• 検索結果がありません。

ラグビーフットボール競技におけるELVs2008の実践的検証

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ラグビーフットボール競技におけるELVs2008の実践的検証"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)ラグビーフットボール競技における ELVs2008 の実践的検証 村 岡 陽 平 *,田 中 弘 之 * * (平成 21 年 6 月 18 日受付,平成 21 年 12 月 4 日受理). Practical Verification of ELVs2008 in a Rugby Football Game MURAOKA Yohei *, TANAKA Hiroyuki ** Study about the effect of ELVs2008 in a rugby football game was practiced based on situation of getting score or specific change of game substance. In analysis 1, the change of getting or losing score and the number of Try or unsuccessful Try in each group of high school, college students and adults were examined. Nothing significantly different could be seen under any situation despite ELVs2008. In analysis 2, the change of number of Tackle was examined taking the high school students as an object. Significant increase could be seen, especially conspicuous in the position of FR, HB and TB. With all results, ELVs2008 may not affect score but make the game lively because of active movement of ball or men, Tackle rally and tug-of-war. About half of accidents are caused by Tackle, therefore personal improvement of Tackle technique and body strength is necessary as a safety measure. Key Words:rugby football,law of the game,ELVs2008,tackle skill. Ⅰ はじめに. Ⅱ 方 法. 2008 年 8 月 1 日,国際ラグビーフットボール委員会. 分析1. (International Rugby board: 以 下 IRB と 略 ) の 通 達 に よ り,. ELVs2008 導入前後における全国大会及びそれと同等. 13 項 目 で 構 成 さ れ る 実 験 的 競 技 規 側 (Experimental Law. 以上の水準で開催されたゲームについて,選手の構成要. Variations 2008 : 以下 ELVs2008 と略 ) が世界的規模で導入. 素から,高校生,大学生及び社会人の 3 領域に大別し,. され,1 年間の実験期間を経て再検討する計画が発表さ. 得点,失点,トライ数,被トライ数を比較分析した。. れた。導入の目的は,ラグビーフットボール競技をプレ. 分析の対象としたゲーム数は,高校生 98 ゲーム,大. ーヤーやレフリーだけではなく観衆をも含めたすべての. 学生 352 ゲーム,社会人 674 ゲームの合計 1124 ゲームで. 人たちにとって,より簡単で魅力あるものにすることに. あり,これらのゲームスコアは,関西ラグビーフットボ. ある. 1)2). ール協会( http://www.rugby-kansai.or.jp/),関東ラグビー. 。. これまでに類を見ないほどの大幅で画期的な変更を. フ ッ ト ボ ー ル 協 会( http://www.rugby.or.jp/) 及 び 日 本 ラ. 伴った ELVs2008 の内容に関して,ラグビーシーズン開. グビーフットボール協会( http://www.rugby-japan.jp/)の. 幕前から,『実質的な競技継続時間が増大して攻撃側が. 各ウェブページに掲載された競技記録から抽出した。. 有利になるとともに,トライ数の増加が期待される』. 3)4). と推察されていた。. 分析2. 本研究では,ELVs2008 がラグビーフットボール競技. ELVs2008 導入前後の全国高等学校ラグビーフットボ. のゲームに及ぼす影響について,導入前後における比較. ール選手権大会及び同大会の大阪府予選決勝の計 12 ゲ. 検証から,ゲーム様相の変化とその要因を明らかにし,. ームについて,各チーム,ポジションごとのタックル. 2009 年度以降の本格的なルール改正への移行を念頭に. 数及びラインアウト数の推移を比較分析した。なお,. 置いた実践的な指導における有用な資料を模索すること. ELVs2008 の詳細は,2008 年 8 月に日本ラグビーフットボ. を目的とした。. ール協会を通じて各都道府県のラグビーフットボール協. * 美馬市立穴吹小学校(Mima ** 鳴門教育大学(Naruto. Municipal Anabuki Elementary School). University of Education) ― 167 ―.

(2) 会に配布された IRB の原典である「実験的競技規則ガイ 1). ド」 を基礎資料とし,その概要について表 1 に示した。. Ⅲ 結 果 図 1 に高校生,大学生,社会人の 3 群における ELVs. 得られたデータの集計値は平均値±標準偏差で表し,. 2008 導入前後の勝利チームの平均得点の推移を示した。. 平均値の差の有意性の検定には,t-test あるいは Two-way. いずれの群においても有意な差異は認められなかった。. Repeated-Measures ANOVA を用い, 必要に応じて, 多重 比較には Scheffe の方法を採用した。分割表分析におけ る度数の分布の検定にはカイ二乗検定を用いた。なお, 有意性の水準は 5 %未満とした。 表1 ELVs2008の概要. 図1 勝利チームの得点の推移. 図 2 に 高 校 生, 大 学 生, 社 会 人 の 3 群 に お け る E LVs2008 導入前後の勝利チームの平均トライ数の推移 を示した。いずれの群においても有意な差異は認められ なかった。. 図2 勝利チームのトライ数の推移. ― 168 ―.

(3) 図 3 に高校生,大学生,社会人の 3 群における ELVs2008. 図 5 に高校生のゲームにおける ELVs2008 導入前後の. 導入前後の勝利チームの平均失点の推移を示した。いず. 1 ゲーム当たりの総タックル数の平均値の推移を示し た。導入後で,総タックル数が 1 %水準で有意に増加し. れの群においても有意な差異は認められなかった。. ていることが認められた。. 図5 総タックル数の推移. 図3 勝利チームの失点の推移. 表 2 に高校生のゲームにおける ELVs2008 導入前後の 図 4 に高校生,大学生,社会人の 3 群における ELVs2008. 各カテゴリーポジション別及び合計におけるタックル度. 導入前後の勝利チームの平均被トライ数の推移を示し. 数の分割表を示した。タックル度数に 5 %水準で有意な. た。いずれの群においても有意な差異は認められなかっ. 差異が認められた。. た。 表2 各カテゴリーポジション別のタックル度数. 図 6 に高校生のゲームにおける ELVs2008 導入前後の 各ポジション別タックル数の比 較を示した。両プロップ ( 1,3), フ ッ カ ー( 2), ス ク ラ ム ハ ー フ( 9), ア ウ ト サイドセンター( 13),フルバック( 15)において,導 入後にタックル数が 5 %水準で有意に増加していること が認められた。 図4 勝利チームの被トライ数の推移. 図 7 に高校生のゲームにおける ELVs2008 導入前後の 各カテゴリーポジション別のタックル数の比較を示し た。フロントロー,ハーフバックス,バックスリーにお いて,導入後のタックル数が 5 %水準で有意に増加して いることが認められた。 ― 169 ―.

(4) 内容に大きな影響を与えると推定した第 3 項「プレーヤ ーは,モールを引き倒して防御することができる」,第 4 項「自陣 22 m区域内にボールを戻し,そのボールをキ ックして直接タッチになった場合,地域獲得は認められ ない」及び第 11 項「スクラム時のオフサイドラインを スクラムの最後尾から 5 m後方に設定する」の3項目に 焦点を絞って分析を進めた。 IRB が ELVs2008 を 公 表 し た 当 初 か ら, シ ー ズ ン イ ン に至るまで,一貫して,マスコミやラグビー関係者は「ト ライショーがはじまる」等と形容して,トライ数が増加 し,ゲーム得点が増大する 6) と予想していた。その根拠 は,上述のように,第 3 項からモールの継続によるゲー ム時間の空費が抑制され,第 4 項からゲームを寸断する ための意図的なラインアウトが回避され,第 11 項から タックルラインの撤退とゲインラインの前進による攻撃 側有利のゲーム展開が予想されたためである。実際に, 黒岩ら 7) は,トライ起点のマイボールラインアウトから. 図6 各ポジション別タックル数の比較. のモール形成は 55%から 12%に減少したと報告している。 しかし,図 1 ~ 4 に示した結果から明らかなように, 選手の競技水準の如何に関係なく一様に,トライ数にも ゲーム得点にも有意な変化が認められなかった。 これは,当初の,競技時間の実質的延長がある 3)4) との 予測には誤認があった可能性を示唆するものであり,し かもゲーム中のプレー頻度の高いスクラム場面でのアタ ック側に有利な状況が生じていてもそれがトライという 成果に結実しない要因は,ディフェンス局面の変容に帰 結すると類推し,タックルに関する分析を行うこととし た。 分析対象として,高校生,大学生及び社会人のゲーム における比較から,最もトライ数が多く,被トライ数の 最も少なかった高校生のゲームを選定することとした。 高校生のゲームを分析対象として抽出する主な意図 は,以下の 2 点である。 1)大学生及び社会人のゲームより 1 試合あたり の競技時間が前後半の合計で 20 分間( 25%時間). 図7 各カテゴリーポジション別 タックル数の比較. 短く,想定されていたような競技時間の実質的延 長 3)4) の影響度が比較的少ないと考えられる。 2)大学生及び社会人のゲームより 1 ゲームあたり の競技時間が短縮されているにもかかわらず,図 1 及び図 3 に示したように得点差が顕著であるこ とから,攻撃側に有利 3)4)6) とされる様相の検証が. Ⅳ 考 察. 比較的容易であると考えられる。. ラグビーフットボール競技において,ルール改正やル. 上 記 の 事 由 か ら 高 校 生 の ゲ ー ム を 分 析 し た 結 果,. ール改正のための試験的実施は,これまでにも多数行わ. ELVs2008 導入後の 1 ゲームあたりの総タックル数で有. れており,それらの施行がゲーム内容やトライ数及び得. 意な増加が認められた。各ポジション別の比較において. 5). 点に大きな影響を及ぼすことが指摘されている 。. も大半が増加傾向であり,特にフロントロー,ハーフバ. 本研究においても,ゲームの勝敗を左右する要因の解. ックス,バックスリーで有意に増加していることが認め. 明を企図して,ELVs2008 の 13 項目に関して,殊に競技. られた。. ― 170 ―.

(5) これらの要因として,モールの引き倒しが認められる. 高校生チームにおけるゲームの解析結果であることか. ようになったこと( ELVs2008 第 3 項)が,モールから. ら,競 技時間が長く,僅差のゲームを繰り広げる大学生. ラックへの単純な移行を促進してラック数の増加を招来. 及び社会人チームにとっては,タックルをはじめとする. し,モール構成の中心的ポジションにあることから本来. コンタクトプレーの増加によって,さらなる生態負担度. タックルをする機会が比較的少なかったと考えられるフ. の増大が要求される競技規則の変更である可能性が示唆. ロントローのタックル数を増加させたものと考えられ. される。. る。. ラインアウト数の比較では,導入前後に有意な差異が. また,自陣 22m区域内からのキックによって生起するラ. 認められなかったことから,期待されていた 6) ようなク. インアウトにおけるラインオブタッチの位置改正( ELV s. イックスローイング( ELVs2008 第 5 項)が促進されて. 2008 第 4 項)がノータッチキックの増加を促進させ,そ. おらず,競技継続時間の空費の減少には繋がっていない. の際に,ディフェンスラインの先頭となるバックスリー. と考えられる。. のタックル数を増加させたと考えられる。. 総括として,ELVs2008 の導入によるラグビーフット. 他方,スクラムにおけるオフサイドラインの後退(ELVs. ボール競技の新たなる方略は,「格闘技」的色彩からの. 2008 第 11 項)により,1 次攻撃でのポイント形成地点が. 脱却を企図して,球がよく動き,選手がよく動く「球技」. 導入前よりもタッチライン寄りに移行したことや,スク. 的要素を推進するものであると考えられた。従って,各. ラムハーフのオフサイドラインが特定されたこと( ELVs. チームの競技水準に応じた指導者や選手の実践学的視座. 2008 第 12 項)により,導入前にはフォワードの第 3 列. からのさらなる検証が今年度以降のルール改正を踏まえ. 目のプレーヤーがタックルを行っていた局面が,その外. たゲームの戦術・戦略構築及び安全対策の確立に重要で. 側に位置するハーフバックスが担当する局面へと移り変. あると推察された。. わりタックル数を増加させたと考えられる。 以上のことから,ELVs2008 導入は,当初予想された. Ⅴ まとめ. ようなラグビーフットボール競技のゲームにおける得. ELVs2008 の導入がラグビーフットボール競技に及ぼ. 点状況の変化に影響を与えていないことが明らかとな. す影響について,ゲーム得点の状況やゲーム内容の特徴. り,この要因として,攻撃に対応する守備機会の数であ. 的変化の観点から比較検討を行った。 . るタックル数の増加が関連していると推察された。. 分析 1 では,高校生,大学生及び社会人チームにおけ. また,1 ゲームあたり 40 回以上の平均タックル数の増. るゲーム得点,失点,トライ数,被トライ数の推移を解. 加が見られることから,導入前に比べ双方の攻防がより. 析した。. 激しくなっており,ラグビーフットボールのゲームが IRB. 分析 2 では,高校生チームを対象に,ゲーム中のタッ. の企図 1) 通りに,ダイナミックに促進されていると考えら. クル数を比較した。. れる。. 上記の分析から,以下のような知見を得た。. 一方で,ラグビーフットボール競技における傷害発生. 1 分析 1 の結果から,いずれの群においても導入前後. の半数以上がタックル場面に起きている 8)9)10) ことから,. の推移において,得点,失点,トライ数,被トライ. 安全対策として,これまで以上に個々のタックル技術の. 数のすべての項目に有意な差異は認められなかった。. 向上や身体強化に取り組む必要性があると推察されると. 2 分析 2 の結果から,タックル数の比較において,1. ともに,チーム作りの観点からも個々のプレーヤーの特. ゲーム当たりの総タックル数で有意な増加が認めら. 性に応じたポジション配置の熟考が求められる。殊に,. れた。また,各ポジション別の比較において,特に. ELVs2008 の導入によって,ポジション特性として元来. フロントロー,ハーフバックス,バックスリーで有. タックルの機会が少なかったプロップやフッカー,スク. 意な増加が認められた。. ラムを起点とする攻撃局面で一次ディフェンス対応の必. 以上のような結果から,ELVs2008 の導入は,ラグビ. 要度が増大したスクラムハーフやスタンドオフ,オープ. ーフットボールのゲーム得点状況の変化に影響を与えな. ン攻撃からの近接場面におけるタックルだけではなくキ. いことが示唆された。また,1 ゲーム中のタックル数の. ック処理場面から加速度を増して突進してくるランプレ. 増加から,球がよく動き,人がよく動き,タックルの応. ーヤーへのタックルを余儀なくされるウィングやフルバ. 酬があって,攻防が激しくなっていることが推察され. ックなど,導入前には,タックル頻度が比較的少なかっ. た。ラグビーフットボールにおける傷害発生の半数以上. たポジションに対するタックルスキル向上のための対策. がタックル場面に起因する 8)9)10) ことから,安全対策とし. が重要な課題であろう。. て,従来,タックル頻度の少なかったポジションの選手. さらに,このような知見は,競技時間が 25%短く,. において,ディフェンス様相の変化を充分に理解し,個々. しかも得失点差の比較的大きな一方的試合が展開された. のさらなるタックル技術の向上や身体強化に取り組む必. ― 171 ―.

(6) 要性があると考えられた。 Ⅵ 参考文献 1)国際ラグビーフットボール委員会「実験的競技規則 ガイド」1-16,2008 2) 日 本 ラ グ ビ ー フ ッ ト ボ ー ル 協 会 「 競 技 規 則20082009」1-183,2008 3)「ELVs百科/これはいい。あれはダメが見えた。」 『ラグビーマガジン』ベースボールマガジン社,8 月 号,54-55,2008 4)「ELVsルーリングを読み解く」『ラグビーマガジ ン』ベースボールマガジン社,10月号,59-60,2008 5)田中弘之,梶村敏明,佐々木弘幸,村上智計,山中 一剛「ラグビーフットボール競技におけるゲーム得点 の推移とルール改正」『鳴門教育大学実技教育研究』 14,45-49,2004 6)「The TRUTH of ELVs.」『ラグビーマガジン』ベー スボールマガジン社,11月号,59-60,2008 7)黒岩純,荒川崇,伊藤寿彦,筒井健裕,楚南兼律, 松尾勝博,小粥智浩,西機 真,上野裕一「ELVがゲー ムに及ぼす影響 ~流通経済大学ラグビー部2008年度 公式ゲームを比較して~」『流通経済大学スポーツ健 康科学部紀要』 1(2),19-27,2009 8)小森田敏,河野一郎,斉藤武利,古川拓生,小柳好 生,江田昌祐「ラグビーの安全対策に関する研究〈タ ックルによる傷害の発生状況について〉」『体力科 学』41(6)788,1992 9)久富 沖,大畠 襄,白旗 敏克,河野 照茂,遠藤 陽 一,佐藤 美弥子,木村 有香子「スポーツ外来部にお ける過去5年間のラグビー外傷・障害」『体力科学』 41(6)789,1992 10)日本ラグビーフットボール協会「ラグビー外傷・障 害ハンドブック(2005年改訂版)」1-55,2005. ― 172 ―.

(7)

参照

関連したドキュメント

In particular, building on results of Kifer 8 and Kallsen and K ¨uhn 6, we showed that the study of an arbitrage price of a defaultable game option can be reduced to the study of

Definition 1 Given two piles, A and B, where #A ≤ #B and the number of to- kens in the respective pile is counted before the previous player’s move, then, if the previous player

Figure 6: To the left, the upper P-positions of Maharaja Nim in columns 8 to 12 have been computed, beginning with position (8, 13), and a perfect sector has been detected.. The

Eskandani, “Stability of a mixed additive and cubic functional equation in quasi- Banach spaces,” Journal of Mathematical Analysis and Applications, vol.. Eshaghi Gordji, “Stability

In this section, we use the basis b a of the Z -module Z I of all light patterns to derive a normal form for the equivalence classes of AB[I] , where we call two classes equivalent

At Geneva, he protested that those who had criticized the theory of collectives for excluding some sequences were now criticizing it because it did not exclude enough sequences

In this paper we give the Nim value analysis of this game and show its relationship with Beatty’s Theorem.. The game is a one-pile counter pickup game for which the maximum number

Let X be a smooth projective variety defined over an algebraically closed field k of positive characteristic.. By our assumption the image of f contains