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脊椎動物のHox発現制御の起源と軟骨魚類における特殊性についての解析

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Academic year: 2021

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脊椎動物のHox発現制御の起源と軟骨魚類における

特殊性についての解析

著者

元根 史雄

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2016 年度修士論文要旨

脊椎動物の

Hox 発現制御の起源と軟骨魚類における特殊性についての解析

関西学院大学大学院理工学研究科

生命科学専攻 平井研究室 元根史雄

【研究目的】Hox 遺伝子群は左右相称動物で広く保存されており、体の前後軸パターン形成において重要な 役割を持つ転写因子群である。多くの種では、重複した Hox 遺伝子が同一染色体上に隣り合う構造(Hox クラ スター)を形成する。Hox クラスターの染色体上での遺伝子の並び順が発現時期および頭尾軸における発現箇 所と相関する、colinearity と呼ばれる特有の性質を示す。ヒトやマウスでは、A、B、C、D と名付けられた 4 つの Hox クラスターがあり、これらはシーラカンスや軟骨魚類の 1 グループ(全頭類)に属するゾウギンザメ など、全ゲノム配列が解読された様々な有顎脊椎動物で保持されているため、有顎脊椎動物の祖先にはこれ らの Hox クラスターが 4 つ揃っていたと考えられている。ところが、近年の報告によると、軟骨魚類の 1 グ ループ(板鰓類)では HoxC クラスターが欠失していることが示唆された。しかしながら、その報告は網羅性が 乏しいゲノム情報などに基づいており、HoxC クラスターの有無には再検討の必要があった。そこで本研究で は板鰓類の大規模な分子配列情報を用いて板鰓類における Hox クラスターの特徴を明らかにし、脊椎動物に おける Hox 遺伝子の発現制御の進化の過程を解明することを試みた。【実験方法】本研究ではトラザメ (Scyliorhinus torazame)、イヌザメ(Chiloscyllium punctatum)、ジンベエザメ(Rhincodon typus)の 3 種の板鰓類を対 象とした。網羅的なゲノム情報として、研究室で解読、構築されたトラザメ、イヌザメのゲノムアセンブリ、 および公開されている配列データを用いて自ら再構築したジンベエザメのゲノムアセンブリを用いた。また 転写産物からの配列情報を得るために、理化学研究所倉谷形態進化研究室から提供されたトラザメ胚と海遊 館から提供されたイヌザメ胚を用いて、研究室の技術支援スタッフに協力いただき RNA-seq を行い、トラン スクリプトームアセンブリを構築した。得られたゲノム、トランスクリプトーム配列中に、相同性に基づい て Hox 遺伝子を網羅的に探索した。これらとヒトやマウスなどの Hox 遺伝子配列を用いて、最尤法により系 統樹推定を行った。Hox 遺伝子の進化速度を調べるために、構築したアセンブリから推定された遺伝子配列 と、ゾウギンザメの遺伝子配列を用いて軟骨魚類間で保存されている遺伝子の同義座位あたりの置換数(Ks)

を算出した。Hox 遺伝子の時間的な発現制御を調べるために、トラザメ胚の RNA-seq データを用いて Hox 遺 伝子の発現量を各ステージ間で比較した。Hox 遺伝子の発現パターンを調べるために、トラザメとイヌザメ の咽頭胚後期の個体を用いてホールマウント in situ ハイブリダイゼーションを行った。M【実験結果と考察】 配列解析および発現解析の結果、トラザメには Hoxc11、イヌザメには Hoxc8、Hoxc11 が存在し機能している ことが示唆された。板鰓類の HoxA、B、D クラスターには反復配列の存在頻度や、クラスターの全長におい て、ヒトやマウスの Hox クラスターとの共通性が見られたのに対し、板鰓類の HoxC 遺伝子が存在するゲノ ム領域では、反復配列の頻度が高いことや、複数の HoxC 遺伝子がクラスターを形成している配列が検出で きなかったことから、板鰓類の HoxC 遺伝子群がクラスター構造という制約から逸脱して進化してきたこと を示唆する。さらに軟骨魚類間で保持される遺伝子と比較して、板鰓類の HoxC 遺伝子では Ksが非常に高く、 HoxC 遺伝子が存在するゲノム領域が高い突然変異率を持つことが示唆された。にもかかわらず、板鰓類の HoxC 遺伝子には、他の Hox 遺伝子で行われているような時間的・空間的な発現制御が一部分保存されてい た。これらのことから、板鰓類において HoxC 遺伝子群の時間的、空間的な発現は、クラスター全体として の遺伝子発現調節よりも個別の遺伝子の発現調節によって制御されている可能性が示された。

参照

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