液体麹におけるゴマ及びスキムミルクの添加による耐酸性α-アミラーゼの増強
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(2) 日本家政学会誌 Vol. 72 No. 5 (2021). 養装置を設計すれば,家庭で麹の安定的な製造も可能と. 削り取り,胞子懸濁液を調製した.胞子懸濁液は血球計. なる.しかしながら前述のように,液体麹法の大きな課. 算盤(サンリード硝子有限会社製)により胞子数を計数. 題は酵素生産性の低さにある.. し,初発胞子数が ₁×₁₀₇ spores/mL となるように調整し. 麹に求められる酵素としては糖質分解酵素が最も重要. た.. であり,原料の大部分を占める澱粉分子をランダムに加 水分解して低分子糖類を生成する耐酸性 α-アミラーゼ. (3)培養法. (ASAA)と α-₁, ₄ 結合あるいは α-₁, ₆ 結合を非還元性. 先行研究においてカビによる GA 生産性が高かった SLS. 末端よりグルコースを ₁ 分子ずつ加水分解するグルコア. 液体培地₁₀) を改変した培地(米粉 ₁.₀ g,リン酸水素二. ミラーゼ(GA)が挙げられる.澱粉の加水分解に対する. カリウム ₀.₁ g,塩化カリウム ₀.₁ g,トリプトン ₀.₆ g,. 速度方程式は α-アミラーゼとグルコアミラーゼの相乗作. 硫 酸 マ グ ネ シ ウ ム 七 水 和 物 ₀.₀₅ g,硫 酸 鉄 七 水 和 物. 用によりモデル化でき ,ASAA により GA の反応は早ま. ₀.₀₀₁ g,硫酸亜鉛七水和物 ₀.₀₀₀₃ g,塩化カルシウム. る.また白麹菌が生産するこれらの酵素は有機酸により. ₀.₀₂₁ g,クエン酸 ₀.₃₃ g,イオン水 ₁₀₀ mL,pH ₃)を. pH ₃以下となった焼酎もろみでも安定的である₃).. 基本液体培地とした.基本液体培地 ₁₀₀ mL を ₅₀₀ mL 容. そこで本研究では,ASAA に着目した.白麹菌は液体. の坂口フラスコ(株式会社三商社製)に入れ,シリコ栓. 培養により amyA によってコードされた非耐酸性 α- アミ. (アズワン株式会社製)をした後,オートクレーブによる. ラーゼは生産するが,asaA によってコードされた ASAA. 滅菌(₁₂₁℃, ₂₀ min)を行った.その後,胞子懸濁液を. をほとんど生産しないからである₅)₈).つまり,液体培養. 培地に対して初発胞子数が ₁×₁₀₇ spores/mL になるよう. 法は ASAA が少なく,発酵効率が悪くなることから,. 接種した.培養は振とう培養器(BR-₁₈₀LF,タイテック. ASAA 活性を向上させることが大きな課題解決につなが. 株式会社製)を用いて,振とう速度 ₂₀₀ rpm で₃₀℃,₇₂. る.カビが生産する ASAA などの糖質分解酵素は培地成. h 培養を行った.. ₇). 分に大きく影響を受けることがこれまでに報告されてい る₉)₁₀).また酒税法₁₁)により,焼酎醸造,特に本格焼酎. (4)乾燥菌体重量(DMW)測定法. 醸造に使用可能な穀類や国税庁長官の指定する₄₉種類の. 培養液 ₁₀₀ mL をろ紙(ADVANTEC No.₂,東洋濾紙株. 物品が定められていることから,本研究ではこの指定品. 式会社製)を用いて吸引ろ過後,乾燥器(F₀-₃₀W,東. 目の中から栄養価の高い牛乳やスキムミルクと,亜鉛の. 京硝子器械株式会社製)を用いて,₁₀₅℃,₂₄ h で乾燥. 豊富なゴマに着目をして,焼酎麹として実用化すること. を行った後,秤量した.ろ液は粗酵素液として,酵素活. を視野に入れた液体麹による ASAA 生産の増強を検討し. 性の測定に使用した.. た.. 2.実験方法. (5)培養液の pH 測定法 pH メーター(METTLER TPLEDO 社製)を用いて粗. (1)実験試料(焼酎麹として使用可能な材料). 酵素液を測定した.. 実験に使用した米粉は食用に精米された夢つくし(福 岡県産,株式会社九州むらせ)を用い,大麦はハインド. (6)ASAA 活性測定法. マーシュ種(オーストラリア産)で精麦率₇₀%のものを. ₁₀₀ mM 酢酸緩衝液(pH ₃)₀.₉ mL に粗酵素液(ろ. 用いた.いずれもイワタニミルサー(IFM-₆₂₀DG,岩谷. 液)₀.₁ mL を添加し,₃₇℃で ₁ 時間酸処理を行った後,. 産業株式会社)で粉砕したのち,₁ mm 以下にふるいを. キッコーマン社製醸造分析キット「α-アミラーゼ測定. かけたものを実験に使用した.牛乳はおいしい牛乳(無 成分調整乳,株式会社明治),スキムミルクは北海道スキ. キ ッ ト」を 用 い て 測 定 し た ₁₂).基 質 で あ る N₃- G₅- βCNP*溶液 ₀.₂₅ mL と酵素溶液(グルコアミラーゼ,β-. ムミルク(雪印メグミルク株式会社),ゴマは皮むきタイ. グルコシダーゼ)₀.₂₅ mL を混合させ,更に培養液 ₀.₀₅ mL を添加し,₃₇℃で ₁₀ min 反応させた.反応停止液. プのいりごま(株式会社真誠)を使用した.. (炭酸ナトリウム)₁ mL を添加し反応を停止させた後, (2)使用菌株. 分光光度計(Ultrospec ₃₁₀₀pro Amersham Bioseiences,. 菌株は Aspergillus kawachii NBRC ₄₃₀₈を選定した. オートクレーブにより滅菌(₁₂₁℃, ₂₀ min)したポテト. GE Healthcare)を用いて ₄₀₀ nm で吸光度測定を行った. 酵素単位は,₁ min 間に粗酵素液 ₁ mL が N₃- G₅- β- CNP*. デ キ ス ト ロ ー ス 寒 天 培 地(日 水 製 薬 株 式 会 社 製)を. から ₁ μmol の CNP を遊離する力価を国税庁所定分析法. シャーレに分注し,常温で冷却後,菌株を植菌した.. で定義する力価に換算した.. ₃₀℃で ₅ 日間培養した後,滅菌水 ₇ mL を加えて胞子を. ₂. (244).
(3) 液体麹における耐酸性 α-アミラーゼの増強. (7)ゴマの分画. 15. ゴマの脂溶性画分の抽出にはソックスレー抽出法. を. ASAA activity (U/mL). ₁₃). 用いて,重量測定には事前に乾燥器(F₀-₃₀W,東京硝 子器械株式会社製)を用いて₁₀₅℃で乾燥を行い,恒量に 達した器具を使用した.乳鉢中で粉砕したゴマ(₃.₄ g ま たは ₅.₁ g)とジエチルエーテルを含ませて乳鉢と乳棒 を拭き取った脱脂綿を円筒ろ紙に移し乾燥器(₁₀₅℃, ₁ h)で乾燥を行った.その後,ジエチルエーテル ₁₀₀ mL 程度と一緒に抽出管に入れ,冷却管及び ₃₀₀ mL 丸底フ ラスコを連結してマントルヒーターで加熱した.加熱時,. 10. 5. 0. 冷却管から滴下するエーテルが ₁ 分間に₈₀滴程度を目安. BLM. BLM+milk 10 g. Fig.1 ASAA activity of A . kawachii by adding 10 g of milk to basal liquid medium(BLM)and basal liquid medium(BLM). Data were obtained from at least three independent experiments and the error bars represent standard deviations.. に温度管理を行い,₁₆ h 抽出を行った.抽出後,円筒ろ 紙をピンセットで抜き出し,フラスコ内のジエチルエー テルは乾燥器(₅₀℃, ₁ h)で乾燥を行った.その後,デ ジケーターを用いて恒量に達したものをゴマの脂溶性画 分とした.脂溶性画分を除いたゴマは ₅₀ mL チューブに 移し,イオン交換水を加え,撹拌,マイクロ冷却遠心機 (KUBOTA ₃₇₄₀,久保田商事株式会社製)を用いて遠心. 化による ASAA 活性の影響について調べた.牛乳成分の. 分離(₁₂₀₀₀ rpm, ₁₀ min),ろ過の工程を ₃ 回行った.. 窒素源は,約₈₀%がカゼイン系窒素源であり₁₅),カルシ. ろ液をエバポレーター(₅₅ hPa, ₆₀℃)で水分を除去し,. ウム,リン酸塩,カリウムを多く含む₁₆).液体麹の窒素. 乾燥器(₁₀₅℃)で乾燥を行い,恒量に達したものをゴマ. 源として,トリプトンの代わりにカゼインナトリウムを. の水溶性画分とした.残った残渣は乾燥器(₁₀₅℃)で乾. 用い,カルシウムは塩化カルシウムを,カリウム及びリ. 燥を行い,恒量に達したものをゴマの不溶性画分とした.. ン酸塩はリン酸水素二カリウムを用いて,基本液体培地 にそれぞれ添加濃度を変化させたものを加えて培養した.. (8)統計処理. カゼインナトリウム及び塩化カルシウムの濃度変化にお. 統 計 処 理 に は Microsoft Excel for Office ₃₆₅ MSO. いて,牛乳添加時に匹敵する ASAA 活性が得られなかっ. (₁₆.₀.₁₂₅₂₇.₂₀₆₁₂)₃₂ビットを用いた.各培養の有意. たことから,牛乳成分の窒素源及びカルシウムは ASAA. 差比較には,F 検定により等分散性の有無を確認したの. 活性の増強因子ではないことが示唆された.一方で,リ. ち,対応のない t 検定を用いた.. ン酸水素二カリウムの添加は ASAA 活性に影響を与えて. ®. ®. おり,₁₀₀ mL の培地中に ₀.₅ g ~₁.₀ g を添加すること. 3.実験結果及び考察. で,無添加に比べて有意に高い ASAA 活性が得られ(p<. (1)基本液体培地における牛乳添加の影響. ₀.₀₁),リン酸水素二カリウムの添加量が ₁.₀ g のときの. 液体麹における牛乳添加の影響を調べるために,基本. ASAA 活性は ₆.₉ U/mL であった.培養後の pH はリン. 液体培地 ₁₀₀ mL 中に牛乳 ₁₀ g を含む培地で液体麹の培. 酸水素二カリウムの添加量を増加することで低下した. 養を行った.結果を Fig.₁ に示す.牛乳の添加により基. (無添加時 pH=₇.₉,₁.₀ g 添加時 pH=₆.₄,₃.₀ g 添加. 本液体培地に比べて,約₃.₈倍の酵素活性(₉.₆ U/mL). 時 pH=₅.₅).また,リン酸水素二カリウムの添加による. を得ることが出来た(p<₀.₀₁).培養後の pH は牛乳の. 液体培地の DMW の増加は認められなかったことから,. 添加により₇.₉から₇.₀まで低下した.さらに乾燥菌体重. リン酸水素二カリウムによる ASAA 活性の増強は菌体量. 量(DMW)は,牛乳を添加することで ₀.₇ g/₁₀₀ mL か. の増加による影響ではないことが示唆された.培地中の. ら ₁.₂ g/₁₀₀ mL へ増加した.酵素活性が増加した要因. 炭素量や窒素量の増加により DMW は増加することから,. には菌体量の増加が考えられ,岡崎ら₁₄)によると白米に. 牛乳の添加による DMW 増加は,単に牛乳により炭素源. 含まれるリンとカリウムが多いほど菌体量の増殖が律速. 及び窒素源が供給されたことによるものと考えられる.. され,菌体量の増殖に比例して酸性プロテアーゼ,酸性. リン酸水素二カリウムにはリン酸とカリウムの ₂ つの. カルボキシペプチダーゼの活性が増大すると報告されて. 成分因子が存在するため,培地中のリン酸水素二カリウ. いる.. ム ₁.₀ g の代わりにカリウム量が同等となるよう塩化カ. 牛乳中のどの成分が ASAA 活性に大きな影響を及ぼす. リウムを添加した結果,ASAA 活性は ₀.₁ U/mL と著し. のかについて明らかにする目的で,各成分因子の濃度変. く低い結果となった.このときの培養後の pH は₇.₇で. (245). ₃.
(4) 日本家政学会誌 Vol. 72 No. 5 (2021). あった.さらに,培地中のリン酸水素二カリウム ₁.₀ g. Table1 Composition of liquid medium for practical use. の代わりにリン酸量が同等となるようリン酸水素二ナト. 液体麴組成(初発 pH=₃.₀). リウムを添加した結果,ASAA 活性は ₃.₉ U/mL,培養後. 米粉または粉砕した大麦. ₁.₀ g. リン酸水素二カリウム. ₁.₀ g. 塩化カリウム. ₀.₁ g. スキムミルク. 適量. 硫酸マグネシウム七水和物. ₀.₀₅ g. ゴマ. 適量. 焼酎醸造を視野に入れた場合,基本液体培地中に含ま. 塩化カルシウム. ₀.₀₂₁ g. れるトリプトンは食品衛生法より食品への使用が認めら. クエン酸. ₀.₃ g. Tap water(水道水). ₁₀₀ mL. の pH は ₆.₁ と な っ た.こ の 結 果 よ り,牛 乳 添 加 時 の ASAA 活性増強因子はリン酸塩である可能性が示唆され た.本結果より,以降の実験では基本液体培地のリン酸 水素二カリウム量を ₁.₀ g として実験を行った. (2)実用化を視野に入れた培地成分の構築. れていない₁₇).また,酒類の醸造に使用できる物品は酒 税法で定められており,硫酸鉄七水和物は本格焼酎の醸 造において使用可能な物品にあたらないことから使用す. ASAA activity (U/mL). ることができない₁₈).硫酸亜鉛七水和物は近年,酵母発 酵助成剤として本格焼酎への利用が可能になったが,添 加量が微量であることから,より身近な使用可能物品に 代替することを考え,これら ₃ 成分の代替品を本格焼酎 の定義内の指定原料から選定した.窒素源であるトリプ トンの代替品として,先の結果から窒素源とリン酸塩を 含む牛乳の添加も考えられたが,牛乳に含まれる乳脂肪 は焼酎の醸造過程でランシッド臭を発生させて ,焼酎 ₁₉). の香りを悪化させることが考えられたことから,脱脂さ れたスキムミルクで検討を行った.硫酸亜鉛七水和物の 代替品として亜鉛を豊富に含むゴマを選定し₂₀),硫酸鉄. 35. rice flour crushed barley. 30 25 20 15 10 5 0. 0. 1 2 3 4 Amount of skim milk in the medium (g/100 mL). Fig.2 ASAA activity of A . kawachii by changing the amount of skim milk in the liquid medium. The liquid medium composition shown in Table1(The amount of sesame was 5.1 g). The markers show rice flour(●), and crushed barley(□). Data were obtained from at least three independent experiments and the error bars represent standard deviations.. 七水和物は Tap water(水道水)を代わりとした.また 米麹とともに焼酎醸造で用いられている大麦も実験材料 として使用した.培地組成を Table₁ にまとめる. 1)スキムミルク添加の影響 液体麹におけるスキムミルクの添加の結果を Fig.₂ に 示す.米粉を培養基質としたとき,スキムミルクの添加 により ASAA 活性の増強が認められ,スキムミルク添加 量が ₂.₀ g で ₁₀.₁ U/mL(スキムミルク無添加時の₄.₂ 倍)の ASAA 活性が認められた.また,粉砕した大麦を. 添加時では ₆.₀ g/mL と増加していた.以後の実験では. 培養基質としたとき,スキムミルクの添加量が ₃.₀ g ~. 米を培養基質とする際はスキムミルク添加量を ₂.₀ g と. ₄.₀ g で ₉.₈ U/mL ~₁₂.₉ U/mL(スキムミルク無添加. して,大麦を培養基質とする際はスキムミルク添加量を. 時の₃.₃倍~₄.₂倍)の ASAA 活性の増強が認められた.. ₃.₀ g として,実験を進めた.. 米及び大麦のいずれの培養基質においても,スキムミル. 2)ゴマ添加の影響. クを添加することで,無添加時に比べて有意に高い ASAA. 米及び大麦をそれぞれ培養基質としたときに最適化し. 活性得ることができた(米:p<₀.₀₁,大麦:p<₀.₀₅).. たスキムミルク添加量を用いて,ゴマの添加における. また,いずれの培養基質においても,スキムミルク添加. ASAA 活性の影響について調べた.結果を Fig.₃ に示す.. による培養後の pH 変化は認められず,₆.₇付近となった.. その結果,ゴマの添加により大幅に ASAA 活性が向上し,. DMW については,培養液にゴマと菌体が混在している. 米粉を培養基質としたときゴマを ₅.₁ g 添加することで,. ことから,正確な DMW は測定できなかったが,粉砕し. ASAA 活性は ₁₀.₁ U/mL(ゴマ無添加時の₃.₇倍)とな. た大麦を基質として,同じゴマが加えられている培地の. り,粉砕した大麦を培養基質としたときでは,ゴマを. 培養後におけるろ物の乾燥重量はスキムミルク無添加時. ₃.₄ g 添加することで,ASAA 活性は ₁₈.₁ U/mL(ゴマ. に ₅.₀ g/mL であったのに対して,スキムミルク ₃.₀ g. 無添加時の₃.₆倍)となった.DMW については前述の通. ₄. (246).
(5) 35. rice flour crushed barley. 30 25. ASAA activity (U/mL). ASAA activity (U/mL). 液体麹における耐酸性 α-アミラーゼの増強. 20 15 10 5 0. 0. 2 4 6 Amount of sesame in the medium (g/100 mL). 35. rice flour crushed barley. 30 25 20 15 10 5 0. 0. 0.005. 0.01. Amount of ZnSO₄・7H₂O in the medium (g/100 mL). Fig.3 ASAA activity of A . kawachii by changing the amount of sesame in the basal liquid medium. The liquid medium composition shown in Table1(The amount of skim milk was 2.0 g for rice flour or 3.0 g for crushed barley). The markers show rice flour (●), and crushed barley(□). Data were obtained from at least three independent experiments and the error bars represent standard deviations.. Fig.4 ASAA activity of A . kawachii by changing the amount of ZnSO₄・7H₂O added excluding sesame in the liquid medium. The liquid medium composition shown in Table1(The amount of skim milk was 2.0 g for rice flour or 3.0 g for crushed barley). The markers show rice flour(●), and crushed barley(□). Data were obtained from at least three independent experiments and the error bars represent standard deviations.. り,培養後にゴマと菌体が混在していたことから,測定. 地中の亜鉛が ASAA 活性に及ぼす影響から検討を行った.. を行っていない.また,いずれの培養基質でもゴマの添. 前項の培地からゴマを除いて,硫酸亜鉛七水和物の濃度. 加量が過剰になったときに,ASAA 活性の低下が認めら. を変化させて添加した結果を Fig.₄ に示す.その結果,米. れたが,その理由については,明確な結論には至ってい. 粉を培養基質としたとき,硫酸亜鉛七水和物の添加によ. ない.. り無添加と比べて有意な ASAA 活性の向上は認められた. 最適化したスキムミルク ₂.₀ g 及びゴマ ₅.₁ g 中には. が(p<₀.₀₁),ゴマを添加した時の ASAA 活性には及ば. リンが一定量含まれていることから,培地中に加えるリ. なかった.亜鉛は A.oryzae の α-アミラーゼ生産を制御す. ン酸水素二カリウムの量が軽減できないか検討を行った.. る転写因子に配位することが報告されており₂₁),酵素生. リン酸水素二カリウム量の添加量が ₁.₀ g の ASAA 活性. 産に関わる重要な金属イオンである.この亜鉛による. (米:₁₀.₁ U/mL,大麦:₁₈.₁ U/mL)と,添加量 ₀.₁ g. ASAA 活性の増強やリン酸塩による増強が,転写調節に. の ASAA 活性(米:₁₃.₄ U/mL,大麦:₂₃.₇ U/mL)を. 起因するものなのか,翻訳調節や翻訳後修飾による活性. 比較すると,ASAA 活性に有意差がないことが認められ. 調節によるものなのかは今後の課題である.硫酸亜鉛七. たことから,以後の実験では ASAA 活性が高く,培養コ. 水和物の添加は前述の通りゴマの添加に比べて,ASAA. ストが低いリン酸水素二カリウム量の添加量を ₀.₁ g と. 活性が低いことから,亜鉛以外にも ASAA 活性増強因子. ₉). して検討を進めた.小路ら によると,大麦原料を用い. が存在することが考えられる.そのため,ゴマを水溶性. た場合の液体麹に含まれる ASAA 活性は ₁₅~₂₀ U/mL で. 画分,脂溶性画分,不溶性画分に分画を行い,それぞれ. あることが報告され,液体麹の製造法と伝統的な固体麹. の画分における ASAA 活性を測定した.分画の結果,ゴ. の製造法を組み合わせることにより,新しいタイプの焼. マの水溶性画分₄.₁%,脂溶性画分₅₈.₆%,不溶性画分. 酎「本格麦焼酎 かのか(アサヒビール株式会社)」を販. ₂₉.₃%の合計₉₂.₀%を分画した.前項の培地からゴマを. 売している.本研究における大麦液体麹の ASAA 活性は. 除いて,これらの画分をそれぞれ添加して培養した結果. 最適化したもので ₂₃.₇ U/mL であったことから,焼酎醸. を Fig.₅ に示す.その結果,米及び大麦いずれの培養基. 造に利用可能であることが示唆された.. 質においても,不溶性画分の添加で高い ASAA 活性が得 られ,米を培養基質としたときには ₁₃.₇ U/mL,大麦を. (3)ゴマの添加が ASAA 活性増加をもたらした要因. 培養基質としたときには ₂₃.₉ U/mL の ASAA 活性が認め. ゴマの添加は,無添加時に比べて最大 ₃ 倍以上の酵素. られた.前項でゴマを添加したときに得られた最大活性. 活性向上が認められたことから,ゴマによる ASAA 活性. と,不溶性画分を添加したときの ASAA 活性の間には有. の増強因子について検討を行った.ゴマを添加した本来. 意な差が認められなかったことから,ゴマの不溶性画分. の目的は硫酸亜鉛七水和物の代替であったことから,培. が ASAA の増強因子である可能性が示唆された.カビの. (247). ₅.
(6) 日本家政学会誌 Vol. 72 No. 5 (2021). 30. 35. (a) ASAA activity (U/mL). ASAA activity (U/mL). 35. 25 20 15 10 5 0. sesame. WSF. FSF. 30 25 20 15 10 5 0. IF. (b). sesame. WSF. FSF. IF. Fig.5 ASAA activity of A . kawachii by adding sesame to a liquid medium or the water-soluble fraction(WSF), fat-soluble fraction(FSF), and insoluble fraction(IF)fractionated from the same amount of sesame to a liquid medium.(a)rice flour,(b)crushed barley. The liquid medium composition shown in Table1(The amount of skim milk was 2.0 g for rice flour or 3.0 g for crushed barley, furthermore, the amount of sesame was 5.1 g for rice flour or 3.4 g for crushed barley). Data were obtained from at least three independent experiments and the error bars represent standard deviations.. 成長には一般的に菌糸の足場となるものが必要である.. は ₁₃.₄ U/mL(₅.₁ g のゴマの添加),大麦の液体麹では. Domingues ら. によると,液体培地において培養基質に. ₂₃.₇ U/mL(₃.₄ g のゴマの添加)の ASAA 活性が認め. セルロースを用いた際に菌糸の著しい伸長が認められた. られた.また,ゴマの添加による ASAA 活性増強因子は. と報告している.また,麹菌の中でも本研究で使用した. 不溶性画分に存在することが明らかとなった.. ₂₂). 白麹菌はセルロース,ヘミセルロース分解酵素を多く生. 文 献. 産することで知られている₂₃).ゴマの不溶性画分は,セ ルロース,ヘミセルロース,リグニンなどの植物繊維が. ₁) Machida, M.; Asai, K.; Sano, M.; Tanaka, T.; Kumagai, T.;. 含まれており,更にこれらの植物繊維は金属イオンを吸. Terai, G.; Kusumoto, K.; Arima, T.; Akita, O.; Kashiwagi,. 着する特徴がある₂₄).実際に研究に使用したゴマの水溶. Y.; Abe, K.; Gomi, K.; Horiuchi, H.; Kitamoto, K.;. 性及び不溶性画分中の亜鉛量を測定した結果,水溶性画. Kobayashi, T.; Takeuchi, M.; David, W. D.; James, E. G.;. 分に ₀.₂₆ mg/₁₀₀ g, 不溶性画分に ₉.₁₆ mg/₁₀₀ g の亜鉛. William, C. N.; Jiujiang, Y.; David, B. A.; Joan, W. B.;. が含まれており,ゴマに含まれる亜鉛は,不溶性画分に. Deepak, B.; Thomas, E. C.; Natalie, D. F.; Gotoh, O.;. 局在していることが明らかとなった.これらの考察より,. Horikawa, H.; Hosoyama, A.; Ichinomiya, M.; Igarashi,. ゴマによる ASAA 活性の増強は,不溶性画分をカビの生. R.; Iwashita, K.; Praveen, R. J.; Kato, M.; Kato, Y.; Kin, T.;. 育の足場としながら,カビ自身が生産するセルラーゼ系. Kokubun, A.; Maeda, H.; Maeyama, N.; Maruyama, J.;. 酵素等により不溶性画分を分解しながら,吸着している. Nagasaki, H.; Nakajima, T.; Oda, K.; Okada, K.; Ian, P.;. 金属イオンを利用することで,ASAA 活性を増強させた. Sakamoto, K.; Sawano, T.; Takahashi, M.; Takase, K.; Terabayashi, Y.; Jennifer, R. W.; Yamada, O.; Yamagata,. のではないかと推察される.もちろん本推察は仮説に依. Y.; Anazawa, H.; Hata, Y.; Koide, Y.; Komori, T.; Koyama. るところが大きく,ゴマが ASAA 活性増強の要因につい. Y.; Minetoki, T.; Sivasundaram, S.; Tanaka, A.; Isono, K.;. ては更なる詳細な検討が必要であるが,ゴマやスキムミ. Kuhara, S.; Ogasawara, N.; Kikuchi, H. Genome. ルクといった焼酎醸造に使用可能な材料を使用して,液. sequencing and analysis of Aspergillus Oryzae. Nature.. 体麹で ASAA 活性の増強を実現した.. ₂₀₀₅, Vol. ₄₃₈, ₁₁₅₇-₁₁₆₁. ₂) Futagami, T.; Mori, K.; Yamashita, A.; Wada, S.; Kajiwara,. 4.結 論. Y.; Takashita, H.; Omori, T.; Takegawa, K.; Tashiro, K.;. 液体麹に牛乳を添加することで ASAA 活性の増強が認. Kuhara, S.; Goto, M. Genome Sequence of the White. められた.このときの活性増強因子はリン酸塩であるこ. Koji Mold Aspergillus kawachii IFO ₄₃₀₈, Used for Brew-. とが示唆された.さらに米及び大麦を培養基質として液. ing the Japanese Distilled Spirit Shochu. American Soci-. 体麹を培養したところ,₁₀₀ mL の培地に対してそれぞれ. ety for Microbiology Journals. ₂₀₁₁, Vol. ₁₀, No. ₁₁, ₁₅₈₆-. ₂.₀ g または ₃.₀ g のスキムミルクの添加で ASAA 活性の. ₁₅₈₇ ₃) 岩野君夫,三上重明,福田清治,椎木敏,島田豊明.焼. 増強が認められ,さらにゴマの添加により米の液体麹で. ₆. (248).
(7) 液体麹における耐酸性 α-アミラーゼの増強. 酎白麹の各種酵素の諸性質について.日本醸造協会誌. ₁₉₈₆, Vol. ₈₁, No. ₇, ₄₉₀-₄₉₄.. ₁₅) 仁木良哉,有馬俊六郎.牛乳カゼイン―その構造的特 徴 を 中 心 と し て.化 学 と 生 物.₁₉₈₄, Vol. ₂₂, No. ₄,. ₄) 秦洋二.麹菌の固体培養での遺伝子発現特性.日農化. ₂₁₉-₂₂₇.. 会誌.₂₀₀₂, Vol. ₇₆, No. ₈, ₇₁₅-₇₁₈.. ₁₆) 文部科学省.“日本食品標準成分表₂₀₁₅年版(七訂)”.. ₅) 伊藤清.焼酎麹菌の酵素生産の特徴.日本醸造協会誌. ₂₀₀₅, Vol. ₁₀₀, No. ₁₂, ₈₃₈-₈₄₈.. https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_ NO=₁₃_₁₃₀₀₃_₇(閲覧 ₂₀₂₀.₇.₈).. ₆) 加藤拓,下飯仁,伊藤清.麹菌細胞壁への酵素のトラッ. ₁₇) 厚生労働省.“指定添加物リスト” .https://www.mhlw.. プ.日本醸造協会誌.₂₀₀₅, Vol. ₁₀₀, No. ₅, ₃₅₅-₃₆₁.. g o . jp/stf/se i s a k u n i t s u i te/bu n ya/ke n k o u _ i r y ou/. ₇) Fuji, M.; Murakami, S.; Yamada, Y.; Ona, T.; Nakamura,. shokuhin/syokuten/(閲覧 ₂₀₂₀.₇.₀₈).. T. A Kinetic Equation for Hydrolysis of Polysaccharides. ₁₈) 国税庁. “第 ₃ 条その他の用語の定義” .https://www.nta.. by Mixed Exo- and Endoenzyme Systems. Biotechnology. go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/₂-₀₂.htm(閲覧 ₂₀₂₀.₇.. and Bioengineering. ₁₉₈₁, Vol. ₂₃, No. ₆, ₁₃₉₃-₁₃₉₈.. ₈) .. ₈) 菅沼俊彦.α-アミラーゼの耐酸性タイプと中性タイプ. ₁₉) 中西武雄.微生物による脂肪の酸化.油化.₁₉₆₅, Vol.. について―クエン酸麹耐酸性 α-アミラーゼの特性―.. ₁₄, No. ₁₂, ₆₈₃-₆₈₆.. 日本応用糖質科学会誌.₂₀₀₁, Vol. ₄₈, No. ₂, ₁₈₇-₁₉₃.. ₂₀) 文部科学省.“日本食品標準成分表₂₀₁₅年版(七訂) ”.. ₉) 小路博志,杉本利和,舛田晋,上野貴生.新規液体麹. https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_. の開発と発酵飲食品への展開.生物工学会誌.₂₀₁₃,. NO=₅_₀₅₀₁₈_₇(閲覧 ₂₀₂₀.₇.₈).. Vol. ₉₁, No. ₂, ₇₃-₇₉.. ₂₁) Gomi, K.; Akeno, T.; Minetoki, T.; Ozeki, K.; Kumagai, C.;. ₁₀) Morita, H.; Matsunaga, M.; Mizuno, K.; Fujio, Y. A com-. Okazaki, N.; Iimura, Y. Molecular Cloning and Charac-. parison of raw starch-digesting glucoamylase production. terization of a Transcriptional Activator Gene, amyR,. in liquid and solid cultures of Rhizopus strains. The Jour-. Involved in the Amylolytic Gene Expression in Aspergil-. nal of General and Applied Microbiology. ₁₉₉₈, Vol. ₄₄,. lus oryzae. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry.. ₂₁₁-₂₁₆.. ₂₀₀₀, Vol. ₆₄, No. ₄, ₈₁₆-₈₂₇.. ₁₁) 国税庁.“焼酎に関するもの”.https://www.nta.go.jp/. ₂₂) Domingues, F. C.; Queiroz, J. A.; Cabral, J. M. S.; Fonseca,. about/organization/tokyo/sake/abc/abc-shochu.htm. L. P. The influence of culture conditions on mycelial. (閲覧 ₂₀₂₁.₁.₂₂). structure and cellulose production by Trichoderma ressi Rut C-₃₀. Enzyme and Microbial Technology. ₂₀₀₀, Vol.. ₁₂) Shoji, H.; Sugimoto, T.; Hosoi, K.; Shibata, K.; Tanabe,. ₂₆, ₃₉₄-₄₀₁.. M.; Kawatsura, K. Simultaneous Production of Glucoamylase and Acid-Stable α-Amylase Using Novel Submerged. ₂₃) Ito, K.; Ogasawara, H.; Sugimoto, T.; Ishikawa, T. Purifica-. Culture of Aspergillus kawachii NBRC₄₃₀₈. The Society. tion and Properties of Acid Stable Xylanases from Asper-. for Biotechnology, Japan. ₂₀₀₇, Vol. ₁₀₃, No. ₂, ₂₀₃-₂₀₅.. gillus kawachii. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. ₁₉₉₂, Vol. ₅₆, No. ₄, ₅₄₇-₅₅₀.. ₁₃) 安藤達彦.身のまわりの食品分析実験.三共出版, ₂₀₀₁, ₉₆-₉₉.. ₂₄) 中山行穂.食物繊維の構造と機能(₂)物理・化学的性. ₁₄) 岡崎直人.麹菌の増殖および酵素生産に及ぼす白米成. 質と食物繊維含有量.生活衛生.₁₉₉₁, Vol. ₃₅, No. ₂,. 分の影響.発酵工学会誌.₁₉₈₁, Vol. ₅₉, No. ₆, ₄₉₁-₅₀₀.. ₈₈-₉₃.. (249). ₇.
(8) 日本家政学会誌 Vol. 72 No. 5 (2021). 液体麹におけるゴマ及びスキムミルクの添加による 耐酸性 α-アミラーゼの増強 小玉 大貴₁,三貝 咲紀₁,井 菜々子₁, 松尾 将平₁,畠山 敦₂,森田 洋₃* 液体麹は固体麹より培養管理が容易で再現性が高い培養方法であるが,白麹菌(Aspergillus kawachii)に よる液体麹は固体麹より耐酸性 α-アミラーゼ(ASAA)活性が低いことから,ASAA 活性の増強が必須であ る.本研究では液体麹における ASAA の増強を検討した.菌株に Aspergillus kawachii NBRC ₄₃₀₈を選定し た.SLS 液体培地を改変した基本液体培地に菌株を接種して₃₀℃,₂₀₀ rpm,₇₂ h 振とう培養を行った.液 体麹に牛乳を添加することで ₁.₀ U/mL から ₉.₆ U/mL へ ASAA 活性を増強でき,この ASAA 活性増強因子 はリン酸塩であることが示唆された.米を培養基質とした液体麹(₁₀₀ mL)において,スキムミルク ₂.₀ g とゴマ ₅.₁ g の添加により ₁₃.₄ U/mL の ASAA 活性を得た.同様に大麦を培養基質とした液体麹(₁₀₀ mL) において,スキムミルク ₃.₀ g とゴマ ₃.₄ g の添加により ₂₃.₇ U/mL の ASAA 活性を得た.さらに,ゴマ の添加による ASAA 活性増強因子は不溶性画分に存在することが明らかとなった.本研究で得た ASAA 活性 は先行研究の ASAA 活性と同等以上であり新規液体麹商品の開発が期待できる.. ₈. (250).
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