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都市法制の環境法制への応接に関する一断面 : ドイツ建設法典と侵害規則(Eingriffsregelung)

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(1)都市法制の環境法制への応接に関する一断面   ・≡ドイツ建設法典と侵害規制弐Ein9㎡fsr鰭elu皿g).7r已・. 高橋寿一. 1J.問題の所在  わが国の都市法制で環境保護に対して」どれほどの配慮が払われているであろ うか。たとえば,都市計画法についで見ても,風致地区(8条1項7号,9条鍵号) や緑地保全地区(8条1項112号)などの制度があ.り1,まte l・ 2eOOSIIの都市計. 画法改正で都市計画基準を定めた13;条の末尾に1「自然的環境の整備又は保:全. に配慮しなければならない」という文言が追加されたが,全体として,局所的、 ないしは微温的な印象を免れない。わが国の都市計画法制が,経済成長促進を 申心的課題としてきており,住宅政策・住宅法制との有機的連携が従来から今 日までin貫して見られないことは,これまでにも度々指摘されてきているが, 環境政策・環境法制との関係についても同じことを指摘することができるiP。.  これに対して,ドイッに眼を転じで見ると状況は大きく異なるR’ドイツでは. 周知のように,1970年代以降公法を中心としながら環境保護に関する個別法 を逐次制定してきてお1り,一個別法群だけでも分厚い層を形成しているのである が,19901年代以降は,このような環境法制を都市計画法制i2?の中に受容続合し1 複雑な法律群を簡易化することに立法者の関心が注がれた:6:それらは、ドイツ 1.

(2) 載浜国際経済法学第16巷第2号{2008年2月). では具体的には建設法典の度重なる改正という現象となって現れているeたと えば,都市建設管理計画(以下,「BLプラン」と称する3りの衡量手続の中で,. 自然保護法上の侵害規制(後述)との調整が図られるようになったこと(1997. 年)や環境審査をBLプラン策定の中で行うべく義務づけた1と(2004年)な どはその典型例である。 e .’  J三 、 ・,1−・…∵∵㌔  上記の概要は,別稿ですでに分析’しておいたのでその詳細は省略する7b{ ’n,. 後者の2004年の改正は,主として2001年のEU指令に起因してなされた改正 であるから.ドイツのみならずすべてのEU諸国がそれぞれの国内法を改正す ることで対応した。他方,前者の1997年改正で主要な争点の一つとなった侵 害規制は.そもそも1976年の連邦自然保護法で採用され,ユ993年(侵害規調. ・のBLプランへの取り込み)に続き,1997年には他のEU諸国には見られない. 独自の制度として変化を遂げてきたものである健設法典1a条3項.135a∼ 135c条等として新設〉。                一.  以下本稿ではtドイッの都市法制と環境法制とが対立J一衝突する場面におい て両者の有機的調整ない『し蓮携がいかに図られたかという問題を,..t連邦自然保. 護法と建設法典の相克の舞台となった侵害規制を申心として分析・検討してい きたい。上述のように.ドイツでは1993’年に一括法として「投資容易化1三佳 宅建設地法」s}(二以下,93年法と称する)が制定され,この申で建設法典と連. 藁封熱録護法などに関する重要ts改正が行われた6また,1997年には建設法 典(以下,{}7年法と称する)s).2002年には連邦自然保護法(以下,2002年. 法と称する)7}についてそれぞれ重要な改蓬がなさ抗ている。これらの改正法 の分霧を遜じて.都市法制にとっていわば外的存在であっte環境規制が都市法. 制善二受容・内部北されていく避程の一端を実証したい。r    I ㍉  以下.本章で拭.侵害競制の概要とその特徴について分析・整理.し(第2 欝妻.か寿る構造を持っ尭擾害親灘が都市計画法制と接合されるに至っだ1993 年の蓬孜正の過程き内容を分蕎した後(第3簸),その接合関孫が一層密接に なった雀鱒7隼および2602年の法改歪の特雛と意義について分析する(欝4籔)。 2.

(3)                   都市法制の環境法制への応接に開する…断面. 最後に,それらを踏まえて,侵害規制の運用状況をエコ・コント(後述)を中 心として検討したい(第5節)。.  2.侵害規制の概要 く1)目的  』     ・ 一一.  侵害規制は,連邦レヴェルでの初めての自然保護法制である,連邦自然保護 法(1976年)a)において,当初から採用されていた(8条)。   ’  1 一本法によると,自然や景観への侵害とはt土地の形態や利用を変更』し,’かつ,. それによりてt”自然の営み(NatufhaUshalt)め給付能力や景観が著しぐまた は継続的に侵害されうるものを指ず(8条1項)。’その代表例が,・都市開発で. あることは言うまでもない。・ L∴ .          t  侵害規制を導入しだ契機ぱ.(i)1開発健築行為も含む。以下同じ)によつ て侵害された自然や景観を修復・形成し,1それを将来に向けて維持」保全する こと,および(ii)’開発主体に(i)の義務を課すこと1を通じて不要不急な開発 を抑制し,土地の浪費を回避すること,1である。要するに,:真に必要な開発は. 促進するが.これに伴嘩ずる自然・景観への燐を修復形成すること樋じ て,開発と環境保護芭両立を図ろうとするものである。すなわち,開発行為に. よって自然や景観が失われる程度が少なければ少ないほど修復・形成される 自然’景観の程度や量も少ない量ないし面積で足りるので,開発主体にとって はiこの制度が「土地節約」のインセシテイ’プとして機能すること4なる9)。. /. 3.

(4) 横浜国際経済法学第16巻第2号(200呂年2月).  (2)内容.  次に,侵害規制の内容を,簡単に見ておこう。 . .. ①回避義務:原因者(開発主体)は自然や景観への回避可能な侵害を禁止さ. れる(8条2項1文)。侵害が生じないようにするためにはT当該開発を実施 しなければよいのであるが,本条で禁止されるのは,開発行為そのものの回避 ではなく.侵害の回避である。すなわち,ここでは,当該開発行為にとって不 要な侵害は回避されなければならないと言うことを意味する1°}。.  ②調整義務:回避できない侵書は.一定期聞内に何らかの措置によって調整 (ausgleichen)される(8条2項1文)。調整とは,侵害に対して,自然の営み や景観を修復ないしは新たに形成することを目的として何らかの措置が実施さ. れることを言い,この措置を調整措置と称する。たとえばt施設建設によっ て森林が伐採される場合に施設周辺に同種同面積の植林を行なうことなどであ. る。すなわち,ここでは,被侵害地と調整措置との間に物i理的機能的関連性 (sachlich−funktioneller’ZusaMmenhang)一が認められるのであり,かかる関連性. が認められる場合に調整措置が利用される1%そして,実施された調整措置は,. 侵害された自然や景観を修復する機能を有するので;調整措置は長期にわたつ て維持:保全することが要求される。すなわち,ζのこ1とは,調整用地につい て長期間にわたって開発が禁止されることを意味する(州によPて異なり1,「永 久」とするものや「30年間」とするものなどがある〕。.  ③衡量義務:回避も調整もできない侵害については,自然保護および景観保 全の要請と比較衡量される。比較衡量は,当該開発行為に適用される個別の法 律(連邦道路法,建設法典,イミッシオン保謹法等)で必要とされる行政庁の. 許認可,計画確定その他各種の決定の判断を行うに際して行われる(8条2項 2文)。比較衡量の結果,自然保護等の利益が優越する場合には,この侵害行 為は禁止される(同条3項)。.  ④代替措置:衡量の結果,侵害が許容される場合には,原因者が代替措置 (ErsatZmassnalumen)を講じるべき旨を州法で定めることができる(同条9項)。 4.

(5)                   都市法制の環境法制への応接に関する一断面. 代替措置とは,侵害された自然の営みが,修復できない場合に代替的になされ る措置である。そこでは,’ ゥ然の営みは「等価値で」(ii・gleichwertiger「VVeise). 代替され,∵景観は新たに形成されることになる。Lたとえば、先の例でいえぱ施. 設周辺から離れた場所での植林行為等である。ここでも被侵害地と代替措置と. の間の物理的機能的関連性は要求されるが1被侵害地と調整措置の関係ほど の密接な対応関係は必要ではないva)。.代替措置の内容あ決定は,州法に委ね られているので(同条4項):調整措置あような完全補償(Vbllkompensatiσn) は必要ではなく,、また金銭給付も可能であるがゴ代替用地が創出された場合に. は,調整措置と同様に長期にわたって開発が禁止される場合が多い1%  ⑤したがって,以上のプロセスと比較衡量との関係についでは,1:①および ②は「計画指針」(PlantingsleitsatZ)と称されていて,比較衡量には服さ・な’. い厳格な原則であるロC他方で③にお1いてば一r自然保護および景観保全の要 請」は比較衡量の一つの要素となるが,他の要素に対して相対的優位性(絶対 的優位性ではない)が付与されるとされている。かかる要請?E.「最適化要請」 (Optimier皿gsgebot)という。. 3:鴎規制と麺法制ζ確結一19♀3年蓮邦自然保群改正  (1)改正の背景 ’一 .、’ r   .    +      一  連邦自然保護法上の上記の侵害規制は,建藻案に対して建築許可が付与され るに際して適用される。すなわち,行政行為がなされることを前提とした規定 であts o,他方で, BLプランなどの計画裁量は行政行為ではないため・BL’プラ ンの策定に際しては侵害規制は適用されないことになる15)・ ・.  ところが,道路や公共施設を対象とする部門計画に,よる開発より・もBLプラ. ンに基づく開発の比重が高まるにつれて,BLプランについても上記の審査を 行なうべき旨の要求が高まってきたため,BLプランの策定と施設の建築許可 という,2つの段階のいずれかで(あるいは両者で)上記の審査を行なうべき                                   5.

(6) 横浜国際経済法学第16巻第2号〈2008年2月). か否かが争われることとなり,州毎に異なった規定が設けられていた。このこ とが計画の実現を困難にするか少なくとも長期化する要因となりうることは明. らかであろうeかくして.連邦政府は1993年に自然保護法を改正し,8a条か ら8c条を新設することによって,一侵害規制8− BLプランとの相互の関係の明                          ■  の 確化を図』たのである。そこでは侵害規制をBLプラン策定の時点にお’いて,. しかもその時点であみ適用することとされた。これは,侵害規制が具体i}!な建. 築段階ではなくそれ以前の(土地利用に関する)計画策定段階でなされるとい う,極めて注目すべき改正であるのだが,他面で,従来州によっては計画策定 と建築許可という2つの段階で実施していた調整をユ段階に簡略化ずるという 意味をも有しており,後者の点からは,「本改正は,(国際競争力を強化し,・新. 規労働市場を創出するためには投資を促進する必要があ肥そのためにはt.−L手. 続の長期化など時として投資にと己ての阻害要因となる計画策定手続や許可手 続の規制を緩和し,手続の迅速化を図らなければならない〉という当時の政策 目的を達成するための手段として位置付けられていたことになる四。.  (2)改正の内容. 第一にぽ正法によれぱ批プラゆ策揖額襯ま興廃止『寧 て自然および景観への侵害が予想される場合には,一上 で,自然保護や景観保全の利益について、建設’典の衡量手・において決定さ. れなければならない(8a条1項1文)。  これについては,下記の点が重要である。. 冊(i)還害規制が,建設法典の衡量手続において一すなわち,BLプランの決 定プロセスにおいて一適用されること力朔確に規定されたこどである。蓬の基 本的見地はt2000年以降にEUレヴェルでも本格化する・−r計画アセス”の思考. 方法に極めて馴染むものである。                ”  ({i)衡量手続において侵害規制が適用される場合には,8条2項1文が準用 されることが明記されている点である。このことは,いかなる意味を有す渇か。 6.

(7)                   都市法制の環境法制への応接に関する一断面. 一方では,衡量手続においてはあらゆる要素が総合的に衡量され比較されるの であるから,侵害規制における上記の回避義務や調整義務についても,その中 でかかる義務の履行の要否が市町村の裁量に委ねられる,と1いう解釈が生じう. る。このことは,回避・調整措置を考慮することなく開発を容認する’BLプラ ンが策定される可能性が生ずることを意味し,自然保誰法の見地からは看過し がたい結果を惹起しうる。他方で,8条2項1文を準用するということは;回避・. 調整措置の実施は.衡量の外にあり,常に衡量の前提とされ,また,自然保護 や景観保全の利益は他の利益よりも優先的に醤酌すべきという解釈も可能であ る。ただし,この点については,立法当初から議論が分かれており,立法者意 思も必ずしも明確ではない17)。.1.:一 ’  一 ,’1・1−’..ニ ーz.  第二に,調整t代替措置が当該開発地以外の土地上でも実施される途が拓か れたことである。すなわち,澗整措置については,【.従来は被侵害地の敷地の内 側か,外側であっても隣接ないしは近隣…の土地上で1実施することが必要であっ. た。ところが,93年法では,調整措置に関するこの空間的関連性が緩められ,. 同←のBプヲンの内部であれば,離れた土地であoても構わないこととされ た(8a条ユ項4文)。この拡大は当然に代替措置にも及ぶ。したがって∴この 改正は,調整・代替措置の実施が容易になることを意味する。.  第三にTJ調ng ;一代替措置の実施主体が明記され,開発主体(事業主体)に実. 施義務が負わされた(8a条3項1、文)。ただし.同一のBプランの内部の離れ. た土地が調整・代替用地である場合(8a条1項4文)には,市町村が実施する ものとされたく8a条3項2文)(この点は,後述(3)(b)参照)。なお、調整・. 代替用地の利用権原であるが,当該用地上では半永久的に開発が禁止されるの であるから(ちなみに,その旨は土地登記簿に登録され公示される),‘当該土 地の所有権を地主に残したまま,物権的用益権を設定してもらうなどの手法は, 当該土地所有者が私人の場合には容易ではないIs)。それ故,事業者ないしは市 町村としては,v、調整・代替用地を自ら購入する場合が実際上は多いようである。. そして,購入した土地の上で植林やビオトー一プの創出などの調整’・代替措置を.                                   7.

(8)  横浜国際経済法学第16巻第2号(2008年2月). 実施するe      ・                                 4  (3)調整・代替措置と市町村  ところで,’〈開発行為をするためには,開発によって侵害される自然や景観 を回復するための措置を講ぜよ〉という要請は,開発者にとっては明らか}こ負. 担となる。このことはi侵害規定(およびそのBLプラン衡量手続への適用) によって,開発行為の進捗1に支障をもたらす可能性が生ずることを意味する。 上記のように市町村の関与は,この臓路を打開するためにとられた手法である。. 興味深い点は,市町村の関与のさせ方を仔細に見ると,それらに類似する制度 がすでに建設法典に定められ実務でも利用されていた,という事実である。以 下;この点について検討して行こう。なお,以下の規定の基本的骨格はすでに. 93年法改正で見られ,それは97年法改正で完成するが,全体的構造をより明                              9 瞭に示すために以下では,97年法の下での内容を前提として検討して行く。,.  (a)責任主体      ”          ri  i’.  当時の連邦自然保護法8条2項1文.(現19条2項1文)では,「侵害の原 堕[,自然・景観古の回避可能な侵害を行わない義務を負う,.回避不可能な. 侵害については,自然保護および景観保全の目標の実現にとって必要な場合 には,一定の期間内に自然保護および景観保全の措置を講じることによって その侵害を調整する義務を負う」と規定されており,原因者である開発主体 (開発業者,開発担当行政庁など)が,これらめ義務を負担する(原因者主義 (Verursacherpri izip))。要するに,(自然・景観破壊というマイナスの効果を生. じさせた者が,そのマイナス効果を減殺する義務を法的に負担する>rという発 想である。この原因者主義という考え方は,ドイツのみならずわが国の環境法 制においても広く見られるところである。また,かかる論理は,受益者負担主 義といわば裏表の関係にあるともいえる。すなわち,マイナスが生じた場合に. それを惹き起こした者が回復費用を負担するのであるならば逆にプラスの効 果(地区道路や地区住民のための公園の設置など)が生じた場合には,その受 8.

(9)                   都市法制の環境法制への応接に閥する一一断面. 益を受ける者が,プラスの効果を惹き起こすのに生じた費用(道路・公園の設 置費用等)を負担すべきである,という論理である。’ドイーッ建設法典では.宅. 地開発の場合には,Bプラン上で指定された地区施設が整備されていない限り.. 建築許可は下りないのであるが,・他方で,かかる地区施設の整備費用はt最終 的には土地所有者である住民がそのほとんどを負担する} 19) 。tZこの考え方は,.(宅. 地周り施設についでは地区住民が専ら受益をするのであるから,’t設置費用は受T. 益をする(はずの)住民が負担すべきである〉という.ものであり,先の原因者. 主義の裏返しの論理であるともいえよう。実際,立法者は,調整〔代替措置の 実施を,’地区施設整備負担金の制度に類比させて構想していたpo)。以下,実施 主体にっいでみてみよう。   ’“   ’   tt L ・    r  、 一(b)実施主体    .,一       .  −r. .ト   L.一,、.  まず,回避措置については,原因者(=開発者)が実施主体となるのが最も 適切であろう。  一    ・ , 一 , ㎡・ ・ r     −一.  次に,調整・代替措置については,原因者がその実施について主体となるべ. きである。しかし,連邦自然保護法は,93年法改正で,責任主体と実施主体 を分離し(8a条3項),この見地は,1997・年建設法典改正にも受け継がれてい. る(135a条2項1文)tiすなわち,(i)調整・代替措置が被侵害地上で実施さ れる場合には,「実施主体=原因者」であるのだが.(1この点では市町村が実施. 義務を負う地区施設整備とは異なる),(ii)調整・代替措置が当該Bブラシ内. のその他の土地上で実施されたり,他のBプラン内の土地上で実施されたp する場合(後者は1997年改正で追加された)には,「実施主体≠原因者」’とな り一T「実施主イ奉需市町村」とされる、r(前述)21)。、   ’1“、     一・.  興味深いのはr」この後者の点である。なぜ(ii)の場合には実施主体が原因 者ではなく,.市町村と1されるのか。この問題ぱ,建設法典における地区施設整 備の場合と>Eラレルに考えると容易に理解できる。地区施設整備の場合には,. 実施(=整備)主体と費用負担主体とが分離してい℃前者については市町村 に実施義務が負わされており、(123条1項),それは,’(一定の水準を有する地.                                  9.

(10)  横浜国際経済法学第16巻第2号(2008年2月). 区施設を迅速に整備すること〉という理由に基づく。これは,上述のように地. 区施設整備が建築許可の要件となっているドイヅでは,極めて重要な要請で あって,これが満たされない限りt建築はできない。そこで,市町村に地区施 設整備の案施義務を負わせることを通じて,上記の要請を迅速に満たし,・建築 許可の迅速な付与を意図したのである。     ”          V r’.  調整・代替措置に関する上記の点も,これと同様の発想に立っているといえ よう。すなわち,被侵害地上での調整措置ならば,原因者が行うことは十分に 可能であるが,他方,被侵害地とは別の土地を原因者である開発業者が調達し て,調整・代替措置を実施することは容易なことではない。.他方で.これがな. されない限り,開発業者の開発案は,衡量過程を通過するのが通常は困難であ. るし,仮に衡量を通過したとしても、かかるBプランには上級行政庁の認可健 設法典10条2項)が下りない場合が多いからza),この措置の実施は,開発を 進める上では,不可欠の要件となる。そこで,上記の(ii)の場合には,市町 村がこの措置を実施するものと定めること,によって,調整・代替措置の迅速な 実施ないし実現を図ったのである。           .   .・  (c)費用負担者臼     一.  したがって,費用負担者は明確である。すなわち,原因者が費用を負担す るのであるから,上記(i)の場合は開発業者である。また,(iiプの場合にも.. 市町村が調整・代替措置を実施するとしても,費用は当然に開発業者が負うこ とになる。すなわち,建設法典(1997年法)は,下記の通り規定する。  「市町村は,調整措置のために支出’した費用め填補めために,これに必要な. 用地の取得費用も含めてt支出費用を徴収することがでぎる。」(135a条3項2 文。200a条で代替措置にも準用) − r  、  ,∵’  この論理も地区施設整備負担金と同様である(127条1項・3項)、。ただし,. 地区施設整備費用については,市町村が最低でも10%を負担しなければならず (129条1項),この点は異なる。地区施設といえども一一一 rc公共の用に供される. 部分があるからであb,この限りでは受益者負担主義が貫徹されているわけで io.

(11) 都市法制の環境法制への応接に閥する;・−va面. はない。             f、.−   L ・     一:  “”、  ”1r.  (d)費用負担の範囲. 屡哩用鯛の鱒であ⊇継煕1警法)!こ占蝉(i)騨の 取得費用(i35・条3壇2文),および(ii),措置嘩施、9 e・st・il949)}畷す. る費用(同条同項3文)である。すなわち,施設の維持・管理費用にbいては, この規定を根拠としては原因者から徴収することができない。この理由も,地 区施設整備負担金の論理と同様に考えれば説明が容易である。地区施設整備負 担金が徴収される場合も,’その範囲は,用地の取得・整地や施設の設置費用に 限定されており,:維持・管i理費用は除外されていた(128条’1’項):e,これはtr(B. プランで指定された建物を迅速に建設するための一つの要件としての地区施設 整備である以上.そのためには,その建設に関わる初期費用:(用地の取得・整 地や施設の設置費用など)』のみを回収できれば足り,維持.・1管理から生じる費. 用は建設法典の負担金の範囲には含める必要はない〉という論理であった。.  かかる論理は,調整・代替措置の費用負担の範囲を考える上で極めて適合的 である。すなわちsH、調整・代替措置の実施がt開発主体の開発案を実施するた めの要件なのであるから、それをクリアするためには∴措置の実施に関わる初 期費用(用地の取得および措置の実施に要する費用)のみを回収できればとり あえずは足り,維持・管理に要する費用は別途考えればよい,rということにな る23}m)。 ・ ’      “.1  、 ’     ・− v  このよう.に,調整・’代替措置の考え方は,地区施設整備負担金制度のそれに. 類似している点が多い。しかもi別稿ですでに考察したように,.地区施設整備 負担金制度は,実務においても非常に有効に機能してきた田)6調整・代替措置. も最終的にはBプランの内容を実現するために必要であるのであロて,いこの 意味で共通の制度目的を有している。そして,地区施設整備負担金制度が実務 上も有効}三機能してきた経緯に鑑みれば立法者が侵害規制の実効性を高める ために地区施設整備負担金制度の発想を利用しようと考えたとしても不思議で はない20}。ここに自然保護法上の要請から発生した法原則力㍉都市計画法制に.                                   11.

(12) 横浜国際経済法学第16巻第2号(2008年2月). 巧みに包摂されている一りの例を見tllすことができる。.  4.侵害規制の都市計画法制による受容一1997年建設法典改正・    2002年連邦自然保護法改正  (1)1997年法改正の背景               ,」,−FI  1997年にほ建設法典が,2002年には連邦自然保護法が,再び改正されたがi 1997年改正について1本稿の問題関心との関係で特徴を述べれば (a)93年の. 連邦自然保護法改正で新設された建設法典との関係を規定する8a∼8c条の規 制をより実効性を発揮しうるように緩和し,(b)・それらを建設法典に移行する. こと健設法典ユa条,9条など関係条文に必要な改正を追加すると共に,第1 編第7章「自然保護のための諸措置」(135a条∼135c条)として新設)iにあら. た。まず(b)から見ていこうロt ’     t 、㌔     一  (b)の改1[Eの理由ぱ,(i)1994年に基本法20a条に環境保護に関する規定(「国. 家は,将来世代に対する責任においでも,…(中略)…自然的生存の基礎を保 護する」)が憲法上の目標どして掲げられたことを受けて,BLプラン策定にお ける市町村による比較衡量プロセスにおいて環境保護の有する重要性を明確に することt(ii)自然保誰法上の侵害規制が都市計画にとっての外在的要素では. なく,都市計画の1つの構成要素であることを明示すること、という点である x7)。侵書規制がBLプランの衡量プロセスの要素となることはすでに93年法に おいて明らかであったことを考えると,この改正は単に法形式の再編に過ぎず,. 実質的な意味を有しないようにも思われる○しかしながら,この改正に対して は,一 ge rp連合/緑の党は,本改正は環境を都市開発に従属させることを意味 するどして激しく批判を加えた剖。すなわち,(’t’)侵害規制の解釈および執. 行に関する管轄がBLプランとめ関係では建設省の専属的管轄になっでしまい, 環境省の意向が軽視されることになりやすいこと,(ロ)・ BLプランの衡量プta. セスでは現実には資本の圧力で環境上の利益が軽視される場合が多いこと等か.

(13) ’.                   都市法制の環境法制への応接に閲する一断面. ら,開発優先の結論が導かれやすい,ということである。  . 、、.  ㈲の改正の理由は,開発主体にとって調整・代替用地の確保は93年改正 法によって1もなお容易ではなかったことにある。93年法では,この険路を克 服するために一定の要件の下で市町村による調整・代替措置の実施を定めたの. であるが(8a条3項2文),開発業者による開発の意図が明らかにな?た時点 以降に,市町村がかかる措置を実施しようとしても,用地の選定二,取得から措 置の実施までを迅速に行うことは市町村とて容易ではない。しかも,一前述した. ように,.市町村が策定した開発行為に関するBプランを上級行政庁の認可を得 るために提出しても,調整・代替用地の取得が確実である一旨の証明書の添付が. ない限り1上級行政庁が認可を与えない場合が多いようである。かく1して,調 整・代替用地を確保できないが故に,Bプランの策定を中断せざる1をえなくなっ たり,、、計画策定そのものを放棄するなどの現象が各地で生じ,真に必要な開発. までもが遅延するようになって行った。また他方では,開発を進めようとする. あまりに,比較衡量プロセスを十分に行わなかoたり、調整措置に際して必要 とされる完全補償原則を満たさない事例もしばしば見られたようである”)。こ. のように,r方での開発行為の遅延,他方での調整・代替措置の不十分な実施 という閉塞した状況を打破するために行われたのが,8a∼8c条の改正である6. とりわけ∴輔との酬で本改正鮪する聾な麟は峰害行為と纏・:t£ 一 替措置の実施との空間的時間的閲連性を切断した点にある。この点を項を改め て詳述しよう。、        “ 一一    一  =   ’二1−v.  (2)、改正の内容    .     v L      、    _ 1上記に対応1し(,改正の内容を多少詳細に述べれば下記の通りであるe.  第=に,93年法で8a条から8c条が新設された際の議論でも述べたように, 侵害規制の内容(前記①から③の基本原則)がBLプランの衡量プロセスにとっ て計画指針や最適化要請であるのかそれとも単なる’衡量要素であるかという 問題は;97年法では,回避,調整措置の実施も比較衡量に服することとされ、                                   13.

(14)  横浜図際経済法学第16巻第2号(2008年2月). また,BLプランでの調整用地の指定は代替措置をも含むことになり(1a条3項,. 200a条),連邦自然保護法における比較衡量とはその位置づけが明確に変更さ れたs・)。この結果,建設法典によれば自然・景観保護の利益と他の利益との 比較衡量の結果,十分な回避・調整・代替措置がなされていなくても,計画案 が許容される場合が生じうることになる31}。   一  第二に,J前述したように,才侵害行為と調整・代替措置の実施との空間的時間. 的関連性を切断したことである。すなわち,従来は,当該開発行為に具体的に 対応する(zuordnen)調整・代替措置を個々的に指定した上で調整・代替措置. を実施することが制度上要求されていたのであるが,97年改正によって,上 記の空間的時間的閲連性が完全に不要となり,一当該侵害行為とは無関係に,・調. 整・代替措置を予め準備しておき,後に開発行為が具体的に必要となった時点 で,すでに従前に実施していた調整・代替措置をこの開発行為に関連づけて利. 用することが可能とされたのである。       ’−V     l’.  ζの点については多少詳述しておこう。1993年め連邦自然保護法の改正に おいては,個々Q侵害行為に対して調整・代替用地が個別的・同時的に指定さ. れることが原則とさ、れていたが:定の例外が設けられていた。たとえば前 述めように,同一のBプラン内であれば被侵害地とは別の場所での調整・代替. 措置の実施が認められていたし(8a条1項4文),都市建設上または自然保護 上の理由から必要な場合には侵害行為(開発行為)・.に先立って調整・代替措置. を実施することも可能であった(8a条3項3文)。かかる制度は,実務には肯 定的に受け入れられたようである。ちなみに,ベルリン自由大学教授である Schaferが実施したアンケート調査によると,市町村のみならず開発業者の多 くはこの制度を受容しており,また,本制度に対してなされた要望としては,くi). 調整・代替措置と被侵害地との関連性を切断すること;’聞田の点とも関わっ て,調整・代替措置の実施される用地の選定に際してはFプラン上であ「自然・. 景観保全地域」の指定(5条2頂10項)を活用すること,、という2点を挙げ ている聞。,1997年の建設法典改正は,このような要望をも背景としてなされ 14.

(15)                   ’都市法制の環境法制への応接に関する一断面. たものであって,上記の例外を以下のようにさらに拡大した。・   1.rr  (イ)侵害行為に対応する(zuordnen)調整r代替用地の指定範囲.を拡大し,. ,当該開発行為の対象地を区域内に含む同r.Biラン内の他の土地以外にも,当. 該Bプランとは異なるBプラン内の土地をも調整・代替措置の対象地とした(9 条1a項)(なおt’前述3(3)(b)参照)。:    L  ;    11’.  (ロ)調整・.代替措置のなされる時点をさらに繰り上げて,r侵害行為の前の みならず,侵害行為との対応ないし関連付け(ZUordnung),がなされる前であっ ても,その実施を可能としたことである1(1・35a条2項2文)・33]。一これによって,. 調整代替措置は,具体的侵害(開発)行為との関連付けを前提とすることな、く,. それ以前の任意の時点でその実施が可能とされた。.  、  ..・. ,.  上記の両者が同時に機能することによって,空間的および時間的関連性が切 断され,調整・代替措置(とりわけ代替措置)tについては,’一当該侵害行為とは. 空間的にも時間的にも全く関連性のない地点および時点において実施すること. ができるようになり,調整・代替措置の実施が93年法におけるよりも遥かに 容易になった。 . ’   ∵  1−』‘ 、      . 1  第……三に.第二点の論理的帰結として,調整措置ど代替措置の差異は著しく相. 対化さtz,同質花されることになる♂97年の建設法典改正法では,.す、でに調 整用地の指定が代替措置をも含みう1るこど(200a楽)1は前述したが∴i 2002’年. に行われた連邦自然保護法の改正が重要である。この改正では,回避義務に関 する規定は旧法と同一であるものの.調整・代替措置については・「原因者は1. 自然保護および景観保全上の措置によロて回避不可能な侵害を優先的に調整し (調整措置),またはその他の方法で補償しなければならない(代替措置)1’ど. 定め1代替措置に調整措置に次ぐ位置づけを認めている(19条2項1文)bそ して,’2(,2)rで前述した③の衡量義務については,回避・調整・代替措置が. 不可能な場合に初めて行われる旨が定められた(19条.3項1文)。すなわちt. 2(2).で前述した④の代替措置が従来は衡量の後始末的処理に用いられて いたのを改めて,回避・調整措置と同様に衡量の前段階に位置づけられた卿。.                                  15.

(16)  横浜国際経済法学第16巻第2号(2008年2.月〕. 換言すれば代替措置がなされれば衡量手続を経なくても,連邦自然保護法 との関係では当該侵害行為は許容されることとなったのである。.  上述の改正経過からも明らかなように,1997年法および2002年法改正にお 一いて侵害規制について行われた改正は,93年法の下でなお自然・景観保全と開 発との調整が進まず,とりわけ開発の進展に大きな支障を来たしていた状況{こ. 対して,侵害行為と調整措置との空間的時間的デカップリングを図り,代替措. 置に対して調整措置に比肩する地位を与えることによって,開発計画の迅速 かつ円滑な実現を意図したものであったs5)。1997年改正に対して,90年連合 /緑の党が激しく批判,を加えたのも,このような状況に鑑みれば批判の是非は ともあれ十分に理解できるところ1である。 .    t.  (3)空間的時間的デカップリングと都市法制            .  さて,それではかかる改正内容に対して,都市法制はどのような対応をLた のであろうか。’この問題を,とりわけ空間的時間的デカップリングを素材とし て本稿の問題関心との関係で検討すると,下記の諸点が重要である。一.  第一に,被侵害地どは別の地点や時期に調整・代替用地が確保される場 合には,かかる調整・代替用地はいかなる基準で選定されるか。この点は, Schaferの実施した前述の調査で市町村の93年法への要望としてFプランの活 用が説かれていたことが重要である。L元来都市計画の将来像が描かれるFプラ ンの指定項目の中には,自然・景観保全の観点からの地域指定も含まれている. ので,この地域指定を侵害規制を契機としてBプランに落として現実化して行 こうとする流れである(なお,下記の第二参照)。Fプランによる指定の際には;. 景観計画(Landschaftsplan)上の指定や景観保全に関する事前調査の結果が勘 酌されることが多い36)。景観計画とは,原則的には市町村(場合によつては郡) によって策定される連邦自然保護法上の計画である。 ;iこれとBLプランとは由. 来が異なるため,両者は論理的には別個の法体系に属する別個の概念なのであ. るが,実際には,景観計画をFプランの中に組み入れて1Fプランを策定する  ユ6.

(17)                   ・都市法制の環境法制への応接に閲する一断面. 州も多い(バイエルン,バーデン=ビュルテンベルグ,ライランド=プファル ッなど)3刊。かかる作業を通じて,調整・代替用地の選定に際してt一自然保護. 官庁の意向が勘酌されることになる。L   v』 、 ..     ’・  第二に,調整・代替用地にもBプランが策定される場合が多い。’被侵害地 には開発・建築行為が行われるのであるから,[−Bプランが策定されるのは当然 なのであるが(この場合のBプランを「侵害Bプラン(EingrifiiSLBebauungsplan)」. と称ずる場合もある),開発ではなく,自然’一景観の維持・保全を目的どする場. 合にも;Bプランが用いちれるのである(この場合のBプランを「調整Bプ ラン(Ausgleichs」BebauUngsplan)」と称する場合もある)se}。 Bプランは←r旦. 策定されれぼ実際上は4aSO年闇は継続するので∴調整・代替措置の効果を持 続させたい場合には;Bプランを利用することは有効である。また,1・Bプラン. の利用はそれに留まらない意味を有している。すなわち,Bプランを策定すれ ば建設法典に定める高権的手法を用いることが可能となるので,:1たとえば;調. 整・代替用地予定地の地権者の中に市町村への売却を拒否している地権者がい る場合には,この者の土地.もBプランに含めてこれを調整・代替用地として指. 定することによbて,市町村が後に先買権や場合によ日ては収用権を行使する ことが可能となる細。すなわち,調整・代替用地の確保が都市計画上の手法に・ よoて容易になる。”1.}∵』 1㌦…、∵    1  ”’L ’ −1_1・一,、. 第三}こ,調整・代替用地の確保の手段としては,1下記の点も重要である。、す なわち,一一ドイヅ土地法を理解する上で,筆者が以前より強調していた点は,’ド. イヅでは従来より公有地が多くド宅地開発の際にも市町村ないしは第三セク ターが土地を中間取得するr1いわゆる’「土地貯蔵政策」(Bodenbevor白t血亘Spo litik)が比較的広範に実施されており,このことが,適切な価格水準での宅地の. 安定的供給につながっている.という点であった4・)。このことは,ドイシめ市 町村は従前から,長期的にも短期的にも積極的に土地を取得して,それを宅地開 発の際に有効に利用する,、という土地政策を採ってきたからなのであるが411,. かかる動向を自然保護法制の侵害規制で利用したのが,二上記の空間的時間的デ.                                  17.

(18)  横浜国際経済法学第16巻第2号(2008年2月). カップリンングなのであρた。換言すれぱ従来主として都市開発の円滑な遂 行のために進められてきた公有化政策が,自然保護法制の上記の陸路を打開す るために転用されたとも言うことができよう41〕。このように,』自然保護法制上. の要請についてそれを都市建設法制の論理に包摂することで実現する.という手 法は,}上記の3.(3)で述べた問題の克服の仕方と共通する側面がある。.  もとより,かかる公有化がドイツのすべての市町村において採用されていた わけではなく,公有地の少ない市町村もかなりの割合に達すると思われる,4% かかる市町村にとっては,今回の空間的時間的デカップリングの導入は,公益 地の多い市町村ほどには大きな意味を有しないであろう。しかし,他方で土地 公有化ないし土地貯蔵政策を地道に進めてきた市町村も多いのであって、農林. 地や原野などの土地をすでに相当量保有している市町村にとoては,空間的時 間的デカップリングの採用によってヤ開発と自然景観の保全との調和という目 的の達成がより容易になったことは明白であろう。    一.  このよ.うな空聞的時間的デカップリングは,Fプラン上で環境」景観保全地. 域として指定された地域内の土地を市町村が先行的に取得し,その土地上で環 境保全措置を実施することによって,一方では保全すべき土地を保全し、’L他方. でそれを調整・代替用地としながら後に生じる開発の必要性に適宜か口柔軟に. 対応することを可能とする。すなわち,先行的な土地取得およびそこでの環境 保全措置の実施は,開発に伴い将来いずれかの時点で必要とされる調整・代替 措置の「貯金」とも言える。そこで,このシステムを,「i環境口座一(エコ・コ ント)」(Oko・Konto)と称したり,「土地プ・一ル」(Flachenpool)と称したりす. る場合がある似下.本稿では,以下便宜上「エコ・コント」と称する)。.  なお,市町村による土地取得の際には,任意取得の他にも都市建設契約や都 市新開発事業,また,これらの手法においても適宜施行される土地区画整理事 業が用いられる。これらの内,都市建設契約においては,市町村が土地所有者 との間の契約によって,土地を提供してもらう44)。また,都市新開発事業につ. いては,新開発地区内の土地が市町村によって全面取得されるので,調整・代 18.

(19)                   都市法制の環境法制への応接に閲する一断面. 替用地の確保は比較的容易である45)。ちなみに,土地区画整理事業については,. 建設法典の1997年改正によって,予め控除される減歩用地として,公共用地 などの他に新たに調整・代≡替用地が加えられることとなった(55条2項2文)。.  5.調整・代替措置(とりわけエコ・コント)の実施状況一  近年,調整・代替措置の実施状況が明らかになりつつあるが,その一端を見 ておこう。実務家と研究者で構成された研究グループが,ドイツ全国のエコ・. コントの実施主体630の組織(市町村が多いが,それ以外にも州が出資した第 三セクターや自然保護団体なども含まれる)について実施したアンケート調査tL. およびその中でもとりわけ重要と思われる10の団体・組織を抽出して個別に 実施レたヒアリング調査の結果が2005年に発表された46)。エコ・コントの調 査と一しては,ドイツにおける初めての大規模な調査であるe以下,本調査結:果 によりながら検討する。    :         ,   」‘,1 rlL.  まず,表1は,実施主体が調整・代替措置を実施する際の土地利用権原の種 類1を問うた結果であるL(複数回答)。すなわち,市町村などの実施主体が調整・. 代替措置を実施する際には,,土地についていかなる権原を取得レているのであ ろ・うカ㌔              ,           ‘.  本表によると,回答組織の92.2%が自己所有地上で調整・代替措置を実施し ており・,地役権によるものが23.9%,物権的保全を伴わないその他の契約が 11%,賃貸借契約が7.1%,と続いている。回答組織の圧倒的多数が自己所有 地上で環境保全措置を実施しておll ,債権的契約によるものは非常に少ない。.  所有地上では,なされた環境保全措置の効果を長期的に持続させることがで. きるが債権的な契約の場合は,契約の終了に伴い措置の維持;保全が期待で きゐか疑問が残ることがその理由である47}。.  それでは,調整・代替措置に供される所有地は、’いかにして調達されたので. あろうか。表2を見てみ$う。  .     、 、    1,  t 、L                                   19.

(20)  撲浜麺1務}経済法学第IGi崔1第2号 (2008年2月).      表1 調整・代替措置を実施する際の土地利用権原の種類,  ・,       所有権       地投権 物権的{呆全をf半わない.     その他の契約.     賃貸借契約      漣築負担      物的童担 、.   ’保全抵当                               ’   その他の保全手段           0     10     20     30     40 1 − 50    60    70    −80   ’90‘ r 100一.   注]255事例で複数回答 ,、 一   ’L、 ’ 回答事一例の比率 1 , .   T−、l I.. 出典) 玉36me/Bruiis/Bunzel/Herberg∬K6PPel, Fl註chen−und MaJ3riah由enpools・in DelitSchland,2005, S,90.                       ・.             ピ 表2 所有地の取得方法’ 、’   1一 従来からの自己所有地.    土地プール用に   取得していた土地.      土地交換      農地整備    土地区画整理  取得を伴わない仲介. 欄賞義務者への譲渡を ’目的とした中開取得・.   建設法典に基づく    ・先買権の行使、.        収用           0     10  ,  20     30     40   − 50     60.   ヒ 注}255事傍で挟数回答     ・一一    回答事例の比率. 出典)BSme/Bruiis/Bunzel/Herberg/K6ppel, a.a.0., S;72:. 2e. 了o. so. ’go.

(21)                   、都市法制の環境法制への応接に閲する一断面.  本表は,市町村などの実施主体が所有地を取得するに至った契機を問うた ものである三それにtL“eど1:すでに存在していた自己所有地を供した場合が 83.1%,土地プーrル用に取得しておいた土地を利用した場合が75.3%を占め,. 従辛からの公有地やエコ・コントで取得した±[地を調整・代替用地として利用 しt−V)る例が圧倒的である。ちなみに、土地交換(土地所有者と市町村’実施. 主体との交換と推測される)によって取得した割合が37.3%ゴ農地整備による. 取齢2α8%・とそ檸続く・農雌備にs.って鍵髄を罐す醐合がそ れ剖の輝を占めている・・1・なお,当酬発を繊とし肺騨な即実施 主体が中間的に取得し,調整・代替措置実施後に開発主体に譲渡するヶ一スは 7.5%に留まる。申間取得型や媒介型が少ないのは,表1の場合と同様に,私人 へ譲渡した場合1譲渡後の措置の維持゜保全に不安が残るからである4°)。.  すでに検討したとおり,従来からの公有地は,これまでは主としだ住宅地や 公共施設用地など都市的用途に供されていたので毒るが田),、・.近年で』‡瑳それが. 自然:景観保護のための用地としても利用され始めていることがわかる。. 一それでは;調整・L代替措置に供された土地の種類は,どのようなものであろ うか。. 21.

(22) 横浜匡1際経済法学第16巻第2号 (2008ゴF2月).     表3調整・代替措置に供ざれた土地の腫類と利用頻度 ,                                    1. 農用地.  ’− 煤@ ,.  1 林地.  可 利用頻度. e    ’. 緑地. ■10%以下 翌Q5%以下. 都市内部の空閑地・. e50%以下 。75%以下 。76%以上.   用途転換地   外部地域内の.   用途転換地 その他. │ 1. 一.        0    °       50    ’      100    −     150  1’       200. 250.  、 注)250事例で複数回答             H回答数       L. 出典)Bljme/Bruns/Bimzel/Herberg/K6PPel, a.a.O., S.94 und’179..  表3は,調整・代替用地として,どのような土地を使ったかを頻度別に問う たものである。本表によると,回答数でも利用頻度別でも,圧倒的に農用地が. 多い。林地や緑地がそれに続いている。都市内部の空閑地も僅かではあるが 調整・代替用地として利用されていることがわかる5:)。.  調整・代替用地なのであるから,植林やビオトープ再生などの事業に対応し. うる原野などの緑地や森林が多いとも推測されたがこの点は意外にも,農地 の比率が大きかった。すなわち,農地上でも樹木の植栽や,生垣の創出,粗放 的土地利用などの多様な手法を用いて,調整・代替措置を実施することが可能 なのである。.  したがって,市町村などの実施主体としては,調整・代替用地として農地所 有権を積極的に取得する場合が多いのであって,エコ・コントを利用可能な今 日では,かかる傾向が強まるものと思われる。しかし,このことは,農地取得. をめぐって農家と市町村などの実施主体との間に競合関係が生じることとな 22.

(23)                    都市法制の環’境法制への応接に閲する]断面. り;、土地の取得対価いかttによっては,農業者の農業的土地利用のための土地. 取得が阻害されか癒ない。この点は,別稿においてより詳細に検討をする予定 であるb三ニ ニ’、  」1・ 、’1., TL.    ”   、.  最後にロエユ・コント:についての関係者間でめこれまでの評価はどめような ものであろう.h’・。” ・:  ・   ’ 1 :  二 、 ri 1・・ ごlh lf’..    /≡融工㌍ンド剛西関係主体の麺、 ,一 :  下級自然保護官庁.  』自然囎団体      市町村   ”−1・ン森林官庁 ’,   t’t土地所有者’.      農民組合・農業会議所    t#璽利用麟. 溺_;1…パ∴自評㎞点㌧’.4癒i                            J. 出典)B6me/B・Op・7Bu・iZ・1/H・rb・fg/K6PP・L郷S座.’≡: 』’. {表は,’エコi:コント1に対す,る関係主体の評価を,5点を満点として問うた. もめである。、tれによると,3点以上の評価をしでいるのば,す尽て官庁であ ることtF 3点未満の評価を与えているものは,すべで私大や私的団体であるこ、 とがわかる。    ’   丁  1    ’      L  官庁の中では,’とりわけ自然保護官庁と市町村の評価が高い:(共に4点以上)。. 自然保護官前高い評価は,、⊇・コンーS e: ,つて灘網酬置瀧来劫 恵円滑かつ迅速に実施さ1れていることを反映するものであろうし∴市町村に                                   23.

(24)  横浜国際経済法学第工6巻第2号(2008年2月). とっても,調整代替用地の確保が容易になったことを意味するものであろう。.  他方,±地所有者,農業組合・農業会議所r土地利用権者は.いずれも3点 未満の評価しか与えていない(順に,2.74,2.56,2.29)。これは,そもそも』エコ・. コントが浸透し始めてからまだ長期間が経過しているわけではないので,新た な制度に対する理解が不十分であることにも基づくのであろうが,上記で指摘 したように.エコ・コントは,農業者の農業的土地利用と競合する可能性も論 理的にはありえ,かかる観点lt・らチコ・コントc¢∼消極的評価が生じそいるの かもしれないee}。              ’     ,.  6.結びにかえて ’侵害規制は,ドイツにおいては,当初は自然保護法制における制度であって,. 都市計画法制に影響を及ぼすものとして仕組まれていた訳ではなかった。せい ぜいのところ,各種開発法制における行政庁の許認可に際して,自然保護・景 ’. 観保全の利益を衡量すべきことが要求されていたに過ぎない(1976年連邦自 然保護法8条)oこれが,都市計画法制に基づく開発の比重の増加に伴づて, 一方では自然保護サイドにおいて侵害規制の実効性を維持するために侵害規制. を計画策定手続段階においても適用することが要請された(1993年連邦自然 保護法改正)。そして,1997年改正では,侵害規制とBLプランとを調整する 場が,建設法典に移され,建設法典の体系ないし論理の中で解決が図られてい. くこととなロたe’なお,前述の通り2002年に連邦自然保護法の侵害規制も改 正されているが,これは空間的時間的デカップリングを通じた調整・代替措置 の実施の容易化・迅速化という都市法サイドの要請を受けた,自然保護法サイ ドでの受動的な対応であったと考えるべきであろう。.  このように見ると,当初は環境法制が土地・都市法制にとって外在的存在で あったが,前者が後者に徐々に統合され,後者の論理の中に埋没してしまo.tg. と考えることも可能であろう。しかし,他方にお炉て,土地・都市法制の制度 24                                           ,.

(25) 都市法制の環境法制への応接に閲する一一en面. や論理を利用しながら,自然保護法の侵害規制の要請が実現されてきた,と考 えることも可能なのであっ淀,私見としては,環境法制の課題の達成のために,. 土地・都市法制がその解決に向けて自らを再編して行ったと考えるべきであろ. うと思っているe              ’・   :   :  ここに,環境法制と土地・都市法制との調整に閨する一一・:つの対処例を見出す. ことができる。ζこでは,これら両者は,対立的契機を常に内包しながらも. 環境法制が土地・都市法制に[方的に従属するのではなく,環境法制を土地・ 都市法サイドが受容し内部化することを通じて,環境法制の課題を土地・・都市. 法制が実現して行く,というプロセスとして位置づけることができよう。  最後にt侵害規制ないじエコ・・コントについ℃若干補足をして,’本稿を終 えることとする。・  、    、 r  』L.、 i:t 1−..  第一に,この制度が開発主体にとって,過剰な負担となつてはいないかとい う懸念である。開発主体によるこの制度にっいての明確な批判を眼にする機会. がなかったし,通常の開発業者はこの制度を受容しでいるようであるが,こ の負担が過剰である.と,:方では,開発を必要以上に抑制することにもなる し,他方では,開発業者が市町村に払う償還金が最終的にはエンドユーザーで        ヘ                   ィ                          1. ある市民に転嫁されて行くであろうから,この観点からも過度な負担は望まし くない。この点への回答にはなお精査が必要であるが,筆者がヘッセン州の第                           J 三セクターであって,エコ・コント実施機関として州たよ・ロて唯一L・ees証きれた HLG ”’. i∧ッセン州農村開発公社)でヒアリ1‘ングしたとこちによるとl HLGで. は2006,年からエコ・xi F,の実施機関としての資格を取得し,これまでに,. 民間1わ事業主体か已3件(計85ha)1の調整・代替措置の実施の委託を受け,実 施した。その結S!1, ’. A計2000万点の環境価値点(Biotopwer tpqhkt)を創出した. そうである鋤。ヘッセン州の補償令(Kompensatiorisverordnung−1UV)N) 6条に            ・                                               . 挿と・一環酬鯨1点が0鵠一・であるので・1h・鱗り約82・OOOユー. ロとなる。これは,1ユーロを160円で換算すると,約13,120,000円,』ユ㎡あ. たり1,312円に相当する。この額が,’開発業者からHLGに支払われることに                                  25.

(26)  右置}兵国際経済法学第16巻第2玉} (2008Jf−2’月). なるeこの額を多いと見るか些少と見るかは微妙であろう。なお,ドイツ都市 学研究所(Deutsches lnstitUt fiir Urbanistik)1のBunze1博士によると,’開発業. 者の負担する補償費用は,エンドユーザァに転嫁されたとしても大した額では ない,ということであったSS)。.  第二に,景観・生態系の環境価値に関する基準点についてはt自然科学的見 地から詳細な一覧表が州毎に作成されているととは前述した。この表によると,. 対象物の置かれた環境の状況としで実に様々な状況が想定されており,それぞ れの状況に応じて点数(環境価値点)が付されている。もとより・当該州の自然. 的地理的状況に応じて,環境の種類や点数は自ずと異なるであろう。しかしそ れならばなおさら,一 槙Y州のこの基準点は客観的評価に基づくものでなければ. ならない。この点に関しての印象ではあるが,現場の関係者はこの基準点の客 観的根拠には必ずしも納得した人々ばかりではなかった。この点についてもそ の客観的評価に関して不断の検証と見直しが必要なのであろう。 kr.  上記の二点は,いずれも侵害規制ないしはエコ・コントの受容性や信頼性に 関わる問題である。本稿ではその一端しか明らかにしえなかったが,Lよ’り詳細 な分析は他日を期したいと思う.。 ・ ’           一. 1)この点に関する包括的研究としては,原田純孝編著r日本の都市法1・fi 1.(東京大学出版会..  2001年)がある。とくに.同書’1の第1章(原田純孝「戟後復興から高度成長の都市法制  の展開」)および第12章(西田裕子「環境優位の都市計画へ」)を参照。         − 2)ドイツでは,買十画とそれを実現する手法を併せて,「都市建設法」(Sttid’tebaurecht)と称し.  ており沖心は1986年に制定された建設法典(B? ugesetzbp・h)櫛身は1960年「asas建設法」   (Bundesbaugesetz))であ6.e本稿では,「都市冒t画法制」という場合には,ドイツと同様に,.  わが国で言う「都市計画法」のみならず,それを実現するための手法を定めている法律群を   も含めて用いる。かかる1広義の定義はt都市計画学研究者によっても主張されている(渡辺  俊一「都市計画の概念と機能」原田編・前掲「日本の都市法U141頁など)。なお,本稿では,「都.  市法制」という用語を用いることもあるが,上記の「都市計画法制」どほぼ同義で用いるこ.   ととする。  r    :        ’   1     . 3)ドイッの都市計画は.建設管理計画〔BauleitPlan)と称され,1,これは,市町村全域を対象と.   してその将来の土地利用の方向性を公共施設整備の予定まで含めて図上で示されるFプラン 26.

参照

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