• 検索結果がありません。

発達障害傾向のあるドライバーの運転特性の解明 2019年度 タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "発達障害傾向のあるドライバーの運転特性の解明 2019年度 タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185"

Copied!
53
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

発達障害傾向のあるドライバーの運転特性の解明

― 2019年度 タカタ財団助成研究論文 ―

ISSN 2185-8950

(2)

研究実施メンバー

研究代表者

筑波大学

医学医療系

准教授

水野

智美

研究協力者

筑波大学

医学医療系

教授

徳田

克己

富山大学

人間発達科学部

准教授

西館

有沙

東京未来大学

こども心理学部

専任講師

西村

実穂

(3)

報告書概要

本研究は,ADHD 衝動型,ADHD 不注意型,自閉症スペクトラムのそれぞれの障害特性に よって,運転行動にどのような困り感を抱えているのか,どういった運転行動に苦手意識が あるのか,どのようなヒヤリハット体験や事故を起こしているのかを明らかにし,発達障害 傾向のあるドライバーが起こしやすい運転行動のチェックリストを作成する.また,作成し たチェックリストをもとに,実路による運転行動の観察及びヒアリング調査を行い,発達障 害のタイプ別に,さらにチェックリスト項目を分類し,どのような発達障害傾向のある人が どんな運転行動をとる傾向があるかについて明らかにする. ヒアリング調査の結果,【こだわり】(5 項目),【周囲の動き,ノイズに惑わされる】(9 項目),【注意視野が狭い,状況判断ができない】(18 項目),【不注意】(12 項目), 【2 つ以上の行動をすることが苦手】(4 項目),【衝動的な行動】(13 項目),【見通し の甘さ】(6 項目),【左右,後方の視点の変化が弱い】(3 項目),【車体感覚がイメー ジできない】(8 項目),【対向車,後方車のスピード,距離感がわからない】(3 項目) 【その他】(5 項目)のチェックリストを作成した. また,チェックリストをもとに実路による運転行動の観察およびヒアリング調査をした結果, 発達障害傾向のあるドライバーの多くが不適切と言わざるを得ない運転行動(一時停止をす べきところで一時停止をしない,信号が赤に変わっているのに進入する,一方通行であるこ とに気づかずに逆走するなど)を数多くしていた.また,発達障害のタイプによって起こし やすい問題行動は異なった.そのため,タイプ別にチェックリストを作成した.これによっ て,発達障害傾向のあるドライバーが,自身の課題を具体的に知り,その課題を 1 つずつ克 服するための再教育を受ける準備をすることができると思われる.また,再教育の指導者に とって,ドライバーにチェックリストに挙げられている項目がいくつもあてはまる場合には, 発達障害傾向がある可能性が高いと考え,そのドライバーの特性にあった対応を考えていく ことができる.

(4)

目 次

発達障害傾向のあるドライバーの運転行動特性の解明 第1 章 はじめに 1.1 問題の所在 1.2 本研究の目的 第2 章 発達障害傾向のあるドライバーに対するヒアリング調査 2.1 目的 2.2 方法 2.3 結果 第3 章 発達障害傾向のあるドライバーの運転特性に関するチェックリストの作成 3.1 目的 3.2 方法 3.3 結果 第 4 章 チェックリストをもとにした発達障害傾向のあるドライバーの 運転行動の観察調査およびヒアリング調査 4.1 目的 4.2 方法 4.3 結果 第5 章 まとめと今後の課題 参考文献

(5)

第 1 章

はじめに

1.1 問題の所在 最近では,「発達障害」という言葉はマスメディアでもよく取り上げられ,一般に広く知られる ようになっている.文部科学省が 2012 年に行った調査によると,通常学級に在籍している児童 生徒の中で,発達障害の傾向がみられる(医療機関における診断はないが,学習面や行動面で教 師が教育上の配慮が必要であると思われるケースを含む)割合は 6.5%であることがわかってい る.ただし,この調査の結果は氷山の一角であり,さらに多くの子どもに発達障害の傾向がある と考えられている. 発達障害傾向のある大人の割合を示した明確な報告はない.発達障害の傾向は成長とともに顕 在化しにくくなるが,治るものではないため,大人の発達障害者の割合も子どもと同程度である と推測できる.2005 年に発達障害者支援法が成立して以来,年々,発達障害の診断を受ける人が 増えているが,本人に自覚がないケース,日常生活に支障が及んでいるが診断を受けていないケ ースが多く,実態を正確にとらえることができていないのが現状である. 発達障害傾向のある人は,定型発達の人に比べて事故やけがを起こしやすいと言われている(白 石・水野,2012).水野(2018)が ADHD の傾向がある子どもを持つ保護者にヒアリング調査を したところ,全員の子どもが自動車や自転車にひかれそうになったことがあること,子どもが衝 動的に飛び出してしまうこと,手をつないでいても手を振りほどいて走り出すことを述べていた. また,Clancy, Rucklidge & Owen(2006)は 13 歳から 17 歳までの ADHD の診断を受けている 子どもと定型発達の子どもを対象にした調査をした結果,ADHD の診断を受けている子どもの方 が安全の意識が低いだけでなく,周囲の人と衝突によるけがをする割合が定型発達の子どもより も2 倍以上多いことを明らかにした.

さらに,Woodward, Fergusson & Horwood(2000)は,18 歳から 21 歳までの大学生を対象 に調査した結果,ADHD の診断を受けている人の方が交通事故に遭う割合が多いだけでなく,車 を運転する際も違反を繰り返し,免許取り消しなどの問題を起こしやすい傾向を確認した.さら に,佐々木・松本・藤瀬・濱元・弟子丸・池田(2015)が交通事故を頻繁に起こす人の行動特性 を詳細に調べた結果,ADHD 傾向があることを確認している. このように発達障害傾向のある人が事故やけがを起こしやすい理由には,発達障害の特性 が大いに関係している.たとえば,ADHD のなかでも衝動性・多動性が高い人(以後,ADHD 衝動型)は「思いついたら考える前に行動してしまう」「待つことができない」「感情のコントロ ールをすることが苦手である」ことが特徴である.そのため,日常生活においても安全性を考え る前に行動を起こしてしまう,他の人の行動に対してすぐにイライラしてトラブルになってしま うなどのことがある. ADHD の不注意の特性のある人(以後,ADHD 不注意型)は,「注意を集中できる時間が短い」 「注意を向ける方向が変化しやすい」「行動している途中で意識がそれてしまう」ことが特徴であ る.そのため,行動をしている途中にボーッとしてしまったり,話し声などのちょっとした音で 気が散ってしまったり,いくつかの行程を行う際に何かをやり忘れたりする. 自閉症スペクトラムの傾向のある人は,「臨機応変に行動することが苦手である」「情報の取り 1/49

(6)

入れ口(注意視野)が狭い」ことが大きな特徴である.そのため,最初に覚えたルールを修正で きない,周りを見て行動することができない,自分勝手に作成したルールに固執する,ボディイ メージを持てずに身体をあちこちにぶつける,目の前に物があっても気がつかない,自分に話し かけられていることに気がつかないことがある. このように発達障害傾向のある人が事故やけがをよく起こしていることが確認されていても, 発達障害傾向のある人がどのような場面で,なぜ事故を起こしやすいのかについては明らかにな っていない. 一般的に,自動車運転免許を取得することによって,日常生活の行動範囲が広がったり,移動 の利便性が増したりするが,特に公共交通機関が発達していない地域では職業の選択の幅も広が る.それは発達障害傾向のある人でも同様である.そのことから,現在,発達障害傾向のある人 にも運転免許を取得できるサポート体制を整えた自動車教習所(以下,教習所)が作られるよう になっている(梅永,2018). ただし,発達障害傾向のある人の中には運転への不安をぬぐえずに運転免許を取得しただけで, 運転をしない人,交通事故を頻繁に起こして,家族から説得されて運転をやめてしまった人も少 なからずいる.逆に,何度もヒヤリハット体験をしているにもかかわらず,ドライバー本人は危 険を認識していない場合もある.また,発達障害傾向にある人は,概して応用が苦手であり,日 常生活においても何らかの失敗の理由を考えたり,ある失敗を別の失敗につなげないように応用 させたりすることが苦手である.それは,運転行動においても同様のことが考えられる.運転行 動において自分自身がどのような失敗をしたかについては記憶していても,その失敗がなぜ起こ っているのか,次に別の場面で同じような失敗をしないようにどうしたらよいのかについて考え ることが苦手であると推測される. そのため,発達障害傾向があるドライバーに運転免許を取得させないようにした方がよい,あ るいは取得した人には返納をさせた方がよいという意見を耳にすることがある.しかし,前述の ように,発達障害傾向があるドライバーにとって自動車運転免許を取得あるいは保持し,安全に 運転することは,QOL の向上のために大きなメリットがある.このことから,発達障害傾向があ るドライバーはどのような運転行動をとりやすいかを,ドライバー本人,家族,指導者が認識し, 事故を起こさないためにどのような再教育を実施すれば安全に運転できるかを検討することが必 要であると思われる. 1.2 本研究の目的 ADHD 衝動型,ADHD 不注意型,自閉症スペクトラムのそれぞれの障害特性によって,運 転行動にどのような困り感を抱えているのか,どういった運転行動に苦手意識があるのか, どのようなヒヤリハット体験や事故を起こしているのかを明らかにし,発達障害傾向のある ドライバーが起こしやすい運転行動のチェックリストを作成する.そのチェックリストをも とに,実路による運転行動の観察及びヒアリング調査を行い,発達障害のタイプ別に,さら にチェックリスト項目を分類し,どのような発達障害傾向のある人がどんな運転行動をとる 傾向があるかについて明らかにしたい. 将来的に,発達障害傾向のある人が安全に自動車を運転できるように,教習所等において 指導者が再教育を行うための教育プログラムを開発したいと考えている.今回,作成するチ ェックリストは,再教育のために指導者が発達障害傾向のある人の運転行動をチェックし, 2/49

(7)

不適切な運転行動の背景に何が関係しているのかを確認するための重要な資料となる.

1.3 倫理的配慮

本研究は,筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:1441).

(8)

第 2 章

発達障害傾向のあるドライバーに対するヒアリング調査

2.1 目的 発達障害傾向のあるドライバーが,それぞれの障害特性によって運転行動にどのような問 題が生じているのかを明らかにし,発達障害傾向のあるドライバーの運転行動のチェックリ ストを作成するための資料を得る. 2.2 方法 発達障害傾向のあるドライバーあるいはその家族に対して,個別の半構造化面接を行っ た. 調査対象者は,自閉症スペクトラム(2 名),ADHD 衝動型(1 名),ADHD 不注意型(2 名)の傾向があるドライバー5 名およびそれらの特性がある人の家族 3 名(自閉症スペクト ラム1 名,ADHD 衝動型:1 名,ADHD 不注意型+自閉症スペクトラム:1 名)であった. なお調査対象者は,ドライバーに発達障害の医学的診断がないケースも含まれた.ただし, ドライバーを対象とした調査の際には,ドライバー本人が自身に発達障害傾向が強くあるこ とを自覚しているケースのみとした.また,家族を対象とした調査の際には,家族が発達障 害に関して専門に研究しており(発達障害に関する研究業績がある,あるいは臨床活動をし ている),ドライバーに自覚はなくても,発達障害の傾向があると判断されたケースとし た. 調査内容は日常生活の中で自覚しているドライバー本人の行動特性(こだわり,感覚異 常,同時並行処理の困難さ,衝動性,多動性,不注意,不安傾向の強さなど),ドライバー 本人が自覚している運転特性と具体的な事例,過去のヒヤリハット体験とその原因や状況, 運転特性に関して同乗者から指摘された経験の有無とその内容(ドライバーのみ),運転に 関して気をつけていることなどに関してヒアリング調査を行った. 調査時期は2019 年 5 月~8 月であった. 2.3 結果 2.3.1 自閉症スペクトラムのドライバーへのヒアリング調査 1 【プロフィール】 40 代 女性 自閉症スペクトラム傾向 *具体的な特徴 ・あいまいな指示を出されると,どのように行動すればよいのかがわからない ・平常時には問題なくできることが,焦ると手順等を思い出せなくなることがある ・動いている物のスピードをはかることが苦手である(例えば,キャッチボールが苦手,エスカ レータの乗り降りが苦手) ・2 つ,3 つの動作を同時に行うこと(マルチタスク)が苦手である, ・刺激に過敏である(例えば,夜間は対向車のライトがまぶしくて目が痛く感じる) ・こだわりが強い(最初に覚えたルールを律義に守ろうとする)などの特性がある. 4/49

(9)

【運転状況】 ほぼ毎日,通勤時に合計1 時間程度の運転をしている. 【運転に関して自覚している問題特性および苦手な運転行動】 車庫入れ 右折 高速道路での合流 車線変更 狭い道での歩行者や自転車の追い抜き T 字路においてカーブミラーを見ての右左折 【車庫入れ】 車庫入れが苦手な最大の理由は,後進する際にハンドルをどのように回すと車体の軌道がどう なるのかを想像できない点にある.前進する場合にはハンドルの方向と回し方でタイヤがどのよ うになっているのかを想像できるが,後進する場合には,どのように車体が動くのかを想像でき ない.たとえば,下の図 2.1 の赤い車で言えば,車庫に入れる際に,ハンドルを回す方向がわか らないだけでなく,車体の左前方の軌道が膨らむことが想像できない(前進する際には,内輪差 があることは理解できるが,後進の場合には理屈は頭で理解していても,実際に運転をしている と,混乱してしまう). また,車庫入れをする場合,最初にどこに停車すればよいのかがわからない.かつて,教習所 で練習していた時には,縁石やポールの位置を目印にして車を停止させたり,ハンドルを回した りするように指示を受け,その教えの通りに実施していたら,その場所では何とかできるように なった.しかし,実路に出た場合には,教習所のような目印があるわけではない.また,同乗者 によって,どの位置に停めたらよいのか,ハンドルをどのように回せばよいのかについての助言 が異なるために,今でも混乱している. 図2.1 車庫入れが苦手な理由の一つに,後進時に前方が膨らむことがある 5/49

(10)

【右折】 矢印信号のない交差点で右折する場合に,どのタイミングで右折すればよいのかがわからない. 対向車のスピードによって,交差点に進入するまでの時間が異なるため,「曲がれるだろうか」と 考えているうちに,タイミングを逃してしまう.また,確実に曲がれると考えられるまで待って いると,さらにタイミングを逸してしまう.なお,同乗者がいる場合には,「今ならいける」「待 て」という合図を出してもらい,それに従って運転している. 【高速道路での合流/車線変更】 高速道路も,右折と同様に,後続車のスピードがそれぞれの車によって異なることから,いつ, 合流すればよいのかがわからない.スピードを上げて合流し,走行車線で並走していた車の後ろ につくようにと言われるが,その場合に合流後,前の車にぶつかりそうになる.おそらく,前の 車のスピードを考えずにスピードを出していたと思われる.しかし,毎回,それぞれの車のスピ ードを把握できないため,非常に怖い思いをする. 【狭い道での歩行者や自転車の追い抜き】 狭い道で歩行者や自転車を追い抜こうと歩行者や自転車との距離を空けると,対向車と正面衝 突するのではないかという不安があり,なかなか追い抜くことができない.追い抜くことができ ず,スピードを落として走行していると,後続車が詰まってしまい,渋滞を引き起こすことにな る. 【T 字路においてカーブミラーを見ての右左折】 カーブミラー内に映る車両は左右が反転するため,どちらから来ている車なのかがわからない. 「慣れの問題だ」と言われるが,25 年以上運転していても,ミラーに映っている車はどこの位置 にいるのかがわからない.また,交差点に進入すると,ミラーの死角となって把握していなかっ た車両があり,怖い思いをすることがある.カーブミラーは,結果的に使わず,目視で運転をし ている. 【上記以外で同乗者に指摘されること】 ・右折レーンのない場所で右折する際の停車位置が不適切である 右折レーンのない場所で右折しなければならない際に,どの位置で停止していれば,対向車お よび後方車に迷惑になりにくいかがわからない.後方車を気にしすぎて,対向車線にはみ出して しまうことがある. ・停止時に駐車場の入り口などを避けない 信号による停止時や渋滞で停止している際に,出入りの多い店舗の駐車場入り口を空けるよう に停まることを忘れてしまう.なお,停止時に信号のない交差点に進入しないようにする,とい った最初からルールがあるものについては,きちんと守る.つまり,教習所で最初からルールと して覚えたことは守ることができるが,教習所では学ばなかった,「~した方がよい」というマナ ーを免許取得後になかなか身につけられない. 6/49

(11)

2.3.2 自閉症スペクトラムのドライバーへのヒアリング調査 2 【プロフィール】 30 代 男性 自閉症スペクトラム(診断あり,ただし,運転免許取得時は診断なし) *具体的な特徴 ・几帳面で,決められたルールを律儀に守ろうとする一方,そのルールを守らないと罰則が適応 されるのではないかと強く不安を感じる ・注意視野が狭い.全体を見ているようで,ある一部分しか視界に入っていない ・周囲の状況を把握することが苦手である ・先の見通しを持つこと(先を予測すること)が苦手で,その状況になって,ひどくあせってし まう ・2 つ以上のことを同時に行うことが苦手である ・あいまいな指示を理解することが苦手である ・ボディイメージ,物の大きさをイメージすることが苦手である.そのため,幅の狭いところを 歩く時に自分の身体の幅を認識しておらず,ぶつかることがよくある 【運転状況】 5 年ほど前までは,車での移動を必要とする勤務についていたため,平日はほぼ毎日,運転をし ていた.しかし,運転中にぶつけたり擦ったりすることが何度もあり,上司からひどく叱責され, 運転をすることに非常に大きなストレスを感じ,体調を崩して,その職業を辞めた.現在は,運 転をしていない. 【運転に関して自覚している問題特性および苦手な運転行動】 ・マルチタスクが苦手である ・あいまいなルールの下で,判断することが苦手である ・速度を出して走行することに不安がある ・先を見越すことが苦手である 【マルチタスクが苦手である】 運転中は前方,後方,左右を確認するだけでなく,標識や歩行者,自転車に注意を向けなけれ ばならず,マルチタスクを求められる.しかし,周囲の動きに気をとられすぎて,前方確認がお ろそかになってしまうことがある.特に,後続車の動きが気になって,バックミラーばかり気に してしまうことがあり,気がつくと前方確認がおろそかになっている. また,車線変更,右左折,合流などの多くのことを同時に配慮しなければならない場面で,見 落としが生じてしまう. 具体的には,車線変更をする際に,車線を変更することだけで頭の中がいっぱいになってしま い,サイドミラーを見忘れたり目視を怠ってしまう.これまでに,隣の車線を走行している車と 接触したことが数回ある.接触しなくても,隣の車線から急ブレーキの音が聞こえ,ハッと気づ くこと,同乗者から「危ない!」と注意されて気がついたことが何度となくある. また,右折用の矢印信号がない交差点で右折する際に,対向車が来ないことしか意識が向かず, 7/49

(12)

横断歩道上にいた歩行者や自転車に気がつかず,危うく接触しそうになったことが何度もある. さらに,高速道路を走行中に,スピードに気をつけなくてはならないと思い,スピードメータ ーばかり見てしまって,前方や周囲の車に注意を向けることができずに,ぶつかりそうになった ことがある.通常の道路でも,スピードメーターに気をとられすぎて,前方や信号の確認がおろ そかになってしまうことがよくある. 【あいまいなルールの下で,判断することが苦手】 「赤信号では止まる,青になったら進む」というはっきりとしたルールが決まっていれば,そ れを守ることができる.しかし,右折時に対向車との距離を考えて自分の判断で曲がらなくては ならないとなると,いつ曲がればよいのかがわからない.対向車のスピードが常に一定であれば, 「この距離より対向車が遠くにいれば曲がってもよい」と自分なりの基準を作れるが,実際には 車によって速度が違い,自分で決めた基準があてはまらない.右折してよいかどうかの判断に時 間を要するため,考えているうちに,対向車が近づき,結果的に,曲がるタイミングを逸してし まう.後続車からクラクションを鳴らされることが多く,後続車がいると,クラクションを鳴ら されるのではないかとさらに不安になってしまい,右折のタイミングを逃してしまうことになる. 高速道路の合流のタイミングもわからない.「進入してよい」という合図があれば入れるが,自 分だけの判断ではいつまでたっても合流できない. さらに,カーナビが示す「〇m 先」がどこを指しているのかがわからず,間違ったところで曲 がってしまったり,混乱してしまうことが多い. 加えて,ドライバーが出すサイン(ハザードランプ,パッシング,クラクション)の意味を理 解できない.つまり,ルールで決まっていないあいまいなサインを読むことが苦手である.たと えば,右折のタイミングをはかっている際に,対向車がパッシングをすると,自分自身が進んで よいのか,「危ないから進むな」という意味で待たなければいけないのか,ライトが切れているこ とを警告してくれているのか,その他の別の意味のサインであるのかがわからない. 【速度を出して走行すること】 「スピードの出しすぎは事故につながる」という思いにとらわれてしまい,スピードを出せな い.後続車からよくクラクションを鳴らされ,後ろからのプレッシャーを感じつつ,制限速度以 上のスピードを出すことを怖いと思いながら運転している.教習所に通っていた時から,指導者 にもう少しスピードを出すようにと何度も言われたが,怖くて出せなかった.免許取得後も,同 乗者からスピードが遅いことを指摘されることがよくあった. 【先を見越すこと】 渋滞している道で,前方の車に続いて信号のある交差点に進入したが,交差点を渡り切らない うちに信号が変わってしまい,交差点内に停車せざるを得なかったことがしばしばある.特に, 前をトラックやバスなどの大型車が走行しており,信号をよく確認せずに前の車に続いて進んで しまって,失敗することが多い. 【上記以外で同乗者から指摘されること】 一時停止の標識があることを見落として,止まらなかったことを指摘されることがよくある. 8/49

(13)

また,周囲の車が自分の車の前に入りたいと思って,方向指示器を出していたようであったが, 気がつかずに同乗者から指摘されることも多い.さらに,走行中に歩行者が脇を通行していたこ とに気づかずに運転していたら,同乗者から歩行者に配慮するように注意を受けることもある. 右折をする際に,方向指示器を出すタイミングが遅すぎることをよく指摘される. 加えて,不安になるとすぐにブレーキを踏んでしまうことを指摘されることも多い. 2.3.3 ADHD 衝動型のドライバーへのヒアリング調査 【プロフィール】 60 代 男性 ADHD 衝動型(診断なし) *具体的な特徴 ・思い立つと,考えるよりも先に行動をしたくなる(行動を我慢している間は気持ちが落 ち着かない) ・転導性がある(様々な方向に意識が向いてしまい,何か行動をしていても,それ以外の ことに急に意識が向いてしまう) ・空間的な位置関係をとらえることが苦手 【運転状況】 3~4 年前までは通勤でほぼ毎日,往復 1 時間半程度,運転をしていた.しかし,何度か車をぶ つけることを経験し,現在はできる限り運転をしないようにしている. 【運転に関して自覚している問題特性および苦手な運転行動】 ・運転中に気になることがあると,それをしなければ落ち着かない ・一連の行動の途中で(最後まで終えずに)進めてしまう ・運転中にあちこちに意識が向いてしまう(転導性) ・後進,車庫入れが苦手 ・他者よりもまぶしさを強く感じる 【運転中に気になることがあると,それをしなければ落ち着かない】 運転中に不必要な行為を思い立った時にしてしまう.たとえば,メガネの曇りが気になる とメガネをはずしてメガネを拭く,唇が渇いたと思うとリップクリームを取り出して塗るな どの行為をしてしまう.なお,メガネをはずしてメガネを拭く行為をしている時には,ハン ドルから一瞬であっても手が離れてしまうこと,メガネをはずして運転すれば前方が見えに くくなることは頭ではわかっているが,やらなければ気持ちが落ち着かない.また,運転中 に携帯電話に着信があると,携帯電話を見たいという衝動が強く働き,停車するまで待たな ければならないことに激しいストレスを感じる. さらに,周囲の車から嫌がらせと取れるような行動を受ける(不必要にクラクションを鳴 らされる,煽り運転をされる)と,つい追いかけていき,一言物申したい,あるいは警察に 突き出したいという衝動にかられる.何度もそのようにしようとしたが,同乗者からの懇願 でやめている. 9/49

(14)

【一連の行動の途中で(最後まで終えずに)進めてしまう】 他者と共用の自動車を運転する際に,バックミラーの位置や座席の位置を直さずに発進し てしまう.発進してから,バックミラーや座席の位置が合っていないことに気づく.なお, 気づいた時にすぐに直したいという衝動から,運転しながらバックミラーや座席位置を直し てしまうという別の問題も併せて生じる. また,駐車する際に,サイドブレーキをかけずにエンジンを切ることもある.後日,車に 乗る時に,サイドブレーキがかかっていない状態になっていることに気づく. 【転導性】 運転中,歩道に犬を連れた人が歩いている,小さな子どもを連れた人がいる,きれいな女 性がいるなどと,自分が好きなものを見つけると,つい気がそれてしまう.そもそも周囲に どんな人がいて,何があるのかなどを同乗者の誰よりも早く見つけられるため,あちこちに 気が向きやすい.同乗者から,好きなものが歩道にいることに気がつくと,車体がどんどん 歩道に寄っていくと指摘される. 【後進・車庫入れ】 何度か後進する際に擦ったりぶつけたりしているため,苦手意識が強くある.後進の際に は,ハンドルをどちらに回せばよいのかがわからなくなることがある.また,後進する際の スピードが速く,勢いよく車止めにぶつかる.同乗者から「スピードを落として後進するよ うに」と指摘されることがあるが,ゆっくり運転しようとすると,気持ちが落ち着かなくな る.なお,他者の運転する車に同乗する際に,ゆっくりと後進していると,「もっと速く行 けないのか」とイライラしてしまう. 【他者よりもまぶしさを強く感じる】 夜間に対向車のライトがまぶしく,運転をしづらいと感じる.特に対向車がハイビームに したまま運転していると,まぶしくて目をあけていられない. 【上記以外で同乗者から指摘されること】 何らかの行動を起こそうと思った瞬間に周囲の確認をせずに動こうとしてしまう.たとえ ば,車線変更の必要性を感じたら,すぐに車両を動かそうとして周囲の確認がおろそかにな ってしまう. 2.3.4 ADHD 不注意型のドライバーへのヒアリング調査 1 【プロフィール】 30 代 女性 ADHD 不注意型(診断あり,ただし,運転免許取得時は診断なし) *具体的な特徴 ・気が散りやすい ・忘れ物が多い ・注意の配分が悪く,1 つに注意を向けると別のことに注意が向かなくなってしまう ・慌てるとパニックになりやすく,次々と問題行動(失敗)を起こしてしまう 10/49

(15)

・興味のないことをしていると,すぐに眠くなる 【運転状況】 ほぼ毎日のように運転をしている. 【運転に関して自覚している問題特性および苦手な運転行動】 ・うっかりミスが多い ・注意が散漫で,周囲の動きやノイズに惑わされてしまう ・注意の配分が悪い ・いつもと違う状況になると慌ててしまい,不適切な運転行動をとってしまう ・運転中に極度の眠気を感じる 【うっかりミスが多い】 車両のドアを開閉する際に,隣の車や壁との隙間を考えることを忘れて思い切りドアを開 けて,ドアをぶつけてしまうことがよくある.また,シートベルトをしめ忘れたり,サイド ブレーキを解除し忘れて発進しようとしたり,ギアを間違った位置に入れて走り始めようと したりすることが頻繁にある. 運転中は方向指示器を出し忘れたり消し忘れたりしたまま,またトンネルを通過後にライ トを消し忘れたまま運転していることも多い.なお,トンネル内を走行している途中で見づ らさに気づいて,灯火をすることがよくある.同じく,夕方,暗くなってきても灯火を忘れ て,同乗者に指摘されることがよくある. また,信号が変わったことに気がつかず,ボーっとしていて,後続車からのクラクション で気づくことが頻繁にある. 【注意が散漫で,周囲の動きやノイズに惑わされてしまう】 普段,あまり使わない道路を走行している時には,「ここに,こんなお店ができた」「あの建物, なんだろう」などと周囲のことに注意がそれてしまい,前方の車が停止していることに気がつか ずに危うく追突しそうになることがよくある. 右折専用レーン,直進専用レーン,左折専用レーンに分かれている道路で,隣のレーンの車両 が動くと,そちらに気が向いてしまい,自分のレーンは赤信号であるにもかかわらず,つられて 動いてしまうことがある.同様に,歩車分離の信号で,自動車用の信号は赤であるにもかかわら ず,歩行者用の信号が青になったことを見て,進んでしまうことがある.さらに,雨の日には, ワイパーの動きが気になって運転に集中できない. 【注意の配分が悪い】 交差点で右折する際に,対向車が来ないことしか確認しておらず,歩道上に人がいることに直 前まで気がつかなかったことがよくある.同じく,信号のない横断歩道で歩行者が横断しようと していることに気がつかずに飛び出してしまうことも多い. また,右左折の時に左右を確認しなければならないことはわかっているので,首を左右に振っ ているが,確認する行為をしていても,実際には確認できておらず(首をふる行為をしていただ 11/49

(16)

け),対向車や歩行者がいたことがよくある. 車庫入れの時に,前後左右に注意を向けなければならないが,そのうちの一方向しか注意を向 けられずに車体を壁などに擦ってしまうことがある.たとえば,後方を気にしていると,前方を 壁に擦ってしまう,右側に注意していると左側がぶつかっている(ぶつかりそうになっている). さらに,同乗者と会話をしながら運転していると,曲がるべき道を通り過ぎたり,前方の確認 がおろそかになってしまい,信号を無視してしまうことがある. 加えて,料金所やドライブスルーなどで支払いをしている時に,支払いをすることに集中して しまうため,ブレーキの踏み方が甘くなり,気がつくと車が少しずつ動いている. 【いつもと違う状況になると,慌ててしまい,不適切な運転行動をとってしまう】 日常的に使用している道であれば,ある程度,落ち着いて運転ができるが,知らない場所に行 くときに,気持ちが焦ってしまい,同乗者に道案内をしてもらっていたり,カーナビを起動して いたりしても,その音声が耳に入ってこなくなってしまう. 焦っていると,アクセルとブレーキの位置がわからなくなったり,「左に曲がれ」と言われても, とっさに左右もわからなくなったりするなど,パニックになりやすい. また,知らない道で右左折した後に複数の車線があると,どの車線に入ればよいのかがわから ず,ウロウロしてしまうことがある.免許取得後の2~3 年間は,反対車線に入ってしまうことが 何度かあった. さらに,子どもの頃から,待ち合わせに遅れずに行くことが苦手で,遅刻の常習犯であった. 大人になっても,出発時間がギリギリになってしまう.そのため,運転中も焦ってしまい,周囲 への注意がより散漫になってしまう.また,気が急いて,1 分おきに時計の時刻を確認してしま い,運転中でも周囲の状況よりも時計を見ることを優先して,ぶつかりそうになることがある. 【運転中に極度の眠気を感じる】 普段から,興味のないことをしている時に,突如,強い眠気が襲ってくる.車の運転をしてい る際も睡魔に襲われることが何度となくある. 【上記以外で同乗者から指摘されること】 右左折する前に,減速し始めるのが遅い.そのため,右左折時に急ブレーキのようになること を同乗者が非常に嫌がる.また,同乗者と会話していると,車線の中央を走っておらず,左や右 に寄りすぎたり,フラフラすると指摘される. 2.3.5 ADHD 不注意型のドライバーへのヒアリング調査 2 【プロフィール】 40 代 女性 ADHD 不注意型(診断なし) *具体的な特徴 ・片づけができない ・物をよく失くす ・注意の配分が悪く,1 つに注意を向けると別のことに注意が向かなくなってしまう ・忘れ物が多い 12/49

(17)

・複数のことを同時に行う時や突発的なことに対応する時には,気持ちが焦ったり不安が高ま ったりして思うように動けなくなる. 【運転状況】 通勤時にほぼ毎日,30~40 分程度の運転をしている. 【運転に関して自覚している問題特性および苦手な運転行動】 ・注意の配分が悪い,2 つ以上の行動を同時にできない ・車両の幅を認識することが苦手 ・気が急いて,慎重さに欠く運転をする 【注意の配分が悪い,2 つ以上の行動を同時にできない】 直進しているだけならばいいが,右左折などの様々なものに注意を向けなければならない ときにヒヤリハット体験が多い.たとえば,細道から右折する際に,2 回の接触事故を起こし ている.2 回とも,左からの走行車両があるかどうかに注意が向きすぎており,右から来る車が 動いていることに気付かず,車を前進させたことが原因であった. また,同乗者と会話をしながら運転していると,前方への注意が散漫になってしまい,危うく 中央分離帯や縁石にぶつかりそうになったことが何度となくあった. 【車両の幅を認識することが苦手】 車両感覚がなかなか身につかず,他の車を避けようとして壁に接触してしまうことがたびたび あった.特に代車の場合には,より車両感覚を持てず,駐車してある車両にぶつけてしまうこと があった. 【気が急いて,慎重さに欠く運転をする】 特に早く着く必要もなく,時間的に余裕があるにもかかわらず,早く目的地に着きたくて焦っ て運転してしまう.ゆっくり走っていると気持ちがザワザワしてきて,いてもたってもいられな くなるような感覚がある.このような時に同乗者から「車間距離が近い」「スピードが出ている」 と指摘されることが多い. 2.3.6 自閉症スペクトラムのドライバーの家族へのヒアリング調査 【ドライバーのプロフィール】 50 代 男性 自閉症スペクトラム(診断なし) ※ドライバー本人は,自身に自閉症スペクトラムの傾向があることにも,運転行動に問題が あることにも無自覚である. *具体的な特徴 ・注意視野が狭く,様々な方向に注意を向けられない ・周りの状況や雰囲気を理解することが苦手 ・臨機応変に行動できない 13/49

(18)

【ドライバーの運転状況】 週に2~3 日,近い距離を運転する程度 【ドライバーの運転における問題となる特性,行動】 ・注意視野が狭く,運転中は前方の狭い範囲しか見ていない ・2 つ以上の行動を同時に行えない ・運転規則を忠実に守ろうとするあまりに,実際の状況に合わない運転になる ・知らない道を通ることが苦手である 【注意視野が狭く,運転中は前方の狭い範囲しか見ていない】 運転中は前方の非常に狭い範囲しか注意が向いていない.そのため,歩道のない狭い道の 脇を歩行者が通行していることに気がつかず,スピードを緩めることなく,間隔をとること もなく,全速力で歩行者の横をすり抜けていく.また,歩行者の存在に気づいたとしても, 歩行者のすぐ近くに来てからである. また,一般的には,歩行者用信号を手がかりにして,車両用の信号がもうすぐ赤になりそ うだなどと予測を立ててスピードを調整するが,そのような行動を一切とることができな い.そのため,本人にとっては急に信号が変わったと感じ,信号手前で急ブレーキを踏むこ とが多い. さらに,他車が合流したい,車線変更したいという合図を出していても,視界に入ってい ないことが多く,減速してその車両を入れるなどの融通をすることができない. 【2 つ以上の行動を同時に行えない】 考え事をしながら運転をしていると,スピードが安定せず,極端に遅くなったり急に早く なったりする.また,会話をしながら運転していると,前方の確認がおろそかになる. 【運転規則を忠実に守ろうとするあまりに,実際の状況に合わない運転になる】 運転規則を忠実に守ろうとする.たとえば,高速道路で追い越し車線を通行していても, 制限速度を忠実に守り,流れに乗らずにのろのろと運転する. また,一時停止の線で停車して左右の確認をするが,その後に実際に車両や歩行者などの 往来がないかどうかを確認しないままに進んでしまう.特に,図2.2 のように見通しの悪い 交差点においても,一時停止の線でしか停止せず,交差点の入り口で再度一時停止をして左 右を確認することを怠ってしまう.そうすると,歩行者や右側から来る車両を見落とすこと になる. 【慣れていない道を通ることが苦手である】 はじめて通る道では,極端に緊張をし,より注意視野が狭くなってしまう.ドライバー本 人も,慣れていない道を通ることを嫌がり,決めた道を通ることにこだわる. 14/49

(19)

図2.2 見通しの悪い交差点で一時停止の線のみでしか停止しない 2.3.7 ADHD 衝動型のドライバーの家族へのヒアリング調査 【ドライバーのプロフィール】 30 代 女性 ADHD 衝動型(診断あり,ただし,運転免許取得時は診断なし) *具体的な特徴 ・常に気持ちが焦って,落ち着かない ・興奮しやすい ・常に身体のどこかが動いている(じっとすることができない) 【ドライバーの運転状況】 4,5 年前までは,日常的に運転をしていたが,擦る,ぶつける,追突するなどの事故を頻回起 こしたことから,家族の説得で,現在は運転をやめている. 【ドライバーの運転における問題となる特性,行動】 ・運転中に気持ちが落ち着かず,常に焦っている ・思い立ったらすぐに行動してしまう ・細い路地や駐車場からの出庫などの場合に慎重さに欠ける運転をする ・身体を動かしながら運転している 【運転中に気持ちが落ち着かず,常に焦っている】 時間に余裕があるにもかかわらず,焦っていて,スピードが速い.前に車がいると,無理 に抜かしてその前に進もうとする.やたらと車線変更をして速く行こうとする.前の車のス ピードが遅いと,車間距離が詰まってしまい,結果的に前を走る車が煽られていると感じる ような運転をする.加えて,他の車に抜かされると,追い抜き返そうとしてしまう. また,信号待ちをしている時に,青になる前に発進していたり,急発進をしたりする.以 前,追突事故を起こした際も,前に車両が停まっているにもかかわらず,信号が変わる前に 急発進してしまったことによる.前の車がなかなか出発しなかったりすると,クラクション を鳴らすことがある. 15/49

(20)

さらに,興奮している時には,アクセルを強くふんでしまうことから,いつもよりもスピ ードが速くなる(ドライバー本人は自覚がない). 【思い立ったらすぐに行動してしまう】 車線変更や右左折,停車をしようと思い立ったらすぐに行動を起こしてしまうため,周囲 の確認や方向指示器を出すことを忘れてしまう.また,運転中に行きたいお店を見つけた ら,お店に行くことしか頭になく,道の端に寄ることもなくその場に車を停めてお店に行く ことが何度もあった. 【細い路地や駐車場からの出庫などの場合に慎重さに欠ける運転をする】 細い路地から右左折をする際や狭い駐車場から出庫する際には,周囲の壁や障害物などに ぶつからないように徐行しながら慎重に運転するのが一般的であるが,このドライバーは, 徐行することもなく,車をぶつけることがないかをサイドミラーなどで確認することなく, 通行しようとする.そのために何度も車をぶつけたり擦ったりしていた. また,車を発進する際も周囲の状況の確認を怠るため,歩行者がいることに気づかなかっ たり,障害物にぶつかったりする. さらに,駐車場内などの徐行すべき場所で,スピードを落とさずに走行してしまったり, 幅の狭い車道で制限速度以上のスピードで走行してしまったりする. 【身体を動かしながら運転している】 運転中も身体が動いてしまう.そのため,背もたれに身体がふれると洋服の布地が肌にこ すれて不快に感じることから,背もたれをすべて倒した状態にして運転をしている.危険な 姿勢であるとわかっていても,やめられない. 2.3.8 ADHD 不注意型+自閉症スペクトラムのドライバーの家族へのヒアリング調査 【ドライバーのプロフィール】 20 代 男性 ADHD 不注意型+自閉症スペクトラム(診断なし) ※ドライバー本人は,自身にADHD 不注意型や自閉症スペクトラムの傾向があることも運転 行動に問題があることも無自覚である. *具体的な特徴 ・マルチタスクが苦手である ・物事を勝手な解釈で思い込み,自分ルールを作る ・周囲の状況を把握することが苦手である ・物事を計画的に実施することが苦手である ・他者から叱責を受けた状況をひどく不安がるが,改善することなく,同じ失敗を繰り返す 【ドライバーの運転状況】 勤務時に週に2~4 日,1 日あたり 1,2 時間程度の運転をする.これまでに,社用車を運転中 に事故を起こして廃車にした経験がある.日常的にこする,ぶつけるといった事故を頻繁に起こ している. 16/49

(21)

【ドライバーの運転における問題となる特性,行動】 ・マルチタスクが苦手である ・自分勝手な運転ルールを作成する ・運転の見通しがあまい ・車体感覚が身についていない ・運転上で上手くいかなかったことが1つ あると焦り,次々とミスを起こす 【マルチタスクが苦手】 同乗者と話しながら運転していると,目の前ではなく,一つ先の信号を見て行動してしまう(目 の前の信号は赤であり,一つ先の信号が青であったため,結果的に信号無視をしてしまう),曲が るべき道を通り過ぎてしまうことはよく起こる.また,カーナビの音声が聞こえると,傍目から も慌てていることがわかるほどパニックになっており,音声が全く耳に入っていない. 運転免許を取得してから 10 年近く経過しているにもかかわらず,右左折の前の一連の行為の 手順がわからなくなってしまい,いくつかの行為(たとえば,方向指示器を出す,周囲を確認す るなど)を忘れてしまう.減速せず,かなりのスピードで交差点の手前まで来て,急ハンドルで 右左折をすることも多い.その時には,車両の後方部が膨らんでしまい,隣の車両にはみ出して しまう. さらに,赤信号で停止している際に,同乗者と会話をしていると,ブレーキのふみ方が甘くな り,車体が少しずつ前に動いてしまう. 【自分勝手な運転ルールを作成】 自動車免許を取得した後の数年間は,右折は渋滞の激しい道路あるいは対向車がほとんど来な いような細い道路しか経験がなかった.そのため,同乗していた上司から,「右折の時には,対向 直進車と右折車が交互に進む」と教わっていた.それを勝手に一般化してしまい,どのような時 も右折時は「対向直進車と右折車が交互に進む」と思い込んでしまった.ある時,ある程度の車 の往来がある交差点(矢印信号なし)で右折しなければならなくなった時に,上記のルールを疑 わずに運転し,1 台の対向直進車が交差点に進入した後に後続の直進車がいるにもかかわらず, 右折してしまった.後続の直進車及びその後ろの車が急ブレーキをかけて事なきを得たが,危う く大事故につながるところであった. さらに,教習所に通っている際に,指導者から「高速道路でブレーキを踏んではいけない」と 指導されたようである(ただし,指導者は「高速で走行している際にブレーキを踏んではいけな い」という意味で指導している).しかし,本人は「高速道路上では何があってもブレーキを踏ん ではいけない」(高速道路でブレーキを踏むと,車がスピンする)と解釈していた.実際に,高速 道路を走行している際に,数キロ先に渋滞が発生し,車間距離が徐々に詰まり始め,本人がブレ ーキを踏んでよいのかどうか,パニックになっていた. 【運転の見通しがあまい】 右左折をしなければならないことがあらかじめわかっていれば,それを見越して,先にその車 線に移動をしておけばよいが,その見通しをもてないために,曲がる直前になって無理な車線変 17/49

(22)

更をすることがある.また,マルチタスクが苦手であることにも関係するが,方向指示器を出さ なくてはならない箇所に到達していても,方向指示器を出すことを忘れており,曲がる直前(非 常に遅いタイミング)で方向指示器を出す. また,渋滞している道路で,前の車についていき,横断歩道を渡り切れずに停車せざるを得な い状況もよくある. 【車体感覚が身についていない】 店舗の駐車場に入る際,出る際に,頻繁に縁石に乗り上げる.また,自動発券機などでは幅寄 せして停めることができない.さらに,中央線のない狭い道では,対向車が来ていると,すれ違 えるのかがわからず,対向車が通り過ぎるまで停止していたり,逆に譲り合うこともなく強引に 道の真ん中に寄って運転していたりする.また,幅の狭い道で障害物を避けようとして,必要以 上に右に寄ってしまい,対向車とぶつかりそうになることもある.加えて,車道に停車する際に, 幅寄せをすることができない. 【運転中にうまくいかなかったことがあると焦り,次々とミスを起こす】 一つでも,運転中にうまくいかなかったことがあると,気持ちが動揺してしまって,次々 と運転ミスを起こしてしまう.たとえば,あるお店に入ろうとしたが,駐車場の入り口を通 り過ぎてしまった場合に,元の道まで戻ろうとするが,一方通行の標識を見落として逆走し てしまったり,左折時に縁石に乗り上げてしまったり,駐車場で壁に擦ったりする. 18/49

(23)

第 3 章

発達障害傾向のあるドライバーの運転特性に関する

チェックリストの作成

3.1 目的 第2 章の発達障害傾向のあるドライバーへのヒアリング調査の結果より,発達障害の特性 によって生じる運転上の問題行動や特性を整理し,チェックリストを作成する. 3.2 方法 第2 章のヒアリング調査の中で語られた運転上の問題行動や特性として挙げられた項目を すべて抽出した上で,それらが発達障害の特性に起因するものと考えられるかについて,発 達障害を専門とする研究者(発達障害に関する研究論文や著書が5 編以上ある人)5 名に判 定してもらった. 5 名中 4 名以上が発達障害に起因すると考えた項目をチェックリストの項目として採択 し,その後,採択した項目をカテゴリーに分類する作業をした.カテゴリーに分類の手順 は,上記の5 名で内容が似ている項目を集めて,それらにカテゴリー名をつけた.なお,運 転上の問題行動や特性が生じる背景を考えて分類した.ただし,分類の際に判定者の意見が 分かれた場合には,協議の上で決定した. 3.3 結果 第2 章で語られた運転上の問題行動や問題となる特性から,86 項目を採択し,表 3-1 に 示したように,【こだわり】(5 項目),【周囲の動き,ノイズに惑わされる】(9 項目), 【注意視野が狭い,状況判断ができない】(18 項目),【不注意】(12 項目),【2 つ以 上の行動をすることが苦手】(4 項目),【衝動的な行動】(13 項目),【見通しの甘さ】 (6 項目),【左右,後方の視点の変化が弱い】(3 項目),【車体感覚がイメージできな い】(8 項目),【対向車,後方車のスピード,距離感がわからない】(3 項目)【その 他】(5 項目)に分類した. 表3-1 発達障害傾向のあるドライバーの運転チェックリスト 【こだわり】 信号を忠実に守るため,右折時に黄色や赤になった時に渡ってよいのかがわからない 制限速度を忠実に守るため,スピードが遅い 一時停止の線で停車する行為を守ることだけに意識が向き,実際に車などの往来がないか を確認しない 決めた道を通ることにこだわる 交通法規を自分勝手に解釈し,自分流のルールを作る 19/49

(24)

【周囲の動き,ノイズに惑わされる】 目の前ではなく,その先の信号を誤って見て行動してしまう(1つ先の信号が青で,自分 の手前の信号が赤であった場合に,信号無視をしてしまう) 矢印信号のため,隣のレーンと自分のレーンで信号が異なる場合に,自分のレーンは赤な のに隣のレーンの車の動きにつられて進んでしまう 歩車分離の信号で,歩行者用の信号を見て行動してしまう 走行距離の数値,時速の数値ばかりを見て,前方確認ができていない バックミラーばかり気にして,前方確認がおろそかになる 周囲の動きに気を取られすぎて,前方の確認がおろそかになる 雨の日にワイパーの動きが気になって運転に集中できない 同乗者と話をすると前方の確認がおろそかになる 同乗者と話をすると道を間違える(曲がるべきところを行き過ぎる) 【注意視野が狭い,状況判断ができない】 車道の脇を通る歩行者などに気づくのが遅い 一時停止の標識を見落として,止まれない 右左折時に周囲を確認するそぶりをしても,実際には見ていない 車線変更する際に周囲の確認が甘い ドアを開ける際に隣に車や壁との幅を考えない 他の車が出している合図に気づけない(隣車線を走行する車が方向指示器を出していても 気がつかない) 信号がない横断歩道前で歩行者が渡ろうとしていることに気がつかない 右左折時に歩行者が横断歩道を歩いていることに気がつかない 歩行者が脇を通行していてもスペースを空けずにすり抜けていく 歩行者が脇を通行していても減速しない 走行中に周囲の動きと無関係に速度が速くなったり遅くなったりする 追い越し車線で流れに乗らずにのろのろと運転する 店舗の駐車場入り口前で停車してしまう 右左折後に複数の車線がある場合に,どの車線を走行すればよいのかがわからず,ウロウ ロする 前の車両が大型車両の場合に,信号の確認をせずに大型車に続いて進んでしまう 運転に不安を感じると,すぐにブレーキを踏む 駐車場内などの徐行する場所でスピードを落とさない 右折レーンがない交差点で右折する際に後方車両の邪魔にならないように右に寄ることが できない 【不注意】 周囲の状況を確認せずに発進してしまう 発車する際にサイドブレーキの解除を忘れる シートベルトをしめ忘れる 発車前にミラーや座席の位置を直すのを忘れ,発車後に行う 20/49

(25)

トンネル内での灯火を忘れる トンネルを出た後にライトを消し忘れる 暗くなっても灯火しない 方向指示器を消し忘れる 方向指示器を出し忘れる 信号が変わったことになかなか気づかずにボーっとしている ギアを入れ間違える 駐車時にレバーをP に入れない,あるいはサイドブレーキをかけずにエンジンを切る 【2 つ以上の行動をすることが苦手】 カーナビの音声や同乗者の指示に慌ててしまう カーナビの音声や同乗者の指示が耳に入っていない(無視している) 赤信号で停車中にブレーキの踏み方があまくなり,少しずつ動く 料金所等で支払いをしていると,ブレーキの踏み方があまくなり,少しずつ動く 【衝動的な行動】 運転中,運転に不必要な行為を思い立った時にしてしまう 車線変更をしたいと思いついた瞬間に周囲を確認せずに行動する 信号が青になる前に発進する 周囲の運転行動にすぐにかっとなる 運転中に行きたいお店を見つけるとその場に車を停めて行こうとする 興奮している時にスピードが速くなる(アクセルを強く踏む) 前に車がいると,無理に抜かして,その前に進もうとする 前の車が遅いと煽ろうとする やたらと車線変更をする 追い抜かれると,追い抜き返そうとする 不必要にクラクションを鳴らす 急発進をする 後進の速度が速い(車止めに勢いよくぶつかる) 【見通しの甘さ】 ブレーキを踏むタイミングが遅く,急ブレーキになる 車間距離が近すぎる 右左折時に減速をしない 左折する際に膨らんでしまい,隣の車線にはみ出る 方向指示器を出すタイミングが遅い 交通量の多い場所で,前方の見通しを持てないために進んでしまった結果,停車してはい けない場所に停車してしまう(交差点や横断歩道に停車せざるを得ないなど) 【左右,後方の視点の変化が弱い】 後進する際にハンドルをどう回せばよいのかがわからない 左右を瞬時に判別できない 21/49

(26)

カーブミラーのどちらを見て右左折すればよいのかがわからない 【車体感覚がイメージできない】 車線の中央を走行しない(左や右に寄りすぎている) 車の走行位置が安定せず,左右にフラフラしている 幅が狭く,中央線がない道路で,他の車とすれ違えない 幅の狭い車道で高速走行をする 幅の狭い車道で障害物を避けるために必要以上に右により,対向車とぶつかりそうになる 自動発券機等の場所で,幅寄せができない 店舗の駐車場から右左折で出る場合に,縁石に乗り上げる 車道に停車する際に幅寄せをしない 【対向車,後方車のスピード,距離感がわからない】 合流のタイミングがわからない 右折時に対向車のスピードや距離がわからず,なかなか曲がれない 幅の狭い車道で,対向車との距離感がわからず,自転車や原付を追い越すタイミングをつ かめない 【その他】 カーナビが示す「〇m 先」がどこを指しているのかがわからない あせると,アクセルとブレーキの位置がわからなくなる 運転中に眠気を感じる 対向車のライトのまぶしさを強く感じる 適切な運転姿勢をとらない 22/49

(27)

第 4 章

チェックリストをもとにした発達障害傾向のあるドライバーの

運転行動の観察調査およびヒアリング調査

4.1 目的 第3 章で作成したチェックリストをもとに,発達障害傾向のあるドライバーが実路におい て,どのような運転行動をとるのかを明らかにする. 4.2 方法 自動車運転免許を取得後3 年以上が経過している発達障害傾向のあるドライバー(26 名)に実路を約1 時間走行してもらい,運転行動を観察した.なお,ドライバーのプロフィ ールを表4-1 に示した.運転行動を観察する際に,筆者らのうちの 1 名が同乗し,チェッ クリストで運転行動を観察するとともに,ドライブレコーダーを装着し,記録された内容を 分析した.なおドライブレコーダーは,写真4-1 のように前方とドライバーの目線の両方が 同時に撮影されるように装着した.また降車後に運転に関するヒアリング調査を行った. また,妊娠中,運転をしばらくしていないなどの理由から,運転行動の観察調査の協力は できないが,ヒアリング調査には協力が可能であると申し出た人(9 名)および発達障害傾 向のあるドライバーの家族(11 名)にはヒアリング調査のみを実施した.ヒアリング調査 を実施した人の内訳を表4-2 に示した. さらに,対照群として,自動車運転免許を取得後3 年以上が経過している定型発達の(発 達障害傾向が認められない)ドライバー(10 名)に対して,発達障害傾向のドライバーと 同様の観察調査およびヒアリング調査を行った. ヒアリング調査では,過去1 年間を思い出し,項目として挙げられている行為があてはま るかどうかを回答してもらった. 表4-1 運転行動を観察した発達障害傾向のあるドライバーの内訳(n=26) 自閉症スペクトラム 27%(7 名) ADHD 不注意型 23%(6 名) ADHD 衝動型 23%(6 名) 自閉症スペクトラム+ADHD 不注意型 15%(4 名) ADHD 衝動型+ADHD 不注意型 12%(3 名) 表4-2 ヒアリング調査を行った発達障害傾向のあるドライバーの内訳(n=46) ADHD 衝動型 26%(12 名) 自閉症スペクトラム 22%(10 名) ADHD 不注意型 22%(10 名) 自閉症スペクトラム+ADHD 不注意型 17%( 8 名) ADHD 衝動型+ADHD 不注意型 13%( 6 名) 23/49

(28)

写真4-1 ドライブレコーダーに記録される画面の一部 4.3 結果 運転行動を観察した結果,ドライバーの行動として認められた割合を表4-3 に,観察中に 生じた不適切な運転行動の例を表4-4 に示した.また,ヒアリング調査を行った結果,あて はまると回答した人数を表4-5 に,ヒアリング調査の中で語られた不適切な運転行動の例を 表4-6 に示した.なお,表 4-3,表 4-5 ともにドライバーに複数の発達障害傾向がある場合 には,それぞれに計数した(例えば,ADHD 不注意型+自閉症スペクトラムの場合には, ADHD 不注意型と自閉症スペクトラムに計数).また,運転行動を観察した際に,項目に示 された状況に一度もならなかった場合には,[-]と記した. 表4-3 運転行動の観察 不注意型 (n=13) 衝動型 (n=9) 自閉症 (n=11) 定型発達 (n=10) 【こだわり】 信号を忠実に守るため,右折時に黄色や 赤になった時に渡ってよいのかがわか らない 0 0 2 0 制限速度を忠実に守るため,スピードが 遅い 0 0 7 0 一時停止の線で停車する行為を守ること だけに意識が向き,実際に車等の往来 がないかを確認しない 2 0 4 0 決めた道を通ることにこだわる 2 0 3 0 交通法規を自分勝手に解釈し,自分流の ルールを作る 0 0 1 0 【周囲の動き,ノイズに惑わされる】 目の前ではなく,その先の信号を誤って 見て行動してしまう 0 0 0 0 24/49

(29)

矢印信号のため,隣のレーンと自分のレ ーンで信号が異なる場合に,自分のレ ーンは赤なのに隣のレーンの車の動き につられて進んでしまう 1 0 0 0 歩車分離の信号で,歩行者用の信号を見 て行動してしまう 1 0 0 0 走行距離の数値,時速の数値ばかりを見 て,前方確認ができていない 0 0 3 0 バックミラーばかり気にして,前方確認 がおろそかになる 0 0 7 0 周囲の動きに気を取られすぎて,前方の 確認がおろそかになる 4 0 0 0 雨の日にワイパーの動きが気になって運 転に集中できない - - - - 同乗者と話をすると前方の確認がおろそ かになる 8 1 6 0 同乗者と話をすると道を間違える(曲が るべきところを行き過ぎる) 4 1 2 0 【注意視野が狭い,状況判断ができな い】 車道の脇を通る歩行者等に気づくのが遅 い 4 0 3 0 一時停止の標識を見落として,止まれな い 5 1 4 0 右左折時に周囲を確認するそぶりをして も,実際には見ていない 6 0 4 0 車線変更する際に周囲の確認が甘い 3 0 6 0 ドアを開ける際に隣に車や壁との幅を考 えない 2 1 1 0 他の車が出している合図に気づけない 4 0 4 0 信号がない横断歩道前で歩行者が渡ろう としていることに気がつかない 5 0 3 0 右左折時に歩行者が横断歩道を歩いてい ることに気がつかない 4 0 3 0 歩行者が脇を通行していてもスペースを 空けずにすり抜けていく 3 2 4 0 歩行者が脇を通行していても減速しない 3 1 3 0 走行中に周囲の動きと無関係に速度が速 くなったり遅くなったりする 3 0 4 0 25/49

(30)

追い越し車線で流れに乗らずにのろのろ と運転する - - - - 店舗の駐車場入り口前で停車してしまう 7 0 9 0 右左折後に複数の車線がある場合に,ど の車線を走行すればよいのかがわから ず,ウロウロする 3 0 2 0 前の車両が大型車両の場合に,信号の確 認をせずに大型車に続いて進んでしま う 5 0 3 0 運転に不安を感じると,すぐにブレーキ を踏む 3 0 2 0 駐車場内などの徐行する場所でスピード を落とさない 1 0 0 0 右折レーンがない交差点で右折する際に 後方車両の邪魔にならないように右に 寄ることができない 4 0 4 0 【不注意】 周囲の状況を確認せずに発進してしまう 2 2 0 0 発車する際にサイドブレーキの解除を忘 れる 1 0 0 0 シートベルトをしめ忘れる 0 0 0 0 発車前にミラーや座席の位置を直すのを 忘れ,発車後に行う 0 1 0 0 トンネル内での灯火をし忘れる 2 3 0 2 トンネルを出た後にライトを消し忘れる 3 0 0 0 暗くなっても灯火しない 1 0 0 0 方向指示器を消し忘れる 2 0 1 0 方向指示器を出し忘れる 4 0 1 0 信号が変わったことになかなか気づかず にボーっとしている 2 0 0 0 ギアを入れ間違える 1 0 0 0 駐車時にレバーをP に入れない,あるい はサイドブレーキをかけずにエンジン を切る 0 0 0 0 【2 つ以上の行動をすることが苦手】 カーナビの音声や同乗者の指示に慌てて しまう 6 0 3 0 カーナビの音声や同乗者の指示が耳に入 っていない(無視している) 3 0 3 0 26/49

図 2.2 見通しの悪い交差点で一時停止の線のみでしか停止しない 2.3.7 ADHD 衝動型のドライバーの家族へのヒアリング調査 【ドライバーのプロフィール】 30 代  女性  ADHD 衝動型(診断あり,ただし,運転免許取得時は診断なし) *具体的な特徴 ・常に気持ちが焦って,落ち着かない ・興奮しやすい ・常に身体のどこかが動いている(じっとすることができない) 【ドライバーの運転状況】 4 , 5 年前までは,日常的に運転をしていたが,擦る,ぶつける,追突するなどの事故を頻回起 こしたことから,家
表 4-4 観察調査中の不適切な運転行動の例 【こだわり】 ・赤信号で停車する際には,フットブレーキを踏んでいるが,サイドブレーキも併せてか けないと気持ちが落ち着かない(フットブレーキだけでは,足元がうっかり離れてしま い,車が動いてしまうのではないかと不安になる)(自閉症スペクトラム・男性) . ・法定速度を守ることに固執し,周囲の状況がどうであっても速度をあげることはなかっ た.制限速度を大幅に上回って運転している車を見ると,毎回,危険であるとの発言 (「あの車,あんなにスピードを出したら,危ないよね
表 4-6 ADHD 不注意型のチェックリスト 【こだわり】 信号を忠実に守るため,右折時に黄色や赤になった時に渡ってよいのかがわからない 制限速度を忠実に守るため,スピードが遅い 一時停止の線で停車する行為を守ることだけに意識が向き,実際に車等の往来がないかを 確認しない 【周囲の動き,ノイズに惑わされる】 目の前ではなく,その先の信号を誤って見て行動してしまう 矢印信号のため,隣のレーンと自分のレーンで信号が異なる場合に,自分のレーンは赤な のに隣のレーンの車の動きにつられて進んでしまう 歩車分離の信号

参照

関連したドキュメント

例えば,2003年から2012年にかけて刊行された『下伊那のなかの満洲』

されていない「裏マンガ」なるものがやり玉にあげられました。それ以来、同人誌などへ

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

であり、 今日 までの日 本の 民族精神 の形 成におい て大

自閉症の人達は、「~かもしれ ない 」という予測を立てて行動 することが難しく、これから起 こる事も予測出来ず 不安で混乱

それから 3

自発的な文の生成の場合には、何らかの方法で numeration formation が 行われて、Lexicon の中の語彙から numeration

委 員:重症心身障害児の実数は、なかなか統計が取れないという特徴があり ます。理由として、出生後