Title
天の思想−向象賢から蔡温へ−
Author(s)
糸数, 兼治
Citation
史料編集室紀要(13): 73-95
Issue Date
1988-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/7389
Rights
沖縄県立図書館史料編集室
天
の
思
想
-向
象
賢
か
ら
察
温
へ
糸
数 兼治
天 は 儒 教 思 想 の 中 心 概 念 を な す も の で あ る が 、 そ の 意 味 す る 所 は 必 ず し も 一 様 で は な い 。 朱 子 は 経 伝 中 に 見 え る 天 に つ い て 凡 そ 三 つ の 考 え 方 の あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 ま 個 、 経 伝 中 の 天 の 字 を 間 ふ 。 日 -、 人 目 か ら 看 得 し て 分 暁 す る を 要 す れ ど も 、 也 た 蒼 々 た る も の と 説 -あ -、 (-) 也 た 主 宰 す る も の と 説 -あ -、 也 た 単 に 理 と 訓 ず る 時 あ -。 す な わ ち 次 の 三 種 で あ る 。 ‖ 蒼 々 た る も の ○ 主 宰 す る も の8
理
日 は 形 体 を 有 す る 自 然 的 物 理 的 天 を 意 味 し 、 例 え ば 柳 宗 元 が 「 天 地 は 大 な る 成 果 な -。 元 気 は 大 な る 癖 痔 な -。いづ く お の づ (2 ) 陰 陽 は 大 な る 草 木 な り 。 そ れ 烏 ん ぞ 能 く 功 を 質 し 禍 を 罰 せ ん や 。 功 は 白 か ら 功 、 禍 は 白 か ら 禍 」 な ど と い う 場 合 の 唯 物 的 天 で あ -、 口 は 人 格 的 有 意 志 的 天 で あ っ て 、 古 -か ら 中 国 の 民 族 信 仰 の 中 に 見 ら れ る 祖 先 神 ま た は 自 然 (3 ) う 神 的 性 格 を も っ た 上 帝 を 意 味 す る 。 例 え ば ﹃詩 経 ﹄ や ﹃論 語 ﹄ ﹃孟 子 ﹄ に 「 天 の 威 を 畏 る 」 「罪 を 天 に 獲 れ ば 、 (4 ) (5 ) 宿 る 所 な し 」 「大 を 以 っ て 小 に 事 ふ る は 、 天 を 楽 し む な -。 小 を 以 っ て 大 に 事 ふ る は 、 天 を 畏 る る な り 」 な ど と あ る 天 は 、 人 間 界 を 支 配 す る 人 格 的 主 宰 的 天 を 意 味 し 、 韓 愈 が 「吾 、 意 ふ に 、 天 そ の 呼 び 且 つ 怨 む る を 聞 け ば 、 こ れ 即 ち (夫 地 に ) 功 あ る 者 は 賞 を 受 -る こ と 必 ず や 大 な -。 そ の 蔦 (天 地 ) に 禍 す る 者 は 、 罰 を 受 -る こ と 亦 た 大 (6 ) ひ つ な り 」 と 述 べ て い る の は 天 意 を 認 め た も の で あ -、 蘇 東 攻 が 「 天 は 必 す (必 然 的 な も の た る ) べ き か 、 (し か る に ) た か い の ち な が 賢 者 は 必 ず し も (位 ) 貴 か ら ず 、 仁 者 は 必 ず し も 寿 か ら ず 。 天 は 必 す べ か ら ざ る か 、 (し か る に ) 仁 者 は 必 ず 後 (千 (7 ) 孫 ) あ り 。 (中 略 ) 吾 、 見 る 所 聞 -所 を 以 っ て 之 を 考 ふ る に 、 そ の 必 す べ き や 審 か な -」 と い う の も 、 畢 克 人 格 (8 ) 的 主 宰 的 天 観 念 の 表 明 と み て よ か ろ う 。 更 に 漠 代 に 盛 行 し た 董 仲 野 の 天 人 相 関 思 想 (災 異 説 ) も こ れ に 属 す る も の と 思 わ れ る 。 日 は 朱 子 に よ っ て 代 表 さ れ る 考 え 方 で あ っ て 「 天 は 即 ち 理 な -」 と 規 定 さ れ る 。 こ の 宋 子 に 代 表 さ れ る 天 の 解 釈 は ; 口 と 対 立 す る よ う に も 見 え る が 、 実 は ; 口 を 包 摂 す る よ -高 次 の 概 念 規 定 な の で あ っ て 、 理 と し て の 天 は 日 の 形 体 を 具 え た 蒼 々 た る 自 然 的 天 と 口 の 畏 敬 の 対 象 と し て の 主 宰 的 天 を 含 み 、 且 つ 口 に つ い て は 天 の も つ 主 宰 的 機 能 を 認 め つ つ 、 し か も 主 宰 す る も の は 理 で あ る と し 、 上 帝 の も つ 宗 教 的 神 秘 性 を 剥 奪 し て 天 に 対 す る 合 理 的 な 解 釈 が 与 え ら れ る の で あ る 。 栄 子 は ﹃論 語 集 註 ﹄ に お い て ﹃論 語 ﹄ の 本 文 「王 孫 買 問 う て 日 -、 よ む し し う 其 の 奥 に 嫡 ぴ ん 与 り は 、 寧 ろ 竃 に 嫡 び よ と は 、 何 の 謂 い ぞ や 、。 子 日 -、 黙 ら ず 、 罪 を 天 に 獲 れ ば 、 宿 る 所 無 き な (9 ) り 」 に 註 し て 次 の 如 -述 べ て い る 。 -7
4-た ぐ い 天 は 即 ち 理 な -。 そ の 尊 き こ と 対 な き な り 。 奥 ・ 竃 の 比 す べ き に 非 ず 。 理 に 逆 ら へ ば 、 即 ち 罪 を 天 に 獲 る 。 た だ 山豆 に 奥 。 竃 の 能 -宿 る 所 に 嫡 び て 免 か れ ん や 。 但 だ 当 に 理 に 順 ふ べ き の み に し て 、 特 に 当 に 竃 に 嫡 ぶ べ か ら (10 ) ざ る の み な ら ず 、 亦 た 奥 に も 嫡 ぶ べ か ら ざ る を 言 ふ 。 ﹃論 語 ﹄ の 天 を 理 と 解 す る の は 、 い さ さ か 無 理 が あ る と い わ れ る 。 ﹃論 語 ﹄ の 天 は 人 格 的 有 意 志 的 天 と 解 す べ き で あ っ て 、 す で に 銭 大 師 に よ る 次 の よ う な 反 論 が あ る 。 宋 儒 の 性 は 即 ち 理 な り と 謂 ふ は 是 な る も 、 天 は 即 ち 理 な -と 謂 ふ は 、 恐 ら -は 然 ら ず 。 「罪 を 天 に 獲 れ ば 、 宿 る 所 な し 」 と は 、 天 に 蒔 る な -。 山豆 に 理 に 蒔 ら ん や 。 詩 に 云 ふ 、 天 の 慾 を 敬 し み 、 天 の 威 を 畏 る と 。 理 に か わ 豊 に 怒 と 威 あ ら ん や 。 又 云 ふ 、 天 の 揺 る を 敬 し む と 。 理 は 天 よ -出 づ る と 謂 ふ は 則 ち 可 な れ ど も 、 天 は 即 ち I; ) 理 な -と 謂 ふ は 則 ち 不 可 な -。 し か る に 朱 子 の 天 解 釈 は 次 の 通 -で あ る 。 周 問 ふ 、 「罪 を 天 に 獲 る 」 に つ き 、 集 註 に は 「 天 は 即 ち 理 な り 」 と 日 へ り 。 此 れ 罪 を 蒼 々 た る の 天 に 獲 る を そ も そ も 指 す か 、 抑 罪 を 此 の 理 に 得 る (を 指 す ) か と 。 日 -、 天 の 天 た る 所 以 の 者 は 理 の み 。 天 は 此 の 道 理 あ る に 非 ざ れ ば 、 天 た る こ と 能 は ざ る な り 。 故 に 蒼 々 た る も の は 、 即 ち 此 の 道 理 の 天 な り 。故 に 日 ふ 「 そ の (形 ) 体 は 即 ち 之 を 天 と 謂 ひ 、 そ の 主 宰 す る も の は 即 ち 之 を 帝 と 謂 ふ 」 と 。 「父 子 親 あ -、 君 臣 義 あ -」 の 如 き は 、 是
カく の 理 此 の 如 き と 錐 も 、 亦 須 ら -是 れ 上 面 に 箇 の 道 理 あ -て 、 教 (親 。 義 ) も 此 の 如 -始 め て (教 た る を ) 得 (12 ) べ し 。 但 だ 道 家 の 説 の 如 -、 真 に 箇 の 三 清 大 帝 あ -て 、 衣 服 を 著 し て 此 の 如 -坐 す る に は 非 ざ る の み 。 す な わ ち 天 と は 形 体 に つ い て い い 、 帝 と は そ の 主 宰 す る 点 か ら い う 。 形 体 と し て の 蒼 々 た る 天 (気 ) は 、 常 に 運 行 し 周 流 し て 万 物 を 生 み 出 し て や ま ぬ も の で あ -、 そ こ に は 主 宰 す る も の (育 -理 ) が 当 然 に 予 想 さ れ る が 、 そ れ は 「無 心 に し て 化 を 成 す 」 も の で あ っ て 、人 間 の よ う に 意 志 や 感 情 を 有 し 、罪 悪 を 審 判 す る よ う な も の で は な い 。 ごと 蓋 し 気 は 則 ち 能 -凝 結 造 作 す る も 、 理 は 却 っ て 情 意 な -、 計 度 な -、 造 作 な し 。 (中 略 ) 理 の 若 き は 、 即 ち た だ こ の か れ 只 是 箇 の 浄 潔 空 間 底 世 界 (さ っ ぱ -と し て き れ い な 、 何 も な い 広 々 と し た 世 界 ) に し て 、 形 連 な -' 他 却 っ あ た て 造 作 す る 会 は ず 。 気 (形 体 と し て の 天 ) は 則 ち 能 -醍 醸 凝 集 し て 物 を 生 ず る な -。 但 だ 此 の 気 あ れ ば 、 則 (13 ) ち 理 は 便 ち そ の 中 に 在 り 。 -76-そ れ が し と り ひ き た だ 某 謂 ふ に 、 天 地 は 別 に 勾 当 な し 。 只 是 物 を 生 ず る を 以 っ て 心 と な す 。 〓 花 の 気 運 転 流 通 し て 、 略 ≧ 停 る な き の 間 、 只 是 許 多 の 万 物 を 生 み 出 す の み 。 程 子 の 「 天 地 は 心 な -し て 化 を 成 し 、 聖 人 は 心 あ -て 為 す な し 」 と こ れ し 謂 へ る を 問 ふ 。 日 -、 這 是 天 地 無 心 の 処 を 説 ふ 。 且 つ 「 四 時 行 は れ 、 百 物 生 ず 」 る が 如 き は 、 天 地 何 の 心 を (14 ) 容 る る 所 ぞ 。 聖 人 に 至 -て は 、 則 ち 理 に 順 ふ の み 。 復 た 何 を か 為 さ ん や 。 そ のも の し こ か し こ 蒼 々 た る も の 、 之 を 天 と 謂 ふ 。 運 転 周 流 し て 己 ま ず 、 便 ち 是 れ 那 箇 。 而 し て 今 説 ふ 、 天 箇 の 人 の 那 裏 に 在 る
し っか さ 有 り て 罪 悪 を批判 す と 。 固 よ -可 なら ず 。 説 き て 道 ふ 、 仝-之 を 主 ど る (主 宰す る ) 者 な し と。 又可 なら ず。 こ と こ ろ (15 ) 這 の 裏 は 人 の 見 得 す る を 要 す 。 ま た だ 間ふ ' 天 地 の 心も 亦 た 霊な り や 否 や 。 還た 只 是 漠然と し て 為す な き か 。 日 -、 天 地 の 心 は 是 れ 霊 な ら ず と 遣 カく (16 ) う べ か ら ず 。 但 だ 人 の 如 -悠 地思 慮 せ ざ る の み 。 い ま し し し そ れ が し か ん が ふ る と こ ろ こ も の 如 今 人 説 ふ ' 天 は 蒼 々 た る も のの 謂 に 非 ざ る な り と 。 某 の 看 采 に 拠 れ ば 、 亦 這 箇 の 蒼 々 た る 底 を 捨 て る こ と (r= ) 得 ず 。 (18 ) 「帝 は 是 れ 、理 、 主 (辛 ) と 為 る な -」 で あ っ て 主宰す る も の は 無心 な る 理 で あり 、 形体的 天は こ の 理 を 有す る こ と に よ っ て 、 初 め て 天 た り う る 。 栄 子 に よれ ば ' こ の 理 は 二 重 構 造をも つ 。 「天 下 の 物 に 至 -て は 則 ち必 ず 各 ≧ 然 る 所以 の 故 と 、 そ の 当 に 然 る べ き 所 の 別 と あ -' 所 謂 ゆ る 理 な -」 と い わ れ る よ う に 、 理 は 「所 以 然 の 故 」 と 「所 当然 の 則 」 と し て 説明 さ れ 、両 者 は 理 一 分 殊 の 関 係 に お い て 把 握 され て い る 。 こ れ を 「父 子 親あ-」 に つ い て みる と 「親 に 仕 え るに は 孝 で あ る べ し 」 が 「所当然 の 則 」 で あ-「親 に 仕 え るに は 何 故 孝 で あ る べ き か 」 が 「所 以 然 の 故 」 に あ た る 。す な わ ち 「所 以 然 の 故 」 は 「所 当 然 の 則 」 の 根 拠 理 由 と な る も の で あ り 「窮 極 の 理 」 「道 理 と し て の 天 」 「太 極 」 と い う こ と に な る の で あ る 。と こ ろで 窮極 の 理 で あ る 「所 以 然 の 故 」 は 「所 当 然 の 則 」 を 1 事 1 物 に つ い て 窮 め る こ と に よ っ て 脱然貫 通 す る も の と され る が 、 こ れ に は 理 論 的 飛 躍が あ っ て 「所 以 然 の カ 故 」 は '易う べ か ら ざ る も の 、 理 の 自 然 と し て 必 然 的 に そ う なら ざ る を 得 な い も の で あ っ て 、 こ れ を 実 践 的立 場
ベ か ら い え ば 、 当 に 然 る べ -し て 巳 む 容 か ら ざ る も の と し て 内 的 に 自 覚 さ れ る も の に す ぎ な い も の の よ う で あ る 。 あ た 従 っ て 「何 故 孝 で あ る べ き か 」 と 問 わ れ た 場 合 、 「 お の ず か ら 己 む 容 わ ざ る 」 (∼ せ ず に は お か な い 、 ∼ し な い で は い ら れ な い ) と 答 え る 以 外 、 如 何 な る 説 明 も 不 可 能 に 近 い 。 そ れ は あ た か も 春 が 生 育 さ せ る と 秋 が 枯 ら す の を 止 め え な い の と 同 様 の 自 然 の 勢 の よ う な も の で あ っ て 、 つ ま る と こ ろ 窮 極 の 理 は 無 規 定 無 内 容 の も の で あ る と い (19 ) 1つ ○ さ て 天 と い い 、 命 と い い 、 性 と い い 、 理 と い う も 、 こ の 四 者 は 結 局 異 名 同 義 に す ぎ な い 。 問 ふ 、 天 と 命 、 性 と 理 の 四 者 の 別 は 、 天 は 則 ち そ の 自 然 に 就 き て 之 を 言 ひ 、 命 は 則 ち そ の 流 行 し て 物 に 賦 す る に 就 き て 之 を 言 ひ 、 性 は 則 ち そ の 全 体 に し て 万 物 得 て 以 っ て 生 と 為 す 所 に 就 き て 之 を 言 ひ 、 理 は 則 ち そ の し た 事 々 物 々 各 ≧ そ の 則 あ る に 就 き て 之 を 言 ふ 。 合 し て 之 を 言 ふ に 到 得 り て は 、 則 ち 天 は 即 ち 理 な り 、 命 は 即 ち カ 性 な -、 性 は 即 ち 理 な -。 是 れ 此 -の 如 き や 否 や 。 (20 ) 冒 -、 然 -。 -78-天 命 、 天 性 、 天 理 、 天 道 な ど と 熟 し た 場 合 で も す べ て 天 の 同 義 語 で あ っ て 天 の 思 想 を 考 察 す る 場 合 、 こ う し た (21 ) 用 語 に も 留 意 す る 必 要 が あ る 。 以 上 天 に 対 す る 考 え 方 を 概 括 的 に 述 べ て み た が 、 次 に こ の 点 を ふ ま え つ つ 、 向 象 賢 及 び 察 温 に お い て 天 が 如 何 な る も の と し て 観 念 さ れ て い た の か 検 討 を 加 え て み よ う 。 二
向 象 賢 が 著 し た ﹃中 山 世 鑑 ﹄ ( 1 六 五
〇
年 ) 中 に は 彼 の 天 観 が い か な る も の で あ っ た か を 推 測 せ し め る 若 干 の 記 述 が 存 す る 。 今 こ れ を 抄 出 す れ ば 次 の 通 -で あ る 。 日 義 本 王 の 項 其 (即 位 の ) 明 年 天 下 大 二 飢 健 、 次 ノ 年 ヨ リ 打 続 疾 病 有 テ 、 人 民 半 ハ 失 ニ ケ ル 間 、 君 大 二 歎 キ 思 召 シ 、 群 臣 ヲ 被 召 (中 略 ) 今 ノ 疾 病 ハ 併 朕 力 不 徳 二 依 ル へ シ 。 天 下 天 下 之 天 下 、 非 一 人 之 天 下 卜 云 ナ レ ハ 、 誰 ニ カ 家 国 ヲ ハ 可 譲 卜 問 給 ケ レ ハ 、 群 臣 威 恵 祖 世 主 ノ 嫡 子 英 祖 ヲ ソ 挙 ニ ケ ル 。 君 大 二 悦 、 サ ラ ハ ト テ 英 祖 ヲ 被 召 、 試 二 国 政 ヲ 司 ラ シ メ 給 ケ ル こ 、 (中 略 ) 景 星 出 、 卿 雲 興 、 疾 病 止 ニ ケ リ 。 口 英 祖 王 の 項 北 夷 大 嶋 重 訳 来 朝 ス 。 (中 略 ) 夷 訳 日 、 我 国 二 有 黄 考 日 、 天 無 烈 風 淫 雨 、 海 不 揚 波 三 年 也 。 海 不 揚 波 、 以 聖 徳 下 通 於 地 也 。 無 烈 風 淫 雨 、 以 聖 徳 上 通 干 天 也 。 意 者 、 今 中 国 有 聖 人 乎 。 何 往 朝 之 哉 卜 教 ケ ル 間 、 是 以 朝 貢 ス ト ソ 奏 シ ケ ル 。 ru 察 度 王 の 項 其 後 中 山 王 西 成 菱 給 ケ レ ハ 、 時 ノ 摂 政 ト モ 五 歳 ノ 世 子 ヲ 立 ン ト シ ケ ル ヲ 、 国 人 愈 議 有 ケ ル ハ 、 亡 君 西 威 ノ 賞 罰 ヲ 顧 謂 二 、 一 ト シ テ 先 王 ノ 旧 規 二 当 り タ ル ハ 無 シ 、 是 二 依 テ 国 家 ノ 災 害 止 時 無 シ テ 、 天 下 ノ 民 塗 炭 ニ落 タ リ 。 是 モ 只 幼 少 ノ 時 、 践 所 有 テ 母 后 政 ヲ 取 営 シ ニ 依 テ 也 。 (中 略 ) 不 如 、 世 子 ヲ 廃 テ 徳 ア ル 人 ヲ 立 テ 、 国 家 安 寧 二 致 ン ニ ハ ト テ 、 世 子 ヲ 廃 テ 浦 添 按 司 (察 度 ) ヲ ソ 即 位 成 奉 ル 。 浦 添 按 司 既 二 立 給 テ ヨ リ (中 略 ) 災 変 日 二 増 消 息 シ テ 、 国 家 豊 鏡 ニ テ 目 出 度 御 代 ニ ソ 成 ニ ケ リ 。 . 察 度 王 モ 後 ニ ハ 騰 奮 ノ 御 心 ヤ 出 来 ケ ン 、 高 ヨ サ ウ リ ト テ 数 十 丈 ノ 高 楼 ヲ 作 り 遊 観 ヲ シ 給 ケ ル カ 、 或 時 此 楼 二 上 り 戯 言 こ 、 常 二 此 楼 上 二 居 給 程 ナ ラ ハ 、 毒 蛇 ノ 恐 モ 無 物 ヲ ト ソ 宣 ケ ル 。 天 道 モ 彼 奪 ヲ 懲 給 ケ ル ニ ヤ 、 果 シ テ 其 夜 楼 上 ニ テ 、 君 ノ 左 ノ 御 手 毒 蛇 ノ 為 ニ ソ 触 タ リ ケ ル 。 ㈲ 尚 徳 王 の 項 尚 徳 立 給 テ ヨ リ 、 君 ノ 徳 ヲ ハ 不 修 給 、 朝 暮 漁 猟 二 心 ヲ 荒 ミ 、 暴 虐 無 道 ノ ミ 事 ト シ テ 、 民 ヲ 傷 害 ス ル 事 案 柑 ニ モ ス キ タ リ 。 (中 略 ) サ レ バ 天 道 ハ 盈 ヲ 贋 習 ナ レ ハ ' 彼 暴 虐 天 こ ヤ コ タ へ ケ ン 、 在 位 九 年 行 年 未 夕 三 十 二 モ 不 満 シ テ (中 略 ) 菱 給 ケ レ ハ 云 々 。 -8 0-㈲ 尚 円 王 の 項 大 甲 日 、 天 作 聾 、 猶 可 違 、 自 作 壁 不 可 活 ト テ 、 暴 虐 ノ 後 ハ 必 ス 天 諌 難 遁 境 ニ ヤ 、 尚 徳 御 歳 末 夕 三 十 二 モ 不 満 シ テ (中 略 ) 蓑 給 ケ ル 間 、 時 ノ 三 公 九 卿 幼 稚 ノ 世 子 ヲ 立 ン ト テ 群 臣 ヲ 招 キ 牛 ノ 耳 ヲ ソ 切 タ リ ケ ル 。 群 臣 モ 皆 心 中 ニ ハ 亡 君 尚 徳 ノ 暴 虐 ヲ 悪 シ ー ハ 思 ナ カ ラ 、 時 ノ 権 威 二 恐 催 レ 、 或 ハ 他 二 譲 リ テ ロ ヲ 閉 シ 、 戎 ハ 己 ヲ 顧 テ 言 ヲ 出 サ 、 ル 処 、 (中 略 ) 老 翁 進 出 テ 申 ケ ル ハ 、 先 王 尚 徳 ハ 自 暴 自 棄 ノ 者 こ テ 、 先 祖 ノ 勤 苦 ヲ モ 忘
レ テ 、 極 楽 事 ハ 、 夏 ノ 集 力 肉 林 酒 池 ヲ ナ シ キ 。 虐 民 事 ハ 、 商 村 力 厚 賦 歓 以 実 鹿 台 之 財 二 不 異 。 是 二 依 テ 民 ノ 此 日 何 力 亡 ン 事 ヲ 翼 事 ヤ 切 ナ リ 。 尚 徳 今 自 滅 ノ 時 至 リ ヌ 。 凡 ソ 天 道 ハ 、 悪 ヲ ニ ク ン デ 善 二 与 ス ル 習 ナ レ ハ 、 早 ク 世 子 ヲ 殺 シ テ 聖 徳 ノ 御 鎖 側 (尚 円 ) ヲ 立 テ 、 国 家 ヲ 安 寧 二 致 ン ヤ ト 無 所 憧 申 タ リ ケ レ バ 云 々 。 ㈹ 尚 宣 威 王 の 項 尚 宣 威 (宣 託 ヲ ) 聞 召 給 テ 、 我 其 徳 二 非 ス シ テ 帝 坐 ヲ 汚 シ タ ル 事 、 是 天 ノ ト カ メ 有 ケ ル ソ ヤ ト テ 、 在 位 六 箇 月 ニ シ テ 御 位 ヲ ノ カ レ テ 、 世 子 久 米 中 城 王 子 ヲ ソ 即 位 成 奉 -給 。 是 為 尚 真 公 。 窃 二 念 こ 、 神 ノ 尚 宣 威 ヲ 廃 給 事 ハ 、 仝 ク 世 子 ヲ 廃 テ 自 立 シ 給 へ タ ル ヲ 悪 ミ 給 ニ ハ 非 サ ル へ シ 。 只 尚 貴 公 聖 ナ レ ハ 也 。 (中 略 ) 尚 宣 威 モ 徳 尚 貴 公 ヨ リ モ 勝 レ タ ル モ ノ ナ ラ ハ 、 神 モ 如 何 テ カ 人 望 ニ ソ ム キ ' 尚 宣 威 ヲ ハ 廃 給 ン ヤ 。 右 の 記 述 に よ れ ば 、 向 象 賢 の 天 に 対 す る 考 え 方 は 、 人 格 的 有 意 志 的 天 と い う こ と に な る で あ ろ う 。 先 の 栄 子 の 分 類 で い え ば 口 の 主 宰 す る も の と し て の 天 観 で あ る 。 す な わ ち 天 は 超 越 的 絶 対 的 存 在 と し て 人 事 に 直 接 関 与 し こ れ を 支 配 す る も の と し て 観 念 さ れ て お -、 人 は た だ 天 意 に 随 う こ と に よ っ て の み 生 存 を 許 さ れ る と い う も の で あ る 。 こ と に 天 命 が 改 ま る こ と に よ っ て 王 統 の 交 替 が 行 わ れ る と す る 考 え 方 が み ら れ る こ と は 留 意 す べ き で あ っ て 、 例 え ば 舜 天 王 統 最 後 の 王 義 本 が 、 (天 の 下 し た ) 災 異 に よ っ て 退 位 を 余 儀 な -さ れ 日 、 更 に 英 祖 王 統 末 の 王 西 成 が 幼 少 に し て 即 位 し た た め 母 后 の 専 政 を 招 い て 天 命 を 失 な い O p 第 一 尚 氏 王 統 は 暴 虐 無 道 の 王 尚 徳 に 至 っ て 天 課 を 受 け た ㈲ ㈲ 、 と す る の が そ れ で あ る 。 災 異 が 為 政 者 に 対 す る 天 の 意 志 で あ る と す れ ば 、 災 異 を 終 息 せ し め る に は 、 唯 一 そ の 原 因 を 除 去 (為 政 者 の 交 替 ) す る 以 外 に 方 法 は な い の で あ っ て 、 人 事 を 尽 -せ ば 災 異 が 止 む と い う
も の で は な い 。 か -て 王 統 の 交 替 が 行 わ れ る の で あ っ て 、 こ う し た 考 え 方 は 、 い わ ゆ る 天 人 相 関 思 想 (災 異 説 ) に 類 す る も の と み て よ い 。 向 象 賢 の 天 に 対 す る 考 え 方 は 以 上 の 通 -で あ る が 、 次 に ﹃中 山 世 譜 ﹄ ( 一 七 二 六 年 ) に よ っ て 察 温 の 天 に 対 す る 考 え 方 を 考 察 し て み よ う 。 わ れ の ぞ も と な 弧 開 -、 夏 后 股 周 は 裳 を 垂 れ て 治 に 荏 み 、 而 し て 天 下 項 を 称 す 。 そ の 衰 ふ る に 及 び て や 、 天 に 惇 -弊 を 作 し 、 み ず き み よ そ 而 し て 万 民 怨 を 生 ず と 。 皆 白 か ら 為 す な り 、 豊 に 必 ず し も 之 を 天 と 請 は ん や 。 書 (経 ) に は 、 后 は 克 -厭 の か た か た こ こ 后 た る こ と を 難 し と し 、 臣 は 克 -厭 の 臣 た る こ と を 難 し と す と 酔 ひ 、 詩 (経 ) に は 天 の 威 を 畏 れ 、 時 に 之 を し (22 ) い み ふ か 保 つ と 日 へ -。 そ の 旨 微 し 。 (﹃ 中 山 世 譜 ﹄ 序 ) み ず 人 主 の 存 亡 禍 福 は 、 天 の 致 す 所 と 日 ふ と 雄 も 、 実 は 白 か ら 招 -所 な -。 集 村 幽 痛 は 聖 王 の 孫 を 以 っ て 亡 び 、 漠 祖 唐 宗 は 布 衣 の 身 を 以 っ て 興 る 。 皆 白 か ら 為 す な -、 豊 に 必 ず し も 之 を 天 と 謂 は ん や 。 故 に 伊 声 は 太 甲 に そ つ つ し み ず は か い に し え 告 げ て 日 -、 嗣 王 厭 の 身 を 紙 め と 。 周 公 は 成 王 を 戒 し め て 日 -、 天 命 も て 白 か ら 度 れ と 。 皆 古 の 聖 賢 に し て 、 そ の 君 を 啓 辿 す る 所 以 の 者 、 1 日 よ り 出 づ る が 如 し 。 そ れ 亦 た 恩 は ざ る ぺ け ん や 。 (﹃ 中 山 世 譜 ﹄ 歴 代 総 論 ) - 82-こ こ に 見 ら れ る 天 の 思 想 は 、 明 ら か に 人 格 的 有 意 志 的 天 の 否 定 で あ っ て 、 向 象 賢 の 考 え 方 に 真 向 か ら 対 立 す る も の で あ る 。 す な わ ち 為 政 者 の 存 亡 禍 福 は 自 か ら の 行 為 に よ っ て 白 か ら 招 い た も の で あ り 、 天 の 意 志 に よ る も の で は な い 。 従 っ て 君 臣 た る も の は 天 理 の 尊 厳 性 を 自 覚 し (天 の 威 を 畏 れ ) 、 天 理 に 背 -こ と が な い よ う に そ の 身 を 紙 み 、 天 命 (天 理 ) に よ っ て 自 か ら の 行 動 を 度 り ' 恐 健 修 省 し て 天 理 の 体 現 に 努 め る べ き で あ る と い う 。 こ れ
は 天 は 即 ち 理 な -と す る 朱 子 の 考 え 方 を 基 本 的 に 受 け 継 ぐ も の で あ -、 天 の 意 志 を 否 定 す る こ と に よ っ て 人 間 の 自 律 化 を 図 -、 責 任 主 体 と し て の 人 間 の 新 た な 在 -様 を 提 示 し た も の と い う こ と が で き よ う 。 義 本 王 に 関 す る 向 象 賢 と 察 温 の 見 解 が 鋭 -対 立 す る の は 、 仝 -両 者 の 天 に 対 す る 考 え 方 の 相 違 に よ る も の で あ る 。 す な わ ち 向 象 賢 は 義 本 王 に つ い て 次 の 如 く 述 べ て い る 。 窃 二 念 こ 、 義 本 王 之 徳 、 尭 也 。 英 祖 王 之 徳 、 舜 也 。 錐 有 英 祖 王 、 而 無 義 本 王 、 如 何 有 利 国 家 哉 。 (中 略 ) 是 則 義 本 王 、 養 賢 及 万 民 給 ノ 事 也 。 末 代 難 有 タ メ シ 也 。 (﹃ 中 山 世 譜 ﹄ 義 本 王 の 条 ) 賢 (英 祖 ) を 挙 げ て 徳 沢 を 万 民 に 及 ぼ し 、 自 か ら は 天 意 に 順 が っ て 潔 -位 を 退 い た 義 本 王 は 聖 天 子 亮 に も 比 す べ L と い う の で あ る 。 し か る に 察 温 の 義 本 王 に 対 す る 評 価 は ま こ と に 手 き び し い も の が あ る 。 カ 義 本 は ' 磯 疫 の 故 を 以 っ て 鴻 業 を 他 人 (英 祖 ) に 授 -。 何 ぞ そ の 資 質 削 弱 た る こ と 斯 -の 如 -之 れ 甚 だ し き こ ゃ 。 秦 の 水 、 湯 の 早 は 皆 災 変 な -。 聖 人 す ら 尚 は 災 変 を 免 れ 難 し 。 況 ん や 他 人 を や 。 此 の 時 に 当 -、 惟 れ 能 千 -徳 を 修 め ' 愈 ∼ 理 政 に 勤 む れ ば 、 則 ち 災 変 消 む べ -、 人 心 定 ま る べ し 。 山豆 に 一 朝 の 菱 を 以 っ て 百 世 の 業 を 廃 す ぺ け ん や 。 (﹃ 中 山 世 譜 ﹄ 歴 代 総 論 ) 災 変 は 単 な る 自 然 現 象 (物 理 的 天 の 常 理 ) に す ぎ ず 、 天 は そ れ 自 体 害 を 与 え ん と す る 意 志 を 有 す る も の で は な い 。 聖 人 す ら 災 変 を 免 れ な い の で あ る か ら 、 天 を 畏 怖 す る 必 要 は 仝 -な い の で あ っ て 、 天 理 に 順 が い 人 事 を 尽
-す (理 政 ) こ と に よ っ て 災 変 を 克 服 す る こ と こ そ が 為 政 者 の 取 る べ き 道 で あ る 。 1 朝 の 菱 に よ っ て 百 世 の 業 を 廃 し た 義 本 王 は そ の 資 質 ま こ と に 削 弱 な る 者 と い う 外 な い と い う の で あ る が 、 こ れ は 天 意 か ら 解 放 さ れ た 自 律 的 主 体 的 人 間 観 に 立 つ 察 温 の 立 場 か ら す れ ば 、 当 然 の 帰 結 で あ ろ う 。 と こ ろ で 自 然 現 象 の 中 に は 、 あ た か も 天 意 を 思 わ せ る も の が あ る の は 事 実 で あ っ て 、 天 意 の 否 定 は な か な か 容 易 な こ と で は な い 。 例 え ば 落 雷 現 象 に つ い て い え ば 、 ﹃東 汀 随 筆 ﹄ に 明 治 四 十 三 年 の こ と と し て 掲 げ る 教 員 雷 死 事 件 は 著 者 の 喜 舎 場 朝 賢 を し て 「 天 罰 実 二 恐 ル へ キ カ ナ 」 と 云 わ し め た 程 不 可 思 議 な も の で あ る 。 教 員 某 ハ 教 場 二 於 テ 雷 二 打 タ レ テ 死 ス 。 其 ノ 雷 ノ 所 為 甚 ダ 怪 ム 二 足 ル コ ト ア リ 。 初 メ 教 員 某 ハ 柱 ヲ 背 ニ シ テ 立 チ 、 生 徒 等 二 教 諭 ス ル 一 利 那 、 校 庭 二 轟 然 ト シ テ 迅 雷 発 声 シ 、 其 ノ 雷 直 二 校 房 二 入 り 糎 転 走 り 往 キ 、 某 ガ 立 チ ア ル 処 二 至 テ 某 ヲ 打 チ 殺 シ タ リ 。 好 テ 人 ヲ 択 デ 打 チ タ ル モ ノ 、 如 シ 。 其 ノ 教 員 某 ハ 、 糸 満 町 出 身 ノ 者 ナ ル ガ 、 其 ノ 父 ハ (中 略 ) 曽 テ 壮 年 ノ 頃 海 中 二 出 テ (中 略 ) 同 業 者 卜 喧 嘩 ヲ 惹 起 シ 、 憤 怒 二 任 セ テ 遂 二 同 業 者 ヲ 溺 死 セ シ メ タ ト ア ル 。 遠 海 人 知 ラ ザ ル 処 二 於 テ ノ 所 為 ナ レ バ 容 易 二 発 覚 セ ズ シ テ 、 法 網 ヲ 脱 ス ル コ ト ヲ 得 ル ト 錐 モ 、 天 網 逃 レ ガ タ ク 、 其 ノ 子 二 当 り 爾 ク 雷 死 セ リ ト 村 人 等 ノ 評 判 ガ ア ル 。 -8 4-し か る に 落 雷 を 気 の 緊 散 に よ っ て 起 る 自 然 現 象 に す ぎ ぬ と す る 察 温 の 見 方 は き わ め て 明 断 で あ る 。 世 俗 に 言 ふ 有 -、 日 -、 雷 露 は 必 ず 罪 過 の 人 を 択 び て 打 つ と 云 ふ と 。 夫 れ 雷 窪 は 唯 だ 気 な り 。 気 祭 れ ば 則 ち 振 ひ 、 気 散 ず れ ば 則 ち 止 む 。 本 よ -活 物 に 非 ざ る な -。 崖 に 善 悪 を 弁 じ て 之 を 打 つ こ と あ ら ん や 。 讐 へ ば 裸
な けう を 以 っ て 市 中 に 榔 つ が 如 し 。 夫 れ 磯 を 受 -る と 受 け ざ る と 誰 か そ の 人 を 定 む る こ と あ ら ん や 。 (﹃ 醒 夢 要 論 ﹄ ) 蓑 翁 僧 と 共 に 山 間 を 過 ぐ 。 天 忽 ち 油 然 と し て 雲 を 興 し 、 雷 声 稽 ∼ 振 ふ 。 僧 日 -、 罪 過 あ る 者 は 雷 に 打 た る 。 お わ 夫 れ 雷 の 雷 た る や 、 誠 に 宜 し く 畏 る べ L と 。 言 未 だ 畢 ら ざ る に 弄 慶 大 に 振 ひ 、 岩 松 を 打 破 す 。 翁 笑 ひ て 日 -、 此 の 岩 何 の 罪 あ ら ん 、 こ の 松 何 の 罪 あ ら ん と 。 (﹃ 蓑 翁 片 言 ﹄ ) 少 し 余 談 に な る が 、 こ れ に つ い て ﹃東 汀 随 筆 ﹄ に は 、 次 の よ う な 興 味 深 い 問 答 が 収 録 さ れ て い る 。 一 代 の 学 者 と い わ れ た 長 浜 翁 と 狂 者 比 屋 根 小 と の 議 論 の 一 節 で あ る 。 翁 問 フ テ 日 ク 、 雷 落 テ 人 ヲ 傷 ク ハ 何 ノ 理 ゾ 。 比 屋 根 小 答 へ テ 日 ク 、 是 レ 怪 ム 二 足 ラ ズ 。 市 中 二 石 ヲ 投 ズ レ バ 、 何 ゾ 人 二 当 ラ ザ ル コ ト ヲ 得 ン 。 翁 後 チ 人 二 語 リ テ 日 ク 、 比 屋 根 小 ハ 学 者 ノ 名 ア レ ド モ 、 我 レ 彼 卜 話 テ 見 ル こ 、 何 ノ 得 ル 所 ナ シ ト 。 こ れ に 対 す る 著 者 の コ メ ン ト は 次 の 如 -で あ る 。 予 ヲ 以 テ 之 ヲ 見 ル こ 、 比 屋 根 小 ガ 言 至 理 存 セ リ ト 謂 フ べ シ 。 翁 探 ク 考 へ ザ ル ノ ミ 。 比 屋 根 小 の 発 言 が 「響 へ ば 裸 を 以 っ て 市 中 に 榔 つ が 如 し 」 を 踏 ま え て い る こ と は 一 見 明 ら か で あ -、 雷 を 察 温
同 様 気 の 運 動 (宋 散 ) と し て 合 理 的 に 解 釈 し て いる こと が 容 易 に推 測 さ れ る の で あ っ て 、 「 比 屋 根 小 ガ 言 至 理 存 セ リ 」 と い う 著 者 の 言 も 、 恐 ら -こ の 点 を 指 摘 し た も の で あ ろ う 。 ≡ 次 に察 温 の 天 観 に つ い て 若 干 の 補 足 を し てお き た い 。 察 温 は 天 に つ い て 次 の よ う な 説 明 を 与 え て い る 。 天 地 の 未 だ 開 けざ る の 前 は 、 名 づ け て 太 極 と 日 ふ 。 太 極 の 前 は 、 言 の 読 -べ き な -、 強 い て 名 づ け て 天 (哩 噂 を 指 し て 言 ふ ) と 日 ふ (﹃ 片 言 続 録 ﹄ ) -86-太 極 を 理 の 理 (窮 極 の 理) と す れ ば 、 天 は そ れ に先 だ っ て あ る も の と い う こ と に な ろ う か 。 こ の 天 = 哩 噂 は太 翁 の 実 体 と さ れ る も の で あ る が p 太 翁 と は 一 体 何 で あ ろ う か 。 蒙 に物 あ -。 亦 た 物 に 非 ず 。 蓋 し 是 れ 物 な -。 本 よ り 生 死 な -、 本 よ り 成 壊 な し 。 玄 に し て 玄 を 離 れ 、 妙 に し て 妙 を 離 れ 、 民 能 -名 ず -る な し 。 強 い て 太 翁 と 叫 ぶ 。 (右 同 ) す な わ ち 太 翁 と は 何 か 物 質 の よ う な も の で あ る が 、 名 状 L が た い 。 理 は 天 よ -出 ず る も の (﹃ 片 言 続 録 ﹄ ) で あ る が 、 「 人 と 物 と 各 と 妙 用 の 理 を 得 て 以 っ て 己 が 有 と な す 。 所 謂 ゆ
る 人と 物 の 性 と は 是 な り。 性 は 即 ち 理 な -。 そ の 理 の 発す る 処 は 、 即ち 則 な -」 (﹃ 醒 夢 要 論 ﹄ ) と さ れ 、 「所 謂 ゆ る 別 と は 即 ち 人 道 な り。 人 道 は 即 ち 天 道 な -。 人 に し て 人 道 に 違 ふ は 則ち 斯 天 に 違 ふ な り 」 (﹃ 片 言 続 録 ﹄ ) で あ っ て 、 天は 人 道 の 究極 原理 と もな る の で あ る 。 さ て 察 温 は 命 。 天 命 。 命 運 な ど に つ い て し ば し ば 言 及 し て い る の で ' 次 に こ の 点 に つ い て ふれ て み よ う 。 ‖ 命 は 造 化 自然 の 致 す 所 に し て 、 聖 人 と雄 も 免 か る る 能 は ず 。 尭 は 舜を生 み 、 曹 翌 は 舜を生 む。 文 王 は 美 里 こ れ か く の 苦を 受 け 、 盗 朗 は 生涯 の 楽 を得 た り 。 諸 此 の 如き の 類 は 、 皆 各 人 の 命 に 非ず し て 何 ぞ や 。 (﹃ 醒 夢 要 論 ﹄ ) 「造 化 自 然 の 致 す所 」 と は 天 地 万 物 を 生 み 出 す 一 気 の 働き を 云 う 。 き さ 口 一 気 未 だ 萌 さ ざ る の 前 は 、混 々 沌 々 と し て 、 言 の 説 く べ き な -、 強 ひ て 太極 と 叫 ぶ 。 太 極 は 虚 空 な り 。 1 気 の 萌す は 虚 空 よ -し て 起 る 。 是 れ 物 の 始 め な -。此 の 処 は 点 識 す べ し 。 此 の 気 既 に 起 り て 后 、 序 に 循 ひ て 陰 陽分 か れ 、 天 地開け人 物生 ず 。 是 れ 一 気妙 用 の 致 す 所 、 所 謂 ゆ る 造化 と は 是 れ な り。 (右 同 ) 人 は 生 れ な が ら に し て 、 そ の 棄 受 せ る 気 の 支 配 を 受 け る 。 す な わ ち 「清 明 な 気 を 得 れ ば 聖 賢 と な り 、 昏 濁 し た 気を得 れ ば愚 者と な り ' 厚 い 気 で あ れ ば 富 貴 と な -' 薄 い 気 なら 貧購 と な る 」 の で あ っ て 、 吉 凶 禍 福貧賎 富貴 は 生 れ ながら に し て 決 定 せ られ て い る と す る の で あ る 。
た 8 吉 凶 富 貧 は 之 を 致 す 莫 し 。 至 る は 命 な -。 人 の 世 に 処 す る や 、 上 と な -下 と な -、 特 だ 能 -攻 気 操 心 、 戦 々 ま か 競 々 と し て 些 か も 私 念 な -、 些 か も 敵 齢 な -、 吉 凶 貧 富 は 命 を 天 に 聴 せ 、 而 し て 泰 然 と し て 世 を 終 え ん の ま し み 。 奈 何 ん せ ん 世 俗 の 人 、 往 々 に し て 気 の た め に 惑 わ さ れ 、 柾 げ て 吉 富 を 求 め 、 柾 ひ て 凶 貧 を 避 け ん と し て 、 千 計 百 慮 私 窃 に 作 為 し て 荏 再 の 間 或 い は 膳 を 噛 み 、 或 い は 眉 を 揚 ぐ 。 皆 正 命 に 非 ざ る な -。 故 に 舜 は 之 を 危 う L と 謂 う 。 鳴 呼 世 俗 の 然 る 所 の 者 は 、 虚 惑 に 非 ざ れ ば 則 ち 実 惑 な -。 実 惑 に 非 ざ れ ば 則 ち 虚 惑 な り 。 皆 気 惑 の 致 す 所 に し て 一 生 の 誤 -殆 ど 叢 に 生 ず 。 敢 て 恩 は ざ ら ん や 。 (右 同 ) ㈱ 隣 人 日 -、 吾 れ 世 間 を 見 る に 善 を 為 す 者 、 或 い は 子 孫 短 命 、 或 い は 貧 苦 を 受 -。 不 善 を 為 す 者 、 或 い は 子 こ れ 孫 繁 昌 、 或 い は 富 裕 を 受 -。 吾 れ 甚 だ 蔦 を 疑 ふ と 。 翁 日 -、 是 れ 乃 ち 命 な り 。 命 は 聖 人 と 錐 も 亦 た 之 を 如 何 ん と も す る な き の み と 。 (中 略 ) 隣 人 日 -、 戎 ひ と 謂 ふ ' 子 孫 の 禍 福 は 必 ず 父 祖 の 致 す 所 に 係 る と 。 敢 ひ と へ て 問 ふ 、 此 の 言 如 何 ぞ と 。 翁 日 く 、 こ れ も 亦 た 命 な -。 祖 父 子 孫 各 ∼ 命 を 受 -る こ と 斉 し か ら ざ る も の あ あ -。 是 の 故 に 値 ふ 所 の 禍 福 も 亦 た 各 J∼ 斉 し か ら ざ る も の あ る な -。 汝 試 み に 之 を 恩 へ 、 兄 弟 の 身 に し て 吉 凶 禍 福 斉 し か ら ざ る も の 世 間 最 も 多 し 。 此 れ 各 人 の 命 に 非 ず し て 何 ぞ や 。 (﹃ 蓑 翁 片 言 ﹄ ) -8 8-し た が っ て こ の 命 (理 ) に 従 順 で あ る こ と が 第 一 義 的 に 要 請 さ れ 、 天 の ま ま 、 理 の 自 然 の ま ま に 生 き る こ と (天 人 合 一 の 境 地 ) が 至 高 の 生 き 方 と さ れ た の で あ る 。 ㈲ 隣 郷 の 士 蓑 翁 に 語 り て 日 く 、 程 陸 。 宋 責 は 皆 末 代 の 大 儒 な -。 然 れ ど も 程 陸 は 好 党 の 諸 を 受 け 、 朱 書 は 偽
これ 学 の 敦 を 受 -る は 、 独 -何 ぞ や 。 翁 日 -、 汝 諸 を 知 ら ず や 。 そ れ 人 の 人 た る や 、 生 前 は 知 り 難 -、 死 後 は 知 り 易 し 。 是 の 故 に 程 瞳 ・ 朱 書 は 大 賢 の 人 な り と 錐 も 、 そ の 生 前 、 或 る ひ と は 之 を 誉 め 或 る ひ と は 之 を 殴 カ く る 。 死 後 に 至 り て は 、 大 儒 の 名 大 に 世 に 顕 る 。 此 の 如 き 等 の 事 は 、 人 の 為 す 所 と 錐 も ' 而 も そ の 実 は 乃 ち か か わ 命 運 の 累 る 所 な -。 然 れ ど も 傑 人 君 子 は 自 ら 信 ず る と こ ろ に 篤 -し て 、 誉 を 受 -る も 喜 び を 加 え ず 、 穀 を か な し み 隻 -る も 戚 を 加 え ず 、 唯 だ 命 を 天 に 侯 ち て 疑 は ざ る な -。 此 れ 君 子 の 君 子 た る 所 以 な -と 。 (右 同 ) ㈹ 僧 日 -、 翁 年 巳 に 高 -、 世 事 を 関 す る こ と 多 し 。 願 は -は 一 話 を 語 れ と 。 翁 日 -、 夙 に 起 き 夜 に 寝 ね 、 往 を 送 り 采 を 迎 ふ る こ と 、 今 日 又 た 明 日 と は 、 そ れ 斯 れ 之 を 謂 ふ か と 。 (右 同 ) し か し な が ら こ う し た 天 命 観 は 、 必 然 的 に 自 己 の あ -方 を 運 命 と し て 甘 受 す る 外 な い の だ と す る 宿 命 論 、 決 定 論 に 落 ち 入 る 危 険 性 を 内 包 す る 。 し か る に 天 命 (天 理 ) は 易 え る こ と は で き な い と し て も 、 理 は 人 天 共 通 の 理 法 で あ る か ら 、 人 事 を 尽 す (理 の 完 全 な る 体 現 を 目 差 す ) こ と に よ っ て 、 自 己 及 び 世 界 の あ り 様 を 変 え る こ と は で き る 。 す な わ ち 命 (理 ) に 従 う こ と が 命 (理 ) を 超 え る こ と に な る の だ と い う 烈 し い 主 体 の 燃 焼 を と も な う 能 動 的 天 命 観 が 一 方 に お い て 存 す る こ と は 注 目 に 価 し よ う 。 ま さ ㈲ 興 廃 存 亡 は 命 運 に 係 る と 錐 も 、 そ の 実 は 人 に 由 -て 天 に 由 ら ざ る な -。 是 の 故 に 聖 人 は 、 人 の 力 の 天 に 勝 る の 理 に 因 り て 教 を 万 世 に 垂 る 。 山豆 に 徒 言 な ら ん や 。 (﹃ 図 治 要 伝 ﹄ )
㈹ 一 民 日 く 、 吾 が 祖 稽 三 島 み L も 、 父 に 至 -て 漸 -貧 な -。 吾 れ 愈 JV 貧 を 受 -。 之 を 如 何 に す れ ば 則 ち 可 な あ き ら ん 。 翁 日 -、 貧 富 は 命 な り と 錐 も 、 而 も 勤 怠 そ の 間 に 分 ら か な り 。 窃 に 想 ふ に 、 汝 が 祖 は 勤 む る こ と 多 く し て 怠 た る こ と 少 な か ら ん 。 汝 に 至 -て は 、 愈 N 怠 -て 勤 め ず 、 蓋 し 此 の 故 な -。 故 に 富 家 と 雄 も 、 心 に 怠 の 病 を 受 -れ ば 、 則 ち 家 風 日 に 衰 へ て 終 に 膳 を 瞳 む に 至 る 。 亦 た 貧 家 と 雄 も 白 か ら 励 ま し 白 か ら 勤 む れ ば 、 則 ち 家 風 漸 -興 り 、 終 に 豊 裕 な る を 得 ん 。 鳴 呼 、 勤 む る は 万 苦 の 本 な -、 怠 た る は 万 凶 の 本 な -。 こ れ 汝 当 に 能 -蔦 を 思 ふ べ し 。 (﹃ 蓑 翁 片 言 ﹄ ) か お お ご れ ㈲ 大 家 の 子 弟 両 三 人 、 肥 馬 に 乗 り 、 軽 装 を 着 け 洋 々 摘 々 と し て 面 に 跨 る 色 あ り 。 蓑 翁 之 を 見 て 日 -、 危 う さ か な 危 う き か な と 。 路 入 日 -、 彼 は 大 家 に 生 れ 又 た 騎 馬 を 善 -し 、 心 に 任 せ て 漫 遊 す 。 何 の 危 う き こ と か い ず こ 之 あ ら ん 。 翁 日 -、 汝 も 亦 た 危 う き か な 。 路 入 日 -、 彼 の 危 う き と こ ろ は 何 に 在 -や 、 我 の 危 う き と こ ろ は 、 何 に 在 -や 。 翁 日 -、 汝 静 か に 聴 け 、 万 事 万 物 は 、 之 を 興 す こ と 甚 だ 難 -、 之 を 敗 る こ と 甚 だ 易 し 。 蓋 し 大 家 の 祖 父 は 、 心 を 尽 し 力 を 濁 し て 漸 -忠 功 を 積 み て 大 家 を 興 す 。 そ の 労 極 め て 重 -、 そ の 名 最 も 高 め し 。 奈 ん せ ん 彼 の 子 弟 、 父 祖 の 資 蔭 に 籍 り て 香 華 是 れ 好 み 、 漫 遊 是 れ 務 む 。 歳 月 は 移 -易 -、 天 命 は 常 な ら ざ る な り 。 是 れ 此 の 漫 遊 危 う き に 非 ず し て 何 ぞ や 。 汝 も 亦 た 之 を 某 ふ 、 危 う き に 非 ず し て 何 ぞ や 。 (右 同 ) -9 0-四 以 上 向 象 賢 と 察 温 に お け る 天 観 念 に つ い て 述 べ て き た が 、 そ こ に は 主 宰 す る も の と し て の 人 格 的 有 意 志 的 天 か
ら 無 心 に し て 化 す 理 と し て の 天 へ の 明 ら か な 転 換 が み ら れ る の で あ -、 向 象 賢 の い う 主 宰 す る も の と し て の 天 は 絶 対 的 超 越 的 存 在 で あ っ て 、 そ れ に 従 う こ と に よ っ て の み 世 界 秩 序 が 保 た れ る と 考 え ら れ た の で あ っ て 、 い わ ば 天 を 人 間 の 上 位 に お -思 想 で あ り 、 多 分 に 宗 教 的 信 仰 的 要 素 を 色 濃 -残 存 さ せ 、 従 っ て そ れ は 固 有 の 神 観 念 と も 容 易 に 習 合 す る も の で あ -、 王 朝 交 替 の 理 論 的 根 拠 と さ れ た の で あ る 。 こ れ に 対 し て 察 温 は 「 天 は 理 で あ る 」 と す る 程 栄 の 合 理 的 な 考 え を 受 け 入 れ て 、 天 の も つ 人 格 的 有 意 志 性 を 否 定 し 、 か え っ て 理 の 絶 対 性 。 尊 厳 性 を 主 張 す る よ う に な る 。 し か る に 理 は 人 天 に 共 通 す る 理 法 で あ る と 考 え ら れ る と こ ろ か ら 、 理 の 人 間 に 対 す る 優 位 性 は 認 め ら れ ず 、 人 間 に お け る 天 理 の 実 現 の い か ん が す べ て を 決 定 す る と 考 え ら れ た の で あ っ て 、 こ こ に 天 理 の 実 現 に 責 任 を 負 う 道 徳 的 主 体 の 確 立 が 強 -要 請 さ れ る よ う に な る の で あ る 。 先 に み た 義 本 王 に 対 す る き び し い 論 評 は 、 ま さ に こ の 観 点 か ら な さ れ て お -、 為 政 者 と し て の 責 任 を 放 棄 し た 非 主 体 的 人 間 に 対 す る 痛 烈 な 批 判 が 、 天 意 を 至 上 命 令 と 考 え る 向 象 賢 と は 白 か ら 異 な る 評 価 を 導 き 出 し て い る の で あ る 。 察 温 は 天 を 人 天 を 貫 -窮 極 の 理 と し て 内 在 化 し 、 こ れ に よ っ て 、 人 間 を 天 の 桂 棺 か ら 解 き 放 ち 、 始 め て 自 律 的 な 責 任 主 体 と し て の 新 し い 人 間 観 を 打 ち 出 し た の で あ る 。 「豊 に 之 を 天 と 謂 は ん や 」 「 天 に 由 ら ず 人 に 由 る 」 な ど と い う 言 葉 は 、 こ う し た 新 し い 人 間 観 を 端 的 に 表 明 し た も の で あ -、 力 強 い 人 間 の .自 立 宣 言 と も み ら れ よ う 。 向 象 賢 か ら 察 温 へ の こ の よ う な 天 観 念 の 転 換 は 、 恐 ら -は 士 農 分 離 、 町 方 の 形 成 、 中 央 集 権 的 国 家 機 構 の 整 備 な ど 、 当 時 の 社 会 的 経 済 的 諸 条 件 の 変 化 に 対 応 す る も の で あ ろ う 。 し か し て 「所 当 然 の 則 」 と し て の 側 面 を も つ 天 (理 ) は 、 現 実 変 革 の 思 想 で あ る よ -は 、 す ぐ れ て 現 実 の 容 認 固 定 化 に つ な が る 思 想 で あ る と い う こ と が で き よ う 。 近 世 向 象 賢 に は じ ま る 諸 制 度 の 改 革 は 、 よ う や く 察 温 の 時 代 に 入 っ て 安 定 期 を 迎 え る の で あ っ て 、 天 (理 ) の 思 想 は 、 か か る 体 制 を 合 理 的 に 基 礎 付 け 、 そ の 維 持 強 化 を 図 る 上 で 最 も 整 合 的 な 思 想 で あ っ た の で あ る 。
と こ ろ で 察 温 が 活 躍 し た 尚 敬 王 代 は 、 近 世 琉 球 に お け る 輝 か し い 文 芸 復 興 期 と し て も 知 ら れ て お -、 玉 城 朝 薫 。 平 屋 敷 朝 敏 。 識 名 盛 命 な ど に 代 表 さ れ る 和 文 学 が 隆 盛 を 極 め た 時 代 で も あ っ た 。 そ の 歴 史 的 要 因 に つ い て は 、 今 後 多 角 的 に 検 討 さ れ ね ば な ら な い が 、 一 つ に は 近 世 期 を 通 じ て 支 配 的 だ っ た 栄 子 学 の 合 理 主 義 現 実 主 義 人 間 中 心 主 義 的 傾 向 を 度 外 に 置 -わ け に は い か な い で あ ろ う 。 文 芸 の 興 隆 に は 何 と い っ て も 人 間 主 体 の 確 立 が 前 提 と さ れ る の で あ り 、 人 間 主 体 の 確 立 は 人 間 的 自 由 を 束 縛 す る 諸 々 の 既 成 観 念 (ト キ 。 ユ タ な ど の 俗 信 、 地 獄 極 楽 な ど の 仏 教 教 理 、 有 意 志 的 天 観 な ど ) か ら の 解 放 を 通 じ て 始 め て 獲 得 さ れ る の で あ る 。 し か し て 既 成 観 念 の 否 定 超 克 を 可 能 に し た も の が 栄 子 学 の 合 理 主 義 精 神 で あ っ た の で あ る 。 し か し な が ら 栄 子 学 の 合 理 主 義 は 完 全 な 人 間 的 自 由 を 保 証 す る も の で は な い 。 栄 子 学 は 既 成 観 念 に か え る に 「 理 」 と い う 新 た な 価 値 規 範 を も っ て し 、 人 間 的 自 由 は 「 理 に 従 う 」 範 囲 内 に お い て の み 許 容 さ れ る 。 し か も 「 理 」 は 従 来 の 主 宰 的 有 意 志 的 天 の 思 想 と 結 び つ -こ と に ょ っ て 、 そ の 絶 対 性 。 尊 厳 性 を 高 め 、 理 に 背 -こ と は 結 局 人 間 の 自 己 否 定 を 意 味 す る こ と と な る の で あ る 。 平 敷 屋 朝 敏 の 刑 死 事 件 は 今 も っ て 最 大 の 謎 で あ る が 、 こ こ に 一 つ の 仮 説 を 提 出 し て お き た い 。 そ れ は 朝 敵 が 「 理 」 内 の 自 由 を 拒 否 し た の で は な い か と い う こ と で あ る 。 朝 薫 の 著 作 は 体 制 イ デ オ ロ ギ ー た る 儒 教 思 想 の 形 象 化 と し て 容 易 に こ れ を 理 解 す る こ と が で き る 。 し か る に 朝 敵 の 作 品 は こ れ と 同 列 に 論 ず る わ け に は い か な い 。 朝 敏 は い わ ば 反 体 制 派 の 作 家 で あ っ て 、 「理 」 の 独 善 的 支 配 に 抗 し て 、 被 支 配 者 層 の 人 間 的 要 求 を 代 弁 す る 、 そ う い う 意 味 で は 、 ま さ に 近 代 的 精 神 に 覚 醒 し た 最 も 先 鋭 な 思 想 家 で あ っ た 、 と い え る の で は な か ろ う か 。 少 な -と も 朝 敏 の 文 芸 観 の 中 に は 「文 は 道 を 載 す る も の で あ る 」 と い う 意 識 は 希 薄 で あ っ て 、 こ の 点 が 儒 教 の 伝 統 的 文 芸 観 に 立 つ 察 温 と 鋭 -対 立 し 、 両 者 は 仝 -相 容 れ な い よ う に 見 え る 。 な お こ の 間 題 に つ い て は 他 日 稿 を 改 め て 論 じ て み た い 。
-92- (-) ﹃朱 子 語 類 ﹄ 巻 第 一 「僧 問 経 伝 中 天 字 、 日 要 人 自 看 得 分 暁 、 也 有 説 蒼 蒼 者 、 也 有 説 主 宰 者 、 也 有 単 訓 理 時 」 (2 ) ﹃天 説 ﹄ 「 天 地 、 大 果 菰 也 、 元 気 、 大 鹿 痔 也 、 陰 陽 、 大 草 木 也 、 其 烏 能 賞 功 而 罰 禍 平 、 功 者 自 功 、 禍 者 自 禍 」 陰 陽 二 元 気 の 作 用 に よ っ て 天 地 が 形 成 さ れ る こ と を 草 木 に た と え て い う 。 こ こ (3 ) ﹃詩 経 ﹄ 「周 項 」 我 将 篇 「我 其 れ 夙 夜 天 の 威 を 畏 れ 、 時 に 之 を 保 つ 」 不 善 を 行 っ た 場 合 天 の 下 す 恐 る べ き 罰 の こ と を 考 え て 、 不 善 を 行 わ ぬ よ う 畏 れ 慎 み 、 こ こ に そ の 国 を 保 っ て い る の 意 。 但 し 栄 子 は ﹃孟 子 集 註 ﹄ に お い て ﹃孟 子 ﹄ の 本 文 「大 を 以 っ て 小 に 事 ふ る 者 は 天 を 楽 し む 者 な -。 小 を 以 っ て 大 に 事 ふ る 者 は 天 を 畏 る る 者 な り 。 天 を 楽 し む 者 は 天 下 を 保 ち 、 天 を 畏 る る 者 は そ の 国 を 保 つ 」 に 話 し て 、 い つ-ま 天 は 理 の み 。 大 の 小 を 字 し み 、 小 の 大 に 事 ふ る は 皆 理 の 当 然 に し て 也 た 自 然 と 理 に 合 す 。 故 に 天 を 楽 し あ ま ね む と 日 ふ 。 敢 て 理 に 違 は ず 、 故 に 天 を 畏 る と 日 ふ 。 包 含 掘 覆 し て 周 裾 か ら ざ る な き は 、 天 下 を 保 つ の 気 象 な り 。 節 を 制 し 度 を 謹 ん で 敢 て 縦 逸 な ら ざ る は 、 一 国 を 保 つ の 規 模 な り 。 と 述 べ て い る が 、 つ づ -「詩 云 、 畏 天 之 威 、 千 時 保 之 」 の 天 に は 特 に 註 記 が な い か ら 、 こ の 天 も 理 と 解 し て い る こ と は 明 ら か で あ る 。 (4 ) ﹃論 語 ﹄ 八 伯 (5 ) ﹃孟 子 ﹄ 梁 恵 王 下 (6 ) 柳 宗 元 ﹃天 説 ﹄ 「吾 意 天 聞 其 呼 且 怨 、 則 有 功 者 受 賞 必 大 桑 、 其 禍 若 者 受 罰 亦 大 桑 」 (7 ) 「 三 根 堂 銘 」
(8 ) 重 沢 俊郎 ﹃中国歴 史 に 生 き る 思 想 ﹄ に は 次 の よ う に 説明 さ れ て い る 。 基 本 的 性 格 は 、 自然 現 象と社 会 現 象 と の 間 に 〓 疋 の 相 関 関 係 の 存在を主張 す る 見解。国 家 に 道を失 っ た 過 ち が 起 ころ う とす る と、 天は ま ず 災 害 を発生 さ せ て 謡 責 の 意を 表 わ す 。も し 国 家 が反 省 し な けれ ば 、 さ ら に 怪 異な 現 象 を 起 こ し て 驚き 恐 れしめ る 。 それ で も な お 改 め よ う と し な い とき に 、 は じめ て 重 大な 破滅 が く る 。 (9 ) 註 (4 ) に 周じ (10 ) 「天 即 理 也 、 其尊 無 対、 非 奥 竃 之 可 比也 、道 理則 獲 罪於 天 美 、 岩場於 奥竃 所能繕 而 免乎 、言 但当 順 艶 、 非 特 不 当嫡 竃 亦 不可 嫡 於 奥也 」 (11 ) 「宋 儒 謂 性 即 理 是也 、 謂 天 即 理恐 未 然 、 獲 罪 於 天 無 所蒔 、 謂 癌 於 天 也 、 岩宿 於 理 平 、詩 云 、 敬 天 之怒 、 畏 天 之威 、 理 山豆 有怒 与威 乎 、 又云 、 敬 天 之 漁 也 、謂 理 出 於 天則 可 、謂 天 即 理 則 不 可 」 (山 根 三 芳 ﹃朱 子 倫 理 思 想 研 究 ﹄ よ -再 引 ) (12 ) ﹃朱 子 語 類 ﹄ 巻 第 二 十 五 「周 問 、 獲罪 於 天 、 集 註 日 ' 天 即 理 也 、此 指 獲 罪 於 蒼蒼之 天 邪 、 抑 得 罪 於 此 理 也 、 日 、 天 之所以 為 天 者 、理 而 巳 、 天 非有 此 道 理 、 不 能為 天 、 故蒼 蒼 者 即 此 道 理 之 天 、 故 日 、 其 体 即 謂 之 天 、 其主宰 即 謂 之 帝 、 如 父子 有親、 君 臣 有 義 、 錐 是 理 如 此、 亦須是 上面 有 箇 道 理 教 如 此 始 得 、 但 非如 道家説、 莫箇 三 清 大 帝 著衣服 如 此坐耳 」 (13 ) ﹃朱 子語 類 ﹄ 巻 第 一 「蓋気 則 能 凝結造 作 、 埋 却無情意 、 無計度 、 無造 作 、 若 理 、 則只 是 箇浄潔 空 閥 底 世 界、 無形速、 他 却 不 会 造 作 、 気 則 能 醒 醸凝衆生 物 也、但 有 此 気 、則 理 便 在 其 中 」 (14 ) 右 同 「某 謂 天 地別 無勾当 、 只 是 以 生 物為心 、 二 九 之 気 、 運 転 流 通' 略 無停 間 、 只 是 生 出 許 多 万 物 而 己 、 間 、 -9
4-天の思想一 向象賢か ら察温--程 子謂' 天 地 無心而 成化 、 聖 人 有心 而 無為 、 日 ' 這 是説 天 地 無 心処 、 且 如 四 時 行 、 百 物生 、 天 地 何所 容心 、 至 於 聖 人、則 順 理 而 己 、 復 何為哉 」 (15 ) 右 同 「蒼 蒼之 謂 天 、 運 転周流 不 己 、 便是 那 箇 、而 今 説 天 有箇 人 在 那 裏 批 判 罪 悪 ' 固不 可 、 説 道 仝無 主著 、 又不 可 、 這 裏 要 人 見 得 」 (16 ) 右 同 「問 、 天 地 之 心亦霊 否、 還 只 是 漠然 無為 、 日 、 天 地 之 心 不可 道是 不 霊、 但 不 如 人 悠 地 思 慮 」 (17 ) ﹃朱 子 語 類 ﹄ 巻 第 五 「如今 人説、 天 非 蒼 蒼 之 請、 拠某 看来 、 亦捨 不 得 這 箇 蒼 蒼 底 」 (18 ) ﹃朱 子 語 類 ﹄ 巻 第 一 「帝 是 理 為 主 」 (19 ) 以上 は 吉 川 幸 次 郎 二 二 浦 国 雄 ﹃朱 子 集 ﹄ ( 1 五 四 頁 )参 照 (20 ) ﹃朱 子語 類 ﹄ 、 巻 第 五 「間、 天 与 命 、 性与 理 、 四 者之 別 、 天 則 就其 自 然 者 言 之、 命 則 就其 流 行 而 賦於 物者 言 之' 性 別 就 其 全体 而万 物 所 得 以 為生 者 言 之 、 理 則 就其 事事 物 物 各 有其 則 者 言 之、 到 待合而 言 之 、則 天 即 理 也 、 命 即 性 也 、 性 即理 也 、 是 如 此 否 、 日 、 然 」 (21 ) 市 川 安 司 ﹃末 子 哲 学 論 考 ﹄ 所収 「論 語 集注 に 見 え る 天 の 解 釈 」 及 び 山 根 三 芳 去 朱 子 倫 理 思 想 研 究 ﹄ 所収 「天 に つ い て 」 を 参 照し た 。 ( 22 ) 註 (3 ) 参 照