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<資料>介護老人保健施設入所時と2ヶ月後における要介護高齢者の家族の心情 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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介護老人保健施設入所時と 2 ヶ月後における

要介護高齢者の家族の心情

Psychological Status of Family Caregivers of the Institutionalized Elderly of

Intermediate Nursing Homes at Admission and 2 Months Afterwards

横内 理乃

YOKOUCHI Rino

要 旨

本研究は,介護老人保健施設の入所者の家族支援にむけた資料を得るために,家族介護者にみられる入所 時から 2 ヶ月間の経時的な心理の変化を明らかにすることを目的とした。介護老人保健施設 10 ヶ所の入所者 の家族介護者 20 名(平均 58.3 ± 7.9 歳)を対象に,文献をもとに作成した半構成的質問用紙を用いて入所時と 2 ヶ 月後に面接してデータを収集し,質的帰納的に分析した。その結果,介護負担や在宅の限界感により入所を 決定し,入所開始時には安心感がある一方で,嫁は 藤や気持ちの未整理がみられた。入所 2 ヶ月後には安 心感と気持ちのゆとりが生じ,施設入所継続を希望していた。施設入所により実子の心情は在宅の限界感か ら安心感へと変化するが,嫁は介護を役割や義務ととらえて介護負担感が強く,入所後も 藤などの気持ち を持ち続けている傾向にあることが示唆された。 キーワード 介護老人保健施設,家族介護者,心情,高齢者

Key Words Intermediate Nursing Home, Family Caregiver, Psychological Status, Elderly

Ⅰ . 緒言

介護保険制度は,在宅を重視して「自立したその人ら しい生活」を目標に取り組んでいる。施設サービスの 1 つである介護老人保健施設(以下,老健)は,医療並びに 日常生活上の世話を行うことにより在宅生活への復帰を 目指しており,主たる入所理由は ADL の拡大と家族・ 介護者事情となっている1)。また,老健入所者は,高齢 になるほど入所者割合が増加し,要介護度は平均 3.25, 主な傷病は「循環器の疾患」(39.5%)であり,入所者の 9 割に認知症が認められる2)。老健入所は平均 270 日以上, 自宅退所者は約 20%であり,在宅へ復帰する割合は年々 低下している2)。 老健入所者家族の心情として,入所により介護からの 開放や安堵を感じ,大半が週 1 回以上の面会をしている 一方,入所への後悔・迷い,家に残された実感,面会に 通うことの困難さ,頻回な面会を職員・他入所者に疎ま しく思われないかを案ずるなどが報告されている3)-5)が, 入所後の家族の心情の経時的な変化については明らかに なっていない。 そこで本研究の目的は,介護老人保健施設の入所者の 家族に対する看護・介護支援のための資料を得るために, 家族介護者にみられる入所時からの経時的な心理の変化 を明らかにすることである。

Ⅱ . 研究方法

1. 研究デザイン:質的記述的研究デザインを選択した。 2. 研究対象:介護老人保健施設 10 ヶ所の入所高齢者 の家族介護者 20 名とした。 3. データ収集 データ収集は,文献3)をもとに研究者が作成した半構 成的質問を記載した面接用紙を用いた。半構成的質問は, 「自宅の介護の中での出来事およびその時の思い」,「施 設利用を決定した時の思い」「現在の健康状態,思い, 生活,楽しみ」「今後の生活についての考え」などであり, 対象者との会話の流れに沿って面接を行い,許可を得て IC レコーダーに収録した。 受理日:2011 年 1 月 20 日 山梨大学大学院医学工学総合教育部 ヒューマンヘルスケア学 専攻:Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, University of Yamanashi

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面接時期は,入所時および家族とのカンファレンスが 予定される 3 ヶ月後に至らない 2 ヶ月後に設定した。な お,データは 2009 年 6 月∼ 2009 年 11 月に収集し,面 接には 30 ∼ 60 分が費やされた。 4. データ分析方法 データを質的帰納的に分析するために,IC レコーダー の収録内容は,逐語録データとし,意味が読み取れる文 章を取り出し,文脈における意味を考慮しながら共通の 意味内容をもつものを集めてカテゴリー化し,各カテゴ リーの 20 名中の割合をカウントした。なお,データ分 析上の信頼性と妥当性を高めるために,高齢者看護学の 研究者のスーパービジョンの基で分析を実施した。 5. 研究の倫理的配慮 山梨大学医学部倫理委員会の審査及び調査実施施設管 理者の承諾を受けた。研究対象者の権利擁護のために, 研究の目的,秘密厳守の保障,研究への参加の自由・辞 退の権利の保障を文書と口頭で説明し承諾を得た。

Ⅲ . 結果

1. 施設入所者と家族介護者の概要 施設入所者(N=21)の年齢は 86.6 ± 5.1 歳,主として 女性(n=18, 85.7%),子世代と同居(n=17, 81.0%),骨・ 関節疾患(n=14, 66.7%)を有し,要介護度は 2.8 ± 1.1 で, 認知症(n=17, 81.0%)がみられていた。入所の目的は, 介護の負担軽減(n=15, 71.4%)が最も多く,入所の決定 者 は, 半 数 以 上 が 主 介 護 者(n=15, 71.4 %)で あ っ た (表 1)。 家族介護者(N=20)の年齢は 58.3 ± 7.9 歳,主として 女性(n=16, 80.0%),続柄は実子(n=12, 60.0%)で,副 介護者が存在(n=13, 65.0%)していた(表 2)。 介護を開始したと認識してから施設入所までの介護期 間は,平均 43.7 ± 32.5 ヶ月(3 ∼ 96 ヶ月)であった。在 宅での介護状況として,介護のきっかけは,認知症の行 動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:以下 BPSD と略す)(n=9, 42.9%)と運動 機能低下(n=12, 57.1%)であり,施設入所を考えるきっ 項 目 n( % ) 年齢(歳,平均)(範囲) 86.6±5.1( 77∼96 ) 性別 男性 3( 14.3 ) 女性 18( 85.7 ) 世帯構成 独居 2( 9.5 ) 夫婦世帯 2( 9.5 ) 子世代と同居 17( 81.0 ) 家族人数(平均)(範囲) 3.4±1.4( 1∼6 ) 配偶者 有 4( 19.0 ) なし 17( 81.0 ) 疾患名(重複回答) 骨関節疾患 14( 66.7 ) 循環器疾患 9( 42.9 ) 脳血管疾患 4( 19.0 ) 糖尿病 4( 19.0 ) 消化器疾患 3( 14.3 ) 要介護度 平均 2.8±1.1( 1∼5 ) 1 4( 19.0 ) 2 3( 14.3 ) 3 9( 42.9 ) 4 4( 19.0 ) 5 1( 4.8 ) 認知症 有 17( 81.0 ) なし 4( 19.0 ) 日常生活判定基準 Ⅰ 1( 4.8 ) Ⅱ a 2( 9.5 ) Ⅱ b 2( 9.5 ) Ⅲ a 6( 28.6 ) Ⅲ b 4( 19.0 ) Ⅳ 2( 9.5 ) 項 目 n( % ) 入所目的(重複回答) 身体機能改善 1( 4.8 ) 介護負担軽減 15( 71.4 ) その他 11( 52.4 ) ・寒い時期 ・ 暑い時期を快適に過ごす ・ 独居不可 ・医療的な管理 ・ 仕事と介護の両立困難 ・ 他者との交流促進 ・ 夫の母を引き取るため 入所の決定者 主介護者 15( 71.4 ) その他の家族 4( 19.0 ) その他(本人を含む) 2( 9.5 ) 入所期間の設定 有 10( 47.6 ) ・ 平均 4.5 ± 3.1(2 ∼ 12)ヵ月 なし 11( 52.4 ) 過去の入所回数(回,平均)(範囲) 1.6±4.3( 0∼15 ) 入所までの経過 在宅→老健 13( 61.9 ) 在宅→病院→老健 7( 33.3 ) その他 1( 4.8 ) ・ 在宅→GH→病院→老健 表 1 施設入所者の概要(N=21)

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かけとなったのは,介護の負担(n=7, 33.3%)が最も多 く,次いで定期利用(n=4, 19.0%),家族の健康問題 (n=3, 14.3%)であった(表 3)。 2. 介護中の出来事と思い 以下本文中ではカテゴリーを【 】で示す。 介護中の出来事と思いは【BPSD 対応への大変さ】【行 動把握の試み】【転倒を心配】【協力者存在による安心感】 【介護負担感】【仕事と介護の両立困難感】の 6 つのカテ ゴリーが抽出できた。 【BPSD 対応への大変さ】(n=12, 60.0%)は,「…24 時 間喋りっぱなし動きっぱなしで,誰の話も聞かない。」と いった対応困難な状態を表す内容であった。反面,【行 動把握の試み】(n=7, 35.0%)により,介護の負担軽減 への工夫がうかがえた。 【転倒を心配】(n=6, 30.0%)は,「…転んでしまって, 顔から転んだので,なんか血だらけになって」と,運動 機能低下によるものであった。 【協力者存在による安心感】(n=5, 25.0%)は,「息子 も一生懸命,隣の家にいて,爪を切ってくれたり,息子 がとてもね…本当によく面倒をみてくれるんですよ。」と いうように,在宅介護の励みとなることを表す内容で あった。しかし,【介護負担感】(n=5, 25.0%)や共働き による【仕事と介護の両立困難感】(n=3, 15.0%)は,「私 の妻も仕事をしているんで,あの,結局休んでっていう わけにはいかない部分があったんです。」という苦労を表 現していた(表 4)。 3. 施設入所決定時の思い 施設入所決定時の思いは【在宅の限界感】【 藤】【家族・ 親族への苛立ち】の 3 つのカテゴリーが抽出できた。 【在宅の限界感】(n=9, 45.0%)は,徘徊,排泄の失敗, 転倒などの対応から在宅介護はこれ以上できないという 思いが強くなったことを表す。 【 藤】(n=3, 15.0%)とは,「寂しそうな顔をしている と,あっ,かわいそうなことしちゃったかな,家でもっ 表 2 家族介護者の概要(N=20) 項 目 入所時 n( % ) 年齢(歳,平均)(範囲) 58.3±7.9( 44∼72 ) 性別 男性 4( 20.0 ) 女性 16( 80.0 ) 入所者との続柄 配偶者 1( 5.0 ) 嫁 7( 35.0 ) 実子 12( 60.0 ) 職業 有 11( 55.0 ) なし 9( 45.0 ) 健康状態 良い 9( 45.0 ) 普通 8( 40.0 ) 悪い 3( 15.0 ) ・不眠 ・うつ状態 ・術後不安定 ・食欲不振 副介護者 有 13( 65.0 ) ・配偶者 5 ・兄弟・姉妹 4 ・子 3 ・叔母 1 なし 7( 35.0 ) 家族の協力 十分あり 11( 55.0 ) あるが十分ではない 3( 15.0 ) なし 6( 30.0 ) 家族以外の援助 有 11( 55.0 ) ・兄弟・姉妹 6 ・子 2 ・叔母 1 ・孫 1 ・姪 1 なし 9( 45.0 ) 表 3 在宅介護の状況 項 目(N =21) n( % ) 介護開始から入所までの期間 6 ヶ月未満 1( 4.8 ) 6 ヶ月∼ 1 年未満 3( 14.3 ) 1 年以上 3 年未満 4( 19.0 ) 3 年以上 5 年未満  5( 23.8 ) 5 年以上 9 年未満  8( 38.1 ) 介護のきっかけ BPSD 9( 42.9 ) 運動機能低下 12( 57.1 ) 施設入所を考えたきっかけ(重複回答) 介護負担 7( 33.3 ) 定期利用 4( 19.0 ) 家族の健康問題 3( 14.3 ) その他 9( 42.9 ) 表 4 介護・施設利用決定状況と介護者の思い 項 目(N =20) n( % ) 介護中の出来事と思い   BPSD 対応への大変さ 12( 60.0 ) 行動把握の試み 7( 35.0 ) 転倒を心配 6( 30.0 ) 協力者存在による安心感 5( 25.0 ) 介護負担感 5( 25.0 ) 仕事と介護の両立困難感 3( 15.0 ) その他 11( 55.0 ) 入所決定時の思い 在宅の限界感 9( 45.0 ) 藤 3( 15.0 ) 家族・親族への苛立ち 3( 15.0 ) その他 2( 10.0 )

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と頑張れたかなって思うんですけど…。」というように, 施設入所を決定したが,迷いがあるという内容であった。 【家族・親族への苛立ち】(n=3, 15.0%)は,嫁介護者 にみられ「泣くさわぎでしたよ。いちばん最初は,義姉 はともかく,反対でした。」と,家族間の意見の相違から くるものであった(表 4)。 4. 施設入所時の現在の生活に対する思い 施設入所時の現在の生活に対する思いは【安堵感】【気 持ちの整理ができない】【介護からの開放感】【自己と家 族の健康への関心】の 4 つのカテゴリーが抽出できた。 【安堵感】(n=8, 40.0%)は,「穏やかに生活してます よって聞くと,すごくそれで安心して。」といった施設入 所による安心を表す内容であった。 【気持ちの整理ができない】(n=8, 40.0%)は,「本当 であれば,おばあさんも見れるはずなんだけどね…。」と いった内面の迷いを表していた。 【介護からの開放感】(n=7, 35.0%)は,「今はすごい ゆとりがあります。気持ちに。」といった自分の時間がで きたことへの喜びと安心感を表す内容であった。 【自己と家族の健康への関心】(n=3, 15.0%)は,「更 年期障害に入っている年ではあるんですけれども,自己 管理もできずに。」など,高齢者のことだけでなく,自己 や他の家族の健康にも気を配ることができるようになっ たことを表していた(表 5)。 5. 施設入所 2 ヶ月後の現在の生活に対する思い 施設入所 2 ヶ月後の現在の生活に対する思いは【自己 の生活の安定感】【高齢者に対する安心感】【自己と家族 の健康管理】【後悔と迷い】の 4 つのカテゴリーが抽出で きた。 【自己の生活の安定感】(n=13,65.0%)は , 「…わりと 自分自身の楽しみの時間っていうのが少し取れるんです ね。」といった自分自身のことを考えることができるよう になったことを表していた。 【高齢者に対する安心感】(n=12,60.0%)は,「…常 に何かあるたびに電話をくれるので,その点は安心です し,週に一度ね,元気な顔を見て,それでも安心です。」 といったように,施設生活を安定して送っていることに よる安心感を表す内容であった。 【自己と家族の健康管理】(n=5, 25.0%)は,「整形に 行って,そんなにほっといたんですかって言われ…。」な ど,自己と家族の健康問題に対し行動できるようになっ た。 【後悔と迷い】(n=3, 15.0%)は,嫁介護者にみられ「お ばあさんを預けているけど,常に気持ちの中にはあって, 家で見てあげた方がいいのかとか,本当は家に帰りたい と思っているかもしれないとか,いつも考えてしまう。」 といった内面の迷いを表していた(表 5)。 6. 施設入所時の将来の生活に対する考え 施設入所時の将来の生活に対する考えは【介護の可能 性の見極め】【定期利用による負担感の軽減】【自身の楽 しみへの関心】の 3 つのカテゴリーが抽出できた。 【介護の可能性の見極め】(n=12, 60.0%)は,在宅で介 護ができるかどうかを検討している状態を表していた。 【定期利用による負担感の軽減】(n=4, 20.0%)は,「今 のペースでこちらの方にお願いしたりとか…そういう今 のサイクルで,同じように利用できればいいなって思い ます。」というように,定期的な利用を希望していく内容 であった。 【自身の楽しみへの関心】(n=4, 20.0%)は,「自分の ある程度の趣味もね,少しずつは,やっていかなければ, 行き詰まっちゃうっていうかね。自分も元気でいなけれ ばいけないから。」というように,自己の楽しみを考える ようになった状態を表していた(表 5)。 7. 施設入所 2 ヶ月後の将来の生活に対する考え 施設入所 2 ヶ月後の将来の生活に対する考えは【在宅 生活の断念】【定期利用による生活の安定を願望】【在宅 生活への不安】の 3 つのカテゴリーが抽出できた。 【在宅生活の断念】(n=13, 65.0%)は,「今のおばあさ 表 5 介護者における現在の生活に対する思いと将来の生活に対する考え 施設入所時 n( % ) 入所 2 ヶ月後 n( % ) 現在の生活への思い 安堵感 8( 40.0 ) 自己の生活の安定感 13( 65.0 ) 気持ちの整理ができない 8( 40.0 ) 高齢者に対する安心感 12( 60.0 ) 介護からの開放感 7( 35.0 ) 自己と家族の健康管理 5( 25.0 ) 自己と家族の健康への関心 3( 15.0 ) 後悔と迷い 3( 15.0 ) その他 2( 10.0 ) その他 3( 15.0 ) 将来の生活への考え 介護の可能性の見極め 12( 60.0 ) 在宅生活の断念 13( 65.0 ) 定期利用による負担感の軽減 4( 20.0 ) 定期利用による生活の安定を願望 4( 20.0 ) 自身の楽しみへの関心 4( 20.0 ) 在宅生活への不安 4( 20.0 ) その他 8( 40.0 ) その他 10( 50.0 )

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んの状態では,うちに連れて帰るっていうのは絵に描い た餅。」という語りのように,在宅での介護をあきらめ, 施設利用の継続を希望することを表す内容であった。 【定期利用による生活の安定を願望】(n=4, 20.0%)は, 「…施設を出たり入ったりしながら,家にもいて,今の状 態が長く続けばと…。」というように,定期利用が高齢者, 家族の両者にとって適していると考える内容であった。 【在宅生活への不安】(n=4, 20.0%)は,「…自分が引 き取ることになると…仕事もできない。そうすると,も う,年金だけってことになっちゃうからね。」と語り,老 健施設の機能から,退所を視野に入れて今後を考え不安 を抱くようになっていた(表 5)。

Ⅳ . 考察

本研究の家族介護者の約半数が「BPSD への対応」が介 護のきっかけや介護中の出来事として述べられ,在宅の 限界感を感じて入所に至っていることは,BPSD が介護 負担感を高くし,在宅生活継続困難になることが介護老 人保健施設入所となるという報告6)7)を支持するもので あった。在宅介護状況を家族介護者の続柄で見ると,実 子に比べ嫁が介護の負担感に加え,家族や親戚との関係 性への懸念を表していた。これは,血縁関係にある実子 は介護を愛情や絆という情緒的な側面8)で捉えているの とは異なり,嫁は家族・親族間での役割や義務といった 意識で介護をとらえていることが示唆される。 在宅介護の限界を感じ入所決定に至ったものの,在宅 を継続できなかったのかと 藤していたことは,Butcher ら7)が述べている施設入所に至ったことへの罪悪感にも 関連していると推察される。 入所に伴い家族介護者の心情が在宅の限界感から安心 感へ変化していたことは,施設におけるケアと家族の面 会により入所者が安心感をもてている9)ことを家族が感 じとれることに因ると思われる。また,Tornatore ら10) の報告にあるように,入所者を訪問するほど家族介護者 は施設職員との情報交換ができ,それは,入所者に適し たケアの提供につながるため,家族の満足を得ることに もつながると考えられる。一方,嫁は気持ちの整理がで きず,後悔と迷いの気持ちを持ち続けている傾向にある ことからは,施設入所を役割や義務を果たせなかった結 果と捉えている場合に生ずるものと推察される。意思決 定プロセスにおいて,専門職の関与が介護者の安心感を もたらす7)ことから,家族介護に関する包括的な知識を 持った専門職のサポートが重要であると考える。 入所 2 ヶ月後の家族介護者の思いから,施設入所が不 安やストレスの軽減をもたらしていることが示唆され た。また,自身の生活の見直しができる状況になってい たことは,大半の介護者が不安やストレス解消のための 活動への希望を表現するようになっているという奥野ら の報告6)を支持するものであった。一方,入所時は在宅 介護の可能性も視野に入れていたが,在宅生活を断念す る思いに変化したことは,施設入所のきっかけが BPSD 対応困難であった家族介護者にとって,高齢者の施設入 所が介護に伴う精神的ストレスや身体的負担からの開放 を経験する機会となり,施設の継続入所の希望につなが るものと推測できる。しかし,これは在宅復帰への受入 れへの懸念材料となることから,BPSD 対応指導などの 在宅介護継続のための家族介護者支援は重要な課題と思 われる。加えて,入所 2 ヶ月後も後悔・迷いや気持ちの 未整理が伺える少数意見があることを認識しておく必要 があろう。

Ⅴ . 結論

介護老人保健施設入所の主たるきっかけは,認知症の BPSD への対応により在宅の限界感が生ずることであ る。施設入所により在宅の限界感から安心感へと変化す るが,在宅生活は断念し施設の継続入所の希望につなが る。しかし,嫁は気持ちの整理ができず,後悔と迷いの 気持ちを持ち続けている傾向にあることが示唆された。

Ⅵ . 本研究の限界と課題

本研究において対象者の続柄に偏りがあったことは, 続柄別の心理の違いについて一般化することに限界をも たらしている。今後は,対象の続柄を同数として続柄別 の心理の経時的変化を明らかにする一方,家族支援の方 策を検討することが課題である。

謝辞

本研究の趣旨を理解し,協力して下さいました対象者 の皆様と介護老人保健施設の職員の方々に深く感謝申し 上げます。なお,本研究は平成 21 年度山梨大学大学院 医学工学総合教育部修士課程の学位論文の一部である。 文献 1) 木村裕美,中村愛子,忽那龍雄(2002)介護老人保健施設入所者 の在宅介護の潜在的問題点.保健の科学,44(12):941-947. 2) 厚生労働省(2009)平成 19 年度 介護サービス施設・事業所調 査結果の概況. 3) 百瀬ちどり(2005)高齢者夫婦世帯の夫を介護する妻の体験─自 宅介護の後に介護老人保健施設を利用した妻の意識の分析─. 介護福祉学,12(1):126-135.

4) Bern-Klug M(2008)The emotional context facing nursing home residents’ families: a call for role reinforcement strategies from nursing homes and the community. Journal

(6)

of the American Medical Directors Association, 9(1):36-44. 5) 井上修一(2008)特別養護老人ホーム入居者家族が抱く迷いへの 支援 施設ケアにおける家族支援の新たな展開をめざして.社 会福祉士,15:110-118. 6) 奥野純子,戸村成男,柳久子(2007)認知症により在宅生活継続 が困難になり老人保健施設に入所した高齢者の身体特性と介護 状況.プライマリ・ケア,30(2):190-196.

7) Butcher HK, Holkup PA, et al.(2001)Thematic analysis of the experience of making a decision to place a family member with Alzheimer’s Disease in a special care unit. Research in Nursing & Health, 24:470-480. 8) 小澤芳子(2006)家族介護者の続柄別にみた介護評価の研究.日 本認知症ケア学会誌,5(1):27-34. 9) 松岡広子(2004)高齢者施設における入所者の生活の受容に関す る質的研究─入所者の安心と不安の分析─.高齢者のケアと行 動科学,9(2):22-30.

10)Tornatore JB, Grant LA(2004)Family caregiver satisfaction with the nursing home after placement of a relative with dementia. Academic Research Library, 59(2):80-88.

参照

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