第1 章 総論 1. 高齢化現象と展望 韓国は2000 年、総人口に占める 65 歳以上の人口の割合が 7.2%となり、高齢化社会1へ 突入したが、2018 年には 14.3%の高齢社会へ、その 8 年後の 2026 年にはベビーブーム世 代(1955∼1963 年生まれ)が高齢者となるため、20.8%という超高齢社会になるものと予 測される。さらに2050 年には韓国の高齢人口の割合が 38.2%に上るものと推計されている。 <図 1-1> 65 歳以上の人口の割合 인구구성비:65세 이상 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 1960 1964 1968 1972 1976 1980 1984 1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012 2016 2020 2024 2028 2032 2036 2040 2044 2048 1960:2.9 2026:20.8 2018:14.3 2000:7.2 2050:37.3
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
人口構成比で、幼年人口(0∼14 歳)が占める割合は、1960 年には 42.3%だったものが 2000 年には21.1%と、わずか 40 年で半減し、2020 年には 12.4%に、2050 年には 8.9%にまで 落ち込むものと予測されている。人口構成比で生産年齢人口(15∼64 歳)が占める割合は 1960 年に 54.8%、2000 年には 71.7%に増加したが、2015 年の 73.4%をピークに下がり 始め、2020 年には 72.0%、2050 年には 53.0%になると見られる。 1 国連が定めた高齢化社会の定義によれば、全体の人口に占める 65 歳以上の高齢者の割合が 7%以上だと
高齢化社会(aging society)、14%以上だと高齢社会(aged society)、20%以上だと超高齢社会(super-aged society)と分類される。
人口構成比:65 歳以上
<図 1-2> 人口構成比の推移(1960-2050 年) 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 1960 1964 1968 1972 1976 1980 1984 1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012 2016 2020 2024 2028 2032 2036 2040 2044 2048 인구구성비:0-14세 인구구성비:15-64세 인구구성비:65세 이상
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
総人口は1960 年の 2501 万人(男性 1255 万人、女性 1246 万人)から増え続けているが、 2018 年の 4934 万人(男性 2471 万人、女性 2463 万人)をピークに減少傾向に転じ、2050 年には4234 万人(男性 2073 万人、女性 2161 人)になると予想される。女性の人口は、 2022 年に初めて男性を上回るものと見られる。 人口成長率は、資料の発表が始まった1960 年以降、減少を続けており、1961 年は 3.0% であったが、2019 年に 0.0%を記録したあと、マイナス増加率を記録し始め、2050 年には -1.1%になると予想される。 <図 1-3> 総人口数と人口成長率
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
1960 年に幼年人口 100 人当たり 6.9 人だった老年化指数は、初期には緩やかな速度で増 加していたが、次第に加速度が増す指数関数(Exponential Function)型で増加する傾向を見 せている。2016 年に初めて幼年人口 100 人あたり、扶養しなければならない高齢人口が 100 -1.50 -1.00 -0.50 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 1961 1965 1969 1973 1977 1981 1985 1989 1993 1997 2001 2005 2009 2013 2017 2021 2025 2029 2033 2037 2041 2045 2049 0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 인구성장률 총인구 3. 01 -1. 07 人口構成比:0-14 歳 人口構成比:15-64 歳 人口構成比:65 歳以上 人口成長率 総人口
人を超過する100.7 人となり、2050 年には幼年人口 100 人あたり 429.3 人を扶養しなけれ ばならなくなるという結果が出ている。老年化指数は、15 歳未満の人口に対する 65 歳以上 の人口の割合によって表される。
<図 1-4> 老齢化指数
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
栄養状態の改善と医学の発達などによる平均寿命の伸びと持続的な出生率の低下により、 高齢化現象は先進国で共通して見られる現象であり、すでに多くの先進国で高齢人口の割 合が14%以上という高齢社会に入っている。韓国の高齢化の推移をみると、現在はまだそ れほど懸念される水準ではないが、高齢化の進む速度が世界で最も速いため、否定的な影 響を強く受けると予測されている。 高齢者の割合が 7%から 20%にまで増加する期間を国別に比較してみると、韓国の急速 な高齢化の危険性がわかる。フランス154 年、アメリカ 94 年、イタリア 79 年、ドイツ 77 年、日本36 年であるが、韓国はわずか 26 年と予測されている。すでに 20∼30 年前から高 齢化社会の到来を予見し、対策を進めてきた先進国とは異なり、韓国は対策を立てる時間 も不十分で、早急な高齢化対策の必要性が叫ばれている。 <表 1-1> 高齢化社会への速度の推移 到達年度 増加にかかった年数 区分 7% 14% 20% 7%→14% 14%→20% 日本 1970 1994 2006 24 12 フランス 1864 1979 2018 115 39 ドイツ 1932 1972 2009 40 37 イタリア 1927 1988 2006 61 18 アメリカ 1942 2015 2036 73 21 韓国 2000 2018 2026 18 8 資料: 統計庁、将来の人口に関する推計の結果、2006.11 노령화지수 0. 0 50. 0 100. 0 150. 0 200. 0 250. 0 300. 0 350. 0 400. 0 450. 0 19 60 19 64 19 68 19 72 19 76 19 80 19 84 19 88 19 92 19 96 20 00 20 04 20 08 20 12 20 16 20 20 20 24 20 28 20 32 20 36 20 40 20 44 20 48 1960: 6. 9 2050: 429. 3 老齢化指数
2. 高齢化の要因 1)出生率低下の加速 韓国の出生率は、1960 年代の平均 6.0 人から 1970 年 4.53 人、1980 年 2.83 人と減少を 続け、1983 年には 2.08 人を記録して、人口代替率の水準以下まで低下した。その後の出生 率は一度も2.0 人台を回復することなく、低下が続いている。特に 2002 年の出生率は 1.17 人で、世界の最低水準にまで落ち込み、社会的な問題として大きく取り上げられ始めた。 2005 年の出生率は 1.08 人で、世界の最低水準が続いている。現在、韓国政府は 2020 年の 出生率の目標を OECD 加盟国平均の 1.6 人と定め、少子化対策を進めている。2005 年 9 月1 日から少子・高齢社会基本法が施行され、2006 年 7 月には第一次少子・高齢社会基本 計画である「セロマジ(新しく出迎えるという意味)プラン2010」が発表された。こうし た計画により、2006 年から 2010 年までの 5 年間に、総額 32 兆 746 億ウォンが投入され る見通しである。 <図 1-5> 出生率の推移(1970∼2005 年) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 4.53 1.08 2.08
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
韓国で続いている少子化は、経済・社会・文化的な特性をすべて反映したものである。 少子化を誘発する要因は、所得、育児、価値観、社会・仕事という4 つに大きく分類するこ とができる。 (1)所得による要因:将来に対する経済的不安の増加 韓国は1997 年の通貨危機以来、人員削減が常態化し、終身雇用の概念が崩れ、また、非 正規労働者の雇用の割合の上昇などにより、雇用の不安定性が高まった。雇用不安は、景 気が回復の兆しを見せている最近でも続いている。若年層の失業や中高年の早期退職が増 単位: 人
加したため、将来の所得に対する不安感も高まっている。こうした労働市場の不安定性や 高学歴化、仕事にめどがつくまでは出産を控えようと考える女性の増加などにより、女性 の第一子出産の平均年齢は2005 年現在で 29.1 歳に上昇した。
<図 1-6> 男女の平均初婚年齢の推移
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
(2)育児による要因:教育費の増加やメリットの減少 都市労働者世帯の月平均の消費支出の中で教育費が占める割合は、1993 年の 8.7%から 2003 年には 11.4%と、2.7%pが増加した。子供の教育費に対する負担が増加を続けてお り、特に、補習(塾や家庭教師)や習い事などの教育費が大きな負担となっている。2004 年 に64.6%を記録し、最も大きな負担となっているという結果が出たが、2000 年の 56.0%に 比べると8.6%p上昇している。2004 年の調査2によると、子供の教育費が負担だと答えた 世帯は全体の77.2%で、この項目に対する調査が始まった 1996 年から増加が続いている。 教育費の中では、補習(塾や家庭教師)が 2004 年に 64.6%を記録し、最も大きな負担要因に なっている。これは、2000 年の 56.0%より 8.6%p も増加した数値である。GDP に占める 教育費の割合は、2002 年が 7.1%で、OECD の全加盟国の中で 3 位だが、私的な教育費の 割合は2.9%で 1 位となっており、私教育費の負担が大きいことがわかる。一方で老後は子 供の世話にならないで、自分で生計を立てようとする人が増え、子どもに老後の面倒を見 てもらおうという期待も減少している。また、子どもによる老後保障の形も物質的な支援 よりも精神的なつながりといった情緒的な支援に変わりつつある。 (3)価値観による要因:個人のライフスタイルを重視 個人の自己実現と暮らしの質を重視する傾向が広がっていることにより、育児への魅力 2 統計庁、「2004年の社会統計調査の結果」 単位: 歳
が減少し、また、家をつぐために男児を出産しなければならないという考え方も変わりつ つある。出生率に高い影響を与える20 代の未婚率が大きく増加する傾向にあり、初婚年齢 は男女ともに上昇し続けている。これは、教育を受ける期間が長くなり、結婚よりも仕事 に優先順位を置く人の割合も増えているからである。また、自由な個人生活を重視し、自 我を実現しようとする独身男女の割合が増え続けている。 <表 1-2> 模擬平均出産年齢 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 平均出産年齢 28.0 28.1 28.3 28.5 28.7 29.0 29.3 29.5 29.8 30.1 30.2 第一子出産年齢 26.5 26.7 26.9 27.2 27.4 27.7 28.0 28.3 28.6 28.9 29.1 平均初婚年齢(女 性) 25.4 25.5 25.7 26.1 26.3 26.5 26.8 27.0 27.3 27.5 27.7 資料: 統計庁、2005年の出生・死亡統計の結果、2006. 8. (4)社会・仕事による要因:女性の経済的地位の向上と不十分な社会的環境 男女間の賃金格差の縮小などに見られるように、性別による格差が小さくなり、女性の 権利が高まるとともに、女性の経済活動への参加が増えている。しかし実際には、仕事と 育児・家事の両立は依然として難しい状況にあり、既婚の働く女性は、仕事か家に入るか のどちらかを選ばなければならないのが現状である。また、これは働く未婚女性の結婚年 齢の上昇の原因にもつながっている。現在ではまだ、育児のほとんどを両親が直接行なう 場合が多く、保育施設を利用している割合は低い。20 代の母親の約 70∼80%が自分で育児 を行なっているが、これは仕事を続けるためには出産をあきらめなければならないという ことを間接的に示唆している。 2)平均寿命の延び 栄養状態が改善されたことで、乳児死亡率が減少し、基礎体力も向上、さらに医学の発 展と健康に対する関心の高まりにより、平均寿命が延び続けている。平均寿命は 1971 年 62.3 歳だったが、2005 年には 78.6 歳になり、2050 年には 86.0 歳まで延びると思われる。 男性の平均寿命は、前述と同じ期間でそれぞれ、59.0 歳 → 75.1 歳 → 82.9 歳、女性は 66.1 歳 → 81.9 歳 → 88.9 歳まで延びると考えられる。
<図 1-7> 期待寿命の推移と展望
資料: 統計庁、Korean Statistical Information System(KOSIS) database
3)韓国のベビーブーム世代の特徴 韓国のベビーブーム世代は、朝鮮戦争が休戦状態に入った直後の1955 年から 1963 年の 間に生まれた人たちを指し、816 万人にのぼる。ベビーブーム世代の 1955∼1965 年生まれ が本格的に老人世代となる2020 年から急激な高齢社会になると予想される。統計庁の 2000 年の人口総調査によると、1955 年生まれは 73 万 8000 人で、1954 年生まれよりも 11 万人 多い。そのため、なだらかなカーブを描いていた人口増加は、1955 年以降、絶壁に上るか のように一気に上昇し始めている。1958 年の戌年生まれからは一年に 81∼87 万人のペー スで新生児が誕生し、文字通り人口ブームが到来した。人口増加は1963 年生まれ(86 万 8000 人)をピークに少しずつ鈍化し始めるが、一年に 80 万人以上が誕生するという第二、第三の ベビーブーム現象は続いた。 韓国のベビーブーマーは全人口の16.8%を占めている3。したがって韓国のベビーブーマ ーは他の国と比べるとそれほど多いというわけではない。しかし、韓国のベビーブームは 独特な構造をしている。まず、1963 年に第一次ブームが終わるが、10 年余りの空白期間を おきながら、第三次ブームまでブームが続いたという点である。戦後の第一次ベビーブー ムのときと似た数の新生児が1968 年に誕生したが、このときから始まった第二次ベビーブ ームは1974 年まで続き、この時期に生まれた子どもは 586 万 9000 人であった。1979 年 から1982 年には第一次ベビーブーム世代が産んだ子供たちが再び人口の山を形成し、第三 次ベビーブームが起きた。そのおかげもあり、韓国の若年・中年層の人口構造は長く、厚 みがある。 3 1946年から1964年生まれの米国のベビーブーマーは7820万人と、米国の全人口の27%を占める。 単位: 歳
<図 1-8> 人口ピラミッド 資料: ピョン・ジェグァン、高齢社会に備えた国家戦略、2005.11 ベビーブーム世代が本格的に老人世代となり、超少子化4世代(2001 年以降の出生者)が 子どもを産む年齢となる2020 年以降は、高齢化がさらに加速するものと予測される。総人 口も2018 年の 4934 万人をピークに減少する。 <図 1-9> 人口ピラミッドの推移(1970∼2050 年) 資料: ピョン・ジェグァン、高齢社会に備えた国家戦略、2005.11 4 超少子化は、出生率1.3人以下を意味する。 単位: 歳
3. 高齢化問題の焦点 1)人口と生産年齢人口の減少 少子化の持続と高齢化の急速な進行により、2019 年から人口が減少し始める一方、65 歳 以上の高齢者の割合は大きく増える見通しである。予想される最大人口数は2018 年に 4934 万人であり、2016 年から高齢人口の割合が幼年人口の割合を追い越す。平均寿命は延び続 け、2050 年には男女共に 5 歳以上延びるものと予測されている。 生産年齢人口は2016 年の 3619 万人をピークに 2017 年から減少するものと推定される。 また、生産年齢人口の高齢化も加速化すると予想される。生産年齢人口のうち25∼49 歳の 割合は 2005 年の 59.6%をピークに減少を続け、2050 年には 44.4%に低下する一方、50 歳以上の生産年齢人口は増加を続け、2005 年の 20.5%から 2050 年には 40.9%へと急増す るものと見られる。IMF(国際通貨基金)の調査によると、「現在の出生率を前提とすると、 韓国が現水準の労働供給を2050 年にも維持するためには、人口の 35%を移民者で補う必要 がある5」と分析した。 <図1-10> 現水準の労働供給の維持に必要な2050年の移民人口の比率
資料:IMF, World Economic Outlook, 2004.9
2005 年から 2050 年に各国の平均年齢がどれほど上昇するかを見ると、韓国の高齢化の 速度を予測することができる。高齢化が最も進んでいる日本が9.4 歳増加している一方、韓 国はその2 倍の 18.8 歳増加している。中国も韓国と同様、高齢化が急ピッチに進んでいる が、45 年で 12.2 歳増加する。アメリカとイギリスは相対的に高齢化が徐々に進んでいる。 2050 年の韓国の平均年齢は、53.9 歳になる見通しである。 5 前掲書 単位: 歳
<表 1-3> 世界各国の平均年齢の比較(2005∼2050:歳) 2005(A) 2050(B) B-A 中国 32.6 44.8 12.2 日本 42.9 52.3 9.4 韓国 35.1 53.9 18.8 イギリス 39.0 42.9 3.9 アメリカ 36.1 41.1 5.0
資料: UN Population Division, World Population Prospects: The 2004 Revision Population Database
2)消費と投資の萎縮 平均寿命が延びたことにより、一個人が消費を行うべき期間が延び、消費増加率は年平 均で2%p減少すると推定される。また、期待余命が 1 年延びるたびに、貯蓄率は 0.8%増 加するが、幼年・老齢人口の貯蓄率は生産年齢人口の貯蓄率に比べると非常に低いため、 生産年齢人口の割合の低下により、総貯蓄率は減少すると考えられる。さらに、政府の財 政赤字の拡大で、実質純貯蓄率が大幅に減少し、国民の実質純貯蓄率も低下するとみられ る。一方で、年金負担や賃金上昇などの企業の負担増で、R&D や新規投資が縮小される可 能性が高く、資本増加率を含めた総貯蓄率の減少により、投資が手控えられるものと予測 される。 人口の高齢化は中年層以上の消費減少と貯蓄増加を誘発することが明らかになった6。 1990 年代以降から最近まで続いてきた人口の高齢化は、貯蓄の増加と消費の減少を誘発し ている。これは、経済の主体が人口の高齢化現象に直面し、あらゆる年齢において、特に 老年時期に生存する可能性が高まることを認識した年齢層は、これに備え、予備の貯蓄を 増やそうとする一方、消費はそれほど増加させようとしないために、最終的には消費を減 少させることにつながるためである。 反面、少子高齢化の急速な進展は、商品市場の再編にも影響を与えると予想される。少 子化と期待寿命の延長によって消費者の消費パターンが変化し、子供に代わるペット、安 価な医薬品、老後に備えた健康ビジネス、財テク金融商品関連の市場は持続的な成長が見 込まれる。 3)成長率の低下 少子化が続く場合、現在5%台の GDP 潜在成長率は、2020 年には 3%、2030 年には 2% 台にまで低下するものと予想される。人口の高齢化が、急速な成長鈍化の主因になること がわかる。生産年齢人口の減少は労働投入要素の減少に直結するため、成長を鈍化させる 6 カン・ヒドン、ソ・インファン『国民年金と人口の高齢化が民間消費・貯蓄に与える影響』Monthly Bulletin, December 2005, 韓国銀行、 pp23-61
可能性がある。また、被扶養人口の割合の上昇は貯蓄率の低下をもたらし、資本蓄積を阻 害するため、成長に直接的・間接的な影響を与える恐れがある。 4)社会の対立 韓国政府は2008 年 7 月から老人介護保険を実施する予定である。老人介護保険の申請対 象となるのは、65 歳以上の老人や、老人性の疾病である認知症や身体的な麻痺をもつ 65 歳未満の患者である。これは、寝たきり老人の世帯に、専門のヘルパーが訪問し、食事や 入浴などの家事の支援、看護サービスなどの提供を行なったり、老人介護施設に入所させ、 専門のサービスを提供するもので、国民が負担する保険料を主な財源として運営する社会 保険制度である。このように高齢化は直接的に若い世代の年金負担を増加させ、健康保険 の財政赤字を拡大させるため、結果的には国家財政の悪化を招く可能性が高い。 したがって、老齢世代に対する若い世代の負担増は世代間の葛藤の激化をもたらし、社 会全体に副作用をもたらすと予見される。カーネギー財団の研究員であるデイビッド・ロ スコフは、将来、世界では「世代間の衝突」が対立構図の一番の中心になると予測し、ま た、財政危機回避のために定年の延長と健康保険制度の健全化が早急に求められていると 警告している7。今日の先進国の出生率は、現在の人口維持を可能にする「人口代替率 (replacement rate)」である 2.1 人を大きく下回っている。開発途上国でさえも、これま で6.0 人以上だったのが、現在では 3.0 人未満に低下しており、その減少のスピードはます ます速くなってきている。一方で、世界の平均寿命は1950 年の 47 歳から 2000 年には 65 歳に、2050 年には 74 歳に延びると予測され、老年層の人口比率が今後 45 年のうちに二倍 以上に増え、年金や医療費などの財政負担を増加させるであろう。こうした深刻な状況を 打開するためには、人口減少を相殺してしまうほどの生産性の向上を図り、それがうまく いかない場合は、労働人口の増加のための定年延長、女性の社会進出の拡大、外国人労働 者の雇用拡大といった方策の導入が急がれる。 5)企業に生産性の下落 今後の中長期的な人口展望によると、韓国の生産年齢人口は2016 年から、総人口は 2020 年から減少し始めるとされている。労働総量の減少と労働者の高齢化の進展は、企業の生 産性の下落を招く可能性が高い。また、高齢化社会に備え、社会保障制度が拡充されるこ とから、企業の負担がさらに加重すると予想される。 企業が活用可能な年齢が主に25 歳∼54 歳であることを踏まえると、高齢化の波は予想よ り早く企業に押し寄せると予想される。25∼54 歳の人口が 2009 年をピークに減少すると 仮定した際、企業は韓国が高齢社会に入る2018 年より 9 年も早く労働力の高齢化を実感す
ることになると予想される。 一般的に、技術の適応力と健康、そして業務に投入する努力は、年齢によって格差があ る。もちろん年齢がある程度上昇するまでは、熟練度と年齢が肯定的な相関関係を見せる が、一般的には、年齢が高いほどIT をはじめとする新技術の活用度が低く、病欠による作 業損失日も増えるとされている。このため、企業は近い将来、労働者の高齢化と関連して 労働者の多様なニーズと更なる福祉費用の負担を抱えることになると予想される。 もちろん労働者の高齢化が必ずしも大幅な生産性の下落をもたらすとは断言できない。 高齢化が生産性に与える最終効果は、資本生産性や技術発展など他の要素によって、かな り緩和されるためである。しかし、だからと言って企業が労働者の高齢化を心配しなくて も良いわけではない。企業はコストの増加を含む労働力管理の全般的な変化に事前に備え る一方で、より効率的な資本の活用と技術の採用に向けた取り組みを倍増させる必要があ る。 6)金融資産需要の増加 高齢化に伴う金融市場の影響の面で韓国は他の国々とは異なる様相を呈すると予想され る。一般的に高齢化が進展すると所得は減少するが、消費は一定の水準を維持して保有資 産が減少することになる。しかし、韓国の場合、住宅価格が相対的に高いため、高齢者層 になると住宅に代表される実物資産の割合が金融資産に比べて大きく高まる傾向がある。 そのため、住宅を購入した高齢者の場合、金融資産の保有が次第に増加すると予想される。 もちろん安定的な金融商品を望む高齢者層の需要により、株式より債券運用が増えると見 られ、特に満期が長いほどリスクが高まるため、リスクが少ない国公債の運用割合が高ま るものと予想される。 また、リスク回避の傾向が強く、安定性を最優先に考える高齢者層は、金融資産の管理 を専門家に委託すると予想される。リスク回避の傾向が強く、将来より現在を重視する高 齢者層は安定性、収益性、流動性の順で金融商品を選択するため、長期金融商品、債券型 商品や間接投資商品を選ぶことになるだろう。最近、銀行のPB やオーダーメード型信託、 証券会社のラップ口座、保険会社の変額保険などが相次いで導入され、資産管理市場が拡 大している。また、規模の拡大が続いている国民年金と、2005 年 12 月から導入された退 職年金からの膨大な資産運用需要により、金融市場に対して持つ彼らこれらの役割は増大 すると見られる。 7)社会保障制度の拡充と財政負担の増加 韓国の国民年金制度は、給与の所得代替率が保障される確定給付型(Defined Benefit)の年 金である。現在は、部分積み立て方式(partially funded system)で運営されているが、今後 の高齢化の進展に伴い基金の枯渇と賦課方式(pay as you go system)への移行が必至であ
る。現制度は、人口の高齢化と制度の成熟に伴って、次世代の老人扶養負担を急速に増加 させるだけでなく、確定給付型の特性から年金の給付額が個人の保険料負担とかい離し、 実質的な老後の生計を補助する役割を担うことになるため、貯蓄率の低下も加速させる可 能性がある。したがって急速な高齢化の中で、生産的な資本蓄積の大幅な減少を防ぐため には、国民年金制度の確定給付型を維持していく方策が必要であり、政策的な見直しが求 められる。 現制度の下では、高齢化による老人人口の増加に伴って国民年金の支出も増加し、財政 負担は時間が経つほど高まっていく。こうした変化は、完全老齢年金給与の支給が始まり、 国民年金の支出が本格化する2008 年から加速し、2020 年代からは総扶養費そのものが急 速に上昇し始めると予想される。 現行の制度では国民年金の積み立て基金は2005 年の 156 兆ウォンから増加し続けるもの の、2035 年には 1715 兆ウォンとピークに達し、2036 年に当年度の収支赤字が生じた後、 基金の減少が急速に進み、2047 年に基金は完全に枯渇すると推定されている。 <図 1-11> 国民年金の収支差と積立金の推移 (単位: 兆ウォン) -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 2000 20 02 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 36 20 40 20 45 20 47 20 50 20 60 20 70 적립기금 수지차 資料: キム・ヨンハ(2004)、p.233、表1 4. 本書の構成 本書は、高齢化が韓国社会に与える影響とその波及効果について模索する。第 2 章では 高齢化による人口構造の変化、労働人口の変化、消費と貯蓄、潜在成長率と新たな市場の 出現などを通じてマクロ経済全般に与える効果を分析する。第 3 章では高齢化に伴う金融 資産の変化、実物資産の変化と金融サービス市場の拡大など金融市場への影響を分析し、 第 4 章では高齢化に対応した産業と企業の人的資源管理など企業経営全般への影響を考察 する。第 5 章では国民年金と健康保険など社会保障制度に高齢化が与える影響をまとめ、 積立金 収支差