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小学校プログラミング教育の現状と教員養成 : 道徳科,特別活動,特別支援教育

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Academic year: 2021

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小学校プログラミング教育の現状と教員養成

―道徳科,特別活動,特別支援教育―

平 田 繁 岩 男 芙 美 藤 瀨 教 也 野 上 俊 一

The Relationship between Elementary School Programming Education and Teacher Training

Moral Education, Special Activities and Special Needs Education

Shigeru Hirata Fumi Iwao Noriya Fujise Shunichi Nogami

.背 景

年度から新学習指導要領全面実施で,小学校にお いてプログラミング教育が実践される。小学校プログラ ミング教育は,学習指導要領において「学習の基盤とな る資質・能力」と位置付けられた「情報活用能力」の育 成や情報手段(ICT)を「適切に活用した学習活動の充 実」を進める中で取り扱われる。そして,小学校プログ ラミング教育は特定の教科のみで実施するものではなく 教育課程全般および教育課程外の場面を通して行われる ことから,円滑な教育実践の導入のために便宜上,小学 校プログラミング教育の学習活動が つに分類されてい る(文部科学省, )。特に教育課程内では次の つ, 「A 学習指導要領に例示されている単元等で実施する もの」,「B 学習指導要領に例示されてはいないが,学 習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実 施するもの」,「C 教育課程内で各教科等とは別に実施 するもの」,「D クラブ活動など,特定の児童を対象と して,教育課程内で実施するもの」,に分類されている。 文部科学省は,プログラミング教育の円滑な実施に向け てプログラミング教育の手引きを作成したり,初等教育 資料( 年 月号)で「論理的思考力等を育むための プログラミング教育の在り方」の特集を組んだりするこ とで,小学校プログラミング教育の本質は何か,そのね らいは何か,各教科におけるプログラミング的思考の中 核となる論理的思考と関連付けて先進的な実践事例の紹 介を行い,小学校教員およびその関係者への周知を行っ ている。さらに,文部科学省,総務省,経済産業省は, 社会構造の急速な変化とそれに応じた教育の必要性を踏 まえて, 年 月を「未来の学びプログラミング教育 推進月間」として,アップルや NTT ドコモ等の IT 企 業の協力を得ながらプログラミング体験を展開し,「未 来の学びコンソーシアム HP で公開している実践事例等 活用した授業」を実施し,小学校教育のみならず社会全 体のプログラミング教育実施に対する機運醸成を図って いる。 一方で,大学等の小学校教員養成における小学校プロ グラミング教育への対応は,教育職員免許法及び同法施 行規則改正に関連する教職課程認定を通して,コアカリ キュラムの内容として教科の指導法の科目や教育の方法 に関する科目において学習指導要領を踏まえた ICT を 用いた指導方法の学習をすることが標準的であり,プロ グラミング教育自体を科目として学生に履修させること はない。また,小学校プログラミング教育の完全実施前 のため,実際の教育実践例の蓄積がなく,大学での教授 内容は文部科学省が公開した手引きや実践例に留まって おり,プログラミング教育を実践する際に教員にどの程 度の知識やスキルが必要であるか,いかに授業を構成す るかの実践知の提供が十分ではない。その実践知も,学 習指導要領に例示されている単元等で実施するA分類の 算数科や理科で主に実践研究が行われるため,算数科や 理科においてはプログラミング教育の授業をイメージし やすいが,それ以外の教科においては授業をイメージす ることが難しい。そのため,現段階で大学等は,小学校 教員免許を取得する学生自身がプログラミング経験を通 して知識やスキルを向上させ,その上でいかにプログラ ミング教育を実践していく力を培う場にはなっていない (山本, ;島田, )。 そこで本稿では,小学校プログラミング教育は特定の 教科によらない教育課程を編成し,実施されることを踏 まえて,実践事例が少ないB分類,C分類,D分類のう ち,全ての教育活動で行われる道徳教育の要と位置付け られる「道徳科」,より良い学級・学校生活作りに関わ る「特別活動」,そして,個々の児童の実態や特性に合 わせた支援のために ICT 機器の効果的活用が期待され る「特別支援教育」に焦点を当て,これらにおける現在 までのプログラミング教育の取り組みを整理することを 目的とする。

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.道徳科でのプログラミング教育

道徳教育は,道徳科を要として学校の教育活動全体を 通じて行い,道徳性の育成を目指すものである。要の道 徳科は,「道徳性を養うため,道徳的諸価値についての 理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考 え,自己の生き方についての考えを深める学習を通し て,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」 を目標としている。この目標を踏まえると,児童がプロ グラミングを体験しながら学習活動を進めることは考え にくい。また,年間標準授業時数上もプログラミング体 験の導入は厳しい。そのため,道徳科の内容や教材に焦 点を当てたプログラミング教育の実践例はほとんどな い。しかし,プログラミング教育のねらいを教員が理解 し,その本質を道徳教育の内容,教材,方法の点から教 員が他教科と関連付けることによって実施が可能であろ う。そこで,道徳科でのプログラミング教育の実施の方 向性を内容,教材,方法の点から論じる。 まず内容についてである。小学校の道徳科には内容項 目が 個(高学年の場合。低学年は 個,中学年は 個) ある。例えば,「真理の探究」や「希望と勇気,努力と 強い意志」「個性の伸長」といった内容項目について, Scratch を用いてロボットや車を動かすプログラムをグ ループで試行錯誤しながら作る活動を通して学ぶことが 可能であろう。プログラミング的思考を働かせ,想定通 りの動きをロボットや工作キットにさせるために,仲間 と協力し,継続的に取り組む中でそれぞれの児童が知識 や技能,態度を伸張させていく。道徳科の授業でプログ ラミング体験を実施するのではなく,道徳科の年間指導 計画に配列される主題と各教科等で行われるプログラミ ング体験を関連付けることによって道徳的な学びができ よう。そのため,特にプログラミング体験で行われる試 行錯誤やグループでの学び合いは,主題と関連させて配 列し実践することが有効である。 次に教材についてである。道徳科の教科書には,情報 モラルに関わる教材が各学年幾つか取り上げられてい る。例えば「みんなのニュースがかり」,「少しだけなら」, 「幸せコアラ」などである。これらは,「勤労」や「節 度節制」,「友情・信頼」を指導内容とする教材であり, メールや LINE,SNS 等の書き込みや心のすれ違い,イ ンターネット上の法やきまりを守れずに引き起こされた 話である。これらの教材の指導を通して,情報社会の倫 理,法の理解と遵守を学ぶこととなり,プログラミング 教育のねらいの つである「コンピュータ等を上手に活 用して身近な問題を解決したり,よりよい社会を築いた りしようとする態度を育む」につながるものと考えられ る。また,道徳科の主たる教材は,教科書教材が中心と はなるが,「児童の発達の段階や特性,地域の実情等を 考慮し,多様な教材の活用に努めること」とされている。 このことから,例えば,身近な生活の中に疑問を抱き, 多くの人々の生活を便利で豊かなものしようとプログラ ミングした人や集団の話などを教材化することは,児童 の心に響くと共に実際のプログラミング体験が自分自身 の生活に直接的に繋がっているという認識を形成するこ とが予想され,道徳科のねらいと同時に「プログラムの 働きやよさ,情報社会がコンピュータ等の情報技術に よって支えられていることなどに気付く」といったプロ グラミング教育のねらいをも満たすといえよう。 最後に,方法についてである。道徳科の指導では,登 場人物の心情理解に偏った指導を改め,新学習指導要領 では,問題解決的な学習が期待されている。問題解決場 面において,問題解決に至る道筋を考えることは論理的 思考を基礎とするプログラミング的思考に不可欠であ る。そこで,道徳科の教育においては論理的に最適な解 決方法が道徳的であるか否か,問題解決者の思考を道徳 的観点から考えることが重要であろう。人間としてより よく生きるために道徳的価値の理解はできるものの,人 間としての弱さや醜さからその価値の実現をできないこ とをいかに考えるか。日常生活の中で,相反する道徳的 価値について選択を迫られ,正解が存在しない場合もあ る。このような状況を想定し,自ら考え,他者と議論し, 物事(問題解決場面)を理知的に,情意的に,多面的・ 多角的に考えることは,道徳的な判断のもと,人間とし て他者とよりよく生きるための道徳性育成へつなぐこと ができるだろう。したがって,道徳科においてはプログ ラミング的思考を考える手立てとして活用し,授業実践 に組み込むことが可能であり,プログラミング的思考の 習得に繋がるだろう。また,児童が他教科でプログラミ ング体験をした学習の様子や振り返り,日記,実物,活 動写真などを導入や展開などに活用することによって, 児童自身の活動と現代的な課題を対応づけて考えさせる ことができる。このように道徳科においてプログラミン グの直接体験はしないが,教材に触れながら間接的な体 験を促すことや児童自身の実際の体験を生かす方法が考 えられる。 以上のことから,他教科でのプログラミング体験を道 徳性育成の観点から年間指導計画へ位置付け,社会にお けるプログラミングが関わった製品開発や問題解決のエ ピソードと児童のプログラミング体験と関連づける道徳 授業の考案,プログラミング的思考と問題解決学習の接 点を加味した指導方法などが期待される。

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.特別活動でのプログラミング教育

特別活動は,「集団活動」や「体験的な活動」を特質 としている。このことを通して人間関係形成や社会参画 に資する力を育むと共に自己実現の力を育むことが期待 されている。内容は,学級活動,児童会活動,クラブ活 動及び学校行事の四つであるが,本節では,学級活動, 児童会活動,クラブ活動におけるプログラミング教育の 取り扱いについて論じる。 まず学級活動であるが,「学級や学校における生活づ くりへの参画」等の内容及び年間標準時数 時間( 年 時間)を考慮に入れると,児童によるプログラミング 体験を実施することは難しいであろう。しかし,プログ ラミング的思考を働かせる授業を実施することは可能で ある。例えば,プログラムに含まれる順次処理,分岐処 理,反復処理を,学習過程に位置づけて,「学習の進め 方マニュアル」として学級活動コーナーに掲示したり, 教示したりすることである。するべきことを順番に取り 組むこと,条件によって取り組む内容が変わるときはそ れぞれに分かれること,ある条件に達するまで繰り返し 取り組むことなどは,学級活動中の話し合い時によく見 られる活動である。全員が順番に つずつ意見を出して いくなどは,順次処理,分岐処理,反復処理の全てを含 んでいる。特に,解決方法等の話し合いでは,話し合う べき事を確実に話し合い,仲間の参加を引き出しながら 合意を形成していくような話し合いの進め方の参考にな り,児童の自主的な活動を促すことができるだろう。 この「学習の進め方」を教室内の考え方のひな形にす ることによって,話し合い活動だけでなく,係活動や当 番活動,自分自身の学習の進め方までに考え方を活用し た応用に展開できる。例えば,学習係や健康係などが学 級の課題やより良い学級生活につながるプログラムを 作って皆に紹介したり,学級活動「健康で安全な生活態 度」等の指導の際に手洗いやうがいの一連の手続きをプ ログラミング化して実行することができたり,学習課題 の進め方や学習に必要な文具の準備の仕方などの手続き をプログラムとして理解することなどである。なお,こ れらを指導したり紹介したりする際に,教員がプログラ ミング的思考との関連性に言及することは,プログラミ ング教育のねらいを達成する一助になるだろう。 次に児童会活動である。具体的には代表委員会や委員 会活動,児童会集会活動が当てはまる。これらの活動は 主として高学年の児童が計画に基づいて運営するため, 児童がそれまでに算数科や理科,総合的な学習の時間等 のプログラミング教育で学んだプログラミング的思考を 生かすことができる。図書館や運動場の利用,給食の準 備や片付け,怪我や病気,トイレの使い方といった課題 や不便さといった問題があり,それらの問題解決の手続 きを考え,手続きを実行に移すことなどはプログラミン グ的思考が反映される。例えば,保健委員会が怪我や病 気の予防の手立て(プログラム)を作成し,児童集会で 発表する等である。しかしこれらの取り組みにおいて は,他の教科でのプログラミング体験等で獲得したプロ グラミング的思考だけで問題解決できるわけではなく, 問題を把握する力や他者と交渉し協力する力,集団を率 いる力や集団内で協力する力など総合的な力量が求めら れるだろう。したがって,児童会活動の中では,プログ ラミング体験による学びを生かし,プログラミング的思 考を活用して学校生活に関する問題を総合的に解決する 場になることが期待できる。 クラブ活動では,コンピュータやロボットを用いてプ ログラミングを直接扱うクラブ活動を設定し,プログラ ミング教育を実施することができる。江戸川区立東小松 川小学校では,micro:bit,Scratch,Viscuit 等,多様な ツールを用いて,年間 時間を充て活動している。主と して第 学年以上の同好の児童で編成される集団活動の ため,興味関心を持った児童が自主的,実践的に取り組 み,結果,個性の伸長が図られることが多い。そのため, 活動範囲は教科の学習では扱わないプログラミングコー ドの記述やセンサー機器の操作などにも広がり,活動時 間は休み時間や家庭で過ごす時間にまで連続発展する場 合もあるようだ。また,地域の専門家の協力を受けたり, 専門的指導員を配置したりして,継続的な支援を受ける ことができるならば,高度なプログラミング技能を習得 することも不可能ではない。 クラブ活動でプログラミングに慣れ親しんだ児童は, 自分自身の知識や技能を各教科等のプログラミング学習 や様々な活動場面でリーダーとなって,クラスの仲間の 学びを支え,クラス全体のプログラミング教育のねらい の達成度を高めていく役割が期待される。しかし,教育 課程全体に対する余剰時間数の減少により,今日のクラ ブ活動の時間も減少傾向である。近隣の小学校を見ると クラブ活動は年間 時間程度であり,現実的にはクラブ 活動でのプログラミング教育は,プログラミングクラブ を設置し,児童の興味や関心を喚起して,自らで試行錯 誤して取り組んで学習していく場の提供となるであろ う。 以上のことから特別活動におけるプログラミング教育 は,クラブ活動を中心として実践が広がり深まる可能性 が高いといえよう。また,クラブ活動以外の学級活動, 児童会活動,学校行事は,特に高学年児童がA分類の算 数科 年「正多角形」,理科 年「電気の性質と働き」, 総合的な学習の時間「情報化の進展」「情報技術」等で 学んだプログラミングを生かす場・活用する場として位

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置付けることが可能であり,教育上も有益であろう。な ぜなら,教職課程コアカリキュラムにおける「特別活動 の指導法」は,一般目標数 ,到達目標数 で,目標内 容からもプログラミング教育に関わることを無理に位置 付けることはできないためである。一方で,A分類で得 た知識や考え方を教科外で活用する機会はないため,獲 得した知識や考え方を教科学習に限定することなく汎用 的に活用する場となることが特別活動では期待できる。 したがって,これらの教育上の期待やメリットを実現す るためには,学校全体の教育課程においてプログラミン グ教育をいかに位置づけるかが重要な意味を持つことに なる。また,あくまでも児童の自発的な活動として尊重 しないと児童の負担過重を生じさせる可能性がある。

.特別支援教育でのプログラミング教育

特別支援学校においても, 年度から小学部でプロ グラミング教育を実施予定であり,新学習指 導 要 領 ( )には「児童がプログラミングを体験しながら, コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論 理的思考力を身に付けるための学習活動」を各教科等の 特質に応じて実施することとされている。 しかし,障害種や発達段階によって実践数の多寡があ ることは確かである。知的障害特別支援学校でのプログ ラミング教育に関して,爲川( )が中学部または高 等部を対象に実施した調査では, 校のうち,現状と してプログラミング教育を実施している学校が 校にと どまり, 校の学校では「実施予定がない」と回答し ている。理由として,生徒の知的発達水準による困難や, 興味関心が得られにくいことが想定されることに加え て,プログラミング環境の情報不足,ハードウェア環境 の不足,教員の知識・技能・研修不足などが回答として 挙げられていた。 そのような中でも,いくつかの貴重な実践例が散見さ れる。中廣・下村・須曽野( )は知的障害特別支援 学校高等部において,企業就職を目指す軽度の知的障害 を有する生徒の主体的な問題解決,コミュニケーション 力を育てることを目的として,Scratch を用いたプログ ラミング学習を実施し,教員の指示を待って動くことの 多かった生徒が,生徒間で意見を交わしながら問題解決 し,プログラミング作品を制作する中で達成感と自信を 得たことを報告している。また,石神井特別支援学校に おいては,学校と企業が連携して,知的障害のある中学 部の生徒にも利用しやすいプログラミング教材開発およ び実践を行っている。「繰り返しのプログラミングをやっ てみよう」というテーマで,自分の作りたいハンバーガー をプログラミングする授業内容であり,パンやレタスな どをカラーボールに置き換え,プログラミングを体験し た。生徒全員が可能な入力作業でできるカリキュラム で,興味関心を持ちやすい食べ物を使った実践であっ た。 小学部に関しては山崎・水内( )が,小学部 年 生の自立活動の時間に,江崎グリコ株式会社が開発した グリコードを用いた実践報告を行っている。グリコード は,タブレットとポッキーを用いるビジュアルプログラ ミングツールである。文字をタイプしたり読んだりする 必要が少なく,ポッキーをコードとして直接操作するこ とが知的障害のある児童の学習原理に適合するという理 由で選定された。チームで協力するよう設定し,目的を 達成するために必要な手順を思考したり,自分の考えを 整理して相手に伝えたり,相手の意図を理解して受容し たりすることをねらいとして実施された。 回の活動を 通して,他者への一方的関わりが目立った児童の他児と の適切な関係構築を促したことが示唆された。また,山 崎・水内( )は,同じく小学部の教育課程「遊びの 指導」の時間に, 年生から 年生を対象に,マテル社 のフィッシャー・プライスが発売するプログラミングロ ボットを用いて授業を実践している。コードが描かれた 胴体をつなげるだけで動かすことができ操作が容易なこ と,コードが 種類で,イラストで描かれているため見 て直感的に動作がわかること,動きがゆっくりしている ため早い動きを捉えるのが苦手な児童も動きを捉えられ ることから選定された。ルールを守って友達とかかわる こと,チーム内で与えられた役割を行うこと,プログラ ミング的思考能力の向上の つが目指された。結果とし て,動きを指示するプログラミングロボットを用いるよ うな活動では,方向の概念や方向の示す言葉の理解がお およそできていることが条件になることが示唆された。 これらの理解が可能な児童では,順番や時間を守って友 達と遊ぶ,自分の役割を理解して活動を行う,ロボット の動きを予測してコードの順番を考えるといった姿が見 られた。 以上の実践報告は,今後プログラミング教育の実施予 定がないと回答する知的障害特別支援学校が多い中で も,児童生徒の発達水準や概念理解の実態把握の上で, 児童生徒の興味関心(食べ物や動くロボット)や理解の 水準に合わせた教材選択や,チームによる問題解決を目 指す等の授業展開の工夫によって,知的障害のある児童 生徒に対してもプログラミング教育を実施することが可 能であることを示している。 他方,特別支援学校の中でも知的障害を伴わない視覚 障害,聴覚障害,肢体不自由,病弱の教育課程は,通常 の学校の教育課程に準じて実施される。 このうち,視覚障害を有する生徒については,木室

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( )が高校生を対象とした実践を報告している。情 報技術の基本原理を理解し身に着けるためにはプログラ ミングを行うことが効果的であるが,マウスや GUI を 多用する入力環境,実行結果のグラフィカルな表示,ビ ジュアルプログラミングなど,晴眼者がプログラミング を容易に行うようにするためのグラフィカル効果の多用 は,視覚障害のある児童生徒にとってのバリアになるこ とを指摘した。そのうえで,視覚障害のある高校生がコ ンピュータの仕組みを学ぶため,動きや音を聞いてたど ることができる移動ロボット玩具を用いていた。 また,聴覚障害を有する生徒に対しては,内野( ; )が報告している。いずれも聴覚障害のある高等部 の生徒を対象とした実践であり,Bootstrap を用いた授 業実践(内野, )や,ゲームをハックすることでプ ログラミングを学習する教材を用いた授業実践(内野, )で生徒のプログラミングへの理解度の向上や動機 づけが高まったことを報告している。 病弱,肢体不自由,あるいは小学部段階の児童生徒を 対象とした報告は見受けられなかった。準じる教育課程 の場合,児童生徒がもつ特性に配慮しつつも, 年の 小学部へのプログラミング教育実施に向けた積極的取組 みが必要と考えられるが,現段階ではその報告は決して 多くないことが明らかになった。

.教員養成における示唆

ここまで,道徳科,特別活動,特別支援教育の中での 現在までのプログラミング教育の取り組みを整理した。 いずれもプログラミング教育の実践例は少ないが,その 状況の中でもプログラミング教育のねらいを達成するた めに教科の特質に応じた導入が検討されていた。 年 度の完全実施後は授業実践例の蓄積が進むことが予想さ れるため,それらの蓄積を踏まえて,課題を整理してい くことがまずは求められるだろう。 特に,学習指導要領において単元等で実施することが 例示されていないB分類やC分類,D分類に含まれる教 科におけるプログラミング教育では,その教科の内容に いかにプログラミング体験を取り入れるかよりもむし ろ,児童を中心において教育課程全体でプログラミング 教育のねらいを達成することを意識することが求められ るだろう。この意識を持つことで,学習指導要領で謳わ れるカリキュラムマネジメントの視点を持って教育課程 を運用することにもつながるだろう。 この教育課程全体を見ることの重要性を踏まえれば, 小学校教員養成段階において小学校プログラミング教育 の実践に関する知識と技能を高めるためにはカリキュラ ムマネジメントを軸とする教育課程に対する深い理解が 不可欠である。教員志望学生は,児童に実際にプログラ ミング教育を行う立場になるため,どうしても関心がA 分類の指定単元においていかに教えるかという技術的な 問題に限定される傾向があり,全体的な教育課程との関 係を捉えることが困難なことが多い。具体的な単元にお ける教授学習上の技術的な問題だけでなく,児童が教育 課程全体を通して,教科横断的に,学年の進行に応じて 何をどのように修得していくのかという全体的視点を持 つことは,小学校プログラミング教育の本質を機能させ ることを可能にするだろう。 その意味では,文部科学省( )がプログラミング 教育の手引きにおいて,まずは教員自身がプログラミン グを体験することを通して,小学校プログラミング教育 のねらいを正しく理解することを求めていることから, 教員志望学生に対しても積極的にプログラミングを体験 する機会を提供することは不可欠であろう。コンピュー タやタブレット等を操作して,実際にプログラミングを する体験がなければ,ICT 機器の基本的なスキルの習 得やプログラミングの正しい理解は困難であり,それら を踏まえた小学校プログラミング教育の実践はさらに困 難だからである。 さらに,プログラミング体験を通してプログラミング 的思考という考える視点を獲得させることも重要であろ う。プログラミング的思考それ自体は汎用的であり,教 員にとっては教育課程を作ったり評価したりする際に重 要である。教育課程内の教科それぞれの目標と特質,児 童の実態,授業時数,他教科との関連を踏まえた実践方 法についての知識を持ち,プログラミング的思考を働か せることで,A分類以外の教科においても小学校プログ ラミング教育のねらいを達成することが可能であること を各教科の指導法の科目において言及する必要があるだ ろう。 今後,小学校教員養成課程においては,小学校プログ ラミング教育を教えるべき内容の つとして限定的に捉 えるのではなく,小学校教員としての資質を高める手段 としてプログラミング的思考の獲得を位置づけて,質の 高い教員養成という社会的要請につなげていくことが求 められよう。 文献 文部科学省( )小学校学習指導要領(平成 年告示)解説. 日本文教出版. 文部科学省( )小学校プログラミング教育の手引(第二版). 文部科学省( )「論理的思考力等を育むためのプログラミ ング教育の在り方」.『初等教育資料』 . . NO . 東洋館出版. 山本広志( )教員養成課程のシラバスにみる小学校プログ ラミング教育への対応状況に関する調査研究.山形大学教

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職・教育実践研究, , ‐ . 島田英昭・松村浩幸・森下孟・藤崎聖也・神原浩・渡辺敏明 ( )教員養成課程学生のプログラミング教育に関する 信念の調査.信州大学教育学部研究論集, , ‐ . 未来の学びコンソーシアム事務局「小学校を中心としたプログ ラミング教育ポータル」,パソコンクラブでのプログラミ ン グ 体 験.(https://miraino-manabi.jp/,閲 覧 日: 年 月 日.) 中廣 健治・下村 勉・須曽野 仁志( )特別支援学校に おける「スクラッチ」を用いたプログラミング学習の実践. 日本科学教育学会研究会研究報告, ( ), ‐ . 文部科学省( )小学校段階におけるプログラミング教育の 在り方について(議論の取りまとめ) 山崎智仁・水内豊和( )知的障害特別支援学校の自立活動 におけるプログラミング教育の実践―小学部児童を対象と したグリコードを用いて―,STEM 教育研究, , ‐ . 山崎智仁・水内豊和( )知的障害特別支援学校におけるプ ログラミング教育―小学部の遊びの指導における実践から ―,富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 教 育実践研究, , ‐ . 木室義彦( )視覚障害のある中高生のためのロボットを用 いたプログラミング教育,電子情報通信学会論文誌, ( ), ‐ 内野智仁( )聴覚障害生徒を対象としたプログラミング教 育の実践:Bootstrap を活用したマルチデバイス対応のデ ジタルコンテンツ制作,電子情報通信学会技術研究報告, ( ), ‐ 内野智仁( )聴覚障害生徒を対象としたプログラミング教 育の実践:Javascript プログラムのバグ修正による導入教 育,日本教育工学会研究報告集, ( ), ‐ 付記 本稿は中村学園大学プロジェクト研究費(平成 年度∼平成 年度:「プログラミング的思考を体験的に育む授業や教材の 開発」)の助成を受けた。

参照

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