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第一工業大学研究報告: 第26号

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第一工業大学研究報告 第24号(2012), pp.00-00

超音速流中の楔周りの流れと後退翼理論についての考察

酒 井 謙 二

第一工業大学 航空工学科 (〒899-4395 鹿児島県霧島市国分中央1-10-2) E-mail:[email protected]

The Study of the Supersonic Flow around the Wedge and the Study of the Swept

Wing Theory.

Daiichi Institute of Technology

Kenji SAKAI

The supersonic flow around the

wedge by using the Mach wave analysis and the Prandtl

Meyer expansion analysis with the shock wave analysis has been studied. The analysis

error for the two methods was studied. And swept wing theory has been studied by the

additional effect of the lateral flow. The result of this new analysis with considering the

lateral flow shows the good agreement with the experimental results.

Key Words:

S

upersonic flow around the

wedge, Mach wave analysis, Prandtl Meyer

expansion analysis, Shock wave analysis, New method for the Swept wing teory.

1. はじめに 超音速流にある代表的な楔周りの流れ計算を 「マッハ波ベース」と、「斜めの衝撃波とプラ ントルマイヤーの膨張理論の組み合わせ」の両 方で解析し、これら解析法による解析精度を検 討する。また、航空機の巡航マッハ数を増加さ せるために後退角が付けられているが、その理 論ベースとなる後退翼理論について、横流れを 考慮することで、単純後退翼理論の限界と、実 験式の意味づけを検討する。 2.楔まわりの超音速流れについて 解析モデルとしては、下図に示す左右対称な楔を 検討例として採用した。 図2.1 解析楔モデル 楔の周りの超音速流流れは、最初の半頂角を流れ るときに圧縮されて、マッハ数が減少し、次の角を 回るときには膨張されて、マッハ数は増加する。 その後、後縁で再度圧縮されてマッハ数が減少し、 後縁を過ぎるときには、前方マッハ数と等しくなる。 超音速流れでは、後方の流れの影響は受けない ため、解析は前から順次解くことができる。 従って、求められた後縁後方のマッハ数が楔前方 のマッハ数と同じになるかどうかで、解析方法の精 度を検討することができる。 2.1マッハ波による解析 2.1.1 解析方法 解析方法としては、弱い圧縮、膨張を仮定したマ ッハ波の発生によって、楔上で圧縮、膨張、圧縮が 起こると仮定する。マッハ波について詳細は省略す るが、次の図で説明される。 半頂角 M M? 1 第一工業大学研究報告 第26号(2014)pp.1-5

酒 井 謙 二

超音速流中の楔周りの流れと後退翼理論についての考察

(5)

図2.2 マッハ波について また、楔周りのマッハ数、角度の定義について下 図で示す。 図2.3 マッハ波仮定の流れ 楔前方のマッハ数をM1とし、楔の半頂角をδ1 とする。最初の圧縮波の後のマッハ数をM2とし、 次の膨張角をδ2とする。膨張後のマッハ数をM3 とし、後縁での圧縮角度をδ3とする。後縁後方の マッハ数をM4とする。 左右対称の楔の今回の場合は、δ2=2δ1とな り、δ3=δ1となる。 マッハ波理論の誤差がないと、M4=M1となる。 マッハ波の場合、角度変化δが小さいとすると、 角度変化δとマッハ数変化δMとの関係は以下の式 で表わされる。

δM

=±δ x

-1)

(M

2 (1) ここで+は膨張波の場合、-は圧縮波の場合を表 す。またγは比熱比で空気の場合は1.4となる。 今回の場合、(1)式をベースに、M1とδ1が 与えられると、圧縮後の楔上のマッハ数M2は以下 の式で求められる。 M2=M1+δM (2) 次に、このマッハ数M2と膨張角度δ2が与えら れると、同様に、楔上のM3を求めることができ、 同じように後縁後方のマッハ数M4も順次求めるこ とができる。 2.1.2 解析結果 解析マッハ数としては、M1=2.0、2.5、 3.0、3.5の4種類とした。また、計算した半 頂角δ1は、半頂角δ1は3°、5°、7.5°、 10°、12.5°の5ケースとした。 代表的な例として、楔角度δ1=12.5°とし、 前方マッハ数を2.5,3.5とした時の解析結果 を図2.4と図2.5に示す。 図2.4 M分布(M1=2.5) 図2.5 M分布(M1=3.5) M1とM4との差が、解析誤差となる。 計算した全ケースの誤差とM1との計算結果 を図2.6に示す。 この図から全てのδ1で、M1に対しほぼ直線 的に誤差は大きくなり、またδ1が大きくなるに つれて、誤差が大きくなっていることが分かる。 図2.6 誤差~M1(δ1) δ1 M1 M4 圧縮波 膨張波 圧縮波 M2 M3 δ2 δ3 誤差(M1-M4) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 M1 誤差% δ1=12.5 δ1=10 δ1=7.5 δ1=5 δ1=3 M分布(δ12.5°M1=3.5) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 M1 M2 M3 M4 M 誤差 マッハ波 M分布《δ12.5° M1=2.5) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 M1 M2 M3 M4 M 誤差 マッハ波

1+0.5

(γー1)M

(6)

M1=2.5のケースについて、δ1を変えた 結果を図2.7に示す。 誤差はδ1のおおむね2乗に比例して大きくな っていることが分かる。 図2.7 誤差~δ1(M1=2.5) 2.2 斜めの衝撃波とプラントルマイヤーの膨張 との組み合わせ解析 この解析では、マッハ波一本ではなく、その集合 体である斜めの衝撃波とプラントルマイヤーの膨張 理論との組み合わせで、流れが変化するとして解析 を行う。解析モデルを図2.8に示す。 図2.8 解析概要 2.2.1 斜めの衝撃波の解析手順 図2.8に示すような斜めの衝撃波を考えると 前方マッハ数M1と衝撃波前方角αと角度変化δ1 との関係は以下の式で表わされる。 この式から、δ1が固定されると、M1に対する 斜めの衝撃波角αを求めることができる。 δ=12.5°の衝撃波の角度αとマッハ数M1と の関係を図2.9に示す。 図2.9 α ~ M(δ1) 斜めの衝撃波後のマッハ数をM2、衝撃波後方角 をβとすると、M1とαとの関係は以下の式で求め られる。 M22sin2β=

γー1)

αー

γ

α+

γー

2 2

2

M n

1

s

i

(

(

1

)

M

1

2

s

i

n

2

2

)

また、β=α―δ1であるから、 この式から、斜めの衝撃波後方のM2を求めるこ とができる。 2.2.2 プラントルマイヤーの膨張解析手順 詳細は省略するが、あるマッハ数 M に対応する プラントルマイヤー角度νとMとの関係式は以下 に示す式で示される。 ν=

1

-1

γ-γ+

tan-1

1

1

γ-γ+

(M

-1

(M

-1

- tan-1 この式を計算した結果を図2.10に示す。 図2.10 ν~M 膨張前のマッハ数 M1 と偏向角δが与えられると、 膨張後のマッハ数 M2 との関係は δ1 M 1 M4 斜めの衝撃波 プラントルマイヤーの膨張 M2 α β M3 δ2 δ3 斜めの衝撃波 誤差(%) 0 2 4 6 8 10 12 0 2 4 6 δ1 誤 差 ( % ) 近似 誤差%

α~M(δ1=12.5°)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

1

2

3

M1

4

5

α

ν(°)~M 0 20 40 60 80 100 1 2 3 4 5 6 7 M ν M12=

γ

δ )

δ

α+

t

o

c

s

i

n

t

a

n

1 +

(

c 2α)

2( t

c

o

t

a

n

1

os

(2)

(4)

α

α

3 酒井:超音速流中の楔周りの流れと後退翼理論についての考察

(7)

ν(M2)=ν(M1)+δ で与えられる。 すなわち、ν(M1)とδを足した値になるように、 M2 を求めることができる。 2.3 解析結果の比較検討 組み合わせによる、代表的な例として、楔角度 δ1=12.5°、前方マッハ数を2.5,3.5 とした時の解析結果の比較を図2.11に示す。 図2.11 M比較(M1=2.5) 図2.12 M比較(M1=3.5) この図から、マッハ波解析と、衝撃波/プラント ルマイヤーの膨張の組み合わせ解析との差の多くは 膨張部で発生していると考えることができる。 次に、楔角度δ1=12.5°の場合のマッハ波 解析と衝撃波/プラントルマイヤーの膨張の組み合 わせ解析との誤差の比較と、各々の直線近似の比較 を図2.13に示す。 図2.13 誤差~M1(δ=12.5°) この図から、組み合わせ解析にすることにより、 誤差はおおむね1/3に減少するが分かった。 ただし、組み合わせ解析の方も、依然と誤差は発 生しており、その主原因は、この計算では粘性効果 を無視していることにあると考えられる。この効果 については粘性を含むナビアストークス方程式を解 く必要があり、計算空気力学(CFD)を行う必要 があると考えられる。 3.後退翼理論に対する検討 翼前方のマッハ数M∞を上げていくと、翼面上で 局所マッハ数が1.0に達する。 この時の翼前方のマッハ数M∞を臨界マッハ数 (Mcr)と呼ぶ。通常、これ以上M∞を上げると、 翼面上に衝撃波が発生して、空気抵抗が増大する。 3.1 単純後退翼理論 後退角効果概要を図3.1に示す。 図3.1 後退角効果概要 単純後退翼理論とは、後退角を付けたときの臨界 マッハ数を(Mcr)Λ とすると、図3.1のよ うに、後退角を付けると実質(Mcr)Λ x cosΛの流れが翼に直角に当たることとなり、後 退角の無いMcrを(Mcr)Λ=0 とすると (Mcr)Λ x cosΛ =(Mcr)Λ=0 の関係式が求められる。すなわち、 (Mcr)Λ =(Mcr)Λ=0/cosΛ となり、後退角をつけることで、後退角ありの臨界 マッハ数(Mcr)Λは後退角の無い臨界マッハ数 (Mcr)Λ=0 の1/cosΛ 倍となる。 これが、一般的に言われている単純後退翼理論であ る。 しかし、実際の計測では、 (Mcr)Λ = (Mcr)Λ=0/

cos

Λ

となることが知られている。この差は、単純後退 (Mcr)Λ=0 Mw (Mcr)Λ ・sinΛ (Mcr)Λ ・cosΛ (Mcr )Λ Λ Mw M=2.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 M1 M2 M3 M4 M 衝撃波PM マッハ波 M1=3.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 M1 M2 M3 M4 M 衝撃波PM マッハ波 誤差(%) 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 M1 誤差( %) マッハ誤差% 衝撃波誤差% マッハ近似 衝撃波近似

(8)

翼理論では考慮されていない横流れ成分が効いてい ると考えられる。 3.2 横流れ成分の考慮 後退角を付けると、マッハ数(Mcr)Λ は 翼に直角な成分(Mcr)Λ x cosΛ と 横 流れ成分(Mcr)Λ x sinΛ とに分けられ る。 単純後退翼理論では、この横流れ成分 (Mcr)Λ x sinΛ を省略したといえる。 後退角の無い翼の場合の臨界マッハ数 (Mcr)Λ=0 と、翼面上の局所マッハ数 (Mw)との比をKと置くと。 マッハ数の増加率 Kは K=Mw/(Mcr)Λ=0 と考えてよい。 後退角Λの場合、(Mcr)Λ x cosΛ に 対する増加率は同じであるため、垂直成分による翼 面上の増加は (Mcr)Λ x cosΛ x K となる。 このマッハ数に横流れ成分の (Mcr)Λ x sinΛ を加わえたものが、翼面上のマッハ数と なる。速度ベクトルの関係式から以下の式が求めら れる。 ((Mcr)Λ=0 x K)2 =((Mcr)Λ x cosΛxK)2+((Mcr)Λ x sinΛ)2 この式から

)Λ=0

(Mcr

K

2   2

cos

Λ

sin

2

Λ

K

となる。 この式で、横流れを考慮しないと、sinΛ=0 となり、単純後退翼理論と一致する。 今、Mw=1.0とおいて、後退角Λ を20°、 25°、30°、35°と変え、 (Mcr)Λ=0 をパラメータとして、 (Mcr)Λ=0 を 0.6,0.7,0.8とし て計算した結果を図3.2に示す。 図3.2 (Mcr)Λ /(Mcr)Λ=0 ~Λ (Mw=1.0) この結果から、実験結果は(Mcr)Λ=0 を0.7とし、Mw=1とした時と良い一致を示す。 このことから、実験式は(Mcr)Λ=0 を 0.7として得られたデータを基本としていること が予想される。 また、最近のスパークリティカル翼型の採用など により、翼面上の局所マッハ数が1を超えても、 大きな衝撃波が発生しないということを考慮して、 Mw=1.1にしたときの解析結果を図3,3に示 す。 図3.3(Mcr)Λ/(Mcr)Λ=0 ~ Λ (Mw=1.1) この結果からは、実験式が概ね (Mcr)Λ=0 を0.75と求められたものと考えられる。 B727,B737、B747、B757などの 旅客機の後退角の平均値はおおよそ28°程度であ り、その後退角に対して、今回の結果を使って、検 討された臨界マッハ数 (Mcr)Λ を推算する と、(Mcr)Λ=0 が0.7の場合は、 (Mcr)Λが0.75となり、(Mcr)Λ=0 が0.75の場合は、(Mcr)Λ が0.80と なる。 これは多くの旅客機が検討すると考えられ る巡航マッハ数にほぼ近くなる。 4.まとめ 授業で教えている高速空気力学について、日頃、 確認したい以下の2つの事項について検討をおこな った。 ①超音速流中の楔周りの流れ解析 ②後退翼理論 その結果、理論の限界や、理論と実験式との差を 明らかにすることができた。 5.参考文献 (1)流体力学序論:内田茂男(森北出版) (2)高速流体力学:永田雅人(森北出版) (Mcr)Λ/(Mcr)Λ=0 ~ Λ 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 20 25 Λ 30 35 (M c r) Λ / ( M c r) Λ = 0 (McrΛ=0)=0.8 (McrΛ=0)=0.7 (McrΛ=0)=0.6 実験式 単純後退翼理論 (Mcr)Λ/(Mcr)Λ=0 ~ Λ 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 20 25 Λ 30 35 ( M c r) Λ / ( M c r) Λ = 0 (McrΛ=0)=0.8 (McrΛ=0)=0.7 (McrΛ=0)=0.6 実験式 単純後退翼理論

(Mcr)Λ

5 酒井:超音速流中の楔周りの流れと後退翼理論についての考察

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第一工業大学研究報告 第24号(2012), pp.00-00

垂直風車の空力特性の検討

酒 井 謙 二

第一工業大学 航空工学科 (〒899-4395 鹿児島県霧島市国分中央1-10-2) E-mail:[email protected]

The Study about the Aerodynamic Characteristics of the Vertical Wind Mill

Daiichi Institute of Technology

Kenji SAKAI

The aerodynamic characteristics of the vertical wind mill have been studied.

Some design points have been studied to improve the performance of the vertical wind mill

power generation.

Key Words:

Vertical wind mill, Improvement of the performance, Aerodynamic characteristics

1.はじめに ある風速の中に置かれた垂直風車が、どのよ うな空力メカニズムで一定の回転数で回り続け るのかを検討し、高効率の垂直風車の設計指針 を得る。 図1 垂直風車写真 2.解析方法 垂直風車が上から見て左回転しているとした 時の速度成分を図2.1に示す。この図に示す ように、ブレードの位置と一様流速度と回転周 速度との関係で、ブレード翼にあたる有効迎角 が計算できる。その迎角に対応する揚力と抗力 が分かれば、その成分として回転方向に働く力 が計算できる。 図2.1 解析説明図 計算は周方向に10°ピッチに分割して、そ こでの値の和から回転力を計算した。回転力に 垂直風車の半径を掛ければ回転トルクとなる。 今回の検討では、問題を簡単にするために、 翼特性として、NACA0012翼特性とし、 参考文献(1)を参考に、揚力係数と抵抗係数 を推算した。揚力係数は最大迎角

α

max= VR U Ucosθ U VT=VR-Ucosθ 合速度 回転方向は左回りを 想定。従って、翼型は 左向きが頭になる ように取り付ける。 回転方向に対する翼の 有効迎角αは朱色の 合速度のベクトルから 求めることができる ーα θ Usinθ

酒 井 謙 二

垂直風車の空力特性の検討

(10)

16°とし、最大揚力係数1.6まで直線的に 増加し、そのあとは風洞試験結果に合うように 直線的に減少すると近似した。 風洞試験結果との比較を図2.2に示す。 図2.2 揚力係数の実験と近似との比較 また、抵抗係数CDは、参考文献(1)をベー スに揚力係数の関数として近似式で求めた。た だし、失速後の抵抗係数CDについては、失速 後も揚力が線形で増えると仮定したCLを使っ て、推算した。 CD=0.0058x0.0036xCL2 この抵抗係数の近似式と風洞試験結果との比 較を図2.3に示す。両者は良い一致を示す。

CD~CL

0

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

0.012

0

0.5

CL

1

1.5

CD

CD 近似CD 図2.3 抵抗係数の実験値と近似値との比較 3.計算結果 一様流速度は7.5m/s、10m/s、 12.5m/s、15m/sの4種類とし、そ の各々で回転周速度を振って、ブレード単位面 積あたりの回転力T(以後、回転力と表示)を計 算した。各速度の計算結果を図3.1~3.4 に示す。 図3.1 T~VR(U=7.5m/s) 図3.2 T~VR(U=10m/s) 図3.3 T~VR(U=12.5m/s) 図3.4 T~VRU=15m/s) CL~α -0.5 0 0.5 1 1.5 2 -5 5 15 α 25 CL CL実験 CL近似 U=7,5 T~VR 100.0 120.0 140.0 160.0 180.0 200.0 220.0 20 25 30 35 VR T U=10 T~VRT 200.0 250.0 300.0 350.0 400.0 30 35 40 45 VR T U=12.5 T~VR 300.0 400.0 500.0 600.0 700.0 30 40 50 60 VR T U=15 T~VR 750.0 800.0 850.0 900.0 50 55 60 65 VR T 8 第一工業大学研究報告 第26号(2014)

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傾向に多少の差はあるが、ある一様流速度に 対応して、ある周速度VRで回転力Tが最大と なり、それ以上では回転力は徐々に減少する。 すなわち、一様流が与えられると、最大回転力 に達する周速度で回り続けると考えられる。最 大回転力を発生する周速度と一様流速度Uとの 関係結果を図3.5に示す。 図3.5 VRmax(Tmax)~U 一様流流速と最大回転力を出す周速度とはほ ぼ比例すると考えられる。 現在の検討では、垂直風車の半径はパラメー タとしては入れていないが、一様流速度によっ て最大回転力を出す周速度が決まるということ は、大きな風車ほどゆっくり回り、小さい風車 ほど速く回ると考えられる。通常のプロペラ型 風車でも、その傾向は観察できる。 次に、一様流速度に対応する最大回転力を 図3.6にプロットする。最大回転力は、一様 流速度の2乗におおむね比例すると近似できる。 T ~ u 0 200 400 600 800 1000 5 7.5 10 U 12.5 15 17.5 T T 近似 図3.6 T ~ u 4.有効迎角分布と回転力分布の検討 一様流速度7.5m/sの場合で、最大回転 力を示す周速度VR=27.5m/s とその前の 周速度R=25m/s との各回転位置での有効迎 角分布と回転力分布の比較4.1~図4.4示す。 図4.1 有効迎角分布(VR=27.5m/s) 図4.2 回転力分布(VR=27.5m/s) 図4.3 有効迎角分布(VR=25m/s) 図4.4 回転力分布(VR=25m/s) VRmax(Tmax) 0 10 20 30 40 50 60 6 8 10 U 12 14 16 V R m ax VRmax 内挿 U=7.5 VR=25 -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 0 60 120 180 240 300 360 θ α U=7.5 VR=25 -5 0 5 10 15 20 25 0 100 200 300 400 θ T U=7.5 VR=27.5 -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 0 60 120 180 240 300 360 θ α U=7.5 VR=27.5 -5 0 5 10 15 20 25 0 60 120 180 240 300 360 θ T

(12)

最大回転力を出す周速度VR=27.5m/ sでは、最大の有効迎角が失速角に近い値であ ることが分かる。VR=25m/sの回転力が 減っているのは、部分的にブレード翼が失速し ているためと考えられる。 また、最大回転力を出す周速度以上では有効 迎角が失速角以下となっていることが確かめら れた。 5.翼型空力特性による効果の検討 ブレード翼型による垂直風車の特性への効果を 検討するために、以下の2つの翼型に対して検 討を行った。 一様流速度としては7.5m/sとする。 ⑴失速角の大きな対称翼の採用 検討例として、失速角が2°大きい対称翼を 想定して解析した。 ⑵キャンバー翼の採用 キャンバー翼特性として、プラス側の失速角 を2°増加(

α

max=18°)させ、反対にマ イナス側の失速角を2°減少させたキャンバ ー翼を想定した。 両者の回転力の比較を図5に示す。 図5 T~VR(翼型効果) この図から、失速角の大きな対称翼の改善効果 が示された。失速角2°増加の効果は回転力に 対しては1%程度であるが、回転速度VRは 2.5m/s早く最大回転力に達することが分かる。 また、キャンバー翼(±2°)の採用は回転 力で2%の減少、回転速度VRは5m/s遅く 最大回転力に達するなどと、悪化することが分 かった。 6.まとめ 一様流速度と回転速度から有効迎角を出 して計算する解析から、垂直風車の空力特 性について、次の知見を得ることができた。 (1)一様流速度が与えられると、最大回転力 を出す周速度を求めることができる。 すなわち、大きな風車になるほど、 ゆっくりとした回転で回ることが説明 できる。 (2)最大回転力を出す周速度以下で回転 すると仮定すると、翼に当たる有効迎角 がある回転位置で失速角以上となって いることが分った。 また、最大回転力を出す周速度以上で 回転すると仮定すると、翼に当たる有効 迎角が全てのスパン位置で失速角以下と なっている。 (3)回転力を大きくするためには、最大揚力 係数が大きく、抵抗特性も良好な対称翼 型を用いるのが有効と考えられる。 仮に、翼型を改良して失速角を2°大き い18°とした計算例では回転力は1% 弱の改善ではあるが、最大回転を得る回 転速度は2.5m/s ほど小さい値を示す。 (4)キャンバー翼型は対称翼に比べ悪化する と推定される。市販の垂直風車の多くは キャンバー翼を採用しているが改善の余 地はあると考えられる。 (5)垂直風車は回転することで回転力が得ら れるため、初期速度は必要と考えられる。 そのため、微風速から回転させるために は、低速でも稼動するロビン型風車のよ うなものを、初期回転を得るために取り 付ける必要があると考えられる。 7.参考文献

(1)Abbott,I.H., and von Doenhoff, Theory of Wing Sections, Dover,New York,1949 (2)プロペラ理論(第3版) 日本航空機技術教会 T~VR 0 50 100 150 200 250 15 20 25 VR 30 35 40 T T(αmax=18°) T(αmax=16°) キャンバー翼 10 第一工業大学研究報告 第26号(2014)

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第一工業大学研究報告 第24号(2012), pp.00-00

自由落下回転体の空力メカニズムの研究

酒 井 謙 二

第一工業大学 航空工学科 (〒899-4395 鹿児島県霧島市国分中央1-10-2) E-mail:[email protected]

The Aerodynamic Study around the Rotating Body during the free fall

Daiichi Institute of Technology

Kenji SAKAI

The aerodynamic around the rotating body during the free fall has been studied.

The result of this study shows the mechanism of the seed’s rotating motion during the free fall. This motion mechanism is a little different from the wind mill which has the variable pitch systems. The seeds have fix twist. This needs the first rotation which occurs by the disturbance during the free fall. This paper shows the seeds may have the proper twist for the free fall.

Key Words: The seed’s rotating motion, Aerodynamic study, Free fall, Proper twist

1.目的 羽根つき種のように落下しながら回転する ことで、広い範囲に種を飛ばすものがある。 一般的に風車は可変ピッチを用いることで初 期回転力を得、その後はプロペラピッチを変 えて最大回転力を得るようにコントロールし ている。本論文では、種のように固定のピッ チを持つものが、どのような空力のメカニズ ムで回転しながら落下するかを検討する。 2.自由落下回転体模型と回転運動の観察 H2 5 年 度 の 卒 業 研 究 ( 参 考 文 献 ( 1 ) 参 照)で、図1に示す4枚羽の模型を作って、自 由落下運動を観察した。 図1 4枚羽回転模型 この模型では、ブレードに一定方向に捩れを付 けることで、落下し始めは回転しないが、暫らく すると回転し、落下速度が減少することが観察で きた。また、回転方向は、常に羽が下向きの捩れ になっている方向に回転することも観察された。 3.空力解析 この現象を空力的に解明するために、回転翼素 理論によって解析を試みた。 解析モデルとしては、4枚羽の一枚をイメージ し、模型で試みたように、捩りは付け根では0°、 ブレード端で最大捩り角(γ°)となるとし、直 線的に捩り角が変化すると仮定した。 ブレードの平面形は模型とほぼ同じとし、スパ ン長は7cm、翼幅は2cmとした。 3.1平板の揚力と抵抗係数の近似式 ブレード断面は平板とし、断面空力係数(揚力 係数と抵抗係数)は(適当な平板の風試結果が見 当たらなかったため)参考文献(2)を参考に薄 翼のNACA0006の風試結果から、揚力係数 は最大迎角12°(最大揚力係数1.4)まで直 線的に変化し、その後は迎角28°まで直線的に 減少し、その後は0となるとした。

自由落下回転体の空力メカニズムの研究

酒 井 謙 二

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また抵抗係数は迎角28°まではNACA0 006の風試結果(参考文献(2)参照)をベー スに揚力係数の二乗に比例するとし、以下の式 で推算した。 CD=0.006+0.00781CL2 その後は、迎角が90°の時の抵抗係数は平 板に垂直な流れがあたる時の抵抗数係数1.2 になる(参考文献(3)参照)と仮定して決め、 そこに至る間は、垂直面の大きさをベースに以 下の式で近似した。 CD=1.2sin(α) この近似は、多少の精度上の課題は残るが、 今回の目的の回転体の空力メカニズムを検討た めには問題ないと判断した。 図2に揚力係数の風洞試験結果と推算式の結 果との比較を示す。 図2 平板揚力近似分布 図3に抵抗係数の実験式と近似式との比較を 示す。 図3 平板抵抗近似特性 解析は、落下速度と回転数の両方を決めると各 スパン位置での前進速度が決まり、その値から各 スパン位置で有効迎角が求まる。有効迎角が求ま ると、それに対応する揚力係数と抵抗係数を求め ることができる。 揚力係数と抵抗係数から、回転方向とそれに垂 直な方向の分力が計算でき、スパン方向に積分す ることで全体の力の成分を求めることができる。 捩り上げ側の平板流れモデルと、捩り下げ側の 平板流れモデルを、図4と図5に示す。 今回の解析では、落下速度を1m/sと想定し た。また、ブレード端の捩り角度と回転数をパラ メトリックに変化させて力成分を解析した。 図4 捩り上げ側に進行とした時の力成分 図5 捩り下げ側に進行とした時の力成分 図4は捩り上げ側にブレードが動くときにブレ ードに掛かる空気力を表す。この図から分かるよ うに、捩り上げ側にブレードが動くと平板に大迎 角が当り、失速し大きな抵抗が働く。その結果、 回転方向と逆方向に回転力が発生することが分か った。 このことは、捩り上げ側に初期回転を与えても、 逆方向に回転することからも確認できた。 捩り下げ側に5回/秒の回転するとき、ブレー ド端の捩り角(γ°)と回転力の計算結果を図6 に示す。 この結果から、落下速度が1m/sとした時、 約12°以上の捩りがあれば、初期速度として回 転数が5回/秒があれば回転し始めるということ が分かる。 揚力 回転速度 落下による速度 合速度 回転速度 左回転 抵抗 回転方向合力 回転方向と逆方向に回転力が働く γ α 揚力 回転速度 落下による速度 合速度 回転速度 左回転 抵抗 回転方向合力 回転方向と逆方向に回転力が働く γ α CL~α 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 0 50 100 α C L CL(推算) CL(実験) CD~α 0.000 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000 1.200 1.400 0 20 40 α 60 80 100 C D CD推算 CD実験 12 第一工業大学研究報告 第26号(2014)

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図6 回転数が5の時の捩り角と回転力の関係 次に、捩り角度が10°、15°、20°の回 転数と回転力との解析結果を図7に示す。 図7 回転力~N この図から、捩り角が小さいほど回転力が大き くなることが分かる。すなわち、初期回転が与え られて、回転力を発生することができれば、捩り 角は小さいほうが最大回転力は大きくなることが 分かる。 同様に揚力と回転数との関係を図8に示す。 図8 揚力~N 回転力と同じ傾向を示す。 最大回転力と捩り角度の解析結果を図9に示す。 図9 最大回転力~捩り角(γ°) 最大回転力は捩り角度を増やすと減っていくこ とが分かる。 最大揚力と捩り角度との関係を図10に示す。 最大回転力と同様の傾向を示す。 図10 最大揚力~捩り角(γ°) 4.まとめ 自由落下をする種の場合、落下する時の擾乱に よって回転が得られる最低の捩り角に近くなって いる事が想像される。 模型観察でも回転を始まるまで、少し落下して、 擾乱によって回転が始まる様子が観察できている。 今回の粗い解析では、おおよそ15°程度の捩 り角度が妥当な値と考えられる。 実際の模型でも、15°以上の捩り角を付けて も十分大きな回転は得られなかったし、10°以 下では初期回転ができない場合も発生した。 今回の検討で、自由落下をする回転体がどのよ うなメカニズムで回転し始めるのか、また、自然 界で得られた種の捩り角度がどのように決められ ているのかについて興味深い結果を得ることがで きた。 今後は、捩り角などに精度よい模型を作り、垂 直風洞を使って、落下速度や回転数などの計測 を行い、今回の解析の妥当性を確認したい。

回転力~γ(N=5)

-0.0001

-0.00005

0

0.00005

0.0001

0

10

20

30

γ

回転力~N -0.0006 -0.0004 -0.0002 0 0.0002 0.0004 0 5 10 15 20 N 回転力 γ10 γ15 γ20 揚力~N -0.06 -0.04 -0.02 0 0.02 0.04 0 5 10 15 20 N 揚 力 γ10 γ15 γ20 最大回転力~γ 0.0E+00 5.0E-05 1.0E-04 1.5E-04 2.0E-04 2.5E-04 3.0E-04 5 10 15 γ 20 25 最大回転力 最大揚力~γ 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 5 10 15 20 25 γ 最 大 揚 力

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5 参考文献

(1)“回転物体模型の製作と回転メカニズム の検討” 柴崎良太、酒井謙二

(H25年度卒業研究) (2)Abbott,I.H.,and von Doenhoff,

Theory of Wing Sections, Dover,New York,1949

(3)Hoerner,S.,-Fluid-Dynamic Drag, published by auther,1958

14 第一工業大学研究報告 第26号(2014)

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放送通信設備の防災に向けた信頼性設計

若井 一顕

第一工業大学 情報電子システム工学科 教授 〒899-4395 鹿児島県霧島市国分中央 1-10-2 Tel 0995-45-0640 E-mail [email protected]

Reliability design for disaster prevention

Broadcasting communication facilities

Dr. Kazuaki WAKAI

Department of Information and Electronic Systems Engineering Daiichi Institute of Technology Tel +81-995-45-0640 E-mail [email protected]

Abstract: 3/11/2011 East Japan earthquake has increased the importance of reliability design for the facility, said. Optimal installation of reserve facility, including redundancy given and difficult challenges. Want to describe in a dogmatic point of view to design facilities for disaster prevention broadcasting telecommunications facilities in this paper, based on my experience. The thought portion becomes reference very much a part of it and think that I would appreciate the many opinions. The paper will be writing to the Broadcasting magazine series as from 2014, may.

Key word: broadcasting facilities, reliability, redundancy, disaster prevention, earthquake, torrential rains. 1.まえがき 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災を受けて、設備に 対する信頼性設計の重要性は増してきた。設備の予備 系を含む冗長性の最適な設計は難しい課題である。 本論では放送通信設備の防災に向けた設備設計の 在り方を、筆者の経験を踏まえた独断的な視点で記述 したい。大いに参考になる部分、拘りの部分もあろう かと考えるが多くのご意見が頂ければと考えている。 本論文は 2014 年の 5 月からの放送専門誌への連載に 向けた皮切りとして書き下ろしたものである。 2.近年の災害の記憶 古い話で恐縮であるが、私が放送設備の設計、管理 に携わっていたころの多くの災害が思い起される。 時系列的に挙げてみると 1995 年 1 月 17 日、5 時 46 分 に発生した阪神淡路大震災、2000 年 6 月始まった東京 都・三宅島の噴火そして 9 月には全島民退避。2004 年 10 月 23 日の 17 時 56 分に起きた新潟県中越地震新潟、 記憶に新しい 2011 年 3 月 11 日、14 時 46 分に起きた 東日本大震災がある。テロでは 1995 年 3 月 20 日の地 下鉄サリン事件、2001 年 9 月 11 日に起きたアメリカ の同時多発テロなどがあった。その時代で間接的、直 接的に業務対応に追われたことを思い出す。間口を広 げ過ぎて本論の方向性が見えなくなっては本末転倒 であるので、ここでは自然災害と設備がどう対峙して いくかを考えていく。 3.総務省の検討案 平成 25 年(2013 年)7 月 26 日に総務省から出され た「基幹放送の設備に関する安全・信頼性に関する技 術的条件」の内容を確認してみたい。 3.1 放送における安全・信頼性に関する技術基準 の位置づけ 19 第一工業大学研究報告 第26号(2014)pp.19-26

放送通信設備の防災に向けた信頼性設計

若 井 一 顕

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2

「放送は、緊急災害時を含め、日頃から国民生活に必 需の情報をあまねく届ける高い公共性を持ち、安全・ 信頼性が求められることから、放送を行うための電気 通信設備に対し安全・信頼性に係る技術基準を定め、 技術基準適合性を審査し、運用に当たり適合維持業務 を課すもの」とある。放送法施行規則第 102 条から 115 条にかけて中波放送、短波放送、超短波放送、コミュ ニティ放送、地上デジタル放送、衛星基幹放送、移動 受信地上基幹放送に係る安全・信頼性に関する「技術 基準」が示されている。放送法施行規則では以下の内 容が記載されている。 ・第 104 条 予備機器等 ・第 105 条 故障検出 ・第 106 条 試験機器及び応急復旧機材の配備 ・第 107 条 耐震対策 ・第 108 条 機能確認 ・第 109 条 停電対策 ・第 110 条 送信空中線に起因する誘導対策 ・第 111 条 防火対策 ・第 112 条 屋外設備 ・第 113 条 放送設備を収容する建築物 ・第 114 条 耐雷対策 ・第 115 条 宇宙線対策 以降は放送メディアやその設備規模に応じて特例を 規定している。 ・第 116 条 中波放送 ・第 117 条 短波放送 ・第 118 条 超短波放送(コミュニティ放送を除く) ・第 119 条 コミュニティ放送 ・第 120 条 地上デジタルテレビ放送 ・第 122 条 衛星基幹放送 ・第 123 条 移動受信用地上基幹放送 3.2 放送設備の安全・信頼性に関する技術基準 本論では個別メディアや個別の機器についての詳 細は論じないが、この部分は専門誌への拙著の連載を ご一読願いたい。現場経験に基づいた内容や具体的な 対策を展開する予定である。既設設備への対策はコス トパーフォーマンスの視点からも重要である。3年前 の東日本大震災を経験して冗長系の重要性と設置の 必要性は論を待たない。 4.デジタル時代のメンテナンス 近年更新された中波大電力送信機を見学した。大電 力設備であるから耐圧と大電流には十分な配慮がな されていた。多くの経験の中から最適な解に近づけた 設計である。電力効率が以前の真空管装置に比べて格 段に向上している。中波の送信設備は、真空管のグリ ッド変調から終段プレート変調方式に代わり、バイポ ーラトランジスタや FET を使った固体化のシリーズ変 調方式、そして PWM 方式による音声変調信号増幅部の 効率を改善する努力が払われてきた。このような変遷 の中で高電圧の使用箇所は無くなり、代りにデジタル 送信機では大電流を扱うことになった。 4.1 大電力設備の電圧機器から電流機器へ 私が放送局に入って最初に見たのが 9T38 という三 極管であった。プレートには 10 数 kV の高電圧を印加 して使用する。高周波増幅段と音声信号増幅段に用い ていた。音声信号の増幅段は B2 級のプッシュプル増 幅器である。B2 級とは、音声のドライブ信号のピーク でグリッド電流を流すから、ひずみの低減の目的でド ライブ段増幅器の出力インピーダンスを低くする必 要があった。カソードフォロワーの直結回路であり、 グリッドへの負バイアス電圧の与え方を工夫してい た。オーディオに興味のある方ならロフチンホワイト 回路など思い浮かべるかもしれない。旧来の真空管送 信機が電圧機器であるならデジタル送信機は電流機 器ということが出来る。図1に大電力中波送信機(数 百kW 級)の特徴を表現した。日本で最大の中波送信 出力は NHK 菖蒲久喜ラジオ放送所の第 2 放送の 500kW である。送信機は数年前に個体化のデジタル送信機に 更新された[1] 図2は中波のデジタル送信装置の全体構成である。 デジタル処理型送信機を除いて周辺回路については 真空管装置と大きく異なる部分は少ない。多数の固体 化 PA を合成する回路の出力インピーダンスが低いの が特徴と考える。

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3

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0

電流 kA

2 4 6 8 10 12 14

kV

0

真空管送信機

デジタル処理型送信機

耐電圧 放電 先鋭部の除去 碍子汚れ 接続部の接触不良 地絡検出 不良分岐部の遮断 図1 大電力真空管送信機とデジタル処理型送信機との比較 図2 中波デジタル処理型送信機の構成 4.2 信号処理と特性管理 デジタル処理型送信機のデジタルである所以は、音 声アナログ信号をデジタル信号化して、多数の固体化 高周波 PA(電力増幅器)の ON/OFF 制御を行うことに 帰着する。高周波の合成出力になるから切替え時の搬 送波の連続性などが重要である。音声のプログラム信 号は一般的にマイクロ波 STL 回線で送信所に伝送され る。近年ではデジタル化された回線を用いているから、 回線に復調系を持たずに直接デジタル送信機をドラ イブすることも可能かもしれない。後進のアイディア に期待したい。どのようなシステムを構成するかアイ ディアは幾つかあると思うが、デジタルでシステム全 体が串刺しにされたときに、音声信号と送信機とのバ ッファ部が無くなりリスクがあるようにも考える。現 在の中波送信機はデジタル放送(デジタル信号伝送) ではないし、デジタル処理による電力変換装置である だけに選択が難しいと云える。 4.3 障害部分の特定 中波のデジタル処理型送信機は、固体化 PA を数百 台も使用して、300kW や 500kW の送信出力を生成する ため、一つひとつの PA の特性劣化障害を特定する方 21 若井:放送通信設備の防災に向けた信頼性設計

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4

法が難しい。逆に数台の PA の故障程度では、サービ ス品質に大きな影響を与えないとう利点もある。1 台 の PA 劣化が雪だるま式に障害を拡大しなければ、偶 発故障として管理することが可能である。固体化 PA が ON または OFF のままでフリーズしてしまう様な障 害も考えられる。定期点検による障害部分の発見、リ アルタイムでの障害監視を採用するかは、技術的に有 効な手法の開発と監視設備への投資効果にも配慮が 必要である。多額の費用をかけずに定期点検と目視点 検で発見できる場合もある。カタストロフィックな障 害に発展しなければ、ひずみ率の悪化、効率の低下な ど、劣化を検出できる要素は数多く存在する。その他 にも送信装置を構成するユニットは多い。出力合成変 成器、BPF 回路、整合装置などである。刃型切替え装 置などは可動部分があり重要な管理対象の一つであ る。 4.4 メンテナンスの重点項目 アナログ送信装置、デジタル送信装置といっても、 高周波のエネルギを生成する大きなエネルギ変換系 であることは変わらない。デジタル送信機はアナログ 音声信号を A/D 変換器でデジタル信号にして多数の固 体化 PA の ON/OFF 制御を行う。私の経験では高周波系 のインピーダンス値に違いがあるので電圧要素で考 えるか、電流要素で考えるかがポイントである。アン テナ周りの整合回路はアナログもデジタルも変わる ところは無いが近年だいぶ手厚い耐雷設計がなされ ている。インピーダンスが低い系では電流が大きいの で、接続クリップ部、接続線路の発熱に注意する必要 がある。これらは高周波に限らずに、固体化 PA に給 電する直流電源についても同様である。トータルでは 数千アンペアの直流電流が流れることになるので接 続部の緩み等による発熱は許されない。 高電圧部分は、PA の出力合成回路、並列合成回路、 及び整合回路が考えられる。磁器コンデンサの耐電圧 設計、コイルの先端箇所には要注意である。号機切替 え部、及びアンテナ基部切替え部においては、高電圧 が印加されているから、切替え機のブレード、刃受け 部の劣化、尖端部に電界集中が起こらない機構を採用 する。高電圧部分は当然インピーダンスが高い箇所で ある。アンテナ基部電流計などの実装指示値が低イン ピーダンスでの校正値に比べて微妙に異なることが ある。ストレーキャパシティや漂遊金属(電位が不定 な部分)には注意を要する。 4.5 障害の蓄積と分離 障害が蓄積されることを前提に議論を進める。高周 波整合回路は、磁器コンデンサとコイルの組み合わせ である。サージ吸収用の抵抗素子も回路に組み入れる こともある。以前は磁器コンデンサの金属端子の半田 接続部の経年劣化による剥離が散見された。メーカを 指導して最近では改善品が現場で使われている。しか し、点検では剥離、裏面の放電跡の確認も重要となる。 コンデンサの多段積み接続は避けるべきであるが、構 造的に採用する場合には銅板による支持方法、端子の 締め付けトルクにも注意する必要がある。大型のコイ ルではコイルクリップが緩んで回転し巻き線間をレ アショートすることは少ないが、その部分も点検・監 視のポイントである。コイルの変色も有効な監視部分 である。示温塗料の塗布や示温紙などの添付も有効で ある。但し高電圧部分での示温紙の剥離は先端での電 界集中を伴うので使用したくない。接続線路や接続ケ ーブルの曲率半径にも注意したい。接続用の銅板を緩 やかに曲げても、薄い銅板エッジの曲率半径は小さい ままで電位傾度が高い。この部分でコロナ放電が発生 し近接した金属部との間でアーク放電を誘発しない ように配慮すべきである。コロナリングや袋ナットを 多用することもないが、エッジ部の電界は高いと考え るべきである。 中波デジタル送信機の電源回路は、低電圧、大電流 である。低電圧の直流と云っても 300V 程度はある。 劣化部品としては電解コンデンサが考えられる。従っ て定期的な交換と熱対策が重要となる。一般的に電解 コンデンサは7~8 年での交換が必要と云われている。 抜き取り検査による劣化確認も重要である。 4.6 耐雷・サージ対策 固体化送信機とアンテナとの間には、耐雷回路、HPF、 そして放電ギャップを付加した整合回路が実装され ている。アンテナから入った雷サージは直接的に固体

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5

化 PA にダメージを与えることは少ないと考えてよい。 以前、固体化送信機をトーン信号で 100%変調して、ア ンテナ基部を強制短絡して固体化 PA の電圧・電流ト ランジェントを測定したことがあった。アンテナ整合 回路の特定箇所で短絡接地すると、固体化 PA のサー ジ電流が最大に達することが確認できた。このような 現象を解析して半導体素子の ASO(安全動作領域)の 範囲を超えないことを確認する他、ジュール熱の計算 を行った。最悪条件を回避するには、高速な過負荷保 護制御、高速サージプロテクタ制御を組み合わせるし かない。雷による影響は瞬間的な現象が多いが、アン テナ系の不整合が緩やかに発生する場合には別の対 策が必要である。例えば自然現象(豪雨、雪、風、塩 害等)等についても検討が必要となる。 4.7 劣化部の特定と管理の中心になるもの 近年の中波送信機はデジタル型に殆どが移行され ている。数年前に専門誌に執筆した「中波デジタル処 理型ラジオ送信機への歩み」を読み返してみた。真空 管を懐かしむ筆者のこだわりも多いが、アナログ送信 機とデジタル処理型送信機の特徴比較が書かれてい るので後進には役に立つのではと思っている。大電力 のデジタル処理型送信機の運用実績やノウハウも現 場に多く蓄積されているのではと思う。送信機につい ては、劣化部の特定を実運用で行うか、定期点検で行 うかに分かれる。劣化のしきい値が運用の基準(電波 法、自局の運用基準)を下回らなければ一刻を争う必 要はない。この点がデジタル処理型送信機の有利な点 である。多数の PA を持つから個別の特性劣化が希釈 される。予防保全として、これらの個別故障の特定と 保全の迅速性と併せて研究するのも面白い。次に定期 点検による特性変動、経年劣化の検出である。従来の 測定方法によっても簡易な障害は発見できる。管理値 割れに至らなければ放置できることになる。頻繁な過 負荷試験を行って寝た子を起こすこともない。今後は 効果的な抜き取り検査などで、個別 PA のパイロット 点検などが有効と考える。 4.8 新しい設備管理の考え方 コンピュータを使った監視装置などで、重要個所の 電圧、電流のロギングデータから経年劣化を推定する ことも可能である。これらのデータを効果的に処理し てメンテナンスに生かす工夫は今も昔も変わらない。 定時の時報音でのシステム監視をしたことがあった。 S/N、ひずみ率、キャリアシフト程度は簡単に取得で きる。電力効率の算出も可能である。障害発生時の忌 まわしい経験は思い出したくないが、現場では急激な 状況変化に対して迅速な対応が求められる。日頃の経 年劣化を読み取れずに突発的な障害に至った場合は 管理運用者の分析の甘さがある。外的要因障害は年間 に数件程度はあるが、落雷など事前の対策を超える想 定外の大規模なものもある。このような場合には設備 の2重化は有効である。監視装置、ロギング装置があ っても、突然出力される障害データに現場は混乱し迅 速な判断が出来ないことがある。日頃の訓練が生かさ れる部分である。障害時の設備切替え、復旧、待機、 確認動作等を PLC などに制御ロジック化してあるが、 大規模な雷サージの影響を受ければロジック回路が 正常に動作する保証はない。 障害時にシーケンスが破綻した場合のバックアッ プは人的な対応に委ねられる。マン・マシーンのイン ターフェースの簡易化、学習の継続が有効であると考 える。今は現場で達人を求める時代ではないから、分 かり易い構成によって誰もが容易に判断できるシス テムとすべきである。 5.信頼性と設備管理 システムの信頼性指標の一つに RASIS(ラシス)が ある[2]。これらを放送設備に照らし合わせながら議論 してみたい。 5.1 Reliability(信頼性) Reliability(信頼性)とは、システムが一定期間安定 して動作する能力、故障の少なさということである。 中波の送信装置を例にとっても、図 3 に示す 2 台化方 式、3C2 方式(2 台並列 1 台予備の 3 台方式)、そして 多段合成方式などの構成がある。プロフェッショナル の機器では 1 台運用方式では大変心許ないので 2 台化 方式を採用することが多い。新旧の更新を向かえる時 期ともなると予算次第では、部分更新などの選択も迫 23 若井:放送通信設備の防災に向けた信頼性設計

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6

られる。新旧併用での 2 台化方式のケースも出てくる。 システムによっては 3C2 という方式を採用する。これ は 2 台並列運転で 1 台が待機冗長系となる。システム を定期的に切替え運用することで部品劣化の均一化、 動作確認を行っていく。切替えローテーションも計画 的に実施することで、送信機に付随した切替え機 (PGM,PCM、及び刃型切替え機等)の動作試験を行う ことになる。切替え機の動作試験は重要である。送信 機の障害を検出して制御回路が働き、切替え命令が出 ても肝心の切替え機が不動作では意味がない。切替え 機の動作確認を運用中に実施するのは難しいので一 般的には夜間の放送休止時間帯で行うことが多い。切 替え機は共通系の意味合いの強いサブシステムであ る。最近では小型切替え機の製造業者の確保が難しい などの話を聞くことが多い。切替え機も超高速のもの が出来れば放送サービスへの影響も少なくメリット が大きいと云える。その他、無停波切替え方式の採用 も考えられる。3C2 方式であれば原理的には可能であ るが、完全無停波方式とするには切替え機の数が多く なるので信頼性確保の重要な論点でもある。3dB カッ プラを用いた位相合成方式を使えば、号機切替えをフ ェードイン・フェードアウトで行うことが出来る。テ レビの送信システム等では用いられている例がある。 図3 2台方式と3台方式のシステム構成の例 5.2 Availability(稼働性) Availability(稼働性)は、システムが正常に動作し ている時間の割合をいう。稼働率を高めるために並列 合成方式が考えられる。2 台化より 3 台化、N 台化と いう具合に並列台数を増加すれば稼働率は向上する。 図 4 に基本的な直列、並列の稼働率の計算例を記述し た。 81 . 0 9 . 0 2 1 2 1      Ps P P P P Ps のとき







99 . 0 ) 1 1 ( 1 90 . 0 4 3 2 1 4 1 3 1 2 1 1 1 1 4               P Pp P P P P P P P P Pp のとき 図4 直列と並列方式の稼働率の計算方法





1 1 1 1 2

 

1 1 4



1 5

3 5 2 1 4 1 1 1 3 1 P P P P P P P P P P Pb               図5 ブリッジ構造型システムの稼働率の計算方法 並列合成方式は特に切替え機がなく、機器の障害時 のサービス低下が少ない。最近の中波デジタル送信機

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では、数 100 台の固体化 PA を合成しているから、PA の故障によるスプリアスの劣化、音声ひずみ率の劣化 にさえ留意すれば管理基準値の限界まで使用は可能 である。一般的に管理基準値は電波法の規制値より厳 しく設定されているため放送サービスへの影響は少 ない。図 5 にブリッジ構造型システムの稼働率の計算 方法を示した。 5.3 Serviceability(保全性) Serviceability(保全性)は、システム故障時の故障 箇所の発見、修理の容易さともいう。メンテナンス性 ということもあるが、システムの障害は避けては通れ ない前提で議論を進める。多くの保全は、予防保全を ベースにして実施されている。そのための定期点検の 実施を愚直に励行するのが現場である。愚直とは言葉 が悪いが予防保全のためのチェックシートの活用、巡 回点検の実施、監視装置による運用データのロギング とデータ分析評価等がある。最近のマスコミ報道で JR の杜撰な路線管理が脱線事故に結びついたことは記 憶に新しい。 機器が障害を起こした時には、その故障個所の特定 が重要である。短時間で発見するためにセンサや監視 装置を活用している。監視を支援するためのエキスパ ートシステムの研究が一時期、流行ったが暗黙知のハ ードへの移植など難しい部分もある。それはそれとし て、故障個所を迅速に発見すること、それを簡便に修 理する方法が明確であれば短時間で復帰が可能であ る。最近の機器はコンパクトにまとめられ過ぎていて 故障した箇所に辿り着くまでに周辺部分の取り外し に手間の掛かるものがある。設計者にメンテナンスや 修理の経験がないと、実機が寄木細工的な構造となり 現場泣かせとなる。また予備品の手配も重要である。 予備品も定期的に実機に使用して動作確認をしてお くことが肝要である。更に人間が修理を行うことを前 提とした機器内スペースの確保と機器配置、工具や冶 具の整備なども必要である。 5.4 Integrity(完全性) Integrity(完全性)とは、破壊からの保護、破壊さ れたときの修復の可否ということで説明されている。 コンピュータの関係でよく使われている言葉である。 設備の障害は筆者も数多く経験をしているが、カタス トロフィックな障害、自然災害、その中でも雷の障害 は記憶に新しい。先にも述べたが設備信頼性の確保の ためには、2 台化、若しくは 3 台化方式などが有効で ある。但しアンテナ系は整合器を含めて 1 台方式の局 所が多いので、せいぜい頑張っても整合回路の 2 台化 設置くらいかと考える。一つのアンテナに 2 波を給電 する方法を採用している送信所では、2 重給電装置を 2 台化するというケースもある。大規模な障害に対し ては、2 重化という選択肢がある。アンテナの予備を 持つことは、同一敷地内ではアンテナ相互間の干渉も あり大変難しい。何かの工事で残置したアンテナを予 備として確保している民放局もあるようだ。 最善の方法は、サイトダイバー方式を採用して送信 所を 2 か所に設置する方法がある。関東エリアでは、 サービスエリア世帯数も非常に大きいため、予備送信 所を設置する例もある。但し、この方式では、アンテ ナ、局舎、送信設備、電源(自家発を含む)、及び付 帯設備まで整備することになるから多額の投資が必 要になる。予備送信所の設置は大規模な設備障害に対 して頗る有効な信頼性向上策と考える。 5.5 Security(機密性) Security(機密性)とは、データやシステムの不正防 止機能と云われる。コンピュータの世界でもこれらに ついて多くの対策が図られている。送信設備としては、 プログラム回線の確保などが重要な部分である。中波 送信所では AM 波を生成するための音声プログラムが 切れないように回線の 2 重化、有線と無線の併用シス テムなどを採用している。プログラムについては、基 本的に信号断、異種プログラムの混入等を避けねばな らない。異種プログラムの送出回避は信号の送り手側 がしっかりと管理しなければならない重要な部分で ある。非常災害時の信号ルートの構築方法も重要とな る。 中波の夜間の電波伝搬は、電離層の関係で夜間に D 層が消滅するため、D 層での吸収が無くなり E 層での 電波反射によって遠距離伝搬する現象がある。そのた め、日本では隣国の中国や韓国からの放送波によって 25 若井:放送通信設備の防災に向けた信頼性設計

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干渉を受けることで、昼間のサービスエリアに比べて 夜間のサービスエリアが極端に縮小する。現状では周 波数変更、送信電力の増強、小規模局の設置などの対 策を行っている。FM 波の補完置局や最近の IP ラジオ も有効に活用できるメディアかもしれない。 6.結び 最後に大電力送信設備の運用管理を実施してきた 経験からリスク管理の視点を述べてみたい。事故や危 機が起きないように対処することをリスク管理とい う。事故や危機的な状況が発生した後の活動を危機管 理という。図 6 は、リスクにおける 4 態を描いてみた ものである。一般的に、リスク=発生確率×被害規模 と い う か た ち で 表 現 さ れ る 。 ま た 、 リ ス ク = hazards/safety guards =潜在危険性/安全防護対策である。 図6 障害規模と発生確率のリスクマトリクス 表1に、図 6 の各象限を解説した。 表1 設備障害の発生確率とリスク評価 領域 領域内容 A 顕在化した場合の被害規模も大きく、発生確率も大きいリスク 事例:雷、地震、津波、台風、など自然災害 対策例:耐雷、耐震、加重耐力の強化、設備のサイトダイバー化 B 発生確率は小さいが、顕在化した場合の被害規模が大きい領域 事例:大規模地震、台風、自然災害、火災、人為的災害(テロ) 対策例:耐雷、耐震、風力耐力の強化、定期点検、警備強化 C 発生確率は大きいが、被害規模が小さい領域 日常運用で経験することが多い領域 事例:雷保護動作、誘導雷、過電流保護動作 対策例:監視システム強化 D システムとしてそのリスクを許容しても良い領域・・・ 事例:原因不明アラーム、誤報 対策例:自家発の待機運転、アラーム収集・分析、形骸化排除活動、技術者の育成継続 設備の設計や運用管理に対して、どのようなことを想 定して実機に反映させるかは難しい。雷対策をどこま で実施するか、あえて障害の弱点部分を設けて、その 劣化箇所を早期に復帰させる方法もある。軽微な障害 やアラームの発生は、人間系を煩わしくさせるが運用 の形骸化は排除すべきである。 参考文献 [1] 若井;中波デジタル送信機の設計と調整、放送技術、15 回連載 (2008.3~2009.6) [2] 若井;デジタル時代のラジオ送信機の設計・調整と課題、日本信 頼性学会誌、2012 年,Vol.34,No.2,pp108-120.

被 害 規 模

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マルエージング鋼の疲労特性に及ぼす

二段時効の影響

皮籠石紀雄

第一工業大学 機械システム工学科 〒899-4395 鹿児島県霧島市国分中央 1-10-2 E-mail [email protected]

Effect of Double-Aging on Fatigue Properties

of Maraging Steel

Norio KAWAGOISHI

Department of Mechanical systems Engineering,Daiichi Institute of Technology,kirishima 899-4395,Japan E-mail [email protected]

Abstract: The effect of aging condition on fatigue properties of 18% Ni maraging steel of grade 350 and the mechanism of decrease in fatigue strength in high humidity were investigated under rotating bending in relative humidity of 25% and 85%. Aging conditions investigated were under-, peak- and over-aging ones at the conventional aging temperature of 753K. In addition, double-aging treatments which were under- peak- and over-aging treatments at 673K and under-aging one at 473K after the peak-aging at 753K were also examined. Both of static and fatigue strengths were increased by the double-aging without any decrease in ductility and fatigue fracture toughness. Fatigue strength was markedly decreased by high humidity in all of the steels, and the decrease in fatigue strength was mainly caused by the accelerations of crack initiation and its growth at the early stage of fatigue process. A few facets comparable to a grain size of a prior austenite were observed at the fracture origins and most of the fracture surfaces were covered with lath boundary cracking regardless of the humidity and aging conditions. Facets were increased in high humidity, suggesting that the acceleration of crack growth in high humidity was a behavior related to hydrogen generated in cathode reaction.

Keywords: Fatigue, Maraging Steel, Aging Condition, Humidity, Crack Propagation Mechanism

1 緒 言 マルエージング鋼は、析出強化、固溶強化、微 細粒強化さらには高密度の転位による強化等と ほとんどすべての強化機構で高強度化されてお り、実用鋼中最も静強度の高い鋼である1)。従っ て、強化の主体となる時効組織に関する研究は多 数行われている。例えば、時効温度が約723K 以 上ではNi3Mo、Ni3Ti等の高温相が析出し、また、 高温長時間の過時効処理では逆変態オーステナ イトが生成されること2)、これに対し723K 以下 ではMo リッチの低温相が、そしてそれをさらに 長時間時効すれば、ナノオーダーのω相が析出す ること2)等が報告されている。しかし本鋼の析 出挙動は複雑で上記の析出温度、析出過程の詳細 等は必ずしも明確ではないため、機械的性質に及 ぼす時効組織の影響についても不明な点が多い。 また、本鋼の応力腐食割れ(SCC)特性については 数多く研究されているが、腐食疲労に関する研究 は非常に少ない。 そこで本研究では、上述した高温と低温で時効 組織が異なる事実に注目して、高温相と低温相の 共存による機械的性質への影響を検討するため、 通常実用に供され高温相が析出する条件で時効 した後、低温相が析出する温度で再時効を行い、 その疲労特性およびき裂伝ぱに及ぼす湿度の影 響を調べた。 2 材料、試験片および実験方法 用いた材料は市販の350 級 18%Ni マルエージ ング鋼(直径 13mm の丸棒)である。その化学 成分を表 1 に示す。納入材に、1123K、 5.4ks の溶体化処理を行った後、各種時効組織を得るた め時効条件を変えて熱処理した。なお、溶体化処 理 後 の 旧 オ ー ス テ ナ イ ト 平 均 結 晶 粒 径 は 約 20μm であった。本研究では、緒言で述べた高温 相と低温相の共存を含む幅広い時効条件での疲 労特性を調べるため、以下に示す8 種類の条件を 選んだ。すなわち、マルエージング鋼の時効温度 として一般に適用される 753K での時効処理と、 27 第一工業大学研究報告 第26号(2014)pp.27-33

皮籠石 紀 雄

マルエージング鋼の疲労特性に及ぼす二段時効の影響

Table 2 Mechanical properties.
Fig. 1: S-N curves and macroscopic appearance of fracture at 50 Hz
Figure  2  shows  fracture  surfaces  yielded  by  the  shear mode crack and the tensile one
Fig. 5: Crack morphology in high humidity   (6 Hz, σ a =220MPa)
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参照

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