• 検索結果がありません。

真菌特異的トランスポーターを利用した新規抗真菌剤ASP2397に関する開発研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "真菌特異的トランスポーターを利用した新規抗真菌剤ASP2397に関する開発研究"

Copied!
81
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

真菌特異的トランスポーターを利用した新規抗真菌

剤ASP2397に関する開発研究

著者

中村 郁子

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301乙第9407号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00129266

(2)

真菌特異的トランスポーター

を利用した新規抗真菌剤

ASP2397 に関する開発研究

(3)

本学位論文は、下記の原著論文を基に作成され、東北大学大学院薬学研究科に提出され たものである。

1. Discovery of a new antifungal agent ASP2397 using a silkworm model of

Aspergillus fumigatus infection.

Nakamura I, Kanasaki R, Yoshikawa K, Furukawa S, Fujie A, Hamamoto H, Sekimizu K.

J. Antibiot. 2017. 70: 41–44

2. ASP2397: a novel antifungal agent produced by Acremonium persicinum MF-347833. Nakamura I, Yoshimura S, Masaki T, Takase S, Ohsumi K, Hashimoto M, Furukawa S, Fujie A.

J. Antibiot. 2017. 70: 45–51

3. ASP2397 is a novel natural compound that exhibits rapid and potent fungicidal activity against Aspergillus species through a specific transporter.

Nakamura I, Ohsumi K, Takeda S, Katsumata K, Matsumoto S, Akamatsu S,Mitori H, Nakai T.

(4)

本論文中で使用した略語の一覧 AMB amphotericin B

CAS caspofungin

CFU colony-forming units

HMBC heteronuclear multiple bond correlation HPLC high performance liquid chromatography

HR-ESI-MS high resolution electrospray ionization mass spectrometry HSQC heteronuclear single quantum correlation

IPA invasive pulmonary aspergillosis ITC itraconazole

L-AMB liposomal amphotericin B

LC/MS/MS liquid chromatography-mass spectrometry LFB lung fungal burden

MEC minimum effective concentration MFG micafungin

MIC minimum inhibitory concentration PDA potato dextrose agar

PSC posaconazole

RPMI Roswell Park Memorial Institute TOCSY total correlation spectroscopy UV ultra violet

VRC voriconazole

b.i.d bis in die (latin: twice a day) i.p. intraperitonealy

i.v. intravenously p.o. per os

q.d. quaque die (latin: once daily) s.c. subcutaneously

(5)

目次 緒言 ... 1 第一章 抗アスペルギルス剤探索アッセイシステムの開発とASP2397 の発見 ... 8 1 序論 ... 8 2 実験結果 ... 9 2-1 抗アスペルギルス活性ライブラリーの開発 ... 9 2-2 カイコ幼虫を用いたA. fumigatus 感染系の開発 ... 9 2-3 抗真菌活性物質のスクリーニングとASP2397 の発見 ... 11 2-4 ASP2397 の in vitro 抗真菌活性 ... 13 2-5 ASP2397 の in vivo 感染系での生存効果 ... 13 3 考察 ... 15 第二章 ASP2397 の生産菌株の菌学的性質 ... 17 1 序論 ... 17 2 実験結果 ... 17 2-1 生産菌の培養上の特徴 ... 17 2-2 生産菌の形態学的性質 ... 18 3 考察 ... 20 第三章 ASP2397 と類縁体の培養生産、単離精製および構造解析 ... 21 1 序論 ... 21 2 実験結果 ... 21 2-1 種培養 ... 21 2-2 ASP2397 と AS2524371 物質の培養生産 ... 21 2-3 AS2488059 物質の培養生産 ... 21 2-4 ASP2397 と AS2524371 物質の単離精製 ... 22 2-5 AS22488059 物質の単離精製 ... 22 2-6 AS2488053 と AS2529132 物質の製造 ... 23 2-7 ASP2397 と類縁体の物理化学的性質および構造解析 ... 23 2-7-1 ASP2397 と類縁体の物理化学的性質 ... 23 2-7-2 ASP2397 と類縁体の構造決定 ... 25 2-8 ASP2397 および類縁体の in vitro 抗真菌活性 ... 30 3 考察 ... 31 第四章 ASP2397 の in vitro 抗真菌活性... 32 1 序論 ... 32 2 実験結果 ... 33 2-1 ASP2397 のヒト血清培地での病原性真菌に対する抗真菌活性 ... 33 2-2 ASP2397 の A. fumigatus に対する殺菌性効果 ... 37 2-3 ASP2397 の A. fumigatus に対する菌糸伸長作用 ... 38 3 考察 ... 41

第五章 マウスAspergillus fumigatus 肺感染モデルにおける ASP2397 の効果 ... 42

(6)

2 実験結果 ... 42 2-1 ASP2397 のマウスアスペルギルス呼吸器感染モデルにおける生存効果 ... 42 2-2 ASP2397 のマウスアスペルギルス呼吸器感染モデルにおける肺組織に及ぼす効果 .. ... 45 2-3 ASP2397 のマウスアゾール耐性アスペルギルス呼吸器感染モデルにおける生存効 果 ... 48 2-4 マウスアスペルギルス呼吸器感染モデルにおける ASP2397 とアゾール薬の併用 効果 ... 49 3 考察 ... 50 第六章 ASP2397 の作用機序解析 ... 52 1 序論 ... 52 2 実験結果 ... 52 2-1 ASP2397 低感受性株の取得と解析 ... 52 2-2 ASP2397 の真菌への取込み効果 ... 53 3 考察 ... 56 総括 ... 58 謝辞 ... 68 引用文献 ... 69

(7)

1

緒言

細菌と真菌は、一般的に同じ菌という言葉から混同されがちであるが、生物学的にはその特 徴を大きく異にしている。一般的に病院で処方される抗生剤と言われるものは、染色体 DNA が細胞の中に裸で存在する原核生物の「細菌」が起こす感染症に対する薬である。一方、抗真 菌剤は、染色体が核の中に存在するヒトと同じ真核生物の「真菌」が起こす感染症に対するも のである。 真菌症は表在性真菌症と深在性真菌症の二つに大別される 1, 2。表在性真菌症は、水虫と称 され最も身近で頻度が高い真菌症で、体表に局在する真菌が皮膚の角質層や爪に感染すること によって引き起こされる。一方深在性真菌症は、真菌が臓器などの体の内部に感染し発症する 真菌症である。 深在性真菌症の原因真菌は、健常者に感染症を起こすものと、免疫不全状態に感染症を起こ すものに大別できる。前者は高病原性真菌であり、コクシジオイデス属、ヒストプラスマ属や クリプトコックス属などが知られており、クリプトコックス属以外は海外においてのみ感染す る輸入真菌症3, 4とされている。一方後者の、体の免疫状態が低下した状態になった時に、体 内に常在していた真菌が発症あるいは環境中に存在する真菌が感染することで起こる病原体 としては、カンジダ属とアスペルキルス属が頻度高く、次いでムコール属、フサリウム属、ス ケドスポリウム属などが報告されており、日和見真菌感染症2, 4と言われている。 近年、ステロイド治療、抗がん剤による治療、移植時の免疫抑制剤の使用等の医療的介入の 増加により、全身の免疫能が低下した易感染性患者における日和見真菌感染症が増加している。 これら易感染性患者における日和見真菌感染症は診断、治療ともに困難で、しばしば致死的な 経過を辿る重篤な感染症であり、医療上の問題となっている。臨床において頻度の高い深在性 真菌症はカンジダ症と報告されている5。主な起因菌は皮膚や消化管内の常在菌であるカンジ

ダ属であり、Candida albicans が最も頻度高く, 次いで C. glabrata, C. parapsilosis, C. tropicalis C. krusei の順で分離されている。侵襲性アスペルギルス症は、空中や土壌に広く分布するアス

(8)

2 の順で分離されている6。特に呼吸器を通して肺に到達し、肺の中で発症する侵襲性肺アスペ ルギルス症 (以下 IPA と略記する)は、急性の発熱や肺炎などを起こし、難治性で予後が悪い 疾患である。日本での病理剖検例における年次別推移においては、アスペルギルス症およびカ ンジダ症が死亡原因第1 位および第 2 位であり、2009 年の真菌症による死亡例の発生頻度は 4.6%(633/13787 例),アスペルギルス症 47.2%(299/633 例),カンジダ症 29.1%(184/633 例) であり、死亡に至った例ではアスペルギルス症が多い4 真菌(カビ、酵母、キノコの仲間等)はヒトと同じ真核生物であることから細胞の構造がよ く似ており、そのため抗真菌活性を有する化合物はヒトの細胞にも有害になる可能性が高く、 抗真菌剤開発は困難である。真菌とヒトの細胞の大きな違いは、真菌は堅い細胞壁を有してい ること、細胞膜がコレステロールではなくエルゴステロールで構成されることである。これら の相違点を主な標的として抗真菌薬が上市されてきた7 深在性真菌症に対する抗真菌薬(Figure 1)としては、1962 年にポリエン系抗真菌薬のアン ホテリシンB(以下 AMB と略記する)が初めて真菌症の治療に使われるようになった8。ア ンホテリシン B は細胞膜エルゴステロールへの結合による細胞膜障害作用を有し、抗真菌ス ペクトルが広く殺菌的な薬剤であり、現在でも使用されている。しかしながらヒトの細胞膜の コレステロールへも結合するため腎障害などの副作用を有し、充分量を長期間投与するには忍 容性の問題があった。1979 年に真菌の核酸合成を阻害する核酸アナログの 5-フルオロシトシ ンが開発されたが、単剤投与では耐性化しやすかったことや抗真菌スペクトルが限定されたこ とから、主にアンホテリシンB との併用の形で使用される9, 10真菌の細胞膜のエルゴステロー ルは小胞体内で合成される。アゾール系抗真菌薬は、真菌のエルゴステロール合成酵素である 14α-ステロールデメチラーゼに結合し、エルゴステロールの合成を阻害する。1989 年にフルコ ナゾール(FLC)11が認可されたことで副作用が軽減し安全に長期間の治療が可能となった。 実際フルコナゾールの臨床使用開始に伴い、フルコナゾールが優れた活性を示すカンジダ感染 症の予後は明らかに改善傾向がみえ、日本での病理剖検例における年次別推移においてもカン ジダ症が減少した4。一方、フルコナゾールはアスペルギルス属に対して活性を示さず、さら

(9)

3 た。1993 年にはアスペルギルス属に対して活性を有するイトラコナゾール(以下 ITC と略記 する)12が発売されたが、剤型が経口薬に限られ、吸収性の問題から血中濃度が高くなく、重 症アスペルギルス症の適応には問題があった。さらに2005 年には新世代のアゾール系抗真菌 薬であるボリコナゾール(以下VRC と略記する)13が登場した。ボリコナゾールはアスペル ギルス属に対して抗真菌活性が高く抗真菌スペクトラムも拡がり、難治性の侵襲性アスペルギ ルス症の臨床試験において初めてアンホテリシン B に勝る有効性を示した14。しかしながら ボリコナゾールは肝障害や視力障害などの副作用があり、代謝酵素であるCYP3A に対する強 い阻害作用を有するため、患者の併用薬剤には注意が必要である15。キャンディン系抗真菌薬 は細胞壁の主成分である(1-3)β-D グルカンを合成する酵素を阻害し、ヒト細胞に存在しな い細胞壁を標的とすることから極めて安全性が高い薬剤である。2002 年にミカファンギン(以 下MFG と略記する)が日本で初めて発売され、重症のカンジダ症や日本や英国に多い慢性ア スペルギルス症に対して使用されている 162012 年には同じキャンディン系抗真菌薬のカス ポファンギン(以下CAS と略記する)が認可された17。キャンディン系抗真菌薬はカンジダ 属に殺菌的に、アスペルギルス属に対して静菌的に有効性を示す一方、クリプトコッカス属、 トリコスポロン、ムコール等の担子菌類や接合菌について活性を示さず、C. parapsilosis に対 しては効きにくい。2006 年にはアンホテリシン B の真菌に対する作用を維持しながらヒト細 胞への傷害性を軽減し、副作用で問題であった腎臓への分布量を低下させるため、アンホテリ シンB をリポソームに封入した製剤のリポソーマルアンホテリシン B(以下 L-AMB と略記す る)が発売された18。しかしながら基本的な性質は残っており、軽減されたとはいえ腎障害を 中心とした副作用に対する注意は必要である。 このように、アンホテリシン B のみであった深在性真菌症の治療に対して、近年各種特徴 ある複数の抗真菌薬が使用できるようになったが、現在までに開発に成功した抗真菌薬は,ポ リエン系,フロロピリミジン系,アゾール系およびキャンディン系のわずか 4 クラスにとど まっている。各種の臨床試験成績を基に作成されている深在性真菌症のガイドライン19におい て、深在性真菌症治療の標準療法が設定されている。臨床で遭遇する頻度の最も高いカンジダ 症には、高い安全性と有効性を示すフルコナゾール、ミカファンギン、カスポファンギンが使

(10)

4 用されており、一定の成果を得ている。一方、難治性で予後が悪い侵襲性アスペルギルス症に は、無作為化臨床試験で初めてアンホテリシンB に勝る有効性を示したボリコナゾールが、ほ とんどすべての治療領域において標的治療の第一選択薬として推奨されている。またリポソー マルアンホテリシン B やキャンディン系薬剤は第二選択薬として使用されている。しかしな がらカンジダ症の発症率は減少傾向にあるものの,アスペルギルス症は国内発症率の剖検統計 上で増加傾向にあり、侵襲性アスペルギルス症治療に対する有効性には課題が残っている。侵 襲性アスペルギルス症の治療の成功には早期の診断と一刻も早い投薬開始が重要であると言 われており20-22、確定診断を待ってからの投薬では遅く、そのためアスペルキルス属全般に対 して抗真菌活性を有することが大事である。アゾール系薬剤やポリエン系薬剤は殺菌性を有し ながらも殺菌効果を発現するまでに時間を要し、キャンディン系薬剤は静菌的に作用し、3~ 5 割程度の治療効果しか示さないと報告されている20, 23。さらにアゾール系薬剤が農薬として 使用されたことによるアゾールに対する耐性菌の報告が、ヨーロッパ始め世界各地から増えて きている24-26。よって、臨床で求められている侵襲性アスペルギルス治療薬は、アスペルギル ス属に対して広く抗真菌活性を示すこと、殺菌性を有し且つ殺菌効果発現が早いこと、アゾー ル耐性株に対して感受性を有すること、安全性が高いことである。このような既存薬の問題点 を克服した臨床的有用性の高い侵襲性アスペルギルス症治療薬の開発が望まれている。 O F N H2 N H N アンホテリシンB 5-フルオロシトシン イトラコナゾール フルコナゾール

(11)

5

Figure 1. Molecular structure of antifungal agents

ボリコナゾール ポサコナゾール

・ 2CH3COOH

カスポファンギン

(12)

6 低分子化合物由来の創薬は、多検体の化合物ライブラリーを対象としたハイスループットス クリーニング(HTS)が主流である。一方微生物が産生する二次代謝産物を対象とした醗酵ス クリーニングは、含有量不明な多成分の抽出物から生物活性を指標に精製する必要があり、手 間がかかる方法である。しかしながら、微生物が産生する新規活性物質は、人智の及ばぬ多彩 な化学構造を有し、歴史的には薬の主な起源である。本邦においても、コレステロール合成阻 害剤のコンパクチン、免疫抑制剤のタクロリムス、抗真菌剤のミカファンギンの醗酵原体であ るFR901379 が発見され、臨床において画期的な優れた薬効を示している27-29。魅力ある微生 物培養物ではあるが、これまでのアステラス製薬での抗真菌剤探索研究から、被験菌の培養条 件で薬剤の感受性が大きく影響されることと、in vitro と in vivo の活性が必ずしも相関しない ことがわかっていた。実際のスクリーニングにおいて、遺伝子破壊株あるいは過剰発現株など を用い、感度の向上を目的に被験菌を様々な条件で培養し、さらに多大な手間と労力をかけて 精製しても、in vitro 活性を有しているが in vivo 活性を示さないという結果に陥ることが多々 あった。また、長年の抗真菌剤探索の取組みにおいて、既知化合物がヒットすることも多かっ た。 そこで著者は、微生物培養液からの新規活性物質創出には、以下に示す三つのことが重要で あると考えて実行した。一つ目は、スクリーニングに供する微生物の多様性である。微生物の 代謝産物の生産はその生合成遺伝子を持つ種と株に依存することから、遺伝的多様性拡大の取 組みが必要である。二つ目は、微生物培養液中に如何に生物活性物質を生産させるかである。 土壌や落葉から多種多様な菌が分離されるが、新規抗真菌活性物質を生産させる微生物を効率 的に選択することが必要である。三つ目は、臨床で有効な活性を有するものを効率的にスク リーニングできる臨床外挿性のあるアッセイシステムの構築と実行であり、カイコ幼虫感染系 の技術を利用することとした。 このような背景から、微生物代謝産物から有効性と安全性を兼ね備えた新規抗アスペルギル ス治療薬を見出すことを目的に、本研究を開始した。第一章では、抗アスペルギルス活性ライ ブラリーとカイコ幼虫感染系の構築とスクリーニング実施の結果、マレーシア落葉から分離し たカビが産生するASP2397(Figure 2)の発見について述べる。第二章では、ASP2397 の生産

(13)

7

菌株の菌学的性質について、第三章では ASP2397 と類縁体の培養生産、単離精製および構造 解析について述べる。第四章では、ASP2397 の in vitro 抗真菌活性の特徴を、第五章では in vivo 抗真菌活性の効果を明らかにする。第六章ではASP2397 低感受性菌を用いた作用機序解析へ の取り組みについて述べる。本研究はASP2397 が臨床で求められている侵襲性アスペルギル ス治療薬の特長を有していることを明らかにしたものである。

(14)

8

第一章 抗アスペルギルス剤探索アッセイシステムの開発と ASP2397 の発見

1 序論 緒言で述べたように、著者は、抗アスペルギルス剤探索アッセイシステムの構築において、 以下の3 項目を念頭に実行した。 一つ目は、「スクリーニングに供する微生物の多様性」である。微生物の代謝産物の生産は その生合成遺伝子を持つ種と株に依存することから、アステラス製薬では、地理的特性による 遺伝的多様性拡大のため、2001 年よりマレーシアの SIRIM 社、TropBio 社と共同研究を行い、 国内には無い熱帯資源を導入していた。 二つ目は、「微生物培養液中に如何に抗アスペルギルス活性物質を生産させるか」である。 目的とする活性を産生する微生物を如何に効率的に選択し、新規化合物を生産させるかが重要 である。そこで、アスペルギルス感染症で最も分離頻度が高いA. fumigatus が共存するときに A. fumigatus の生育を阻害するマレーシア由来の菌株を選別し培養したライブラリーを構築し た。 三つ目は、「臨床外挿性のある簡便なアッセイシステム」である。微生物培養液は新規化合 物の宝庫ではあるが、生産量が不明な多種類の物質が混在し、宿主に対する細胞毒性作用を有 するものや、生物活性の検出を干渉する成分を含有している可能性がある。また生物活性を確 認しながら活性本体を精製していく工程もある。よって微生物培養液を対象としたスクリーニ ングにおいては、高感度で頑強、且つ簡便でありながら臨床外挿性のあるアッセイシステムを 構築し、早期にin vivo 活性を確認することが重要である。マウスを用いたカンジダ全身感染簡 易モデルは、正常なマウスにカンジダを静脈感染させ、1 時間後に薬剤を 1 回投与し、翌日腎 臓内に増殖したカンジダを寒天培地で培養し、抗真菌活性を判別する系である。これまでも FR109615(cispentacin)30FR901379 発見の際には、スクリーニング初期にマウス C. albicans 感染簡易モデルを用いて in vivo 効果を確認して開発に進めてきた。一方アスペルギルス全身 感染モデルは、免疫抑制状態にしたマウスに菌を感染し、数回の薬剤投与と最低でも1 週間と いう期間を要し、微生物培養液を直接投与してスクリーニングするには不向きであった。アス

(15)

9

ペルギルス感染簡易モデル系構築が暗礁に乗りかけていた2003 年当時、東京大学薬学部の関 水 和 久 教 授 と 浜 本 助 手 ら は カ イ コ 幼 虫 を 用 い た Staphylococcus aureus 、 Stenotrophomonas maltophilia、C. albicans および C. tropicalis の感染モデルを構築し、薬剤評価

を生死判定で実施し報告していた31。その方法は、マウスでの評価とほぼ同等の有効性を示す ものであったことから、筆者はそのカイコ幼虫感染系の技術を用いて、難航していたアスペル ギルス感染致死系を構築することを試みた。 2 実験結果 2-1 抗アスペルギルス活性ライブラリーの開発 抗アスペルギルス活性ライブラリーを構築するため、分離真菌4997 株をアスペルギルス症 の中で最も分離頻度の高いA. fumigatus と寒天培地上で共培養し、A. fumigatus 存在下で抗真菌

活性を示す真菌310 株を選択した。選択した 310 株を各種生産培地で培養し、330 検体の抗ア スペルギルス活性ライブラリーを作製した。 2-2 カイコ幼虫を用いた A. fumigatus 感染系の開発 浜本らはカイコ幼虫を用いた真菌感染モデルを報告していた31。筆者はA. fumigatus 感染系 を構築するため浜本らの方法と同様に、A. fumigatus 胞子を体液中に感染し、27℃で飼育を行っ たが、カイコ幼虫は全く死亡しなかった。そこで感染後の生育温度を27℃から 30℃に上昇さ せたところ100%の死亡率を示した。感染 32 時間後に薬剤無処置の幼虫は 75%が死亡し、幼 虫の体表は白色であった。その時、臨床で有効であるキャンディン系のカスポファンギンとミ カファンギン、ポリエン系のアンホテリシンB、アゾール系のボリコナゾールを処置した幼虫 はすべて生存していた(Figure 3a)。感染 46 時間後では薬剤無処置の幼虫は全例死亡し、体表 はメラニン化反応により黒色となっていた。この時点で静菌的なキャンディン系を投与された 幼虫は全例死亡し、殺菌的なアンホテリシン B とボリコナゾール投与群は生存していた (Figure 3b)。よって、カイコ幼虫に A. fumigatus を感染し 30℃で飼育することで、48 時間以 内で抗真菌活性を判別できる系を構築できた。更にメラニン化反応による体表の色を観察する ことにより、静菌的か殺菌的作用の判別も簡便に判別できた。

(16)

10 (a)

(b)

Figure 3. Effects of antifungals on the survival of silkworms infected with A. fumigatus (n=8) (a) 32 h and (b) 46 h post infection. CAS: caspofungin, MFG: micafungin, AMB: amphotericin B, VRC: voriconazole survival( % ) 0.1 0.32 1 3.2 10 32 Dose ( g/larva/day) 0.1 0.32 1 3.2 10 32 0 20 40 60 80 100 AMB VRC CAS MFG

(17)

11 2-3 抗真菌活性物質のスクリーニングと ASP2397 の発見 血漿含有培地での最小発育阻止濃度(以下MIC と略記する)は抗真菌剤の in vivo での有効 性と相関することから32、カイコ幼虫体液含有培地で抗真菌活性を示したサンプルをカイコ幼 虫感染致死系に進めた。抗アスペルギルス活性ライブラリー330 検体と、菌株や二次代謝産物 の多様性を指標とした微生物培養液ライブラリー計38000 検体について、カイコ幼虫体液含有 培地でのA. fumigatus に対する抗真菌活性を、1 次スクリーニングした。1 次スクリーニング 系で有効であったサンプルについて、2 次スクリーニングとしてカイコ幼虫感染系で有効性を 確認した。その結果、抗アスペルギルス活性ライブラリー中の微生物培養液中に、強力なカイ コ幼虫 A. fumigatus 感染系での延命作用を有する抗真菌活性物質が存在することを見出した。 これは、マレーシアのジョホール州にあるEndau Rompin 国立公園で採取した落葉腐植物より 分離したカビMF-347833 株由来の培養液であった。

抗真菌活性物質を単離精製するためには、微生物培養液をカラムやHigh Performance Liquid Chromatography(以下 HPLC と略記する)を用いて分画精製を行い、工程毎に生物活性を確認 しながら実施していく。当初、微生物培養液の分画精製を行う際に、抗真菌活性測定の標準法 である血漿成分を含有しないRoswell Park Memorial Institute 培地(以下 RPMI 培地と略記する) を用いて行った結果、RPMI 培地で抗真菌活性を示す成分を単離したが、その成分はカイコ幼 虫感染系で無効であった(AS2488059)(Figure 4)。そこで再度、微生物培養液をカイコ幼虫体 液含有培地での抗真菌活性およびカイコ幼虫感染系での延命効果を指標に分画精製を実施し た結果、HPLC 上で極僅かなピーク成分にカイコ幼虫感染系での延命効果があることを見出し た(ASP2397)。さらに ASP2397 の類縁体である AS2488053(Figure 4)を単離した。なお、単 離および構造解析については第三章で後述する。

カイコ幼虫A. fumigatus 感染系を用いて、in vivo での A. fumigatus に対する抗真菌活性を検討

した(Table 1)。感染コントロール群は感染 43 時間後までに生存率が 0%の時に、ASP2397 投 与群は3.7 µg/幼虫以上から 100 µg/幼虫の投与量まで 100%生存しており、殺菌的な作用を示し た。一方、AS2488059 と AS2488053 はカイコ幼虫感染系において 100 µg/幼虫の投与量でも生 存率が0%であった。対照剤のボリコナゾール(VRC)は投与量依存的に延命効果を示し、10 µg/

(18)

12 幼虫の投与量で100%の延命効果を示した。

Figure 4. Structure of ASP2397, AS2488053, and AS2488059

Table 1. Efficacies of ASP2397, AS2488059, AS2488053, and VRC against Aspergillus fumigatus infection of silkworm larvae 43 h post infection

Number mortality/Number inoculated. VRC: voriconazole Treatment Non

treatment

AS compound (µg/larva/day) VRC (µg/larva/day) 1.2 3.7 11.1 33.3 100 0.1 1 10 ASP2397 5/5 5/5 0/5 0/5 0/5 0/5 3/3 2/3 0/3 AS2488059 4/5 3/3 2/3 3/3 3/3 3/3 0/3 AS2488053 5/5 5/5 5/5 5/5 5/5 5/5 2/2 2/2 0/2 AS2488059 ASP2397 (M=Al) AS2488053 (M=Fe) N H N H N H N H N H NH O O O N O O H O N O H O O N O O H O CONH2 N H N H N H N H N H NH O O O N O O N O O N O O O O O CONH2 M(III)

(19)

13 2-4 ASP2397 の in vitro 抗真菌活性

抗真菌剤評価におけるin vitro での抗真菌活性は、in vivo での有効性と相関する血漿含有培

地を用いて評価することで、invivo 効果を予測できる32

ASP2397 は RPMI 培地、カイコ幼虫体液含有培地のみならずマウス血漿含有培地において も、A. fumigatus に対して MIC が 0.16 -0.78 µg/ml と強い抗真菌活性を示した。一方、AS2488059

は、RPMI 培地では MIC が 0.78 µg/ml と強い抗真菌活性を示したが、マウス血漿含有培地にお いては >50 µg/ml であった。 AS2488053 は、RPMI 培地ではコントロールに比較して生育を 阻害し、最小有効濃度(以下MEC と略記する)値は 0.39 µg/ml であったが、MIC は RPMI 培 地、血漿含有培地において25- >50 µg/ml と弱いものであった(Table 2)。

Table 2. In vitro antifungal activities of ASP2397, AS2488059, AS2488053

Test substrate

Antifungal activity (A. fumigatus FP1305)

MIC (µg ml-1) MEC (µg ml-1)

50% silkworm hemolymph 50% mouse serum RPMI RPMI

ASP2397 0.16 0.39 0.78 0.39 AS2488059 >50 >50 0.78 0.2 AS2488053 >50 25 >50 0.39 2-5 ASP2397 の in vivo 感染系での生存効果 ASP2397 は、カイコ幼虫感染系で延命作用を示し、またマウス血漿含有培地において強い抗 真菌活性を示したことから、マウスA. fumigatus 全身感染致死モデルにおける効果について検 討した。感染コントロール群が感染15 日目までに 20%の生存しか示さない時に、ASP2397 は 感染1 時間後から 1 日 1 回 4 日間静脈内投与をした結果、0.32 mg/kg から投与量依存的に延命 傾向を示し、3.2 mg/kg 以上の投与量で 100%生存させた。一方、AS2488053 は、マウス血漿培 地を用いたin vitro 抗真菌活性は 25 µg/ml と弱い活性であったが、マウス in vivo 感染モデルに おいても32 mg/kg の投与量で延命効果を示さなかった(Figure 5)。

(20)

14 (a)

(b)

Figure 5. Efficacies of ASP2397 (a) and AS2488053 (b) against mice infected with Aspergillus fumigatus Mice treated with 200 mg/kg i.p. cyclophosphamide on days -4 and +1 were intravenously challenged with 2.5 x 105 CFU of A. fumigatus FP1305 conidia on day 0. Vehicle control of

ASP2397 and AS2488053 (i.v., u.i.d.) was administered from day 0 for 4 days. n=5; *P<0.05, compared between vehicle control and drug-treated groups (log-rank test under a closed testing procedure). CFU: colony-forming units

0 2 4 6 8 10 12 14 0 20 40 60 80 100 infection control

Days after infection

su rv ival ( % ) AS2488053 0.32mg/kg AS2488053 1mg/kg AS2488053 3.2mg/kg AS2488053 10mg/kg AS2488053 32mg/kg (10%HCO60 in saline) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 20 40 60 80 100 infection control

Days after infection

sur vi val ( % ) ASP2397 0.032mg/kg ASP2397 0.1mg/kg ASP2397 0.32mg/kg ASP2397 1mg/kg ASP2397 3.2mg/kg

*

(10%HCO60 in saline)

(21)

15 3 考察 抗アスペルギルス活性ライブラリーを用い、臨床外挿性のあるスクリーニングシステムを活 用して、マレーシアの落葉より分離した菌から効率的に新規の抗アスペルギルス活性を有する ASP2397 を発見した。 抗アスペルギルス活性ライブラリーは、マレーシア由来の菌株を用いて作製した。通常用い ていた菌株の多様性や代謝産物の産生などを考慮して作製したライブラリーと比較し、100 倍 以上効率よく(1/330=0.3%対 1/38000=0.0026%)、わずか 330 検体をスクリーニングすることで 新規化合物を見出すことが出来た。一方、通常スクリーニングに用いていたライブラリーから はマウス感染致死系での評価に進めるものを見出せなかった。よって微生物の多様性を考慮し、 熱帯地帯から収集した微生物を用いて、抗アスペルギルス活性に特化して作製したライブラ リーを用いることで、効率的にスクリーニングをすることが出来たと考えられる。 Aspergillus fumigatusのカイコ幼虫感染致死系構築の鍵は、カイコ幼虫の飼育を感染後に30℃ に上げることであった。浜本らの方法である 27℃飼育では全く死亡せず、カイコ幼虫を免疫 抑制状態にする等種々の検討を行ったが、A. fumigatus 感染による死亡はまったく見られな かった。27℃では A.fumigatus をカイコ幼虫内で増殖するのが難しい可能性があると考え、カ イコ幼虫の飼育に適した27℃から僅か 3℃上昇させるだけで、カイコ幼虫を 2 日間以内に致死 させることが出来た。カイコ幼虫は1.4 g 程度でマウスに比較し小さいため少量のサンプルで 良く、さらにハンドリングがし易い大きさで、飼育が簡単であった。感染実験系としては、単 回投与のみで感染 2 日後の生死で判別可能という簡便さと、多くの検体数を評価できるスク リーニングに適した頑強な系であった。細菌・真菌の簡易的な感染実験系としてマウスと同等 の結果を得ることができた31ことから、昨今の「動物実験における3R の原則」という観点に おいても無脊椎動物であるカイコ幼虫を用いることで、貢献できるものと考えられる。 当初 ASP2397 を単離精製する過程において、簡便さを優先させ、血漿成分を含有しない RPMI 培地での in vitro 抗真菌活性を指標に精製を実施した結果、カイコ幼虫感染系で無効な化 合物(AS2488059)を単離した。AS2488059 は抽出物の中でメインの生産量を示し、RPMI 培 地を用いた in vitro での活性を有していたが血漿成分含有培地では活性を示さなかった

(22)

16

(Table 2)。これまでの抗真菌剤の研究から、血漿培地での抗真菌活性は in vivo での活性と相 関しており、今回の研究においても同様の結果が得られた。含有量が既知のライブラリーであ るならば、初めから血漿培地を用いたスクリーニングが可能である。しかしながら、分画精製 前の微生物培養スクリーニングでは活性物質の含有量が不明である。今回のようにメイン成分 のAS2488059 とマイナー成分の ASP2397 は、血漿非添加の RPMI 培地では同等の活性を示す が、血漿添加培地では活性が大きく異なり、生産量に依存して取り逃してしまう可能性がある。 よってカイコ幼虫感染系を用いず、in vitro 抗真菌活性のみを指標にスクリーニングを実施した

場合ASP2397 の発見には至らなかったと考えられ、in vivo 活性を利用した臨床外挿性のある スクリーニングシステムは意義があったと考えられる。AS2488059 の抗真菌活性が血漿含有培 地で減弱するのか不明であるが、一因として AS2488059 と血漿中のタンパクが結合すること で、タンパクフリーの活性成分が消失し、活性が減弱するのかもしれない。

(23)

17

第二章 ASP2397 の生産菌株の菌学的性質

1 序論 第一章で構築したカイコ幼虫スクリーニング系において、マレーシアのジョホール州にある Endau Rompin 国立公園で採取した落葉腐植物より分離したカビMF-347833 の培養液中に強力 なカイコ幼虫A. fumigatus 感染系での延命作用を有する抗真菌活性物質を見出した。本菌株は 新規抗真菌物質 ASP2397 を生産することが明らかとなった。本菌株の属種名を決定すること は、生物学上での位置づけとともに、微生物の種多様性を発見することとなり、また既知有害 菌に該当するかどうかという安全性の判断が出来る。微生物の分類においては、従来、形態学 的特徴や培養上の特徴の違いに基づいて行われてきた。また近年では、分子生物学的手法の進 展により、DNA やタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列に基づき系統樹で表し、これに 基づいて分類がなされている。 本章では、カビ MF-347833 株の培養上の特徴、形態学的性質および系統解析を行い、本菌 株の同定を試みた。 2 実験結果 2-1 生産菌の培養上の特徴 ポテトデキストロース寒天培地(以下PDA と略記する)(Difco 社製 2010)上での生育は旺 盛で、25℃で 2 週間培養するとコロニーは直径 39-41 mm にまで拡がり、分生子の形成も確認 できた。コロニー表面は羊毛状(floccose)であり、周縁部は波状(undulate)であった。中央 部から周縁部に数本の放射状の溝を生じたが、表面から溝は確認しにくい。コロニーの色は全 体的に白色(white, 1A1)であるが中央部はやや薄い白黄色(yellowish white, 4A2)であった。 コロニーの裏面の色は全体的に薄ベージュ色(Ivory, 4A3)であったが、コロニー中央部の色は 薄茶色(mustard brown, 5E6)であった。30℃で培養すると 25℃の時に比べてコロニーの 生育 は若干抑制され、2 週間後のコロニー直径は約 24 mm であった。また、5℃と 37℃ では 2 週 間経過後も菌の生育は認められなかった。

(24)

18

ニー直径は39-40mm まで拡がった。コロニー表面はフェルト状(felty)であった。コロニー周 縁は波状(undulate)でコロニーに溝は生じな かった。コロニーの色は白色(white, 1A1)で あった。コロニー裏面の色も白色(white, 1A1)であった。30℃で 2 週間培養すると、PDA の 時と同様にコロニーの生育が抑制されたため、コロニーの直径は14 mm であった。コロニー 表面に溝は生じなかった。5℃と 37℃において生育は認められなかった。 2-2 生産菌の形態学的性質 形態的特徴はPDA 上での形態を観察して判定した。 栄養菌糸の太さは 1.8-2.7 µm であり、 厚膜胞子は観察されなかった。分生子柄は分枝せず、無色で1 本の栄養菌糸、あるいは結束の 緩い分生子束から生じた。分生子柄の表面には小さなイボ状の突起が多数存在し、分生子柄の 根元には隔壁を生じた。分生子形成様式はフィアロ型で分生子柄の根元からフィアライドの先 端までの長さは33-40 µm であった。分生子は無色で楕円形であった。大きさは 3.7-4.5×2.8-3.2 µm(平均 4×3 µm)であった。やや粘性をもち、フィアライドの 先端で分生子塊となっ た(Figure 6a)。分生子の表面は光学顕微鏡(400 倍)では滑面に見えたが、電子顕微鏡(9000 倍)で観察すると粗い凹凸模様が確認できた(Figure 6b)。 これらの形態的特徴は、本菌がアクレモニウム属に属する可能性を示唆するものである。こ のため、Cephalosporium-artige Schimmelpilze(Hyphomycetes)33 で比較検討した結果、アクレモ ニウム・ペルシシヌムの形態的特徴とよく一致した。また、本菌の28SrDNA(D1/D2 領域)の 部分塩基配列を系統解析した結果、アクレモニウム・ペルシシヌムのクレードに含まれること から、形態的にも系統的にも矛盾が無かった(Figure 7)。従って、本菌をアクレモニウム・ペ ルシシヌムと同定し、アクレモニウム・ペルシシヌムMF-347833 株と称した。

(25)

19 (a) (b)

Figure 6. Morphological characteristics of MF-347833 (scanning electron microscopy). (a) Conidiophore and (b) Conidia.

Figure 7. Phylogenic tree of MF-347833 and related species generated according to 28S ribosomal DNA sequences. Verticillium dahlia (AFTOL-ID237) served as an outlier.

Acremonium blochii CBS 424.93 (HQ232000) Acremonium persicinum CBS 378.70 (HQ232082) MF-347833 (AB920179)

Acremonium persicinum JCM 23083 (AB540501) Acremonium persicinum AFTOL-ID 1391( FJ176878) Acremonium persicinum CBS 169.65 (HQ232072) Acremonium murorum AFTOL-ID 1393 (FJ176880) Acremonium strictum AFTOL-ID 1392 (FJ176879)

Verticillium dahliae AFTOL-ID 237 (DQ470945)

88 91 91 97 82 66 0.005

(26)

20 3 考察 MF-347833 は、形態観察と系統解析の結果からアクレモニウム・ペルシシヌムと同定し、ア クレモニウム・ペルシシヌム MF-347833 株と称した。アクレモニウム属は世界中に分布して おり、土壌や落葉から一般的な希釈平板法で容易に分離できる菌である。世界のいたるところ から分離されるということはそれだけ様々な環境に適応できる遺伝的多様性を有している属 であるとも考えられる。実際、同じように世界中の様々な環境に生息していることが知られて いるペニシリウム属やアスペルギルス属などと同様に、アクレモニウム属からも多くの生物活 性物質が発見されている。 本菌株は現時点ではアクレモニウム・ペルシシヌムと同定したが、アクレモニウム属の中 でもペルシシヌムのグループは形態的な特徴から再分類の必要性があるグループであると考 える。本菌の形態的特徴でもある、柄のいぼ状の突起や 緩い菌糸の束(シンネマ)を形成す ること、胞子表面の凹凸の構造などはアクレモニウム・ペルシシヌムの記載にはない特徴であ る。しかしながら、系統的には Westerdijk Fungal Biodiversity Institute や Assembling the Fungal Tree of Life(AFTOL)に登録された複数のアクレモニウム・ペルシシヌムのタイプ株の範疇に 入るため、現状の系統分類的な観点から、アクレモニウム・ペルシシヌムと結論づけた。アク レモニウム・ペリシシヌムについては詳細な研究が必要であり、再分類が望まれる。

(27)

21

第三章 ASP2397 と類縁体の培養生産、単離精製および構造解析

1 序論 MF-347833 株の培養液中に、カイコ幼虫感染系で強力な抗真菌活性を有する物質を見出し た。そこでMF-347833 株を培養し、培養物からの活性物質の単離・精製を行い、構造や生物活 性を明らかにすることを試みた。また、類縁体を取得し活性を評価することは、化合物の構造 活性相関を理解するうえで重要なアプローチであることから、類縁体の取得を行い、構造解析 や生物活性の評価を実施した。 2 実験結果 2-1 種培養 フラスコ振とう培養30 ml の培地:2%コーンスターチ、1%グリセロール、1%シュークロー ス、1%ファーマメディア、1%グルテンミール、0.2%Tween 80 を 100 ml 三角フラスコに分注 し、120°C で 20 分間オートクレーブし滅菌した。この生産培地に、MF-347833 株の斜面培養 物を一白金耳接種し、25°C で 4 日間、振とう培養(220 回転/分)した。500 ml 三角フラスコ に同じ組成の培地を160 ml 分注し、種培養物 3.2 ml を無菌的に接種し、25°C で 3 日間、振と う培養(220 回転/分)した。 2-2 ASP2397 と AS2524371 物質の培養生産 ジャーファーメンターによる通気撹拌培養20 L の生産培地:5%グリセロール、7%可溶性デ ンプン(ナカライテスク)、1.5%酵母エキス(和光純薬)、1%β-サイクロデキストリン、1%硝 酸カリウム、1.3% DL-メチオニン、0.5%炭酸カルシウム、0.3%硫酸カリウムアルミニウム十二 水和物、0.1%アデカノール LG-109、0.05%シリコーン KM-70 を 30 L 容ジャーファーメンター に注入後、120°C で 30 分間加圧滅菌した。この培地に 2-1 の種培養液を 480 ml 加え、25°C で 6 日間培養した(通気量:20 L/分、撹拌速度200 rpm)。 2-3 AS2488059 物質の培養生産 フラスコ振とう培養100 ml の培地:0.5%グルコース、1.5%可溶性デンプン、0.5%酵母エキ ス、0.02%塩化カリウム、0.02%硫酸マグネシウム七水和物、0.1%硫酸二水素カリウム、0.2%硝

(28)

22 酸ナトリウムを500 ml 三角フラスコに分注し、120°C で 20 分間オートクレーブ滅菌した。種 培養物2 ml を無菌的に接種し、25°C で 7 日間、振とう培養(220 回転/分)した。 2-4 ASP2397 と AS2524371 物質の単離精製 上記の培養方法で得られた培養液20 L に等量のアセトンを加え、濾過することで培養抽出 物を得た。その抽出液に等量の水を加え、Dianion SP 850(5 L;三菱化学)に通液、吸着させ、 40%アセトン水で溶出させた。その溶出液(32.5 L)を 2 倍量の水で希釈し、8 L の Daisogel SP-120-ODS-B(15/30 μm;大阪ソーダ)カラムに通液、吸着させ、30%アセトニトリル水 8.8 L で 溶出させた。 ASP2397 の単離は、溶出液 8.8 L 中の後半 4 L を等量の水で希釈し、1 L の Daisogel SP-120-ODS-B(15/30 μm)カラムに通液、吸着させ、メタノールとアセトンで溶出させた。その溶出 液を減圧濃縮し、凍結乾燥した。その後メタノール、酢酸エチル、n-ヘキサンで結晶化し、16.3 g のASP2397 を得た。 AS2524371 の単離は、溶出液 8.8 L 中の前半 4 L を等量の水で希釈し、180 ml の Daisogel SP-120-ODS-B カラムに通液、吸着させ、25%アセトニトリル水で溶出させた。その溶出液を分取 用HPLC(Mightysil RP-18 GP250x20、5 µm;関東化学)カラムを用いて分取(移動相;30%ア セトニトリル水、流速10 ml/min.)し、AS2524371 を含有する画分を集め、減圧濃縮・乾固し 6.0 mg の AS2524371 を得た。 2-5 AS22488059 物質の単離精製 上記の培養方法で得られた培養液2.6 L に等量のアセトンを加え、濾過することで培養抽出 物を得た。その抽出液に2 倍量の水を加え、Dianion SP 850(400 ml;三菱化学)に通液、吸着 させ、30%アセトン水で溶出させた。その溶出液 1.9 L を 2.1 L の水で希釈し、350 ml の Daisogel SP-120-ODS-B(15/30 μm)カラムに通液、吸着させ、25%アセトニトリル水 340 ml で溶出させ た。その溶出液を等量の水で希釈し、6 g の OASIS HLB cartridge(Waters)に通液し、メタノー ルで溶出させた。その溶出液を減圧濃縮し、アセトンを添加して沈殿物を生じさせ、乾固後黄 色の沈殿物100 mg を得た。沈殿物の一部(15 mg)を少量のメタノールで溶解し、分取用 HPLC (Symmetry 7 µm C-18, 19x300 mm;Waters)カラムを用いて分取(移動相;27%アセトニトリ

(29)

23 ル水-0.05%トリフルオロ酢酸、流速 7 ml/min.)し、22 分付近のピーク画分を集めた。等量の 水で希釈後に500 mg の OASIS HLB cartridge に通液し、50 ml の水で洗浄後、50 ml のメタノー ルで溶出させた。その溶出液を減圧濃縮し、アセトンを添加して沈殿物を生じさせ、乾固後 13 mg の白色粉末として AS2488059 を得た。 2-6 AS2488053 と AS2529132 物質の製造 2 mg の AS2488059 を、0.2 ml のメタノールと 0.2 ml の水で溶解し、0.6 ml の水で溶解させ た 5 mg の塩化第三鉄六水和物を添加し、室温で 2.25 時間攪拌した。水で希釈し、30 mg の OASIS HLB cartridge に通液、吸着させた。その後 3 ml の水で洗浄し、2 ml のメタノールで溶 出させた。溶出液を減圧濃縮・乾固し4 mg のオレンジ色の粉末として AS2488053 を得た。 同様に、AS2488059 と硫酸ガリウム水和物から、白色粉末として AS2529132 を得た。 2-7 ASP2397 と類縁体の物理化学的性質および構造解析 2-7-1 ASP2397 と類縁体の物理化学的性質

ASP2397、AS2488053、AS2488059、AS2524371 および AS2529132 の物理化学的性質を Table 3 に示す。 ASP2397 はメタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドに易溶、酢 酸エチル、n-ヘキサンには不溶の無色の結晶で、ヨウ素、硫酸セリウム、エーリッヒ、ドラー ゲンドルフの各反応によって呈色した。改良マーフィー法 34によるアミノ酸分析により、L

-Asn,、L-Leu、D-Phe の存在を示した。High resolution electrospray ionization mass spectrometry(以

下 HR-ESI-MS と略記する)分析において、[M+H]+のピークが 915.4191 Da であり、分子式

C40H59AlN10O13(理論値 [M+H]+=915.4157 Da)であると同定した。この分子式は後述する NMR

(30)

24

Table 3. ASP2397、AS2488053、AS2488059、AS2524371、AS2529132 の物理化学データ

ASP2397 AS2488053 AS2488059 AS2524371 AS2529132 Appearance Colorless crystals Orange crystals White powder White powder White powder

Optical rotation [α]D (22℃, MeOH) 160.28 (c 0.012) 360.00 (c 0.01) -42.96 (c 0.01) 277.50 (c 0.012) 324.16 (c 0.012) Molecular formura C40H59AlN10O13 C40H59FeN10O13 C40H62N10O13 C37H61AlN10O13 C40H59GaN10O13

HR-ESI-MS Found (M+H)+ 915.4191 944.3693 891.4592 881.4304 957.3597 Calculated (M+H)+ 915.4157 944.3691 891.4576 881.4313 957.3597 IR (KBr)cm-1 3300, 2930, 1680, 1650, 1620, 1520, 1370, 1240, 1140, 990 NT 3300, 2950, 1680, 1650, 1640, 1540, 1460, 1420, 1240, 1210, 1160, 1040, 970 NT NT HPLC retention time a 8.7b 10.4b 4.2b 5.4c 13.5b TLC (Rf value) d 0.5 0.5 0.25 NT NT

Color test Positive I2, Ce(SO4)2-H2SO4,

Ehrich,, Dragenddorf

NT I2, Ce(SO4)2-H2SO4, Ehrich,,

Dragenddorf, FeCl3

NT NT

Negative Molish, Ninhydrin, FeCl3 Molish, Ninhydrin, FeCl3 Molish, Ninhydrin NT NT

Solubility

Soluble methanol, DMF, DMSO methanol, DMF, DMSO methanol, DMSO methanol, DMSO NT Insoluble ethyl acetate, n-hexane ethyl acetate, n-hexane NT NT NT Amino-acid analysis L-Asn, L-Leu, D-Phe NT NT L-Asn, L-Leu, D-Leu NT

NT: not tested

a Retention times (min.) (Mightysil RP-18 GP 150-4.6 5 µm Kanto Chemical, 1 ml/min.). b 0.5%リン酸二水素アンモニウム含有 28%アセトニトリル水、

c 0.5%リン酸二水素アンモニウム含有 30%アセトニトリル水 d silica gel 60 F254 (MERCK):メタノール/クロロホルム (1:5)

(31)

25 2-7-2 ASP2397 と類縁体の構造決定 ASP2397 の構造は、以下のように決定した。13 C-NMR シグナルにおいて、10 個のカルボニ ル、1 個のベンゼン(対称性のため 4 シグナル)、12 個のメチレン、7 個のメチン、5 個のメチ ルの炭素を含む、40 個の炭素すべてが観測された。 10 個のカルボニルのうち、161.6、161.7、 および161.3 ppm の 3 個のカルボニル基は、それぞれ 2.11、2.09、および 2.04 ppm のシングレッ トメチルプロトンとheteronuclear multiple bond correlation(以下HMBC と略記する)相関が見 られ、アセチル基の存在が示唆された。173.8 ppm のカルボニルシグナルは、7.76 および 7.39 ppm の 2 個の交換性プロトンと HMBC 相関があり、カルバモイル基に帰属でき、残り 6 つの カルボニルはアミド基と考えられ、ASP2397 はヘキサペプチドである(下記参照)。ASP2397 のアルミニウムイオンは 3 価と仮定するのが妥当であり、ASP2397 の不飽和度は分子式によ り17 になる。ベンゼン環(不飽和度 4)と 10 個のカルボニルを考慮すると、残りの不飽和度 から、ASP2397 が三環式であると考えられる。total correlation spectroscopy(以下TOCSY と略 記する)(spin-lock、120 ms)、およびheteronuclear single quantum correlation(以下HSQC と略記 する)解析により、アミノ酸残基はアスパラギン、ロイシン、フェニルアラニン、および3 個 のオルニチンと推定された。各オルニチン残基のアセチルアミドの存在は、対応するカルボニ ル炭素(161.6、161.7 および 161.3 ppm)とメチレンプロトン(3.36、3.67 および 3.70 ppm)間 のHMBC 相関によってそれぞれ推定した。ペプチド配列は、HBMC 解析で決定し、以上から ASP2397 は環状ヘキサペプチドであると結論づけた(Figure 8)。未帰属のアルミニウムと 3 個 の酸素原子を考慮すると、最も合理的な構造としては、フェリクロームの構造35と同様に、3 個のヒドロキサム酸がアルミニウムとキレート化した構造であると考えられた。そこで単結晶 X 線結晶解析を実施した。針状単結晶がメタノール溶液から得られ、Oak Ridge thermal ellipsoid plot (Figure 9)により、各アミノ酸の絶対立体配置を含め、ASP2397(Figure 2)の構造を決 定した。

(32)

26 Figure 8. Summary of NMR analysis of ASP2397

Figure 9. Oak Ridge thermal ellipsoid plot of ASP2397. Water–oxygen occupancy was ∼50% that accounts for the disordered oxygen close to the water molecule. The space group was found to be P212121. The final refinement gave R1 of 0.0617 and a Flack parameter of 0.02 (9)

(33)

27

AS2488059 は、HR-ESI-MS を用いて決定した分子式(C40H62N10O13)より、ASP2397 のシデ

ロフォアコアであることが示唆された。1H-NMR 分析において、9.7 ppm 付近に 3 個の交換可

能なプロトン(Table 4 には非表示)が存在し、これらはヒドロキサム酸プロトンとして帰属し た。さらに、ASP2397 と同様の NMR 解析によって ASP2488059 の平面構造を解析し、帰属し た(Table 4)。 AS2488059 は硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を添加することにより ASP2397 に変換されたため、AS2488059 の立体化学は ASP2397 の立体化学と同一であると結 論付けた。

AS2524371 は、HR-ESI-MS データにより、分子式を C37H61AlN10O13と決定した。改良マー

フィー法分析により、D-Phe ではなくD-Leu が存在していた。アミノ酸の残基構造と配列は、 ASP2397 と同様に NMR 分析を用いて確認した。

AS2488053 は、HR-ESI-MS を用いて決定した分子式(C40H59FeN10O13)より、キレート中心

金属が鉄に置き換わっていると考えられた。AS2488053 の NMR シグナルは、常磁性の性質に より非常に広く、鉄の存在を示し、NMR による直接の構造解析は困難であった。X 線結晶解 析を実施するため単結晶を取得しようとしたが取得できなかったため、AS2488059 に塩化第三 鉄六水和物を添加したところ、AS2488053 に変換され、AS2488053 は ASP2397 のアルミニウ ムが鉄に置き換えられたものであり、立体化学も同一であると結論付けた。同様にガリウム体 のAS2529132 の構造も決定した。

(34)

28 AS2488059 ASP2397 (M=Al) AS2488053 (M=Fe) AS2529132 (M=Ga) AS2524371 N H N H N H N H N H NH O O O N O O N O O N O O O O O CONH2 Al(III) N H N H N H N H N H NH O O O N O O H O N O H O O N O O H O CONH2 N H N H N H N H N H NH O O O N O O N O O N O O O O O CONH2 M(III)

(35)

29

Table 4. NMR assignments for ASP2397, AS2488059, AS2524371 and AS2529132 in DMSO-d6

a This coupling pattern could be analyzed because of signal overlap.

δc δH (mult., J(Hz)) δc δH (mult., J(Hz)) δc δH (mult., J(Hz)) δc δH (mult., J(Hz))

Asn 1-CO 170.4 170.5 170.3 170.4 2 46.9 4.25 (m) 50.8 4.26 (m) 46.8 4.27 (m) 46.9 4.25 (m) 3 37.8 2.69 (m) 36 2.64 (dd, 15.6, 7.5) 37.8 2.72 (dd, 16.8, 1.7) 37.7 2.69 (dd, 16.8, 1.7) 2.09 (m) 2.53 (dd, 15.6, 4.5) 2.14 (dd, 16.8, 10.2) 2.10 (m) 4 173.8 172.4 174.0 173.8 NH 7.48 (d, 4.8) 8.15 (d, 7.6) 7.47 (d, 4.8) 7.48 (d, 4.7) CONH2 7.76 (br d, 2.3) 7.40 (br s) 7.82 (br d, 2.4) 7.76 (br d, 2.2) 7.39 (br d, 2.3) 6.94 (br s) 7.45 (br d, 2.4) 7.39 (br d, 2.2) Leu 1-CO 172.6 171.4 172.8 172.6 2 53.3 3.94 (m) 51.9 4.20 (m) 53.2 4.08 (m) 53.2 3.95 (m) 3 39.3 1.14 (m) 41 1.44, 1.34 (m) 39.4 1.38 (m) 39.3 1.14 (m) 4 23.5 0.81 (m) 24.1 1.33 (m) 24.27 1.53 (m) 23.5 0.81 (m) 5 22.9 0.60 (d, 6.3) 23.1 0.68 (d, 6.6) 22.4 0.93 (d, 6.5) 22.9 0.60 (d, 6.3) 6 21.9 0.75 (d, 6.1) 21.8 0.73 (d, 6.6) 22.2 0.86 (d, 6.6) 21.9 0.75 (d, 6.3) NH 8.9 (d, 3.7) 7.17 (-)a 9.04 (d, 3.8) 8.91 (d, 3.8) Phe 1-CO 169.5 170.9 170.5 169.43 (Leu for 2 5.06 4.21 (m) 55.8 4.35 (m) 51.9 3.98 56.0 4.21 (m) AS2524371) 3 35.9 3.35 (m) 36.1 2.92 (dd, 13.7, 7.4) 39.0 1.65 (m) 35.8 3.35 (m) 2.72 (m) 2.82 (dd, 13.7, 8.2) 1.55 (m) 2.73 (dd, 13.8, 12.5) 4 138.9 137.2 24.21 1.65 (m) 138.9 5 128.9 7.27 (m) 129 7.23 (m) 23.3 0.89 (d, 6.2) 128.8 7.27 (m) 6 128.1 7.25 (m) 128.1 7.25 (m) 20.3 0.77 (d, 6.2) 128 7.25 (m) 7 126.1 7.18 (m) 126.3 7.17 (m) 126.1 7.18 (m) NH 9.08 (d, 8.3) 8.69 (d, 5.8) 8.90 (d, 7.5) 9.07 (d, 8.1) AcN(OH)Orn-1 1-CO 169.0 171.8 169.0 169.0 2 52.3 4.8 (m) 53.1 3.96 (m) 52.2 4.68 (m) 52.3 4.81 (m) 3 24.5 1.84, 1.74 (m) 28.0 1.77, 1.33 (m) 24.32 1.78, 1.73 (m) 24.6 1.81, 1.74 (m) 4 20.6 1.61, 1.15 (m) 23.1 1.27 (m) 20.5 1.58, 1.17 (m) 20.5 1.63, 1.16 (m) 5 48.1 3.71, 3.36 (m) 46.3 3.36 (m) 48.1 3.70, 3.35 (m) 48.7 3.78, 3.41 (m) NH 8.23 (d, 7.3) 8.53 (d, 8.5) 8.08 (d, 7.2) 8.23 (d, 7.4) CH3 16.2 2.11 (s) 20.3 1.97 (s) 16.2 2.09 (s) 16.9 2.15 (s) CH3CO 161.6 170.3 161.5 161.3 AcN(OH)Orn-2 1-CO 174.6 172.3 174.6 174.4 2 57.8 4.22 (m) 51.4 4.33 (m) 57.8 4.19 (m) 57.8 4.20 (m) 3 24.4 2.69, 1.70 (m) 29.2 1.82, 1.78 (m) 24.32 2.69, 1.68 (m) 24.6 2.59, 1.72 (m) 4 26.2 1.95, 1.06 (m) 23.6 1.57 (m) 26.1 1.93, 1.57 (m) 26.1 1.97, 1.62 (m) 5 48.4 4.03 (dd, 15.2, 7.2) 46.8 3.55 (m) 48.3 4.02 (dd, 15.1, 7.4) 49.1 4.08 (dd, 15.2, 7.4) 3.67 (m) 3.39 (m) 3.64 (m) 3.73 (m) NH 10.1 (d, 6.2) 7.62 (d, 9.1) 10.1 (d, 6.3) 10.1 (d, 6.0) CH3 15.3 2.09 (s) 20.3 1.97 (s) 15.3 2.08 (s) 15.9 2.13 (s) CH3CO 161.7 170.3 161.7 161.6 AcN(OH)Orn-3 1-CO 169.6 171.1 169.5 169.46 2 52.2 4.15 (m) 55.7 3.62 (m) 52.1 4.16 (m) 52.1 4.18 (m) 3 26.7 2.10, 1.06 (m) 27.2 1.58 (m) 26.7 2.11, 1.05 (m) 27.0 2.12, 1 (m) 4 21.1 1.69, 1.50 (m) 23.0 1.58, 1.50 (m) 21.1 1.67, 1.48 (m) 21.3 1.72, 1.5 (m) 5 47.3 3.70, 3.40 (m) 46.4 3.48 (m) 47.3 3.70, 3.40 (m) 47.9 3.76, 3.44 (m) NH 6.32 (d, 9.2) 8.32 (d, br d, 2Hz) 6.32 (d, 9.2) 6.25 (d, 9.3) CH3 15.8 2.04 (s) 20.3 1.97 (s) 15.8 2.04 (s) 16.5 2.09 (s) CH3CO 161.3 170.3 161.3 161.2

(36)

30 2-8 ASP2397 および類縁体の in vitro 抗真菌活性

抗真菌剤評価におけるin vitro での抗真菌活性は、標準化法である RPMI 培地を用いるのが

一般的であるが、in vivo での有効性と相関する血漿含有培地を用いて評価することで、ASP2397

および類縁体のin vivo 評価へ進める優先順位付けを実施した。

ASP2397 は血漿含有培地においても、A. fumigatus に対して MIC が 0.39 µg/ml と強い抗真菌 活性を示した。一方、金属とキレート結合していないAS2488059 や鉄とキレート結合してい る AS2488053 は、血漿含有培地でもほとんど抗真菌活性を示さなかった(Table 5)。さらに ASP2397 の構成アミノ酸がD-Phe からD-Leu に変換した AS2524371 は、RPMI 培地において

もMEC が > 50 µg/ml と全く抗真菌活性を示さなかった。唯一 ASP2397 類縁体で、血漿添加 培地で抗真菌活性を示したのは、ガリウムとキレート結合している AS2529132 であり、 ASP2397 と同等の抗真菌活性を示した(Table 5)。しかしながら水溶液への溶解性において ASP2397 の方が優れていたため、ASP2397 を新規抗真菌剤候補としてさらに研究を進めるこ ととした。ASP2397 と類縁体の研究から、僅かな構造の違いで抗真菌活性に大きな差を有する ことが明らかとなった。

Table 5. Relationship between chemical structures and in vitro antifungal activities of ASP2397 and its derivatives

Test substrates

1 2 3 metal

MIC (µg ml-1) MEC (µg ml-1)

RPMI 50% mice serum RPMI 50% mice serum

ASP2397 L-Asn L-Leu D-Phe Al 0.78 0.39 0.39 0.2

AS2488053 L-Asn L-Leu D-Phe Fe >50 25 0.39 12.5

AS2488059 L-Asn L-Leu D-Phe None 0.78 >50 0.2 50

AS2524371 L-Asn L-Leu D-Leu Al >50 N.T. > 50 N.T.

AS2529132 L-Asn L-Leu D-Phe Ga 0.78 0.2 0.2 0.2

MIC: minimum inhibitory concentration, MEC: minimum effective concentration., N.T.: not tested, A. fumigatus FP1305 served as the target organism.

(37)

31

3 考察

ASP2397 の構造解析は、当初 HR-ESI-MS データと NMR データが合致せず難航した。更に、 構造解析や各種in vitro および in vivo 試験実施のため必要となる ASP2397 を取得することも当

初困難であった。なぜなら、ASP2397 は培養液中のマイナー成分であったため生産量がごく僅 かであったためである。そのため生産性を向上させる必要があったが、生産菌株の菌株改良や 生産培地の改良による力価向上検討において、メイン成分である AS2488059 の生産力価は向 上する一方で、ASP2397 の生産性は全く向上しなかった。AS2488059 の構造及び AS2488053 はAS2488059 と鉄のキレート体である事が判明したことで、ASP2397 は AS2488059 とアルミ ニウムのキレート体であることがHR-ESI-MS データより推定され、生産培地にアルミニウム を添加することで、初めて力価向上が達成された。これらのことより、生産株のMF-347833 は 本来AS2488059 のような金属フリーの化合物を生産すると考えられ、ASP2397 は AS2488059 が生産培地中に存在する僅かなアルミニウムとキレート結合し生成された成分であると考え られた。 天然由来の生物活性化合物は一般的に化学的に合成することが難しいことから、その類縁体 を培養物より探索し評価することは、構造活性相関を理解するうえで非常に重要な方法である。 ASP2397 の構造は、抗真菌剤の 4 クラス(Figure 1)とは全く異なり、シデロフォアの一種で あるフェリクロームによく似た基本骨格を有していた。鉄フリーのフェリクロームにアルミニ ウムをキレートしたアルミノクロームを作製し、抗真菌活性を測定したが全く活性を示さな かった。また培養液中からの類縁体の単離および種々のキレート化合物の作製を試みたが、 ASP2397 類縁体中で ASP2397 と同等の活性を有していたのはガリウムとキレート結合した AS2529132 のみであった。第六章で、これら類縁体を用いた作用機序探索について述べる。

(38)

32

第四章 ASP2397 の in vitro 抗真菌活性

1 序論 臨床で求められている侵襲性アスペルギルス症治療薬は、アスペルギルス属に対して広く 抗真菌活性を示すこと、殺菌性を有し且つ殺菌効果発現が早いこと、アゾール耐性株に対し て感受性を有すること、安全性が高いことである。 侵襲性アスペルギルス症の中で最も頻度が高い侵襲性肺アスペルギルス症の臨床症状は、 広域抗菌薬不応性の発熱、咳、胸痛等であり、肺炎などを起こす。画像診断や血清診断が実 施されているが、確定診断には肺組織などの生検、喀痰や気管支肺胞洗浄液における菌検出 が必要であり困難な場合が多い。菌種やアゾール耐性の判別まで行うのはさらに困難である ことから、アスペルギルス属に対して広く抗真菌活性を有すること、アゾール耐性株に感受 性を有する事が重要である。そこで、ASP2397 のヒト血清培地における各種病原真菌に対す る活性を測定した。 第一選択薬のボリコナゾールは殺菌的作用を有しているが、殺菌効果発現まで時間を要す るという課題がある。そこで新規抗真菌剤には、より早い殺菌効果の発現が必要とされる。 またアスペルギルスは空気中に浮遊する胞子が肺などに吸い込まれた後、菌糸を伸長させ侵 襲性アスペルギルス呼吸器感染を起こし,組織の破壊と出血、そして呼吸不全により死に至 らしめる。一般的に治療開始は胞子から菌糸が発芽した状態からと考えられることから、殺 菌効果作用と菌糸伸長に及ぼす効果について、発芽胞子を用いて検討を行った。

(39)

33 2 実験結果

2-1 ASP2397 のヒト血清培地での病原性真菌に対する抗真菌活性

各種病原真菌に対するASP2397 の抗真菌活性を、臨床を反映した非働化ヒト血清培地での 微量液体希釈法により測定した(Table 6)。

ASP2397 の MIC は、C. glabrataC. kefyrCryptococcus neoformans、そして

Trichosporon asahii に対して、1-2 µg/mL であった。一方他の酵母状真菌に対しては 16 µg/ml

においても活性を示さなかった。アスペルギルス属全般とFusarium solani に対する MIC は、

1-2 µg/mL であった。一方黒色真菌である Fonsecaea pedrosoi や接合菌類の 3 種に対しては 16 µg/ml でも活性を示さなかった。

強い抗真菌活性を示したアスペルギルス属全般とF. solani に関して、検定株数を増やし、

非働化ヒト血清培地と抗真菌活性測定の標準化法であるRPMI 培地での抗真菌活性を測定し た(Table 7)。ヒト血清培地での各種アスペルギルス属に対する ASP2397 の MIC90は、 A. fumigatus(49 株)、A. niger(20 株)、A. flavus(17 株)、A. terreus(20 株)に対してそれぞ

2、> 16、2、4 μg/ml で、A. niger 以外で 1 - 4 µg/ml の MIC 値を示した。A. nidulans(5 株) とアゾール低感受性A. fumigatus(4 株)は 1 - 4 µg/ml と、A. fumigatus に対する MIC と同等で

あった。F. solani に対する ASP2397 の MIC は、ヒト血清培地中で 2 - 8 µg/ml であり、アゾー

ル薬が > 8 µg/ml であるのに比較し強い活性を示した。ASP2397 の RPMI 培地中での MIC90値

は、A. fumigatus(49 株)、A. niger(20 株)、A. flavus(17 株)、A. terreus( 20 株)に対してそ

(40)

34 Table 6. Antifungal spectrum of ASP2397 in human serum

Organism

MIC (µg/ml)

ASP2397 VRC ITC PSC AMB

Aspergillus fumigatus ATCC MYA-3626 1 0.25 2 0.06 1

Aspergillus niger ATCC 6275 2 1 4 0.5 0.5

Aspergillus nidulans IFM 5369 2 0.25 1 0.12 2

Aspergillus flavus ATCC 204304 2 0.25 1 0.12 2

Aspergillus terreus IFM 57544 2 0.5 2 0.25 4

Fusarium solani IFM49274 2 >8 >8 >8 8

Candida albicans ATCC 90028 >16 0.03 0.06 0.008 0.25

Candida tropicalis ATCC 750 >16 0.06 0.25 0.03 0.5

Candida glabrata ATCC 90030 1 1 1 4 1

Candida kefyr ATCC 28838 1 0.12 0.06 0.5 0.5

Candida krusei ATCC 6258 >16 2 2 0.5 2

Candida guilliermondii ATCC 9390 >16 0.5 4 1 0.5

Candida parapsilosis ATCC 22019 >16 0.12 0.12 0.12 1

Saccharomyces cerevisiae ATCC9763 >16 0.25 0.5 1 0.5

Cryptococcus neoformans ATCC90112 2 0.06 0.12 0.06 1

Trichosporon asahii TIMM 3144 2 0.25 0.5 0.5 2

Scedosporium apiospermum ATCC MYA-3634 >16 0.5 2 1 8

Fonsecaea pedrosoi ATCC 44356 >16 >8 1 0.06 0.25

Absidia corymbifera IFM 40776 >16 >8 1 0.12 0.25

Cunninghamella elegans IFM 40505 >16 8 0.5 0.25 0.5

(41)

35

The assay was conducted in heat-inactivated human serum containing 20 mmol/l HEPES (pH 7.4) under 5%CO2 at 37 ̊C. C. neoformans was cultured for 72 hours. All the other strains were cultured for 24 to 48

hours.

VRC: voriconazole, ITC: itraconazole, PSC: posaconazole, AMB: amphotericin B

Table 7. Antifungal activity of ASP2397 in human serum and RPMI medium

Organism

No. of isolates

Drug

µg/ml in human serum µg/ml in RPMI

Range MIC90 Range MIC90

A. fumigatus 49 ASP2397 1 - 4 2 0.06 - 0.5 0.5 VRC 0.12 - 1 0.5 0.12 - 1 0.5 ITC 0.5 - 8 4 0.12 - 0.5 0.5 PSC 0.06 - 0.5 0.25 0.03 - 0.25 0.12 AMB 0.5 - 2 2 0.25 - 1 0.5 Azole-resistant A. fumigatus 4 ASP2397 1 - 2 0.06 - 1 VRC 0.12 - 8 0.25 - 4 ITC >8 >8 - PSC 1 - 8 1 - >8 AMB 0.5 - 2 0.25 - 1 A. niger 20 ASP2397 2 - >16 >16 1 - >16 >16 VRC 0.06 - 1 1 0.12 - 2 1 ITC 0.5 - >8 >8 0.12 - >8 >8 PSC 0.03 - 2 1 0.016 - 0.5 0.5 AMB 0.25 - 4 4 0.12 - 1 1

(42)

36

Organism

No. of isolates

Drug

µg/ml in human serum µg/ml in RPMI

Range MIC90 Range MIC90

A. flavus 17 ASP2397 2 - 4 2 2 - >16 16 VRC 0.25 - 1 1 0.25 - 1 1 ITC 1 - 4 4 0.12 - 1 1 PSC 0.25 - 0.5 0.5 0.03 - 0.25 0.25 AMB 1 - 8 8 0.5 - 2 2 A. terreus 20 ASP2397 2 - 4 4 0.25 - 8 1 VRC 0.12 - 1 1 0.25 - 0.5 0.5 ITC 0.25 - 4 4 0.12 - 0.25 0.25 PSC 0.06 - 0.5 0.5 0.06 - 0.12 0.12 AMB 1 - 8 4 0.25 - 2 1 A. nidulans 5 ASP2397 2 - 4 16 - >16 VRC 0.12 - 0.25 0.12 - 0.25 ITC 1 - 2 0.12 - 0.5 PSC 0.12 - 0.25 0.06 - 0.12 AMB 4 0.5 - 2 F. solani 10 ASP2397 2 - 8 8 0.25 - >16 >16 VRC >8 >8 8 8 ITC >8 >8 >8 >8 PSC >8 >8 >8 >8 AMB 1 - 8 4 0.5 - 2 2

The assays were conducted in heat-inactivated human serum and RPMI1640 (CLSI M27-A3 and M38-A2). In the human serum assay containing 20 mmol/l HEPES (pH 7.4), assay incubation was conducted under 5% CO2 for 48 hours at 37 ̊C. MIC90 were calculated when the number of tested strains was 10 or

Figure 1.    Molecular structure of antifungal agents
Figure 2.    Molecular structure of ASP2397
Figure 3. Effects of antifungals on the survival of silkworms infected with A. fumigatus (n=8) (a) 32 h and  (b) 46 h post infection
Figure 4. Structure of ASP2397, AS2488053, and AS2488059
+7

参照

関連したドキュメント

Standard domino tableaux have already been considered by many authors [33], [6], [34], [8], [1], but, to the best of our knowledge, the expression of the

If Φ is a small class of weights we can define, as we did for J -Colim, a2-category Φ- Colim of small categories with chosen Φ-colimits, functors preserving these strictly, and

Eskandani, “Stability of a mixed additive and cubic functional equation in quasi- Banach spaces,” Journal of Mathematical Analysis and Applications, vol.. Eshaghi Gordji, “Stability

and Stoufflet B., Convergence Acceleration of Finite Element Methods for the Solution of the Euler and Navier Stokes Equations of Compressible Flow, Proceedings of the

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

Physiologic evaluation of the patient with lung cancer being considered for resectional surgery: Diagnosis and management of lung cancer, 3rd ed: American College of Chest

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

Applications of msets in Logic Programming languages is found to over- come “computational inefficiency” inherent in otherwise situation, especially in solving a sweep of