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IRUCAA@TDC : 上手い抜歯の方法

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Academic year: 2021

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全文

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

上手い抜歯の方法

Author(s)

柴原, 孝彦

Journal

歯科学報, 119(2): 129-131

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.131

Right

Description

(2)

抜歯の心得 抜歯は,抜去が適応と診断された歯の歯根膜を脱 臼運動で離断させ,これを歯槽骨から抜去する行為 である。目的が明確な単純作業のようにみえるが, 歯の萌出状態,歯根の形態,歯根膜や歯槽骨の状態 などによって手技には多くのバリエーションがあ り,難易度にも著しい差が生じる。術者の技術的未 熟さの結果として難抜歯となってしまうものもある が,これは論外である。 今回は「上手くいく抜歯のコツ」のQ&Aをいた だき,担当することになったが,どの場合にも適し た万能なコツなどは存在しない。なぜ抜歯できるの か,なぜ抜けないのかの基本的事項と状況把握が重 要である。「学問に王道なし」は,抜歯においても 然りで,基本に戻って解剖学的見地も加えて解説を 試みる。 歯と骨の関係 顎骨の外周は緻密骨で覆われているが,内部は骨 髄を容れるため海綿骨である。歯はこの海綿骨質の なかに植立するが,咬合圧に耐えるため歯根周囲に は一層の緻密骨質(歯槽壁)が形成されている。歯槽 壁は層板骨であるが,歯に加わる咬合圧に応じてた えず吸収,添加が行われているので,その層板構造 や厚径は変化する。 歯槽壁と歯根を結合しているのが,きわめて成熟 したコラーゲン線維からなる歯根膜線維で,その一 端はセメント質の中を,他端は歯槽壁の骨中にまで 達している。これらの線維群は歯を歯槽窩の中をハ ンモックのように懸垂し,歯軸に平行な咬合圧ばか りでなくあらゆる方向への力に耐えるように配列し ている。歯槽と歯とを結合する歯根膜は,歯根膜線 維のほかに未分化間葉細胞と,これらを栄養する豊 富な血管網が含まれていて,あたかも歯槽壁の骨膜 のような役割を果たしている。 歯と歯肉の関係 歯と歯槽骨は歯肉に覆われている。歯肉は他の口 腔粘膜とは著しく異なっている。まず付着上皮に よって歯と結合しており,次いで歯頸部を覆う遊離 歯肉部には歯周靭帯と呼ばれる発達した線維側が輪 状に歯頸部を取り巻き,歯と歯肉を強固に結合して いる。さらに歯槽縁部を覆っている付着歯肉は粘膜 下組織を欠き,コラーゲン線維に富む粘膜固有層が 直接歯槽骨膜と結合しており,この部分の粘膜には 全く可動性がない。付着歯肉の幅は,ヒトにより, また部位によりまちまちである。 永久歯列では前歯部が最も広く4mm 前後,犬 歯・小臼歯が最も狭く2mm 前後である。歯肉は口

臨床のヒント

Q&A

口腔外科系

Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号は抜歯 の仕方に関する質問です。

Question

上手い抜歯の方法

Answer

歯科学報 Vol.119,No.2(2019) 129 ― 47 ―

(3)

腔粘膜の他の部分より粘膜固有層の乳頭が高く,上 皮脚も長く,上皮細胞層も厚く,さらに血行に富 み,組織再生にとって極めて有利な条件を備えてい る。歯肉は,粘膜歯肉境界線を境として歯槽粘膜に 移行するこの部分には粘膜と歯槽骨膜との間に粘膜 下組織と,部位によって表情筋の付着部もあり,粘 膜上皮層は薄く可動性である。 歯の植立の基本パターン 歯は,その歯根を取り囲む歯槽に植立しており, 歯根と歯槽壁は歯根膜によって結合されている。抜 歯は歯肉と歯根を結合している歯周環状靭帯を切離 したあと,歯根と歯槽壁を結合している歯根膜と脱 臼運動によって断裂させる操作ということができ る。合理的な抜歯を行うためには,まず歯の植立の 基本的な解剖学的パターンの特徴を知り,ついでよ り確実で安全な抜歯を行うためには,上下顎の前歯 から智歯に至るまで個々の歯の植立パターンの特徴 を知る。上顎中切歯から小臼歯までの唇・頰側歯槽 壁と下顎切歯の頰側歯槽壁はきわめて薄く,歯槽壁 の外側面が歯槽外側壁になっている。 さらに上顎では臼歯の根端と上顎洞との関係を, 下顎では臼歯の根端と下顎管との関係を熟知してお く必要がある。 抜歯器具の選択 鉗子抜歯が抜歯の基本である。鉗子で把持できる 歯はすべて鉗子で抜去するのが原則である。鉗子抜 歯は,鉗子を介して抜歯力を歯のみに加えることが できるので,抜歯に伴う歯周組織の副損傷がほとん どない。また,抜歯力を加える方向に歯が脱臼し, 抜去されるので,抜歯運動の方向や抜歯力を調節し やすいという利点がある。 歯冠が崩壊してしまって鉗子で把持できない歯 (原則として単根歯)や,歯冠は正常でも萌出異常の ため鉗子が適合できないような歯の抜歯には,挺子 はきわめて有効な抜歯器具となる。楔作用と輪軸作 用によって抜歯運動を行う。しかし,挺子は抜歯力 を加える際にどうしても支点を必要とするので,歯 周組織や隣在歯に障害を与えることがある。挺子に は直と曲があるが,曲の方がより強く周囲組織にダ メージを与える。 術者と患者の位置 「抜歯中の姿勢をみただけで,その人の腕前がわ かる」といわれるほど,術者の姿勢は重要である。 抜歯における術者の姿勢は,立位が基本である。両 足を肩幅よりやや広めに開いて自然体で立ち,両肘 を軽く曲げ,聞き腕の肘をなるべく体側につけて, 前腕を前に出し,両手の指先を軽く合わせた姿勢が 抜歯の基本姿勢である。このときの手の位置は,抜 歯操作を行うのに最も適した位置にあり,患者の顎 がこの位置にくるようにチェアーの高さと安頭台を 調節する。この姿勢は重心が両足の間にあるのでバ ランスがよく,抜歯中に多少の踏ん張りを要する場 合でも,常に正しい抜歯の「型」を保つことができ る。 術者の手と患者の顎の位置関係は,抜去される歯 が上顎か下顎か,左側か右側か,さらには鉗子抜歯 か挺子抜歯かによって多少違ってくる。 原則,上顎鉗子は7,8時の位置,下顎鉗子は12 時の位置,挺子抜歯の際は患側に立ち,挺子の滑り がないよう反対側の手でガードしながら行うことが 重要である。 抜歯の基本操作 鉗子を確実に適合させるには,左手の拇指と示指 で,鉗子の嘴部が歯肉縁と歯の間に入るように誘導 する。嘴端をまず舌側に適合し,次いで頰側に適合 させ,できるだけ深く歯槽骨縁まで押し込む。嘴端 は,歯の最大豊隆部を越えて確実に歯根面を把握し なければならない。特に歯冠の崩壊の著しい場合 は,歯根を可能なかぎり深い位置で把握するように 心がける。鉗子抜歯の成立する原理は,歯根より歯 槽骨の方がよくたわむこと,歯根膜腔が存在するこ とである。第一運動は歯槽骨壁の薄い方へ傾け,次 いで反対側となる。単根歯であれば歯軸に沿って回 転力を加えることもできる。決して引き抜いてはい けない。 挺子の嘴部を,近心唇(頰)側隅角部の歯根膜腔に 挿入し,これを根端方向に押し進めると,歯槽骨の 弾性のため歯根膜腔が拡大し歯根膜線維は断裂す る。楔様に歯根膜腔に挿入した挺子の嘴部を左右に わずかに回転させて歯根を歯槽骨内で揺さぶり,歯 130 歯科学報 Vol.119,No.2(2019) ― 48 ―

(4)

根膜線維を断裂させる。挺子の回転運動によって歯 根は回転方向へ圧しつけられると同時に長軸に沿っ ても回転され,歯根膜腔を広げるのに役立つ。歯冠 崩壊が著しい場合は,歯質の多く残っている側に挺 子を挿入する。 難抜歯の対応 歯の形態ないしは植立状態から,粘膜骨膜弁の翻 転,骨削除,歯の分割などの手技を必要とする抜歯 を一般に難抜歯と呼んでいる。対象は,智歯やその 他の埋伏歯,歯根の形態異常や骨性癒着のある歯な どである。 歯根膜萎縮ないしは癒着歯の抜歯では,歯根膜腔 が狭く歯根と歯槽骨の間隙に余裕がないため,通常 の挺子による脱臼運動ができない。また多くの場合 に,歯槽骨の硬化ないしは緻密化が起こっているた め,抜歯後に開放創にするとドライソケットを併発 することがある。 根尖肥大の場合と同様に,歯科用ドリルまたは バーで根管を根端孔まで拡大して歯根を縦に分割し て抜歯する。歯根膜萎縮が軽度な場合には,挺子 (または鉗子)を挿入するためのスペースをつくるた め,唇・頰側の歯槽骨壁を歯根の周囲に限局して削 去する。歯根膜萎縮が強く癒着に近い場合には,歯 根長の半分以上または全部の深さまで頰側歯槽骨を 除去しなければならない(図1,2)。 Answer:柴原孝彦 東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座 参考文献 1)野間弘康,金子 譲:カラーアトラス抜歯の臨床,医歯 薬出版,東京,1991. 2)野間弘康編,柴原孝彦,他:イラストでみる口腔外科手 術,クインテッセンス出版,東京,2011. (野間弘康,他:カラーアトラス抜歯の臨床,医歯薬出版,1991より転載) 図1 骨ノミによる骨削去はまず軽く骨表面を叩き骨面上に 裂隙をつくる。その後木槌で本格的に骨ノミを叩くが, 決して打ち込まないように注意する。患者の患側下顎骨 下縁を介補者が抑えることも必要である。 図2 骨バーによる骨削去は注水しながら削去し,熱による 骨壊死を予防する。また骨削去片は完全に洗い流す。骨 バーによる削去面は歯根側に骨のバリを残し,挺子の挿 入を妨げる。骨のバリをフィッシャー,ノミなどで除去 してから挺子を歯根膜腔に挿入する。 歯科学報 Vol.119,No.2(2019) 131 ― 49 ―

参照

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