太宰治<津軽通信>研究 : 終戦直後に描かれる津軽の人々との交流
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(2) 容れることによって守られ、その中で自由が. の作品は他とは異なり、相手に対して嫌悪感. 生じることを示した作品であろう。. を露わにしている。「嘘」の名誉職と医師を比. 「親といふ二字」は「無筆の親」の娘に対. 較することによって、太宰の当時の他人に対. する愚直で不器用な愛情に触れたことを描き、. する好悪の理由を明らかにした。r私」は医師. 周縁世界である津軽にも戦禍が及んでいるこ. に嫌悪感を抱きはするものの、r私」はこらえ. とを、戦時下における「色男気取りの議論」. て微笑を浮かべ、結末の展開では、r私」の意. の責任とともに発信していた。後半において. 図しないところで医師へのある意味仕返しが. は、私の父としてのふがいなさが強調され、. できてしまう滑稽なオチを形成している。. 読みに幅が生じる作品であった。単に、悲し. 本研究によって、「津軽通信」下の作品が、. みだけを発信する小説ではなく、物語として. 共通して意外性と滑稽さを兼ね備えた結末を. の面白さも追求され、ふがいない父=太宰な. 持っていることが分かった。戦争が残した暗. りにも職業作家としての技術を見せつけた作. い影の中で、少しでも明るさを求め、屈託し. 品であったと言えよう。. ない太宰の姿が見えてくる。「パンドラの厘」. 「嘘」と「やんぬる哉」は共に同級生を描. で求めた、r焼跡の隅のわづかな青草でも美し. き、結末における微笑が共通する事などから、. くうたってくれる詩人」が思い出されよう。. 関連づけて論じた。r嘘」もrやんぬる哉」も. また、語り手が全て太宰と同一視できる「私」. 物語の大半がr私」以外の人物の語りとして. であることでも共通している。作品に描かれ. 展開されている。その複雑な語りの構造を有. た内容に真実味が加わり、津軽の、また太宰. し、さらに読みを一転させ得る〈オチ〉があ. の実情として読者に伝えられているのだ。当. ることから、解釈にややぱらつきの生じる作. 時太宰が必要とした人物像、あるいは嫌った. 品であった。r嘘」は戦時下の徴兵逃れのエピ. 人物像が、四作品の分析によって明らかにな. ソードの中で、女性の嘘が描かれる。これも. った。. 疎開する太宰ならではの小説であって、戦時 下における苦労話を津軽の地から発信してい. 4、今後の課題. る。しかし、物語の大半を占める「女の嘘」. 同時期の短篇は他にも数多くある。また、. のエピソードを名誉職が語り終えた後に、そ. あまり論じられていない作品が多く、複雑な. の語りを一蹴するかのような「私」は「頗る. 語りの構造を持つ作品が多い。太宰の短篇の. 軽薄な感想」を述べる。その一言が「女の嘘. 方法を知る上で、まだ、研究の余地があると. の恐ろしさ」とは違った着地点を用意し、最. 言えよう。. 終的に「男は嘘をつくことをやめて」という 冒頭の言葉に、物語は還ってゆく。名誉職の. 主任指導教員 前田貞昭. 微笑ましい朴直さに収敏してゆくことによっ. 指導教員 前田貞昭. て、戦時の苦労話が健康的な明るさを持って 終結していた。そして、「やんぬる哉」では「私」. の中学校の同級生である医師が登場する。こ.
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