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IRUCAA@TDC : 歯周病原細菌の環境ストレス回避機構を標的とした新規治療戦略の開発

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

歯周病原細菌の環境ストレス回避機構を標的とした新規

治療戦略の開発

Author(s)

菊池, 有一郎

Journal

歯科学報, 116(4): 268-270

URL

http://hdl.handle.net/10130/4064

Right

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歯周病原細菌の環境ストレス回避機構を標的と した新規治療戦略の開発 微生物学講座 菊池有一郎 緒 言 歯周病は,歯面にバイオフィルムである歯垢(デ ンタルプラーク)を形成している口腔細菌の一部が 引き起こす慢性感染症である。歯周病原細菌の定着 は歯周組織の炎症を引き起こし,続いて歯槽骨の吸 収,最終的には歯の喪失へとつながる。歯周病を予 防するためには歯周病原細菌を口腔内から除去する 方法,つまり様々な歯周病原細菌のすみかであるデ ンタルプラークを歯ブラシによるブラッシングにて 機械的に清掃する方法が一般的に用いられている。 だが,ブラッシングによるプラークコントロール は,個人差やブラシの到達範囲に限界があるなどの 問題点がある1)。このような背景から洗口液や抗菌 薬を併用して,よりブラッシングの効果を高める方 法が用いられるようになった2,3) 。また近年ワクチン による歯周病予防の可否に関する研究も進められて いる4) 歯周病原細菌としては,レッドコンプレックスを 構成するPorphyromonas gingivalis,Treponema

denti-cola,Tannerella forsythia をはじめ,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Fusobacterium nucleatum, Prevotella intermedia などが知られている5) 。その中 でも,P. gingivalis は慢性歯周炎患者の病巣部から 高頻度に検出されること,病原因子として線毛,内 毒素,強力なタンパク質分解酵素であるジンジパ イン(Rgp,Kgp),赤血球凝集素を持つことなどを 根拠に,歯周病原細菌の最有力候補と考えられて いる6) 。さらに,P. gingivalis は歯周病における key-stone 細菌であるという報告が2011年なされた7) 。 P. gingivalis は宿主の免疫系から巧みに逃れ慢性感 染を持続し,徐々に口腔環境の免疫を破綻させ口腔 細菌叢の変化を導き,結果歯周病をもたらすという 説が提唱されたのである。 我々はこのような経緯を踏まえ,より特異的,効 果的かつ安全性に富む新規の歯周病予防薬もしくは 治療薬を開発するため,歯周病原細菌P. gingivalis の環境ストレス回避機構を標的とした創薬の可能性 を検討することとした。その候補タンパク質とし て,我々は Extracytoplasmic function(ECF)シグマ 因子に注目した。なぜなら ECF シグマ因子は,① 転写因子である,②原核生物つまり細菌に特異的に 存在し,ヒトをはじめとする真核生物には存在しな いこと,③現在までに ECF シグマ因子が細菌の病 原性および生存と深く関わると数多く報告されて いることがあげられる8) 。P. gingivalis ATCC 33277 株には6種類(PGN_0274,PGN_0319,PGN_0450, PGN_0970,PGN_1108,PGN_1740)の ECF シグマ 因子が存在する9) 。P. gingivalis が慢性感染し歯周炎 を発症するためには,歯周ポケット内での環境スト レスに曝されながら長期間生存することが可能で, 他の口腔細菌の混合感染を促進することでバイオ フィルムを形成・肥大化させることが必須である が,この環境ストレス回避に ECF シグマ因子は関 与すると考えられる。さらに,細胞付着および侵入 時に際して重要な働きを行うことも報告されてい る10) 。それゆえ,ECF シグマ因子の働きを阻害すれ ば,P. gingivalis の病原性や生存率の低下を招くと 予想し,ECF シグマ因子とバイオフィルムおよび 病原性との関係性について検討した。 材料および方法 5種類の ECF シグマ因子遺伝子及びその周辺を P. gingivalis ATCC 33277株のゲノムをもとに PCR 法で増幅し,クローニングを行った。DNA シーク エンサーにて塩基配列を確認後,目的遺伝子内にエ リスロマイシン耐性カセットを挿入したターゲッ ティングベクターを構築した。その後,エレクトロ ポレーターによりターゲッティングベクターをP. gingivalis ATCC 33277株に導入し,相同組換えを起 こさせることにより遺伝子挿入変異株を得て,エリ スロマイシン含有血液寒天培地上にてセレクション を行った。また,PGN_0274と PGN_1740変異株に

研究成果報告

⑴学長奨励研究助成成果報告

東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ 268 ― 18 ―

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ついては相補株を作製した。 次に,バイオフィルム形成能をクリスタルバイオ レット染色法にて評価した。さらに,ジンジパイン 活性試験,赤血球凝集活性試験,自己凝集活性試 験,各種抗菌薬に対する最小発育阻止濃度(MIC)測 定,透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い評価した。 結 果 P. gingivalis ATCC 33277株 に お い て,5種 類 の ECF シグマ因子遺伝子挿入変異株全てを作製する ことができた。野生株と比較し,PGN_0274,PGN _1740変異株はバイオフィルム形成量の顕著な増加 を認めた(図1)。PGN_0274と PGN_1740変 異 株 に おけるバイオフィルム形成量の増加は,当該遺伝子 を相補することにより野生株と同程度にまで回復 した。ジンジパイン活性は,野生株と比較し PGN_ 0274変異株は,Rgp,Kgp ともに顕著な減少を認め た。さらに PGN_0274変異株は赤血球凝集能を認め ず,自己凝集能の低下を認めた。薬剤感受性試験の 結果,テトラサイクリン,オフロキサシンに対する 感受性に顕著な変化は認められなかったものの,ア ンピシリンに対する感受性は PGN_0274変異株で増 加,PGN_0450,PGN_1740変 異 株 で 低 下 し た。ま た,TEM による菌体表層構造の観察では,PGN_ 0274変異株において vesicle 形成の増加と,細胞壁 部分の厚みの低下が認められた。 考 察 5種類の ECF シグマ因子遺伝子挿入変異株を全 て作製することができたことより,P. gingivalis の 生存において ECF シグマ因子は必須ではなく,副 次的に役割を担っていることが判明した。ECF シ グマ因子 PGN_0274について,Rgp,Kgp 活性,赤 血球凝集活性,自己凝集能の顕著な低下が認められ た。この原因として以下のように考える。最近 PGN _0274が,ジンジパイン Rgp,Kgp をはじめとする 一部の膜結合タンパク質や分泌タンパク質の膜外 輸送に関するⅨ型分泌システム(type Ⅸ secretion system,T9SS)の構成タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る porT,porV,porP の転写量の調節に関わっている ことが明らかにされた11) 。つまり,PGN_0274タン パク質の欠損によるporT,porV,porP の転写量の 減少により,Rgp,Kgp,アドへジンタンパク質の HGP44などの膜外への分泌が阻害され,ジンジパ イン活性,赤血球凝集活性の低下が起こる。また Rgp 活性が低下するため,線毛タンパク質の成熟 化も阻害され,その結果自己凝集能が低下したと考 えられる。PGN_0274と PGN_1740変異株における バイオフィルム形成能増加のメカニズムについて は,現在解析中である。 結 論 P. gingivalis の ECF シグマ因子は,本菌の病原性 発現に重要な役割を果たすことが示唆された。この ことより,ECF シグマ因子を標的とした抗菌薬開 発の可能性を示すことができた。 謝 辞 稿を終えるにあたり,本研究に際してさまざまな 御指導・御助言頂きました本学微生物学講座の石原 和幸教授,歯周病学講座の齋藤 淳教授,組織・発 生学講座の山本 仁教授,微生物学講座の国分栄仁 講師,柴山和子講師,組織・発生学講座の山崎貴希 講師に深謝致します。また,一部の実験を担当して 頂きました歯周病学講座の太田功貴大学院生,微生 物学講座の藤瀬和隆大学院生に感謝致します。 文 献

1)Waerhaug J : Effect of toothbrushing on sub-gingival plaque formation. J Periodontol, 52:30 −34,1981.

2)Hull PS : Chemical inhibition of plaque. J Clin Periodontol, 7:431−442,1980.

3)Preus HR, Lassen J, Aass AM, Ciancio SG : Bacterial resistance following subgingival and

図1 2日間 嫌気培養後のバイオフィルム形成量 (n=9,*** p<0.001)

歯科学報 Vol.116,No.4(2016) 269

(4)

systemic administration of minocycline. J Clin Periodontol, 22:380−384,1995.

4)Kawamoto Y, Hayakawa M, Abiko Y : Purifi-cation and immunochemical characterization of a recombinant outer membrane protein from

Bacteroides gingivalis. Int J Biochem, 23:1053−

1061,1991.

5)Holt SC, Ebersole JL :Porphyromonas gingivalis,

Treponema denticola, and Tannerella forsythia : the

“red complex”, a prototype polybacterial patho-genic consortium in periodontitis. Periodontal 2000, 38:72−122,2005.

6)Lamont RJ, Jenkinson HF : Life below the gum line : pathogenic mechanisms of Porphyromonas

gingivalis. Microbiol Mol Biol Rev, 62:1244−

1263,1998.

7)Hajishengallis G, Liang S, Payne MA, Hashim A, Jotwani R, Eskan MA, McIntosh ML, Alsam A, Kirkwood KL, Lambris JD, Darveau RP, Cur-tis MA : Low-abundance biofilm species orches-trates inflammatory periodontal disease through the commensal microbiota and complement. Cell

Host Microbe, 10:497−506,2011.

8)Paget MS, Helmann JD : The sigma70 family of sigma factors. Genome Biol, 4:203,2003. 9)Naito M, Hirakawa H, Yamashita A, Ohara N,

Shoji M, Yukitake H, Nakayama K, Toh H, Yoshimura F, Kuhara S, Hattori M, Hayashi T, Nakayama K : Determination of the genome se-quence of Porphyromonas gingivalis strain ATCC 33277 and genomic comparison with strain W83 revealed extensive genome rearrangements in

P. gingivalis. DNA Res, 15:215−225,2008.

10)Yanamandra SS, Sarrafee SS, Anaya-Bergman C, Jones K, Lewis JP : Role of thePorphyromonas

gingivalis extracytoplasmic function sigma factor,

SigH. Mol Oral Microbiol, 27:202−219,2012. 11)Kadowaki T, Yukitake H, Naito M, Sato K,

Kikuchi Y, Kondo Y, Shoji M, Nakayama K : A two-component system regulates gene expres-sion of the type IX secretion component proteins via an ECF sigma factor. Sci Rep, 2016 Mar 21, 6:23288.DOI:10.1038/srep23288.

東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ 270

参照

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