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M&A研究会報告2009

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Academic year: 2021

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(業種別の特徴) 非製造業を業種別にみると、サービス業、卸売業、小売業などは理論価格と市場価格 の乖離が小さく、ほぼパラレルに動いている様子がみられる。こうした業種は、設備投資 の増減による将来キャッシュフローのぶれも少なく、売上げの変動性も比較的小さいとい った要因が両者の乖離幅を小さくしている可能性が指摘できる。 一方、建設・鉱業、電気・ガス業、陸運業などは理論価格が市場価格を大きく上回って いる。中でも、電気・ガス業の乖離幅は大きく、時系列による方向も市場価格とは逆にな っている。原因としては、推計期間における資源エネルギー価格高などの影響により、利 益水準が長期的に期待される水準より高すぎたことなどが考えられる。電気ガス業は、 公益事業であることもあり、資本コストが他の業種と比べて格段に低いため、今回のDCF の手法による理論値においては、利益見通しの変動により特にぶれやすいという特徴を 持つ。 上述のように、04年と05年で非常に大きな乖離を示しており、この点が非製造業全体 でみて乖離幅が拡大する一因となっている。これら業種の乖離の大きさがどのような要 因で生じているのか更なる今後の課題としたい。 図表5-8 業種別にみた時系列比較(非製造業) サービス業 1,717 1,942 2,295 2,219 1,890 1,756 2,081 2,186 2,270 2,356 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 卸売業 1,501 1,804 2,388 2,529 2,064 1,549 1,842 2,095 2,640 3,013 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円)

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海運業・空運業 2,300 2,747 3,188 5,671 4,493 4,105 5,677 4,421 4,755 6,430 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 建設業・鉱業 1,818 2,108 2,483 2,496 1,508 3,643 3,384 3,895 4,006 3,705 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 小売業 3,971 4,207 6,138 5,918 3,985 4,627 4,866 5,382 6,432 5,751 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 情報・通信業 3,421 3,416 4,381 5,096 3,785 3,619 3,402 3,321 4,288 4,548 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 水産・農林業 172 221 274 303 230 293 352 244 312 224 0 50 100 150 200 250 300 350 400 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 倉庫・運輸関連業 324 396 569 624 417 490 505 616 688 659 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円)

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電気・ガス業 7,118 8,156 9,507 10,233 8,551 31,835 27,200 27,703 22,812 12,463 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 不動産業 669 852 1,542 1,711 685 1,275 1,582 1,764 1,889 1,797 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) 陸運業 9,381 8,953 12,090 12,632 10,958 18,132 18,628 18,902 19,589 20,359 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 2004 2005 2006 2007 2008 株式時価総額(10億円) DCF株式価値(10億円) (3) 感応度分析 (感応度分析の目的) 先にみたように、本調査で使用する簡易DCF法は、リスクプレミアムや負債コストを一 定とするなど、単純化した前提を置いて算出を行っている。このため、対象企業の個々の リスク特性等について適切に反映されていない可能性がある。 例えば、企業は財務レバレッジを高めることによってROE(株主資本利益率)を引き上げ ることが可能であるが、それは好況期のような場合においてであり、逆に不況期になれば 業績は急激に悪化するというリスクを内包している。このため、本来であれば個々の企業 の財務レバレッジにあわせてリスクプレミアムを調整する必要がある。さらに、DCF法で使 用するファクターはあくまで期待値であるため、当然ながら各ファクターが期待値の周りで

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対象企業すべてにモンテカルロDCF法を適用するのはシステム的な負荷も大きいこと から、本章では、各ファクターを一律に変動させた場合にDCF値がどれだけ変化するかに ついて検証する「感応度分析」を試みた。 (分析結果) 本章では、各ファクターに以下の仮定を置き、それぞれDCF値がどのような数値になる か検証を行った。 (イ) 予想営業利益 ・ ±10% ・ ±20% (ロ) リスクプレミアム ・ ±0.5% ・ ±2.5% (ハ) 負債コスト ・ ±0.5% 結果は図表5-9に示してあるが、予想営業利益を10%低下させた場合に時価総額に 近い値になることがわかる。これに対し、予想営業利益が20%変動した場合、理論価格 は約50%変動し、20%の低下では理論価格が時価総額を大きく下回る結果となった。実 際に04-08年の5年間で対象企業の営業利益が平均値からどれだけ乖離しているかをみ ると、20-25%が最も多くみられ(図表5-10)、キャッシュフローについては変動性を見込ん でおく必要があることが示されている。 次に、リスクプレミアムを0.5%、2.5%上下に変動させた場合の結果をみると、0.5%で はそれほど大きな変化ないが、2.5%低下させた場合に理論価格は約50%増加すること が示された(図表5-11)。時価総額が理論価格と一致していると仮定した場合のリスクプレ ミアムの値を逆算すると、5-7%のレンジが最も多く、今回使用した5%はそれなりの妥当 性を持っていることがわかる。もっとも、9-11%のレンジも高い頻度でみられることから、 08年夏のような金融市場の混乱時ではリスクプレミアムが平常時より上昇している可能 性があることには留意が必要であろう。

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図表5-9 感応度分析の結果 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 200,000 予想営業利益±10% 予想営業利益±50% リスクプレミアム±50bp リスクプレミアム±250bp 負債コスト±50bp 元DCF値 時価総額 製造業_08年 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 予想営業利益±10% 予想営業利益±50% リスクプレミアム±50bp リスクプレミアム±250bp 負債コスト±50bp 元DCF値 時価総額 非製造業_08年 図表5-10 04-08年の各企業の営業利益に関する平均からの乖離 平均値と最大値の乖離率(製造業) 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 16.0% 5%未 満 5%-10% 10%-15% 15%-20% 20%-25% 25%-30% 30%-35% 35%-40% 40%-45% 45%-50% 50%-55% 55%-60% 60%-65% 65%-70% 70%以 上 平均値と最小値の乖離率(製造業) 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% -5%以 上 -10%< -5% -15%<-10% -20%<-15% -25%<-20% -30%<-25% -35%<-30% -40%<-35% -45%<-40% -50%<-45% -55%<-50% -60%<-55% -65%<-60% -70%<-65% -70%以 下 図表5-11 時価総額=DCF値と仮定した場合のリスクプレミアムの逆算値 2008年(製造業) 5% 10% 15% 20% 25% 2004年(製造業) 5% 10% 15% 20% 25%

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(参考図) 参考図 1 DCF株式価値と時価総額の散布図(全サンプル) 2008年 R2 = 0.9001 1 10 100 1,000 10,000 1 10 100 1,000 10,000 株式時価総額 D C F 株 式価値 2007年 R2 = 0.85 1 10 100 1,000 10,000 1 10 100 1,000 10,000 株式時価総額 D C F 株式価値 2006年 R2 = 0.7415 1 10 100 1,000 10,000 1 10 100 1,000 10,000 株式時価総額 DCF 株 式 価 値 2005年 R2 = 0.7414 1 10 100 1,000 10,000 1 10 100 1,000 10,000 株式時価総額 DC F 株 式 価 値 2004年 R2 = 0.7109 1 10 100 1,000 10,000 1 10 100 1,000 10,000 株式時価総額 D C F 株式価 値

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参考図 2 外れ値検定の結果 製造業(2008年) 修正前 実際の価格/理論価格の分布図(β=業種) (平均、標準偏差が中央値、四分位範囲と一致する正規分布との比較) 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0. 1未満 0. 1-0. 3未満 0.3-0. 5 0. 5-0. 7 0. 7-0. 9 0. 9-1. 1 1. 1-1. 3 1. 3-1. 5 1. 5-1. 7 1. 7-1. 9 1. 9-2. 1 2. 1-2. 3 2. 3-2. 5 2. 5以上 実際の価格/理論価格(修正前) 正規分布 修正後 実際の価格/理論価格の分布図(β=業種)(補正後データ) (平均、標準偏差が一致する正規分布との比較) 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0. 1 未 満 0 .1-0. 3 未 満 0 .3-0. 5 0 .5-0. 7 0 .7-0. 9 0 .9-1. 1 1 .1-1. 3 1 .3-1. 5 1 .5-1. 7 1 .7-1. 9 1 .9-2. 1 2 .1-2. 3 2 .3-2. 5 2. 5 以 上 実際の価格/理論価格(修正前) 正規分布 非製造業(2008年) 修正前 実際の価格/理論価格の分布図(β=業種) (平均、標準偏差が中央値、四分位範囲と一致する正規分布との比較) 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0. 1未 満 0 .1-0. 3未 満 0 .3-0. 5 0 .5-0. 7 0 .7-0. 9 0 .9-1. 1 1 .1-1. 3 1 .3-1. 5 1 .5-1. 7 1 .7-1. 9 1 .9-2. 1 2 .1-2. 3 2 .3-2. 5 2. 5以 上 実際の価格/理論価格(修正前) 正規分布 修正後 実際の価格/理論価格の分布図(β=業種)(補正後データ) (平均、標準偏差が一致する正規分布との比較) 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0. 1 未 満 0. 1-0 .3 未 満 0. 3-0. 5 0. 5-0. 7 0. 7-0. 9 0. 9-1. 1 1. 1-1. 3 1. 3-1. 5 1. 5-1. 7 1. 7-1. 9 1. 9-2. 1 2. 1-2. 3 2. 3-2. 5 2. 5 以 上 実際の価格/理論価格(修正前) 正規分布

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3.分析から得られた示唆と課題等 (1) 主な示唆 以上の分析結果を整理すると、以下のようなことが言えよう。 z 総じてDCF株式価値の時価総額の説明力は高く、DCF株式価値の算定に用いた各要素 の変動は、実際の株価の変動を理屈どおりにもたらすものであることをある程度裏付け ることに成功していると評価できる。 z また、DCF株式価値の時価総額への説明力が、推計期間中ほぼ一貫して改善しており、 市場の透明性・効率性が改善していることを示す可能性がある。この間、わが国におけ るM&A件数も増大しているが、このことが市場の機能の強化に繋がっているという考え 方と整合性のある結果である。 z 但し、全般に、時価総額<DCF株式価値という傾向がみられる。また、時価総額とDCF 株式価値の乖離は、マーケット上昇局面で縮小、下落局面で拡大という傾向がみられ た。 z 感応度分析の結果からは、このようなバイアスの原因としては、推計期間の株式リスク プレミアムが過去35年間の平均より高かったか、利益見通しに下方バイアスがあった可 能性があることが示唆されている。 z 例えば、非製造業におけるばらつきの大きな原因は、時価総額におけるシェアの大きい 「電気ガス業」におけるDCF推計値の過大評価であり、おそらく推計期間における資源エ ネルギー価格高などの影響を受けた電気ガス業における利益水準が長期的に期待さ れる水準より高すぎたことが原因と考えられる。電気ガス業は、また公益事業であること もあり、資本コストが他の業種と比べて格段に低いため、今回のDCFの手法による理論 値においては、利益見通しの変動により特にぶれやすいという特徴を持つ。 z また、乖離率は縮小傾向にあったものの、2008年度は急拡大したが、リスクプレミアム は、マーケットの局面に応じて変動していると考えられることから、固定的なリスクプレミ アムを用いることの限界を示している可能性がある。 z 株式時価総額に比べてDCF株式価値の変動性は小さい。株式時価総額の動きには需 給関係など個々の企業価値以外の変動要素が含まれると考えられる。市場の需給は 株価をいわゆるファンダメンタルズの変動以上に振幅させるものである一方、DCF株式 価値は、ファンダメンタルズそのものを反映するものであり、企業固有の要素がより強く 反映されていると受け取れる。 以上の分析から、株価の理論値が実際の株価を予測する能力を相当程度有しており、こ のような理論値の統計が株式市場の動向を評価する上で重要な統計となりうることを示して いると評価できよう。わが国の株式市場において個人投資家が果たす役割が大きくなってき ているところ、情報の集約化を効率的に行なっている本統計は、個人投資家の投資行動を サポートし、経済効率性の観点からも一定の役割を果たすことが期待できる。また、株式市

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場への介入、もしくは個別企業への公的資金投入などが検討されているところ、経済財政・ 金融政策に対しても重要な役割を果たせると考えられる。 (2) 今後の課題 昨年度の分析で今後の課題として取り上げた項目(ばらつき、業種の拡大、時系列の整 備)のうち、時系列、業種別の分析については進んだところ、ばらつき(時価総額とDCF株式価 値の乖離)の原因分析については、今回は感応度分析に留まっており、引き続き課題であ る。 特に、推計の前提としたリスクプレミアム、ベータ値、フリーキャッシュフローの設定方法が ばらつきやバイアスの原因となっている可能性が高く、前提とするのではなく、研究テーマと して取り上げ、分析を進めることが重要である。 また今回の研究の範囲を超えているが、マクロの統計としての整備の可能性についても 検討する価値がある。今回の推計でカバーした株式時価総額と、東証上場株式時価総額を 比較したのが、以下の表である。これをみると、すでに約3割をカバーしている上に、その比 率はかなり安定している。東証上場株式時価総額と国民経済計算における国民総資産の株 式を年末値で比較すると、時価総額は7割から8割をカバーしていることが分かる。すなわち、 今回の推計によるカバレッジは、少なく見積もっても2割程度あり、かつその関係は、ある程 度安定しているのである。今回の推計はわが国の株式の時価総額の変動をかなりの精度で 要因分解することが可能であることを示していると思われる(図表5-12)。 図表5-12 マクロの株価総額指標との比較(単位:10億円、%) 2004 2005 2006 2007 2008 M&A研究会DCF理論値 163,828.6 174,438.6 178,301.2 194,744.5 180,786.9 M&A研究会推計対象企業の実績値 (6-8月月中平均) 101,875.2 112,141.3 147,448.3 167,903.1 125,722.9 上場企業時価総額(6-8月末平均) 360,439.6 384,897.9 518,147.3 556,963.0 428,826.3 上場企業時価総額(年末) 364,554.9 539,739.5 549,789.4 483,828.9 283,460.2 国民経済計算(年末) 467,188.8 724,659.5 724,833.6 559,008.9 実績値の上場企業時価総額に対す るカバレッジ 28.3% 29.1% 28.5% 30.1% 29.3% 上場企業時価総額の国民経済計算 に対するカバレッジ 78.0% 74.5% 75.9% 86.6%

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