デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について
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(2) 122. 蝶間林利男・落合. 優. から4時間にわたって激しく動き回り,打ち続けなければならないため,. 3つの資質の. 有機的な統合か重要となる。選手の個性はそこに表出する。 (1)体力的特徴の把撞 (a)デビスかソプ候補選手に選ばれた時点における各選手の体力的特徴を知るために, JOCによる形態面,機能面,運動能力の面からの体力測定を行った。この測定によって, 選手はテニス選手との比較はもとより,他の競技選手(例えば,バレーボール選手や サッカー選手など)との違いを客観的な数値としてを知ることができるo (b)テニス独自の体力測定(主として,機能面)を随時行った。 ①. 方. 法. (a) 1982年1月10日にデビスかソプ候補選手全員(8名)の体力測定を日本体育協会. (JOC)の方式によって行った。 測定項目 ・形態(11種目) 身長,体重,駒囲,腹囲,皮下脂肪厚(育,腹,上腕背側)大腿囲,下腿囲,辛 簡囲,上腕囲,前腕囲,足額囲,. (左右とも). ・機能,運動能力(12項目) 体前屈,上体そらし, (柔軟性) 撞力,背筋力,垂直跳ぴ, -ンドポール投げ(G力系) 肺活量,安静脈,. --バードステップテスト(呼吸循環系) 全身反応時間(神経系) サイドステップ,. 50m走(敏捷性). 合計23項目である。 (b)テニス協会の体力測定(1983.2.ll) ・機能 バービー,シットアップ,腕立て伏せ, 400m走,. ②. 12分間走,. (30秒間). 4000m走. 各選手の体力的特徴 (a)義-1にA,. B,. C,. D4選手のJOCによる体力測定の数値を示す。. 秦-1 形. 態 身長 体重 駒囲 腹囲. 皮下脂肪 大腿囲 厚(nm) 良 L. A. 171. 68.3. 93.4. 78.5. 13. 59.3. 下腿囲 R. L. 54.7. 36.8. 手頚囲. 上腕困. i. R. 36.6. 17. 16. 31. 30二. 28.良 25.6. L. 豆類囲・. 前腕囲. R. R. L. R. L. 21.■5 21.3. B. 168・. 55.2. 89. 76. 12. 53. 5?. 35. 35.5. 16.5. 15. 31. 28. 27. 23.. 20. 20. C. 178. 70.5. 95.2. 79.2. 14. 59.5. 55. 37.3. 37.1. 17.3. 16.8. 32. 31. 29.1. 26. 22. 21.8. D. 180. 70.4. 87.5. 74. 13. 54.3. 54.5. 37.2. 37.1. 17. 15.9 30. 29. 27.1、 24.2. 22.7. 22.5. (単位は皮下脂肪厚を除きすべてⅧ).
(3) 123. デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. 機能・運動能力 体前屈 (cm) A. 49. 175. 全身反応時サイドステ 50m走 垂直跳び ハンドポー ハーバードス 間(msec) ップ(回) (see) (cm) ル投げ(m) テップテスト. 握力(kg) 背笛力 上体そらし 良 L (kg) (cm) 70. 53. 173. 62. 41.1. 114.5. 289.9. 53. 6.5. 52. 6.8. B. 182. 48. 70. 54. 158. 65. 35.2. 112.5. 296.3. C. 122. 45. 70. 58. 178. 65. 41. 110.8. 290.5. 55. 6.6. D. 19. 59.5. 57. 45.. 169. 69. 38.4. 90.9. 341.5. 49. 6.5. A. (監督)身長・体重は171c叫68.3kgと日本人男子の平均であるが,胸囲93・4cm. が大きいので全体的にがっしりした体格である。テニス選手の特徴である利き手前. 腕囲28.8cTa,大腿囲59.3cmと太い.筋力では撞力が70kgと並外れた値を示し,背筋 50m足,. 力も173kgとかなり高い値を示している。この他サイドステップ,. -ンドポ. ール投げなどあらゆる項目でバランス良く優れた値を示しているので,テニスに限 らずどんなスポーツでもこなせる体力であると考えられる。 B 55kgと日本代表選手の中で最も小柄である。しか (選手)身長・体重が168cm, し,テニス選手に不可欠な利き手前腕囲27cm,利き手握力70kgとスイングに必要な 筋力を持ち,サイドステップ55回,. --バードステップ112と敏捷性,スタミナも持 ち合わせ,また,身長の-ンデを補うべく垂直跳びの値も高い(70cm)o小柄ながら 全体的にバランスのよくとれた選手である。 c(選手)身長178cmと恵まれ,大腿囲,下腿囲ともに太く下半身が安定している。 また,前腕囲28.2c叫利き手握力70kgと優れており,背筋力も180kg,ハンドボール 投げも41mと強いC)で上半身の発達がうかがえ,下半身とのコーディネーションも 良い。サイドステップも56回と左右-の敏捷性も高い。この選手はアメリカ.ペパ ーダイン大学のレギュラーとして活躍し,帰国したばかりで将来性溢れる選手であ る。 D. (選手)身長180emと選手の中で最も上背のある選手で,利き手握力57kg背筋力. 169kgと筋力的にはやや掛-が,垂直跳びが69cmと優れ,膝のばねの強いことがうか がえる。ハーバードステップテストが90.9であるのでスタミナに問題があるようで ある。体は筋肉質であるが柔軟性に優れている。立位体前屈19皿,上体そらし59・5 cmoケガの少ない選手であるo. (b)テニス協会の体力測定(1983.2.ll) 秦-2. 400m是 ■A B. CD. 66秒 60秒 58秒 57秒. 12分走. 4000m走. 3000m. ■19′12〝. 3120m 3200m. L15′20〝 14′50〝. 3240m. 14′33〝. 13回. 腕立て伏せ 35回. 3.0回. 14回. 32回. 35回. 15回. 36回. 25回. 13回. 30固. シットアップ 33回. ノヾ-ピー. (シットアップ,バービー,腕立て伏せは各30秒間).
(4) 124. 蝶間林利男・落合. 優. (2)技能的特徴の把握 テニスの技能的特徴はプレースタイルとして表れてくるものである。選手は自分の体 檎,体力,をペースに5つの技術:グラウンドストローク,ボレー,サービス,スマッ シュ,レシーブを組み立て,プレースタイルの最初の枠組みを形成する.そして,練習 や試合経験を積み重ねながら,個人個人の深層のパーソナリティを自覚し,改善を図り つつ,より長いプレースタイルへと幾度となく脱皮を図っていくのである。つまり,目 標とする姿(最初から固定されたものでない)をイメージしながら,現実の自分自身(内 面を含めた)を直視し,エ夫・向上を目指していくのである。この目標,理想的なスタ イルは,ラケットを初めて撮って最初の1-2年の間にイメージされるものであり,こ のときの指導者の指導法(言葉,デモなどの教示),指導理念,また,自分を取り巻く仲 間(環境)の影響がその選手の基本的な技能的特徴を形成する原基となる。言い換える と,この最初の出合いがテニスプレーヤーとしての基本的スタンスに重要なインパクト を与えるのである9. 5年, 10年先を見通してのアドバイスや環境造りが技能にゆとりと 幅を持たせるものと考えられる。 (訂 方. 法. (a)基本練習やパターン練習,セット(練習試合)を通じての我々の評価をもってそ の時点での技能的特徴とする。 (b)選手の自己評価に我々の評価を加味して生まれる評価を第2次の技能的特徴とす る。これは,我々と選手とで評価に食い違いが生ずるときであり,基本練習やパタ ーン練習ではうまくできてもセットでうまくできない場合などである。 (c)他の選手の評価によって生まれる特徴を第3次の技能的特徴とするoこれはミー ティングなどで時々発生することであるが,本人がはっきり自覚しないで確立され ている技能である。 ②. 各選手の技能的特徴 A. オールラウンドプレーヤーである。ウインブルドンベスト16を含め,世界4大大 食に出場し,戦後の日本テニスの代表的プレーヤーとして知られる。 1971年よりヂ ビスかソプ選手となり,その年にはテニス王国オーストラリアを破る殊勲を上げた。 プレースタイルは安定したサービスとグラウンドストローク,切れ味の良いボレー, スマッシュがある.一言でいうと,端正なテニスといえよう。クレーコートやアン ツーカコートより球足の速いコートを得意とし,全日本室内テニス選手権では最多 の8回優勝に輝く。. B. 1981年. デ杯監督に就任.. ベースラインプレーヤーである。. 1973年全日本大食からデビュー。. 1977年シング ルス初優勝.小柄ながら安定したストロークと軽やかなフットワークでポールを拾 いまくり,切れのよいバッシンギショットを決める。沈着冷静なプレースタイルで 玄人受けするプレ丁ヤーである。1978年より1990年まで13年間にわたってデ杯選手o 1991年デ杯監督に就任。. C. ネットプレーヤーである。アメリカ,ペパーダイン大学卒.アメリカのハードコ.
(5) デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. 125. -トで鍛えられテンポの早いテニスをマスターして1981年帰乱サーブアンドボレ ー,レシーブアンドボレーでテンポの遅い日本テニスに梗を打ち込んだ.人一倍の 努力家で練習量も他の追随を許さない。ドロップショット,ロブボレーなどテクニ ックも多彩である。 D. 1982年からデ杯選手。. オ-ルラウンドプレーヤーであるoスピンのよく利いたサービスとフォア-ンド ストローク,バック-ンドストロークともにトップスピンのストロークとスライス. ショットを使い分ける.身長もあり,スピード,スタミナも申し分ないので将来が 期待された選手であるが,新しいテクニックを取得するのには多少時間のかかる選 手である。. 1982年からデ杯選手。. (3) パーソナリティー特徴の把握. ①. 方. 法. パーソナリティー特徴を診断する方法は,質問紙法,、作業検査法,投影法に大別さ れるが,本研究では,投影法の一つであるバウム・テストを用いたo投影的テクニッ クであるバウム・テストの解釈にあたっては,描画特徴を見落とさないようにするこ と,独善的な解釈に陥らないようにすること,対象者に関するデータをできる限り入 手することなどが基本的に重要である。落合らは,現在この点を重視し,解釈援助プ ログラムを試作し, (落合他, 1992),改善を続けているが,本研究では,現場の指導 者から要請があった時点(1982年)での解釈法による結果をそのまま紹介することと する。 それは,対象者がテニスのデビスかソプ選手であるという前提から,彼等のトレー ニングや競技場面への貢献を考えた場合,重要であると思われる側面を中心とした以 下のような方法である。 基本的な観察点として次の点に留意する。 ・選手が自分自身の適性や能力をどのように受けとめているか。(受けとめるという 意味には無意識的な部分も含まれている。) この描画特徴上の指標は主として,幹の基部や根の描写である。 ・選手のエネルギー水準はどの程度であるか。 この側面の指標としては,.幹の大きや筆圧,さらには描線の特徴をあげることが できる。. ・目標追求のための具体的な手段を的確につかんでいるかどうか。 これは,主として枝の描写を手がかりとして判断する。 ・選手の潜在的能力が十分に発揮されているかどうか。 この側面は,描かれた樹木画が上部で切断されているかを手がかりとして解釈す る。. ・以上の他に,顕著な描画特徴があった場合には,林他(林・国吉・-谷訳, を参考にして適宜解釈を加える。 樹木画によるパーソナリティの診断では,いつでも単一の解釈が得られるとは限ら. 1970).
(6) 126. 蝶間林利男・落合. 優. ない。むしろ,例えば,日常的な観察の知見面接の資料,文章完成法などの他のパ ーソナリティー・テストの結果などのパーソナリティー診断に必要な他の資料がよほ ど豊富に得られないかぎりは,単一の解釈に限定するのは不可能であるとさえ考えら れる。場合によっては,相反する二つの解釈が同時に可能であることすらある。した がって,本研究でのコーチへの報告は,樹木画から解釈し得る選手のパーソナリティ ー特徴のすべてを包含する形で行った。 選手のパ「ソナリティーの特徴. ②. 以下に各選手の樹木画と,その解釈により得られたパーソナリティー特徴をあげる。 パーソナリティー特徴の記述の最後の(. )内には,解釈に手がかりとなった主要な. 描画時徽を付記した。 このうち, A氏は,デビスかノブティームの監督であるが,彼は自分自身の樹木画 の解釈に接し,この方法が個々の選手の総合的な把握に十分利用できるという実感を 持つに及んで,バウム・テストの真剣な応用を決断した。 「A氏+. (図A). 自己の持つ能力について,かなりの自身を持っていると見ることができる。. (広く自. 然に描かれた幹の基部)。高いエネルギー水準を有するであろう(幅広い幹)。 ・能力やエネルギーを目標の実現に向けて具体化する方策をしっかりと把握している と考えられる(幹から枝への自然なつながり,調和をとれた枚)0 ・外部(対人関係や場面や状況への対応)は,横極的で,しっかりとした形でなされ ていると見ることができる(放射線状の杖,調和のとれた伸びやかな線による樹冠 の描写)0 ・自分の持つ力をフルに生かしているという印象を受ける(バランスのとれた,完成. 〔. 疫. I( ∫. J. 0. tLJ. 1. )I. ≡壁ン′. [図A]. /.
(7) デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. 127. 度の高い全体像)。 ・しかしながら,非常に確固とした安定した観のある現在の生き方に,何らかの不安 (幹のほぼ中央の穴の描写)0 あるいは疑問を抱いているかもしれない。 ・対人的な関係において,やや固い感じがあるかもしれない(何本もの直線で描かれ た幹)0 「B氏+. (図B). 自己の能力についてかなりの自信を持っている(やや広めの自然な基部) 高いエネルギー水準を有すると見ることができる。 (太い伸びやかな線で描かれた幹)0 ・外部への対応に関しては,おおらかさや柔軟性が感じられる(調和のある樹冠,筆 圧の高い伸びやかな線による幹の描写)0 ・所有する能力やエネルギーを目標の実現に具体化する手段については,まだつかみ きれていないかもしれない。具体的方策の点では,やや固く,応用に乏しいという 観も完全には否定できない。(幹に比べて細目の少数の枚,幹の先端に見られる開放) ・持っている潜在力のかなりの部分がまだ顕在化されていないという印象を受ける(や や小さめの,上部を切断された樹冠)。. ゝ. (・,. ( Lr =. ヽ\. ♪. しィI. ヽ__一一`■. rl. ⊥ノ. 践三. --一一. \L/. i(. ℃\ [図B]. 「C氏+. /. (図C). ・自分の能力について自信を持ちきれていない感じを受ける(透視図的に描かれた散 漫な根)0.
(8) 128. 蝶間林利男・落合. 優. ・かなり高いエネルギー水準を持っていると考えることができる(太めの筆圧の高い 線による幹の描写)0 ・目標実現のための具体的方策については,しっかりとした勢いのあるものをつかん でいないと見ることができる(枝らしい描写の欠如,あるいは一本線の枝) ・外部への対応についてみると,積極性と幅に欠ける面があるのではないかと推察す ることができる(羊膜状に見えるやや小さめの樹冠)0 ・自分自身の能力を十分に把握できていない,あるいは自分自身の活動を自ら狭めて いるような傾向を持っているかもしれない(羊膜状の樹冠)。. メ. t\\、 ノ \ ヽヽ. [図C]. 「D氏+. グ. Z. \. \. (図D). ・自分の能力についての自信が強く,極めて高いエネルギー水準を有すると考えるこ ともできる(非常に大きな基部,非常に太い幹)。 ・上の裏返しで,自分が恵まれた能力や高いエネルギー水準を持っていると思い込ん でいる,あるいは能力やエネルギー水準について自信の無さを隠そうとしていると 解釈することも可能である。. (異常に大きな基部,散漫な根の描写,異常に太い幹)0. ・目標実現のための具体的方策については,かなり不十分で,不安定で自信のない状 態にあると解釈することができる(幹とのつながりに調和を欠く少数の枝,幹から 枝にいたる部分の透視図的な表現)0 ・外部に対する対応は,大まかで,統一性に欠けているのではなかろうか。特に対人 関係については,かなり繊細で神経質な面があるのかもしれない。 (薄いベールのよ うな印象の散漫な樹冠,幹の輪郭にみられる不連続な線)0.
(9) ヂ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効異について ヽ. 129. ぐヽ. 卑こ :\. / ′. / ′. /. /. /). \. / ′ ′. ・}. I. /. ''し ∫. II. し /. gil. /i. 「、 ㌔. +、「. ・}/. 左. / /. \\.. i;. 1L: I.. 声. ∫i. i;. i. t. l. ∼. 千. 湖 杏≠ ′ ̄. 演 √√. y. r7&). (. ヽ. El. 主. ●●. 1C'... ヽ. ′. ′. ,.. [図D] 2.指尊(トレ-ニング)計画の立案と喪蒐 ヂビスかソプ戟は国と国との対抗戦であり,男子シングルス4ポイント,男子ダブル レフェリーは中 ス1ポイント計5ポイントで争われる。試合はどちらかの国で行われ 立国から派遣される。選手は最低限2人いれば間に合うが,試合はそれぞれ5セットマ ッチであるので4名が正選手として選ばれる。いずれの囲もその時点での最強かつマナ ーの良い選手を選び,勝利を目指す。 (1)指導(トレーニング)計画の立案 ①. 立案のポイント 1981年9月にフランスパリで行われるフランス戦に向けて.,. ・日本デ杯ティームは全 日本大金の優勝者を含む候補選手の選定を行ったが,将来のことも考えて若手選手も 候補選手にいれなければならなかった。しかし,当面の試合に向けては正選手中心の 指導(トレーニング)計画を立案しなければならない。この時の選手団の平均年齢は 25.5才。あまり過激なトレーニングは出来ない年齢にある。立案のポイントを5セッ トマッチに耐えられるスタミナと疲労を残さないためのコンディショニング造りに重 点をおいた。 ②. 選手との調整. 選手との最初のミーティングでデ杯戦への心構え,体力造り,心理面へのサポート.
(10) 130. 蝶間林利男・落合. 優. などを話し,体力測定の実施とバウムテストを実施した。体力測定の結果から選手個 人個人のデータを管理し,トレーニングの原本とした。バウムテストに関しては選手 の練習や試合態度を見ながら,専門家の評価との対比を図っていくこととした。 (2)指導(トレーニング)の実施 ①. 1981年7月-9月 9月のフランスの季節は秋で爽やかであるとのことo. コートサーフェスはアンツー. カであるので,第一次キャンプを7月下旬に仙台郊外の菅生スポーツランドで行った。 ここはコートがアンツーカに似たグリーンサンドで,宿舎も完備しており,疲労回復 のために使えるプールやスタミナ養成のためのランニングコースがあった。若手の候 補選手を含め総勢14名で1週間行った。 練習に先掛ナて選手,監督にパウムテストを行った。一日のタイムスケジュールは, 7時起床,. 8時朝食で,練習は9時半から12時,. 2暗から4時, 4時から5時半まで は体力造りと水泳である。選手は個々のペースがあると思われたので朝のランニング は義務とせず,走りたい人は自由に走ることとした。 食事に関しては全く問題なく頂けた。練習中の水分摂取に関してはこの頃急激に広 まってきたスポーツドリンクを用意して自由にとらせた。メーカーの指示どうりの濃 度で作ると発汗が激・しくなるので,少し薄日に作って飲ませた。この他,バナナなど の果物も少し用意した。 トレーニングは,選手の練習を見て,体調を聞き,オーバーワークにならないよう 注意しながらストレッチ,ダッシュ,筋トレ,持久走などを個人別のメニューで行っ た。. 1時間のトレーニングの後で30分の水泳を行い,心とからだのマッサージ効果を. 期待した。泳げない選手は水中で歩くことを指示した。夕食後のミーティングの後で 体調のすぐれない選手はマッサージを行ったが訪れる選手は少なかった。 第二次キャンプは出発の1週間前に東京で行った。コートはやはりグリーンサンド であった。現地(パリ)に到着後,時差調整・を兼ねて軽く練習し,調整を開始する。 5日間の練習,トレーニング,調整後に試合を迎えるが,-ワールドグループ国のかべ はあつく1-4で破れた。 ②. 1982年1月から5月 4カ月のフリー期間の後,. (選手はそれぞれ外国遠征を行っていた). 1月に行われる. ・中国台北戦(台湾)に備えて,選手全員の体力測定を行った。個人個入のメニューを 作成した.翌週,台北に遠征し, 411で勝つ. 3月には準決勝のタイ戦,まだ寒さ の残っていた九州で行い, 5-0で勝利した。その結果, 5月上旬高温のインドネシ アにワールドグループ復帰をかけて遠征することになった。選手団の変更はなく,イ ンドネシア入国一週間前にフィリピンで合宿練習を行い,暑さへの適応を図った。結 果的にはこの合宿で選手は体調を壊し,本調子に戻れぬまま試合を迎えることになっ てしまった。日本選手の暑さへの適応力(体力,意志力)のなさを痛感した。試合当 日には冷たいタオルをたくさん用意し,・首筋を冷やすなど努力をしたが,文字どおり.
(11) 131. デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. 焼け石に水であった。アンツーカコートの反射熱と,高温多湿な環境に慣れるこ七が 出来ず, ③. 1-4で完敗した。. 1983年1月から9月 別紙-1のような案内文が選手に送付され,. 3月の中国戦(大阪)に向けて日本テ. 6日前に大阪に入り,アンツーカコートに慣れる ィームは始動した。東京で調整し, よう調整に励んだ。D選手は初出場ということでかなりの緊張状態で試合をむかえた。 本人は紫蘇していないといいながらもテニスの状態は今一つであったが,選手発表後 2に. に選手の変更は出来ない。体力の心配のない選手なので,技能面では相手のNO は勝てる実力があると考えられたので,あとはメンタルな部分だけである。. 彼には心. のトレーニングが必要となった.初日,シングルスを中国のNOlに負け,. 2日目の. ダブルスでは2セットアップから落し,もう負けられない。最終戦の前夜,. ミ-ティ. そこで, ングの後軽くマッサージをして,早く寝かせたが,眠れないと訴えてきた。 宿舎のバーで一杯のみながら, 「相手はもっと緊張している,自分の力を出せば問題な い,テニスマンとしてこれ以上のチャンスはない,男になれそして良いスポンサーに. っいてもらえ+と激励して寝かせる。翌日の2-2のポイントの後の最終戦,相手の サービスで始まり,まず,これを破った。相手も相当の緊張をしているのがうかがえ 「すべて前に出ろ.′+このアドバイスが効を奏し,ストレ た。ベンチのA監督は一言, ートで勝ち,日本の勝利が決まった. 9月の宿敵インド 4-1で勝利をおさめ, 5月に準決勝戦の韓国を名古屋に迎え, 戦(東京)へと調整に入った。インドに勝ちたいという悲願から,このときのメンバ ーにいろいろ批判があったが,ダブルススペシャリストK選手(ベテラン)を起用し, 必勝を期した。しかし,即席のコンビではいかんともしがたく,インドの厚い壁を破 ることは出来なかった。この国際的に活躍したK選手の加入はティーム内に明るさを もたらしてくれた。. ④. 1984年1月-10月 新生デ杯ティームが動きだして3年目。今年こその意気込みで新年を迎える。初戦 は2回戦,昨年大阪で辛勝した中国である。相手の選手は変わらないので,環境条件 が大きな敵となる。気温,湿度,食事,宿舎,ボール,審判員など数えあげればきり がない。中国の試合会場は中国が自国の中であればどこでもよく総合トレーニングセ ンターのある,雲南省昆明と知らされた。早速,共同通信に勤めている友人に頼み, 情報を入手したところ,海抜が1900mもあるとのこと。当時はやりの高地トレーニン グを考えたが敷か月もの時間はない。しかし,練習を少しでもとのことで寒中海抜1350 mの草津高原のテニスコートで雪かきをしながら1週間の合宿を行った。呼吸循環系 に相当の重荷が感じられたのと,ボールがよく飛ぶということが実感できたのは収穫 であった。高地での試合はスタミナ勝負であり,平地の東京で質,量ともに満足でき る練習を続けた。練習前にはストレッチを十分行い,縄跳びを連続1000回,時に2000 回をこなし,コート上でも2対1の練習に時間を多くの時間を割いた。このときの我々.
(12) 132. 蝶間林利男・落合. 優. は, 「平地でダメな選手は高地でも使えない+というのが共通の理解だった。試合の1. 週間前に現地入りしたが,. NOlのB選手はグラウンドストローク中心の選手なので. ポールが飛び過ぎ,また弾み過ぎてすっかり調子を崩してしまった。ネットプレーヤ ーにはそれほどでもないが,アンツーカコートでこれ程弾むのかというぐらい良く弾 む中国製ポール(航空牌鋼球)であった。しかし,彼は初戦で中国のNOlと当り, 冷静な試合運びと,集中九バウムテストによって目覚めたネットプレーを駆使して, 4時間39分の試合をものにし,日本に貴重な1ポイントをもたらし,勝利に導いた。 もう一人のC選手は毎朝30分のランニングを欠かさない選手である。共に足り,. 「体調. は+と聞くと,その日の体調を含めた総合的な点数(100点滴点)が返ってくる。自分 の調子を数字で出せる分析力はプレーヤーとして大いなる武落といえよう。. D選手は. この試合ダブルスに出場した。. 2セットアップで勝利目前のところにいきながな, セット奪い返され,ファイナルは簡単にとられ,日本の勝利を最終日に持ち越されて しまった。惜しい試合であった。結果は3-2で日本の勝利。 5月の準決勝は韓国を日本に迎え撃ち,. 4-1で勝ち,決勝にコマを進めた。 1983年度東洋ゾーン決勝はパキスタンとラワルピンジで10月に行われることになっ た.選手の情報とコートサーフェス,ポール,宿舎,さらに食べ物など様々な情報を 得るために試合の1月前に視察を行った。デ杯は国と国との対抗戦であるので,外務 省から現地の大使館に紹介をいただき,天候や食べ物,飲み物,交通手段など細かな 情報とバックアップの約束をいただいた。その結果,オフィシャルホテルをラワルピ ンジからイスラマバードのホテルに移し,食事や水は大使館の計らいで在留法人の人々 の炊き出しで済ませることとなった。ラワルピンジとイスラマバードはツインシティ ーで近距離にあったが,整然とした都市環境の中でのコンディショニング造りと日本 人合のバックアップをうけられたので宿舎の変更は大成功であった。情報によると, パキスタンの水は日本人にはきつく赤嫡のような下荊を起こすといわれていたからで ある。選手は炎天下でも十分戦えるようなスタミナと基本プレーの実行に努めさせ, 「自分の実力を出せば問題ない,勝負にこだわらず試合をエンジョイするよう+指導し た。食事と水は完全な隔離政策をとって,試合に臨み,. 4-1のスコアで日本は29年. 振りの東洋ゾーン脱出に成功した。 3.据g[. (トレーニング)の結果. (1)全体的な成果 テニスにおいて,. 「勝つことはすなわち技術が優れている.+という風潮が今でも存在し. ている。さすがにトップクラスになって,そのようなことをいう人は少ないが,その流 れはまだまだ根強いと言わねばならない。これが日本のテニスを(スポーツ)を足踏み させている原因ではなかろうか。今回,日本のトソプ選手で構成する,デビスかノブテ ィームの選手団は監督,コーチ,トレーナー,選手,候補選手で構成され従来と異な り,いわゆる科学的なトレーニングを活用できる体制となった。. 2.
(13) 133. デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. 強化のポイントの最初は現実の姿を認識することである。体力測定,心理検査(バウ ムテスト)を行い,長所,短所などの個人的特徴を把握することからスタートした。そ の結果,外からでは見えなかった個人的な情報が検査とカウンセリングを通して明かに なってきた。. 具体的な成果として, ・選手が自分を正しく見つめよう,そして,個人差に応じてであるが,自己改革をよ り効果的に高めようと言う機運が芽生えてきた。 ・雑誌などに紹介されることから,全国的に技術だけでなく,体力も心理(パウムテ ストによるパ-ソナリティーの把揺)の強化も必要であることが啓蒙された. ・全員一緒のトレーニングでなく,.個人個人の特徴によってトレーニングの方法が異 なることが伝えられた。 ・コンデイショ三ングにたいする正しい考え方を普及でき,た。 ・対戦相手や対戦国の正しい情報収集が勝敗の行方に重要なキーとなることが明らか になった。. ・技能,体力,パーソナリティー,栄養などの専門家の連携がうまくいくシステム作 り.の重要性が明かになった。 (2)個々の成果 A. 監督としてティームをリードし,日本テニスを29年振りの東洋の覇者に押し上げ た。監督,コーチ,トレーナーというトロイカ方式を作り,科学的な色彩のなかっ. '成果に. たテニス界に科学の風を吹き込んだ.これは彼自身の自己改革にi?ながり, もなっている。 B. 日本の揺るぎないエースとしての自覚と実力をバウムテストにおける深層 ̄の分析 によって獲得できたものと考えられる.テニスのプレースタイルがペ-スラインプ. c. レーからオールラウンドプレーに変身できた。 自分の内面(パーソナリティーや体調)や技能を含めた総合力を自分で定量化で きるようになった。いろいろな国との対戦から,仲間との強調性も芽生えてきた。 努力することの価値を再認識できた。. D. 才能をいつ,とのように生かさせるかについて,他者(専門革)の意見を開く・大 切きを知ったのではないか。また,個人プレーの中に仲間意識を持つ心のゆとりを 学ベたのではないか。. 4.まとめ. デビスかソプ代表選手のパフォーマンスの向上を,技能,体力,パフォーマンスの角 度などから多面的に,′継続的に行い,その効果を検討したところ,次のような結果を得 た。. 1,個人スポーツであるテニスのパ7オーマンスを高めるには,従来の技能本鐘の強化 方針を脱却し,体力や,心理(パーソナリティ-)の向上を同時に考え,さらに,慕.
(14) 134. 蝶間林利男・落合. 優. 境にも適応できる資質の養成など多面的な指導(トレーニング)が必要となる。 2,コンディショニングの調整は各個人個人によって異なるので,個人差に十分対応す ることが大切である。. 3,テニスプレーヤーは自我が強く,開放的な性格の持ち主が多いが,自己の深層に気 づいている選手は少なく,心理的トレーニングの必要性が強く望まれた。 4,バウムテストを利用することによって,未知の部分が開発され,テニススタイルが 大きく変わり,パフォーマンスが向上した選手がいた。反面,指導したにもかかわら ず,改善を図らずに大成しないでテニスから離れていった選手もいた。 5,国を代表するデ杯選手では勝敗に対するプレッシャーが強く,人間としての強さが なければ技能の発揮以前に負けてしまうようだ。 6,今回の4名の選手のうちD選手を除いた3名は10年の歳月が経過した現在, 協会理事,強化委員,. B氏:デ杯監督, 献し,若手選手の育成に尽力している。. 牛料-1. A氏:. C氏:ナショナルコーチとしてテニス界に貢. デ杯候補選手,強化選手諸兄へ. 1983年のテニスも京都タラッシック,カワサキオープンによって碁が切って落とされました。 お元気でご活躍のこととおもいます。新年から嗣子の波に乗っている人も今一つ乗り切れてい ない人も3月の中国戦に向けて頑張っていきましょう。 諸兄とのつきあいも3年目になり ---中略 外人プレーヤーの体力,精神九プレーなどを表から,暴から見てきて感じたことをここで 整理して文章化してみることでなにか諸兄の参考になれば幸いです。 私が一番強く感じるのはやはりスタミナ不足です。ファイナルでひっくりかえされないで彼 等と対等に渡り合うには少なくとも2時間は走れる力は欲しいものです。 ---中略 次に感じるのは,筋力不足です.体幹部,腹軌背筋などの筋です.これらはスマッシュ, サーブ,ネットでの飛びつき,復元力や呼吸の乱れを最小限にする意味でも重要です。 ---ヰ略 各自のメニューをつけておきますので毎日消化するようにしてください。 以上. 峡間林利男. 参考文献 1.落合・溝口・井揮,パーソナル・コンピューターによるバウム・テスト解釈援助プログラ P.310-327,1992 ムの作成,横浜国立大学教育紀要,第32集, 2.林・国吉・ CbarlesKocb,TbeTreeTest(DerBaumtest),バウム. -谷(釈), 樹木画による人格診断法-,日本文化科学社, 1970. ・テストー. 3.蝶間林・田中 他,テニス選手の体力的特徴,東京教育大学部紀要, P.119-133,1975 4.蝶間林利男,テニス選手の養成一国際比較-,体育の科学 1988 Vol.38-5,.
(15) 135. デ杯選手の多面的トレーニングの実施とその効果について. Abstract who what effects will result in the tennis players of this study is to examine importance to attach Players to Davis Cup tend those in the much players participated further by improve diverse training their skills itself, in order to employing technique by means as of (Projective Method-diagnosis sciences such psychology and counseling fitness for as Baum muscular (training stamina Test) and science of physical strength and The. well. objective. the. as. based. the. on. for. adaptability. case. of. method. The. environment).. was. study. for 10 years. out. carried. and. was. study.. Results forms. 1. Diversified mental tbe. strength,. training. efficiency. 2. Mental training try. of them. most. shows. self).On of the to be. aims. to be. they. mainly. necessary. really. fairly. and. the o也er band,也ere. Test. and. seen. their. left the. who. players. absolutely show. egocentric. the. have. player's. musctllar. in. a. as. play. national necessary. technical. top. in the. were. of. for. they. the. players. since though. sense,. strict. Davis. representatives.. for them・ efficiency.. to get rid of. technical hardly. it is known. open・minded.. some. playe・r's. strength,. definitely needed improvement the at are. had Baum for the study changed their tennis styles after having subjects themselves that the Test made them they had not known realize what. 3. Some. 4. The. that. tbougbt. character. what. are. improving. for environment,. principle. is especially. to know. at. whichaim. ・and the adaptability. conventional. ever. of training,. subjects. who. could not. have. much. Test・. This. (theirinner benefits out. circles. Players. Cup. are. In order to win  ̄they might. Otherwise. since they tend pressure keeplng is strength mental. often under games, easily. lose. games. before. they. can.
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