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年長児食道異物の1例

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Academic year: 2021

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60 三菱京都病院医学総合雑誌 Vol.26 2019年 1.症  例 患者:13 歳,女児. 主訴:嘔吐. 既往歴:胸部が途中でつまった感じがすること はあったがその時期は不明である.食道異物の 既往はなし. 家族歴:特記すべきことはなし. 現病歴:X年 11 月 24 日にステーキを含む夕食 を食べ,その後,嘔吐が出現した.胸部の途中 に物がつまった感じがした.25 日に近医開業 医を受診されたところ,症状が比較的軽微で あったため,経過観察を指示されたが,家族の 希望もあり,翌 26 日に本科に紹介受診となっ た.発熱なし.便秘なし.下痢なし.発症直前 の生もの摂取既往なし. 初診時理学所見:体温 36.4℃,体重 42.4 ㎏. 意識清明.努力性呼吸なし.全身状態良好.軽 度咽頭発赤あり.心雑音なし.脈不整なし.肺 野は清.腹部は平坦で軟.腸蠕動音亢進して いるが圧痛なし.皮膚色良好.項部硬直なし. Kernig 徴候なし. 2.検査所見 初診時血液検査(表1)では明らかな炎症所見 を認めず,T.Bil アミラーゼ Fe のわずかな上 昇を認めたが病的意義は不明であった.また好 酸球の増多も認めず,その他特記すべき異常を 認めなかった.

年長児食道異物の1例

小児科  野崎 浩二,長田加寿子,本田 耕介 鶴見 文俊,本倉 浩嗣,北村 直行 消化器内科  田中 淳也,鍋島 紀滋 小児の食道異物は,低年齢の児に多く,年長児における食道異物は少ない.特に内視鏡 による摘出処置を要する例はまれである.また年長児では症状の特異性が乏しいため,異 物の診断が困難なこともしばしばある. 今回われわれは診断加療に至った年長児における食道異物の1例を経験したので報告す る. keyword:食道異物,年長児,内視鏡 㻯㻾㻼 㻜㻚㻜㻠㻌㼙㼓㻛㼐㻸 アルブミン 㻡㻚㻠㻌㼓㻛㼐㻸 㼀㻙㻮㻵㻸㻌 㻝㻚㻟㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻰㻙㻮㻵㻸㻌 㻜㻚㻝㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻵㻙㻮㻵㻸㻌 㻝㻚㻞㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻭㻿㼀㻌 㻞㻡㻌㻵㼁㻛㻸 㻭㻸㼀㻌 㻝㻟㻌㻵㼁㻛㻸 㻸㻰㻴㻌 㻝㻢㻢㻌㻵㼁㻛㻸 㼀㻼㻌 㻤㻚㻠㻌㼓㻛㼐㻸 㻭㻸㻼 㻥㻝㻡㻌㻵㼁㻛㻸 γ㻙㻳㼀㻼 㻝㻠㻌㻵㼁㻛㻸 コリンエステラーゼ 㻟㻢㻜㻌㻵㼁㻛㻸 㻯㻼㻷㻌 㻣㻥㻌㻵㼁㻛㻸 アミラーゼ 㻞㻜㻤㻌㻵㼁㻛㻸 クレアチニン 㻜㻚㻢㻤㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻮㼁㻺㻌 㻝㻣㻚㻡㻌㼙㼓㻛㼐㻸 尿酸 㻢㻚㻡㻌㼙㼓㻛㼐㻸 中性脂肪 㻠㻡㻌㼙㼓㻛㼐㻸 総コレステロール 㻞㻝㻠㻌㼙㼓㻛㼐㻸 血糖 㻣㻡㻌㼙㼓㻛㼐㻸 血中ケトン体 㻜㻚㻡㻌㼙㼙㼛㼘㻛㻸 㻺㼍㻌 㻝㻠㻝㻌㼙㻱㼝㻛㻸 㻷㻌 㻠㻚㻠㻌㼙㻱㼝㻛㻸 㻯㼘㻌 㻝㻜㻣㻌㼙㻱㼝㻛㻸 㻯㼍㻌 㻝㻜㻚㻜㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻼㻌 㻠㻚㻣㻌㼙㼓㻛㼐㻸 㻲㼑 㻝㻤㻡㻌μ㼓㻛㼐㻸 白血球数 㻡㻝㻢㻜㻌㻛μ㼘 赤血球数 㻠㻚㻤㻟㻌×㻝㻜㻢㻛μ㼘 血色素量 㻝㻠㻚㻡㻌㼓㻛㼐㼘 ヘマトクリット 㻠㻞㻚㻤㻌㻑 血小板数 㻞㻥㻜×㻝㻜㻟㻛μ㼘 好中球 㻢㻠㻚㻢㻌㻑 好塩基球 㻜㻚㻢㻌㻑 好酸球 㻝㻚㻞㻌㻑 単球 㻠㻚㻝㻌㻑 リンパ球 㻞㻥㻚㻡㻌㻑 表1.血液検査

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61 三菱京都病院医学総合雑誌 Vol.26 2019年 3.臨床経過 (1)11 月 26 日(発症後2日:初診時) 急性胃腸炎と考え,外来でメトクロプラミド 点滴+輸液後,対症療法薬(ドンペリドン+レ バミピド+整腸剤内服)を処方し経過観察,症 状がつづけば再診精査とした. (2)11 月 29 日(発症後5日) 胸部正中の違和感がつづき,嚥下困難がつづ くとのことで再診され,食道の通過障害を疑い, 同日レントゲン撮影後,院内消化器内科に紹介 した. 胸部レントゲン所見(図1)では,腫瘤影を含 め特記すべき異常所見を認めなかった.腹部レ ントゲン所見(図2)では,大腸がやや便秘状態 であったが,その他特記すべき異常所見を認め なかった. 同日院内消化器内科では,経過と診察所見か ら食品(肉塊)による食道異物,食道の熱傷など の可能性を考え,翌日内視鏡検査を行うことと なった. (3)11 月 30 日(発症後6日) 鎮静下に上部消化管内視鏡検査を施行した. 上部消化管内視鏡検査所見(図3)では食道 の第3狭窄部の口側と思われる部分に異物(肉 塊)を認めた.内視鏡で摘出したものは肉塊で (図4)長径は約 3㎝であった.異物除去後に内 視鏡で観察した食道壁(図5)は白斑を認め,好 酸球性食道炎が疑われたが,病理組織では好酸 球浸潤はなかった(< 1/HPF).また食道裂孔 ヘルニアは認めたが,逆流性食道炎の所見はな かった. 内視鏡検査後はエソメプラゾールの内服を開 始し,後日食道狭窄の評価と原因検索を進める こととなったが,症状は軽減し経過は良好で あった. (4)12 月 26 日(発症後1カ月) 食道狭窄の評価と精査のため上部消化管造影 検査および胸部 CT を施行した. 上部消化管造影(図6)では生理的第3狭窄部 付近に通常よりも強めの狭窄を認めた.胸部 CT(図7)では食道を外から圧排する病変を認 めず,その他異常を認めなかった. 図2.腹部レントゲン所見(発症後5日) 図1.胸部レントゲン所見(発症後5日)

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62 三菱京都病院医学総合雑誌 Vol.26 2019年 図4.内視鏡で摘出した肉塊 図3.内視鏡所見(異物) 図5.内視鏡所見(異物摘出後) 図6.上部消化管造影所見 図7.CT 所見(発症1カ月後)

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63 三菱京都病院医学総合雑誌 Vol.26 2019年 4.考  察 食道狭窄の原因について本症例での検討を行 う. 外部からの食道圧排については CT などから 否定的であった.先天性の食道狭窄は,成長障 害がないことと発症時期が遅いことからは否定 的であると思われた.内視鏡による視診では好 酸球性食道炎の所見があり,今回採取した病理 組織では好酸球浸潤は見られなかったが好酸球 性食道炎の反復による狭窄の否定はできなかっ た.また食道裂孔ヘルニアはあるものの,逆流 性食道炎の所見はなく,狭窄の原因とは思われ なかった.強皮症については特徴的な皮疹を認 めず,抗核抗体 抗 SCL-70 抗体,セントロメ ア抗体は陰性であることから否定的と思われ た.上部消化管造影検査では拡張所見などがめ だたず食道アカラシアも否定的であった. 文献上,口腔咽頭食道異物症例における介在 部位と年齢の関係としては全体的には 10 歳未 満と 50 歳代から 70 歳代に多い.その多くは魚 骨によるとされている.食道異物に限ってみる と高齢者に多く,小児では少ない傾向がある. また口腔咽頭食道異物症例における介在部位と 異物の種類については,食道異物では第三狭窄 部は少なく,その異物は食物か PTP が多いと される1) . 食道異物による臨床症状としては消化器症状 (嚥下障害,流涎,嘔吐,嘔気,食欲不振)(46%) の他,呼吸器症状(咳,喘鳴,発熱,肺うっ血, 無呼吸,肺炎)(33%)もありうるとされている. 異物誤飲からの時間により症状に変化があり, 異物誤飲から 24 時間以内は消化器症状が多く, 1週間以上になると呼吸器症状が多くなると報 告されている2,3) . また,口腔,咽頭,頸部食道異物の治療(異 物摘出)方法の部位別の差については,食道異 物においては内視鏡を必要とする確率が他の部 位の異物よりも圧倒的に高い4) . 今回の症例においては,主訴は嘔吐であった が,症状が軽微かつ非特異的であったこと,季 節的に感染性胃腸炎の流行時期であったこと, また食道異物がこの年齢では少ないことなどか ら当初は食道異物を鑑別診断にあげることがで きなかったが,嘔吐や胸部違和感その他何らか の消化器症状,呼吸器症状が遷延する場合は年 齢に関係なく食道異物の可能性を考慮すべきで あると思われる.また年長児の食道異物の症例 については狭窄病変の有無とその原因検索のた め,病理検査を含む精査が重要であると思われ る. 文  献 1)能田淳平,佐伯忠彦,大河内喜久 他:口 腔咽頭・食道異物例の臨床的検討.耳鼻咽喉 科・頭頸部外科 86(13): 1115-1120, 2014. 2)Macpherson RI, Hill JG, Othersen HB,

et al. : Esophageal foreign bodies in chil-dren: diagnosis,treatment,and compli- cations. AJR Am J Roentgenol 166(4): 919-924, 1996. 3)鎌裕一,加藤政彦:長期の喘鳴を呈した食 道異物の1男児例.日本小児呼吸器学会雑誌 26(2): 197-203, 2015. 4)松井祐興,鈴木豊,岡崎雅 他:10 年間の口腔・ 咽頭・頸部食道異物の検討.耳鼻咽喉科臨床 111(10): 701-706, 2018.

参照

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