京都橘大学看護学部卒業生の動向ならびに意識調査
西 野 毅 朗・河 原 宣 子・梶 谷 佳 子
1 .は じ め に
近年の大学改革の流れの中で、客観的データに基づくアカウンタビリティや内部質保証の実 現のために、在学生を対象とした調査だけでなく卒業生も対象とした調査を行う大学が増えて いる。これは日本に限ったことではない。吉本・坂巻(2019)によれば、米国では1930年代から 卒業生調査が始まっており、個別機関が IR として実施し、自己点検評価や認証評価に活用し ている。欧州においては、世界最初の大規模な国際的卒業生調査が1998年(CHEERS 調査)と 2005~2006年(REFLEX 調査)に実施され、それらが個別機関の卒業生調査の雛形となって中東 欧にも広がりを見せている。両調査には日本を代表して吉本らが参加しているが、2008年時点 で卒業生調査を実施している日本の大学は全国の 4 分の 1 程度とされる。なお、CiNii で「卒 業生調査」「大学」が含まれるタイトルを検索すると、2000年までの間に23件、2001年から 2010年の10年間で20件、2011年から2019年の 9 年間で25件の論文がみつかった。国内において も徐々に卒業生調査に対する関心が高まっていることの現れとみることができるだろう。 本調査で対象としている看護領域においても、卒業生調査は広がりを見せている。CiNii で 「卒業生」「調査」「大学」「看護」が含まれるタイトルを検索すると、2000年までの間に16件、 2001年から2019年から現在までの間に37件が挙げられた。看護学系大学においても21世紀に 入ってますます卒業生調査への関心が高まっているといえよう。その内容をみていくと、看護 系大学における卒業生調査には大きく 3 つの目的がある。 1 つ目は、カリキュラムや教育方法 を見直すためのものであり(牟田他2006,定方他2017)、一般的な卒業生調査の目的と同一である。 2 つ目は、卒後支援の在り方を検討するためのものである。看護系大学においては、卒業後の 進路が明確であり、卒業後も看護職として学び続ける姿勢が求められる。卒業生をいかに支援 するかは看護系に限らず医療系大学や学部・学科に期待される役割であり、その在り方を検討 するニーズ調査の一環として卒業生調査が用いられることがある(浜端他2013,竹本他2014,竹内 他2017)。 3 つ目は、大学が担うべき役割を明確にするためである。特に短期大学が 4 年制大 学へと移行するにあたって、大学が求められる個性や役割を明らかにすることを目的として行 われている(青木他2004,舟根他2008)。以上の 3 つが、看護系大学において実施される卒業生調 査の目的だが、 1 つ目と 2 つ目の目的を合わせて卒業生調査を行っているところもある(中野 他2008,南堀他2014)。京都橘大学は、2005年に京都の 4 年制私立大学として初めて看護学部を設立した。以来2009 年から卒業生を輩出し続け、2019年に11期生が巣立っていった。その間、在学生意識調査等を 実施しながら 2 回のカリキュラム改訂を行っている。しかし、これまで卒業生に対する調査は 行っておらず、卒業生の卒業後の動向や、大学に対する意識、これからのキャリアに対する意 識などは明らかにされてこなかった。今回の調査は、本学卒業生に対する初めてのものとなる。 その目的は、先述した 3 つの卒業生調査の目的のうち、 1 つ目と 2 つ目を踏襲し、教育改善と 卒後支援の在り方を検討するためとした。
2 .調 査 概 要
本調査の対象は、京都橘大学看護学部卒業 1 期生から10期生である。なお、アンケート配付 にあたっては、京都橘大学の同窓会である「淳芳会」より、看護学部卒業生名簿の参照許可を 得た。すべての卒業生の住所がわかったわけではなく、またアンケートを送付するも住所不定 で返却されてしまったものもあった。最終的にアンケートを配布できたのは、卒業生917名中、 796名であった。 調査方法は、質問紙による郵送調査である。回答は WEB からの入力もしくは、手書きで記 入した回答を返信用封筒で返送するものとした。質問項目は18問あり、詳細は別添資料の通り である。項目の設計にあたっては、先述した看護系大学における卒業生調査の質問項目を参照 して、自大学の文脈に沿った内容とした。調査期間は2018年12月~ 1 月である。なお、本調査 は京都橘大学研究倫理審査を受け、承認されている(承認番号18―41)。3 .調 査 結 果
(1)回収率および回答者情報 調査の結果、181件の回答(回収率22.7%)を得た。ただし、回答の研究活動への活用を承諾さ れ、かつ分析に活用できた件数は174件であった。以下の結果は、この174件に基づいている。 回答者の性別は、女性155名(89.1%)、男性18名(10.3%)、不明 1 名(0.6%)であった。卒業年次 は、 1 期生14名、 2 期生17名、 3 期生22名、 4 期生17名、 5 期生13名、 6 期生12名、 7 期生18 名、 8 期生20名、 9 期生25名、10期生15名となっており、各年次とも10名以上が回答している ことがわかる。最終学位は学士158名、修士 6 名、不明10名であり、何らかの専門資格を取得 しているものは 8 名(学会資格認定者 5 名、専門看護師 1 名、NST 1 名、産業カウンセラー 1 名)だった。 (2)現在の仕事の状況について 卒業直後の職業については、看護師141名、助産師15名、養護教諭 8 名、保健師 7 名、進学 1 名、就業なし 1 名、不明 1 名であった。これに対し現在の職業については、看護師118名、保健師20名、助産師14名、養護教諭11名、看護教員 4 名、主婦 3 名、就業なし 3 名、不明 1 名 となっている。看護師の数が減る一方、保健師、養護教諭の数が特に増え、卒業直後には見ら れなかった看護教員になった者も確認できた。 現在の勤務先については、看護師のうち病院108名、医療・診療所 5 名、訪問看護ステー ション 3 名、保育園、リハビリ型デイサービスセンター、美容外科、派遣がそれぞれ 1 名ずつ であった。保健師は、保健センターが 9 名、保健所が 3 名、市町村や市役所が 2 名、医療・診 療所、企業保健室、健康診断・健康指導する施設、子育て世代包括支援センターになる一歩手 前のこどもセンターが各 1 名である。助産師は、 1 名が医療・診療所だったのに対し、他の13 名はいずれも病院で勤務している。勤務地については、近畿が149名(86%)と圧倒的に多く、 次いで東海 8 名( 5 %)、関東 7 名( 4 %)、北陸 3 名( 2 %)、中国 1 名( 1 %)、四国 1 名( 1 %)と なっている。 現在の仕事の満足度については、大変満足11名( 6 %)、満足60名(35%)、どちらかといえば 満足66名(38%)、どちらかといえば不満23名(13%)、不満 4 名( 2 %)、大変不満 4 名( 2 %)と なっており、 8 割以上の卒業生が肯定的回答を示している。 (3)現在の看護実践能力について 現在の看護実践能力については、京都橘大学看護学部の実践看護学実習で目標としている 5 つの規準について、 6 段階( 6 点:常にできる、 5 点:できることが多い、 4 点:どちらかといえばで きる、 3 点:どちらかといえばできない、 2 点:できないことが多い、 1 点:できない)で自己評価し てもらった。規準 1 は、「【患者―看護者関係の構築】対象者の立場になって考え、対象者を尊 重した行動をとったり、対象者を気遣い、体験や想いに共感的に関わることができる。」、規準 2 は、「【倫理・道徳的態度】対象者の権利や尊厳、信条を理解し、擁護に必要な行動をとるこ とができる。また、守秘義務を遵守できる。」、規準 3 は、「【人によりそう看護の実践】対象者 の安全・安楽・自立を考慮し、原理原則や根拠を踏まえ、対象者の状況に合わせた看護を実施 できる。看護目標と対象者の反応から、実践した援助を振り返って客観的に評価し、より適切 な援助に結びつけることができる。」、規準 4 は、「【人によりそう看護の実現に向けた連携・協 働】適切に報告、連絡、相談を行い、看護職同士の連携はもちろん、対象者や健康課題の特徴 に応じた多職種連携(チーム医療)も実践できる。」、規準 5 は、「【自己成長】自己の課題を認識 し、行動変容につなげることができる。他者(対象者や看護職、他の医療職者)との関わりの中で、 看護職者としてどのような姿勢を大切にしたいと考えているか、看護の専門性や、人によりそ う看護について等、自分なりの看護観を語ることができる。」ことである。 図 1 の通り、全ての項目において 9 割以上の卒業生は肯定的回答を示した。中でも、規準 2 【倫理・道徳的態度】は5.6点の積極的肯定回答が74%と高く、規準 5 【自己成長】は 1 , 2 , 3 点の否定的回答が57%と過半数を占めていることがわかる。なお、卒業年次やカリキュラム の違いによって、実践能力の自己評価結果に違いがでるかを確認するために相関分析を行った
が、いずれも相関性はみられなかった。 (4)学生時代の学習態度について 学生時代の学習態度についてみると、項目間に差があることがわかる(図 2 )。中でも、「仲 間との積極的交流」は、 5 , 6 点という積極的肯定回答が65%となり、 1 , 2 , 3 点の否定的 回答は14%と全項目の中で最も少ない。一方で、「教員への積極的関わり」は、積極的肯定回 答が26%と全項目で最も少なく、否定的回答は48%と全目で最も多い。 なお、カリキュラム改訂と学習態度に相関があるかどうか分析したところ、授業外学習につ いてのみ弱い正の相関がみられた。また、先の看護実践能力の自己評価と、学生時代の学習態 度の相関関係を探ると、随所に弱い正の相関を見つけることができた。 1 %水準の有為(両側) が認められたものは、以下の通りである。「演習・実習での積極的行動」と【患者―看護者関 係の構築】(r=.225)【人によりそう看護の実践】(r=.221)【人によりそう看護の実現に向けた連 携・協働】(r=.225)、「教員への積極的関わり」と【人によりそう看護の実践】(r=.230)【自己 成長】(r=.305)、「仲間との積極的交流」と【患者―看護者関係の構築】(r=.217)【人によりそ う看護の実現に向けた連携・協働】(r=.244)、「進路希望の明確さ」と【患者―看護者関係の 構築】(r=.250)【倫理・道徳的態度】(r=.200)【人によりそう看護の実現に向けた連携・協働】 (r=.229)【自己成長】(r=.316)となっている。 1 0 0 0 1 1 1 1 1 2 2 3 5 6 7 34 21 37 27 47 51 45 43 48 36 8 29 11 15 8 規 準 1 規 準 2 規 準 3 規 準 4 規 準 5 1点 2点 3点 4点 5点 6点 図 1 .現在の看護実践能力の自己評価(%)
(5)学生時代に受けた教育について 続いて、図 3 は自身が受けた教育を振り返ったものである。「学びの実践性」を除いた 4 項 目の肯定的回答は 9 割を超えている。中でも、「母校への誇り」と「高校生への推薦度」につ いて 5 , 6 点とした積極的肯定回答はそれぞれ69%、70%となっており、 5 項目の中でも高い 数値となっている。 また、「授業のわかりやすさ」は卒業年次と弱い正の相関関係( 1 %水準で有意)が認められた。 一方で、学びの実践性(大学で学んだことは、社会に出て役に立った)については、積極的肯定回答 が48%と半数を下回っており、 5 項目の中で最も低い数値になっている。 受けた教育と、現在の看護実践能力との間にも弱い正の相関関係をいくつか発見できた。 1 %水準の有為(両側)が認められたものは、「教職員への信頼」と【患者―看護者関係の構築】 (r=.316)【倫理・道徳的態度】(r=.316)である。なお、「教職員への信頼」と、「授業のわかりや すさ」(r=.637)「学びの社会接続」(r=.566)の間にも正の相関がみられる。 また、「母校への誇り」と【患者―看護者関係の構築】(r=.316)【自己成長】(r=.290)が、「高 校生への推薦」と【患者―看護者関係の構築】(r=.238)【人によりそう看護の実践】(r=.247) 【自己成長】(r=.288)が、弱い正の相関にあることも明らかになった。このことは、将来的な 看護実践能力を高めることを通じて、母校への愛着を高めることにつなげられる可能性を示唆 していると捉えることができるのではないだろうか。 2 5 2 6 1 2 4 7 4 13 1 3 14 21 10 29 12 10 34 35 37 27 22 25 40 26 40 20 32 40 6 6 8 6 33 22 授 業 へ の 集 中 度 授 業 外 学 習 演 習 ・ 実 習 へ の 積 極 性 教 員 へ の 積 極 的 関 わ り 仲 間 と の 積 極 的 交 流 希 望 進 路 の 明 確 さ 1点 2点 3点 4点 5点 6点 図 2 .学生時代の学習態度(%)
(6)京都橘大学看護学部への期待について 最後に、京都橘大学看護学部への期待についてである。 5 、 6 点の積極的肯定回答が多い上 位 3 項目は「臨床・臨地との協力」(73%)、「教育カリキュラムや教育内容の充実」(69%)、 0 1 2 0 0 1 2 4 1 2 5 6 10 6 5 33 28 37 24 23 49 40 40 45 39 13 24 8 24 31 授 業 の わ か り や す さ 教 職 員 へ の 信 頼 学 び の 実 践 性 母 校 へ の 誇 り 高 校 生 へ の 推 薦 1点 2点 3点 4点 5点 6点 1 1 0 1 2 3 3 6 1 2 2 3 4 3 2 3 3 10 4 4 10 10 10 12 25 30 21 25 32 37 40 35 48 43 44 29 32 31 33 35 21 14 29 37 19 17 12 7 教 育 カ リ キ ュ ラ ム や 教 育 内 容 の 充 実 教 育 方 法 や 教 授 法 の 改 善 臨 床 ・ 臨 地 と の 協 力 図 書 館 の 充 実 卒 後 の 支 援 研 究 機 関 と し て の 発 展 地 域 貢 献 大 学 か ら の 情 報 発 信 1点 2点 3点 4点 5点 6点 図 3 .京都橘大学看護学部の教育を振り返って(%) 図 4 .京都橘大学看護学部の教育への期待(%)
「図書館の充実」(66%)となった。一方で、積極的肯定回答が少なかった下位 3 項目は「大学 からの情報発信」(42%)、「地域貢献」(45%)、「研究機関としての発展」(48%)となっている。 (7)今後の将来設計について 職業継続の意思について複数回答可で尋ねたところ、「現在就いている職業で今後も働き続 けたい。」(84%)、「現在働いている職場で今後も働き続けたい。」(51%)、「現在は働いていな いが、今後看護職として働きたい。」( 5 %)、「現在は働いておらず、今後も看護職として働く 希望はない。」( 2 %)となった。以上のことから。 9 割近い卒業生が看護職として働く希望を 持ち続けており、半数の卒業生は現在の職場での勤務を希望していることがわかる。 継続教育受講の意思についても複数回答可で尋ねたところ、「資格を取得したい」(35%)、 「たちばな SIM(京都橘大学における“楽しく身になる”卒後教育)等を受講したい」(20%)、「大学 院に進学し、修士号を取得したい」( 7 %)、「大学院に進学し、博士号を取得したい」( 2 %)と なった。取得したい具体的な資格名については、各種認定看護師や専門看護師をはじめ、助産 師、栄養士、精神保健福祉士、臨床心理士、小児在宅ケアコーディネーター、フットケア指導 士 、FP が挙げられた。以上より、 3 分の 1 程度の卒業生が継続教育の必要性を感じており、 資格取得、講座受講、大学院進学の順にニーズがあることが明らかになった。
4 .考 察
(1)教育改善の方向性について 本調査を通じて、卒業生の実践能力に対する自己評価の全項目、そして在学中の教育を振り 返った 5 項目のうちの 4 項目の肯定的回答が 9 割を超えていることから、京都橘大学看護学部 の教育は概ね卒業生に評価されていると言える。また、「授業のわかりやすさ」と卒業年次が 弱い正の相関関係にあることは、各教員が授業改善の努力を継続的に行っていることの表れと みることもできる。一方で今後の改善課題もいくつか見出すことができた。特筆すべき 2 点に 絞ると、以下のとおりである。 第 1 に、看護の実践能力における「自己成長」の自己評価をいかに高めるかである。本項目 は、最も積極的肯定回答が少なかった。「自己成長」と弱いながらも正の相関がみられた学習 態度は「教員への積極的関わり」と「進路希望の明確さ」であった。特に「教員への積極的関 わり」は、先述の通り積極的肯定回答が他の項目と比べて少なかったため、この点を改善課題 とすることで「自己成長」の自己評価を高められる可能性はある。ただし、あくまでも相関分 析であり、因果を示すものではないことは注意したい。 第 2 に、学びの実践性をいかに高めるかである。京都橘大学看護学部への期待の第 1 位は 「臨床・臨地との協力」であった。また看護学部の教育の振り返りでは唯一「学びの実践性」 だけが肯定的回答 9 割を超えることはできず、かつ積極的肯定回答が 5 割を切っていることからも課題であると言える。学びの実践性を高めることができれば、看護実践能力として積極的 肯定回答が「自己成長」の次に低かった「人によりそう看護の実践」と「患者―看護者関係の 構築」の自己評価向上にも寄与するだろう。 (2)卒後支援の方向性について 卒業生の 9 割が看護職として今後も働きたいと考えており、かつ卒後支援を積極的に期待す る声が全体の51%であったことから、卒後支援は引き続き重要と言える。継続教育受講の意思 については、現在大学が提供している継続教育「たちばな SIM」へのニーズ以上に、資格取 得の意思が高いことから、卒業生に対する資格取得を支援する方法を模索する必要性が伺える。 特にこれら継続教育の内容については、卒業生が看護師以外の職業に就いていることも踏まえ たテーマ設定が望ましい。 また、大学院進学希望者も全体の 1 割近くはあり、少ないながらもニーズがあることが確認 された。卒業生の87%が現在も近畿圏で働いていることを考えれば、京都橘大学大学院への進 学を推奨していくことも、 1 つの卒後支援の在り方になるだろう。
5 .課題と展望
本調査は、学内の教育改善と卒後支援の在り方を検討するために、本学が行った初めての卒 業生調査であった。結果的に、卒業生が自身の看護実践能力を高く評価し、母校への誇りを 持ってくれていることが明らかになったことは喜ばしいことであった。また、これらの評価を さらに高めていくための方向性や卒後支援の方向性が、曖昧にも見えてきたことも成果であっ た。 一方で、本調査を通じて大きく 3 つの課題が浮き彫りになった。 1 つ目は、回収率の低さで ある。他大学の調査事例をみても、その回収率は 3 割から 4 割程度はある。これに対して本学 は 2 割程度しか回収できていない。この回収率では、卒業生全体を推し量るに足る信頼性を得 ることが難しい。個人情報の管理が厳しくなってきている時世ではあるが、同窓会とも協力し ながら、卒業生と関係性を維持していけるような仕組みづくりが必要であろう。 2 つ目は、カリキュラム評価の難しさである。今回、カリキュラムの改訂に伴って卒業生の 看護実践能力や学習態度、教育に対する評価に変化がもたらされたかどうかも確認したが、相 関性を確認することはできなかった。そもそもカリキュラムの大きな改訂は 4 年に 1 度しかな く、カリキュラムの改善成果を卒業生という目線から評価するまでには 4 年以上の月日が必要 となる。カリキュラム評価にあたっては、多様な指標の 1 つとして検討するという位置づけに なるだろう。 3 つ目は、他大学との比較の難しさである。各大学とも、それぞれが卒業生に聞きたい内容 で質問紙を構成しているため、比較が難しく、他大学との相対化ができない状況である。もし他大学との相対評価を行うのであれば、コンソーシアムを組むなどして、同一の条件下で調査 を行い、結果を相互に交換するといった仕組みづくりが必要であろう。 京都橘大学看護学部では2019年度より、新しいカリキュラムの運用が始まっている。内部質 保証の観点から、アセスメントポリシーなども定め、カリキュラムマネジメントを行っていく 計画である。そのなかで、卒業生調査をいかに実施し、教育改善や卒後教育に役立てていくか、 本調査を踏まえながら今後も検討していきたい。 謝辞 本研究にご協力賜りました卒業生の皆様に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。皆 様の益々のご活躍を、心より祈念しております。また是非、大学に足をお運びください。 注 ( 1 ) 「卒業生調査」「大学」「看護」で検索したところ、純粋な卒業生調査に関する論文はヒットしな かったため、「卒業生」と「調査」に分けて検索した。
京都橘大学看護学部卒業生に対するアンケート調査票
■見出しの調査にご協力をお願い申し上げます。 ■本調査結果は、統計処理した上で看護学部の教育改善や広報・研究活動に活用いたします。 ■本調査に参加いただくかどうかは、皆さまの意思で決めていただけます。ご協力いただがない場合で も、皆さまの不利益になることはありません。 ■本調査は、京都橘大学研究倫理審査委員会の承認を受け実施するものです(承認番号 18-41)。 ■いただいた回答は、統計的に処理しますので、個別の回答結果を外部に公開することはありません。 ■回答に迷う場合には、最も近いものを選んでください。ただし、回答しづらいあるいは回答したくな い設問については、空欄でも結構です。 ■本アンケートは、2019 年 1 月 15 日までにご回答ください。 ■ご回答にあたっては、本回答用紙に記入し同封の返信用封筒でお送りいただいて 構いませんが、可能な方は左記のQRコードを読み取り、インターネット上でご回 答いただければ大変助かります。 ■本調査の責任者は看護学部の河原宣子です。共同研究者は、看護学部の梶谷佳子 と教育開発支援センターの西野毅朗です。 ■ご不明な点は、京都橘大学教育開発支援センター [email protected](担当:西野)までお寄せください。 Ⅰ.あなたについて、お伺いいたします。 問1.あなたの本学卒業年を記入してください。 年卒(参考:1 期生…2009 年卒) 問2.あなたの性別について、該当するほうに〇をつけてください。( ①男 ・ ②女 ) 問3.あなたの最終学歴について、該当するものに〇をつけてください。(①学士・②修士・③博士) 問4.看護に関連してあなたが現在所持している資格があれば、〇をつけてください。(複数回答可) ①専門看護師(分野: ) ②認定看護師(分野: ) ③学会認定資格(名称: ) ④その他( ) Ⅱ.あなたの現在の仕事の状況について、お伺いいたします。 問5.あなたが本学卒業時点の就業職種(進路)について、該当するものに〇をつけてください。 ( ①看護師 ②保健師 ③助産師 ④看護教員 ⑤養護教諭 ⑥進学 ⑦就業なし ⑧その他: ) 問6.あなたの 2019 年 1 月 1 日現在の就業職種について、該当するものに〇をつけてください。 ( ①看護師 ②保健師 ③助産師 ④看護教員 ⑤養護教諭 ⑥進学 ⑦就業なし ⑧その他: )問7.あなたの 2019 年 1 月 1 日現在の勤務先について、該当するものに〇をつけてください。 ( ①病院 ②医院・診療所 ③保健センター ④保健所 ⑤看護系教育機関 ⑥学校保健室 ⑦企業保健室 ⑧訪問看護ステーション ⑨高齢者施設 ⑩地域包括支援センター又は在宅介護支援センター ⑪その他: ) 問8.現在の職場における勤続年数は、何年目になりますか。 年目 問9.あなたの現在の勤務地域について、該当するものに〇をつけてください。 ( ①北海道 ②東北 ③関東 ④北陸 ⑤東海 ⑥近畿 ⑦中国 ⑧四国 ⑨九州・沖縄 ⑩海外 ) 問10.現在の仕事の満足度について、該当するものに〇をつけてください。 (①大変満足 ②満足 ③どちらかといえば満足 ④どちらかといえば不満 ⑤不満 ⑥大変不満) 問11.現在の看護実践能力について、該当する番号に〇をつけてください。 設問 常にできる⑥⇔①できない (1)【患者―看護者関係の構築】対象者の立場になって考え、対象 者を尊重した行動をとったり、対象者を気遣い、体験や想いに共感 的に関わることができる。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① (2)【倫理・道徳的態度】対象者の権利や尊厳、信条を理解し、擁 護に必要な行動をとることができる。また、守秘義務を遵守できる。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① (3)【人によりそう看護の実践】対象者の安全・安楽・自立を考慮 し、原理原則や根拠を踏まえ、対象者の状況に合わせた看護を実施 できる。看護目標と対象者の反応から、実践した援助を振り返って 客観的に評価し、より適切な援助に結びつけることができる。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① (4)【人によりそう看護の実現に向けた連携・協働】適切に報告、 連絡、相談を行い、看護職同士の連携はもちろん、対象者や健康課 題の特徴に応じた多職種連携(チーム医療)も実践できる。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① (5)【自己成長】自己の課題を認識し、行動変容につなげることが できる。他者(対象者や看護職、他の医療職者)との関わりの中で、 看護職者としてどのような姿勢を大切にしたいと考えているか、看 護の専門性や、人によりそう看護について等、自分なりの看護観を 語ることができる。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ①
Ⅲ.京都橘大学看護学部での学生時代を振り返って、以下の設問にお答えください。 問12.京都橘大学看護学部でのご自身の学習姿勢について、当てはまるものを選んでください。 設問 大変思う⑥⇔①全く思わない 授業は集中して受講していた ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 授業時間外で自主的に学習していた ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 演習や実習では積極的に行動していた ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 教員に積極的に質問したり、相談した ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 仲間と積極的に交流した ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 将来の希望進路は明確で強いものであった。 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 問13.京都橘大学看護学部で受けた教育について、当てはまるものを選んでください。 設問 大変思う⑥⇔①全く思わない 授業はわかりやすく、身になるものが多かった ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 信頼できる教職員が多かった ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 大学で学んだことは、社会に出て役に立った ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 京都橘大学看護学部を卒業できたことを、誇りに思う ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 京都橘大学看護学部への入学を、高校生に勧めたいと思う ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 問14.京都橘大学看護学部に、今後さらに期待することを教えてください。 設問 大変思う⑥⇔①全く思わない 教育カリキュラムや教育内容の充実 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 教育方法や教授法の改善 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 臨床・臨地との協力 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 図書館の充実 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 卒後の支援(具体的支援内容: ) ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 研究機関としての発展 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 地域貢献 ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① 大学からの情報発信(ほしい情報: ) ⑥ ⑤ ④ ③ ② ① その他( )
Ⅳ.ご自身の将来設計について、以下の設問にお答えください。 問15.職業継続の意思について、当てはまるものを選んでください(複数回答可)。 ①現在就いている職業で今後も働き続けたい。 ②現在働いている職場で今後も働き続けたい。 ③現在は働いていないが、今後看護職として働きたい。 ④現在は働いておらず、今後も看護職として働く希望はない。 ⑤その他( ) 問16.継続教育受講の意思について、当てはまるものを選んでください(複数回答可) ①資格を取得したい。(取得希望資格名(複数可): ) ②大学院に進学し、修士号を取得したい。 ③大学院に進学し、博士号を取得したい。 ④たちばなSIM(京都橘大学における“楽しく身になる”卒後教育)等を受講したい。 問17.本調査結果の看護教育研究への活用について、ご許可いただける場合は☑をお願いします。 □統計処理によって個人を特定されないようにした上で、研究活動に活用することを認める。 問18.京都橘大学看護学部では卒業生への情報配信のため E-メールを活用することがあります。 本調査結果もメールにて配信予定です。差し支えなければ、メールアドレスを教えてください。 (大学からの情報配信以外の目的以外で用いることはありません) @ 設問は以上になります。 ご協力くださり、誠にありがとうございました。
参考文献 青木実枝,後藤順子,佐藤幸子,遠藤恵子,遠藤芳子(2004)「山形県立保健医療短期大学看護学科卒業生 の動向(第 2 報)―就業上の困りごと,誇りに思うことを中心に―」山形保健医療研究, 7 ,pp.57-66. 定方美恵子,成田太一,西方真弓,柏美智,住吉智子,坂井さゆり,清水詩子,小林恵子(2018)「看護学 専攻のカリキュラム評価による教育課程のあり方の検討:カリキュラム改正後の卒業年次学生へのアン ケート調査から」 新潟大学保健学雑誌,15(1),pp.79-87. 竹内幸江,安田貴恵子,有賀美恵子,酒井久美子(2017)「長野県看護大学看護学部卒業生の動向調査: 1 期生(1998年度卒業)から16期生(2013年度卒業)までの調査」長野県看護大学紀要,19,pp.23-32. 竹本由香里,桑名佳代子,原玲子,高橋方子(2014)「看護系大学におけるキャリア開発支援に関する研 究:卒業生の動向調査から」北日本看護学会誌,16(2),pp.23-31. 中野照代,荒川靖子,入江拓,木下幸代,小宮山弘美,鈴木恵理子,鈴木知代,濱畑章子,濱松加寸子, 藤本栄子,渡邊順子,竹田千佐子,風岡たま代(2008)「聖隷クリストファー大学看護学部卒業生の動向 調査―職種別・卒業年 3 区分別比較」聖隷クリストファー大学看護学部紀要,16,pp.77-90. 浜端賢次,江角伸吾,島田裕子,安藤恵,黒尾絢子,柴山真里,北田志郎,大塚公一郎,春山早苗,新海 里恵,渡邉瑠美(2013)「自治医科大学看護学部卒業生の現状調査:看護職を継続するための要因に着目 した一考察」自治医科大学看護学ジャーナル,11,pp.65-73. 舟根妃都美,播本雅津子,結城佳子,畑瀬智恵美,加藤千恵子,鈴木敦子,澁谷香代,村上正和,渡邊朋 枝,寺山和幸(2008)「市立名寄短期大学看護学科卒業生の動向調査からの検討」紀要, 2 ,pp.11-23. 南堀直之,村井嘉子,中道淳子,寺井梨恵子,米田昌代,井上智可,西村真実子,木村久恵,川端祥子, 小田沙矢香(2014)「石川県立看護大学看護学部卒業生の動向調査」石川看護雑誌,11,pp.51-62. 牟田能子,伊藤美奈加,大高恵美,三瓶まり,佐々木理恵子(2006)「日本赤十字秋田短期大学看護学科卒 業生の動向調査(第 3 報)卒業生による在学中の教育評価」日本赤十字秋田短期大学紀要,11,pp.85-90. 吉本圭一,坂巻文彩(2019)「大学における学修成果と質保証のための卒業生調査:九州大学教育学部卒業 生調査にみる職業統合的学習」大学院教育学研究紀要,21,pp.45-72.