中学校における情緒障害児通級指導教室の現状に関する一考察
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(2) 170. 発達心理臨床研究 第14巻 2GO8. Table 1 通級による情緒障害学級の役割の変遷 発足当初. 障害児全員就学の実施. ・ 自閉症児約8割. ・ 自閉症児約6割. ・ 不登校. ・ 知的障害が増加. ・ 選択性絨黙. E 情緒不安定 E その他. ・ 不登校に特化した. @情緒障害児学級が @分離独立 E 週2日通級する例 も少なからず存在 オた. 幼児・. 通級の制度化. 特別支援教育の転換. ・ 自閉症児は5割を. ・ 軽度発達障害が主. 切る. となる. ・ 知的障害が現象. ・ 通級による指導の. E 通級が定義され重. @対象となる者とし. @度の対象児は閉め @出されがち. ・ 替わって,LD等,. @知的障害を伴なう @溌達障害が増加. 児 童. @て,自閉症者は,. @情緒障害者から分 @離・独立する. ・ 従来の情緒障害通. @級指導教室が,新. @法の下では,「自閉 症通辞指導教室」,. 「情緒障害単級指. 唇. 導教室」となり,加. 生. えてrLD・ADHD. 徒. 通級指導教室」を 開設することがで きるようになる. 自閉症. の 理解. ・ 自閉症の本質につ. ・ 生物学的基盤に起. ・ 心の理論など認知. ・ 教育的ニーズから. いての論議は定ま. 黙する発達障害で. らず. ある. 障害や社会性の困 難の元になってい る障害やメカ.ニズ. 見ると,軽度発達 障害には多くの共 通点があり,有用. ?ノついての研究. ネまとめ方である. ・ 潜在的可能性は高. ・ 部分的に高い能力. @いが,人との関係 @づくりの困難に阻. @があっても,特有 @の認知障害が根底. ・ それが発達できな. ・ 多くは知的障害を. @いでいる。ここを. @伴う. まれている. @何とか切り崩せな.. にある. E 生涯にわ.たっての. ェ進化する. ・ 独自な世界を生き. や高機能自閉症の @概念が浮上. ることのつらさや. E 彼らの内面世界の. @援の原点となる. @支援が必要. @ありように光が当 @てられる. ・ 在籍校での適応の. ・ 必要な特別な指導. ・ 視覚的構造化,安. 改善を助ける,い. を分担する連携関. 定した生活パター. 係. ンなど,その 「い. @いかというのが大 @方の考え. アとがわかる. ・ アスペルガー障害. @傷つきやすさが支 E 深刻な二次的障害. ・ 理想は共生社会の. @実現 通 級の役割,. わば脇役. ・ 情緒の安定と社会. @性の発達 をめざ. @す E 受容的な関係に支 指導の方. ・ 知的障害教育との. @重なりが大きくな. @る. えられ.た小集団生. ・ 個別指導と小集団. ?ノよって適応を 浮ッる情緒面での. @を組み合わせた総 @合プログラムが定. コ地を整える 向. @着. ・ 行動主義的理論の. 性. きにくさ」に対す. 驛oリアフリーな ツ境の整備に重点 ェシフト ・ 個別指導計画の策. @定を通して在籍校 @との連携がいっそ @う強化される. ・ 二次的障害の予防 と改善が重要な立 題となる ・ 疎外感, その逆に. @同じに扱われるこ @とのストレスから @の開放 ・ ありのままで居ら. @れる居場所として @の「二級仲間」の. @意義. ・ 障害の告知という 課題・自己受容,. 活用. 自己肯定感. 教 室 の構造等. ・ 一教室分くらいの. ・ 遊戯室は一転して. 活動スペースがメ. 小体育館的なグル 一プ活動の場とし. イン ’. ・ 中央にトランポリ. ン水場,砂場,乗. @り物など,自閉症 @児が好んで遊べる @ような活動的遊具・ 多くの担任が教育. て整備される. ・ 自閉症児の学習特. @性に配慮 E 個別学習室がたく. @さんできる 相談畑から登用さ れる. ・ 通級指導 「教室」. になって個別指導 はよいが情緒障害 児学級の目玉であ. ・ 特別支援教室とし. て,地域ネソトワ 一クの一環として 位置づけられる. る小集団指導はや @りにくくなった. ・ 発達障害対応の通. E 巡回指導が導入さ. @に,特に中学校で. @れる ・ 通級時間の上限が 示される. ※野村三助(2005)における「通級による情緒障害学級の役割の変換」より引用. @級教室が全体的 @爆発的に増加.
(3) 171. 藤本・井澤:中学校における情緒障害児通級指導教室の現状に関する一考察. Table 2 通級生徒の困難な点、目標、登校状況 事例 A B. C D E. F G H 1 J. K L. M N 0 P Q R. 困難な点 学校不適応 対人関係 対人関係 学校不適応 対入関係 対人関係 学校不適応 不注意 多動,対人関係 対人関係 対人関係 学習の困難 不注意 対人関係 不注意 対人関係 対人関係 学校不適応. 目標. 登校 友達作り. 社会性を養う 登校. いじめの問題解決 友達作り 社:会性を養う. プランニング パニックの改善 障害告知後のカウンセリング 友達作り. 学習の仕方 学力意欲の向上 社会性を養う. 障害告知後のカウンセリング 社会性を養う 社:会性を養う. 登校. 登校状況 現在登校できている 現在登校できている 完全に登校できない 父親が毎日登校に付き添う 時々登校,別室登校 登校している 完全に登校できない 登校している 別室登校 登校している 登校している 登校している 登校している 登校している 登校している 登校している 別室登校 一人で登校. Table 3 通級指導教室の活動の例 時間. 月. 火. 水. 巡回相談. 個別指導. 午後. 教育相談 i新規通級希望 メのための) 個別指導 個別指導. 巡回相談 巡回相談. 個別指導 個別指導 個別指導. 午後. グループ指導. 巡回相談. 午前. 午前. 随時親面接. 金. 木. 教育相談 i新規通級希望 メのための) 教室内会議 個別指導. 教育相談 i新規通級希望 メのための) 個別指導 個別指導. ゥ校職員会議. 個別指導. グループ指導. @(月1回) 随時親面接. 随時親面接. 随時親面接. りにくい現状である。. 2)適応指導教室との連携. また、学校の運営上、生徒指導担当教諭が1名. 適応指導教室を利用している生徒の中にも発達. 加配されている学校は関係機関との連携を行う時. 障害のある生徒がいることは確かである。連携を. 間的な確保は可能になるが、生徒指導係となると、. とり、発達障害生徒に適した指導方法にっいての. 学級担任をしながら関係機関と連携をとることは. 連絡、調整を行わなければいけないが、教育委員. 時間的な制約がある。こちらから訪問し、通級指. 会においても管轄する課が異なることが障壁とな. 導教室の活動の様子を詳細に連絡するように心が. り連携が難しい現状がある。. けているQ. 3)子ども家庭センターとの連携. Table 3は1週間の通級指導教室における活動. 子ども家庭センターから紹介を受けて通級指導. の1例である。グループ指導をしていても個別の. を行うことがあるが、通級指導が安定した状態に. 指導が必要と思われると曜日を別にとって行うた. なると、子ども家庭センターとの関係は希薄とな. め、基本的には生徒1名にっき週1回を原則にし. る。現在、子ども家庭センターも相談事例が多く. ているが隔週の指導になってしまうこともある。. 連携も難しい状態である。. また、通級指導教諭のより資質の向上を目指し、. 4)医療機関との連携. 月に2回は研修、地域連携の会が行われるため、. 一度も専門医療機関を受診したことのない生徒. 月の予定表を生徒に渡している。そして生徒下校. や二次障害のある場合、療育手帳の取得、特別扶. 後も希望保護者の相談を行うことも多い。. 養手当の申請などを理由に医療機関を紹介したり.
(4) 172 発達心理臨床研究 第14巻 2008. することは多い。その場合は診断の結果を聞きに. あり、1時間の時間しか確保することができてい. 行き、指導の助言を受けることもある。また、心. ない。その中で個別の学習課題はあるが、漢字問. 療内科、精神科の主治医がいる生徒は31%である。. 題、英語の単語問題等を小テストとして行ってい る。読み書きに苦手がある生徒はどうしても書く. 3.通級指導教室での指導の実際. ことに対して抵抗があるが、少ない問題数、でき. 1対1指導中心の生徒が10名、グループ指導中. る問題、そしてその後は仲間と一緒に楽しめる課. 心の生徒が9名である。週1回90分の指導は、通. 題を設定しているために頑張って取り組むことが. 級生徒にとって自分の話を聞いてもらえる安心し. できている。グループ指導を行うとどうしても個々. た居場所となっている。. の内面に丁寧にアプローチすることができないの. 通論生徒が教室にやってくるとの話をたくさん. で、気になる言動や、家庭、学校の情報、本人の. 聞きごとから始めている。1週間の振り返りプリ. 話から、日を別に設定し、個別の時間を設けるよ. ントを利用しながら「頑張ったこと」「楽しかっ. うにしている。能面生徒は在籍校においては、学. たこと」「いやだったこと」等を文章に表現して. 、力が劣っていること、自己表現が苦手な生徒が多. もらう。半構造化面接のような形をとり、そこか. い。通話指導教室に通級したときは、周りの目を. ら話を発展させて社会性を養う指導へとつなげて. 気にせず、自分の気持ちを思い切り表現し、スト. いく。また、文章完成法や動的家族画を用いて、. レス発散の場所どもなっている。通級指導教室で. そこから話のきらかけを作ることで生徒も話しや. 出せる自己表現を在籍校でも出せるように指導は. すく、自分の気持ちの表出がしゃすいようである。. 行っているが般化するためには、在籍校の環境整. 通級生徒の中には、発達障害が基盤にあり、学. 備、困難さの理解を在籍校の教職員全員が理解で. 習の習得がなされないまま中学生へと進学してい. きていなければ大変難しい。. る生徒が多い。その場合進路に関して考えるとど. 通級生徒の中には、障害の診断名のある生徒も. うしても学力の補充が重要な課題となってくる。. いる。告知を受けている生徒は少ない。よって自. 基礎学力が定着せず、中学校の学習課題を学ぶこ. 分は学校へ行けないことが理由で通級指導教室へ. とは大変難しいものであり、学習意欲を失うきっ. 通心していると思ろてい’ 髏カ徒がいる。しかし、. かけとなる。また、コミュニケーションがうまく. 中学3年生になると進路選択をしなければならな. 取れないために友人関係を上手に築くことができ. い。そのために療育手帳を取得しなければ進路先. ない、そのため学校へ行くことへ消極的になる生. の選択肢が広がらない生徒もいる。そのようなと. 徒もいる。通級生徒における現在の学習の習得度. きには告知を主治医であるD二に委ねる、ことが多. を把握し、つまずいているところがら指導を行う. い。その後のサポートを必ず行うようにしている。. ようにしている。基本的には学力面への指導は在. そのような生徒には、本人の障害の特性を「得意. 籍校が個別の時間を作り行ってはいるが、通級生. なこと」、「苦手なこと」という表現で伝えるよう. 徒の中には、「質問をしたいけどできない」とい. にしている。障害の告知がゆがんだ形で生徒に入. う問題を抱えている生徒も少なくない。そして、. ると、自己評価の低下にもつながるので、自分の. 学び方の違いから基本的な学力の積み重ねが未修. 特性をしっかり理解して自身を持って生活できる. 得のまま中学生となり、黒板の文字が写せない、. ような指導を行っている。. テスト勉強の計画を立てることができない。宿題. 中学校の3年間は時間的な余裕が予想以上に少. などの提出物が出せない等の困難さを生じている。. ない。通訳指導教室では進路指導を行わない(在. その結果学習意欲は低下してしまうことが多い。. 籍校が主導で行うことが原則)が、進路選択のた. グループ指導においては、みんなが集まること. あの情報提供は生徒、保護者に行っている。グルー. ができる時間が、学校の授業終了後ということも. プ指導では職業の種類を話す機会を設けたり、ト.
(5) 藤本・井澤:中学校における情緒障害児通級指導教室の現状に関する一考察 173. ライやるウイークの感想を話し合っ1たりしている。. の手は足りない。. また、療育手帳を取得している生徒への情報提. 学習の習得率の低さは子どもの意欲をなくし、. 供は、一般の入試と違い、手続きなどが早いこと. 自己評価も低下する。また、対人関係の弱さやコ. が多い。在籍校も特別支援コーディネーターが中. ミュニケーションの苦手さを抱えた子どもたちは. 心となって情報収集を行い、連携をとりあってい. 友達関係で悩み学校への登校に対する気力を失い. る。. がちにさせてしまうと考えられる。また、いじめ. 学校不適応状態にある生徒の進路先の選択肢は. られても表現力が未熟なため対人関係を築くこと. 少なく、提供しにくいのが現状である。. が難しく、別室での登校はできても教室に入るこ. 三級生徒の保護者の中には、進路選択について. とができない。通言生徒が「学校という空気がい. の相談を受けることも多い。また、日常生活での. ややな。なんかいやなにおいがする。」と同じ学. 学習方法や、具体的なしっけの方法について面接. 校不適応の生徒同士話していた。いじめる子ども. することが多い。通級生徒が通級してくるのと同. たちのエネルギーと、いじめられる子どもたちの. じように保護者支援も重要である。定期的に時間. エネルギーの差をつくつく感じる。. をとって行っている保護者もいれば、何か心配な. 子どもは学校不適応を起こす前に何らかのSOS. ことができた時に行うようにしている保護者、保. を必ず出している。家庭も学校もなんとなく感じ. 護者の様子に心配が見られたときなど時間の許す. ているのに違いない。そんなときに相談できる窓. 限り相談を行うようにしている。保護者への支援. 口としての通級指導教室でありたい。また、週に. は三級指導教室では欠かすことのできない指導の. 1回、90分の指導の中に子どものエネルギーの補. 一つである。. 充と学習への支援、社会性の指導と課題はたくさ んある。そのような課題をたくさん抱えた現在、. 皿.まとめ. 三級してくる子どもたちを待つだけではなく、巡. 中学生の二級生徒の重要目標は登校することが. 回を積極的に行い、特別な配慮の必要な生徒への. できなくても、義務教育終了後の進路先の確保を. 教師の理解と生徒への支援の具体的方法を話し合. 在籍校と共に考えていくことであると考える。在. える通級指導教室にしていきたい。. 籍校も登校していなければ成績をつけることも難 しく、生徒の特性を把握することも難しい。その. V.引用、参考文献. ときに三級指導教室の果たす役割は大きいと思わ. ・文部省(1997):改訂版・通級による指導の手. れた。. 知的に障害がない、高機能自閉症、アスペルガー. 症候群、学習障害、AD/HD、 ADD等は通常学級. 引き、第一法規 ・石隈利紀(2007):「胸騒ぎ」が共有されるた φに日本LD学会会報、第63号、・1. の一斉授業の中では持っている知的な力を使って. ・野村三助(2005):情緒障害特殊学級の摩史と. 学習を習得することは一般的には難しい。個別の. 特別支援教育の転換一通級による指導が果たし. 配慮が必要である。それは中学校教育の3年間で. てきた役割とこれから一 自閉症スペクトラム. 学力に差として生じる。小学校の入学時より個別. 研究、VoL4、21−26. の指導計画を作り系統的に配慮し、認知の偏りに 応じた指導をしていかなければいけないと思われ た。. 小学校の授業の中で個別の配慮は大変困難であ る。スクールサポーターや新学習システムの教師、. ボランティアの方々が教室にいて支援しても支援. ・LD&ADHD(2007):これからの通級指導教室 の可能性を探る 明治図書出版.
(6) 174. 発達心理臨床研究 第14巻. 2008. DisScussion on status quo of the. resource room for students wi.th emotiona.i. dis‡urbance at jしlnior. high. scho.ol. Yuko FUJIMOTO*&Shinzo ISAWA** *Kobe City Ryugadai Junior H{gh Schogl **Hyogo University of Teacher Education. .This s加dy w・・ex・mi・・d・・d・・n・id・・ed・・π・nt・t・加・・f th・B・…ce…曲・・加d・・1・with・m・ti・n・l di・缶r−. bance at Junior High SchooL We ex㎜ined this current status仕om the viewpoint of fbllowing;(1)the actual stu− dents using the resource room,(2)the cooperating.with agencies dealing’with student related・the same.problelhs, (3)・h・p・・bl・m・・f・eachi・g i・・h・・6・・斑・e・・gm・A・ares・1・・f h・vi・g・x・mi・・d・・h・鉛ll・wi・g P・i・t・w・・e. sug−. 99・t・d飴・血・p・・bl・m・加止e re・・肛ce…m;(1)th・di翫ul呼・f血・・a・侍・・d・v・1・pm・nt剖id耳nce b・山・・加d・nt・・ (2)the difficulty of the cooperation with the agencies. 酌. K・yW・・d・:R…肛ce…m,.S・h・・I M・1・Φ・tm・ht, B・llyi・g, D・V・1・pm・nt・I Di・訓iti・・, Speci・I S・pP・丘 Education, Career Development Guidance.
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