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自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果 : メタアナリシスによる展望

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(1)

自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲

間媒介法の効果 : メタアナリシスによる展望

著者

金山 裕望

雑誌名

人文論究

68

1

ページ

287-310

発行年

2018-05-20

URL

http://hdl.handle.net/10236/00026937

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自閉スペクトラム症のある

児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

──メタアナリシスによる展望──

金 山 裕 望

Ⅰ.問題と目的

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders : ASD)とは,対人相 互作用において困難を抱えることを問題とする発達障害である(American Psychiatric Association, 2013)。ASD を抱える児童・青年(ASD 児)(1)の対 人相互作用の困難については,ASD 児と定型発達児との対人相互作用の行動 観 察 か ら 明 ら か に さ れ て い る(Bauminger, Shulman, & Agam, 2003 ; Humphrey, & Symes, 2011 ; Macintosh, & Dissanayake, 2006)。たとえ ば,学校の休み時間中の ASD 児と定型発達児との対人相互作用を観察した Bauminger et al.(2003)は,ASD 児から定型発達児への働きかけが少ない ことを報告している。このような ASD 児における休み時間中の対人相互作用 の少なさ は 複 数 の 研 究 で 報 告 さ れ て い る(Humphrey, & Symes, 2011 ; Macintosh, & Dissanayake, 2006)。また授業時間内での対人相互作用におい ても,ASD 児から定型発達児への働きかけが少ないことが報告されている (Kaneyama, Niwayama, Ishikawa, Sato, 2017)。以上のことから学校場面全

体において,ASD 児は対人相互作用をとることが少ないと言える。 対人相互作用の少なさは,ASD 児に様々な問題を引き起こす。たとえば ──────────── ⑴ 障害者自立支援法によって,障害児は 18 歳未満と定義されているため,本研究で は ASD を抱える児童と青年を含めて ASD 児と定義した。 287

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ASD児と定型発達児を対象とした調査によって,通常学級に在籍している

ASD児はクラスの中で関わりたいと思われることが少なく孤立していること

が多く,孤独感が高いことが報告されている(Lock, Ishijima, Kasari, & London, 2010)。また ASD 児の孤独感は ADHD 児や定型発達児よりも高く,

ASD児は児童期から青年期にかけて対人相互作用を望むようになることが示

唆されている(Deckers, Muris, & Roelofs, 2017)。加えて,対人相互作用が うまくいかないことにより,ASD 児はネガティブな情動を感じやすく,不安 症などの併存症を発症しやすくなるとされている(Bellini, 2006 ; Wood, & Gadow, 2010)。以上のことから,ASD 児と定型発達児との対人相互作用が起 こりにくいことは,ASD 児の精神的健康に悪影響を及ぼすと考えられる。 ASD児と定型発達児との対人相互作用を促進するための具体的な支援策は 各方面から求められている。たとえばわが国においても,ASD 児も含めた障 害のある子どもと定型発達児とが対人相互作用を行うことによって相互理解を 図ることが極めて重要であるということが国の方針として定められている(文 部科学省,2009)。しかしながら,障害のある児童とない児童との対人相互作 用を促す立場である教師は,ASD 児と定型発達児との対人相互作用を促すこ とが難しいと感じている(廣瀬・東條・寺山,2001)。このような背景から, ASD児と定型発達児の対人相互作用を促す具体的な支援法を確立することが 必要とされている。 ASD児と定型発達児との対人相互作用の問題を改善するための支援法とし

て,仲間媒介法(Peer-Mediated Intervention : PMI)が 挙 げ ら れ る。PMI とは,定型発達児に ASD 児との関わり方を教えたり,ASD 児との関わり方 や自然な環境で社会的な機会を増やす支援法であり,仲間が ASD 児の適切な 新しい行動,コミュニケーション,社会的スキルについての学びを手助けする ことを目指して使用される(Wong et al., 2014)。

PMIは ASD 児にとっても,仲間である定型発達児や教師にとっても有益

な支援法である。たとえば,Chan, Lang, Rispoli, O’Reilly, Sigafoos, & Cole (2009)は,(1)多様な仲間が支援者となりうること,(2)ASD 児の学校場

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面におけるインクルージョンを促進する可能性があること,(3)ASD 児と定 型発達児が対人相互作用を練習する機会が多く存在すること,の 3 点を PMI の利点として挙げている。このうち,(1)多様な仲間が支援者となりうるこ と,(3)ASD 児と定型発達児が対人相互作用を練習する機会が多く存在する こと,の 2 点については,多様な支援者と多様な場面で対人相互作用の練習 を 行 う こ と に 繋 が る た め,支 援 内 容 が 般 化 し や す く な る 可 能 性 が あ る (Stokes, & Baer, 1977)。また,(2)ASD 児の学校場面におけるインクルー ジョンを促進する可能性があることについては,PMI が有効であった場合に

ASD児と定型発達児とが関係性を作ることができ,それにより社会的なパー

トナーの数を増やすことができるようになることも可能であるとされている (Chan et al. 2009)。そのため ASD 児本人にとっても,障害のある児童との 対人相互作用をとることで互いの理解を深めることが望まれている定型発達児 に対しても,ASD 児と定型発達児との対人相互作用を生じさせることに困難 を抱えていた教師にとっても,PMI は有用な支援法であるといえる。

PMIは行動的支援の要素を組み合わせた支援法であり,PMI を適用する際

に行動的支援のどの要素を用いるかは支援者に委ねられている。たとえば

Watkins et al.(2015)は,ASD 児への PMI において,プロンプト,強化

子,近接性の手続きなどの行動的支援の要素が支援技法として用いられている が,行動的支援のどの要素を支援に含めるかは研究によって異なっていること を報告している。そのため PMI を適用する上で,行動的支援のどの要素を含 むことが ASD 児と定型発達児との対人相互作用を促進するのかという点につ いて明らかにする必要がある。

ASD児とその仲間を対象とした PMI は ASD 児の対人相互作用の改善に効

果的であることが報告されているが,多くの効果研究ではシングルケースデザ インが用いられてきた。たとえば Zhang, & Wheeler(2011)は,2006 年ま でにシングルケースデザインで実施された 8 歳までの ASD 児への PMI の効 果をメタアナリシスを用いて検証し,PMI が ASD 児の対人相互作用の増加 に効 果 的 で あ る と し て い る。ま た Dart, Collins, Klingbeil, & McKinley

289 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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(2014)は,2013 年までに実施された PMI の効果を検証し,PMI は ASD 児の対人相互作用の増加に有効であることを報告している。同様の結果は Bene, Banda, & Brown(2014)によっても再現されており,ASD 児と仲間 と対人相互作用の促進に PMI が効果的であると考えられる。

シングルケースデザインによって得られたデータを数量的に統合するための 統計手法として,シングルケースデザインのための効果サイズを用いたメタア ナリシスを行う方法がある。Tau-U はシングルケースデザインのための効果 サイズの一つであり,近年頻繁に用いられ始めている(Parker, Vannest, Davis, & Sauber, 2011)。Tau-U の特徴として,ベースライン期のデータの 傾き(トレンド)を統制した上で介入期とベースライン期のデータの間に統計 的に有意な差があるかを検定できること,データの分布に影響されないことな どがあげられる(Parker et al., 2011)。Tau-U を用いることで,シングル ケースデザインによって得られたデータの特徴を考慮したメタアナリシスを行 うことが可能になる。

ASD児と仲間を対象とした PMI についての展望論文は既に存在するが

(Bene et al., 2014 ; Chan et al., 2009 ; Chang, & Locke, 2016 ; Dart et al., 2014 ; Watkins et al., 2015 ; Zhang, & Wheeler, 2011),これまでに報 告されたメタアナリシスには 4 点の問題が残されている。

1点目として,Tau-U のようにベースライン期のトレンドを統制した統計

手法を用いて PMI が ASD 児の対人相互作用の促進に有効であるかを検証し たメタアナリシスがほとんど報告されていない(Bene et al., 2014 ; Zhang, & Wheeler, 2011)。ベースライン期のトレンドを統制できていないことは, 介入期に改善が見られていたとしても,ベースライン期のトレンドがそのまま 介入期でも維持されたのか,それとも介入により改善が見られたのかを判別す ることができないことを意味している。

2点目として,Tau-U を用いたメタアナリシスにおいても,ASD 児の対人

相互作用に焦点を当てていない(Dart et al., 2014)。そのため,PMI が ASD 児の対人相互作用に及ぼす効果を Tau-U を用いてメタアナリシスを行うこと

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で,PMI による効果を検証することが可能になる。 3点目として,過去のメタアナリシスでは 2013 年までに出版された論文の みを対象にしている。したがって,2013 年よりも後に報告された近年の研究 を含めたメタアナリシスによって,知見を最新のものに更新する必要がある。 4点目として,ASD 児の対人相互作用を促進するために PMI を適用する上 で,行動的支援のどの要素を用いるのが効果的かについて検討されていないこ とが挙げられる。ASD 児と定型発達児への PMI を展望した論文において, 介入形態や行動的支援の要素などのモデレーターが ASD 児への PMI の効果 に影響していることを示唆している(Chan et al. 2009 ; Watkins et al. 2015)。しかしながら特に支援技法については効果検討がなされてこなかっ た。Camargo, Rispoli, Ganz, Hong, Davis, & Mason(2015)は,ASD 児に 対人相互作用を教える際には,強化を用いることで用いなかった場合より高い 効果が生じることを報告しており,このような行動的支援の要素による効果の 違いは PMI においても生じうると考えられる。以上のことから Tau-U を用 いて ASD 児の対人相互作用の促進に近年実施された PMI が有効なのか明ら かにすること,そして行動的支援のどの要素が ASD 児の対人相互作用を促進 するのか明らかにする必要がある。 そこで本研究では,ASD 児の対人相互作用の促進を目標として実施された 近年の PMI の効果研究に関するメタアナリシスを行う。具体的には,シング ルケースデザインによって PMI の有効性を検討した研究を Tau-U を用いた メタアナリシスによって統合し,ASD 児の対人相互作用の促進効果を検証す る。加えて,PMI において実施された行動的支援のどの要素を用いることが ASD児の対人相互作用を促進するのかを明らかにする。

Ⅱ.方

論文の抽出基準 メタアナリシスの対象となる論文を抽出するために以下のような論文抽出基 291 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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準を設けた。すなわち,2014 年以降に出版された論文であること,論文が掲 載されている雑誌は査読付きの雑誌であること,ASD 児と定型発達児を対象 とした PMI を行っている論文であること,シングルケースデザインを用いて 効果検証を行っていること,を基準とした。コメントやレポート,レビュー, 基礎研究は対象外とした。

検索ワードは Watkins et al. (2015)と同様に,診断(autism)×支援法 (peer mediation, peer training, peer modeling, peer support)×効果指標 (social skill, interaction)とした。PsycINFO と Educational Resource In-formationCenter(ERIC)の 2 つのデータベースを用いて文献検索を行った。 その際,対象としたのは査読付きの論文とし,検索ワードを用いて検索を行っ た。 ①キーワードを用いた論文の検索:ERIC および PsycINFO において期間を 2014年 1 月−2017 年 10 月とし,査読付き論文のみを検索対象に設定した上 で,キーワードを用いて検索を行った。その結果,159 件の論文が抽出され た。 ②タイトル・アブストラクトにおけるスクリーニング:タイトルもしくはアブ ストラクトに autism と peer の 2 つのキーワードを含んでいる(ただし,研 究中で使用された介入プログラムの略称名が PEER であったものは除く),介 入を行っている論文を抽出した。その結果,75 件の論文が抽出された。 ③本文スクリーニング:PMI のメタアナリシスを行った Dart et al.,(2014) および DiSalvo, & Oswald(2002)を参考に研究デザインについての包含基 準を,ASD 児の仲間への PMI についての展望を行った DiSalvo, & Oswald (2002)を参考に PMI についての包含基準を作成した。まず研究デザインに ついての包含基準は,ASD 児と仲間を対象としている,仲間を対象とした介 入を行っており,仲間への介入内容が論文に記されている,効果指標として行 動観察データを取っている,効果指標は対人相互作用に関連している(働きか けや反応など),シングルケースデザインである,結果がグラフとして記され ている,支援を行っていないベースライン期と支援を行った介入期において, 292 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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各 3 回以上行動観察が行われている,であった。PMI についての基準は, DiSalvo, & Oswald(2002)(表 1)の定義に基づき,1)状況や随伴性を操作 する,2)仲間に直接的な支援を行う,のいずれかに該当し,なおかつそれら は対人相互作用場面で行われるものを対象とした。 コーディング データポイントのコーディングは大学院生 1 名と学部生 2 名で行った。定 規を用いて論文中に掲載されているグラフのデータポイントの大きさ(グラフ の 0 からデータポイントまでの長さ)を測定し,データポイント(cm)×100 ÷グラフの 0 から 100 までの大きさ(cm)という式に代入することで行動観 察データを算出した。その際,グラフのデータポイントがベースライン期と介 入期で区切られていないもの(Wichnick-Gills, Vener, & Poulson, 2016)に ついては,支援開始の直前までのデータポイントをベースライン期のデータ, 支援開始と同時期のデータポイントを支援期のデータとした。

また支援者(大人)から仲間への支援内容,および仲間から ASD 児への支 援内容を,教示,プロンプト,モデリング,ロールプレイ,強化,フィードバ ック,環境調整(近接・ルーティーンの変更)に分類した。分類は抽出された

1 DiSalvo & Oswald(2002)による仲間媒介法の分類

1)対人相互作用を促進するために状況や随伴性を操作する ・統合された遊びの集団 ・ピアバディ,ピアチユーター法 ・集団随伴性 2)対人相互作用を促進するために,社会的なインタラクション方法を仲間に教示する ・ピアネットワーク ・機軸行動訓練 ・仲間への働きかけ訓練 3)対人相互作用を促進するために,対象児に働きかけ方法を教示する ・対象児への働きかけ訓練 ・対象児と仲間への働きかけ訓練 293 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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論文内の表記に従った。ただし論文内に表記されていないものの,上記の分類 に当てはまると考えられたものは,各分類に該当することとした(付録 1)。

分析方法

Tau-Uを用いた分析を行い,Tau(Parker et al., 2011)を PMI の効果を

検証するための効果サイズとして算出した。分析は Vannest, Parker, & Gonen(2011)によるウェブアプリを用いた。分析を行ううえで以下の 3 つ の手順を踏んだ。まず 1 つ先行研究の対象者や指標ごとに,ベースライン期 のデータの傾き(トレンド)の影響を統制したうえで,AB デザイン間でトレ ンドが有意に変化しているかを検討するために Tau を算出した。次に先行研 究ごとに各対象および各指標の Tau を統合し,先行研究ごとに一つの Tau を 算出した。その際,複数の ASD 児を対象としているもしくは複数の行動指標 を採用している先行研究については,データポイントの数が Tau に与える影 響を統制するために,重み付けを行ったうえで一つの Tau を算出した。ただ しウェブアプリにおいて重み付けを行うことができるのは,複数の対象者およ び指標を用いているもののみであるため,1 名の対象者および指標が 1 つであ る先行研究については重み付けを行わなかった。最後に全ての AB デザイン 間の行動観察データのトレンドを比較した Tau を,重み付けを行ったうえで 算出した。

Ⅲ.結

本文スクリーニングの結果,17 件の論文が抽出された。各論文の概要を表 2に示す。表 2 においては各論文の概要に加えて,支援者(大人)から仲間へ の支援,仲間から ASD 児への支援,および支援者(大人)が ASD 児に対し て実施した個別支援も PMI の効果に影響することが想定されるため,支援者 (大人)による ASD 児を対象とした個別支援の有無も表 2 に示した。 対象となっている ASD 児の年齢は 3-19 歳であった。多くの研究が幼児・ 294 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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児童期を対象としていることが明らかになった。仲間についても ASD 児と同 年代の児童が多く参加していた。なお,仲間の中には定型発達児と ASD 児の 両方が含まれていた。支援形態については,全ての研究において支援者(大 人)から仲間への支援と,支援者から ASD 児への支援が併用されていた。ま た,仲間から ASD 児への支援についても,ほとんどの研究において行われて いることが示された。

効果指標については,ASD 児からの働きかけ(Bambara et al., 2016 ; Carter et al., 2017 ; Chung, & Douglas, 2015 ; Katz, & Girolametto, 2015 ; Lee, & Lee, 2015 ; McKenney et al., 2014 ; Rodriguez-Medina et al., 2016 ; Sreckovic et al., 2017 ; Wichnick-Gills et al., 2016 ; Vincent et al., 2017),ASD 児からの反応(Katz, & Girolametto, 2015 ; McKenney et al., 2014 ; Rodriguez-Medina et al., 2016 ; Sreckovic et al., 2017 ; Wichnick-Gills et al., 2016)が多く測定されていた。働きかけと反応を対人 相互作用としてまとめて測定しているもの(Chung & Douglas, 2015 ; Lee, & Lee, 2015 ; Papacek, 2015 ; Sreckovic et al., 2017)も存在した。

支援者(大人)から仲間への行われた支援と,仲間から ASD 児への支援の 内容を行動的支援の要素(教示,プロンプト,モデリング,ロールプレイ,強 化,フィードバック,環境調整)として分類・整理したものを表 3 と 4 に示 す。支援者(大人)から仲間への支援においては,17 件の論文において複数 の行動的支援を組み合わせて実施されており,行動的支援の要素は用いられた 件数が多い順に,プロンプト,強化と教示,モデリングと環境調整,ロールプ レイとフィードバックであった。一方で仲間から ASD 児への支援については 複数の行動的支援の要素を用いているものは 10 件であり,行動的支援の要素 は多い順にプロンプト,強化,モデリング,環境調整であった。

PMIが ASD 児の対人相互作用を促進しているかを検証するために,Tau

を算出した(表 5)。Tau の数値が正であれば,ベースライン期に比べて介入 期において効果指標が増加していることを示し,負であれば減少していること を示す。なお,Papaceck(2015)については,対象者および指標が 1 つであ

295 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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2 抽出された ASD 児を対象とした仲間媒介法の概要 研究 支援場面 対象児 注 2 ) 仲間 注 2 )注 3 ) 支援 者(大 人) →仲間 仲間→ ASD 児 支援 者(大 人) → ASD 児 Bambara e t a l.( 2016 ) 学校のカフェ(お昼休み) 男児 2 名,女児 1 名( 14-15 歳) 8 名( 16-18 歳 ) ⃝⃝⃝ C a rt er et a l.( 2017 ) 学校(ビジネス,数学, 科学,体育の時間) 男児 2 名( 17-18 歳) 4 名 ⃝⃝⃝ Chung, & Douglas ( 2015 ) 学校(図書,美術の時間) 男児 2 名( 10-12 歳) 男児 4 名( 5 年生) ⃝ ⃝ H u n d e rte ta l.( 2014 ) 幼稚園(休み時間) 男児 1 名( 4 歳) ,女児 2 名( 5 歳) 記載なし ⃝ ⃝ ⃝ Katz, & Girolametto ( 2015 ) 注 1 ) センター 男児 1 名( 5 歳) 女児 1 名( 4 歳) ⃝ ⃝ L ee, & L ee ( 2015 ) 幼稚園の教室(休み時間) 男児 2 名( 3-4 歳) , 女児 1 名( 3 歳) 9 名 ⃝⃝⃝ Lo rah e t a l.( 2014 ) センター 男児 3 名( 4-5 歳) ASD 男児 4 名( 4-5 歳) , ASD 女児 1 名( 4-5 歳) のうち数名 注 4 ) ⃝⃝⃝ Maso n e t a l.( 2014 ) 注 1 ) 学校(休み時間) 男児 3 名( 6-8 歳) 4-6 名 ⃝⃝⃝ McKenney e t a l.( 2014 ) 学校の教室(時間は不明) 男児 2 名( 9 歳) , 女児 1 名( 10 歳) 男児 1 名( 10 歳) ,女 児 2 名( 9-10 歳) ⃝⃝ Papace k ( 2015 ) 小学校の教室(放課後) 男児 1 名( 6 歳) 女児 1 名( 5 歳 ) ⃝⃝⃝ Reilly et al. ( 2014 ) 注 1 ) 学校の教室,図書館, 中庭(昼休み) 男児 1 名( 16 歳) ,女児 1 名 ( 18 歳) 男児 2 名,女児 9 名 ⃝⃝⃝ Rodríguez-Medina et al. ( 2016 ) 学校の教室(休み時間) 男児 1 名( 8 歳) 男児 8 名,女児 8 名 ⃝⃝⃝ Sr ec kovic e t a l.( 2017 ) 学校の空き教室や会議室 (昼休み) 男児 3 名( 15 歳) 14 名( 9-11 年生) ⃝ ⃝ ⃝ S trasbe rge r, & F e rre ri ( 2014 ) 特別支援学校の別室 男児 3 名( 8-12 歳) 男児 1 名,女児 3 名⃝ ⃝ Thiemann-Bourque, & Brady ( 2015 ) 幼稚園のアクティビティセン ター(スナックタイム) 男児 3 名( 3-5 歳) , 女児 1 名( 3 歳) 7 名 ⃝⃝⃝ V in ce n te ta l.( 2017 ) 小学校や幼稚園(休み時間) 男児 4 名( 5-9 歳) , 女児 2 名( 8 歳) 記載なし ⃝ ⃝ Wichnick-Gills et al. ( 2016 ) 学校の教室(授業の余暇活動 の時間) 男児 2 名( 6-8 歳) , 女児 1 名( 9 歳) ASD 男児 2 名( 6-8 歳) , ASD 女児 1 名( 9 歳) 注 4 ) ⃝⃝⃝ 注 1 ) ASD 児と仲間とが一緒になって支援を受けたセッションを含んでいる 注 2 )本研究で分析対象となった児童・青年の特徴を記載し た 注 3 )年 齢,性 別 が表記されていないものは論文中に表記されていないことを指す 注 4 )対象児と仲間に重複があり,特定の対象児が他の対象児の仲間となっていた 296 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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3 支援者(大人)による仲間への支援の内容 教示 プロンプト モ デ リ ング ロー ル プ レ イ 強化 フィ ー ドバ ッ ク 環境調整 (近接 ・ ルーティーン) Bambara e t a l.( 2016 )○ ○ ○ Car ter et al. ( 2017 )○ ○ Chung, & D ouglas ( 2015 )○ ○ H u n d e rte ta l.( 2014 )○ ○ ○ Katz, & Girolametto ( 2015 ) 注 1 ) ○○ ○ ○ Lee, & L ee ( 2015 )○ ○ ○ Lor a h e t a l.( 2014 )○ ○ Maso n e t a l.( 2014 ) 注 1 ) ○○ ○ M cKenney et al. ( 2014 )○ ○ ○ ○ Papac e k ( 2015 )○ ○ ○ Reilly et al. ( 2014 ) 注 1 ) ○ Ro drígue z-Me dina e t al. ( 2016 )○ ○ ○ ○ ○ ○ S trasbe rge r, & F e rre ri ( 2014 )○ Sr ec kovic e t a l.( 2017 )○ Thiemann-Bour q ue, & Br ady ( 2015 )○ ○ ○ ○ Wic hnic k -Gills et al. ( 2016 )○ ○ V in ce n te ta l.( 2017 )○ ○ 注 1 )ASD 児と仲間とが一緒になって支援を受けたセッションを含んでいる 297 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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4 仲間による ASD 児への支援の内容 教示 プロンプト モ デ リ ング ロー ル プ レ イ 強化 フィ ー ドバ ッ ク 環境調整 (近接 ・ ルーティーン) Bambara e t a l.( 2016 )○ Car ter et al. ( 2017 )○ ○ ○ ○ Chung, & D ouglas ( 2015 ) H u n d e rte ta l.( 2014 )○ ○ Katz, & Girolametto ( 2015 ) 注 1 ) Lee, & L ee ( 2015 )○ Lor a h e t a l.( 2014 )○ Maso n e t a l.( 2014 ) 注 1 ) ○ M cKenney et al. ( 2014 ) Papac e k ( 2015 )○ ○ Reilly et al. ( 2014 ) 注 1 ) ○○ ○ ○ Ro drígue z-Me dina e t al. ( 2016 )○ ○ S trasbe rge r, & F e rre ri ( 2014 )○ ○ ○ Sr ec kovic e t a l.( 2017 ) Thiemann-Bour q ue, & Br ady ( 2015 )○ ○ Wic hnic k -Gills et al. ( 2016 ) V in ce n te ta l.( 2017 )○ 注 1 )ASD 児と仲間とが一緒になって支援を受けたセッションを含んでいる 298 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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5 レピユーに含まれた論文の重み付けを行った Tau と 90 % 信 頼区間 研究 ベースラインを 未修正の Tau 90 % 信頼区間 ベースラインを 修正済みの Tau 90 % 信頼区間 Bambara e t a l.( 2016 ) Car ter et al. ( 2017 ) Chung, & D ouglas ( 2015 ) H u n d e rte ta l.( 2014 ) Katz, & Girolametto ( 2015 ) Lee, & L ee ( 2015 ) Lor a h e t a l.( 2014 ) Maso n e t a l.( 2014 ) M cKenney et al. ( 2014 ) Papac e k ( 2015 ) 注 1 ) Reilly et al. ( 2014 ) Ro drígue z-Me dina e t al. ( 2016 ) S trasbe rge r, & F e rre ri ( 2014 ) Sr ec kovic e t a l.( 2017 ) Thiemann-Bour q ue, & Br ady ( 2015 ) Wic hnic k -Gills et al. ( 2016 ) V in ce n te ta l.( 2017 ) 全体 0.99 0.76 0.94 1.00 1.00 1.00 1.00 0.99 0.74 0.92 0.92 0.19 0.93 0.73 0.85 0.81 0.61 0.78 0.77-1 0.44-1 0.62-1 0.69-1 0.49-1 0.64-1 0.57-1 0.73-1 0.49-0.99 0.38-1 0.50-1 -0.02-0.40 0.55-1 0.58-0.88 0.60-1 0.68-0.94 0.48-0.73 0.72-0.85 0.78 0.68 0.99 1.04 1.09 1.07 1.00 0.98 0.60 0.55 1.18 0.19 0.84 0.77 0.84 0.86 0.60 0.74 0.56-0.99 0.36-1 0.67-1 0.73-1 0.58-1 0.71-1 0.57-1 0.72-1 0.35-0.85 0-1 0.76-1 -0.02-0.40 0.47-1 0.63-0.92 0.59-1 0.73-0.99 0.48-0.73 0.68-0.81 注 1 )対象者および指標が 1 つであったため,重み付けを行っていない 299 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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ったため,重み付けを行っていない。またウェブアプリの構造上,Tau が 1 を超えても信頼区間の上限は 1 を超えて算出されないため,表 5 はウェブア プリの出力のまま上限を 1 として示している。その結果,PMI は ASD 児の 社会的な行動を有意に増加させていた(Tau=0.78, p<.001, 90% 信頼区間 [CI ][0.71, 0.84]:表 5)。 支援者(大人)から仲間への支援のうち,行動的支援の要素により効果に違 いがあるかを検討するために,行動的支援の要素の有無による Tau と 90% 信頼区間を算出した(表 6)。その結果,支援者(大人)から仲間への支援に おいてはロールプレイ,フィードバックにおいて支援の実施の有無によって対 人相互作用の増加に差が見られた。ロールプレイを実施した先行研究とフィー ドバックを実施した先行研究は同一の先行研究であった(Bambara et al., 2016 ; McKenney et al., 2014 ; Rodriguez-Medina et al., 2016 ; Thiemann -Bourque & Brady, 2015)。ロールプレイを実施した先行研究よりも実施して いない先行研究において,対人相互作用が多く生じており(ロールプレイ:

Tau=0.62, p<.001, 90% 信頼区間[CI ][0.50, 0.74];ロールプレイなし:

Tau=0.83, p<.001, 90% 信頼区間[CI ][0.75, 0.90]),ASD 児の対人相互

6 行動的支援の要素の有無による Tau と 90% 信頼区間 行動的要素の有無 ベースラインを修正済みの Tau 90% 信頼区間 教示あり 教示なし プロンプトあり プロンプトなし モデリングあり モデリングなし ロールプレイあり ロールプレイなし 強化あり 強化なし フィードバックあり フィードバックなし 環境調整あり 環境調整なし 0.83 0.74 0.75 0.81 0.69 0.80 0.62 0.83 0.73 0.83 0.62 0.83 0.74 0.78 0.73−0.93 0.66−0.82 0.67−0.83 0.71−0.92 0.55−0.87 0.73−0.87 0.50−0.74 0.75−0.90 0.65−0.81 0.73−0.93 0.50−0.74 0.75−0.90 0.59−0.90 0.71−0.85 300 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

(16)

作用がより増加することが示された。またフィードバックについても,フィー ドバックを実施した先行研究よりもフィードバックを実施しなかった先行研究 において対人相互作用が多く生じており(フィードバック:Tau=0.62, p <.001, 90% 信頼区間[CI ][0.50, 0.74];フィードバック:Tau=0.83, p <.001, 90% 信頼区間[CI ][0.75, 0.90]),ASD 児の対人相互作用がより増 加することが示された。以上のことからロールプレイおよびフィードバックを 実施した先行研究よりもロールプレイおよびフィードバックを実施していない 先行研究において対人相互作用が多く生じていたことが明らかになった。

Ⅵ.考

本研究の目的は,Tau-U を用いたメタアナリシスによって PMI による ASD児の対人相互作用の促進効果を明らかにした上で,PMI において実施さ れた行動的支援のどの要素が ASD 児の対人相互作用を促進するのか検討する ことであった。

メタアナリシスにおいて Tau は中程度の効果を示しており,PMI は ASD 児の対人相互作用に対する支援に有効であることが示された。また,対人相互 作用を促進する行動的支援の要素については,ロールプレイを実施した先行研 究よりもロールプレイを実施していない先行研究の方が対人相互作用を多く生 じさせたことが示された。またフィードバックについても,フィードバックを 実施した先行研究よりもフィードバックを実施していない先行研究の方が対人 相互作用を多く生じさせたことが示された。 本研究の対象に含まれた ASD 児および仲間の多くが,幼児・児童期であっ た。この結果は PMI が幼児児童期に多く適用されているという先行研究 (Dart et al., 2014)と同様であった。青年期以上の年齢層に適用例が少ない 理由の 1 つに,青年期において定型発達の仲間を用いることは ASD 児の社会 性の欠如を思わぬ形で強調し,非難や社会的な排斥を増加させる可能性も存在 すること(Chan et al. 2009)が想定される。つまり ASD 児および仲間の年

301 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

(17)

齢層が高いほど,定型発達児が ASD 児の対人相互作用の問題を特異であると 認識してしまう可能性が高く,ASD 児を受け入れてくれる仲間を選択するこ とが難しくなるため,青年期以上の年齢層では適用が難しいと考えられる。こ のような問題を解消するためには,幼児・児童期から PMI を実施したり,ボ ランティアなどで ASD 児と関わることを望む定型発達児を仲間にすること (Bambara et al., 2016 ; Sreckovic et al., 2017)などが重要だと考えられる。

ただし,青年期以上の年齢層においては上記のような点について実際に検証し た研究そのものが少ないため,実証的な研究を通じてこれらの点を明らかにす る必要がある。 効果指標については,最も多かったのは,ASD 児からの働きかけであり, 次に ASD 児からの反応を測定しているものが多かった。その一方で,対人相 互作用として ASD 児からの働きかけと仲間からの反応,もしくは仲間からの 働きかけと ASD 児の反応を 1 ユニットとして測定している研究も存在した。 ASD児と定型発達児との対人相互作用が生じているかを確認するためには, ASD児の働きかけだけが生じたとしても不十分である。たとえば Kaneyama et al.(2017)は,ASD 児が適切に働きかけたにもかかわらず,定型発達児か らの適切な反応が生じなかったため,対人相互作用が生じなかったことを報告 している。以上のことから今後の研究においては,ASD 児からの働きかけの みを効果指標とするのではなく,ASD 児と仲間の行動を対人相互作用の 1 ユ ニットとして行動観察を行うことが望まれる。 本研究により展望を行った先行研究の多くにおいて,プロンプトと強化が用 いられていた。この結果は Watkins et al.(2015)と同様であり,PMI にお いてプロンプトと強化が重要な役割を果たしていると考えられる。モデリン グ,ロールプレイ,フィードバック,環境調整を行っていた研究は 4-5 件ずつ であった。強化やプロンプトが定型発達児の日常場面で実施可能である一方 で,モデリングやロールプレイ,フィードバックについては仲間を取り出しで 行う必要がある支援である。そのため,モデリングやロールプレイ,フィード バックを行う際には,PMI を行う際に,なぜ仲間が取り出しで支援を受けて 302 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

(18)

いるのかを明確に説明することが重要になると考えられる。

ASD児に対する PMI の効果は中程度の効果であった。この結果は Tau-U

を用いて ASD 児に対する PMI の効果を検証したメタアナリシスと同程度で あり(Dart et al., 2014),Tau 以外の指標を用いたメタアナリシスにおいて も 中 程 度 か ら 高 い 効 果 が 示 さ れ て い る(Bene et al., 2014 ; Zhang, & Wheeler, 2011)。そのため PMI は ASD 児の対人相互作用の改善に有効であ るといえるだろう。 PMIに行動的支援の要素が及ぼす影響については,教示,プロンプト, ロールプレイ,フィードバック,強化,環境調整の有無によって効果に違いは 示されなかったが,ロールプレイについては実施なしの方が実施した場合より も効果が高いことが示された。またフィードバックについても実施なしの方が 実施した場合よりも効果が高いことが示された。ロールプレイは大人(支援 者)が仲間に対して ASD 児への関わり方を演じてもらうことを,フィードバ ックは大人(支援者)が仲間に対し ASD 児にすでにとっている対人相互作用 を修正することを意味している。そのため日常生活において仲間が ASD 児に とっていた対人相互作用を修正されることを求められるため,日常場面におい て仲間が ASD 児に働きかけにくくなることが影響すると考えられる。しかし ながらロールプレイを行った先行研究とフィードバックを行った先行研究は同 一であったため,ロールプレイの実施とフィードバックの実施の効果が交絡し ていると考えられる。そのためロールプレイとフィードバックのいずれかが対 人相互作用に及ぼす効果については本研究では検討することができなかった。 今後の展望として以下の 4 点を述べる。まず 1 点目として,PMI は我が国 においても有用な支援法となる可能性がある。PMI は ASD 児だけでなく, 仲間を含めた支援を行うことで,ASD 児と仲間との対人相互作用の改善が見 込まれる。その結果,我が国において望まれている ASD 児と定型発達児との 対人相互作用を促すことが可能になる。しかしながら我が国では,近年に至る まで ASD 児と定型発達児との対人相互作用を促すことを目指した仲間媒介法 の効果は検討されていない。我が国においても PMI を学校場面などにおいて 303 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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普及させることで,ASD 児と定型発達児との対人相互作用が改善し,ASD 児 と定型発達児との相互理解を深め,かつ教師の負担を軽減できる(Chan et al., 2009)ことが予想される。 2点目として,PMI を通して仲間が ASD 児に教える内容によって,効果が 異なる可能性が挙げられる。たとえば PMI を通して ASD 児に対し働きかけ を教えることが困難であっても,反応を教えると反応の生起数が増加すること が報告されている(Strasberger, & Ferreri, 2014)。そのため今後の研究にお いては,PMI の全体の効果を算出するだけでなく,ASD 児に働きかけを教え るのか反応を教えるのかで効果が異なるのかを検証する必要があると考えられ る。 3点目として,本研究で取り上げた行動的支援の要素以外のモデレーターが PMIに及ぼす効果を検証することが挙げられる。具体的なモデレーターとし て,ASD 児の言語水準や所属する学級などが想定される。本研究においてメ タアナリシスを行った先行研究においても,無発語の ASD 児(たとえば Thiemann-Bourque & Brady, 2015)や特別支援を受けている ASD 児(たと えば Chung & Douglas, 2015),通常学級に在籍している ASD 児(たとえば Sreckovic et al., 2017)が含まれていた。言語水準や在籍している学級によっ て対人相互作用の質が異なることが想定されるため,今後の研究ではモデレー ターとして分析されることが望まれる。 4点目として仲間が ASD 児に行った行動的支援の要素が ASD 児と仲間と の対人相互作用に及ぼす効果について検討することが挙げられる。本研究にお いては支援者が仲間に対して行動的支援のどの要素を用いることが効果的であ ったのかを検証していたが,仲間が ASD 児に対して行動的支援のどの要素を 用いることが効果的であるのかを検証することも重要であると考えられる。 本研究の限界点として,以下の 5 点が挙げられる。まず 1 点目として,行 動的支援の要素のコーディングを行った評定者が 1 名であったことが挙げら れる。2 点目として,Tau-U を用いたメタアナリシスを行う上でパブリケー ションバイアスについて検討する方法が現時点で確立されていないことが挙げ 304 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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られる。本研究の対象となったのは査読付きの雑誌に掲載された研究であった ため介入効果が十分に存在する研究のみが対象となってしまい,行動的支援の 要素による違いが見られなかった可能性も存在する。3 点目として行動的支援 の要素の効果の比較を行う際に行動的支援の特定の要素を用いている論文数が 少なく(もしくは多く),比較を行った行動的支援の要素以外の条件を統制で きていないことが,本研究の結果に影響した可能性がある。今後はメタアナリ シスの対象となる研究数を増やしたり,比較する行動的支援の要素以外の他の 行動的支援の要素についても統制した上で,行動的支援の要素が ASD 児の対 人相互作用を促進しているか検討することが望まれる。4 点目として,仲間の みに支援を行った研究は少なく,同時に ASD 児への直接的な支援を行ってい るものが多い。そのため ASD 児に対する支援と PMI の効果が交絡している 可能性について検証しなければならない。5 点目として般化効果についての検 討が行われていないことが挙げられる。以上の限界を踏まえて,今後の研究に おいては,複数名で行動的支援の要素コーディングすること,パブリケーショ ンバイアスについての検討,条件を統制した上での行動的支援の要素の検討, PMIのみの効果の検証,般化効果の検証が望まれる。

Ⅴ.本研究のまとめ

本研究は,近年実施された ASD 児の社会性に対する PMI が中程度の効果 を示すことを明らかにした。それに加えてこれまで検討されてこなかった行動 的支援の要素の実施の有無による効果の比較を行い,PMI を適用する上で効 果的な行動的支援の要素を明らかにしたことは有意義であると言える。本研究 で得られた結果を踏まえて,今後我が国においても ASD 児の対人相互作用に 対する PMI が行われることが望まれる。 謝辞 本研究の執筆にあたりご指導いただいた佐藤寛先生に感謝を申し上げます。また 305 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

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コーディングにあたり協力してくれた佐藤寛ゼミの田邊雅子さんと松元秋穂さんにも 感謝を申し上げます。

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付録

Abstract

Peer-mediated interventions(PMI)are typically conducted to facilitate social in-teraction of children and adolescents with autism spectrum disorders(ASD). This meta-analytic review attempted to examine the effectiveness of PMI for children and adolescents with ASD and identify the differential effect of the behavior ap-proach in PMI. The review examined 19 studies and calculated the overall effect size and the effect size of planned behavior components(instruction, prompts, mod-eling, role-play, reinforcement, feedback, and environmental arrangement). The overall effect size suggested that the effectiveness of PMI for ASD was moderate (Tau=0.78, p<.001, 90% CI : 0.71, 0.84). In addition, the interventions did not use planed role-play or feedback were more effective than the interventions that did role-play or feedback(without role-play or feedback : Tau=0.83, p<.001, 90% CI : 0.75, 0.90 ; with role-play or feedback : Tau=0.62, p<.001, 90% CI : 0.50, 0.74). The results, future directions, the limitations of this review were then discussed.

──大学院文学研究科博士課程後期課程── 付録1 カテゴリーに該当するとみなした内容の例 教示 対人相互作用について講義を行う,何らかの刺激(本やボードなど) を用いて場面を例示する プロンプト マンドを出す,ASD 児に対し仲間や大人からの働きかける(ジェス チャーなども含む),事前にカードに質問内容を書かせる モデリング ビデオモデリング,パペットなどを用いてスキルを使用している様子 を再現する ロールプレイ ASD児への関わり方を練習する 強化 ASD児からの働きかけに反応する フィードバック 該当なし 環境調整 ASD児と定型発達児の物理的な距離を近づける,ASD 児の興味関心 が強いものを扱う,ASD 児と仲間が対人相互作用を持つ機会を提供 する 310 自閉スペクトラム症のある児童青年を対象とした仲間媒介法の効果

表 6 行動的支援の要素の有無による Tau と 90% 信頼区間 行動的要素の有無 ベースラインを修正済みの Tau 90% 信頼区間 教示あり 教示なし プロンプトあり プロンプトなし モデリングあり モデリングなし ロールプレイあり ロールプレイなし 強化あり 強化なし フィードバックあり フィードバックなし 環境調整あり 環境調整なし 0.830.740.750.810.690.800.620.830.730.830.620.830.740.78 0.73−0.930.66−0.820.67−0.8

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