0 5.9 4.5 35.0 1.5 2.4 7.0 W - - - - - 3.7 3.5 12.3 Fe - 2.8 0.1 5.1 0.3 1.0 1.1 0.1 Cr - 0.9 0.9 1.5 0.3 0.4 0.5 0.5 C - 2.2 47.1 1.0 51.8 2.6 1.7 44.6

Element powder as Used matrix

Composite with VC Composite with NbC Composite with WC

Matrix Carbide Matrix Carbide Upper Matrix Carbide

region Middle~bottom region

Ni 75 71.8 1.2 71.3 2.4 75.4 79.4 3.5 Al 9 8.3 0.0 7.8 0.0 8.3 9.3 0.1 V 13 13.4 43.5 11.9 8.8 8.9 3.7 30.5 Nb 3 1.1 6.1 2.5 37.4 1.2 0.4 7.9 W - - - - - 3.3 2.9 10.6 Fe - 3.6 0.1 3.6 0.2 0.7 2.5 0.1 Cr - 1.0 0.8 1.1 0.2 0.3 0.5 0.5 C - 0.6 48.2 1.2 50.8 1.3 1.0 46.7 (a) (b)

(7)

nm)相と同定される18).このように,投入 WC 炭化物は不安 定でありマトリックスとの間に強い成分的相互作用が生じて いた.  各複合肉盛層中のマトリックスに関する TEM 観察を行っ た.肉盛りままと熱処理を施した試料の明視野(BF)像と制限 視野電子回折図形(SADP)を,おのおの,Fig. 8 と Fig. 9 に示 す.肉盛ままの VC および NbC 複合肉盛層中のマトリックス では,A1相(Ni 固溶体)のみ(Fig. 8(b)および Fig. 8(d))と A1 相と L12相(Ni3Al)からなる(Fig. 8(a)および Fig. 8(c))2 つの 領域が観察され組織形成が不均一かつ未成熟であった.一方,

肉盛ままの WC 複合肉盛層中のマトリックスでは,L12相と

D022相からなる電子回折斑点が観察され共析分解まで進行し

ていた(Fig. 8(e)).熱処理を施した VC および NbC 複合肉盛

層のマトリックスでは,L12相と D022相からなる電子回折斑

点が得られている(Fig. 9(a)および Fig. 9(b))ことから二重複

相組織が形成され,先の SEM 組織や EPMA の結果と符合す る.ところが,熱処理を施した WC 複合肉盛層のマトリック ス組織では,D022相は見られず A1相と L12相のみから構成さ れていた(Fig. 9(c)). 3.3 ビッカース硬さ試験  肉盛層のマトリックス組織のマイクロビッカース硬さ試験 結果を Fig. 10 に示す.ばらつきが大きいものの肉盛層中では 硬さレベルはほぼ一定の値を示していた.熱処理を施すこと で VC および NbC 複合肉盛層では硬さが上昇した.一方,WC 複合肉盛層においては熱処理後硬さが低下する傾向にあった. また,未溶解炭化物粒子を含む肉盛層全体の硬さを知るため に行ったマクロビッカース硬さ試験では,熱処理を施した VC 複合肉盛層では HV588~650,NbC 複合肉盛層では HV572~ 663と同じような硬さを示したが,WC 複合肉盛層では HV518~

Fig. 7 SEM ︲COMP images of the reacted layers formed in periphery of charged WC particles in the (a) as︲clad and (b) annealed WC composite layers. WC

(a)

(V,W)C layer 1μm Matrix Meso‐phase layer WC Matrix

(b)

1μm Meso‐phase  layer (V,W)C layer

Fig. 8 TEM BF images and corresponding SADPs of the matrix microstructures of the as︲clad (a, b) VC, (c, d) NbC and (e) WC composite layers. The Ni solid solution phase is identified by the diffraction spots {200} and {220}, the Ni3Al phase by the diffraction spots {200}, {220}, {100} and {110}, and the Ni3V phase by the diffraction spots {200}, {220} and {1½0}.

000 200 020 110 220 010 100

(c)

(e)

000 200 020 220 000 200 020 220 110 010 000 200 020 110 220 010 100 000 200 020 220

Fig. 8 TEM BF images and corresponding SADPs of the matrix microstructures of the as-clad (a,b) VC, (c,d) NbC and (e) WC composite layers. The Ni solid solution phase is identified by the diffraction spots {200} and {220}, the Ni3Al phase by the diffraction spots {200}, {220}, {100}

and {110}, and the Ni3V phase by the diffraction spots {200}, {220} and {1½0}.

(b)

(d)

(c)

(e)

SADP

SADP

SADP

SADP

SADP

000 200 020 110 220 010 100 1½0 ½10

(8)

570と前二者の複合肉盛層より低い硬さを示した.  熱処理を施した VC 複合肉盛層の高温マクロビッカース硬 さ試験の結果をほぼ同条件で作製した炭化物を含まない肉盛 層の結果10)とともに Fig. 11 に示す.二重複相組織が形成され た肉盛層中に VC 粒子を約 35 vol%分散させることにより全 温度域で HV200以上の大幅な硬さの上昇が認められた. 4. 考   察  複合肉盛層中での炭化物粒子の分散が均一か不均一の違い は,Table 2 に示されるように,炭化物19)と Ni 基超々合金7) 000 200 020 200 110 010 100

(a)

(b)

(c)

(b)

(d)

(f)

SADP

SADP

SADP

000 200 020 110 220 010 100 1½0 ½10 000 200 020 110 220 010 100 1½0 ½10

Fig. 9 TEM BF images and corresponding SADPs of the matrix microstructures of the annealed composite layers: (a) VC, (b) NbC and (c) WC composite layers. The Ni solid solution phase is identified by the diffraction spots {200} and {220}, the Ni3Al phase by the diffraction spots {200}, {220}, {100} and {110}, and the Ni3V phase by the diffraction spots {200}, {220} and {1½0}.

Fig. 10 Vickers hardness profiles in the (a) VC, (b) NbC and (c) WC composite layers. 100 200 300 400 500 600 700 0 1 2 3 100 200 300 400 500 600 700 0 0.5 1 1.5 2 2.5 100 200 300 400 500 600 700 0 0.5 1 1.5 2 2.5

As clad

As clad

As clad

1553K-5h

1553K-5h

Cladding layer

substrate

1553K-5h

Ha

rdn

ess (H

V)

Distance, d/mm

Cladding layer

substrate

Ha

rdn

ess (H

V)

Cladding layer

substrate

Ha

rdn

ess (H

V)

(b) NbC

(a) VC

(c) WC

Distance, d/mm

Distance, d/mm

Fig. 11 Variation of Vickers hardness with temperature for the Ni︲base intermetallic alloy and VC composite layers.

0 400 600 800 400 600 800 1000 1000

Temperature, T/K

Ha

rdne

ss

(HV)

VC (35 vol%) composite layer

Ni-base intermetallic alloy layer

(9)

との比重差の違いにより生じていると考察する.比重差の小 さい VC や NbC 複合肉盛層では均一に分散するのに対し,比 重差の大きい WC 肉盛層では炭化物粒子が重力偏析によって 下部から中央部に偏在したと考えられる.  肉盛ままの VC および NbC 複合肉盛層中のマトリックス は,Ni 固溶体相からなる領域もしくは Ni3Al相と Ni 固溶体 相の 2 相からなる非平衡(未成熟)組織から形成されていた. この結果に関して 2 つの要因が挙げられる.まず一つ目には, レーザ照射後の急冷効果である.レーザ加工条件や使用材料 が異なるが,例えば,コルモロイ 6 を肉盛層として用いた場 合の冷却速度はおおよそ 3045 K・s︲1と報告されている20).そ のような急速冷却下では Ni3Al相と Ni3V相への相分解が抑制 され,高温相である Ni 固溶体相の残存を招く.二つ目には, 基材からの Fe や Cr の混入(希釈)による効果である.過去の Ni基超々合金の肉盛層の組織形成に関する研究では10),Fe お よび Cr は Ni 固溶体相を安定化させることが報告されている.  肉盛ままのWC複合肉盛層のマトリックスはNi3Al相とNi3V 相から構成される組織であることが判明した.先の 2 つの複 合肉盛層との違いは炭化物種の熱容量による影響を受ける冷 却速度の違いに求められる.炭化物種の受け取る熱容量は, Table 2 に示す各炭化物の比熱21)と炭化物投入量から,WC (6.04×10︲4 kJ・K︲1)<NbC(7.03×10︲4 kJ・K︲1)<VC(7.88× 10︲4 kJ・K︲1)と見積もられ,WC が最も小さいことが分かる. したがって,投入炭化物に奪われる熱量は WC で最も小さく, 他の複合肉盛層に比べて大きな余熱により基材温度が上昇す るため,凝固時の冷却速度が緩慢になり 2 つの金属間化合物 への分解が容易に進行したと考えられる.  熱処理後の VC および NbC 複合肉盛層のマトリックスにお いては,未成熟な組織から Ni3Al相と Ni3V相から構成される 二重複相組織に変化していた.その際,両炭化物の安定性が 比較的高いため,マトリックスの組成変動が小さかった要因 も挙げられる.一方,WC 複合肉盛層では,マトリックス中 の V 濃度が大きく減少するために,肉盛ままで形成された Ni3V相が Ni 固溶体相へと(逆)変態してしまったと考えられ る.  熱処理前後の複合肉盛層マトリックスのビッカース硬さ変 化もこれら構成相の変化により説明できる.熱処理により Ni 固溶体から相分解が進行する VC および NbC 複合肉盛層では 硬さが上昇し,二重複相組織を構成する 2 つの金属間化合物 相から Ni 固溶体相へ(逆)変態する WC 複合肉盛層では硬さ が低下したと説明できる.  本研究における諸観察より,投入炭化物種の Ni 基超々合金 マトリックスにおける安定性は NbC>VC>>WC の順に低くな ることが明らかにされた.これらの順位は Table 2 に示され るように,炭化物の形成エネルギ-22)に強い相関があること が分かる. 3 種の炭化物の内,最も小さな形成エネルギーを 有する WC は最も不安定であり,成分的には MC 複炭化物に 変化するのみならずマトリックスの組成をも変動させ,結果 的に,マトリックスの組織までも変化させてしまった.未溶 解炭化物とマトリックス界面で生じた MC 炭化物は晒される 温度と時間に応じてそれらの組成あるいは結晶構造も大きく 変化することを WC 炭化物で観察した.一方,再晶出 MC 炭 化物は,晶出時には状態図に従った平衡相であろうと考えら れるが,冷却にともない平衡組成から偏寄している可能性が 高い.これら炭化物種の Ni 基超々合金マトリックスにおける 安定・不安定性は状態図的安定・不安定あるいは分解の反応 速度に支配あるいは副次的に影響されている可能性もある. それら研究集積により本研究で観察した炭化物種の安定・不 安定性の正しい理解が進むものと思われる.  本研究結果から,Ni 基超々合金肉盛層に分散させる炭化物 種として WC は好ましくない.また,二重複相組織形成には 後熱処理(post annealing)が必要であることがわかった.実用 的視点からは,肉盛ままで二重複相組織が形成されるレーザ 加工条件や合金成分の検討が求められる. 5. 結   言  本研究では,レーザメタルデポジション法により,SUS304 基材上に VC,NbC,WC の 3 種の炭化物粒子を Ni 基超々合 金中に分散させた肉盛層の組織と硬さを調査し,高い組織安 定性と硬さレベルを発現する炭化物種の探索を行った.本研 究で得られた結果を以下に示す.  ⑴ VC および NbC 複合肉盛層では,肉盛ままでは Ni 固 溶体相のみと Ni 固溶体相と Ni3Al相からなる 2 つの領域が観 察され組織形成が未成熟であった.また,熱処理後には Ni3Al 相と Ni3V相から構成される二重複相組織が形成された.投入 した炭化物粒子の組織的ならびに成分的安定性は比較的高 かった.肉盛層マトリックスの硬さレベルは熱処理により上 昇した.  ⑵ WC 複合肉盛層では,肉盛ままでは Ni3Al相と Ni3V相 からなる二重複相組織が,熱処理後は Ni3Al相と Ni 固溶体相 からなる組織に変化した.投入した炭化物の組織的ならびに 成分的安定性は低く,WC 炭化物は V を主成分とする MC 複 炭化物に変質し,マトリックスの組成変動も大きかった.肉 盛層マトリックスの硬さレベルは熱処理により低下した.  ⑶ 複合肉盛層の組織形成と硬さ特性は投入炭化物種の形 成エネルギーに相関することが認められた.Ni 基超々合金に 分散する好ましい炭化物種として大きな形成エネルギーを有 する NbC および VC が推奨される. 文   献

1) Y. Nunomura, Y. Kaneno, H. Tsuda and T. Takasugi: Acta Mater.

54(2006) 851︲860.

2) S. Shibuya, Y. Kaneno, M. Yoshida and T. Takasugi: Acta Mater.

54(2006) 861︲870.

3) S. Shibuya, Y. Kaneno, H. Tsuda and T. Takasugi: Intermetallics

15(2007) 338︲348.

4) S. Shibuya, Y. Kaneno, M. Yoshida, T. Shishido and T. Takasugi: Intermetallics 15(2007) 119︲127.

5) K. Kawahara, Y. Kaneno, A. Kakitsuji and T. Takasugi: Interme-tallics 17(2009) 938︲944.

6) K. Kawahara, T. Moronaga, Y. Kaneno, A. Kakitsuji and T. Takasugi: Mater. Trans. 51(2010) 1395︲1403.

7) T. Takasugi: Science of Machine 62(2010) 1131︲1141. 8) T. Takasugi and Y. Kaneno: Kinzoku, Materials Science &

Tech-nology 80(2010) 540︲547.

9) T. Okuno, Y. Kaneno, T. Yamaguchi, T. Takasugi, S. Semboshi and H. Hagino: MRS Advances 2(2017) 1381︲1386.

(10)

T. Takasugi: J. Mater. Res. 32(2017) 4531︲4540.

11) H. Hagino and T. Yamaguchi: J. Vac. Soc. Jpn. 56(2013) 315︲ 321.

12) G. Ben: Dictionary of Practical Use for Composite Materials, (Japan Society for Composite Materials, Tokyo, 2001), p. 521. 13) G. Xu, M. Kutsuna, Z. Liu and L. Sun: Surface & Coatings

Technology 201(2006) 3385︲3392.

14) Y. Kataoka, T. Yoshinaka, T. Miyazaki and T. Umeda: J. JFS 75 (2003) 562︲567.

15) S. Li, D. Feng, H. Luo, X. Zhang and X. Cao: Journal of Iron and Steel Research International 13(2006) 37︲40.

16) Y. Chen and H. M. Wang: Mater. Sci. Eng. A 368(2004) 80︲87. 17) S. Kobayashi, K. Sato, E. Hayashi, T. Osaka, T. J. Konno, Y.

Kaneno and T. Takasugi: Intermetallics 23(2012) 68︲75.

18) M. L. Fiedler and H. H. Stadelmaier: Z. Metallkd. 66(1975) 402︲ 404.

19) H. Suzuki: Superalloy and Sintered Hard Materials: Fundamentals

and Application, (Maruzen, Tokyo, 1986).

20) W. M. Steen: Laser Material Processing, 3rd ed., (Springer, Luxembourg, 2003) p. 261.

21) I. Barin, O. Lnacke and O. Kubaschewski: Thermochemical

Prop-erties of Inorganic Substances, (Springer︲Verlag, Berlin, 1973) p. 570, 864, 869.

22) W. F. Gale and T. C. Totemeier: Smithells Metals Reference Book, (Elsevier, Amsterdam, 2004) pp. 8︲22.

Table 2 Properties of laser clad materials used in this study.
Fig. 1 (a, b, c) Appearances and (d, e, f) macrographs of the (a, d) VC, (b, e) NbC and (c, f) WC composite layers.
Fig. 4 Microstructures of the WC composite layers that were (a, b) as︲clad and (c, d, e, f) annealed at 1553 K for 5 h
Fig. 5 Elemental mapping on the matrices in the (a) as︲clad and (b, c, d) annealed (a, b) VC, (c) NbC and (d) WC composite layers.
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参照

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