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障害者権利条約における「健康」の概念と特別支援教育

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(1)Title. 障害者権利条約における「健康」の概念と特別支援教育. Author(s). 戸田, 竜也    . Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第46号: 181-186. Issue Date. 2014-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7744. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 −北海道教育大学釧路校研究紀要−第46号(平成26年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.46(2014):181-186. 障害者権利条約における「健康」の概念と特別支援教育 戸 田 竜 也 北海道教育大学釧路校. Special needs education and a concept of the health in convention on the rights of persons with disabilities Tatsuya TODA Kushiro Campus, Hokkaido University of Education.  一つに、障害者権利条約が「自由権」的性格と「社会. はじめに. 権」的性格を併せ持つ条約という点についてである。一般.  2006年12月13日、第61回国連総会において「障害のあ. に自由権とは国家からの自由を、社会権とは国家の作為を. る人の権利に関する条約」 (Convention on the Rights of. 求める権利と解される。障害者権利条約においては、個々. Persons with Disabilities. 以下、障害者権利条約とする). の条文にその両方の権利が包含されているものが多い。こ. と同選択議定書(Optional Protocol)が採択された。同条. の点について阿部は「自由権・社会権を単に水平に並置す. 約は、第45条(効力の発生)に基づき2008年5月3日に発. るにとどまらず、両者を合有させ、その協働性をもって権. 効した。 . 利の十全な実現を確保する」2)条文の構成について指摘し.  本稿執筆時(2014年5月末日) 、世界で147 ヶ国が批准. ている。たとえば第24条(教育)では、生涯にわたりさま. を終えた。本邦では2013年12月4日に国会で批准が承認さ. ざまな教育機会への参加の「自由」が認められる一方、同. れ、2014年2月19日より国内での効力が発生している。. 時にそこには「社会」の側による合理的配慮等の保障がな.  障害者権利条約は、「全ての障害者によるあらゆる人権. ければ、教育に参加する権利の文言はあっても実質化され. 及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、. ない。自由の強調が社会・環境の側の責任をあいまいにし. 及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進. 障害者が「放任」されてしまうならば、結果として障害者. することを目的とする」(第1条)条約である。小さなコ. の権利が侵害される可能性があるのである。. ミュニティとしての学校を含む「インクルーシブな社会」.  二つに、障害者権利条約は「国際条約」の一つとして国. を実現するために、 「非差別・平等」を柱とし、福祉・教育・. 内一般法の上位に位置し、法律を拘束するという点であ. 労働・医療・社会生活など条文は50条にわたる。 . る。つまり理念上、国内では憲法に次いで優先度の高い法.  特別支援教育を含む教育一般にかかわる条項としては、 1). 規に位置づけられるものである。今回本邦では、署名から. 第24条(教育)の他に、 前文に記されている「障害概念」 、. 批准までに6年半の歳月を費やし、その間に障害者基本法. 第2条他に記されている「合理的配慮」等多数あるが、筆. 及び障害者雇用促進法の改正、障害者虐待防止法・障害者. 者はこの中からとりわけ第25条 (健康) の条文に着目した。. 総合支援法・障害者差別解消法の制定が行われた。 これは、. 障害者権利条約に規定される諸権利を行使するにはその人. 条約の趣旨と一般法との間の整合性を図る作業の一つであ. が「健康」であることが重要であり、一方特別支援教育に. り、法律・施策の具現化によって条約の理念・趣旨が本邦. おいては大切なキーターム (key term) となるからである。. においても体現することを示している3)。.  本稿では、障害者権利条約第25条(健康)の条文と特別.  なお、上位法であり、最高法規である日本国憲法と障害. 支援教育の関連についての検討を試みる。. 者権利条約の間には、理念の矛盾はないことを補足してお.  なお、本稿で用いる条文(以下、ゴシック体で表記)に. きたい。障害者権利条約第25条(健康)は、日本国憲法第. ついては、 日本政府公定訳(2014年1月20日公布)である。. 25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営 む権利を有する。」 「2 国は、 すべての生活部面について、 社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めな. 1.条約の性格. ければならない。」と規定した国民の生存権を補強する役.  障害者権利条約第25条(健康)と特別支援教育の関連を. 割・関係にあるといえる。. 検討するにあたり、まず条約それ自体が持つ性格について 2点のみ述べる。. − 181 −.

(3) 戸 田 竜 也  . 2.健康の定義.  障害者権利条約は、人間の「新たな権利」を創出したも.  障害者権利条約の条文において、「健康」についての明. のではない。これまで「世界人権宣言」や「国際人権規約」. 確な定義は示されていない。しかし、条約では他に示され. 他、国際的な各種の宣言や規約等において示されてきたヒ. ている2つの概念・定義から、「健康」を想定しているも. トとして生まれながらにもつ「人権」が、障害者には具体. のと考えられる。. 的に保障されてこなかった歴史がある。その反省から障害.  まず一つは、WHO・世界保健機構がWHO憲章(1948. 者に特化した人権条約制定の必要性が国際的に合意され、. 年発効)において示した「健康とは、単に疾病がない、虚. 障害者権利条約が誕生したのである。同種の国際人権条約. 弱ではないだけでなく、肉体的、精神的、社会的に完全に. の一つに「児童の権利に関する条約」があるが、これも対. 良好(正常)な状態である」4)という定義である。その後、. 象を明確にし、その対象に合わせて権利規定を記すことに. 国内外を問わず、さまざまな機関が健康及びその権利につ. よって「もともとすべての人たちが持っている権利を、よ. いて言及しているが、多くがこの定義を暖用しており、障. 7) り普遍的で強固なものにしていく」 のである。. 害者権利条約においてもこの定義を用いているものと考え.  第25条(健康)には、すべての人に「到達可能な最高水. られる。. 準の健康を享受する権利」があることを前提として、障害.  次に、同じくWHOが2001年に示した「生活機能・障害・. 者も差別なくその権利が保障される必要性が述べられてい. 健康の国際分類/ ICF」 (International Classification of. る。この背景には、健康の問題に直面しやすい障害者が、. Functionning, Disability and Heals /一般に「国際生活. 健康の保持において重要な保健・医療サービスを障害のな. 機能分類」)の概念である。. い人と同等に受けることができなかった歴史がある。.  ICFは、その目的を「健康状況と健康関連状況を記述す.  まず、保健サービスと保健計画の提供において、「他の. るための、統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供す. 者に提供されるものと同一の範囲、質及び水準」を確保す. ること」5)とし、健康領域と健康関連領域についてのモデ. ることを締約国に求めている。. ルを示している。また、そのモデルには 「健康状態」 (Health.  保健サービスの内容は多様であるが、一つの例として「本. Condition)・「変調または病気」 (disorder or disease)と. 人及び家族の選択に基づく医療機関受診の機会」が、障害. いう項目が設けられ、「本人」の生活機能に影響を及ぼす. のない者と同等に確保されることが重要である。筆者が. 因子の一つとして位置づけている。. 障害者及びその家族を対象として行う教育相談において、.  上田は以上2つの概念・定義を踏まえ、「健康とは、単. 度々話題に上がるのが 「医療機関にかかわる情報」 である。. に病気がないということではなく、『生活機能』全体が高. 障害者は身近な地域において受診できる医療機関の情報を. 6). と再定義している。つまり. 求めている。これには地域差があるものの、受診する医療. 健康とは、障害と同様に旧来の「医学モデル」のみで捉え. 機関を自由に選ぶことができない現状が反映されている。. るのではなく、「統合・相互作用モデル」における「生活. また、かかりつけ医を持つ障害者であってもその病院が遠. 機能」に関連付けて捉える必要がある。健康は常に可変的. 隔地にあったり、あるいは他の診療科を受診する場合には. で動的なものであり、また周囲の環境の在り様に大きく左. 同様に情報を求めることとなり、これが子育てをする上で. 右されるのである。. の悩みや不安につながる場合もある。. い水準にある状態である」.  一方、「質及び水準」については、たとえば医療機関で の診察の場面において言語により自分の症状を説明できな. 3.条文の検討. い者に対しても、他の者と同等の「質及び水準」が確保さ.  第25条(健康)では、 「締約国は、障害者が障害に基づ. れなければならない。「医療過疎化」といった現実がある. く差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を. 中で大変難しい課題ではあるが、居住する地域またはその. 有することを認める。締約国は、障害者が性別に配慮した. 近隣において障害者が選択し得る医療機関が複数あり、そ. 保健サービス(保健に関連するリハビリテーションを含. こでは医学モデルでいうところの障害の種類・程度にかか. む。)を利用する機会を有することを確保するための全て. わらず医療の質が確保されるということが、インクルーシ. の適当な措置をとる。締約国は、特に、次のことを行う。 」. ブな社会の構成要素の一つとなろう。. と述べた後、 (a)∼ (f)にわたり、具体的な措置につい.  次に、保健サービスが「無償又は負担しやすい費用」で. て規定している。. 提供されることを締約国に求めている点について、その検.  以下、それぞれについて検討を行う。. 討にあたっては、本邦において「障害者の貧困」問題が数々 指摘されていることを踏まえなければならない8)。近藤は. (a)障害者に対して他の者に提供されるものと同一の範. 公衆衛生学の立場から、貧困という状況が不健康な状態や. 囲、質及び水準の無償又は負担しやすい費用の保健及び保. 疾病を発症させやすいこと、治療につながった後も他の者. 健計画(性及び生殖に係る健康並びに住民のための公衆衛. に比べて回復に時間を要すること、さらには平均寿命を縮. 生計画の分野のものを含む。 )を提供すること。. めること等を指摘している9)。一方阿部も、乳幼児を中心. − 182 −.

(4) 障害者権利条約における「健康」の概念と特別支援教育 とした研究ではあるが、「子どもの貧困」が「健康格差」 10). 康診査の充実が課題となる。現在、各自治体に必須とさ. を生じさせる本邦の実態について指摘している 。今日の. れている1歳半及び3歳児健診の他に、それぞれの裁量に. 日本社会において、障害者を含む国民の健康と保健・医療. よって多様な月齢・年齢での健診が行われている。これま. にかかわる費用を考える際には、「貧困と健康格差」問題. で「受診もれ」 「発見もれ」 「対応もれ」の3つのもれを. を無視することはできず、保健・医療サービスが「無償又. なくそうというスローガンを掲げて事業が進められてきた. は負担しやすい費用」によって提供されることがその人の. が、障害者権利条約で規定する「早期発見」は子どもたち. 生命の質を含む権利保障と大きく関連するのである。. の受診を前提とし、適切な「早期関与」(対応)とのセッ.  今日、国及び地方自治体の財政悪化とともに、新自由主. トによってはじめて生きてくるものである。乳幼児健診は. 義的経済政策のもとにおいて福祉・医療の「サービス化」. 悉皆健診であるため児童虐待や子どもの貧困問題、さらに. が進み、「応益負担」原則の拡大による利用者の負担増が. は居所不明児童の問題など、新たな子育て・子育ちにかか. 強いられている。保健・医療にかかわる経済的な負担の問. わる課題への対応も益々重要になっている。. 題は健康権という側面から検討される必要があるととも.  さらに障害の「早期発見」については、科学的なエビデ. に、障害者権利条約第10条(生命に対する権利) 「締約国は、. ンスに基づく健診内容の充実と従事する専門職の拡充及び. 全ての人間が生命に対する固有の権利を有することを再確. 専門性の向上が追求されなければならない。現在の乳幼児. 認するものとし、障害者が他の者との平等を基礎としてそ. 健診はその費用が一般財源化され、自治体によって内容・. の権利を効果的に享有することを確保するための全ての必. 体系が大きく異なっている。その地域の資源を活用し、地. 要な措置をとる。」の実質化との関連からも考えられなけ. 域の実態を反映したものとも言える。一方、その「自治体. ればならない。. 間格差」は、子どもが生まれた地域によって受けることが.  次に、条文では「保健計画」についても述べられてい. できる保健サービスの「質の格差」となりかねない。. る。本邦では「健康日本21」及び「健康増進法」により、.  小児科医である小西は、障害の早期発見の重要性を述べ. 各自治体において地域保健計画の策定が求められている。. た上で「安易な診断や治療の拡がりから子育てや教育現場. この計画の中には、当然のことながら「地域で暮らす障害. の混乱ぶりがうかがえ、目先の対応に追われて障害の診断. 者」にかかわる計画が含まれなければならず、かつその策. 名をつけることへの重みが私たち大人の間で薄れている」11). 定にあたっては障害者を含む多様な当事者の参加が求めら. DSM と指摘している。今日、 (精神障害の診断と統計マニュ. れる。. アル)やその関連書籍の普及、また「障害特性」という言.  筆者は、ある自治体の地域保健計画策定委員会の委員を. 葉の広がりは、一般の人々の障害理解を進めた一方、人々. 経験したが、計画策定までの段階において、その地域で暮. の思考が周囲にいる「気になる人」を安易に障害者とカテ. らす障害者について議論される場面はなかったと記憶して. ゴライズしてしまう傾向がないかを小西は問うているので. いる。また、委員会の議論の中心はいかに疾病を予防する. ある。. かであったが、その背景には「医療費の抑制」と疾病に.  次に、障害のために必要とする保健サービスは「児童及. よって稼働できない人たちを減らす「生活保護費の抑制」. び高齢者の新たな障害を最小限にし、及び防止するための. という財政の論理が大きく横たわり、生存権及び健康権と. サービスを含む」とされる。この点について、たとえば加. いう保健・医療サービスにおける権利についての議論はな. 齢や環境変化の影響によって発生する「二次障害」の防止. かった。厚生労働省が示した枠組みの中で策定しなければ. が想定される。今日、これまで取り組みが進められてきた. ならないという制約はありながらも、今後の地域保健計画. 肢体障害のみならず、知的障害や自閉症スペクトラムにお. の改訂にあたってはインクルーシブな社会を実現するため. いてもその二次障害の発生メカニズムの研究が進められつ. の「権利としての健康」を議論に据えることが必要となっ. つある。また、障害者の「生活不活発病」(廃用症候群). てこよう。そのためにも計画段階にあっては、保健・医療. も二次障害の一つに含まれる。. の専門家と称する人々だけでなく、障害当事者の参加が重.  ここで課題を挙げるならば、障害福祉サービスにおける. 要である。. 「利用計画」の作成及び評価、教育分野における「個別の 教育支援計画」「個別の指導計画」の策定及び評価等にお. (b)障害者が特にその障害のために必要とする保健サー. いて、二次障害とその予防がどのようにとらえられている. ビス(早期発見及び適当な場合には早期関与並びに特に児. かという点である。これらの計画は長期的な視点に立って. 童及び高齢者の新たな障害を最小限にし、及び防止するた. 将来を見通すものと謳われつつも、多くの場合「いま、こ. めのサービスを含む。)を提供すること。. こ」を中心として計画が立てられている。具体的には、障 害者に対して非常に短い期間で可視化できる行動変容を求.  「障害のために必要とする保健サービス」を提供するこ. め(目標を立て) 、 それを評価するシステムとなっており、. とが締約国に求められているが、そこには「早期発見及び. 「できること」をブロックのように積み上げていくことに. 適当な場合には早期関与」を含むものとされる。障害の早. よって人間は成長・発達するという人間観・発達観に基. 期発見にかかわっては、母子保健法に規定される乳幼児健. づいているように見える。ここには生活の質(Quality of. − 183 −.

(5) 戸 田 竜 也 Life)を追求しつつ、二次障害発生のメカニズムを解明し. (f)保健若しくは保健サービス又は食糧及び飲料の提供. それを予防するという観点が薄いように感じられる。. に関し、障害に基づく差別的な拒否を防止すること。. (c)これらの保健サービスを、障害者自身が属する地域.   (e) (f)の検討は省略する。. 社会(農村を含む。)の可能な限り近くにおいて提供する こと。. 4.考察.  各種のサービスが「障害者自身が属する地域社会の可能. (1)保健サービスの無償又は負担しやすい費用での提供. な限り近くにおいて提供すること」は、インクルーシブな. について. 社会を目指すにあたって大変重要な事柄である。この間、.  条文(a)において、保健サービスの無償又は負担しやす. 保健・福祉のサービスは国から都道府県へ、都道府県から. い費用での提供が締約国に求められている。特別支援教育. 市町村へとより身近な地域へ事業の移行が進められてい. にかかわっては、福祉の領域と関連するものであるが、児. る。このような事業の移行は、その地域に居住する障害者. 童生徒が日常的に使用する補装具・自助具の費用負担が一. の実態に合わせたより細やかな事業・施策が進められる可. つの課題となる。補装具とは「身体の一部の欠損または機. 能性を持つ一方、自治体によっては、専門職の確保がまま. 能の障害を補い、身体障害者の日常生活や職業生活を容易. ならず、サービス量の不足を招きかねない事態となる。. にするために用いられる器具」13)である。一方自助具とは「一.  たとえば介護保険法の改正(2014年6月)は、「要支援. 時的あるいは永久的に身体に障害をもった、もしくは動作. 者」が利用する訪問介護とデイサービスを介護保険の給付. 障害をもった人にたいして、その機能障害を代償あるいは. にもとづくこれまでの仕組みから、市町村の「地域支援事. 補償し、目的とする動作を容易にまた可能にするためのも. 業」で提供されるサービスへと移すものである。厚生労働. の」14)とされる。. 省は「市町村が地域の実情に応じて、多様できめ細やかな.  補装具・自助具の使用は、ICF・生活機能を構成する「活. サービスを効果的・効率的で柔軟に提供できるようにする. 動」にかかわる部分であり、学校における「自立活動」や. こと」が改正のポイントとしているが、事業を準備できな. 日常生活の指導の範囲にある。さらに、補装具・自助具の. い自治体が出るとの懸念が示されている。また、2012年に. 機能・性質によっては、環境への興味、他者への関心、移. 施行された「障害者虐待防止法」では、「障害者を虐待し. 動への意欲、動作の促進等を大きく左右し、教育の目的で. たと思われる場合」に通報する先として「市町村障害者虐. ある「人格の形成」に影響を及ぼすものであり15)、広義の. 待防止センター」を上げているが、こちらも一部自治体に. 「教具」と言ってもおかしくはないだろう。. おいては市町村役場職員がセンター職員として配置されて.  補装具は、補装具費支給制度のもと「当該補装具費支給. いるものの、対応における専門性については疑問が残ると. 対象者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令. ころである。. で定める額を控除して得た額(補装具費)を支給する」と されているが、指定される補装具の範囲は限定されてお. (d)保健に従事する者に対し、特に、研修を通じて及び. り、障害者が希望する補装具が支給対象になっているとは. 公私の保健に関する倫理基準を広く知らせることによって. 限らない。. 障害者の人権、尊厳、自律及びニーズに関する意識を高め.  障害者権利条約の趣旨に沿うならば、障害者及び家族が. ることにより、他の者と同一の質の医療(例えば、事情を. 支給を希望する補装具・自助具については、無償又は負担. 知らされた上での自由な同意を基礎とした医療)を障害者. しやすい費用で提供される必要がある。. に提供するよう要請すること。 (2)性教育について  保健・医療に従事する者の倫理要項として、世界医師会.  条文(a)において、障害者に対する「性教育」の提供. が1964年に採択し、2013年に改訂した「ヘルシンキ宣言」. が締約国に求められている。学校教育において行われる性. (人間を対象とする医学研究の倫理的原則)がある。ここ. 教育は、小学校では「体育科」保健領域において、中学校. に示された基本的な倫理規定は、障害者権利条約における. では「保健体育」において実施されている。特別支援学級. 考え方にも通じるものがあるとされる12)。. に在籍する児童生徒の保健体育は、「交流及び共同学習」.  また、障害の概念が相互作用モデルとするならば、環境. として交流学級(通常学級)の授業に参加していることが. の一つとなる保健・医療従事者のあり様が本人の障害の状. 多いようである。通常学級で行われる性教育が特別支援学. 態像にも大きく作用することを留意しなければならない。. 級に在籍する障害児一人ひとりが理解できる内容となり、 かつ性と生の主体者としての学びの獲得に至っているかど. (e)健康保険及び国内法により認められている場合には. うか、慎重な吟味と評価が必要となってくる。障害者権利. 生命保険の提供に当たり、公正かつ妥当な方法で行い、及. 条約では一人ひとりの子どもの必要性に応じて特別な配慮. び障害者に対する差別を禁止すること。. を行い、実質的な平等を求めている。この点から考えても. − 184 −.

(6) 障害者権利条約における「健康」の概念と特別支援教育 障害児の実態によっては通常学級とは別集団で、あるいは. (4)可能な限り近くにおいて提供される保健サービスに. 個別に性教育が必要な場合もある。. ついて.  筆者らが行っている教育相談では、性にかかわる「問題.  条文(c)に規定される「可能な限り近くにおいて提供. 行動」を起こした障害児についての話を度々聞くが、子ど. される保健サービス」と教育の関係では、学校での「医療. もの話に耳を傾けると、通常学級での性に関する授業が理. 的ケア」という課題が上げられる。. 解できず、第二次性徴が始まり、からだとこころの変化に.  学校基本調査によると、重度・重複障害児の在籍が年々. 戸惑う中で「行動化」した者もいるようである。この場合、. 増加している。その中には、いわゆる「医療的ケア」を必. 当然のことながら生徒指導的対応の前に、学校及び教師の. 要とする児童生徒が多数含まれている。校内に看護師を配. 教育・指導の在り方について再検討しなければならない。. 置する自治体が増えつつある一方、保護者の同伴によって.  一方、特別支援学校においても同様に性教育の実践が求. 校内における医療的ケアを行う自治体・学校もいまだに. められる。子どもの興味・関心、発達段階、認識レベル等. 残っている。また、特別支援学校においては、校内に臨時. が十分考慮され、適切な教材によって実施されなければな. を含む看護師の配置があったとしても寄宿舎には配置され. らない。これまで、特別支援学校の教師たちは、知的障害. ておらず、結果として訪問教育に措置されている児童生徒. 及び重度重複障害の児童生徒に対する性教育にかかわり、. の実態もある。. 教育課程編成、教材・教具の作成を行ってきた。その蓄積.  また、ある自治体の小学校では、看護師資格を持つ特別. は大変貴重なものであるが、このような学校現場に議員と. 支援教育支援員を採用し病弱学級に在籍する児童への医療. 新聞社が乗り込み、教材を取り上げ、授業内容を批判する. 的ケアにあたらせている。. 16). といった出来事があった 。その事件は、裁判でも学校側.  近隣の学校への看護師等の配置が、インクルーシブ教育. の教育の正当性が認められたが、議員らが行った行為は、. を進めていく一つの方策となる。. 教育への不当な介入であるとともに、障害者に対する人権 侵害行為である。  教師の中には、障害児に対して性教育をどのように進め. 5.おわりに. れば良いかがわからないという者もいる。教師への研修の.  本稿では、障害者権利条約第25条(健康)と特別支援教. 実施が結果として障害者の性にかかわる権利を確保するこ. 育の関連についての検討を試みた。各サブパラグラフにつ. とにもつながるはずである。. き一例ずつしか上げることはできなかったが、特別支援教 育にかかわる具体的な事例を関連付けて検討した結果、文. (3)二次障害の予防について. 部科学省が進めようとしている「インクルーシブ教育シス.  条文(b)において、障害者の二次障害の予防が締約国. テム」において、第25条(健康)が大きく関連しているこ. に求められている。教育に関係する課題として、肢体障害. とがあらためて確認された。. 者の一例を紹介する。.  今後、他の条文についても関連を検討するとともに、具.  主たる障害として肢体不自由の児童生徒が在籍するある. 体的な教育施策にどのように反映されていくかを注視して. 特別支援学校では、小学部・中学部・高等部があり寄宿舎. いきたい。. も設置されている。学校区は広域で、実家が最も遠い子ど もは学校から自動車で片道3時間程度かかる地域である。 そのような地理的条件や保護者の就学への希望から、小・. 【註・文献】. 中学校は地域の普通学校へ、高等部段階になってはじめて. 1)本条約中に障害の明確な定義は記されていないが、前. この特別支援学校へ進学する肢体障害の生徒が増えてい. 文に記された「 (e)障害が発展する概念であることを. る。. 認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの.  この特別支援学校の自立活動教諭の話によると、小学部. 者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用. から特別支援学校に在籍している生徒と、小中を普通学校. であって、これらの者が他の者との平等を基礎として. で過ごし高等部から特別支援学校に在籍する生徒では身体. 社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものに. の状態が大きく異なるという。つまり、地域の普通学校に. よって生ずることを認め」という規定から、ICF(生. 通っていた生徒はこれまで身体にかかわる専門的な支援. 活機能分類)における「統合・相互作用モデル」を想. をほとんど受けておらず、誤って固定化された姿勢や大き. 定していることがわかる。また、明確な定義を設けな. な負荷がかかる運動動作、不随意運動等が顕著であるとい. かった背景として、定義・範囲を明確にすることによっ. う。またこれは特殊な一部の生徒の例ではなく、多くに共 通するという。一度固定化された姿勢や誤って獲得された. て漏れる者を出さない意図があったという。 2)阿部浩己「権利義務の構造」、松井亮輔・川島聡編『概. 運動動作は高等部段階からの修正は難しく、インクルーシ ブ教育を進めるにあたっての課題の一つと考えられる。. 説 障害者権利条約』 (法律文化社、2010)49-62頁。 3) 「児童の権利に関する条約」を批准した際には、本邦 は一般法の改正を一切行わなかった。「国連・子ども. − 185 −.

(7) 戸 田 竜 也 の権利委員会から日本政府への勧告」を読むならば、 同条約の趣旨・理念を本邦に具現化させるために、一 般法の改正が必要であったと筆者は考える。 4)上杉正幸「からだへの不安」飯島裕一編著『健康不安 社会を生きる』(岩波新書、2009)  p5 5)世界保健機構(WHO) 『ICF 国際生活機能分類―国 際障害分類改訂版―』 (中央法規、2002) 6)上田敏『ICFの理解と活用 ―人が「生きること」 「生 きることの困難(障害) 」をどうとらえるか―』 (萌文 社、2005) 7)玉村公二彦・中村尚子『障害者権利条約と教育』(全 障研出版部、2008) 8)高林秀明「知的障害者と家族の老いと暮らし : その社 会的地位と社会保障の課題」 、 障害者問題研究 41(1), 10-17, 2013 9)近藤克則『健康格差社会―何が心と体を蝕むのか』 (医 学書院、2005) 10)阿部彩『子どもの健康格差の要因 : 過去の健康悪化 の回復力に違いはあるか』 医療と社会 22(3), 255269, 2013 11)小西行郎『子どもの発達障害を理解する』(集英社新 書、2012) 12)小澤温「健康」松井亮輔・川島聡編『概説 障害者権 利条約』(法律文化社、2010)135頁。 13)滝澤仁唱「補装具」茂木俊彦編集代表『特別支援教育 大辞典』(旬報社、2010) 14)原義晴「自助具」茂木俊彦編集代表『特別支援教育大 辞典』(旬報社、2010)pp321-322 15)今日、手を使用しないで移動・操作できる歩行器が販 売されている。手が自由になることにより、ヒト・モ ノ・コトへの指向性が高まり、結果として移動への意 欲が喚起されることが確認されている。 16)金崎満『七生養護学校事件―性教育攻撃と教員大量処 分の真実』(群青社、2005). − 186 −.

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Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

Hence, for these classes of orthogonal polynomials analogous results to those reported above hold, namely an additional three-term recursion relation involving shifts in the