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岡山県高山市地域からの中新世放散虫化石の産出

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Academic year: 2021

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(1)23. 岡山県高山市地域からの中新世放散虫化石の産出 キーワード:放散虫化石,中新世,岡山県,高山市,備北層群. 竹村厚司*・三宅誠" (平成12年9月5日受理) はじめに 中国地方の中央部には,備北層群(今村はか, 1953) や勝田層群(河合, 1957)と呼ばれる中新統が,基盤岩 上に散在している(第1図).これらの中新統は第一瀬 戸内累層群と呼ばれ,軟体動物化石や底生有孔虫などの 多くの古生物学的研究が行なわれてきた.しかしこれら の地層からは従来,浮遊性徴化石の報告は少なく,特に 珪質微化石については吉本(1979)による津山地域の放 散虫の報告があるのみであった. 最近,これらの中国地方の中新続から,浮遊性徴化石 の報告がなされてきた.山本(1999)やYamamoto and Sato (1999),山本(2000)は,広島県庄原地域や周辺の 備北層群相当層から石灰質ナンノ化石を報告した.また 渡辺はか(1999)は,これまで中国地方の中新統からは 全く報告のなかった珪藻化石を,岡山県の高山市地域と 津山地域から報告している. 岡山県西部の高山市(こうやまいち)地域(第1図) には,吉備高原の基盤岩上に海成の中新統が分布する. 高山市地域では従来,軟体動物化石や底生有孔虫の研究 がなされてきた.しかし渡辺はか(1999)は,この海成 中新統の上部の泥岩層から保存良好な珪藻化石を報告し, また放散虫化石も産出することを報告している.ここで はこれらの放散虫化石について,年代決定に重要な種に 着目して予察的に主な産出種を報告し,その年代や古環 境について考察する.. 高山市地域の地質 岡山県西部,川上郡川上町高山市,およびその西方の 杖立地域には,海成中新統の備北層群が分布している (今村, 1966;第1図).この備北層群は標高500m以上 の吉備高原面上に位置する.本論文で研究を行ったのは, 高山市東方の弥高山周辺である(第2図).本地域では, 億北層群は古生代の砂岩,石灰岩,白亜紀の流紋岩,安 山岩などの基盤岩類をほぼ水平に覆い,弥高山の玄武岩 に覆われている. ・兵庫教育大学自然系 キ*岡山県里庄町立里庄中学校. 第1図.中国地方中央部の中新統の分布と高山市地域. 糸魚川・西川(1976)はこの中新続を,備北層群下部 層及び備北層群上部層に区分した.渡辺はか(1999)に よると(第2, 3図),弥高山の周囲の備北層群下部層 は主に中∼細粒砂岩よりなり,時に礫岩,凝灰岩の薄層 を挟み,層厚は約25mである.その上位に整合的に重 なる備北層群上部層は主に淡褐色∼淡黄色,灰白色の泥 岩よりなり,最下部が淡褐色を示す場合が多く,まれに 極細粒砂岩や凝灰岩を挟む.この泥岩主体の地層の層厚 は最大約15mである.上部層からは,その最下部を除 きほぼ全層準から保存良好な珪藻化石,放散虫,海綿骨 針,王圭質鞭毛藻が産出した. 高山市及び杖立地域からは従来,軟体動物化石や底生 有孔虫化石が報告されているが(矢部・馬淵, 1934 ;糸 魚川・西川1976;野村・猪口, 1992),それらはほと んどが備北層群下部層からのものであった.なお山本 (2000)は高山市地域の中新統を高山市層と名付けてい るが,ここでは便宜上従来の地層名を使用する.山本 (2000)に従うと,糸魚川・西川(1976)の備北層群下部 層は高山市層の中・下部に,備北層群上部層は高山市層 上部のシルト岩にあたる..

(2) 渡辺はか(1999)は,高山市地域の備北層群上部層の 泥岩からの珪藻化石を報告した.この泥岩層の上部から は,数は少ないもののDenticulopsis praelautaを産し, D. lautaは含まれない.また産出するD. praelautaは 原始的な形態を持つため,これらの層準はYanagisawa and Akiba (1998)のD. praelauta帯(NPD3B, 16.315.9Ma)の下部に対比されている.それより下位の層 準は, D. praelautaを含まずActinocyclus ingensを含 んでいるため, Crucidenticula kanayae帯(NPD3A, 16.9-16.3Ma)にあたるとされている. C. kanayaeは非 常に産出が少なく,これらの層準はC. kanayaeのIast common ocurrence (D33, 16.5Ma)より上位の, C.. 第2図.高山市地域のルート及び試料位置図(渡辺ほか, 1999より).国土地理院発行2万5千分の1地形図 「地頭」を使用. A,Bと記した実線は,第3図の 柱状図作成ルートを示す.. kanayae帯(NPD3A)上部にあたる. 以上の結果により,高山市地域の備北層群上部層はC. kanayae帯(NPD3A)上部からD. praelauta帯(NPD 3B)下部に対比されている(第3区l).その下位の備北 層群下部層については年代のデータは得られていない.. AルートBルート. しかし,高山市地域の備北層群は一連の海進による堆積 物であると考えられることから,ほぼ同時期の堆積物で OEfftl. これらの備北層群を,弥高山を形作っている玄武岩が 約50mの層厚で水平に覆っている.この玄武岩は普通輝 石カンラン石アルカリ玄武岩で,吉備高原面上に散在す るアルカリ玄武岩の残丘の1つである(鷹村, 1973). 芋都(1995)は, K-Ar年代測定により吉備高原に分布 する玄武岩の年代を7.4-9.5Maと報告した.吉備高原 に分布する玄武岩の化学組成が類似しており同じ起源マ グマに由来すると考えられること,及び中国地方の新第 三紀玄武岩類が地域によって類似の年代を示すこと(宇 都, 1995)から,弥高山の玄武岩もこの時代(中新世後 期)のものと考えられる.. 試料と研究方法 今回の放散虫研究試料は,渡辺はか(1999)のA, B の2ルートからの6試料を用いた(第2, 3図).試料 はいずれも弥高山周辺の備北層群上部層の泥岩である. 一般に塊状で,淡黄色ないし灰白色を呈する.これらの 泥岩からは放散虫化石がよく産出するが,本研究ではそ のうち産出個体数の比較的多く,検鏡しやすい試料を使. 第3図.高山市地域A, Bルートの地質柱状図(渡辺ほ か, 1999より)と本研究の試料層準.渡辺ほか(1999) による上部層の珪藻化石帯を,各柱状図の横に示す. NPD3A:Crucidenticula kanayae Zone, NPD3B: Denticulopsis praelauta Zone.. 用した.先に述べたように,渡辺はか(1999)はこれらの 泥岩をC. kanayae帯(NPD3A)上部からD. praelauta 帯(NPD3B)下部に対比している. 本研究で用いた試料は,渡辺ほか(1999)のものと同 じである.泥岩試料は50-100g一程度をど-カーに入れ て乾燥させ, 15%の過酸化水素水に浸して,時には加熱 して反応を促進させた. 24時間程度放置して反応させ.

(3) 岡山県高山市地域からの中新世放散虫化石の産出. た後, 250メッシュ(63〃m)の賄いで水洗し,その残 壇にカルゴンの水溶液を加えて加熱し, 10-20分程度 煮沸した.その残壇をもう一度賄いで水洗し,乾燥させ てSakai (1980)の方法にしたがって生物顕微鏡用プレ パラートを作成した(図版1, 13).また一部は乾燥し. -^. も本地域の試料には含まれていなかった(Sakai, 1980 ; 船山, 1988). Sanfilippo et al. (1985)によれば, C. costataは前 期中新世末期から中期中新世初期にかけて比較的短い時 間に産出する化石であるC. costata帯は, C. costata. た残壇から,放散虫を実体顕微鏡下で拾い出し,走査型. の出現からDorcadospyris alataの出現まで,即ちDor-. 電子顕微鏡で観察した.. cadospyris dentataからDorcadospyris alataへの進化. 今回は放散虫殻のカウントはまだ行なっておらず,主. 的移行までの間である(Sanfilippo et al., 1985).こ. にSanfilippo et al. (1985)や船山(1988)などによって 生存期間の決定されている種の有無を確認した.. の帯はSanfilippo and Nigrini (1998)ではRN4帯と され, 17.03-15.68 Maの期間にわたる.しかし,今回 の高山市地域の試料からはD. dentataもD. alataも産 出していないため, Sanfilippo et al. (1985)の化石帯 ではC. costataの生存期間,即ちC. costata帯からD.. 高山市地域の放散虫化石. alata帯下部に対比される.. 今回産出を確認した放散虫化石のリストを第1表に, 写真を図版1に示す.各試料にはこの他に多数の球形や. 一方,船山(1988)は,能登半島珠洲地域で放散虫 化石帯を設定し, C. costata帯をC. costataの出現から. 円盤状のSpumellariaなどを産する(図版1, 13)が, 今回は省略する.. Eucyrtidium asanoiの出現までの間とした.高山市地 域の試料からはE. asanoiは全く産出しなかった.従っ. これらのほとんどの試料にCyrtocapsella tetrapeta (図版1, 9)とCyrtocapsella cornuta (図版1, 8)が 数多く含まれ,他の種は比較的少なかった.これらの. て本地域の放散虫化石は,船山(1988)のC. costata帯 に対比できる. 中部地方のいわゆる第一瀬戸内累層群からは近年,放. 試料の中で, MIZ0-3, MIZ0-5, YE-4, YE-5からは. 散虫化石の報告があるが,そのうち瑞浪層群の生俵累層. Calocycletta costata (図版1, 1-3)が産出した.また. からは多数の放散虫化石が報告されている(Sugiyama and Furutani, 1992 ;杉山, 1998など).生俵累層か. Didymocyrtis tubaria (図版1, 5)が全試料から産出 している.その他の種は試料によって産出の有無が異な るが, Didymocyrtis uiolina (図版1 , 6)やStichocorys. らの放散虫群集もC. costata帯に対比されており,本研 究で報告した放散虫種は全て産出している.. delmontensis (図版1 , 10), Stichocorys wolffii (図 版1, ll), Lychnocanoma elongata (図版1, 12)な ど,全てが中新世の前期から中期にかけての種である.. 高山市地域の備北層群の年代について. しかし,低緯度地域の分帯に用いられているDorcadospyris dentataやD. alataは産出していない.また三陸 沖や能登半島から報告されているEucyrtidium asanoi. ○. ○. ○. ○. ○. 0. ○. 0. る.それによると船山(1988)のC. costata帯は,珪藻 化石帯のCrucidenticula sawamurae帯(NPD2B)最. ○. ○. 上部からDenticulopsis lauta帯(NPD4A)中部にあた る.従ってC. costata帯はC. kanayae帯(NPD3A)及 びD. praelauta帯(NPD3B)をも含むため,高山市地 域の放散虫による対比は珪藻による対比と矛盾しない.. 0. ○. ○. ○. ○. ○. D idy m ocy rtis m a m m ife ra. ○. D I 山・ ba n a. ○. ○. ○. ○ spp.. L y ch n oc a no m a elo n g a 由. S . w o lffii. ○. 0. ○. ○. ○. ○. ○. ○. S tic h o co ry s a rm a ta S . d elm o n te n s is. ○. I 8 S J. ○. ○. E u cy ritid iu m. (1985)のC. costata帯は17.03-15.68 Maの期間にわ たるため(Sanfilippo and Nigrini, 1998; RN4帯), 珪藻化石帯による年代とは整合的である.. 0. C . te trap e ra. ○. spyris alata帯下部に,また能登半島珠洲地域での船山 (1988)のC. costata帯に対比される. Sanfilippo et al.. ○. C y rtoc ap s e lla c o rn u ta. D . v io lm a. E・山^. ○. 寸/j^. ○. C . virg im s. 叫OZIW. C a lo cy cle tta co s ta ta. マOZIW. f-OZHM. 第1表.高山市地域の6試料から産出した主な放散虫種.. 上記のように,高山市地域の放散虫化石は, Sanfilippo et al. (1985)のCalocycletta costata帯からDorcado-. ○. ○ ○. また柳沢(1999b)は能登半島珠洲地域において珪藻 化石層序を検討し,放散虫生層序との対比を行なってい. 伊藤はか(1999)は,富山県八尾地域の古地磁気層序 の再検討を行なっている.それによると,八尾地域の黒 瀬谷累層から東別所累層の大部分はChron C5Brに対比.

(4) 26. 図版l Scale bars: 1-12, 100llm; 13, lmm. 1. Calocycletta costata Riedel. Sample YE-5 2, 3. Caloのicletta costata Riedel. Sample MIZO-5 4. Calocycletta vil-ginis Haeckel. Sample MIZO-5 5. Didymocyrtis tubaria Haeckel. Sample MIZO-5 6. Didymocyrtis violina Haeckel. Sample MIZO-5 7. Theocorys longithorax Petrushevskaya. Sample MIZO-5 8. Cyrtocapsella cornuta Haeckel. Sample MIZO-5 9. Cyrtocapsella tetrapera Haeckel. Sample MIZO-5 10. Stichocorys delmontensis (Campbell and Clark). Sample MIZO-5 ll. Stichocorys wolffu Haeckel. Sample YE-5 12. Lychnocanoma elongata (Vinassa de Regny). Sample YE-5. 13.高山市地域の試料MIZ0-5の放散虫観察用スライド.試料は過酸化水素とカルゴンで処理し, 250 meshで飾っ た残連をスライドグラス上に散布したもの.不定形な黒い不透明の粒子は褐鉄鉱で,他はほとんど放散虫,珪藻, 海綿骨針のみである.放散虫化石では, Cyrtocapsella tetraperaとC. cornutaが多い..

(5) 岡山県高山市地域からの中新世放散虫化石の産出. されている.柳沢(1999a)による八尾地域の珪藻化石 層序では,東別所累層はC. kanayae帯(NPD3A)から D. lauta帯(NPD4A)にあたり,高山市地域の備北層 群上部層もこの東別所累層最下部に対比できる. 従来の珪藻化石層序と古地磁気層序の対比では(Barron and Gladenkov, 1995; Yanagisawa and Akiba, 1998), この層準はChron C5Cnに対比されており,渡辺はか (1999)は高山市地域の備北層群上部層をBlow (1969) の浮遊性有孔虫化石帯のN8帯下半部にあたるとして いる.仮にChron C5Brの場合にはN8帯上部に対 比され(Berggren et al., 1995),少しだけ年代が若返 ることになる.しかしいずれにせよ,備北層群上部層は Blow (1969)のN8帯に対比でき,従来考えられてい たN9もしくはNIO帯という対比よりも古くなる.. 備北層群堆積時の盲環境 糸魚川・西川(1976)は杖立地域,及び高山市地域の 主に備北層群下部層の軟体動物化石群集を報告し,矢部・ 馬淵(1934)が報告したMiogypsina, Operculinaと合 わせ,それらの古環境について考察している.それによ ると,杖立地域の化石群集は汽水性の内湾的環境が卓越 していたとし,高山市地域では外洋水の影響ある開いた 浅海の環境を推定している.そしてこの両者ははぼ同時 期としているが,最近の詳細な微化石層序や古地磁気層 序の年代から考えると,両者が同時期かどうかは不明で ある. 野村・猪口(1992)は杖立,高山市両地域において, 底生有孔虫化石を報告した.底生有孔虫群集も備北層群 下部層については,ほぼ軟体動物化石と同じ環境を示し, 杖立地域は内湾的環境,高山市地域では暖流系の外洋水 の影響の強い浅海沿岸環境であったことが明らか,にされ ている.. 27. る.本研究では放散虫穀の計数はまだ行なっていず,予 察的な考察ではあるが,これらの種は全てDSDPや ODPなどの深海底の試料から多産しているものである. 逆に放散虫化石は内湾や沿岸性の浅海堆積物などからは 少ないか,ほとんど産出しない. 現在の例では,瀬戸内海の入口にある大阪湾には,そ の海底下に大阪層群が厚く分布し,問氷期の高海水準時 に堆積した十数枚の海成粘土層が挟まれる(Ikebe et a 1., 1970).これらの海成粘土層から産する微化石につい ては,関西国際空港における地盤調査で検討されている (中世古はか, 1984). 泉州沖の関西国際空港の海底下の海成粘土層からは, 海榛の微化石として石灰質ナンノ化石,珪藻,有孔虫, 員形虫,渦鞭毛藻などと共に,放散虫化石も産出する (西村・山内, 1984).しかし産出量は他の微化石に比 較して少なく,また産出する層準も海進のピークに限ら れている.産出した種数も少なく,検討された全ての 試料にわたって全部で約30種に過ぎない.種の構成も Pseudocubus属が多いなど,外洋の群集とはかなり異なっ Msza このように,高山市地域で産出した放散虫化石からは, 備北層群上部層の堆積環境としてかなり外洋的な環境を 想定することが必要になる.現に一部の泥岩試料では (図版1, 13),放散虫観察用プレパラートに63um以 上の砕屑性粒子がほとんど認められず,半遠洋的環境に 近いと思われるものもある.また堆積深度の推定は困難 であるが,恐らく野村・猪口(1992)による底生有孔虫 の層準よりはさらに深いと考えるのが妥当であろう.こ のような根拠から,高山市地域の備北層群上部層堆積時 (約16 Ma)には,現在の中国地方中央部には広い海 域が広がっていたと推定できる.. 上記の古環境は備北層群下部層についてのものである. 従来,中国地方からの放散虫化石の産出は,高山市地 域以外では津山地域の勝田層群高倉層から知られている のみである(吉本, 1979).津山地域の放散虫化石の産 出量などは明らかではないが,高山市地域でもよく産す. が,一方,野村・猪口(1992)は同時に,弥高山の麓の 泥岩1試料の有孔虫化石群集をも報告している.この群 集には大陸棚から大陸斜面の古水深を示す種を多数含ん. delmontensisなどが報告されている.また我々の調査 では,広島県三次地域からも同様の放散虫化石が得られ. るCyrtocapsella tetraperaやC. cornuta, Stichocorys. 群上部層の最下部にあたると考えられる.従って野村・. ている.渡辺ほか(1999)によれば津山の高倉層は高山 市の備北層群上部層の年代とほぼ同じと見てよい.従っ て16Ma頃には,中国地方のかなりの地域が海域に覆わ れていたことになる.. 猪口(1992)の報告した有孔虫化石産出層準より上の塊 状泥岩から,珪藻,放散虫,海綿骨針,珪質鞭毛藻化石 など珪質微化石が多産していることになる.このことは 上部層の泥岩の大部分は,より深い海で堆積したことを 示唆する. 本研究で報告した放散虫化石は全て外洋性のものであ. 同様の考察は,既に多井(1957)によって行なわれて いる.多井(1957)は庄原,新見,津山,奈良などの地 域で,備北層群上部層に相当する泥岩層から浮遊性有孔 虫が多産することを兄いだした.そして大阪湾や別府湾, 松永湾などの瀬戸内海の底質と比較し,現在の瀬戸内海 には浮遊性有孔虫が非常に少ないか,ほとんど見られな. でいるが,より深海を示すUuigerina属が少ないこと から,中部大陸棚の古水深が想定されている. この泥岩試料は柱状図から判断すると,我々の備北層.

(6) 28. いことから,中新世の海進のピ-ク時には中国地方の大 部分が海域に覆われた古地理図を発表している.この考 えは我々の考える古環境にほぼ等しい. 従来,中国地方中央部に分布する備北層群とその相当 層は,第一瀬戸内累層群と呼ばれ(笠間・藤田, 1957), 現在の瀬戸内海のような細長い多島海が中Eg地方から中 部地方にかけて存在したとされてきた(池辺, 1957). しかしこのような内湾や浅海の環境が想定されるのは, 備北層群下部層に相当する地層の古環境であり,上部層 の泥岩・頁岩層には当てはまらない. 山本(2000)は三次・庄原地域,東条・哲西地域,高 山市地域,多望地域などの石灰質ナンノ化石層序やスト ロンチウム同位体層序などを元に,中国地方中部の中新 続の詳細な層序対比を行ない,中新世の古地理について 議論を行っている.それによると,中国地方中部では1 6.9 Ma頃に海が北西から侵入しはじめ,備北層群上 部層相当の16.6から16.3 Ma頃に急速に海が拡大し たとしている.またこの当時の海域は常に北西方向に開 いていたことが示唆されており,従来の第一瀬戸内海と は異なる古地理が提案されている. 上記のように高山市地域の備北層群上部層は瀬戸内海 のような内海に堆積した地層ではなく,外洋水の影響下 にあるかなり広域の海域に堆積した地層である.また山 本(2000)が指摘しているように,備北層群下部層相当 の浅海成層も同時に堆積したという証拠はなく,北西側 から南東側-海域が広がっていったものかもしれない. 従って第一瀬戸内海が存在して備北層群が堆積したとす る従来の中新世古地理は,再検討する必要がある. また高山市地域の備北層群は顕著な海進を示すが,上 部の泥岩層は恐らく現在の大陸棚よりも深い海域であっ たと思われる.さらにこの中新統はその後の準平原面の 形成に伴って削剥され,現在残っている地層はそのうち の一部にすぎないと患われる.従ってこのような大規模 な海進をもたらした原因は,ユースタティックな海水準 変動のみでは説明できず,中国地方の中央部全域もしく はさらに広域にわたる,急激な沈降運動によるものであ ろう.. viohna, Stichocorys delmontensis, S. wolffii, Lychnocanoma elongataなど中新世の前期から中期 にかけての種が含まれる. 3.この放散虫群集はSanfilippo et al. (1985)の化石 帯ではC. costata帯からD. alata帯下部に,またEucyrtidium asanoiが産出しないことから,船山(1988) のC. costata帯に対比される. 4.この放散虫年代は,渡辺ほか(1999)によるC. kanayae 帯(NPD3A)上部からD. praelauta帯(NPD3B)下 部とする珪藻化石帯の対比とは矛盾せず,北陸地方の 八尾地域や珠洲地域の結果と一致する. 5.高山市地域の備北層群上部層の堆積場としては,か なり広域に広がった深い海が想定され,従来の第一瀬 戸内海では説明がむずかしい.当時の古地理としては, 多井(1957)による復元がより近いと思われる.また このような顕著な海進をもたらした原因は,基盤の急 速な沈降運動であると考えられる.. 謝辞 本研究を進めるにあたり,兵庫教育大学の西村年晴教 授,竹村静夫博士には,現地での討論も含め,全般にご 協力・ご援助を得た.兵庫教育大学大学院の別所孝範氏, 田口貴清氏,阪本龍馬氏,高梁市立高梁東中学校の野崎 誠二氏には,高山市地域の調査・試料採取についてご 助力を得た.大阪市立大学のLLl本裕雄博士には,現地調 査を含め種々のご援助を得た.さらに地質調査所の渡辺 真人氏には珪藻化石を鑑定していただいた.以上の方々 に対し厚く感謝する次第である.. 文献. Barron, J. A. and Gladenkov, A. Y., 1995, Early Miocene to Pleistocene diatom bistratigraphy of Leg 145. In Rea, D. K., Basov, I. A., Scholl, D. W. and Allan, J. F. eds., Proc. ODP, Sci. Results, College Station, TX (Ocean Dri lling. =.ォra. Program), 145, 3-19.. Berggren, W. A., Kent, D. V., Swisher, C. C. Ill. 1.岡山県西部高山市地域の弥高山周辺に分布する備北 層群上部層からは,ほぼ全層準にわたって保存良好な 放散虫化石を産する.これらの放散虫化石のうち年代 決定に重要な種の産出を報告した.. and Aubry, M. -P., 1995, A reviced Cenozoic. 2.高山市地域の放散虫化石群集には, Cyrtocapsella tetrapera, C. cornutaが多く含まれ,このほかに Calocycletta costataやDidymocyrtis tubaria, D.. and global stratigraphic correlation, SEPM Spec.. geochronology and chronostratigraphy. In Berggren, W. A., Kent, D. V., Aubry, M.-P., and Hardenbol, J., eds., Geochronology, time scales Pub., 54, 129-212. Blow, W. H., 1969, Late Middle Eocene to Recent.

(7) 岡山県高山市地域からの中新世放散虫化石の産出 planktonic foraminiferal biostratigraphy. In Bronnimann, P. and Renz, H. H., eds., Proceed-. 29. Sanfilippo, A., Westberg-Smith, M. J. and Riedel, W. R., 1985, Cenozoic Radiolaria. In Bolli, H.. ings of the First International Conference onP. M., Saunders, J. B., Perch-Nielsen, K., Eds.,. lanktomc Micro fossils, 1. 199-422, Netherlands.. Plankton Stratigraphy, Cambridge Univ. Press,. 船山政昭, 1988,能登半島珠洲地域の新第三系の岩相お よび放散虫化石層序.東北大学地質古生物研邦報, no. 91, 15-41.. 池辺展生, 1957,日本の新生代の構成盆地一特に中新世 の積成区-.新生代の研究, 24-25, 1-10.. Cambridge, UK, 631-712.. 杉山和弘, 1998,中部中新統瑞浪層群生俵原累層産の Nassellaria目放散虫化石.第6回放散虫研究集会 論文集,大阪微化石研究会誌,特別号, ll, 227-250.. Ikebe, N., Iwatsu, J. and Takenaka, J., 1970, Qu-. Sugiyama K. and Furutani, H., 1992, Middle Miocene radiolarians from the Oidawara Formation,. aternary geology of Osaka with special reference to land subsidence. Jour. Geosci., Osaka City. Mizunami Group, Gifu Prefecture, central Japan. Bull. Mizunami Fossil Mus., 19, 199-213.. Univっ13, 39-9 今村外治, 1966,岡山県津高町日応寺よりMiogypsina kotoi HANZAWAの発見と岡山市周辺のいわゆ る第三系の地質時代.岡山大学理学部研究報告, 1, 1-10.. 今村外治・小島丈児・梅垣嘉治, 1953,上野・船佐・三 次・三良坂・庄原・勝光山 地質巡検案内書,広島大学理学部地学教室50p. 伊藤康人・柳沢幸夫・渡辺真人, 1999,八尾地域に分布 する新第三系の古地磁気/珪藻化石層序.地調月報, 50, 215-223.. 糸魚川淳二・西川功, 1976,岡山-広島県下の古瀬戸 内申新統の2, 3の問題.瑞浪市化石博物館研究報 告, 3, 127-149. 笠間太郎・藤田和夫, 1957,日本の新生代の堆積区とそ の変遷(D一瀬戸内地質区の特性と変遷1.新生代の研 究, 24-25, ll-19. 河合正虎, 1957, 5万分の1地質図「津山東部」および 間説明書.地質調査所, 63p. 中世古幸次郎・西村明子・山内守明・菅野耕三・竹村厚 司, 1984,微化石総合調査.関西国際空港地盤地質 調査,災害科学研究所報告, 7-12. 西村明子・山内守明, 1984,放散虫化石調査.関西国際 空港地盤地質調査,災害科学研究所報告, 69-76. 野村律夫・猪口靖, 1992,岡山県高山市付近の中新世 底生有孔虫化石.山陰地域研究(自然環境), 8, 1iW Sakai, T., 1980, Radiolarians from Sites 434, 435 and 436, Northwest Pacific, Leg 56, Deep Sea Drilling Project. Init. Kept., Deep Sea Drilling Project, 56, 57, Part 2, 695-733, U. S. Government Printing Office, Washington. Sanfilippo, A. and Nignni, C。 1998, Code numbers for Cenozoic low latitude radiolarian biostratigraphic zones and GPTS conversion tables. Marine Micropaleontology, 33, 109-156.. 多井義郎, 1957,日本の新生代の堆積区とその変遷(2) 一山陰地域∴新生代の研究, 24-25, 20-27. 鷹村権, 1973,中国地方新生代玄武岩類の岩石学的並 びに岩石化学的研究.広島大学地学研幸乱18, 1-165. 芋都浩三, 1995,火山と年代測定: K-Ar, 40Ar/39Ar 年代測定の現状と将来.火山, 40, S27-S46. 矢部長克・馬淵精一, 1934,備中成羽地方地質に関する 二,三の観察.地質学雑誌, 41, 161-168. 山本裕雄, 1999,広島県庄原市,西城川河床における中 新統備北層群の岩相と石灰質ナンノ化石.地球科学, 53, 202-216.. Yamamoto, Y. and Sato, T., 1999. Miocene calcareous nannnofossils of the Bihoku Group in the Shobara area, Hiroshima Prefecture, Southwest Japan. Jour. Geosci., Osaka City Umv., 42, 55-67.. 山本裕雄, 2000,中国地方中部における海成第三系の層 序対比と中新世古地理.大阪市立大学博士論文, 99 pp.. 柳沢幸夫, 1999a,富山県八尾地域の下部一中部中新統 の珪藻化石層序.地調月報, 50, 139-165. 柳沢幸夫, 1999b,能登半島珠洲地域の中新統の珪藻化 石層序.地調月報, 50, 167-213. Yanagisawa, Y. and Akiba, F., 1998, Refined Neogene diatom biostratigraphy for the north west Pacific around Japan, with an mtroduction of code numbers for selected diatom biohorizons. Jour. Geol. Soc. Japan, 104, 395-414.. 吉本裕一, 1979,岡山県津山盆地.土隆一編,日本の新 第三系の生層序及び年代層序に関する基本資料, 113114.. 渡辺真人・三宅誠・野崎誠二・山本裕雄・竹村厚司・ 西村年晴, 1999,岡山県高山市地域の備北層群,お よび津山地域勝田層群から産出した中新世珪藻化石. 地質経, 105, 116-121..

(8) 30. Preliminary report on the occurrence of Miocene radiolanans from Koyamaichi area, Okayama Prefecture, Southwest Japan Key words : Bihoku Group, radiolana, Miocene, KOyamaichi area, Okayama Prefecture TAKEMURA Atsushi and MIYAKE Makoto Abstract. WelLpreserved and abundant Miocene radiolarians were found from the Bihoku Group in Koyamaichi area, Okayama Prefecture. These radiolarians include Early to Middle Miocene zone-marker species and are correlated with Calocycletta costata Zone of Funayama (1988). This zone assignment of the Bihoku Group is concordant with Diatom bio-zones. The occurrence of such radiolarians indicate that the Bihoku Group was deposited in the open-sea environment at about 16 Ma. Because planktonic micro fossils including radiolarians, planktonic forammifers and calcareous nannofossils commonly occur in the I〕ihoku Group, most of Chugoku District should have been immersed under the sea at that time.. ・ Geoscience Institute, Hyogo University of Teacher Education, Yashiro-cho, Kat0-gun, Hyogo 673-1494, Japan H. Satosho. Junior. Highschool,. Satosho-cho,. Asakuchi一gun,. Okayama. 719-0301,. Japan..

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