〔共 同 研 究 水 危 機 をめ ぐ る多 面 的 ア プ ロ ー チ 〕
朽 ち る 水 道 イ ン フ ラ*
老朽管の更新投資必要額と水道料金
矢
根
眞
要約 本稿 の 目的は更新 時期 の ピー クを迎 えてい る 日本 の上水 道事 業 の供給構造 とその 主 たる資本 ス トックであ る水 道 管の 更新投 資必 要 額 を明 らか にす る こ とで あ り,そ の結 果 と して以下 の重 要 な4課 題 を導 く。第1の 論点 は,現 行 の給水 体 制 を維持 す る には用水 供給 事 業者 の ダム か らの 浄水 能力 維持 と給水 事 業者 の地 下水保 全 が不 可 欠 な ことで ある。 第2は,給 水事 業 者が今 後 半世 紀 にわ た って現行 の水 道管 網 を維 持 す るに は事 業者 平均 で毎 年9.2億 円の負 担 が必 要 で あ り,そ れ をすべ て水 道 料 金 に転嫁 す れ ば事 業 者平均 料 金が2倍 近 くに上 昇す る こ とであ る。第3に,す で に こ れ ら給 水事 業 者の 過半 は実 際 に法定 耐用 年数 を超 え る経 年 管 を抱 えて お り,そ の更 新 のた め に は現行 の4.5倍の料 金 が必 要 な こ とで あ る。第4に,中 小 零 細 事業 者 に よる これ らの課題 の 自力 解 決 の困難 さゆえ に迅速 な規 制改 革が 望 まれ る ものの,そ の改 革 を先延 ば しに して きた政 治慣行 こそが これ らの課題 の根 源 であ る とい う深 刻 な問題 が あ る。 目次 1朽 ち る イ ン フ ラ 2上 水道 の供 給構 造 と水道 管 ・ダム ・地下水 の役 割 (2-1)末 端給 水事 業 者の 導送 配水 管更新 投 資 と水 道料 金 (2-2)用 水 供 給 用 の ダ ム と給 水 事 業 用 の 地 下 水 (2-3)浄 水場 を所 有 しない給水 事 業者 の取水 構 造 3経 年管 の更 新投 資必 要額 と水 道料 金 (3-1)法 定 耐用 年数 を超 え る経 年 管 の更新投 資 必要 額 と水 道料 金 (3-2)老 舗事 業 者 の更新投 資必 要 額 と水 道 料金 (3-3)経 年 管 を有す る事 業者 の更新 投 資必 要額 と水 道料 金 4 参 考 文献 付 表 「ゆ るや かな震 災」 の根 深 い課題 832給 水 事業 者 の料金 上昇 率(%)都 道府 県別 集計 ランキ ング 152 154 155 157 159 163 163 165 167 169 170 171 *本 稿 は ,桃 山学 院大学地域連携 プロジェク ト 「水危機 をめ ぐる多面 的ア プローチ」 にお ける研究 成 果 の一 部 で す 。 こ こ に 記 して,桃 山学 院 大 学 お よ び プ ロ ジ ェ ク ト ・メ ンバ ー に感 謝 し ます 。 もち ろ ん, 残 さ れ て い る誤 謬 は筆 者個 人 の 責 任 で す 。 キ ー ワ ー ド:社 会 イ ン フ ラ,上 水 道 事 業,水 道 管,更 新 投 資,水 道 料 金1朽 ち る イ ン フ ラ 東 日本 大 震 災 は,未 曾 有 の天 災 で あ っ た だ けで な く,有 事 へ の 適 切 な対 応 を欠 く点 が 際 立 っ た た め,人 災 だ と指 摘 す る 声 も少 な くな い 。 た と え 「想 定 外 」 で あ っ た と して も,情 報 の公 開 ・明 確 な責 任 分 担 ・迅 速 な 対 策 等 の 実 態 が,多 数 の 国民 に は 「想 定 外 」 の失 態 にみ え た か らで あ る。 もっ と も復 興 財 源 を め ぐ る議 論 の混 迷 は,バ ブ ル 崩 壊 以 降20年 に及 ぶ 経 済 停 滞 と,そ の 間 に名 目GDPの2倍 以 上 に膨 らん だ 政 府 債 務 に も帰 因 す る 。 す な わ ち,地 方 自治 体 も含 め た 歳 入 ・歳 出 の根 本 的 な見 直 し は,た とえ 東 日本 大 震 災 が 起 こ らず と も,す で に解 決 急 務 な 課 題 だ っ た の で あ る。 い ず れ にせ よ,こ う した社 会 的 ・経 済 的 危 機 へ の 対 応 力 の低 下 は,政 治 家 の 資 質 や 政 党 の 体 質 とい った 個 別 主体 の 劣 化 へ の 憂 慮 に と ど ま らず,政 治 の根 幹 た る 「統 治 イ ン フ ラ」 の老 朽 化 とそ の 改 革 を先 送 り し続 け て きた 政 治 慣 行 とい う 日本 社 会 の 制 度 的基 盤 自体 へ の 不 安 を広 げ て い る')。 とい うの も,統 治 イ ンフ ラが 朽 ち て い たか ら こそ,原 発 の 安 全 性 や 電 力 料 金 の 適切 さ とい っ た統 治 イ ン フ ラ を前 提 とす る社 会 的 ・経 済 的 な規 制 制 度 も朽 ち て い た とみ なせ る か らで あ る。 す で に 欧 米 先 進 諸 国 で は独 立 した第 三 者 機 関 に よ る地 域 独 占 企 業 の規 制 が 常 識 と な っ て い る に もか か わ らず,ガ ラパ ゴス 化 した統 治 イ ン フ ラ はそ の改 革 を先 送 り し続 け て きた の で あ る。 そ の結 果,今 日 まで 電 力 価 格 規 制 の 長 年 の 基 本 原 則 と して 君 臨 して きた 総 括 原 価 方 式 で す ら, 現 実 に は 直 近 の10年 間 は 政 府 に よ る 審査 が 「制 度 上 行 わ れ て い な い」 と暴 露 され るや い な や, もは や 東 京 電 力 に限 らず 「制 度 全 体 の 見 直 しが 必 要 」 とい っ た 批 判 の み が 急 速 に広 ま る始 末 で あ る2)。 こ う して 国家 の根 幹 た る 統 治 イ ン フ ラの 荒 廃 が社 会 的 ・経 済 的 な規 制 制 度 も朽 ち させ て い る とす る な らば,そ の監 督 下 に あ る社 会 イ ン フ ラの 整 備 に 問 題 が 生 じて い た と して も驚 くべ き こ とで は な い 。 た と え ば 野 村 総 研(2011,p.30,37)は,内 閣 府 が 試 算 した2003年 度 の社 会 資 本 ス トッ ク額698兆 円 の33%を 占 め る 道 路,そ れ ぞ れ10%・7%・6%を 占 め る 治 水 ・ 下 水 道 ・上 水 道 等 の 社 会 イ ン フ ラ の急 速 な老 朽 化 を 指 摘 して い る3)。す な わ ち,2008年 度 の 社 会 イ ン フ ラ総 額 を700兆 円 と試 算 した うえ で,2050年 まで の更 新 投 資 総 額 を500兆 円,年 間 で 最 大20兆 円 を要 す る と見 積 も っ てい る。 そ の 額 の 大 き さ も さ る こ と なが ら,更 新 時期 の ピー ク が 道 路 で は後 半 にず れ込 む も の の,前 半 に来 る 上 下 水 道 等 で はす で に待 っ た な しの 緊迫 し 1)た と え ば,「 統 治 イ ン フ ラ は戦 後 半 世 紀 の 問 に 『ガ ラパ ゴ ス 』 化 して し まい,今 や 歴 史 的 な大 改 造 が 不 可 欠 とな っ てい る」 とい う野 中 尚 人(「 激 動 期 の 政 治 」 「日本 経 済 新 聞 』2011年9月14日)の 指 摘 を参 照 。 2)『 日本 経 済 新 聞 』(2011年10月4日)に 掲 載 さ れ た東 京 電 力 に 関す る 経 営 ・財 務 調 査 委 員 会 の報 告 書 に よ れ ば,原 価 の 対 象 と して き た費 用 範 囲 も問 題 視 され て い る。 そ の 結 果,長 期 的 な エ ネル ギ ー 政 策 策 定 の 「客 観 的 」 な根 拠 の は ず だ っ た 単位 発 電 費 用 自体 の 大 幅 な見 直 しが 行 わ れ て い る 。 3)港 湾 ・空 港 ・治 山治 水 ・農 林 漁 業 等 も含 む17分 野 か ら成 る社 会 資 本 ス ト ック額 で あ る 。 詳 細 は,野 村 総 研(2011,p.25)を 参 照 。
た状 況 にあ る点 に着 目す べ きで あ る 。 す な わ ち,朽 ち る水 道 イ ンフ ラの 危 機 は 最 も喫 緊 の検 討 課 題 なの で あ る。 さ ら に根 本(2011,4章)に よ れ ば,今 後50年 間 に 公 共 建 築 物 ・道 路 ・橋 梁 ・上 水 道 管 ・ 下 水 道 管 の5種 類 の 資 本 ス トッ クの 更 新 に必 要 な投 資 額 だ け で,そ れ ぞ れ175兆 円 ・29兆円 ・ 34兆 円 ・57兆 円 ・42兆 円 の 総 計330兆 円 を超 え る 。 ゆ え に,耐 用 年 数 で 除 した 年 当 た りの平 均 更 新 投 資 総 額 は そ れ ぞ れ3.5兆 円 ・1.9兆円 ・0.7兆円 ・1.1兆円 ・0.8兆円 の 合 計8.1兆 円 に の ぼ る 。 これ は,東 日本 大 震 災 で 当初 計 画 さ れ た 集 中復 興 期 間 の10倍 の期 間 に わ た っ て毎 年 そ の計 画 額 の2倍 以 上 の資 金 を捻 出 しな け れ ば,現 状 の イ ン フ ラの 維 持 さ え ま ま な ら な い こ と を 意 味 す る4)。ま さ に根 本(2011,p.170)が 指 摘 す る よ う に,国 や 自治 体 が 公 共 投 資 に お け る 更 新 投 資 の 重 要 性 を認 識 し よ う と しな か っ た た め に,「 ゆ る や か な 震 災 」 が 進 行 して い る の で あ る5)。 そ こで 本 稿 の 目的 は,更 新 ピ ー ク を最 初 に迎 え る と言 わ れ る 日本 の 上 水 道 事 業 につ い て, そ の 老 朽 化 の程 度 と更 新 投 資 の 必 要 性 を定 量 的 に検 討 す る こ と に あ る 。 そ の方 法 的 な特 徴 は, こ れ まで 水 道 事 業 の 経 済 分 析 に 多 用 され て きた 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 だ け で な く,『 水 道 統 計 』 の 同 年(2007年)度 の デ ー タ と も照 合 す る こ と に よ っ て,用 水 ・分 水 を考 慮 した取 水, 用 水 供 給 事 業 者 と末 端 給 水 事 業 者 の 浄水,さ ら に各 事 業 者 の 配 水 と給 水 と い う 日本 の 上 水 道 事 業 の 構 造 的 特 徴 を明 らか に しつ つ,更 新 投 資 問 題 を吟 味 す る点 に あ る6)。な ぜ な ら,水 道 の よ う な ネ ッ トワ ー ク産 業 で は,用 水 供 給 事 業 者 と末 端 給水 事 業 者,各 事 業 者 の 取水 ・浄水 ・ 配 水 の い ず れ か の 事 業 ・過 程 の 一 部 に 支 障 が 起 きれ ば,た と え他 の 事 業 ・過 程 で100%更 新 で きた と して も,十 分 な サ ー ビス 提 供 を完 結 で き ない か らで あ る。 す な わ ち,最 終 消 費 者 へ の給 水 量 は,全 資 本 ス トックの 更 新 比 率 で 決 ま るの で は な く,サ ー ビス 供 給 過程 の ボ トル ネ ッ ク の存 在 に よっ て 制 約 さ れ るの で あ る 。 とは い え,水 道 施 設 の資 産 価 値 の大 半 は水 道 管 で あ り,そ の 水 道 管 の9割 以 上 は配 水 管 で あ る か ら,上 記 の 根 本(2011)に よ る 配水 管 の み の 年 間 更 新 投 資 総 額1.1兆 円 は最 低 限 の 目 安 と して重 要 で あ る7)。さ ら に重 要 な の は,こ の 更 新 の 実 行 が 独 立 採 算 制 を原 則 とす る水 道 事 業 者 に とっ て越 えが た い 高 い ハ ー ドル だ とい う点 で あ る 。 す な わ ち,対 象 とす る社 会 イ ン 4)近 年 の 公 共 投 資 額20兆 円 の う ち1割 が 更 新 投 資 な ら必 要 額 は6.1兆 円 に減 少 す る 一 方,社 会 イ ン フ ラ は 上 記 の5種 に限 られ る わ け で は な い 。 ゆ え に根 本(2011,p.76)自 身 は,計 算 の しや す い イ ン フ ラ だ け を 選 ん だ た め に 過小 推 計 で あ る とみ な して い る 。 5)そ もそ も石 原 ・菊 池(2011,p.55)も 指 摘 す る よ う に,「 官 庁 会 計 の単 式 簿 記 ・現 金 主 義 会 計 で は, … …,そ の 会 計 年 度 の収 支 が 合 え ば 良 く,再 投 資 の た め の 留 保 が 確 保 され て い な い」 こ とが 基 本 的 な 問 題 か も しれ ない 。 しか し単 式 簿 記 で な い 地 方 公 営 企 業 で さ え,実 際 に使 っ た経 費 の み を重 視 し,十 分 な更 新 必 要 額 を積 み 立 て て き た とは い え な い か ら こそ,規 制 制 度 や 統 治 イ ン フ ラへ の 不 信 に ま で 達 す る深 刻 な 問 題 な の で あ る 。 6)中 山(2003)は,『 地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 を用 い た水 道 事 業 の 生 産 お よび 費 用 の効 率 性 分 析 の 代 表 例 で あ る 。 日 本 の 水 道 の 生 産 フ ロ ンテ ィ ア 分 析 の 最 新 の 例 と して は吉 川 ・他(2012),Yane&Berg (2011,2012)が あ る。 7)玉 真(2011,p.9)に よれ ば,施 設 の 資 産 総 額 は 上 水 道30兆 円 ・下 水 道70兆 円 で あ り,管 路 は そ の7 割 を 占 め る 。
フ ラ や 推 定 額 に 違 い は あ っ て も,野 村 総研(2011)・ 根 本(2011)・ 玉 真(2011)の い ず れ の 見 通 しで も,現 行 の 制 度 ・体 制 の大 幅 な 改 革 な し に は,イ ン フ ラ の崩 壊 を 防 げ な い 。 こ の 主 因 は 更 新 投 資 の計 画 ・調 達 へ の 有 効 な 規 制 を欠 い て きた た め で あ り,こ の 制 度 的 な欠 陥 は 中 央 政 府 ・地 方 自治 体 の財 政状 況 が 厳 しい 今 日で は 特 に改 善 急 務 な深 刻 な問 題 で あ る。 イ ンセ ンテ ィ ブ規 制 の 導 入 や 施 設 マ ネ ジ メ ン トの 改 善 を断 行 で きる な ら,水 道 事 業 の効 率 化 や 更 新 負 担 の 軽 減 も可 能 に な る か らで あ る8)。す な わ ち,老 朽 化 した 管 路 の み に焦 点 を合 わ せ た 更 新 負 担 は,他 の施 設 や そ の ボ トル ネ ッ ク化 を考 慮 しな い とい う意 味 で 評 価 が 過 小 に な る傾 向 が あ る 一 方,既 存 施 設 の維 持 管 理 や経 営 手 法 の効 率 化 が 進 め ば 過 大 評 価 に陥 る 可 能 性 もあ る。 特 に,事 業 者 ご との 既 存 施 設 の 維 持 管 理 や 更 新 投 資 の 積 み 立 て の 実 態 を明 確 に把 握 で きな い 現 状 で は,各 事 業 者 に とっ て の 負 担 の 軽 重 を論 じ るの は容 易 で は な い 。 そ こで 本 稿 で は,ボ トル ネ ッ ク化 した 場 合 の重 要 性 を考 慮 して水 道 事 業 の構造 的 特 徴 を明 らか に しつ つ,老 朽 管 の 更 新 負 担 を 産 業 レベ ル と各 事 業 者 レベ ル に お け る水 道 料 金 の 値 上 げ とい う形 で 定 量 化 す る9)。す な わ ち,定 量 化 の対 象 は老 朽 管 に 絞 り,そ の 老 朽 管 を そ の ま ま 更 新 す る費 用 をす べ て水 道料 金 収 入 で 賄 う場 合 を想 定 す る 。 ま ず 次 節 で は,用 水 供 給 事 業 者 の ダム か らの 浄水 能 力 維 持 と給 水 事 業 者 の地 下水 保 全 の 重 要 性 を明 らか に す る と同 時 に,給 水 事 業 者 の水 道 管 の 平 均 更 新 負 担 年 額 を水 道 料 金 の み で賄 う に は 平 均 料 金 が 現 行 の2倍 近 くに な る こ と を示 す 。 す な わ ち,補 助 金 や 積 立 金 等 を期 待 で きな い 限 り,今 後 半 世 紀 に わ た っ て現 行 の2倍 の 平均 料 金 を課 さ ざ る を え な い 。 同 時 に,特 に給 水 事 業 者 に よ る地 下 水 の 保 全 と,用 水 供 給 事 業 者 に よる ダ ム と浄水 能 力 の 維 持 も重 要 か つ 必 要 で あ る。 次 に 第3節 で は,法 定 耐 用 年 数 を超 え る老 朽 管 を更 新 す る た め の 「喫 緊 」 の負 担 額 が,第 2節 で 試 算 した今 後 半 世 紀 にわ た る 「平均 」 的 な 年 間負 担 額 を上 回 る こ と を示 す 。 す な わ ち, 給 水 事 業 者 の料 金 は現 行 の 平 均3倍,そ の 過 半 数 を 占 め る 実 際 に老 朽 管 を抱 え る 事 業 者 に 限 れ ば4.5倍 の水 準 に ま で 引 き上 げ な け れ ば な らな い 。 喫 緊 の 必 要 額 が 長 期 平 均 の 負 担 額 を 大 き く上 回 る現 実 は,老 朽 化 の 深 刻 さ と改 革 の 緊急 性 を示 唆 して い る 。 最 後 の 第4節 は,以 上 の 分 析 の要 約 と課 題 で あ る。 平 均 料 金 は上 昇 せ ざ る を え ない が,そ の主 因 は 公 営 企 業 だ か ら とい う よ り も,む しろ 旧 態 依 然 と した 規 制 レ ジ ー ム の 改 革 を先 延 ば しに して きた統 治 イ ン フ ラの 老 朽 化 とい う よ り根 深 い 問題 に起 因 して い る。 2上 水 道 の 供 給 構 造 と水 道 管 ・ダ ム ・地 下 水 の役 割 本 節 で は,最 初 に根 本(2011)に よる 配 水 管 延 長 距 離 の み に基 づ い た 年 間更 新 投 資 総 額 が 8)日 本 の水 道 事 業 の 非 効 率 の 推 定 につ い て は,中 山(2003)お よ び吉 川 ・他(2012),Yane&Berg (2011,2012)を 参 照 。 実 際 の 更 新 時 期 に影 響 を及 ぼ す 管 路 の 腐 食 過 程 や 維 持 管 理 の 重 要 性 につ い て は,玉 真(2011)を 参 照 。 9)現 行 は 基 本 料 金 と従 量料 金 か ら成 る 多 部 料 金 制 度 だ が,本 稿 で い う水 道 料 金 とは料 金 収 益 を有 収 水 量 で 割 っ た 単 位 当 た りの線 型 料 金 で あ る 。
導 水 管 ・送 水 管 も合 わ せ た導 送 配 水 管 延 長 距 離 をベ ー ス にす る と,約1割 多 い1.25兆 円 に増 加 す る こ とを確 認 す る。 これ を事 業 料 金 に全 額 加 算 す る と,給 水 事 業 者 の 平 均 水 道 料 金 は2 倍 近 くまで 上 昇 す る。 次 に,最 終 的 な給 水 事 業 者 の 取 水 量 の 約3割 は 用 水 供 給 事 業 者 に依 存 す る事 実 をふ ま え,自 己水 源 と して大 半 の 用 水 供 給 事 業 者 は ダ ム に よ る取 水 に,大 半 の給 水 事 業 者 は 地 下 水 に依 存 して い る点 を 明確 にす る 。 最 後 に,給 水 事 業 者 の 約2割 弱 は浄 水 場 を 持 た す,そ の受 水 量 の9割 以 上 が 浄 水 受 水 で あ る 事 実 か ら,用 水 供 給 事 業 者 の ダム か らの 浄 水 能 力 維 持 と給 水 事 業 者 の 地 下 水 保 全 の 重 要 性 を再 確 認 す る 。 (2-1)末 端 給 水 事 業 者 の 導 送 配 水 管 更新 投 資 と水 道 料 金 根 本(2011,p.74)に よ る年 間 更 新 投 資 総 額1.1兆 円 は,事 業 の ス ト ック の 物 理 量 と更 新 単 価 の積 をそ の耐 用 年 数 で割 る とい う 「個 別 積 み上 げ 方 式 」 に よ る試 算 値 で あ る 。 上 水 道 事 業 の試 算 ベ ー ス は 約56.96万kmの 配水 管 延 長 距 離 の み で あ り,そ の 耐 用 年 数 は50年,メ ー ト ル 当 た りの更 新 単 価 は10万 円 と一 律 に仮 定 さ れ て い る'°)。ゆ え に 更 新 投 資 総 額 は,物 理 的 ス トッ クの 配 水 管 延 長 距 離57万kmと,km単 価1億 円(m単 価10万 円 ×1000m)の 積 で あ る 約57兆 円 とな る 。 こ の ス トッ ク評 価 額 をそ の耐 用 年 数50年 で 割 っ た平 均 値 が,年 間 更 新 投 資 総 額1.1兆 円 で あ る。 す な わ ち,現 在 の 配 水 管 網 を 維 持 す る た め だ け に,毎 年 平 均1.1兆 円 の 更 新 負 担 が 今 後 半 世 紀 に わ た っ て必 要 だ とい うわ けで あ る 。 もち ろ ん,す で に近 年 の水 道 需 要 量 は 停 滞 期 に入 っ て お り,今 後 は 人 口 と共 に減 少 傾 向 が よ り明 確 に な る と予 想 さ れ る。 とこ ろ が 一 方 で は,施 設 の 耐 震 化 や 浄水 設 備 の 高 度 化 とい っ た諸 要 請 も高 ま る こ とか ら,こ の推 定 額 の 多 寡 を論 じる こ と は容 易 で は な い 。 しか し,水 道 管 は 上水 道 事 業 の 主 要 な資 本 ス トッ クで あ り,配 水 支 管 も含 め た配 水 管 距 離 が水 道 管 延 長 距 離 の9割 以 上 を占 め る こ と を想 起 す れ ば,議 論 の 出 発 点 と して 十 分 妥 当 な試 算 で あ る とい え よ う。 しか し,配 水 管 だ けが 水 道 の 唯 一 の 資 本 ス トッ クで な い こ と も明 白で あ る 。 浄 水 場 や 配水 池 や ポ ン プ,さ ら に水 源 か ら浄 水 場 まで の 導 水 管 や 配 水 場 に至 る送 水 管 も必 要 で あ る。 事 実, 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 に は 導 水 管 お よび 送 水 管 も合 わせ た 導 送 配 水 管 総 延 長 距 離 が 掲 載 され て お り,2007年 度 の1410事 業 者 の総 計 は62.4045万kmで あ る")。 こ れ は 上 記 の根 本 に よる 配 水 管 距 離56.96万kmよ り も9.5%長 い の で,仮 に 導 送 水 管 に も同 じ単 価 と耐 用 年 数 を仮 定 で きる な ら ば,年 間 更 新 投 資 総 額 も約1兆2481億 円 に増 加 す る 。 す な わ ち,こ の 年 間 総 額 を事 業 者 数 で 割 っ た1事 業 者 当 た りの集 計 平均 額 は8億8517万 円 に達 す る 。 毎 年9億 円近 い 更 新 投 資 を半 世 紀 に わ た っ て維 持 す る こ と は,全 水 道 事 業 者 の 雇 用 者 数 の 中央 値(平 均 値)が11人(37人)に す ぎず,そ の 大 半 は 中小 零 細 事 業 者 で あ る こ と を想 起 す 10)導 送水 管や機器 プラ ン ト類 は対象外 であ るが,浄 水場 等の建物 は建物ス トックの物 理量 とい う別 の カテゴ リー によって考慮 されてい る。根 本(2011,p。81)を 参照 。 11)活 動 中の1416事業者 か ら取水 量 や職 員数が 正で ない6事 業 者 を除 いたサ ンプルで あ り,1323の 末 端給水事 業者 と67の用水供 給事業者 だけで な く,20の 簡易水道事業 者 も含 まれている。
れ ば,極 め て実 行 の 難 しい 高 い ハ ー ドル で あ る 。事 実,総 利 益 ・総 費 用 の 中央 値(平 均 値) は0.4(1.9)億 円 ・6.1(20.6)億 円 に す ぎ な い 。 財 務 的 に は,負 債 比 率 の 平 均 値 は0.37で, 負 債 は 自己 資 本 を 下 回 っ て い る もの の,そ の 絶 対 額 の 中 央 値(平 均 値)は7.5(27.9)億 円 に達 して い る12)。 さ ら に,た と え ば雇 用 者 数 の 平 均 値 が 中央 値 を大 き く上 回 っ て い る こ と か ら分 か る よ う に, きわ め て 散 度 が 高 く右 に 長 い テ イ ル を持 つ 分 布 に な る た め,こ れ らの代 表 値 だ け で 議 論 す る に は 注 意 が 必 要 で あ る'3)。事 実,末 端 給 水 事 業 者 ・用 水 供 給 事 業 者 ・簡 易 水 道 事 業 者 の 雇 用 者 数 の 平 均 値 を比 べ て み る と,そ れ ぞ れ37人 ・64人 ・4人 と格 差 の大 きい こ とが 分 か る 。 こ れ ら各 事 業 グ ル ー プ の 平 均 値 を上 記 の 導 送 配 水 管 総 延 長 距 離 の 全 事 業 者 平 均 値443kmと 比 較 す る と,そ れ ぞ れ461・171・122kmと な る 。 す な わ ち,全 事 業 者 の94%を 占 め る 末 端 給 水 事 業 者 が 平 均9.2億 円 を毎 年 投 資 で き る か ど うか が 最 重 要 な 問 題 で あ る こ とが 分 か る。 こ れ ら末 端 給 水 事 業 者 は1日1人 当 た り3544(有 収 水 量 で は3190を1.2億 人 に給 水 して い る が,そ の 総 利 益 ・総 費 用 の 中 央 値(平 均 値)は0.3(1.7)億 円 ・5.9(18.8)億 円 に す ぎな い 。 す な わ ち,平 均 値 で み て も,毎 年 の 更新 投 資 に総 利 益 の5倍 以 上 を,あ る い は 総 費 用 の半 分 近 く を当 て る必 要 が あ る 。 結 局,更 新 投 資 年 額 で は上 記 の 産 業 平 均 を上 回 る の に,毎 年 の利 益 や 費 用 の 規 模 で は そ れ を下 回 る の で,末 端 給 水 事 業 グ ル ー プの 更 新 問 題 は平 均 的 に は さ ら に深 刻 とい え る 。 こ の 更 新 負 担 の 重 さ は,産 業 全 体 の給 水 収 益 を有 収 水 量 で 除 した 産 業 全 体 の水 道 料 金 の 集 計 平 均 値 か ら も確 認 で き る 。 産 業 全 体 のlm3あ た りの 水 道 料 金 は,用 水 供 給 事 業 者 で は91 円 と安 価 な の に,簡 易 水 道 事 業 者 を含 む 給 水 事 業 者 で は173円 に達 す る た め,全 事 業 者 全 体 で は153円 で あ る。 こ こ に上 記 の水 道 管 の 更新 必 要 年 額 を上 乗 せ す る と,そ れ ぞ れ96円 ・261 円 ・219円 に上 昇 す る 。 す な わ ち,更 新 負 担 を料 金 値 上 げ の み で 賄 う とす れ ば,用 水 供 給 事 業 者 は5%で す む も の の,消 費 者 に 直接 給 水 す る 事 業 者 で は50%,そ れ ゆ え卸 売 と小 売 を含 め た 産 業 全 体 で は44%の 引 き上 げが 必 要 に な る 。 しか し,こ れ らの 数 値 は 産 業 全 体 の 集 計 値 か らの 試 算 で あ り,事 業 者 レベ ル の 料 金 の平 均 値 で は ない 。 集 計 平 均 値 と事 業 者 平 均 値 の 区別 は,既 述 した よ う に事 業 規 模 や効 率 性 の散 度 の大 き な 日本 の 上水 道 事 業 にお い て は 特 に重 要 で あ る。 相 対 的 に非 効 率 な小 規 模 事 業 者 が 多 数 で あ れ ば,料 金 の 事 業 者 平均 値 は そ の 産 業 平 均 値 を上 回 る と予 測 され る か らで あ る'4)。 事 実,全 事 業 者 の 水 道 料 金 の 中央 値(平 均 値)は169(175)円 と産 業 集 計 平 均 値 よ り高 く, そ の 最 大 値559円 は最 小 値22円 の25倍 で あ る。 さ ら に,簡 易 水 道 と末 端 給 水 事 業 を 合 わせ た 12)負 債 比 率 とは,総 資 産 に占 め る負 債 と借 入 資 本 金 の和 で あ る。 石 原 ・菊 池(2011,p.125)を 参 照 。 13)雇 用 者 数 の最 小 値 は1,最 大 値 は4295で あ り,標 準 偏 差 は158に 達 す る 。 きわ め て 高 い 歪 度 や 尖 度 は雇 用 者 数 に 限 られ た こ と で は な く,日 本 の 水 道 事 業 デ ー タ全 般 の 基 本 的 な特 徴 で あ る。Yaneand Berg(2011)お よ び 吉 川 ・他(2012)を 参 照 。 14)吉 川 ・他(2012)に よれ ば,日 本 の 上水 道 事 業 の 生 産 の 技 術 効 率 性 は 事 業 規 模 が大 き くな る に つ れ 上 昇 す る傾 向 が あ る 。
給 水 事 業 者 ・用 水 供 給 事 業 者 の 中央 値(平 均 値)は174(178)円 ・101(106)円 で あ る 。 こ れ ら各 事 業 者 の 料 金 に 更 新 負 担 額 を加 え た 水 道 料 金 の 中央 値(平 均 値)は,そ れ ぞ れ308 (332)円 ・314(343)円 ・lll(117)円 に上 昇 す る。 ゆ え に,全 事 業 ・給 水 事 業 ・用 水 供 給 事 業 者 の 平 均 料 金 の 上 昇 率 は90%・93%・4%と な り,そ れ ぞ れ の料 金 上 昇 率 の 事 業 者 平 均 値 を計 算 して も89%・93%・12%だ か ら,全 事 業 お よ び給 水 事 業 者 の料 金 上 昇 率 に は大 差 が な い 。 す な わ ち,消 費 者 に 直 結 す る給 水 事 業 者 の料 金 は,事 業 者 平 均 で は2倍 近 くの 水 準 に な る 。 しか も,そ の 上 昇 率 は事 業 者 間 で1%か ら952%ま で とい う大 き な格 差 が 存 在 す る こ とか ら,個 別 事 業 者 が 直 面 す る課 題 は 多 様 で あ る 。 結 局,末 端 給 水 事 業 者 の 平 均 更 新 投 資 年 額 は,根 本(2011)の 試 算 の 全 事 業 者 平 均 値 で あ る8.1億 円 よ り1億 円 以 上 多 い9.2億 円 に達 す る 。 こ の 数 値 は末 端 給 水 事 業 者 の 平 均 値 とは い え,こ れ ら1323事 業 者 の給 水 開 始 時 か ら数 え た事 業 年 齢 の 中 央 値(平 均 値)が48(50)年 と い う更 新 ピ ー ク期 に達 しつ つ あ る状 況 下 で は,多 くの 末 端 給水 事 業 者 に と って 非 常 に高 い ハ ー ドル で あ り,料 金 に転 嫁 す れ ば事 業 者 平 均 で も2倍 近 い水 準 に な っ て しま う 。 ち なみ に減 価 償 却 の 進 行 度 の指 標 とさ れ る有 形 固 定 資 産 減 価 償 却 累 計 率 をみ て も,末 端 給 水 事 業 の 中央 値 (平均 値)は0.34(0.33)で あ り,用 水 供 給 事 業 者 や 簡 易 水 道 事 業 者 に比 べ て 高 く,施 設 の 老 朽 化 が 進 ん で い る'5)。 しか も,こ の 更 新 投 資 額 の 大 半 を 占 め る膨 大 な 配 水 管 の ネ ッ トワ ー クが 装 置 産 業 と して の 水 道 事 業 の 特 性 を象 徴 して い る一 方 で,導 送 水 管 や 用 水 供 給 に支 障 が 生 じれ ば サ ー ビ ス を完 結 で き ない とい うの もネ ッ トワ ー ク 産 業 の 特 徴 で あ る。 す な わ ち,配 水 管 以 外 の 導 送 水 管 や 浄 水 場 ・配 水 池 も必 要 不 可 欠 な施 設 で あ り,い ず れ の 更 新 投 資 を怠 っ て もサ ー ビス 提 供 の ボ トル ネ ッ ク と化 して しま うの で あ る 。極 端 な例 をあ げ れ ば,末 端 給 水 事 業 者 の 配水 管 の減 価 償 却 が100%引 き当 て られ て お り更 新 投 資 の 平 均 値 が 高 か っ た と して も,導 送 水 管 は も と よ り,取 水 や 浄 水 に支 障 が あ れ ば十 分 な サ ー ビ ス を提 供 で きな い 。 そ こで 次 項 で は,取 水 か ら 配 水 に 至 る水 道 事 業 の特 徴 を検 討 す る こ と に よ り,日 本 の水 道 供 給 に特 に重 要 な 施 設 を 明確 に し よ う。 (2-2)用 水 供 給 用 の ダ ム と給 水 事 業 用 の 地 下 水 ボ トル ネ ック の 観 点 か らい え ば,顧 客 に給 水 す る末 端 給 水 事 業 者 の す べ て が 自 ら所 有 す る 水 源 か ら取 水 ・浄 水 して い る わ け で は な い 。 上 記 の1410事 業 者 の47%(667事 業 者)が 他 事 業 者 か らの 受 水 能 力 を保 持 して い る 。 表1-A・Bは,簡 易 水 道 事 業 者 を含 む給 水 事 業 者 と彼 ら に用 水 を供 給 す る事 業 者 に 区 分 した う え で,そ れ ぞ れ の 取 水 量 や 配 水 量 を要 約 した もの で あ る。 た だ し,『 地 方 公 営 企 業 年 15)有 形 固 定 資 産 減 価 償 却 累 計 率 は,有 形 固 定 資 産 の 簿価 と減 価 償 却 累 計 額 の 和 に 占 め る 減 価 償 却 累計 額 の比 率 で あ るが,そ の ま まで は補 助 金等 の 「み な し償 却 」 対 象 財 源 が あ る場 合 に は 過 少 に な る 。 石 原 ・菊 池(2011,p。60,126)を 参 照 。
表1-Al343給 水 事 業 者 の1日 当 た り の取 水 量 ・配 水 量(m3) 事業平均値 中央値 標準 偏差 最小値 最大値 産業集計値 取水量 33,014 11,148 147,393 221 4,507,800 44,338,311 受水量 9,558 0 36,377 0 715,678 12,836,792 自水 量 23,456 7,110 137,952 0 4,507,800 31,501,519 ダ ム 7,315 0 94,076 0 3,243,137 9,824,170 非 ダ ム 7,239 0 48,876 0 1,332,447 9,721,367 地 下水 8,902 3,953 20,323 0 521,458 11,955,982 配水量 31,729 10,597 142,856 209 4,390,200 42,611,488 有収水量 28,525 9,026 134,330 132 4,179,738 38,308,840 出所:「 地 方公 営 企 業 年鑑 』:平 成19年 度 版 よ り作 成 表1-B67用 水 供 給 事 業 者 の1日 当 た りの 取 水 量 ・配 水 量(m3) 事業平均値 中央値 標準 偏差 最小値 最大値 産業集計値 取水量 196,491 67,822 365,397 6,509 1,829,734 13,164,917 受水量 199 0 1,632 0 13,356 13,356 自水 量 196,292 67,822 365,500 3,161 1,829,734 13,151,561 ダ ム 168,754 51,712 361,429 0 1,829,734 11,306,524 非 ダム 23,411 0 60,473 0 294,790 1,568,547 地 下水 4,127 0 12,257 0 73,947 276,489 配水 量 191,362 61,322 362,317 6,509 1,819,312 12,821,253 有収水量 191,403 62,262 361,978 6,224 1,814,003 12,824,021 出所:「 地 方公 営 企 業 年鑑 』:平 成19年 度 版 よ り作 成 鑑 』 に は 取 水 能 力 の 内訳 は あ っ て も取 水 量 自体 の構 成 比 は 記 載 さ れ て い な い の で,各 取 水 量 は そ の 取 水 能 力 に比 例 す る と仮 定 して 試 算 した 数値 で あ る 。 さ ら に表2-A・Bは,各 事 業 者 の 取 水 比 や 有 収 比 の事 業 者 平 均 値 と,表1の 取 水 量 等 の 産 業 集 計 値 か ら直接 求 め た 産 業 平 均 値 を要 約 し た もの で あ る。 た だ し表1-Bで は,用 水 供 給 事 業 者 の 有 収 水 量 が 配 水 量 を上 回 っ て い る た め,そ の比 率 で あ る表2-Bの 有 収 比 が100% を超 え て しま っ て い る点 に は 注 意 が 必 要 で あ る 。 ま ず,表1-Aの 給 水 事 業 者 の 受 水 量 は1284万m3で,取 水 量 全 体 の3割 に相 当 し,表1-Bの 用 水 供 給 事 業 者 の 配 水 量 な い し有 収 水 量1282万m3に ほ ぼ 等 しい 。 ま た,用 水 供 給 事 業 者 の受 水 は ご くわ ず か で あ る。 す な わ ち,給 水 事 業 者 の最 大 の 取 水 源 は用 水 供 給 事 業 者 か ら の受 水 なの で あ る。 換 言 す れ ば,給 水 事 業 者 の 更新 投 資 が 十 分 で も,用 水 供 給 事 業 者 が そ う で な け れ ば,最 大3割 近 くの 給 水 量 に 支 障 が 生 じ る可 能 性 が あ る。 表2-Aは,末 端 給 水 事 業 者 の受 水 以 外 の 取 水 量 が ダ ム ・非 ダ ム ・地 下 水 に ほ ぼ均 等 に依 存 す る もの の,事 業 数 で み れ ば地 下 水 に依 存 す る小 規 模 事 業 者 が 圧 倒 的 に多 い こ と を示 唆 し て い る 。 ま た,給 水 事 業 者 の 配 水 量 に 占 め る有 収 水 量 の比 率 は産 業 平 均 で は90%だ が,事 業
表2-Al343給 水 事 業 者 の 取 水 ・配 水 の 比 率(%) 事業平均 最小値 25 50% 75 最大値 産業 平均 自水 比 72.03 0 44.26 100 100 100 71.05 ダ ム 比 :・ 0 0 0 0 100 31.19 非 ダム比 21.01 0 0 0 34.55 100 30.86 地 下水 比 62.19 0 10.49 89.02 100 100 37.95 有 収比 :.1 48.97 81.56 87.19 91.57 100 :"1 出所:「 地 方公 営 企 業 年 鑑』:平 成19年 度 版 よ り作 成 表2-B67用 水 事 業 者 の 取 水 ・配 水 の 比 率(%) 事業平均 最小値 25 50% 75 最大値 産業 平均 自水 比 98.79 19.14 100 100 100 100 99.90 ダ ム 比 79.57 0 73.44 100 100 100 85.97 非 ダム比 12.95 0 0 0 0 100 11.93 地 下水 比 7.48 0 0 0 0 100 2.10 有収比 100.15 95.62 99.3 .・., 100 121.99 100.02 出所:「 地 方公 営 企 業 年 鑑』:平 成19年 度 版 よ り作 成 者 平 均 で は86%で あ り,小 規 模 事 業 者 の 中 に は か な り効 率 の 悪 い 事 業 者 が 存 在 す る こ と も明 らか で あ る。 表2-Bか らは,給 水 事 業 者 とは対 照 的 に,用 水 供 給 事 業 者 の 取 水 にお け る ダ ム依 存 率 が 事 業 者 平 均 で も産 業 平 均 で も約8割 と非 常 に高 い こ と を示 して い る 。 ま た,配 水 量 に 占 め る 有 収 水 量 の 比 率 も き わ め て 高 い 。 した が っ て,給 水 事 業 者 の 取 水 の約3割 を 占 め る受 水 は 最 大 の 取 水 源 で あ り,そ の 用 水 供 給 源 の 約8割 は ダ ム に よる 取 水 に依 存 して い る た め,用 水 供 給 事 業 者 が 有 す る ダム 能 力 の 維 持 は水 道 供 給 の継 続 に とっ て 最 も重 要 な 要 素 の1つ で あ る 。 た だ し,用 水 供 給 の 事 業 年 齢 の 中央 値(平 均 値)は27(28)年 と ま だ若 く,有 形 固 定 資 産 減 価 償 却 累 計 率 も0.27(0.28)で あ る か ら,必 要 額 の 大 き さ を別 にす れ ば,平 均 的 に は末 端 給 水 事 業 者 ほ ど緊 迫 した 問 題 で は な い か も しれ な い 。 ま た,給 水 事 業 者 の 自己 水 源 と して は,ダ ム ・非 ダ ム ・地 下水 で 取 水 量 は等 分 され て い る も の の,事 業 者 数 で い え ば地 下水 の 保 全 が 最 も重 要 で あ る 。 (2-3)浄 水 場 を所 有 しな い 給 水 事 業 者 の 取 水 構 造 前 項 で は取 水 構 造 の特 徴 を明 ら か に した が,浄 水 に 関 す る 情 報 は 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 で は 浄水 場 数 等 に 限 られ て い る。 驚 くべ き こ と に,239も の 事 業 者 が 浄 水 場 を所 有 して い な い 。 浄 水 場 を所 有 しな い 用 水 供 給 事 業 者 は ダム か ら取 水 し原 水 を供 給 す る1事 業 だ け なの で,給 水 事 業 者 の 約18%が 浄 水 場 を所 有 して い ない こ と に な る 。 そ れ で は,こ れ ら238給 水 事 業 者 の 取 水 構 造 は ど うな っ て い る の だ ろ うか 。 まず,ll5事 業
者(48%)は100%地 下 水 に依 存 して い る こ と か ら,浄 水 場 の必 要 の な い 良 質 な水 源 を有 し て い る と推 測 で き る。 次 に,98事 業 者(41%)は100%受 水 に依 存 して い る こ と か ら,用 水 供 給 事 業 者 の浄 水 能 力 に依 存 して い る と考 え られ る。 残 る 約1割 の25事 業 者 は,地 下 水 比 率 の平 均 値 が8割 近 く,受 水 比 率 も6割 近 い こ とか ら,両 者 の 併 用 ・混 合 だ とみ な しう る 。 こ れ らの 事 実 は,良 質 な 井 戸 水 等 の 活 用 に よっ て 浄 水 場 を不 要 とす る事 業 者 が 存 在 す る 一 方 で,用 水 供 給 事 業 者 に よ る浄 水 な し に は給 水 で き な い事 業 者 も存 在 す る とい う地 域 的 ・環 境 的 な 多 様 性 を反 映 して い る。 こ の 浄水 場 を持 た ない 給 水 事 業 者 の実 態 は,前 項 の 給 水 事 業 に お け る地 下 水 と用 水 供 給 にお け る ダム か らの 浄水 の 重 要性 をい っ そ う際 立 た せ る根 拠 と も み な し う る。 こ う した推 測 の確 度 を 上 げ る た め に も,異 な る 取 水 や 浄水 の 情 報 を有 す る 『水 道 統 計 』 の デ ー タ を吟 味 して み る こ とは 有 益 で あ る 。 表3は,同 じ2007年 度 を対 象 に した 『水 道 統 計 』 か ら取 水 や 配 水 デ ー タ を把 握 で きる1566事 業 者 を抽 出 し,1482の 給 水 事 業 者 と84の 用 水 供 給 事 業 者 に区 分 した も の で あ る。 給 水 事 業 者 に よる 給 水 人 口 は1億1652万 人 だ か ら,ほ ぼ前 項 の 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 の サ ン プ ル と同 様,日 本 国 民 の大 半 を カバ ー し て い る 。 同 じ く表4 は,表3に 関連 す る各 事 業 者 の 主 要 な 比 率 と産 業 全 体 の合 計 値 か ら直接 集 計 した 平 均 値 を要 約 した もの で あ る。 ま ず,こ れ らの 表 か ら,前 項 で 取 水 能 力 を基 礎 に導 い た推 論 が,実 際 に 『水 道 統 計 』 の 取 表3-Al482給 水 事 業 者 の 年 間 取 水 量 ・配 水 給 水 量(1000m3) 事業平均値 中央 値 最小値 最大値 産業集計値 取水量 10,651 3,227 96 1,649,871 15,784,274 原水受水 95 0 0 80,255 140,590 浄水受水 3,214 0 0 242,826 4,763,019 自水 量 7,342 2,069 0 1,569,616 10,880,665 ダ ム 2,346 0 0 1,171,415 3,476,514 非 ダム 2,277 0 0 487,676 3,375,172 地 下水 2,523 902 0 137,560 3,738,882 そ の他 196 0 0 18,912 290,097 浄水量 7,278 1,981 0 1,606,804 10,785,446 高度浄水 1,712 0 0 601,791 2,537,778 (総)配水 量 10,237 3,090 96 1,606,804 15,171,820 給水量 10,190 3,074 96 1,601,599 15,102,216 有効 量 9,457 2,677 86 1,544,465 14,015,377 有 収量 9,180 2,625 76 1,524,579 13,604,597 分水量 47 0 0 7,348 69,604 有 効量 47 0 0 7,348 69,241 有収量 47 0 0 7,348 69,204 出 所:『 水 道 統計 』平 成19年 度 版 よ り作 成
表3-B84用 水 事 業 者 の 年 間 取 水 量 ・配 水 量(1000m3) 事業平均値 中央 値 最小値 最大値 産業集計値 取水量 56,994 20,401 1,865 669,682 4,787,461 原水受水 82 0 0 5,380 6,849 浄水受水 56 0 0 4,687 4,687 自水量 56,856 19,667 0 669,682 4,775,925 ダ ム 46,456 14,297 0 669,682 3,902,285 非 ダム 9,183 0 0 572,294 771,354 地 下水 763 0 0 26,900 64,105 そ の他 455 0 0 28,795 38,181 浄水量 55,428 19,677 0 669,682 4,655,914 高度浄水 18,416 0 0 566,728 1,546,951 用(配)水 量 55,266 19,427 1,865 ・・:.: 4,642,348 有効 量 55,110 19,427 1,865 ・・:.: 4,629,233 有 収量 55,042 19,427 1,865 663,925 4,623,569 出 所:『 水 道 統計 』平 成19年 度 版 よ り作 成 水 量 デ ー タ に基 づ い て も妥 当 す る こ と を確 認 で きる 。 す な わ ち,表4-Aか ら は給 水 事 業 者 の受 水 率 が ほ ぼ3割 前 後 で あ る こ と,表3-Aか ら は用 水 供 給 事 業 者 の 配 水(用 水)量46億 m3(お よ び分 水 量7000万m3)を 給 水 事 業 者 が 受 水 して い る こ と を確 認 で き る。 さ らに 表4-Aは,給 水 事 業 者 全 体 の ダム ・非 ダ ム ・地 下 水 か らの 取 水 量 が ほ ぼ等 分 さ れ て い る こ と を示 して い る。 ゆ え に,中 山(2003)以 降 の 効 率 性 フ ロ ン テ ィア 分 析 で多 用 さ れ て きた 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 に基 づ く水 源 別 の 取 水 能 力 比 率 は,取 水 量 比 率 の 代 理 変 数 と して 一 定 の 確 度 を 有 す る とい え る 。 さ ら に,表3-Aか ら受 水 の97%以 上 は 浄 水 受 水 だ か ら,浄 水 場 を持 た な い 給 水 事 業 者 の 約 半 数 が100%受 水 で も給 水 可 能 な 理 由 も明 ら か に な る 。 換 言 す れ ば,原 水 受 水 は 非 常 に稀 な の で あ る 。 ま た 表4-Aは,受 水 量 に 占 め る分 水 量 の 比 率 が た か だ か1%余 りに す ぎな い こ と を示 して い る。 表4-Bか ら は用 水 供 給 事 業 者 が 取 水 の8割 以 上 を ダム に依 存 して い る こ と,表4-Aか ら は個 々 の 給 水 事 業 者 か らみ れ ば地 下 水 が 最 も重 要 な取 水 源 で あ る こ と も確 認 で き る。 給 水 事 業 者 の 自己 水 源 に 占 め る 地 下 水 か らの 取 水 量 の比 率 は,産 業 全 体 の水 量 の 比 率 と して は34% だ が,各 事 業 者 の 比 率 の平 均 値 で は56%に 上 昇 す る。 こ れ らの 事 実 か ら も,前 項 の 用 水 供 給 事 業 に お け る ダム と給 水 事 業 にお け る 地 下 水 の重 要 性 を再 確 認 で きる 。 表4か ら高 度 浄水 設 備 の 普 及 度 を み る と,給 水 事 業 者 の 中 に は100%高 度 浄 水 して い る事 業 者 が あ る もの の,平 均 す れ ば ダ ムへ の 依 存 が 高 い 用 水 供 給 事 業 者 の 方 が 地 下 水 に依 存 す る 事 業 者 の 多 い給 水 事 業 者 よ りも高 い こ とが 分 か る 。 そ れ で も高 度 浄 水 比 率 はせ い ぜ い3分 の 1程 度 で あ り,ダ ム か ら取 水 した 原 水 の 半 分 以 下 で しか な い 。 な お,表3-Bで 用 水 供 給 者
表4-Al482給 水 事 業 者 の 年 間 取 水 量 ・配 水 量 の 比 率(%) 事業平均値 最小値 25 中央 値 75 最大値 産業 平均値 自水 比 71.87 0 II 100 100 100 68.93 ダ ム 比 8.31 0 0 0 0 100 31.95 非 ダム比 20.85 0 0 0 31.01 100 31.02 地下水 比 55.71 0 0 69.67 100 100 34.36 高度 浄水 比 10.73 0 0 0 0 100 23.53 給水有収比 .. 28.57 81.52 87.07 91.75 100 '11: 分水有収比 .. 59.38 100 100 100 100 99.43 出所:『 水 道 統 計 』平 成19年 度版 よ り作 成 表4-B84用 水 事 業 者 の 年 間 取 水 量 ・配 水 量 の 比 率(%) 事業平均値 最小値 25 中央 値 75 最大値 産業 平均値 自水 比 97.8 0 100 100 100 100 99.76 ダ ム 比 82.35 0 95.23 100 100 100 81.71 非 ダム比 10.23 0 0 0 0 100 16.15 地下 水比 4.93 0 0 0 0 100 1.34 高度 浄水 比 25.79 0 0 0 53.75 102.8 33.23 有収比 99.58 97.41 99.4 99.97 100 100 99.60 出所:『 水 道 統 計 』平 成19年 度版 よ り作 成 の 自水 量 に 占 め る浄 水 量 の 比 率 が や や低 い(97%)の は,上 述 した よ う に原 水 供 給 事 業 者 が 存 在 す る た め で あ る。 給 水 ・分 水 ・用 水 に対 す る有 収 水 量 の 比 率 で あ る有 収 比 をみ る と,給 水 事 業 者 の 比 率 は用 水(お よ び 分 水)事 業 者 の そ れ に比 べ て 低 い こ と も確 認 で き る。 表3-Aは,そ の 理 由が た ん に前 項 で 明 らか に した無 収 の 給 水 が 相 対 的 に大 きい か らだ けで な く,無 効 な給 水 量 も少 な くな い か らで あ る こ とを示 して い る 。 そ の 主 た る 理 由 は,個 別 事 業 の 平均 値 が 集 計 値 の平 均 値 よ りも低 い こ とか ら推 測 で き る よ う に,小 規 模 事 業 者 の 非 効 率 性 にあ る。 ゆ え に,給 水 事 業 者 の 約2割 弱 が 浄水 場 を持 た な い とい う事 実 は,そ の 半 数 が100%地 下 水 に依 存 す る こ とか ら,前 項 の 給 水 事 業 者 の地 下水 保 全 の 重 要 性 を い っそ う高 め る もの で あ る。 同 時 に,残 る大 半 の 浄水 場 を持 た な い 給 水 事 業 者 が 浄水 受 水 に依 存 して い る こ とか ら, 用 水 供 給 事 業 者 の浄 水 能 力 の 維 持 が き わめ て 重 要 な こ と も確 認 で き る。 す なわ ち,上 水 道 サ ー ビ ス の 現 状 維 持 に は た ん に 巨 額 の配 水 管 の 更 新 投 資 だ け が必 要 な の で は な く,導 送 水 管 は も と よ り,用 水 供 給 事 業 者 の ダム か らの 浄 水 能 力 維 持 と給 水 事 業 者 の地 下 水 保 全 が と りわ け 重 要 な の で あ る。
表5-A法 定 耐用 年 数40年 を超 える経年 管 お よび新 管等 の延 長距離(m)と 比 率(%) 1566全 事 業 者 1482給 水 事 業 者 84用 水 供給 事業 者 延長距離 総 延 長 との比 率 延長 距離 総延 長 との比 率 延 長距 離 総延 長 との比率 導 送配水 管 総延 長 598,725,226 587,887,235 10,837,991 うち配水 管延 長 559,178,635 93.39 559,178,635 95.12% 0 0.00 40年 超 の 管 路 37,108,817 6.20 36,750,309 6.25 358,508 3.31 20年 超 の 管 路 253,376,721 42.32% 247,665,113 42.13 5,711,608 52.70% 耐震化管路 48,600,207 8.12% 45,407,545 7.72 3,192,662 29.46 新管延長 4,347,132 0.73 4,253,457 0.72 93,675 0.86% 布 設替延 長 5,670,443 0.95 5,657,448 0.96 12,995 0.12% 撤去管延長 5,378,412 0.90 5,362,094 0.91 16,318 0.15% 出所:『 水 道統 計 』 平 成19年 度 版 よ り作 成 3経 年 管 の 更 新投 資必 要 額 と水 道 料 金 前 節 で は,水 道 管 の 年 間更 新 投 資 総 額 の み で1.25兆 円 に達 す る だ け で な く,現 行 の 水 道 供 給 サ ー ビス の維 持 に は特 に 用 水 供 給 事 業 者 の ダム か ら の 浄水 能 力 と給 水 事 業 者 の 地 下 水 の保 全 が 欠 か せ な い こ と を 明 らか に し た 。 『水 道 統 計 』 に は,ダ ム や 地 下 水 の 保 全 状 態 を知 る 直 接 の情 報 は な い が,法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管 の 距 離 は 記 載 さ れ て い る。 そ こで 本 節 で は, 前 節 の 総 延 長 距 離 を耐 用 年 数 で 割 っ た 「平 均 」 的 な更 新 投 資 年 額 で は な く,法 定 耐 用 年 数 を 超 え た 経 年 管 か ら計 算 した 「喫 緊 」 に 必 要 な更 新 投 資 に着 目す る。 最 初 に経 年 管 の 総 延 長 距 離 に基 づ く事 業 者 平 均 値 を試 算 した うえ で,次 に事 業 年 齢 お よ び実 際 に経 年 管 を抱 え る事 業 者 に 限 定 した試 算 を行 う。 これ ら の負 担 額 をす べ て 水 道 料 金 で 賄 う と,全 給 水 事 業 者 の平 均 料 金 は3倍 に,そ の過 半 数 を 占 め る経 年 管 を 抱 え る 給 水 事 業 者 に 限 れ ば4.5倍 に な る こ と を 示 す 。 (3-1)法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管 の 更 新 投 資 必 要 額 と水 道 料 金 (2-1)で 試 算 した 末 端 給 水 事 業 者 平 均 の更 新 投 資 年 額9.2億 円 は,現 在 の水 道 管 を維 持 す る の に今 後 半 世 紀 にわ た っ て 毎 年 必 要 とな る 「平 均 」 値 の見 積 額 で あ り,必 ず し も直 近 数 年 内 に不 可 避 な 切 迫 性 を示 して い る と は 限 ら な い 。 そ こ で,『 水 道 統 計 』 に記 載 され て い る法 定 耐 用 年 数40年 を超 え る 経 年 管 延 長 距 離 や そ の 比 率 を要 約 した も の が 表5-Aで あ る'6)。総 延 長 距 離 は59.87万kmで,(2-1)で 用 い た 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 の 数 値62.45万kmよ り若 干 短 い が,そ の 大 半(98%以 上)が 給 水 事 業 者 に よっ て 所 有 され て い る点 は 同様 で あ る。 16)『 水 道 統 計 』 の 「水 道 統 計 の 項 目か ら導 き 出せ るPI(業 務 指 標)」 に従 い,溶 接 継 手 を有 す る ダ グ タ イ ル ・鋼 管,高 密 度 ・熱 融 着 継 手 を有 す る ポ リ エ チ レ ン管,ス テ ン レス 管 の総 計 を耐 震 管 と定 義 し て い る 。
玉 真(2011,p.85)も 指 摘 して い る よ う に法 定 耐 用 年 数 が 実 際 の 耐 用 年 数 と一 致 す る とは 限 らな い が,法 定 耐 用 年 数40年 を超 え る 経 年 管 の 比 率 が す で に6%を 超 え て い る 点 は注 目 に 値 す る 。 なぜ な ら,こ の3.71万kmの 更 新 投 資 必 要 額 は,前 節 と同 じkm単 価1億 円 を仮 定 す れ ば3.71兆 円 にの ぼ り,前 節 で試 算 した 年 間 更 新 投 資 総 額1.25兆 円 の2.97倍 に達 す る か ら で あ る 。 す な わ ち,法 定 耐 用 年 数 を超 え た 経 年 管 の 更 新 は 耐 用 年 数 で 単 純 平 均 した 水 道 管 の 更 新 額 よ り約3倍 も多 い とい う事 実 か ら,耐 用 年 数 に達 して も水 道 管 を更 新 で き ない 事 業 者 が 少 な か らず 存 在 す る可 能 性 が 浮 か び 上 が る の で あ る。 事 実,こ の経 年 管 更 新 総 額 の 事 業 者 当 た りの集 計 平 均 額 は 約24億 円,そ れ を給 水 と用 水 供 給 事 業 者 に分 け る と そ れ ぞ れ 約25億 円 と4億 円 にの ぼ る 。 また,導 送 配 水 管 の経 年 管 比 率 を 個 別 に み る と,導 水 管1万418kmの 約14%,送 水 管2万91229kmの 約7%,配 水 管55万 9179kmの 約6%が 法 定 耐 用 年 数 を超 え て い る。 さ ら に,配 水 管 の 経 年 管 比 率 の 内 訳 は,全 長 の17%を 占 め る 配 水 本 管9万4708kmが 約7%,残 る83%を 占 め る配 水 支 管46万4471km が 約6%で あ る 。 ゆ え に,水 道 管 の大 半 を 占 め る 配 水 支 管 よ り も,比 重 の 低 い 導水 管 の更 新 が 遅 れ て い る こ とが 分 か る 。 こ れ は,資 本 ス トッ ク と して は 比 重 の低 い 導 水 管 が 水 道 供 給 の ボ トル ネ ック に な る危 険性 と同 時 に,配 水 管 の 更新 が 遅 れ て い る場 合 に比 べ れ ば 少 額 の費 用 で 済 む 可 能 性 も示 唆 して い る。 こ の 老 朽 管 の置 換 と い う喫 緊 の 負 担 額 の 方 が(2-1)で 試 算 した 平 均 的 な更 新 年 額 よ り も大 きい 事 実 は,(2-1)と 同 じ手 続 き で 求 め た水 道 料 金 と そ の 上 昇 率 を み れ ば さ ら に 明 白 に な る 。 全 事 業 者 の 水 道 料 金 の 中央 値(平 均 値)は172(181)円 と 『地 方 公 営 企 業 』 の サ ン プ ル よ り わず か に高 い だ け だ が,そ の 最 大 値2013円 は最 小 値22円 の92倍 と格 差 は拡 大 して い る。 これ に 法 定 耐 用 年 数 を 超 え た 水 道 管 の 更 新 費 用 を 上 乗 せ し た 料 金 の 中 央 値(平 均 値)は248 (514)円 に上 昇 し,そ の最 大 値10620円 も最 小 値50円 の212倍 に ま で拡 大 す る 。 す な わ ち,料 金 上 昇 率 の 平 均 値 が192%と 高 い だ け で な く,上 昇 率 の 幅 に も0%か ら5400%と い う大 きな 格 差 が あ る。 これ は,事 業 年 齢 が 若 く更 新 の必 要 の な い事 業 者 が 存 在 す る一 方,老 舗 事 業 者 の 中 に は 法 定 耐 用 年 数 を超 えた 老 朽 管 の 比 率 の 高 い 事 業 者 が 存 在 す る か ら で あ る 。 さ ら に,給 水 事 業 者 と用 水 供 給 事 業 者 に分 け る と,そ れ ぞ れ の水 道 料 金 の平 均 値185円 ・ 109円 は更 新 負 担 に よ って537円 ・ll5円 に まで 上 昇 し,そ の 事 業 者 平 均 上 昇 率 は202%・13% で あ る 。 給 水 事 業 者 の平 均 料 金 が3倍 近 くに な っ て しま うの は,そ の事 業 年 齢 の 平 均 値45年 が 用 水 供 給 事 業 者 の25年 よ りず っ と古 い た め で あ る。 もっ と もク ロ ス セ ク シ ョ ン ・デ ー タか ら だ け で は,こ の経 年 管 比 率 が 上 昇 して い る か ど う か を確 か め る術 も ない 。 また,実 際 に は40年 以 上 の 耐 用 を 前 提 に して い る た め に,十 分 に計 画 的 に 更 新 で き る可 能 性 もな い わ け で は な い。 しか し,老 朽 管 の ス ム ー ス な更 新 をな し うる と期 待 す る に は,新 管 延 長 距 離 や 撤 去 管 お よ び布 設 替 延 長 距 離 の 比 率 が す べ て1%を 下 回 っ て お り,あ ま りに僅 少 す ぎ る 。 また,1995年 の 阪神 大 震 災 を契 機 に重 視 され て きた と言 わ れ る 耐 震 化 管 路 の 比 率 も未 だ に8%余 りに過 ぎ
図1水 道事 業者 の事 業年齢 岩 8 お 山 な い とい う事 実 は,布 設 替 や 新 設 管 の低 比 率 と合 わ せ て考 え れ ば,新 規 投 資 が さ ほ ど進 ん で い な い こ とを伺 わ せ る。 さ ら に,経 年 管 や 撤 去 管 の 延 長 距 離 等 は,記 載 の な い場 合 も少 な く な く,そ の 場 合 に はゼ ロ と して 集 計 せ ざ る を え な い が,こ う した デ ー タの 信 頼 性 自体 に も疑 問 が残 る。 なぜ な ら,精 査 に よ っ て増 加 す る の は,新 設 管 よ り も経 年 管 の 場 合 の 方 が は る か に多 い と思 わ れ るか ら で あ る。 最 後 に,給 水 事 業 者 と用 水 供 給 事 業 者 と の 間 で 法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管 比 率 を比 較 す る と,用 水 供 給 事 業 者 の 方 が 低 い の で,前 節 で指 摘 した よ う な用 水 供 給 の ボ トル ネ ック の不 安 は小 さい よ う にみ え る 。都 道 府 県 を事 業 主 体 とす る比 較 的 規 模 の大 き な用 水 供 給 事 業 者 な ら,更 新 投 資 も計 画 的 に な され て い る と期 待 で き るか も しれ ない 。 しか し20年 を超 え る経 年 管 の比 率 は,む し ろ用 水 供 給 事 業 者 の 方 が 高 い 。 こ う した相 違 の 説 明 に は,次 項 で 示 す よ う に,事 業 者 の給 水 開 始 時 か らの 事 業 年 齢 の 吟 味 が 不 可 欠 で あ る。 (3-2)老 舗 事 業 者 の 更 新 投 資 必 要 額 と水 道 料 金 法 定 耐 用 年 数40年 を超 え る経 年 管 は,少 な く と も事 業 を 開 始 して か ら40年 近 く経 な い 限 り は発 生 しな い は ず で あ る 。 ゆ え に,前 項 の 経 年 管 の 比 率 の 分 析 に は,事 業 開始 か らの 事 業 年 齢 を考 慮 す る必 要 が あ る 。 図1は,全1559事 業 者 の 事 業 年 齢(old)の ヒ ス トグ ラム で あ る'7)。平 均 年 齢 は44.8年 で, 前 節 の 『地 方 公 営 企 業 年 鑑 』 の サ ンプ ル よ り若 干 若 い もの の,50年 前 後 に10%を 超 え る高 い 17)表3-1の1566事 業 者 の う ち,給 水 開始 時 期 が 明確 か つ2007年 度 以 前 の1559事 業 者 が 以 下 の 分 析 対 象 で あ る 。 ゆ え に,表6の 経 年 管 延 長 距 離 は 表5Aの 距 離 よ り若 干 短 く な っ て い る 。
表5-B事 業者 年齢45年 以上 の経 年管 お よび新 管等 の延 長 距離(m)と 比率(%) 799全 事 業 者 792給 水事 業者 7用 水供 給事 業者 延長距離 総 延長 との比 率 延長距離 総 延長 との比率 延長 距離 総延 長 との比 率 導 送 配水管 総延 長 428,865,284 427,788,525 1,076,759 うち配水 管延 長 408,311,430 95.21 408,311,430 95.45 0 0.00 40年 超 の管 路 30,005,213 7.00 29,670,903 6.94 334,310 31.05% 20年 超 の 管 路 190,811,788 44.49 189,986,763 44.41 825,025 76.62 耐震化管路 38,783,784 9.04 38,423,979 ':'・ 359,805 33.42 新 管延 長 2,964,187 0.69 2,962,987 0.69 1,200 0.11 布 設替 延長 4,119,966 0.96 4,114,249 0.96 5,717 0.53 撤去管延長 3,950,742 0.92 3,945,884 0.92 4,858 0.45 出所:「 水 道 統計 』 平 成19年 度 版 よ り作 成 シ ェ ア が 集 中 して い る よ う に,ま さ に 更 新 時 期 の ピ ー ク に あ る点 で は 同 様 で あ る 。 ま た前 述 した よ う に,そ の 大 部 分 を占 め る給 水 事 業 者 の平 均 年 齢 も45年 と高 い の に,用 水 供 給 事 業 者 の そ れ は25年 とず っ と若 い 点 も 同 じで あ る。 ゆ え に,前 項 の 用 水 供 給 事 業 の老 朽 管 比 率 の低 さ は,経 営 主 体 や 規 模 の大 き さが 原 因 とい う よ り,平 均 的 な 歴 史 の 浅 さ に起 因 す る とみ な す べ きで あ る。 そ こで 「老 舗 事 業 者 」 だ け を,つ ま り事 業 年 齢 が45年 以 上 の799事 業 者 だ け を取 り出 した の が 表5-Bで あ る 。 法 定 耐 用 年 数40年 を超 え る 経 年 管 比 率 は7%に 若 干 上 昇 す る だ け だ が, 給 水 事 業 者 に比 べ て 用 水 供 給 事 業 者 の 経 年 管 比 率31%は きわ め て高 い 点 に注 目す べ きで あ る。 しか も,こ れ らの 用 水 供 給 事 業 者 は,20年 を超 え る経 年 管 比 率 も非 常 に高 い うえ に,布 設 替 や 撤 去 管 延 長 比 率 は きわ め て 低 い 。 さ ら に,表5-A・Bを 比 べ る と,事 業 者 数 の 半 分 を 占 め る にす ぎな い 事 業 年 齢45年 以 上 の799事 業 者 は,導 送 配 水 管 延 長 距 離 で は72%,40年 を 超 え る経 年 管 で は81%を 占 め る。 特 に用 水 供 給 事 業 で は,8%余 りにす ぎな い7事 業 者 が40年 を超 え る経 年 管 の93%を 所 有 して い る 。 した が っ て,事 業 年 齢45年 以 上 の老 舗 事 業 者 は,相 対 的 に規 模 が 大 きい だ け で な く,法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管 を集 中 して抱 え て い る 。 特 に,平 均 年 齢 の若 い 用 水 供 給 事 業 で は そ の傾 向 が 顕 著 で あ る。 ゆ え に,老 舗 事 業 者 の更 新 投 資 必 要 額 は前 項 試 算 の 各 事 業 者 当 た り平 均 額25億 円 ・4億 円 を大 き く上 回 る 。 す な わ ち,792給 水 事 業 者 が 法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管2万9671kmを 更 新 す る だ け で 事 業 者 当 た り37億 円,7用 水 供 給 事 業 者 が334kmを 更 新 す る に は48億 円 を要 す る こ と に な る 。 こ れ ら老 舗 事 業 者 の み の更 新 負 担 に よ る料 金 上 昇 を試 算 す る と,全799事 業 ・792給水 事 業 ・ 7用 水 供 給 事 業 の 水 道 料 金 の 事 業 者 平 均 値182円 ・183円 ・59円 は そ れ ぞ れ584円 ・588円 ・ 124円 に上 昇 す る。 上 昇 率 の事 業 者 平 均 値 は そ れ ぞ れ233%・234%・157%で あ る 。 前 項 の全 事 業 年 齢 の 料 金 や 上 昇 率 よ り高 ま る の は 当 然 で あ る にせ よ,老 舗 の用 水 供 給 事 業 者 は現 行 の
2.5倍 余 りの料 金 水 準 に まで 値 上 げ が 必 要 に な る 点 に は 注 目 す べ きで あ る 。 特 に,大 量 の 老 朽 管 を抱 え て い る に もか か わ らず,老 舗 用 水 供 給 事 業 者 の 平均 料 金 が全 用 水 供 給 事 業 者 の そ れ を 下 回 っ て い る点 は,価 格 設 定 に お い て 更 新 負 担 が 考 慮 され て い な い 可 能 性 を示 唆 して い る。 ゆ え に,規 模 の 大 きな 老舗 事 業 者 とい え ど も,老 朽 施 設 の 更 新 は不 十 分 か つ 容 易 で は な い 。 事 実,こ れ ら の 用 水 供 給 事 業 者 の 総 利 益 ・総 費 用 の 中央 値(平 均 値)は0.9(7.4)億 円 ・ 13.5(107)億 円 だ か ら,更 新 投 資 必 要 額48億 円 は平 均 総 利 益 の6倍 以 上,あ る い は 総 費 用 の半 分 近 くに相 当 し,こ れ は(2-1)で 試 算 した 末 端 給 水 事 業 者 の 平 均 的 な 更 新 投 資 の ハ ー ド ル と同 程 度 の高 さで あ る 。 さ ら に,給 水 事 業 者 に 関 して は,総 利 益 ・総 費 用 の 中 央 値(平 均 値)が0.5(2.5)億 円 ・ 7.4(25.5)億 円 だ か ら,更 新 投 資 必 要 額37億 円 は平 均 総 利 益 の 約15倍,あ る い は総 費 用 を 45%も 上 回 っ て し ま う。 これ ら の試 算 は,十 分 な 補 助 金 や 自己 資 金 の積 み 立 て が 期 待 で き な い 限 り,約 半 数 の 給 水 事 業 者 と1割 弱 の 用 水 供 給 事 業 者 は そ れ ぞ れ現 行 の3倍 余 り と2.5倍 の水 準 へ の 料 金 値 上 げ を迫 られ る こ と を示 唆 す る 。 (3-3)経 年 管 を有 す る事 業 者 の 更 新 投 資 必 要 額 と水 道 料 金 前 項 で は給 水 開 始 か ら45年 以 上 に な る 老 舗 事 業 者 の 喫 緊 の 更 新 投 資 必 要 額 を 試 算 した が, 本 項 で は 実 際 に法 定 耐 用 年 数40年 を超 え る経 年 管 を有 す る事 業 者 の更 新 投 資 必 要 額 を試 算 す る。 表6は,導 水 管,送 水 管,配 水 本 管,配 水 支 管 お よ び そ れ らの合 計 で あ る 導 送 配 水 管 に 老 朽 管 を抱 え る事 業 者 に つ い て,そ れ ぞ れ の経 年 管 比 率 を 要 約 した もの で あ る 。 ま ず,い ず れ か の 水 道 管 が 老 朽 化 して い る833事 業 者 の う ち,そ の 大 半 は給 水 事 業 者 で あ る。 これ は用 水 供 給 事 業 者 の 平 均 年 齢 が 若 い た め で あ る 。給 水 事 業 者 で は配 水 支 管 の,用 水 供 給 事 業 者 で は 送水 管 の老 朽 管 距 離 が 目立 つ の も,そ れ ぞ れ の 事 業 にお け る ウ ェ イ トが 高 い か らで あ る。 た だ し老 朽 管 の 比 率 で は,給 水 事 業 で は導 水 管 が,用 水 供 給 事 業 で は送 水 管 が 高 くな って い る 。 さ ら に,用 水 供 給 事 業 者 の 経 年 管 比 率 が 給 水 事 業 者 の そ れ よ り も高 い の も表5-Bと 同様 で あ る 。 た だ し,用 水 供 給 事 業 者 数 が 増 え,導 送 配 水 管 総 延 長 距 離 が2倍 以 上 も増 加 した た め,そ の 経 年 管 比 率 自体 は 低 下 して い る 。 注 目す べ き は,こ れ ま で と同 じ仮 定 を適 用 す る な ら,全833事 業 者 の 経 年 管 の 更 新 に総 額 3.7兆 円 を要 す る こ と で あ る 。 こ れ は(2-1)で 試 算 した年 間 更 新 投 資 必 要 総 額 の3倍 以 上 の金 額 で あ る。 そ の う え事 業 者 数 は 少 な い の で,事 業 者 当 た りで は44.5億 円 に達 し,5倍 の負 担 金 額 に な る。 こ れ を事 業 者 別 にみ れ ば,給 水 事 業 者 は44.7億 円,用 水 供 給 事 業 者 は32.6億 円 とな る。 す な わ ち,給 水 事 業 者 は前 項 の 老 舗 事 業 者 の 平 均 更新 投 資 額37億 円 を も上 回 り,用 水 供 給 事 業 者 は事 業 者 数 の増 加 に よっ て7割 弱 に 減 少 す る 。 しか し,い ず れ にせ よ,更 新 負 担 が 重 い こ
表6法 定 耐用 年数40年 を超 える導送 配水 管 を有す る事 業者 の経 年管 距離(m)比 率(%) 導送配水管 833全 事 業 者 822給 水事 業者 11用 水供 給事 業者 延 長距 離 総 延長 との比 率 延 長距 離 総 延長 との比率 延長 距離 総延 長 との比 率 導 送 配水管 総延 長 466,955,172 464,292,869 2,662,303 40年 超 の 管 路 37,081,258 7.94 36,722,750 7.91 358,508 13.47 導水管 414全 事 業 者 404給 水事 業者 7用 水供 給事 業者 導水管総延長 5,531,501 25.91 5,121,543 27.40 4,099,958 7.19% 40年 超 の導 水管 1,432,997 1,403,507 29,490 送水管 412全 事 業 者 401給 水 事 業 者 11用 水供 給事 業者 送 水管 総延 長 12,856,397 16.45 10,701,043 16.69 2,155,354 15.27 40年 超 の送 水管 2,114,920 1,432,997 329,018 配水本管 429全 事 業 者 429給 水事 業者 0用 水供 給事 業者 配 水本 管総 延長 60,319,361 10.75 60,319,361 10.75 40年 超 の配 水本 管 6,485,686 6,485,686 配水支管 664全 事 業 者 664給 水事 業者 0用 水供 給事 業者 配 水支 管総 延長 354,556,643 7.63 354,556,643 7.63 40年 超 の配 水支 管 27,047,655 27,047,655 出所:「 水 道 統計 』 平 成19年 度 版 よ り作 成 とに は 変 わ りは な く,む しろ 給 水 事 業 者 の 取 水 量 の3割 を供 給 す る用 水 事 業 者 の1割 以 上 の 更 新 負 担 が 重 い とい う事 実 の 方 が 深 刻 か も しれ な い 。 事 実,老 朽 管 を抱 え る全833事 業 ・822給 水 事 業 ・11用水 供 給 事 業 の 水 道 料 金 の 平 均 値179 円 ・180円 ・69円 は そ れ ぞ れ802円 ・812円 ・ll2円 に上 昇 す る 。 上 昇 率 の 事 業 者 平均 値 は そ れ ぞ れ358%・361%・102%で あ る 。 す な わ ち,過 半 数 の 給 水 事 業 者 の平 均 料 金 は 現 行 の4.5倍 に ま で 上 昇 す る 。 用 水 供 給 事 業 者 の料 金 も2倍 程 度 に引 き上 げ られ,こ の 卸 売 価 格 の 上 昇 が 再 び給 水 事 業 者 の 販 売 価 格 に影 響 す る の は明 白 で あ る。 こ れ ら822給 水 事 業 者 を府 県 別 に 分 け,各 地 域 の 水 道 料 金 の事 業 者 平 均 上 昇 率 を順 位 づ け た の が付 表 で あ る。 た とえ ば1位 の徳 島 県 で は,県 内 給 水 事 業 者 の58%に あ た る11事 業 者 の 料 金 上 昇 率 が40%か ら2335%ま で と幅 広 い だ け で な く,事 業 者 平 均 で も714%と 非 常 に高 い こ とが 分 か る。 も ち ろ ん,現 行 の8倍 以 上 の料 金 を現 実 に 課 す 必 要 が あ る とい うの で は な く, そ れ だ け の 資 金 が す で に法 定 耐 用 年 数 を超 え て い る水 道 管 を更 新 す る の に必 要 だ とい う こ と で あ る 。 ゆ え に,こ の 巨額 の 資 金 さ え 調 達 で きる の で あ れ ば,実 際 の料 金 値 上 げ はず っ と穏 や か な もの に で き る。 た だ し経 年 管 更新 の 喫 緊性 が な い場 合 で さ え,少 な く と も2倍 近 い事 業 者 平 均 料 金 が必 要 な こ とは す で に(2-1)で み た とお りで あ る 。 都 道 府 県 数 の 過 半 数 を超 え る27位 の神 奈 川 県 まで は,県 内 の 事 業 者 平均 料 金 を4倍 以 上 に す る ほ どの 資 金 を要 して お り,い ず れ の 府 県 も10倍 以 上 の料 金 を要 す る事 業 者 を抱 え て い る。 す な わ ち,資 金 手 当 て の必 要 額 や 緊急 性 は,地 域 に よ っ て も事 業 者 に よ っ て も多様 な の で あ
る。 特 に,『 水 道 統 計 』 の デ ー タ を信 頼 す る な ら,県 内 給 水 事 業 者 数 に 占 め る 法 定 耐 用 年 数 以 上 の経 年 管 を抱 え る事 業 者 数 の 割 合 に は,山 口県 の93%か ら宮 崎 県 の20%に 至 る 大 きな格 差 が あ る 。 こ の比 率 が 高 い か ら とい っ て 老 齢 管 比 率 が 高 い とは 限 らな い もの の,両 指 標 は 各 地 域 の必 要 資 金 額 の 喫 緊 性 と規 模 の一 定 の 目安 に な る だ ろ う。 4「 ゆ る や か な震 災 」 の 根 深 い課 題 東 北 大 震 災 前 の 日本 の 電 力 業 界 が 低 停 電 率 等 の 高 品 質 ・安 定 供 給 ぶ りを誇 っ て い た よ う に, 「世 界 で 一 番,安 心 ・安 全 な 水 道 水 」 と称 え られ て きた水 道 事 業 も,日 本 的 な 制 度 や 管 理 法 を 自負 す る資 格 は あ る し,実 際 に高 く評 価 す る 声 も少 な くな い'8)。しか し,電 力 事 業 者 と規 制 制 度 の 評 価 は震 災 後 に は 一 変 し,少 な く と も既 存 の 体 制 は 高 品 質 な供 給 面 と共 に災 害 等 へ の脆 弱 な面 を も併 せ 持 つ とみ な さ れ る よ う に な っ た'9)。ゆ え に,日 本 の水 道 事 業 と規 制 制 度 の評 価 も,同 様 な 変 化 を辿 った と して も驚 くべ き こ と で は な い 。 なぜ な ら,す で に更 新 時期 の ピ ー ク を迎 え て い る水 道 イ ン フ ラが 着 実 に老 朽 化 す る 「ゆ る や か な水 道 震 災 」 の 最 中 に あ る一 方,こ う した社 会 イ ン フ ラ崩 壊 の危 機 を指 摘 した 野 村 総 研 (2011)・ 根 本(2011)・ 玉 真(2011)に よ る様 ・々 な制 度 改 革 は ほ とん ど進 展 して い な い か ら で あ る 。 そ もそ も統 治 イ ン フ ラが 荒 廃 して い る か ら こ そ規 制 制 度 の改 革 が 先 送 りされ,そ れ ゆ え 「ゆ るや か な水 道 震 災 」 が 進 行 して い る とす れ ば,情 報 の 公 開 ・明 確 な責 任 分 担 ・迅 速 な対 策 等 に失 態 が 繰 り返 され て も不 思 議 で は な い の で あ る 。 事 実,震 災 後 の電 力 事 業 と同様, 事 業 者 ご との 喫 緊 の 正 確 な 更 新 投 資 必 要 額 は公 開 され て い な い し,そ の 責 任 が どの 程 度 事 業 者 ・自治 体 に あ り監 督 ・規 制 諸 官 庁 に あ る の か,つ ま り 自己 調 達 資 金 と政 府 補 助 金 の 見 通 し も曖 昧 なの だ か ら,迅 速 な 対 策 な ど断行 し うる は ず もな い の で あ る 。 この 根 深 い 問 題 は,電 力 事 業 をみ れ ば分 か る よ う に,水 道 事 業 が 公 営 企 業 だ か ら生 ず る とい う レベ ル の 問 題 で は な く,朽 ちて い る規 制 制 度 の 改 革 に手 さえ つ け る こ との で きな い 統 治 イ ン フ ラ の 荒 廃 に起 因 し て い る 。 しか し本 稿 で示 した よ う に,内 部 留 保 や 補 助 金 に期 待 で き な け れ ば,水 道 料 金 は今 後 半 世 紀 に わ た っ て全 事 業 者 な い し給 水 事 業 者 平 均 で1.9倍 に引 き上 げ ざ る を え な い 。 もち ろ ん, ほ とん ど引 き上 げ る必 要 の な い 事 業 者 もあ れ ば,10倍 以 上 に引 き上 げ な け れ ば な ら な い事 業 者 もあ り,そ の必 要 性 は 一様 で は な い 。 しか し,こ の ま ま で は料 金 格 差 が 拡 大 す る こ とは確 実 な の で あ る。 さ ら に,法 定 耐 用 年 数 を超 え る経 年 管 を抱 え る 事 業 者 に つ い て の 喫 緊 の 更 新 額 の 試 算 で は, 事 業 問 や 地 域 間 の 格 差 は い っそ う拡 大 す る。 そ の 負 担 額 を水 道 料 金 に含 め れ ば,全 事 業 者 な 18)世 界経 済 フォーラム報告書 の指摘 であ り,吉 村(2009,p.148)を 参 照。 日本の水資 源の管理 や制 度 につ いては,MurakamiandDixon(2006)やUedaandBenouahi(2009)を 参照 。 19)経 済学的 なベス トミックス論 か らみ た電 力市場改 革論 について は,た とえば松 村敏弘(「 電力市 場 制度改革 の視 点」 『日本経 済新聞』2011年12月20日)を 参照。