乳がん患者・非乳がん患者の 怠感の比較
石 田 順 子, 細 川
舞, 武 居 明 美
平 井 和 恵, 石 田 和 子, 神 田 清 子
要 旨 【目 的】 乳がん患者と非乳がん患者の 怠感を比較し, 各々の 怠感の特徴を明らかにすることである. 【対象と方法】 A 病院の外来に通院する乳がん患者 128名と非乳がん患者 76名に質問紙調査を施行した. 調査内容は, 怠感, 化学療法の有無, 放射線療法の有無, 運動療法の有無, Performans Status等であった. 怠感は, Cancer Fatigue Scaleを 用し調査した. 【結 果】 乳がん患者は, PS≧ 1群 (p<0.005), 痛みあり 群 (p<0.05), 不眠あり群 (p<0.001), 孤独感あり群 (p<0.05), 呼吸困難あり群 (p<0.05), 不穏あり群 (p<0. 05) の CFS 得点が高く有意差がみられ, 非乳がん患者では, PS≧ 1群 (p<0.001), 痛みあり群 (p<0.005), 下 痢あり群 (p<0.05) の CFS得点が高く有意差がみられた. 疾患間では不眠に有意差がみられた. 【結 語】 乳がん患者は, 身体症状のみでなく, 孤独感等精神的な症状においても 怠感が強くなることが明らかに なった. 特に不眠に対するケアを充実する必要性が示唆された.(Kitakanto Med J 2011;61:153∼160) キーワード:外来, 乳がん患者, 怠感, 比較, 質問紙調査 .は じ め に がん患者の 怠感は, 食欲不振やがん性疼痛とともに 出現する頻度が高く, かつ患者の QOL を低下させる症 状である.がんにおける 怠感は,「がん患者の 怠感と は, 最近の活動に合致しない, 日常生活機能の妨げとな るほどの, がんまたはがん治療に関連した, つらく, 持続 する主観的な感覚で, 身体的, 感情的かつ/または認知的 怠感または消耗感 」であると定義されている. 怠感 はがん患者では,最も一般的な症状であり,進行・末期が ん患者においては 50∼80%程度で出現しており, 化学療 法, 放射線療法などの抗がん剤の副作用としても 50%以 上という高頻度で出現するという報告 がされている. 疼 痛や悪心・嘔吐は一般的に投薬で管理できるようになっ たため, これらより 怠感のほうがつらい といわれてい る.乳がん患者において, 化学療法の FEC (5-FU, epir-ubicin, cyclophosphamide) や AC (doxorubicine,
cyclo-phosphamide) 療法を受けた半数近くが 怠感を体験し ていることが報告 されている. また武居ら は, 外来で 化学療法を受けている患者の副作用症状の出現頻度は, 怠感が最も高く, 特に FEC 療法を受けている患者の 100%に 怠感が出現していることを報告している. さ らに海外では, 乳がん患者は治療後にも 怠感が持続し ている場合が多いことが報告され, さらに, 乳がん治療 後に 怠感を訴える患者は免疫機構の活性化が続いてい るためである ことが明らかにされている. これらのこ とから, 乳がん患者の 怠感はその他のがん患者 (以下 非乳がん患者とする) の 怠感より強いことが推測でき る. 日本における 怠感に関する研究を概観すると, 神里 は, 放射線治療を受けている患者の 怠感について, 治 療開始後 2週目から 4週目にかけて 怠感が増強するこ とを明らかにし, 平井ら は, 化学療法を受けたがん患者 の 怠感の特性を 析し,日本人の 怠感は,身体的・精 神的側面を中心に認識されていることを報告している. また,細川ら は,化学療法患者と放射線療法患者の 怠 感を比較し, 放射線療法患者は発熱で 怠感が増強し, 1 群馬県高崎市中大類町501 高崎 康福祉大学 2 群馬県渋川市金井2854 独立行政法人国立病院機構西群馬病院 3 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 4 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部看護学科 5 新潟県上越市新南町204 新潟県立看護大学 平成23年3月2日 受付 論文別刷請求先 〒370-0033 群馬県高崎市中大類町501 高崎 康福祉大学 石田順子
化学療法患者は発熱の有無にかかわらず 怠感が強いこ とを明らかにしている. このように治療により生ずる 怠感に関する研究は, 行われているが, 疾患別に 怠感 を検討している研究はほとんど行われていない. 諸外国 においては, 疾患別に介入研究が行われ, たとえば乳が ん患者や血液がん患者の 怠感を軽減するためのエクサ サイズの有効性 等の研究が行われている. そこで, 本研究の目的は, 外来通院している乳がん患 者と非乳がん患者の 怠感を比較し, 各々の 怠感の特 徴を明らかにすることである. .研 究 方 法 1.用語の操作的定義 1) 乳がん患者 :「乳がん」と診断され,A 病院に通院し ている患者. 2) 非乳がん患者 :「乳がん」以外のがんと診断され,A 病院に通院している患者. がんの種類としては, 消 化器系がん, 肺がん, 婦人科がん, 泌尿器科系がん等 が含まれている. 3) 怠感 : 体調の変化に伴い身体的, 精神的, 認知的 という 3つの異なった側面に関して, エネルギーや 活動能力の低下により, 休息しても回復しない持続 的な状況であり, 主観的な感覚である. 2.対象 A 病院の放射線科外来, 化学療法センター, 乳腺外来 に通院中のがん患者で, ①医師からがん告知がなされて いる, ②言語的コミュニケーションが可能である, ③自 記式調査票に自 で記入できる, ④本研究に同意の得ら れている乳がん患者 128名, 非乳がん患者 76名を対象 とした. 3.データ収集 自記式調査票を用いた質問紙法により実施した. 怠
感の測定は, 奥山ら が開発した Cancer Fatigue Scale (表 1, 以下 CFS と略す) を用い, 合 怠感得点 (以下 CFS 得点とする)を測定した. 怠感への影響要因は,対 象属性としての一般的背景, 治療因子, 症状因子からな る独自の質問紙を作成した. 一般的背景としては, 年齢, 性別, Performance States (以下 PSと略す), 婚姻の有無, 運動習慣の有無であり, 治療因子としては化学療法の有 無, 放射線療法の有無, ホルモン療法の有無であり, 症状 因子としては痛み, 不眠, 孤独, 呼吸困難等の有無であっ た.PSは,ECOG (Eastern Cooperative Oncology Group) によって開発された全身状態の指標である. 0∼ 4 ( 0: 無症状で社会活動ができ, 制限を受けることなく発病前 と同等に振る舞える」, 1: 軽度の症状があり, 肉体労働 は制限を受けるが, 歩行・軽労働や座業はできる」, 2: 歩行や身の回りのことはできるが, 時に少し介助がいる こともある」, 3: 軽労働はできないが日中の 50%以上 は起きている」, 4: 身の回りのある程度のことはでき るが, しばしば介助がいる. 日中の 50%以上は就床して いる」) までの 5段階の Gradeで全身状態の他覚的指標 としている. 4.測定用具
CFS (Cancer Fatigue Scale: 表 1)は,がん患者を対象
に日本で開発された唯一の多次元 怠感尺度であり, 身 体・精神・認知の 3つの下位尺度で構成される尺度であ る. 質問項目は身体的 怠感として 7項目, 精神的 怠 感として 4項目, 認知的 怠感として 4項目の全 15項 目でなる. 回答は「いいえ」, すこし」, まあまあ」, か なり」, とても」の 5段階で評定する. 得点は, 各々の下 位尺度およびそれらの 合得点より示され, 得点が高い ほど 怠感が強いことを示す. 合得点の 19 点を cut-off pointとした場合, 日常生活への障害が著明になると されている. 5.データの 析
統計ソフト SPSS for windows ver 19.0 jを 用し 析 をした.乳がん患者・非乳がん患者と一般的背景・治療因 子・症状因子の関係は,χ 検定を用いた.乳がん患者・非 乳がん患者別にみた一般的背景, 治療, および症状と CFS 得点との関係には t検定を行った. また, 乳がん患 者・非乳がん患者別対象属性と CFS得点との関係には二 元配置 散 析で比較 析を行った. 有意確率 5%以下 を有意差があるとした.
表1 Cancer Fatigue Scaleの質問項目
項 目 1 疲れやすいですか 2 横になっていたいと感じますか 3 ぐったりと感じますか 4 不注意になったと感じますか 5 活気はありますか 6 身体がだるいですか 7 言い間違えが増えたように感じますか 8 物事に興味をもてますか 9 うんざりと感じますか 10 忘れやすくなったと感じますか 11 物事に集中することはできますか 12 おっくうに感じますか 13 える速さは落ちたと感じますか 14 がんばろうと思うことができますか 15 身の置き所のないようなだるさを感じますか ・身 体 的=(1+2+3+6+9+12+15)−7 ・精 神 的=20−(5+8+11+14) ・認 知 的=(4+7+10+13)−4 合得点=各因子の得点を加算
6.倫理的配慮 本研究の実施においては, A 病院の倫理審査委員会の 承認 (No.05-09-04)を受け施行した.患者には,説明文書 を用いて口頭で①研究への参加は患者の自由意思に基づ くものであり, 参加後であっても参加を中止できること, ②調査に参加しなくても通常の医療・看護を受けられ何 ら不利益を被ることはないこと, ③回答は無記名で行い, その保管や取扱いにも十 に注意を払い, 回答者が特定 されることはないこと, ④研究結果は 表される可能性 があることを説明し, 同意書への署名により参加同意を 得た. 調査用紙には本人が特定されるような住所や生年 月日は収集しなかった. 回収は, 白紙の封筒に入れたも のを, 後日研究者が回収した. .結 果 1.乳がん患者・非乳がん患者と対象属性の関係(表2) 外来通院中の患者 210名に調査票を配布し, 記入漏れ のない 204名を有効回答とした (有効回答率 97.1%). 内 訳は, 乳がん患者 128名, 非乳がん患者 76名であった. 乳がん患者の年齢は, 29 歳∼85歳に 布し平 年齢 54.8±10.5歳であった. 非乳がん患者の年齢は, 22歳 ∼90歳に 布し平 年齢 61.2±12.4歳であった. 乳がん患者はすべて女性であるが, 非乳がん患者は, 男性 38名 (50%) 女性 38名 (50%) であった. 患者の年 齢を 65歳未満の群と 65歳以上の群に区 すると, 乳が ん患者は 65歳未満が 80.5%であるのに対し, 非乳がん 患者は, 52.6%であった (p<0.001). PSにおいては,乳が ん患者は PS=0群が 65.6%であるのに対し, 非乳がん患 者は PS≧1群が 59.2%であり, 乳がん患者に比べ非乳が ん患者の PSは有意に不良 (p<0.001) であった. 治療因子においては, 化学療法を受けている患者は, 乳がん患者が 27.3%であり, 非乳がん患者が 53.9%と非 乳がん患者の割合が約 2倍と多かった (p<0.001). 放射 線療法を受けている患者においても乳がん患者より, 非 乳がん患者の割合の方が多かった (p<0.001). ホルモン 療法を受けている患者の割合は, 乳がん患者が非乳がん 患者の約 3倍であった (p<0.05). 症状因子においては,嘔気・嘔吐あり群の割合が,乳が 表2 対象者の概要 項 目 内訳 乳がん患者 n=128 非乳がん患者 n=76 人数 % 人数 % χ 値 一般的背景 性別 男 0 0.0 38 50.0 72.192 女 128 100.0 38 50.0 年齢 65歳未満 103 80.5 40 52.6 17.629 65歳以上 25 19.5 36 47.4 PS PS=0 84 65.6 31 40.8 1.219 PS≧1 44 34.4 45 59.2 婚姻 既婚 112 87.5 65 85.6 0.162 未婚 16 12.5 11 14.4 運動療法 している 39 30.5 31 40.8 2.254 していない 91 69.5 45 59.2 治療因子 化学療法 あり 35 27.3 41 53.9 14.438 なし 93 72.7 35 46.1 放射線療法 あり 11 8.6 28 36.9 24.609 なし 117 91.4 48 63.1 ホルモン療法 あり 40 31.3 10 13.2 8436 なし 88 687 66 86.8 症状因子 痛み あり 30 23.4 17 22.4 0.031 なし 98 76.6 59 77.6 不眠 あり 29 22.7 18 23.7 0.028 なし 99 77.3 58 76.3 孤独感 あり 19 14.8 7 9.2 1.361 なし 109 85.2 69 90.8 呼吸困難 あり 6 4.7 5 6.6 0.334 なし 122 95.3 71 93.4 下痢 あり 7 5.5 10 13.2 3.361 なし 121 94.5 66 86.8 嘔気・嘔吐 あり 2 1.6 11 14.5 13.323 なし 126 98.4 65 85.5 不穏 あり 8 6.3 2 2.6 1.339 なし 120 93.7 74 97.4 p<0.05, p<0.005, p<0.001
ん患者より非乳がん患者に多く有意差があった (p< 0.001). また, 下痢あり群の割合は, 乳がん患者が 5.5%, 非乳がん患者が 13.2%であり, 非乳がん患者が乳がん患 者の 2倍以上であり, 有意傾向 (p=0.055) がみられた. 2.乳がん患者・非乳がん患者別にみた対象属性と CFS 得点との関係(表3) 乳がん患者の CFS得点は 1点から 56点で, 平 値は 23.7±10.9 点であった. 非乳がん患者の CFS 得点は 7点 から 45点で, 平 値は 21.9±8.3点であった. 乳がん患 者と非乳がん患者の CFS得点に有意差 (t=1.249, p= 0.213) は認められなかった. 乳 が ん 患 者 の CFS得 点 と 一 般 的 背 景 の 関 係 で は, PS≧ 1群の CFS 得点は,28.2±11.4点,PS= 0群の CFS 得点は 21.3±9.8点であり PS≧1群の CFS得点が有意 (p<0.005) に高かった. また, 症状因子との関係では, 痛 みあり群 (p<0.05), 不眠あり群 (p<0.001), 孤独感あり 群 (p<0.05),呼吸困難あり群 (p<0.05),下痢あり群 (p< 0.05),不穏あり群 (p<0.05)に有意差がみられ,症状があ る患者の CFS得点が高くなっていた. 特に CFS得点が 高かったのは, 呼吸困難あり群であり, 35.1±12.4点で あった. 非乳がん患者と一般的背景の関係では, 乳がん患者と 同様に PS≧ 1群の CFS得点が, 26.7±8.3点と高く有意 差 (p<0.001) がみられた. 症状因子との関係では, 痛み あり群 (p<0.005), 下痢あり群 (p<0.05) に有意差がみ られ, CFS得点が高くなっていた. 非乳がん患者の CFS 得点が高かったのは, 乳がん患者と同じように呼吸困難 あり群で 28.2±3.6点であったが, 乳がん患者よりやや 低かった. CFS 得点 19 点以上の 怠感の強い群の頻度は, 乳が ん患者の場合 85名, 66.4%であり, 非乳がん患者の場合 は 47名,61.8%であった.この 2つの群を χ 検定したと ころ χ 値 0.510であり有意差はみられなかった. 乳がん患者の CFS得点と, 非乳がん患者の CFS得点 を概観すると, 治療因子では放射線療法, 症状因子では 表3 乳がん患者・非乳がん患者別に見た対象属性と CSF 得点との関係 項 目 乳がん患者 CSF 得点 23.7±10.9 人数 CSF 得点 平 値 標準偏差 t値 非乳がん患者 CSF 得点 21.9±8.3 人数 合 怠感得点 平 値 標準偏差 t値 年齢 65歳未満 103 23.9 11.1 40 23.0 9.6 65歳以上 25 22.8 10.2 0.482 36 20.7 6.6 1.193 PS PS=0 84 21.3 9.8 31 18.4 6.4 PS≧1 44 28.2 11.4 −3.542 45 26.7 8.3 −4.861 婚姻 既婚 112 23.4 10.5 65 21.3 7.8 未婚 16 26.0 13.2 0.903 11 25.5 10.5 1.551 運動状況 している 39 22.4 9.4 31 20.2 8.2 していない 89 24.3 11.5 −0.926 45 23.0 8.3 −1.465 化学療法 あり 35 22.9 9.3 41 22.8 8.8 なし 93 24.0 11.1 −0.484 35 20.8 7.6 1.062 放射線療法 あり 11 19.4 8.5 28 20.3 8.1 なし 117 24.1 11.0 −1.390 48 22.8 8.4 −1.266 ホルモン療法 あり 40 25.4 11.3 10 23.5 6.9 なし 88 22.9 10.6 1.175 66 21.7 8.5 0.653 痛み あり 30 28.3 12.8 17 27.0 10.0 なし 98 22.3 9.9 2.692 59 20.4 7.2 3.028 不眠 あり 29 30.8 11.5 18 24.4 10.1 なし 99 21.6 9.7 4.232 58 21.1 7.6 1.503 孤独感 あり 19 29.7 12.5 7 25.9 6.3 なし 109 22.6 10.3 2.661 69 21.5 8.4 1.331 呼吸困難 あり 6 35.1 12.4 5 28.2 3.6 なし 122 23.1 10.5 2.172 71 21.5 8.4 1.781 下痢 あり 7 31.6 11.4 10 27.7 10.9 なし 121 23.2 10.7 1.993 66 21.0 7.6 2.449 嘔気嘔吐 あり 2 19.0 1.4 11 23.7 10.7 なし 126 23.8 10.9 −3.370 65 21.6 7.9 2.119 不穏 あり 8 31.4 12.4 2 21.0 9.9 なし 120 23.2 10.6 2.089 74 21.9 8.3 −0.153
嘔気・嘔吐以外の項目で乳がん患者の CFS得点のほうが 高い値を示していた. 3.乳がん患者と非乳がん患者における 怠感の特徴の 比較(表4) 項目間で有意差があったのは, 6項目であった. PS (p<0.001), 痛みの有無 (p<0.001), 不眠の有無 (p< 0.001), 孤独感の有無 (p<0.05), 呼吸困難の有無 (p< 0.005),下痢の有無 (p<0.005)において,有意差が認めら れ, それぞれ症状のある群の CFS得点が高かった. 乳が ん・非乳がんの疾患間で有意差が認められたのは不眠の みであった (p<0.05).疾患区 と対象属性との 互作用 においては, 明らかな有意差は認められなかった. . 察 怠感は, がん患者にとって頻繁に経験する症状であ り,QOL に大きく影響を与える症状であるといわれてお り, 身体的側面のみならず心理的側面等多くの因子が複 雑に絡み合って生じる多次元的な症状であると えられ ている. 乳がん患者においては, 化学療法を受けたがん患者の 半数近くが 怠感を感じていることが報告 されてい る. 乳がん患者の場合, 抗がん剤による免疫活性化の影 響も えられるが, 手術が精神的ダメージになっている ことも否定できない. 乳房は女性にとっては女性性の象 徴であり, それにメスをいれることはボディイメージの 混乱につながり大きな精神的ストレスになる. 温井ら は乳がん患者にとってボディイメージの変容は, 術前・ 術後を通してのストレスであることを明らかにしてい る. これらのことからも乳がん患者の CFS得点が高い ことが推測できる.本研究において,乳がん患者・非乳が ん患者別にみた対象属性と CFS得点の関係をみるとほ とんどの項目において乳がん患者の CFS得点が高いが, CFS 得点の平 値で比較すると, 乳がん患者の CFS得 点は 23.7±10.9 点であり, また非乳がん患者の CFS得 点は 21.9±8.3点であり, 若干, 乳がん患者の CFS得点 が高いが, 統計学的な有意差は認められなかった. 乳が ん・非乳がんの疾患間で有意差がみられたのは不眠のみ であり, 乳がん患者の不眠あり群の CFS得点が有意 (p<0.05) に高かった. 乳がん患者の場合, ホルモン療法 の副作用として不眠は周知のことである. 乳がんでホル モン療法を受けている患者に対しては, 特に日々睡眠が 十 とれているか確認し, ケアしていく必要性が示唆さ れた. 乳がん患者・非乳がん患者における強度 怠感 (cut off pointである CFS 得点 19 点以上) について両群を比較 表4 乳がん患者・非乳がん患者別対象属性と CSF 得点との関係 項目 内訳 乳がん患者 n=128 非乳がん患者 n=76 有意確率 人数 平 値 SD 人数 平 値 SD 項目間 疾患間 互作用 PS PS=0 PS≧1 84 44 21.3 28.2 9.8 11.4 31 45 18.4 26.7 6.4 8.3 0.000 0.111 0.625 運動状況 している していない 39 89 22.4 24.3 9.4 11.5 31 45 20.2 23.0 8.2 8.3 0.117 0.264 0.769 化学療法 あり なし 35 93 22.9 24.0 9.3 11.1 41 35 22.8 20.8 8.8 7.6 0.747 0.279 0.313 放射線療法 あり なし 11 117 19.4 24.1 8.5 11.0 28 48 20.3 22.8 8.1 8.4 0.067 0.931 0.567 ホルモン療法 あり なし 40 88 25.4 22.9 11.3 10.6 10 66 23.5 21.7 6.9 8.5 0.273 0.417 0.881 痛み あり なし 30 98 28.3 22.3 12.8 9.9 17 59 27.0 20.4 10.0 7.2 0.000 0.348 0.854 不眠 あり なし 29 99 30.8 21.6 11.5 9.7 18 58 24.4 21.1 10.1 7.6 0.000 0.037 0.078 孤独感 あり なし 19 109 29.7 22.6 12.5 10.3 7 69 25.9 21.5 6.3 8.4 0.014 0.278 0.563 呼吸困難 あり なし 6 122 35.1 23.1 12.4 10.5 5 71 28.2 21.5 3.6 8.4 0.002 0.158 0.388 下痢 あり なし 7 121 31.6 23.2 11.4 10.7 10 66 27.7 21.0 10.9 7.6 0.003 0.230 0.747 嘔気嘔吐 あり なし 2 126 19.0 23.8 1.4 10.9 11 65 23.7 21.6 10.7 7.9 0.738 0.747 0.379 不穏 あり なし 8 120 31.4 23.2 12.4 10.6 2 74 21.0 21.9 9.9 8.3 0.364 0.146 0.255 p<0.05, p<0.005, p<0.001
すると乳がん患者は 66.4%が強度 怠感を感じており, 非乳がん患者では 61.8%が強度 怠感を感じていた. 外 来に通院するがん患者の 6割以上が強い 怠感を感じて いることが明らかになった.細川ら の研究では,入院患 者の 怠感は, 怠感の強い群 (CFS得点 19 点以上) の 患者が 60.4%であったことを報告している. 母集団が異 なるため一概に比較することはできないが, 入院してい る患者とほぼ同じ割合の患者が強い 怠感を感じて普通 に日常生活を送っている状況があるということを認識 し, 対策を検討する必要があると える. 乳がん患者・非乳がん患者別に CFS得点と対象属性の 関係についてみると, 乳がん患者の場合, PS≧ 1群 (p< 0.005), 痛みあり群 (p<0.05), 不眠あらい群 (p<0.001), 孤独感あり群 (p<0.05),呼吸困難あり群 (p<0.05),下痢 あり群 (p<0.05), 不穏あり群 (p<0.05) においてそれぞ れ有意差があり,PSが不良の患者およびそれぞれの症状 のある患者の CFS得点が高かった. 運動状況に関して は, 有意差はなかったが, 運動している患者のほうが運 動をしていない患者より CFS得点が低くい傾向にあっ た. 一般的に運動量が低下することで, 怠感増強につ ながるともいわれており, また, 様々な文献 で乳がん 患者の 怠感を軽減させるにはエクササイズが有効であ ることが明らかにされてきているので, どのようなエク ササイズが最も効果的なのかを検証し, 具体的に指導で きると 怠感の軽減につながる可能性があると える. 非乳がん患者においては, PS≧ 1群 (p<0.001), 痛みあ り群 (p<0.005), 下痢あり群 (p<0.05) の CFS得点が高 く有意差がみられた. 乳がん患者と非乳がん患者に共通 する項目は,PS,痛み,下痢であった.PSが不良な患者は 様々な身体症状を呈すことが知られている. 細川らの研 究 でも, PS不良患者はそうでない患者と比較し 怠感 が強いことを 慮して観察, アセスメント, 援助に努め る必要性を示唆している. 外来看護においても同様の援 助を検討する必要がある. 乳がん患者は, 身体的症状の ほかに, 孤独感あり群, 不眠あり群, 不穏あり群の CFS 得点が有意に高かった. 乳がん患者の場合, 退院後も再 発に対する不安があることが推測され, また再発してい ても日常生活は支障なく送れるため, 夫がいたわってく れない等の夫婦間の情緒的相互関係の不安定さ から孤 独感が強くなることが えられる. 乳がん患者の 怠感 を軽減させるには, 情緒的サポートを中心としたサポー ト体制の充実も重要であると える. 怠感は, だるい」「しんどい」「何もしたくない」な ど, 体験する患者によって異なる主観的症状である. そ れは 康を障害された人々において広く一般に経験され る症状である. しかし, 主観的症状であるため, 本人が 訴えない限りみのがされがちである. 外来においてはそ の傾向が強いことが えられる. そのため, 外来という 短い時間の制約された環境の中で, 患者一人一人の 怠 感を把握することは難しいことであるが, 今回の結果を 踏まえ,非乳がん患者には,PSの不良な患者や,痛みのあ る患者, 下痢を訴える患者に的をしぼり, 観察やアセス メントを行っていくこと, また乳がん患者には, それに プラスし, 不安や孤独感, 不眠等の把握をしていくこと が, 怠感軽減のケアに対する第一歩になると える. .今 後 の 課 題 今回, 乳がん患者と非乳がん患者の 怠感を比較した 結果, 乳がん患者の 怠感は, 不眠の有無において非乳 がん患者より 怠感が強いことが明らかになった. また, 非乳がん患者は, 身体的側面において CFS得点が有意 に高かったが, 乳がん患者は, 身体的側面だけでなく, 心 理的側面等によっても 怠感が強くなることが示唆され た.今後は,乳がん患者・非乳がん患者という 類でなく, それぞれ胃がん, 大腸がん, 肺がん等疾患毎の 怠感の 特徴が明らかにされ, 個別性の援助ができるようになる ことを期待する. .謝 辞 本研究にご協力いただきました患者様各位, A 病院の スタッフの方々に厚く御礼申し上げます. 引 用 文 献
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Fatigue in Breast Cancer Patients
and Non-breast Cancer Patients
Junko Ishida,
Mai Hosokawa,
Akemi Takei
Kazue Hirai,
Kazuko Ishida
and Kiyoko Kanda
1 Takasaki University of Health and Welfare 501 Nakaoorui-machi, Takasaki, Gunma 370-0033, Japan 2 National Hospital Organization Nishigunma National Hospital 1285 Kanai, Shibukawa, Gunma
377-8511, Japan
3 Gunma University Graduate School of Health Sciences, 3-39-22 Showa-machi, Maebashi, Gunma 371-8514, Japan
4 College of Nursing, School of Medicine, Yokohama City University 3-9 Fukuura, Kanazawa-ku, Yokohama, Kanagawa 236-0004, Japan
5 Niigata College of Nursing, 240 Shinnan-cho, Joetsu, Niigata 943-0127, Japan
Purpose: To compare fatigue in breast cancer patients and non-breast cancer patients,and to clarify the characteristics of fatigue in these two patient groups. Subjects and M ethods: We carried out a questionnaire survey of 126 breast cancer patients and 76 non-breast cancer patients. All subjects were outpatients of A hospital. The survey items included those related to fatigue,history of chemotherapy, radiotherapy and exercise therapy, Performance Status (PS), etc. The degree of fatigue was assessed using the Cancer Fatigue Scale(CFS). Results: Among the breast cancer patients,significantly higher CFS scores were observed in the PS≧1 group (p<0.005), the painful patient group (p<0.05), the insomniac patient group (p<0.001), the feeling-alone patient group (p<0.05), the breathing-problem patient group (p<0.05), and the restlessness patient group (p<0.005). Among the non-breast cancer patients,significantly higher CFS scores were observed in the PS≧1 group (p<0.001),the painful patient group (p<0.005),and the diarrhea patient group (p<0.05). When the scores on the CFS were compared between breast cancer patients and non-breast cancer patients and analyzed by disorder, a significant difference of the CFS score was observed only in the patient group with insomnia. Conclusion : It is evident that breast cancer patients show profound fatigue,not only in relation to somatic symptoms,but also in relation to psychotic symptoms, such as feeling alone. Among these symptoms, it is suggested that particular care may be necessary for patients with insomnia.(Kitakanto Med J 2011;61:153∼160)