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第 Ⅱ 章(1)水産業・漁村の復興状況
(水産関係施設等の復旧・復興の概況) 復興施策の工程表によると、拠点漁港の整備、漁場環境調査の実施及び漁場施設の整備等、 多くの復旧・復興施策について平成25(2013)年度末を目途として実施することとなってい ます。インフラの整備に関しては人的資源や建設資材の不足等の問題が発生していますが、 現地ではこれらの諸問題を克服しつつ、水産関係施設等の着実な復旧に努めています(図Ⅱ −7−1)。第7節 東日本大震災からの復興に向けた動き
図Ⅱ−7−1 水産業復旧の進捗状況(平成26(2014)年3月11日現在) 岩手・宮城・福島各県 の主要な魚市場の水揚 げの被災前年比(22 年3月∼23年2月合 計) (319漁港が被災) 陸揚げ岸壁の機能回復 状況 (約2.9万隻が被災) 復 旧 目 標(27年 度 末 までに2万隻)に対す る状況 岩手県・宮城県の主要 な養殖品目の共販数量 (25年漁期)の被災前 年比(22年漁期) (約113kmの岸壁が被災) 被災岸壁の復旧状況 [岩手県] 久慈、宮古、釜石、大船渡 [宮城県] 気仙沼、女川、石巻、塩釜 [福島県] 小名浜(県外で漁獲) ○拠点となる漁港については、 25年度末までに復旧するこ とを目途。 一部の被害の甚大な漁港やそ の他の漁港については、27 年度末までに復旧を見込む。 ○北海道、青森県、千葉県で被 災した岸壁は、復旧完了済み。 ○平成26年3月末までに全延 長の陸揚げ機能が回復した 172 漁 港 の う ち、岩 手 県、 宮城県、福島県の内訳は次の とおり。 岩手県:62%(67漁港) 宮城県:30%(42漁港) 福島県:50%( 5 漁港) 24年度中に、水産基本計画の 目標(25年度末までに1万2 千隻)は達成。 更に被災地の要望を踏まえ27 年度末までに2万隻まで回復を 目指す。 ※ カキ養殖については、養殖 施設は8割程度復旧している が、種付けから出荷までに2 ∼3年を要するため、24年 漁期の生産は低位にとどまっ ている。 全ての養殖業再開希望者の養殖 施設の整備がほぼ完了。 1 水揚げ 2 漁港 項目 被害状況 0 20 40進捗状況 60 80 100% 備 考 3 漁船 被災3県で被害があっ た産地市場(34施設) 被災3県で再開を希望 する水産加工施設 (819施設) 岩手県及び宮城県の産地市場 は、22施設すべてが再開。 27年度末までに再開希望者全 員の施設を復旧・復興すること を目途。 4 養殖 項目 被害状況 0 20 40進捗状況 60 80 100% 備 考 5 加工流 通施設 がれきにより漁業活動 に支障のある定置漁場 1,004か所 (再流入箇所含む) がれきにより漁業活動 がれきの残る一部の漁場につい て、26年度も引き続き支援を 実施。 6 がれき 70% H25.2∼26.1 (325千トン) 81% H25.2∼26.1 (648億円) 62% H24.3∼25.2 (288千t) 38% H23.3∼24.2 (178千t) 77% (15,308隻) ※25年3月末時点 46% (9,195隻) ※24年3月末時点 70% H24.3∼25.2 (559億円) 46% H23.3∼24.2 (368億円) 岩手 70% (97.6千トン) 宮城 72% (223.3千トン) 福島 34% (3.7千トン) 岩手 85% (164.5億円) 宮城 81% (478.9億円) 福島 29% (5.1億円) 岩手 8,475隻 宮城 6,244隻 福島 285隻 岩手 7,768隻 宮城 5,358隻 福島 256隻 岩手 4,217隻 宮城 3,186隻 福島 192隻 28% 53% 80% 30%(96漁港) (全延長の陸揚げ機能回復) (部分的に陸揚げ機能回復)42%(134漁港) (潮位によっては陸揚げ可能)25%(81漁港) 36%(115漁港) 47%(149漁港) (48漁港)15% 54%(172漁港) 37%(117漁港)(23漁港)7% 平成24年3月末現在 平成26年3月末現在 平成25年3月末 実績 平成26年3月末現在 平成27年3月末見込み 平成25年3月末現在 85% (16,945隻が復旧) ※26年1月末時点 65% (22施設が業務再開) ※23年12月末 岩手: 100%(13施設) 宮城: 100%(9施設) 福島: 8%(1施設) 岩手:84%(166施設) 宮城:78%(367施設) 福島:74%(112施設) 68% (23施設が業務再開) ※25年12月末 55% (418施設が業務再開) ※24年3月末 79% (645施設が業務再開) ※25年12月末 76% (14,212トン) 24年漁期 2% (325トン) 23年漁期 岩手県ワカメ養殖(22年漁期(2∼4月)18,981トン) 〈水揚量〉 〈水揚金額〉 25年漁期 16,062トン (85%) 84% (12,983トン) 24年漁期 2% (3,417トン) 23年漁期 宮城県ワカメ養殖(22年漁期(2∼5月)15,458トン) 25年漁期 13,168トン (85%) 64% (9,448トン) 24年漁期 0% (0トン) 23年漁期 宮城県ギンザケ養殖(22年漁期(3∼8月) 14,750トン) 25年漁期 11,619トン (79%) 40% (5,094トン) 24年漁期 岩手県コンブ養殖(22年漁期(5∼7月)12,848トン) 25年漁期 6,341トン (49%) 0% (0トン) 23年漁期 74% (608施設が業務再開) ※25年3月末 95% (958か所) ※24年3月末 岩手: 100%(135か所) 宮城: 97%(841か所) 福島:要望なし 岩手: 94%(127か所) 宮城: 96%(831か所) 福島:要望なし 岩手: 100%(154か所) 宮城: 97%(885か所) 福島: 100%( 6か所) 岩手: 93%(143か所) 宮城: 72%(655か所) 福島: 50%( 3か所) 97% (976か所) ※26年2月末 75% 98%第
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第 Ⅱ 章 《漁業経営体と水揚げ》 岩手県、宮城県及び福島県における平成25(2013)年11月1日現在の漁業経営体数は 5,658経営体で、平成20(2008)年の10,062経営体の56%となっています。また、過去1年間 の海上作業が30日未満で経営を再開したとは言い難い世帯が1,753、操業自粛等が844存在し ています。廃業した経営体は2,492経営体で、平成20(2008)年の経営体数の25%となって います。 一方、漁船、養殖施設、漁港施設及び加工流通施設の復旧に伴い、被災県の水揚げは回復 基調にあります。平成25(2013)年2月~26(2014)年1月の岩手県、宮城県及び福島県の 主要な水産物産地卸売市場への水揚げは、震災前(平成22(2010)年3月~平成23(2011) 年2月)に比べ水揚量で70%、水揚金額で81%となっています。 ただし、地盤沈下によるかさ上げ工事等のため、漁獲された水産物の大口受け入れ先であ る水産加工施設の復旧が遅れている地域等では、水揚量の回復が頭打ちとなっています。 図Ⅱ−7−1 水産業復旧の進捗状況(平成26(2014)年3月11日現在) 岩手・宮城・福島各県 の主要な魚市場の水揚 げの被災前年比(22 年3月∼23年2月合 計) (319漁港が被災) 陸揚げ岸壁の機能回復 状況 (約2.9万隻が被災) 復 旧 目 標(27年 度 末 までに2万隻)に対す る状況 岩手県・宮城県の主要 な養殖品目の共販数量 (25年漁期)の被災前 年比(22年漁期) (約113kmの岸壁が被災) 被災岸壁の復旧状況 [岩手県] 久慈、宮古、釜石、大船渡 [宮城県] 気仙沼、女川、石巻、塩釜 [福島県] 小名浜(県外で漁獲) ○拠点となる漁港については、 25年度末までに復旧するこ とを目途。 一部の被害の甚大な漁港やそ の他の漁港については、27 年度末までに復旧を見込む。 ○北海道、青森県、千葉県で被 災した岸壁は、復旧完了済み。 ○平成26年3月末までに全延 長の陸揚げ機能が回復した 172 漁 港 の う ち、岩 手 県、 宮城県、福島県の内訳は次の とおり。 岩手県:62%(67漁港) 宮城県:30%(42漁港) 福島県:50%( 5 漁港) 24年度中に、水産基本計画の 目標(25年度末までに1万2 千隻)は達成。 更に被災地の要望を踏まえ27 年度末までに2万隻まで回復を 目指す。 ※ カキ養殖については、養殖 施設は8割程度復旧している が、種付けから出荷までに2 ∼3年を要するため、24年 漁期の生産は低位にとどまっ ている。 全ての養殖業再開希望者の養殖 施設の整備がほぼ完了。 1 水揚げ 2 漁港 項目 被害状況 0 20 40進捗状況 60 80 100% 備 考 3 漁船 被災3県で被害があっ た産地市場(34施設) 被災3県で再開を希望 する水産加工施設 (819施設) 岩手県及び宮城県の産地市場 は、22施設すべてが再開。 27年度末までに再開希望者全 員の施設を復旧・復興すること を目途。 4 養殖 項目 被害状況 0 20 40進捗状況 60 80 100% 備 考 5 加工流 通施設 がれきにより漁業活動 に支障のある定置漁場 1,004か所 (再流入箇所含む) がれきにより漁業活動 に支障のある養殖漁場 1,071か所 (再流入箇所含む) がれきの残る一部の漁場につい て、26年度も引き続き支援を 実施。 6 がれき 70% H25.2∼26.1 (325千トン) 81% H25.2∼26.1 (648億円) 62% H24.3∼25.2 (288千t) 38% H23.3∼24.2 (178千t) 77% (15,308隻) ※25年3月末時点 46% (9,195隻) ※24年3月末時点 70% H24.3∼25.2 (559億円) 46% H23.3∼24.2 (368億円) 岩手 70% (97.6千トン) 宮城 72% (223.3千トン) 福島 34% (3.7千トン) 岩手 85% (164.5億円) 宮城 81% (478.9億円) 福島 29% (5.1億円) 岩手 8,475隻 宮城 6,244隻 福島 285隻 岩手 7,768隻 宮城 5,358隻 福島 256隻 岩手 4,217隻 宮城 3,186隻 福島 192隻 28% 53% 80% 30%(96漁港) (全延長の陸揚げ機能回復) (部分的に陸揚げ機能回復)42%(134漁港) (潮位によっては陸揚げ可能)25%(81漁港) 36%(115漁港) 47%(149漁港) (48漁港)15% 54%(172漁港) 37%(117漁港)(23漁港)7% 平成24年3月末現在 平成26年3月末現在 平成25年3月末 実績 平成26年3月末現在 平成27年3月末見込み 平成25年3月末現在 85% (16,945隻が復旧) ※26年1月末時点 65% (22施設が業務再開) ※23年12月末 岩手: 100%(13施設) 宮城: 100%(9施設) 福島: 8%(1施設) 岩手:84%(166施設) 宮城:78%(367施設) 福島:74%(112施設) 68% (23施設が業務再開) ※25年12月末 55% (418施設が業務再開) ※24年3月末 79% (645施設が業務再開) ※25年12月末 76% (14,212トン) 24年漁期 2% (325トン) 23年漁期 岩手県ワカメ養殖(22年漁期(2∼4月)18,981トン) 〈水揚量〉 〈水揚金額〉 25年漁期 16,062トン (85%) 84% (12,983トン) 24年漁期 2% (3,417トン) 23年漁期 宮城県ワカメ養殖(22年漁期(2∼5月)15,458トン) 25年漁期 13,168トン (85%) 64% (9,448トン) 24年漁期 0% (0トン) 23年漁期 宮城県ギンザケ養殖(22年漁期(3∼8月) 14,750トン) 25年漁期 11,619トン (79%) 40% (5,094トン) 24年漁期 岩手県コンブ養殖(22年漁期(5∼7月)12,848トン) 25年漁期 6,341トン (49%) 0% (0トン) 23年漁期 74% (608施設が業務再開) ※25年3月末 95% (958か所) ※24年3月末 岩手: 100%(135か所) 宮城: 97%(841か所) 福島:要望なし 岩手: 94%(127か所) 宮城: 96%(831か所) 福島:要望なし 岩手: 100%(154か所) 宮城: 97%(885か所) 福島: 100%( 6か所) 岩手: 93%(143か所) 宮城: 72%(655か所) 福島: 50%( 3か所) 97% (976か所) ※26年2月末 75% (801か所) ※24年3月末 98% (1,045か所) ※26年2月末第
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第 Ⅱ 章 《漁港施設》 漁港は、漁船の係留や補給、漁獲物の水揚げ、加工・流通等の機能が集積した水産業の基 盤施設であることから、被災地の水産業の再生のためには、いち早くその機能の回復を図る ことが重要です。このため、漁港施設の復旧については、平成25(2013)年度末までに全国 的な拠点漁港や地域水産業の拠点となる漁港について陸揚げ岸壁等の主要な機能を回復する こととされています。 東日本大震災による被害を受けた319港の陸揚げ岸壁の復旧状況は、172漁港(54%)で全 延長の陸揚げ機能が回復し、117漁港(37%)で部分的な陸揚げ機能が回復しました。また、 被災した漁港の全岸壁延長のうち53%が復旧しました(平成26(2014)年3月末現在)。 また、全国的な拠点漁港や地域水産業の拠点となる漁港については、生産・流通機能の強 化や岸壁の耐震化等、防災・減災のための施策を講ずることとしています。特に水産業の振 興上重要な特定第三種漁港である5漁港(八戸、気仙沼、石巻、塩釜及び銚子)については、 水産物の衛生管理の高度化のための整備を行うなど、新たな水産業の姿を目指した復興に取 り組んでいます。 《漁船》 修理及び新船建造を完了した漁船の数は、漁業者が加入していた漁船保険による自力復旧 も含め16,945隻となっており、目標隻数(2万隻)の85%まで復旧しました(平成26(2014) 年1月末現在)。なお、震災による被害隻数は約2万9千隻に上っていますが、被害を受け た漁船の中には、既に引退した漁業者が所有していたなどの事情で稼働していなかったもの 等があるため、復旧の対象となる漁船の隻数は被災隻数より少なくなっています。 《養殖施設》 岩手県の養殖収穫量は震災前に比べワカメが85%、コンブが49%まで回復しました。また、 宮城県の養殖収穫量は震災前と比べワカメが85%、ギンザケが79%まで回復しました。なお、 平成24(2012)年のギンザケの産地価格は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下 「東電福島第一原発」といいます。)事故の風評等により震災前の平成22(2010)年の56%に まで下落しましたが、平成25(2013)年は87%まで回復しました。 一方、カキ養殖については収穫までに通常2~3年を要すること、ノリ養殖については全 自動乾のり製造機等に多額の設備投資が必要であること、さらに、両者の産地では震災によ る地盤沈下が深刻で施設用地をかさ上げする必要があったこと等により収穫が遅れていま す。ただし、カキ養殖においては約8割の養殖施設が復旧しています。第
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第 Ⅱ 章 《加工・流通施設》 ①水産物産地卸売市場 岩手県、宮城県及び福島県の水産物産地卸売市場は34施設すべてが被害を受けましたが、 岩手県及び宮城県の22施設については、平成24(2012)年9月に全ての市場が営業を再開し ています。一方、東電福島第一原発の事故の影響を強く受けている福島県においては、平成 25(2013)年12月末現在で12施設中小名浜の1施設のみで営業を再開しています。 ②水産加工施設 全国水産加工業協同組合連合会の調査によると、岩手県、宮城県及び福島県の水産加工場 952施設の被害が報告されており、このうち再開を希望している819施設のうち645施設が操 業を再開しています(平成25(2013)年12月末現在)。 水産加工場の多くは漁港の後背地等の沿岸地域に位置しており、東日本大震災の津波によ り甚大な被害を受けました。特に、工場の敷地が地盤沈下したところでは浸水や高潮時の冠 水といった被害を受けており、操業を再開するためにはまず敷地をかさ上げし、その上に新 たな工場を再建するという対応が必要となっていることから、復旧に時間を要しています。 岩手県、宮城県及び福島県の水産加工業者224社を対象としたアンケートの結果によると、 平成26(2014)年3月現在で10割以上(被災前の水準以上)生産能力が回復した業者は、岩 手県では14%、宮城県では13%、福島県では2%となり、8割以上生産能力が回復した業者 は岩手県では57%、宮城県では49%、福島県では24%となっています。一方、10割以上(被 災前の水準以上)売上が回復した業者は、岩手県では11%、宮城県では8%、福島県では6 %となり、8割以上売上が回復した業者は、岩手県では44%、宮城県では36%、福島県では 10%となっており、売上の回復のために、販路回復や高付加価値商品の開発が課題となって います。 表Ⅱ−7−1 被災3県の養殖業生産量(平成23(2011)年と平成24(2012)年) 海面養殖 4,530 23,512 うち 貝類 4,048 1,314 うち ホタテガイ 759 750 カキ類(殻付き) 3,288 565 海藻類 409 22,197 うち コンブ類 − 6,862 ワカメ類 408 15,336 内水面養殖 355 386 うち ニジマス 118 139 その他マス類 195 195 平成23年 (2011) 岩手県 平成24年 (2012) 資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」 注:表中の「−」は事実のないもの、「x」は統計数値が非公表のも のである。 海面養殖 x x うち 海藻類 54 − うち ノリ類 54 − 内水面養殖 1,181 1,119 うち ニジマス 335 275 コイ 705 679 平成23年 (2011) 福島県 平成24年 (2012) 海面養殖 29,689 43,093 うち 貝類 14,324 8,561 うち ホタテガイ 1,003 3,538 カキ類(殻付き) 13,321 5,024 海藻類 15,269 25,050 うち コンブ類 5 839 ワカメ類 3,341 17,367 ノリ類 11,923 6,843 内水面養殖 218 291 うち ニジマス 104 133 その他マス類 100 142 平成23年 (2011) 宮城県 平成24年 (2012) (単位:トン)第
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第 Ⅱ 章 《がれきの撤去》 津波によって発生した大量のがれきは様々な漁業の操業再開に支障を及ぼすことから、操 業再開の前に、まず漁場のがれき撤去に取り組む必要があります。このため、国も積極的な 支援を行った結果、平成25(2013)年12月末までに定置漁場の97%、養殖漁場の98%でがれ きの撤去作業を完了しています。 《種苗生産施設》 さけ・ますのふ化場については青森県から茨城県にかけての48施設が被害を受けました が、そのうち30施設が復旧済みとなっています(平成25(2013)年12月現在)。これにより、 さけ・ます種苗の生産能力は平成25(2013)年度中に震災前の約85%まで回復しています。 また、被災道県の栽培漁業関係公益法人や漁業協同組合等によって運営されているヒラメ、 アワビ、ウニ類等の魚類・貝類の放流用種苗生産施設については北海道から茨城県にかけて の23施設で被害が発生しました。このうち11施設が復旧済み、6施設が復旧中となっていま す(平成25(2013)年6月現在)。ヒラメ、アワビ、ウニ類の種苗生産能力については、平 成24(2012)年度中に被災前の約6割の水準に回復しています。 (漁場生産力向上のための技術開発等の実施) 東日本大震災による津波や地盤沈下が藻場・干潟や沿岸の生物資源に及ぼした影響につい て把握するため、(独)水産総合研究センターと被災県の水産関係の研究機関等は平成24 (2012)年度末まで漁場環境調査を実施しました。その結果を踏まえ、平成25(2013)年度 からは、(独)水産総合研究センターと被災県の水産関係の研究機関等が共同で、被災漁場に おいて沿岸漁業・養殖業を円滑に行うための改良漁具、漁場機能回復技術及び養殖漁場にお ける環境改善技術等の開発を実施し、被災地の漁業の円滑な復旧・復興を目指しています。 (「東日本大震災復興特別区域法*1」に基づく漁業に関する復興特区) 東日本大震災による未み曾ぞ有うの被害から復旧するためには、前例や既存の枠組みにとらわれ ない思い切った措置を採る必要があります。しかし、各被災地の被災状況や復興の方向性は 様々であるので、画一的な措置ではなく各地域の創意工夫を活かした措置とすることが重要 です。このため、「東日本大震災復興特別区域法」では、各地域が被災状況や復興の方向性 に基づいた復興推進計画を策定し、規制の特例措置等を国に求めることができることとされ ています。 これに基づき、集落の9割以上の家屋が被害を受けた石巻市桃浦地区では、販路や資金を 有する外部の水産卸会社との連携により早急に復旧・復興を図る必要があるとして、仙台市 の水産卸会社と被災した地元カキ養殖業者15人がカキ養殖会社を設立し、同社が優先的に区 画漁業権を受けることができるよう漁業法の特例措置を盛り込んだ復興推進計画を策定し、 宮城県を通じて平成25(2013)年4月に国に申請を行いました。 この復興推進計画は内閣総理大臣から認定され、同社に対し宮城県から同年9月1日付け でカキ養殖に関する区画漁業権が付与されました。 *1 平成23(2011)年法律第122号第
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第 Ⅱ 章 (被災地での協業化に向けた取組) 東日本大震災では、漁船や養殖施設等漁業生産施設が壊滅的な被害を受けました。このた め、被災地では、いち早く復旧した数少ない生産施設を共同で利用することで、一日も早い 漁業の再開を目指すため、協業化の取組が進んでいます。特に岩手県では、経営を再開した 個人経営体の約1割が協業化に参加しています。 協業化に当たっては、施設の所有権や利益の配分等、様々な項目について調整が必要です。 このため、地元の漁業協同組合が共同施設を所有したり調整役として活動し、協業化による 漁業の再開に大きな役割を果たしています。 (新しい地域特産品の開発等に向けた取組) 被災地では、単に従来の状態に復旧するのではなく、震災復興を契機として従前から課題 であった人口減少や高齢化等の諸課題を克服し、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」 を創造すべく取組を進めています。被災地の沿岸部は、従来から水産業に根ざしてきた地域 固有の文化的景観や豊かな食材を利用した郷土料理を有していることから、これらとの連携 により付加価値の向上や低利用魚介類の活用を図った上で市場に売り込んでいくとともに、 生産者と消費者が相互に交流する中で新しい商品価値を共に創造していく「価値共創ビジネ ス」というビジネスモデルを推進することも重要です。国では、幅広い担い手(企業、大学、 NPO等)による先駆的な取組を加速するための「新しい東北」先導モデル事業等を実施し、 競争力の高い地域特産品の開発、他の産品との差別化に向けた取組を支援しています。共同利用施設での養殖(岩手県 新おおつち漁業協同組合)
岩手県大槌町にある大槌湾と船越湾は、プランクトンやミネラルが豊富なことからワカメ、ホタテガイ、 カキ、コンブ、ホヤ等の養殖業が盛んに営まれています。 東日本大震災前には大槌町の漁業生産額の約3割を養殖業が占め、地域にとって養殖業は安定した収入 を確保するための最も重要な漁業種類となっていました。しかし、震災による被害は甚大で、個人所有の 養殖施設では、ワカメ棚422台、ホタテ棚370台、カキ棚31台、ホヤ棚72台、コンブ棚37台がすべて流 出しました。大槌町では一日も早い復興を目指して「大槌町東日本大震災津波復興計画(基本計画)」を 策定し、養殖業を早期に復旧するため、漁業協同組合が補助事業で漁船や養殖施設等を整備し、漁業者が 共同利用することで初期投資を抑え、迅速な整備と早期復旧 を図ることとしました。平成24(2012)年3月1日に「新 おおつち漁業協同組合」が発足して事業を開始し、国の「漁 業・養殖業復興支援事業」の認定協議会で、「新おおつち漁 協地域養殖復興プロジェクト」が承認され、復興に向けた取 組は着実に実施されています。平成26(2014)年3月末現 在の漁協所有の施設復旧数は、ワカメ棚227台、ホタテ棚 126台、カキ棚60台、ホヤ棚34台、コンブ棚44台となって います。 復興に向けた取組が進むワカメ養殖業事 例
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第 Ⅱ 章 例えば、岩手県では、これまで市場に流通せず捨てられていたアワビの肝等を活用し、三 陸地域独自の漁師料理として肝煮に加工した上で居酒屋のメニュー向けに販売するなど、地 域の特色を生かした商品のブランド化を図り、販路を拡大する取組を行っています。さらに、 細胞膜を傷つけないセルアライブシステム(Cells Alive System(CAS))冷凍による高品 質な商品の開発を目指した取組が進められています。(2)原発事故への対応
(東電福島第一原発の状況) 平成23(2011)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とこれに伴う津波により発生 した東電福島第一原発事故は、現在でも水産業に影響を与えています。 東電福島第一原発事故そのものは、収束工程表に基づく作業の結果、平成23(2011)年12 月16日に開かれた政府の原子力災害対策本部において収束工程表の達成が確認され、発電所 事故そのものは収束に向かったものと判断されるとともに、東電福島第一原発の原子炉はす べて廃炉処分されることになりました。 しかし、平成25(2013)年6月に、地下水が内陸から発電所敷地に流れ込み、放射性物質 に汚染されたまま海洋に流出していたことが原子力規制委員会において指摘され、7月に東 京電力において明らかにされたほか、8月にはベータ線を放出するストロンチウム90を主に 含む高濃度汚染水を貯めたタンクから汚染水が漏洩する事故が発生し、その後も汚染水漏れ が発生しています。 福島県が8月に福島県沖の表層と水深7メートルから採取した海水を測定した結果では放 射性セシウムとトリチウムは検出されませんでしたが、その後も東電福島第一原発の港湾外 で放射性セシウム137が1.4ベクレル/リットル検出されるなど、予断を許さない状況が続い ています。 この事態を受け、政府は9月に開催された「第32回原子力災害対策本部会議・第2回原子 力防災合同会議」において、①汚染源を取り除く、②汚染源に水を近づけない及び③汚染水 を漏らさない、という基本方針の下で対策を講じていくことを決定しました(図Ⅱ−7−2)。 11月には国際原子力機関(IAEA)の調査団が汚染水の影響調査を実施し、汚染水は十分 に管理されているとの評価結果を出しています。 さらに、原子力規制委員会は、東京電力が東電福島第一原発の港湾入り口の海水の放射性 物質濃度を常時測定し、リアルタイムでホームページで閲覧できるようにすることを決定し ました。第
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第 Ⅱ 章 図Ⅱ−7−2 廃炉・汚染水問題に関する予防的・重層的な追加対策 資料:経済産業省資料から抜粋 ②汚染源に水を「近づけない」 汚染水問題に対する予防的・重層的な追加対策の実施 これまでの主な対策: 地下水バイパス 建屋近傍の井戸(サブドレン)での汲 上げ 国費による凍土方式の陸側遮水壁 建屋海側の舗装 等 主な追加対策: ◆「広域的な舗装(表面遮水)」又は 「追加的な遮水とその内側の舗装」 ※地表面の除染等の線量低減も考慮 ◆タンク天板への雨どいの設置 ③汚染水を「漏らさない」 これまでの主な対策: 水ガラスによる地盤改良 海側遮水壁 タンクの増設(ボルト締め型タンクか ら溶接型タンクへのリプレイス) 等 主な追加対策: ◆溶接型タンクの設置加速 ◆大規模津波対策(建屋防水扉等) ◆建屋からの汚染水の漏えいの防止 ◆汚染水移送ループの縮小 等 ①汚染源を「取り除く」 これまでの主な対策: トレンチ内の汚染水のくみ上げ・閉塞 多核種除去設備(ALPS)による汚染 水浄化 国費によるより高性能な多核種除去設 備 等 主な追加対策: ◆多核種除去設備の増設 ◆タンク漏えい水対策 (土壌中のストロンチウム捕集) ◆港湾内の海水の浄化 等国の基準値(100ベクレル/㎏)の考え方
食品中の放射性物質の基準値は、すべての世代が通常の食生活を送っても支障がないよう設定されてい ます。東電福島第一原発事故直後の日本の魚介類等の放射性物質(放射性セシウム)の暫定規制値は500 ベクレル/㎏でした。しかし、平成24(2012)年4月に、より一層の食品の安全と安心を確保するため、 長期的な観点から一般食品の限度値を100ベクレル/㎏とするなど新たな基準値が設定されました。 基準値の設定に当たっては、食品の国際規格を定めているコーデックス委員会の指標(食品からの被ば く線量は年間1ミリシーベルトを超えないこと。)から世界保健機関による飲料水の基準(10ベクレル/ ㎏)に基づく飲料水から受ける年間線量(約0.1ミリシーベルト)を差し引き、食品から受ける年間線量 は約0.9ミリシーベルト以下とするとの前提で、各年齢階層の男女及び妊婦別に検討し、食品を摂取する 量が多いなどから許容限度値が最も低くなる13歳から18歳の男性が通常の食生活を送っても年間線量の 上限値を十分下回る水準とすることが考慮されています。 なお、放射性セシウム以外の放射性物質(ストロンチウム90、プルトニウム、ルテニウム106)は測 定に時間がかかることから、限度値の計算に際してはこれら放射性セシウム以外の放射性物質による線量 を安全を見込んだ上で全体の約12%として織り込まれており、放射性セシウムだけを測定しても安全性 が確保されるよう考慮されています。 また、子供は放射線への感受性が高い可能性があることから、乳児用食品や子供が良く飲用する牛乳は 一般食品の半分の50ベクレル/㎏と、更に厳しく設定されています。コラム
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第 Ⅱ 章 (福島県沖での試験操業の状況) 福島県沖での試験操業は、放射性物質の検査結果に基づき、漁業者、水産加工・流通業者、 研究機関、行政等で構成されている福島県地域漁業復興協議会での協議により漁獲対象魚種 を決めて実施しています。平成24(2012)年6月の開始当初は相馬市の沿岸から50㎞以東で のヤナギダコ、ミズダコ、シライトマキバイの3種を対象に始められ、安全性が確認された 魚種について順次試験操業の対象魚種に加えてきました。 東電福島第一原発からの汚染水漏れにより試験操業は一時全面的に中断したものの、その 後の海水と魚介類のモニタリング検査の結果から試験操業を予定している海域や対象魚種の 安全性が確認できたため、9月25日から相馬市沖での試験操業を再開し、10月18日からは新 たに水深150m以深のいわき市沖海域においても試験操業を開始しました。その後も、福島 県地域漁業復興協議会での協議に基づき、対象魚種を順次追加し、平成26(2014)年3月末 現在で32魚種で試験操業が実施されています。また、対象海域についても魚介類に含まれる 放射性セシウムの調査を踏まえ海域を拡大しています。特に平成26(2014)年3月17日には、 いわき市沿岸でもコウナゴやイシカワシラウオを対象として小型刺網や船びき網による試験 操業が開始されたことにより、東電福島第一原発から半径20㎞以内を除く福島県沿岸域全域 で試験操業が実施されるなど、福島県沖の漁業再開に向けて一歩ずつ着実に取り組まれてい るところです(図Ⅱ−7−3、図Ⅱ−7−4)。 試験操業では、漁獲された魚介類のうち試験操業の対象ではない魚介類はすべて海に戻さ れます。その後、水揚げされた魚介類は放射性物質の検査を受け、放射性物質が基準値を下 回った魚介類のみが出荷されています。平成26(2014)年2月27日に試験操業対象魚種であ ったユメカサゴの一部から、出荷前検査において基準値を超える放射性セシウムが検出され たことから、当日漁獲されたすべてのユメカサゴの出荷を停止するとともに、ユメカサゴは 試験操業対象魚種から外されました。 諸外国の放射性セシウム流通の基準 コーデックス (国際機関) 基準値 (放射性セシウム) 設定の考え方 EU (欧州連合) 米国 (平成24(2012)年4月∼※)日本 新基準 (単位:ベクレル/kg) ※一部品目は経過措置を適用 被ばく限度は年間1ミリ シーベルトまで。 一般食品は50%、牛乳 と乳児用食品は100%が 汚染されていると仮定。 被ばく限度は年間5ミリ シーベルトまで。 食品中の30%が汚染さ れていると仮定。 被ばく限度は年間1ミリ シーベルトまで。 食品中の10%が汚染さ れていると仮定。 被ばく限度は年間1ミリ シーベルトまで。 食品中10%までが汚染 エリアと仮定。 乳児用食品 1,000 乳児用以外の食品 1,000 乳児用食品 400 乳製品 1,000 飲料水 1,000 その他の食品 1,250 1,200 飲料水 10 牛乳 50 一般食品 100 乳児用食品 50資料:FAO「CODEX STAN 193-1995」、EU理事会規則No3954/87、米国FDA/ORA CPG 7119.14、厚生労働省資料に基づき水産 庁で作成