インフォームドコンセントに関する研究 : 第1報 大学生に対する医師・歯科医師のインフォームドコンセントについて
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(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 創刊号. 平成13年3月. ReportoftheResearchandEducationCenterforLifelongLeamlng−HokkaidoUniversltyOfEducationNo.1March 2001. インフォームドコンセントに関する研究. 第1報 大学生に村する医師・歯科医師のインフォームドコンセントについて 中村正道1)鈴木一央2)三浦 裕3)片岡繁雄?) 1)東京工業大学 2)北見工業大学 3)北海道教育大学. StudyonInformedConsent −Firstreportontherelationshipbetweeninformedconsent providedbyphysicianskIentiststouniversitystudents−. MasamichiNAKAMURAl)KazuoSUZUKI2)YutakaMIURA3)ShigeoKATAOKA3) 1)TokyoInstituteofTechnology 2)KitamiInstituteofTechnology 3)HokkaidoUniversltyOfEducation. Abstract Weconductedasurveyofl,210universitystudentsconcernlnginformed consent PrOVidedtothemwhentheyreceivedmedicalservicesofphysicians/dentists.Theresults Canbesummarizedasfbllows; (1)Regardingthecontentofinformedconsent,thelargestnumberofstudentsstatedthat. theyreceivedsatisfactoryexplanationsconcernlngHdiseaseconditionsconditionsH (38・7%),followedbythe−1diseasename‖(36・3%),一一examinationpurposes‖(35.7%) and”treatmentdetails‖(35・0%).Ashighas60.2%ofstudentslisted‖othertreatment methods‖astheitemfbrwhichtheydidnotreceiveexplanations,fbllowedby‖results iftreatmentisnotprovided‖(49・8%)and.1risksassociatedwithtreatment一一(43.3%). (2)Manyofthestudentsmarked‖goods”fbr‖politeness‖(44.7%),一■mannerofspeaking‖ (38・9%)and’一easinesstoconsultwith‖(38・1%)intheirevaluationofphysicians/. dentists. (3)Astotheimageprqiectedbyphysicians/dentists,thelargestnumberofstudentssaid ‖bright‖(51・7%),fb1lowedby−trich’l(47.7%),‖personswhogivetreatment‖(47.4%), ‖specialistsofdiseasesandinjuries.一(38.9%)and‖busy‖(29.1%).. Keywords:インフォームドコンセント(informedconsent),患者(patients),大学生(universitystudents), 医師・歯科医師(PhysicianskIentists). 目 的. 我が国において,インフォームドコンセントという言葉を知らない人はもはや少ない。その意 味では国民的常識になりつつある言葉である。しかし,病気や傷害で病院等へ訪れる患者は,果. ー43−.
(3) 中村正道・鈴木一央・三浦 裕・片岡繁雄. たしてインフォームドコンセント理念の目標や実際,→医療消費者としての患者の自立権(right toautonomy)や患者の自己決定権(Selfdetermination)−を「医師一息者の関係」1)の立場から正し. く理解しているかどうかという点になれば疑問である。 インフォームドコンセントの概念は,1947年ニュールンベルグ裁判の結果,作成された. 「ニュールンベルグの倫理綱領」2,3)から発したものであり,次いで,1964年世界医師会総会での 「ヘルシンキ宣言」2,3・5)の採択,1973年全米病院協会の「患者の権利の章典に関する声明」3・5)の発 表,1975年世界医師会総会での「ヘルシンキ宣言東京修正」2・3)での採択を経て,1983年アメリ カ大統領委員会の「医学及び生物学・行動科学研究における倫理問題報告書」2・14)となって確立. されてきた。 わが国においては,1970年旧西ドイツにおける「医師の説明義務・同意取り付け義務について の論文」11)が発表されて以来,インフォームドコンセントに関する議論が盛んになり今日に至っ. ている。しかし,医療制度,医療への評価,願望,期待感,日本的土壌等の違いにより,「医師 と患者との問題」であるインフォームドコンセントは,未だ十分に確立しているとは言い難い現 状である。. 一般的にインフォームドコンセントという概念は,「説明と同意」と訳されているが,必ずし. も正しい訳語とはいえないという指摘がある3,15)。本来の内容は「医療者が患者に,その症状を よく説明し,それに応じた検査や治療について十分な情報を提供し,患者はそれを十分に理解し 承諾した上で,自主的主体的に検査や治療法を選択し,その同意に基づいて医療者が医療行為を. 行うこと」17)であり,「患者は真実を知る権利を持ち,医療者は真実を告げ,患者が理解できる ように説明する義務がある」2)ことで,いわば「個人の尊厳」や「幸福追求権」に基づく「人格 的自立権」にその根拠を求めることができる憲法上の基礎を有する原則でもある。 近年,わが国において,医療全体に村する不信,不満,要望等が噴出し,大きな社会問題となっ. ている。患者がよりよい医療を受けるためには,医療機関や医療従事者に対して医療情報の開示 を求め,その情報を理解し承諾した上で,患者は主体的に治療や医療行為を選択し,自主的に同 意することが必要である。一方,患者は医療行為を受ける消費者として,自らの健康に関心を持 ち,主体的に治療や医療に関する知識を学び,賢明な医療消費者になることが重要である。 本報告は,21世紀の担い手であると同時に,わが国の「医療一息者関係」におけるインフォー ムドコンセントの確立に影響を及ぼす大学生の医師・歯科医師への受診時のインフォームドコン. セント体験とその評価を明らかにし,医療消費者としての患者のあり方を検討するための基礎資 料を得ることが目的である。. 方 法. 調査は,関東地区に所在する国立大学1校(486名)「以下,大都市校とする」,北海道に所在 する国立大学2校,うち中都市に所在する大学(308名)「以下,中都市校とする」,小都市に所在 する大学(416名)「以下,小都市校とする」の合計1210名を村象に,「無記名質問紙法による集 合調査」(回収率100%)を行った。. 調査期間は,平成11年10月1日から11月30日までであった。 調査内容は,過去1年間の医療機関での受診・入院の有無,及び受診・入院の診療科目,受診 時の医師・歯科医師のインフォームドコンセントに関する10項目,受診時の医師・歯科医師へ の評価に関する8項目,受診時の医師・歯科医師に対するイメージ柑項目であった。. −44−.
(4) インフォームドコンセントに関する研究. 村象の基本属性は,性別では男子1040名(86.0%),女子170名(14.0%),地域別では大都市校 486名(弧2御,中都市校308名(25.5%),小都市校416名(34.4働,学年別では1年900名(74.4御, 2年160名(13.2%),3年116名(9.6%),4年(大学院を含む)34名(2.8%)であった。なお,結果 は実数値,及び比率で示し,項目間の差の検定はカイ自乗検定で行い有意差の危険率は5%未満 とし,それぞれに示した。 結 果 1 大学生の医療機関での受診・入院の有無について 「受診も入院もある」とした者は75名(6.2%),「受診はあるが入院はない」は780名(64.5御, 「受診も入院もない」は355名(29.3%)であった。性別にみると,「受診はあるが入院はない」 は女子が,「受診も入院もない」は男子がいずれも有意に高率であった(p<0.01)。また地域 別にみると,「受診も入院もある」,及び「受診はあるが入院はない」は中都市に所在する大 学生が,「受診も入院もない」は大都市,及び小都市に在住する大学生がいずれも有意に高 率であった(p<0.01)。さらに学年別にみると,「受診も入院もある」は2・3年が,「受診も入. 院もない」は1年が,「受診はあるが入院はない」は4年がいずれも有意に高率であった (p<0.05)。. 2 大学生の受診・入院の診療科目について(複数解答). 内科415名(34.3%),歯科358名(29.6%),眼科231名(29.1%),皮膚科163名(13.5%),耳鼻 咽喉科145名(12.0%),整形外科140名(11.6%),外科123名(10.2%),口腔外科14名(1.2%), 脳神経科12名(1.0%),泌尿器科10名(0.8%),産婦人科7名(0.6%),精神科4名(0.3%),「受 診・入院なし」355名(29.4%)であった。 3 大学生の受診・入院時のインフォームドコンセントについて. 1)「病名の説明」について,「納得するまで説明してくれた(以下,「納得」とする」は,310名 (36.3御,「一応説明してくれた(以下,「一応」とする」は472名(55.2‘払),「説明してくれな かった(以下,「ない」とする)」は65名(7.6御,「無回答」は8名(0.9%)であった。 2)「症状の説明」について,「納得」は331名(38.7%),「一応」は477名(55.8%),「ない」は 41名(4.8%),「無回答」は6名(0.7%)であった。 3)「治療内容の説明」について,「納得」は299名(35.0%),「一応」は478名(55.9%),「ない」 は71名(8.3%),「無回答」は7名(0.8%)であった。 4)「治療結果の説明」について,「納得」は232名(27.1%),「一応」は459名(53.9%),「ない」 は152名(17.8%),「無回答」は12名(1.4%)であった。学年別にみると,「納得」は1年が,「一 応」は2年が,「ない」は3・4年がいずれも有意に高率であった(p<0.01)。 5)「治療上の危険性の説明」について,「納得」は187名(21.9御,「一応」は283名(33.1%),「な い」は370名(43.3御,「無回答」は15名(1.8%)であった。 6)「治療しない場合の結果の説明」について,「納得」は148名(17.3%),「一応」は263名(30.8%), 「ない」は426名(49.8%),「無回答」は18名(2.1%)であった。 7)「他の治療法の説明」について,「納得」は100名(8.3%),「一応」は220名(18.2%),「ない」 は515名(60.2%),「無回答」は20名(2.3%)であった。 8)「治療期間の説明」について,「納得」は197名(23.0%),「一応」は431名(50.4%),「ない」 は208名(24.3%),「無回答」19名(2.2%)であった。. 一45−.
(5) 中村正道・鈴木一央・三浦 裕・片岡繁雄. 9)「検査目的の説明」について,「納得」は180名(35.7御,ト応」は250名(49.6御,「ない」 は58名(11・5御,「無回答」は16名(3.2%)であった。なお,「検査の有無」については,「有」 504名(58・9御,「無」339名(39.7%),「無回答」12名(1.4%)であった。 10)「プライバシーの遵守」について,「十分に守られていた」は420名(49.1%),ト応守られて いた」は330名(38・6御,「守られていなかった」は19名(2.2御,「無回答」は84名(10.1%) であった。なお,地域別にみると,「十分守られていた」は小都市の学生が,また「一応守 られたいた」は中都市の学生が,さらに「守られていなかった」は大都市の学生がいずれも 有意に高率であった(p<0.01)。. 4 大学生の受診・入院時の医師・歯科医師への評価について 1)「丁寧さ」について,「よい」は382名(羽.7%),「普通」421名(49.2御,「悪い」38名(4.5御, 「無回答」14名(1.6%)であった。 2)「説明のわかりやすさ」について,「よい」は327名(38.3御,「普通」455名(53.2御,「悪 い」59名(6・9御,「無回答」14名(1.ふ%)であった。学年別にみると「よい」は1年が,「悪 い」は2年が,「普通」は3・4年がいずれも有意に高率であった(p<0.05)。 3)「患者の訴えに村する聞き入れ方」について,「よい」は322名(37.7御,「普通」465名(54.4%), 「悪い」53名(6.2御,「無回答」15名(1.8%)であった。 4)「医師・歯科医師への話やすさ」について,「よい」は326名(38.1%),「普通」447名(52.3%), 「悪い」67名(7.8御,「無回答」15名(1.8%)であった。 5)「説明の速さ」について,「よい」106名(12.4御,「普通」715名(83.6御,「悪い」20名(2.4御, 「無回答」14名(1.6%)であった。 6)「相談のしやすさ」について,「よい」219名(25.6御,「普通」517名(60.5%),「悪い」104名 (12.2%),「無回答」15名(1.8%)であった。学年別にみると,「よい」は1・4年が,「普通」は 3年が,「悪い」は2年がいずれも有意に高率であった(p<0.01)。. 7)「医師・歯科医師への信頼性」について,「よい」256名(29.9%),「普通」497名(58.1御, 「悪い」86名(10.1%),「無回答」16名(1.9%)であった。 8)「医師・歯科医師の患者に対する言葉づかい」について,「よい」333名(38.9%),「普通」467 名(54.6%),「悪い」38名(4.4御,「無回答」17名(2.0%)であった。 5大学生の受診・入院時の医師・歯科医師に村するイメージについて(表−1参照,複数回答) 以下のイメージ18項目について,イメージ項巨=こ同意する者を「同意」とし,同意できない 者を「不同意」とした。. 1)「頭が良い」について「同意」は625名(51.7御,「不同意」は585名(48.3%)であった。「同 意」する者について,地域別にみると,中都市の学生が,また学年別にみると,3年ががい ずれも有意に高率であった(p<0.01)。. 2)「気さくである」について,「同意」は105名(8.7御,「不同意」は1104名(91.3%)であった。 3)「優しい」について,「同意」は220名(1臥2御,「不同意」は990名(81.8%)であった。 4)「威厳がある」について,「同意」は169名(14.0御,「不同意」は1041名(86.0%)であった。 「同意」する者について,性別にみると女性が(p<0.01),また地域別にみると中都市の者が (p<0・05),さらに学年別にみると3年が(p<0.05)いずれも有意に高率であった。. 5)「病気や怪我の専門家」について,「同意」は471名(38.9御,「不同意」は739名(61.1%)で あった。「同意」する者について,性別にみると女性が,地域別にみると中都市の者が,学. −46−.
(6) インフォームドコンセントに関する研究. 年別にみると4年がいずれも有意に高率であった(p<0.01)。 6)「病気を一任できる人」について,「同意」は134名(11.1%),「不同意」は1076名(88.9%) であった。. 7)「自分と一緒に病気と闘ってくれるパートナー」について,「同意」は47名(3.9御,「不同意」 は1163名(96.1%)であった。. 8)「病気を治療する人」について,「同意」は574名(47.4%ゝ「不同意」は636名(52.6%)であっ た。「同意」について,性別にみると女性が(p<0.05),地域別にみると中都市の者が(匹0.01), 学年別にみると1・2年が(p<0.05)いずれも有意に高率であった。. 9)「時間にルーズ」について,「同意」は54名(4.5御,「不同意」は1156名(95.5%)であった。 10)「頑固である」について,「同意」は100名(8.3御,「不同意」は1110名(91.7%)であった。 11)「気難しそうである」について,「同意」は184名(15.2%),「不同意」は1026名(84.8%)で あった。「同意」について,性別にみると女性が(p<0.01),地域別にみると中都市の者が (p<0.05%)がいずれも有意に高率であった。. 12)「忙しそうである」について,「同意」は352名(29.1%ゝ「不同意」は858名(70.9%)であっ た。「同意」について,性別にみると女性が(p<0.05),地域別にみると中都市の者が(p<0.01) いずれも有意に高率であった。. 13)「お金持ち」について,「同意」は577名(47.7%),「不同意」は633名(52.3%)であった。 「同意」について,地域別にみると中都市の者が(p<0.01),学年別にみると2・3年が(p<0.05) いずれも有意に高率であった。. 14)「怖い」について,「同意」は53名(4.4%),「不同意」は1157名(95.6%)であった。 15)「威張っている」について,「同意」は157名(13.0御,「不同意」は1053名(87.0%)であった。. 16)「名誉欲が強い」について,「同意」は149名(12.3御,「不同意」は1061名(87.7%)であった。 17)「人を見下す」について,「同意」は141名(11.7%),「不同意」は1069名(88.3%)であった。 18)「人間性に欠ける」について,「同意」は123名(10.2%),「不同意」は1087名(89.8%)であっ た。. 考 察. インフォームドコンセントは18),これまでの「医療の客体」としてのみ考えられがちだった. 「患者」を医療に参加する主体として捉えるものであり,その考え方の基礎には,人類が市民革 命の歴史を通じて獲得してきた人格の自由・平等の理念があり,「個人の尊厳」や「幸福追求権」 に基づく「人格的自立権」にその根拠を求めることができる憲法上の基礎を有する原則である。 そしてその基本的概念19)は,医師は医療において個々の患者の価値観を尊重し,その患者にとっ. ても,最も望ましい選択を援助するのが任務であり,患者も個々の医師の価値観や知識・技術を 介して,医療の能力と限界を知ることで,個人において主体的な意志決定をしなければならない とされている。. 1981年,リスボン総会において採択された「患者の権利に関するリスボン宣言」において,. 8つの患者の権利を含む11の原則をあげている。そのうち権利の1つである「良質の医療行為を 受ける権利」については6つの内容が示されている(久保井 摂氏訳l))。. これらは,医療者が患者のこれらの権利を認識した上で,いかに医師と患者間の信頼関係を構. 築するかの重要性を指摘していることを意味しているとともに,医療の受益者として,あるいは. −47一.
(7) 中村正道・鈴木一央・三浦 裕・片岡繁雄. 消費者としての患者のあり方をも示している。. 大学生の過去1年間における医療機間への受診・入院は約7割で,受診・入院した診療科目は 内科が大学生の約3分の1,次いで歯科が約3割,眼科・外科整形外科が約2割等で入院が約6. %であったことから,これらのほとんどは「受診・通院」による患者であり,さらに大学生の約. 3分1が内科での診療であることを考えると,自宅外生活による生活の乱れや食生活の乱れ,運 動不足等がその背景にあるのではないかと考えられる20)。 大学生の受診時のインフォームドコンセントについては,「プライバシーが十分守られていた」. は約5割,「納得するまで説明された」とする項目は,「病名の説明・症状の説明・治療内容の説. 明・検査目的の説明」が約3割強,次いで「治療結果の説明・治療期間」は2割強,一方「説明 してくれなかった」とする項目は,「治療しない場合の結果の説明・他の治療法の説明・治療上 の危険性の説明」が約4割を示しており,全体として医師・歯科医師での受診時の大学生のイン フォームドコンセントにおいて,「納得する説明や十分なプライバシー遵守」がなされていない ことが理解される。. 「医師一息者関係」において,3つ基本類型である「類型Ⅰ・積極一受動・権威者一従属者の. 関係」,「類型Ⅱ・指導一協力・指示者一協力者の関係」,「類型Ⅲ・相互参加・共同作業の関係」 が示されているが,「類型Ⅲ・相互参加・共同作業の関係」が医師一息者の関係において望まし いと主張されている1)。. 医者と患者について,よく「よい患者はよい医者を育てる」と言われ,患者は医師から少なく ても1)どういう診断(病名)か。どうしてその診断がついたか(診断根拠)。診断がつかないと. きはその理由。そしてどんな病気を想定しているか(鑑別診断をして何を考えているか)。2)今 どのような状態なのか。今後どのように進行するか(予後)。3)検査の内容とその必要性につい て。検査に伴う危険性とその対処法について。4)どのような治療をするか。治療の目的は何か。. 治療の有効性と危険性。その治療で危険が生じた時の村策について。他の治療法と自分が勧める 治療法との差について。治療しなかった場合の患者の予後について。5)使用する薬の作用と副作. 用について。副作用の出現する頻度とその危険性について。副作用が出現したときの対策につい て等を,医師がきちんと説明しない場合は,質問をして納得いく説明を引き出す必要があり,さら に説明・納得が得られない時は「セカンドオピニオン」を求めるべきであると指摘されている21)。 また,日本医師会5)は会員に対してインフォームドコンセントの重要性を指摘し,日常業務で説. 明すべき事項として,1)痛名と病気の現状,2)治療法の方法,3)治療の危険度(危険の有無),4) その他の選択肢として可能な治療方法とその利害得失,5)予後等を示し,例外として緊急事態で 患者に説明し同意を得る時間的余裕のない場合,さらに患者に説明を理解し判断する知的能力の ない場合(幼児・精神障害者等)を指摘している。しかし一方では,医師はインフォームドコン セントにおいて「十分な説明をしない」理由22)について,1)外来が忙しく十分な時間が作れない, 2)説明をしてもそれに費やした時間の請求ができない,3)医師側に十分な知識,データがないた めにごまかす意味で説明しない,4)医療は医師が決定するものであるといまだに思っている等の. 指摘があり,インフォームドコンセントが十分に実施できない医療側の現実が存在することは否 めない。いずれにしても,医師と患者との医療の関係は,「患者の病気や怪我を治すという考え 方」がその基本になければならない。. 大学生の受診時の医師・歯科医師の評価については,「よい」と評価する項目は「丁寧さ・説 明のわかりやすさ・患者の訴えに対する聞き入れ方・医師や歯科医師への話しやすさ・医師や歯. −48−.
(8) インフォームドコンセントに関する研究. 科医師の患者に対する言葉づかい」で3割強であったこと,一方「悪い」と評価した項目は「相 談のしやすさ・医師や歯科医師への信頼性」において約1割であったこと等は,病気や傷害を 持って受診・入院する大学生の医師や歯科医師への評価が必ずしも高いものとはいえないことを. 意味している。とりわけ,大学生の約1割の者が,「信頼性」において「悪い」と評価している ことに注目しなければならない。 大学生の医師・歯科医師に村するイメージについては,「好意的・肯定的イメージ」として「頭 が良い・気さくである・優しい・威厳がある・病気と怪我の専門化・病気を一任できる人・自分 と一緒に病気と闘ってくれるパートナー・病気を治療する人」と「非好意的・否定的イメージ」 として「時間にルーズ・頑固である・気難しい・怖い・威張っている・名誉欲が強い・人を見下 す・人間性に欠ける」の2つに分類することができるが,医師・歯科医師に対するイメージ(複. 数回答)においては,「同意」できる大学生は「好意的・肯定的」イメージの方が「非好意的・ 否定的」イメージに比べて約3倍存在していることが理解できる。大学生は医師や歯科医師に対 しては,「頭の良い・医療の専門家」として存在していると認識しているが,単に「忙しそうで, お金持ち」とする認識も高い。一方「気難しい・威張っている・名誉欲が強い・人を見下す・人 間性に欠ける」等の患者の人間的・人格的信頼を阻害するイメージが1割強存在していたことに も注目しなければならない。. 医師・歯科医師に対する大学生の「好意的・肯定的イメージ」が,医師・歯科医師の評価を高 め,患者との適正なインフォームドコンセントの確立を図ることが必要であり,同時に患者は医 療に村して主体的・自律的認識を持つことが重要である。 大学生を含む患者が自らの健康や病気・怪我に対して,どのように医療者に説明を求めればよ いか,また患者の自己決定権を主張するためにはどのような医学的知識を身につけなければなら ないか,さらにこれらの知識を得るための学習や教育の場がどのように提供されているか等,少 子・高齢化した社会の中で,いかに生活の質を問われるわが国において緊急に検討し議論されな ければならない。特に,今後インフォームドコンセントに関する教育は,小・中・高校・大学は. いうに及ばず,生涯教育の場においても取り組まれなくてはならい重要な課題であると考えられ る。 大学生の医師・歯科医師に対する受診・入院の有無,インフォームドコンセント,評価,イメー ジに関して性別,地域別,学年別に有意な差がみられたが,医療の受け方に関する男女の違いや 医療ニーズ,地域における医療の実態,発育・発達段階によるニーズ等によって異なることを意. 味し,今後さらに総合的に検討する必要がある。. 要 約. 医師・歯科医師のインフォームドコンセントと受診時の評価に関して,大学生1210名を対象 に調査を行い,次の結果を得た。. 1)受診時のインフォームドコンセントについて,「納得するまで説明してくれた」とする項目. は,「病名の説明」36.3%,「症状の説明」38.7%,「治療内容の説明」35.0%,「検査目的の 説明」35.7%等が高率であり,一方「説明してくれなかった」とする項目は,「治療上の危 険性の説明」43.3%,「治療しない場合の結果の説明」49.8%,「他の治療法の説明」60.2% 等が高率であった。また「プライバシーの遵守」においては,「十分守られていた」とする 者は49.1%であった。. −49−.
(9) 中村正道・鈴木一央・三浦 裕・片岡繁雄. 2)受診時の医師・歯科医師に村する評価において,「よい」とする項目は「丁寧さ」44.7%,. 「説明のわかりやすさ」38.3%,「患者の訴えに村する聞き入れ方」37.3%,「医師・歯科医 師への話しやすさ」38.1%,「医師や歯科医師の患者に対する言葉づかい」38.9%等が高率 であり,一方「悪い」とする項目は「相談のしやすさ」12.2%,「医師・歯科医師への信頼 性」10.1%等が高率であった。 3)受診時の医師・歯科医師に対するイメージは,「頭が良い」51.7%,「お金持ち」47.7%,「治 療する人」47.4%,「病気や怪我の専門家」38.9%等が高率を示した。一方「気さくである」 8.7乳「自分と一緒に病気と闘ってくれるパートナー」3.9乳「時間にルーズ」4.5乳「頑固 である」8.3%,「怖い」4.4%等は低率であった。 4)受診時のインフォームドコンセント,評価,及びイメージにおいて,性別,地域差,学年別. に有意な差がみられた。. 引用・参考文献 1)浅井 賢(1997):インフォームドコンセント実践学,序文,メジカルビュ一社. 2)星野一正(1991):医療の倫理,pp.62−112,岩波書店. 3)水野 肇(1996):インフォームドコンセント,中央公論社. 4)水野 肇(1997):医療・保険・福祉改革のヒント,中央公論社. 5)斉藤隆雄監修,神山有史編集(1998):生命倫理学講義,pp.53−70,日本評論社. 6)砂原茂一(1983):医者と患者と病院と,Pp.19−50,Pp.145−194,岩波書店. 7)鈴木 厚(1998):日本の医療を問いなおす−医師からの提言,pp.15ト185,筑魔書房. 8)加藤尚武(1999):脳死・クローン遺伝子治療−バイオエシックスの練習問題,Pp.16l−175,PHP研究所. 9)下野正基(1995):歯科医療の最前線,pp.261−265,講談社.. 10)酒井忠昭・秦 洋一(1994):インフォームドコンセント,p.3、,みみず書房. 11)唄 孝一(1970):医事法学へのあゆみ,p.1∼,岩波書店. 12)日本医師会生命倫理懇談会(1990):説明と同意についての報告,日本医師会. 13)金川琢磨(1995):現代医事法学,pp.116∼,金原出版. 14)厚生省医薬局医事課監修(1984):アメリカ大統領委員会生命倫理総括レポート,pp.l∼,篠原出版. 15)高柳和枝(1995):医者に上手にかかる法,講談社. 16)広井良典(1999):日本の社会保障,岩波書店. 17)盛岡恭彦(1996):インフォームドコンセント,日本放送出版協会. 18)池永 満(1994):患者の権利,pp.8ト101,九州大学出版会. 19)中川米造(l粥8):医療と人権,pp.88−108,中央法規出版. 20)片岡繁雄他(1999):ライフスタイルと健康に関する研究一大学生の体重観,自覚的ストレス,生活・食 事の規則性,趣味,多忙観,日常生活の満足度,体調の変化と健康に関する自覚的症状について−, Vol.50,No.1,PP.111−126,北海道教育大学紀要(自然科学編). 21)神前 格(2000):患者学,pp.68−80,マガジンハウス. 22)米山公啓(1999):変わろうとしない医師たち,pp.68−69,大和書房.. −50−.
(10) インフォームドコンセントに関する研究. 表−1大学生の医師・歯科医師に対するイメージについて(n:1210) イメージ項目. 同意(%). 不同意(%). 頭が良い. 625(51.7). 気さくである. 105(臥7). 優しい. 220(18.2). 990(81.8). 威厳がある. 169(14.0). 1041(86.0). 病気や怪我の専門家. 471(3臥9). 病気を一任できる人. 134(11.1). 1076(88.9). 47(3.9). 1163(96.1). 574(47.4). 636(52.6). 54(4.5). 1156(95.5). 頑固である. 100(8.3). 1110(91.7). 気難しいそうである. 184(15.2). 1026(84.8). 忙しそうである. 352(29.1). 858(70.9). お金持ち. 577(47.7). 633(52.3). 53(4.4). 1157(95.6). 威張っている. 157(13.0). 1053(87.0). 名誉欲が強い. 149(12.3). 1061(87.7). 人を見下す. 141(11.7). 1069(88.3). 人間性に欠ける. 123(10.2). 1087(89.8). 自分と「緒に病気と闘ってくれるパートナー. 病気を治療する人. 時間にルーズ. 怖い. −51−. 585(48.3). 1104(91.3). 739(61.1).
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